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2013.05.12

■レポート 愛知トリエンナーレスクール ヤノベケンジ「サン・チャイルドの誕生、そして結婚式」「太陽の結婚式」「太陽の神殿 《サンチャイルド島》」


トリエンナーレスクール ヤノベケンジ「サン・チャイルドの誕生、そして結婚式」

"5月11日(土) 14:00~15:30
テーマ:「サン・チャイルドの誕生、そして結婚式」
あいちトリエンナーレ2013では、会場内にこの《サン・チャイルド》が設置されるほか、サン・チャイルドの胸像の新作《ウルトラ・サン・チャイルド》を前に、実際の結婚式が行われます。
ゲスト:ヤノベケンジ(アーティスト)
進行役:五十嵐太郎(あいちトリエンナーレ2013芸術監督)"

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 愛知芸術文化センター12階アートスペースAで開催された講演会に行ってきた。
 まず芸文センターに着くと、あちこちにトリエンナーレのポスターが貼られ、ミュージアムショップではヤノベアイテムが多数販売されていて、雰囲気が盛り上がる(^^;)。

 先着200名ということだったが、開場された開始30分前には100人程の列。その後、どんどん観客が集まり開始時点では補助椅子も埋まり立ち見まで出て会場は満員御礼状態。たぶん300人程入っていたのではないか。トリエンナーレスクール史上最高とか。

 遠方でこれなかった方も、直前に主催者側からツィートされUSTネット配信が実施されたため、観る機会が得られたことと思う。
 冒頭に引用した動画は、そのアーカイブ動画。1時間半の公演全部が記録されている為、ファンには貴重な映像である。未見のファンには必見のお薦めですw。

◆講演会 前半 感想

 とても濃密な1.5時間だった。

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 スライド写真と動画で語られたヤノベ氏の作家歴の話は、311後という現実がどうしてもその数々の作品に重くオーバーラップして、社会との関係により観客の見方が大きく影響されることを強く印象させられる。

 何回か今までに同様の話を別の講演会で聴いたことのある僕は、正直最初、前半は知ってる話だし、カッタルイかなと考えていた(たいへん失礼な…)。
 ところが、ヤノベ氏の初期作品の映像が、以前の印象とも違って、ドカンとこちらに以前よりもさらに強く響いてくる。

 以前は遥か彼方の異邦の地の悲劇として見ていたチェルノブイリが、ダイレクトに今、この日本の現状なのだ、という重い現実を想起するしかない。特に、原子力発電所から三キロほど離れた都市プリ・ピェチに残る老人や子供達とヤノベがアトムスーツで会うシーンは、圧倒的なリアリティで迫ってくる。
 何度も観ていた筈の映像が、こんなにも現在、違った物に観えるというのは強烈な体験だった。(もちろん頭で考えれば当たり前に思えるかもしれないが、スクリーンに映る作品と作家の直接の言葉による体験は特殊な体感。これはアーカイブ動画だけでは印象が違う様な気がする…)
 (写真は芸術文化センター地下2Fショップのヤノベコーナーw)

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 会場は、あらかじめヤノベが冒頭で確認したのだが、作品をよく知らない観客が大部分とのことだった。しかしやはりアトム・スーツがウクライナの街の廃墟を歩く映像は強いインパクトを持っていたようで、空気が一気に重くなるのが良くわかった。 
 その重くなった空気をヤノベが指摘し、アトム・スーツ以後のトらやんの登場で和ませ(腹話術人形とヤノベ氏 父のエピソードは何度聴いても楽しいw)、そこから話は後半の「サン・チャイルドとその後」の再生の光を、ユーモアと共に語っていく。(写真ははじまる15分程前のまだ空いてる状態の会場)

◆愛知トリエンナーレ「太陽の結婚式」構想

 後半は「サン・チャイルド」誕生の話からスタートし、愛知トリエンナーレでのヤノベの新作構想が語られた。
 初めて公開された構想図をまず見て欲しい。(席が少し離れていたため、画質が悪くて申し訳ないですw)

