« 2013年5月 | トップページ | 2013年7月 »

2013年6月

2013.06.28

■情報 『山田太一 テレビから聴こえたアフォリズム』(文藝別冊/KAWADE夢ムック)

Photo

文藝別冊/KAWADE夢ムック『山田太一 テレビから聴こえたアフォリズム』 河出書房新社

"【スペシャル対談】
  ×田原総一朗/×木皿泉
【山田太一全ドラマ解説】
【論考】長谷正人
【永久保存版・山田太一ドラマ名ゼリフ集】
【山田太一ドラマ名優ファイル】"

 この本、出ていたのを知らなくて、図書館で見掛けて借りてきた(^^)。
 この本を手に取って、こうした個人のクリエータに着目したいろいろな出版物がある中で、今まで山田太一の特集本がなかったのが、とても不思議でならない気がした。
 それくらい山田太一の作品は、現在のさまざまな表現に影響を与えていると思う。

 本書、「山田太一を作った「知」~50年後も残したい本と映画 」、この希代の日常に紛れ込む闇を描くテレビシナリオライターが選ぶ20本の映画に、デイヴィッド・リンチ『ブルーベルベット』、トリアー『ドッグヴィル』が挙がっててとても嬉しい(^^)。
 アメリカの日常に潜む暗闇、耳の登場シーンは山田ドラマの冒頭にもふさわしい。そして『ドッグヴィル』の異様な村も山田シナリオでどう料理されるか想像すると興奮してくるw。

 現在のテレビドラマを山田太一がどう観ているかも、とても気になっている。
 特に、もし山田太一が『みんな!エスパーだよ!』を観てたらどんなレビューを書くんだろう(^^;)…これは是非、読みたい!

◆関連リンク
長谷 正人『敗者たちの想像力――脚本家 山田太一』
山田太一『終りに見た街』

山田太一 当Blog過去記事 Google 検索

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013.06.26

■情報 "小松左京『日本沈没』-未来へのヴィジョン-展"@米沢嘉博記念図書館

Photo

"小松左京『日本沈没』-未来へのヴィジョン-展"@明治大学米沢嘉博記念図書館 日本SF作家クラブ イベント : SFWJ50

"■会場:米沢嘉博記念図書館1階展示コーナー
■期間:2013年6月7日(金)~2013年10月6日(日)
休館日:毎週火・水・木曜(ただし祝日の場合は開館)

この展示では、『日本沈没』の生原稿や映像、マンガ、そしてインスパイアされた作品などの紹介を通して、『日本沈没』の問題意識や、未来に投射されたメッセージに焦点を合わせます。小松左京が発足メンバーの一人であった日本SF作家クラブ創立50周年イベントとして、改めて『日本沈没』に向かい合います。
会場:米沢嘉博記念図書館1階展示コーナー
期間:2013年6月7日(金)~2013年10月6日(日)
休館日:毎週火・水・木曜(ただし祝日の場合は開館)
夏季休暇8月24日(土)・25日(日)
※特別整理などで休館する場合があります。当館HP、もしくは開館日に電話にてご確認ください。
入場料:無料
問い合わせ:米沢嘉博記念図書館 〒101-8301 東京都千代田区猿楽町1-7-1 TEL:03-3296-4554"

 もともと僕は以前述べたように、こうした映像とかSFとかの"研究"wを、中学で衝撃的に出会った『日本沈没』からはじめているので(^^;)、この『日本沈没』に特化した展示会は、本当に個人的なんだけれど、感慨深いので御紹介。

 と言っても実際に行ってないし、特別の情報も持っていないのでw、この公式サイト情報を掲載するくらいなのですが、、、、。
 ネットにも残念ながらあまり写真は掲載されていないですね。

 日本沈没 未来へのヴィジョン-展 - Googleイメージ検索

◆当Blog 日本沈没 関連記事 (中学生時代の研究記録w)
 ■『日本沈没』スクラップNo.1 メディアミックス各シナリオと樋口真嗣監督作 DVD他
 ■『日本沈没』スクラップNo.2 岡本愛彦演出ラジオドラマ『日本沈没』
  ラジオドラマ『日本沈没』引用 (クリックで 最終回.mp3 の一部を聴けます)
 ■『日本沈没』スクラップNo.3『トリツカレ男』のスクラップ帳
 ■『日本沈没』スクラップNo.4  ラジオドラマ紹介第二回と広告等
 特にNo.2に掲載したラジオドラマは、あまりネットでも他に情報がないので、引用したラジオドラマの録音とともに、本展示会の協賛企画(勝手に(^^;))として、参照頂ければ幸いです。

◆関連リンク
日本沈没 当Blog 関連過去記事 Google 検索
 その他の記事は、こちらに少々。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013.06.24

■情報 フランシス・ベーコン ゆかりの奇想アーティスト Nathalie Djurberg:エイドリアン・ガーニー , Adrian Ghenie:ナタリー・ユールベリ

