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2013.05.03

■感想 R・A・ラファティ, 柳下毅一郎訳『第四の館 (未来の文学)』R.A. Lafferty "Fourth Mansions"

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R・A・ラファティ, 柳下毅一郎訳『第四の館 (未来の文学)』

"世界最高のSF作家ラファティによる『地球礁』『宇宙舟歌』に並ぶ
初期代表長篇にして最高傑作がついに登場!
さえない新聞記者フォーリーが出会う奇妙な陰謀の数々。
狂気とは何か? 人はいかにして神になるのか?
世界に牙を剥く衝撃のラファティ文学。"

 ラファティの1969年(55歳)刊行の第四長篇『第四の館』読了。
 長篇作品としては、1968年の『トマス・モアの大冒険ーパスト・マスター』、『地球礁』、『宇宙舟歌』に続く作品である。

訳者あとがき

"これはまぎれもない傑作だ。同時に、ラファティがただの「気のいいホラ吹きおじさん」ではないことを、はじめて本気で日本の読者につきつける小説かもしれない。"

 と柳下毅一郎氏が書かれている様に、今回、「気のいいホラ吹きおじさん」という雰囲気の作品ではない。そこが少し寂しいが、ノワール/サイコ味を増した黒い奇想のラファティもなかなかw(勿論、もともと黒いのですが…w)。
 その一つの要因としてラファティ得意のアンファンテリブルが出てこないのが、非常に印象的。ここは子供達に暴れて世界をひっくり返して欲しい、と思うところで子供が存在しないw。
 第七章で、主人公フレディ・フォーリーが知り合いの新聞記者メアリー・アンに、子どもから大人になったね、と言われるように「大人」の(老人でもない)小説となっている。ノワール/サイコ風味がスパイスとして黒い輝きを持っている。

 秘密結社である"脳波網を用いる収穫者"と"再帰者"の闘争を描いたミステリータッチの物語と、その後に続く"バグ"と呼ばれるワーウィット精神病院の不条理劇。特に前者が今までのラファティのイメージを拡張している部分で、より読者層を拡大できるリーダビリティを確保している。奇妙な展開も相変わらずなので、戸惑うかもしれないけれど、サスペンスSF系の読者にも間口は広がっている様に思う。
 脳波網による操作、人格の転移、正気と狂気の往還、不条理劇とサスペンスという点ではP.K.ディックファンにも御薦めできるかも。ただしその迷い込む迷宮の深さには目眩がするのだけれど、、、。
 ラファティの短篇に今ひとつ乗り切れなかった方も、これを期にいかがですか(^^;)。

 そして進化SFとなるラスト。
 今年刊行された『蛇の卵』にも通ずるテーマなのであるが、『蛇の卵』と比べると、今回奇想イメージの乱れ打ちな側面は薄れ(と言っても存分に発揮されてるけどw) 、世界が滅んでいく描写、人の体が別の意識によって取って代わられる不気味さといったところにフォーカスが当たっている様に思う。
 
 おそらく好みで大きく分かれると思うが、僕は『蛇の卵』の海を中心にしたイメージ喚起に奮えたので『蛇の卵』派(^^;)。
 進化SFという観点では後年(『蛇の卵』は1987年刊行)により熟成された高密度の奇想が楽しめると思うのだがいかがだろうか。(拙Blog 『蛇の卵』感想)

◆関連リンク
List of fictional books - Wikipedia, the free encyclopedia.

"Works invented by R. A. Lafferty
In Fourth Mansions:    
The Back Door of History by Arpad Arutinov
Broken Cisterns and Living Waters by Endymion Ellenbogen    
New Bestiary by Audifax O’Hanlon    
The Precursors by Dr. Jurgens    
Prose Poems by Maurice Craftmaster    
Second Trefoil Lectures by Michael Fountain    
Simplicitas by Orthcutt"

 第十二章「第四の館」冒頭に引用されている、エンディミオン・エレンボーゲンの詩「壊れた貯水池と生きている水 : Broken Cisterns and Living Waters」が素晴らしかったので調べてみたら、これはラファティの創作だったw。
 リンク先にいろんな作家作品の創作物の記載があるが、ラファティは本作で上記の様な創作物を作り上げているようだ(^^)。
Fourth Mansions - R. A. Lafferty - Google ブックス
 『第四の館』の原文の大部分がここで見られる。
CL-Fourth Mansions(サイト:とりあえずラファティ)

"まあ、邦訳のある長編(テーマ性の強い"パストマスター"はともかく、ラファティ節の炸裂する"イースターワインに到着"と"悪魔は死んだ")を読まれた方はおわかりだろうが、本作も基本的にストーリーを追って楽しむべき作品ではないのだ。たまたま、追うことが可能なストーリーがあるにしても。 brain-weavingのごとく四方八方から騙りかけてくる"

 らっぱ亭さんの『第四の館』ストーリー紹介とレビュー。
 詳細な粗筋を記されているのでストーリーの迷宮に陥ったら、こちらがとても参考になりますw。
Fourth Mansions by R.A. Lafferty - Reviews, Discussion, Bookclubs, Lists
 海外のレビューサイトの『第四の館』ページ。
R.A. Lafferty (Author of Nine Hundred Grandmothers)

"Fourth Mansions
3.9 of 5 stars 3.90 avg rating"

 このサイトのラファティ作品のレーティングリスト。
 長編小説として『第四の館』は、『Arrive at Easterwine:イースターワインに到着』『The Devil Is Dead:悪魔は死んだ』『Okla Hannali』に続く第四位。
Fourth Mansions lafferty - Google 画像検索

ラファティ - 当Blog関連記事 Google 検索

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