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 イッセイミヤケとのコラボレーションの「クイーン・マンマ」を中心に据え、亀を象ったシャンデリア「幻燈夜会 : ファンタスマゴリア」が吊るされた空間に、新作である「礼拝堂」と"光学迷彩の様に輝く"(ヤノベ談)「ウルトラ・サン・チャイルド」。

 礼拝堂の大きさは4×6m。この中に、ヤノベケンジとビートたけしのステンドグラスが飾られて、アンリ・マティスのリトグラフ(愛知県美術館所蔵)が展示される。礼拝堂は4人程の人が入ることが出来るとか。構想にある様な空間で結婚式が執り行われることとなる。
 これが「太陽の神殿」と呼ばれる今回のヤノベ作品の構想である。

 事前に、ビートたけしとの再度のコラボは、情報として公表されていたが、大物芸術家"M"とのコラボも発表されファンのいろいろな憶測をよんでいた。
 この"M"がマティスだったわけだ。
 映画『アキレスと亀』でマティスを模した芸術家の主人公"真知寿"を演じた北野武との三人のコラボレーションも何かの符合かもw。
 グーグル先生に聞くと、北野武はマチスのファンの様ですね(リンク先参照)。

"マティスやピカソとか印象派の人などで好きな人たちはいますけれど、影響を受けたわけではないですね。色に関して一番影響を受けたのは、ペンキ屋だったうちの親父だと思います"

 (^^)。閑話休題。

◆「太陽の神殿 《サンチャイルド島》」構想と名古屋の結婚式場文化の関係w

 この新作「太陽の神殿」は、愛知トリエンナーレ芸術監督の五十嵐太郎が、岡本太郎記念館で展示された(「サン・チャイルド」の展示の際)、ヤノベの "太陽の神殿《サンチャイルド島》" 構想を見たことからスタートしたという。

 これから、トリエンナーレのテーマ「揺れる大地―われわれはどこに立っているのか: 場所、記憶、そして復活」という言葉の"復活"に繋がるとのこと。

 五十嵐太郎氏が今回の講演で語った愛知とヤノベと結婚式の関係は以下。
 1.自分が中部大に勤務してる時に名古屋の結婚式場について本にしたことがある。愛知と結婚式場の関係。
 2.ヤノベが結婚式構想で、彫刻から(五十嵐氏の専門の)建築空間へ 領域を広げている。

 五十嵐太郎氏の結婚式場の本はこれですね。
 『「結婚式教会」の誕生』

"第3章 いざ「聖地巡礼」(名古屋の結婚式教会めぐり。東京で増える教会のようなもの ほか)"

 なかなか面白そうですw。まさに、結婚式文化盛んな名古屋に関連w。

 今回も最初は、実際の「結婚式教会」での展示を考えて提案したが、どこも受け入れてくれず、結果的に美術館での展示となってしまったとのこと。

◆ヤノベ 熊本の結婚式場「太陽の神殿《サンチャイルド島》」構想 

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 ここで、会場で語られた岡本太郎記念館展示のヤノベケンジ"熊本の結婚式場"構想についても記しておく。

 この結婚式場の構想は、仏モンサンミッシェルの様に(! 右図)、海が割れた後に現れる通路を通って式場へ入っていく構造。
 そして上図にある様に、"海"の地下に設えられた大空間の式場には、数々のヤノベ作品。

 この海と地下空間に魅かれます。
 広大な地下室の静謐な空間に、ヤノベの作品がとても映える様に感じます。地下シェルターの様でもあり、秘密基地の様でもあり(^^)。
 こんな空間に「黒い太陽」(リンク先に動画)のテスラコイルの稲妻がバリバリと走ったら、さぞかし凄まじい迫力でしょう。音響設計として、低周波の共鳴はテスラコイル放電の1次共振周波数にセッティングしてほしいところです。(それにしても祝福の場に、あの禍々しいテスラの企みの機械を置くというのはいったいどんな構想なのだろうか…w)。

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 ヤノベによると、概略見積りで100億円!のため、現在、着手出来ずの状態だというw。
 ただいつか出来ると楽観的に思ってる、という頼もしい言葉も聞かれたため、ファンにとっては大変な楽しみである。
 うちの娘が結婚する頃に出来ていたら、いいんだけれどなぁ〜。
 ヤノベさん、ここ数年での実現を御願いします。そうしたら私もこの地下結婚式場で花嫁の父に(^^;)。

◆「太陽の結婚式」での結婚式イベント

 さて、今年行われる愛知トリエンナーレ「太陽の結婚式」について。
 この作品は愛知県美術館の中で、結婚式を行えるアート作品w。

ニュース | あいちトリエンナーレ2013.

"1 作品タイトル  《太陽の結婚式》
2 展示場所  愛知芸術文化センター10階 愛知県美術館
3 展示期間  平成25年8月10日(土)~10月27日(日)
4 挙式日時  上記期間中で、カップルが希望する日時(挙式時間:約1時間)
※挙式時間帯 ①10:00-12:30 ②12:30-15:00 ③15:00-17:30
5 結婚式募集要項
応募資格:結婚式を挙げる予定のカップルで、ブライダル会社の提示した契約書に同意できる方。入籍、未入籍は問いません。(年齢制限なし)
参列者定員:80人まで
※結婚式の内容によって実費が必要となります。(ドレスレンタル料など)
6 募集期間  平成25年5月13日(月)~10月13日(日)
※スケジュールが埋まり次第締め切りとなります。
7 申込み先  ブライズ・ビレッジ/太陽の結婚式窓口 052-209-9055"

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 マチス、ビートたけし作品も飾られた礼拝堂で8/10-10/27の会期中、一日3組まで、費用は40万円からということになるらしい。
 ブライズ・ビレッジというのは、元々愛知芸術文化センターの「ウルフギャングパック」というレストランでのウェディングも開催しているブライダル会社の様です。
 ちなみにこのウルフギャングパックという特徴的な名前は、なんとアカデミー賞の公式シェフの名前で、このシェフのプロデュースしたレストランとのこと。
 こんなところも、アートと関係があるのですね。映画ファンにもお薦めなのかも(^^)(ウルフギャングパックのHPで観ただけの情報なので、今回の「太陽の結婚式」との関係は不明です。詳細は上記申込み先へ御訪ね下さい。)

 希望者は、上記リンクの申込み先で依頼できるとのこと。

 既に開幕の8/10は、ヤノベの作品「森の映画館」のデンマークでの展示を手伝った青年がここでの挙式を予定しているとのこと。(そしてその御相手は、その展示の際に出会った女性とか。トらやんがキューピットになったカップルの誕生!)。

 結婚式は、申込むとコーディネータと式の相談をスタート。
 来月はゼクシィにも広告が出るらしい。本格的に募集体制w。「早くしないと予約が全部埋まりますよ!(笑)」とはヤノベの談。
 美術ファン、もしくはたけしファンで、結婚を考えられている方は、特別な空間での他にはない、記念すべき式を挙げられるので御薦めです! (^^)
 観客としても、立ち寄った美術館で結婚式のハレの雰囲気を合わせて体験できるまたとないチャンスなので、是非とも多くのカップルの申し込みがあることを願って止みません(^^)。

 この作品、美術的にはキワモノと観られることは作者も認識している旨の発言があったw。それでも希望のメッセージを発したいという作家の無意識の発露。
 確かに美術のコンテキスト的には、マチスのロザリオ礼拝堂に連結しているが、キワモノと見る人たちは多いだろう。だが僕はこの後の文章で述べる様に、キワモノとは思わない。

 「太陽の神殿」は、他、複層的に意味を込めていることも語られた。
 人間が作った間違った "太陽"(原子炉) の神殿を、教会の宗教的な空間を作り出す為に作られた美術の起源に立ち帰らせる試みも、この新作に込めているという。
 と尤もらしく語った直後に、「そう言えば美術通も膝を打つのでは」と語るヤノベ氏の茶化し方が、らしくってとても良いです(^^)。

 会場からの「デュシャンのトイレのサインが現代アートになった。どのようにして物が作品になると考えているか」の質問にヤノベが答える。

 「トらやんはデュシャンのトイレと同じ。これ以上分析的に自分の作品はなかなか語れない、マチスとコンテクストをつないで、この人(ヤノベ)は知的な方だと思われるかな」と笑うヤノベ氏w。

 この様に、作品に込めた仕掛けをひと通り自分から語ってしまうのは、いつものヤノベ氏のスタンス。
 (美術的にはダビデ像を模しているにしても)ある意味、これも色物と思われかねない「サン・チャイルド」を真っ向勝負で出す氏の感覚。美術作品に込める作家の想いよりも大きな、世界との接続への直感が語らせているのでないだろうか…。

◆最後にまとめw

 新作情報中心にながながと書いてきたが、今回、一番印象的だったのは前半の過去作紹介パートだった。
 前半のレポートでも書いたが、ヤノベ氏の解説と作品スライド、動画…以前に知っている内容ばかりだったが、311後に聞くのは初めて。
 ここでの現実世界との共鳴が最も印象的だった。


ヤノベケンジの短篇映画
「トらやんの世界」2004(『森の映画館』上映作品) - YouTube

 講演で作品全体が上映されたのが、この動画。
 これが、今回まさにヤノベアートを象徴的に表現できている作品かもしれないと感じたので最後に掲載。
 登場するのは、ヤノベ父の手作りの腹話術人形のバーコード頭トらやん。
 ベタベタな大阪ギャグに被せたチェルノブイリのアトムスーツ映像。ゾクゾクするアートと社会の深層の接続がここにあると思うのだけれど、いかがだろう。
 誰が意識したことでもなく、時代と美術家の無意識の共鳴で生まれたこの作品の最後に感ずる印象の深さが、作家の意図を超えていく作品の力だと思うのだけれど、いかがだろうか。

 やはりここでもう一度、読み返したいのは、ヤノベケンジの震災/原発事故後の「立ち上がる人々」という言葉である。

 アートという尖った表現が持て栄される領域で、キワモノと思われかねないストレートな表現でしか対抗できない現実について語られた深い言葉である、と思う。
 ストレートな表現は、ユーモアだったり(ex.トらやん)、希望(ex.サン・チャイルド、結婚式場)だったり、美術のコンテクストからワザと外すことで、現実に強く切り込む表現が成立しているのではないか、そんなことを改めて強く気づかされた。
 個人的にも、当研究所にとっても(あ、一緒だ(^^;))、とても有意義な講演だった。
 素晴らしいイベントを開催してくれたトリエンナーレのスタッフの皆さんと、ヤノベケンジさん、五十嵐太郎さんに感謝してこの文章を締めます。ありがとうございました。

◆今週は、この記事のみの更新となります。ご了承を(^^;)。

◆関連リンク
アンリ・マティス - Wikipedia

" 晩年、南仏ヴァンスのドミニコ会修道院ロザリオ礼拝堂の内装デザイン、上祭服のデザインを担当。この礼拝堂は、マティス芸術の集大成とされ、切り紙絵をモ チーフにしたステンドグラスや、白タイルに黒の単純かつ大胆な線で描かれた聖母子像などは、20世紀キリスト教美術の代表作と目される。"

ヤノベケンジ:太陽の子・太郎の子|アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

"熊本県に建設予定のビッグプロジェクト 《サンチャイルド島》 の模型。"

『新装版 ヤノベケンジ作品集 YANOBE KENJI 1969-2005』

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レポート KENJI YANOBE 1969-2005 ヤノベケンジ作品集出版記念イベント@豊田市美術館
情報 あいちトリエンナーレ2013 PV ヤノベケンジインタビュー

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