Phaidon Focus: Martin Hammer『Francis Bacon』というベーコン関連本を、豊田市美術館のショップで見て、巻末に掲載されていたベーコンゆかりのアーティストについて非常に興味深い作品を作られていたので、今回、御紹介。

 紹介する作家以外にも複数のアーティストが掲載されていたこのベーコン本、確か豊田市美術館のショップでは¥1780で売られていた。(Aamzonでは¥2270となっていますw)

◆Adrian Ghenie
Adrian_ghenie3450x373horzvert

 まず一人目は、1977年ルーマニア生まれのアーティスト エイドリアン・ガーニー : Adrian Ghenie (Wikipedia)。
 引用した油絵、顔が溶融したようなこのイメージがとても良い。

 Adrian Ghenie - Nicodim Gallery
 Adrian Ghenie auf artnet
 Adrian Ghenie | The Old Hand
 adrian ghenie - Google イメージ検索

 このあたりでで多数の作品が観られる。
 この作家、現在はルーマニアとドイツで制作活動を行っているという。

 リンク先ほぼ全ての作品には顔がなくダークなイメージではあるが、豊かな色彩、タッチが見る者を惹き付ける。

 まるでオリビエ・デ・サガザンの粘土のように、顔面に絵の具を塗っている様なアート。ここにもベーコンの21世紀の"子供"がイメージを追いかけているw。

◆Nathalie Djurberg

 そしてもうひとりがナタリー・ユールベリ。1978年スウェーデン生まれのアニメータにして造形作家。

 Nathalie Djurberg - Wikipedia
 nathalie djurberg - Google イメージ検索
 nathalie djurberg - Google 動画検索

20121012_djurberg_5_590tile

 どうですか、かなり興味深い、インパクトのある造形。
 人形は荒削りに見えるけれど、その分、勢いがあり、そしてなによりこの色彩に眼を奪われます(^^)。
 アニメーションも探してみたのですが、ネットにはいいものは見つかりませんでした。

nathalie djurberg - Google 動画検索

 もし関心のある方は、調べてみたら、なんと金沢21世紀美術館で、日本初公開のアニメーションが上映されているとのことなので、是非、行ってみて下さい。

「内蔵感覚」展 金沢 その1 ナタリー・ユールベリ&ハンス・ベリ #artweet #art_jp #contemporaryart : Occupied VOIDCHICKEN.

"「内臓感覚 — 遠クテ近イ生ノ声」 2013年4月27日(土)~2013年9月1日(日) 金沢21世紀美術館 Aさんに誘われるがまま金沢21世紀美術館のオープンに行ってきました。 ビル・ヴィオラの映像を使ったポスターがちょっと暗めで、「怖いよぉ」と 思う方もいるかもしれませんが、展示内容はとても良かったです。 ゴールデンウィークに地方の美術館に行くなら、 やはり金沢でしょう! ナタリー・ユールベリ&ハンス・ベリ (Nathalie DJURBERG & Hans BERG )の クレイアニメーションの作品はおすすめです! 日本初公開だそうですが、これを見るだけでも行く価値あり。"

◆関連リンク
ナタリー・ジュベルグの奇怪な世界: 暮らすかミラノ

"ジオ・マルコーニGioMARCONIという画廊で、ナタリー・ジュルベルグNathalie Djurberg(1978-)というスエーデンのビデオ作家の展覧会に行った。ビデオは1本だけ上演されていたが、それほどではなかった。そのビデオに 登場する人形が、たいへんな奇怪な人たちで、まさにアートと言えるのだろう。普通に見たら、気持ちが悪いとしか感じられないけど、そのリアルな気持ち悪さ には、ナタリーの世界にたどり着く道筋があるような気もする。行ってみたいとも思わなかったけれど"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013.06.21

■感想 「身体表現の可能性」展@豊田市美術館 ヤノベケンジ「ラディエーションスーツ・アトム」

Four_pic00

コレクションによる4つのテーマ展- 新収蔵品を中心に

"2013年4月20日[土] ~ 9月1日[日]
Apr.20[Sat]-Sep.1[Sun]

テーマⅠ:「白と黒」
テーマⅡ:「斎藤義重と高松次郎」
テーマⅢ:「フランク・ロイド・ライト」
テーマⅣ:「身体表現の可能性」 "

 「フランシス・ベーコン展」と同時開催されている豊田市美術館の4つの収蔵作品展示、その中の「身体表現の可能性」に、ヤノベケンジの「ラディエーションスーツ・アトム」(1996年)が展示されている。

 今回の展示は、撮影可なので写真にてその展示風景を紹介する。ヤノベファンは、ベーコン展ともども御楽しみ頂けると思います(^^)。

Radiation Suit /// YANOBE KENJI ART WORKS.

"ラディエーションスー ツ・アトム 1996
 110cm×70cm×175cm
 ガイガーカウンター、PVC、ストロボライト、他 ヒト型放射線感知スーツ。
 人体の繊細な器官(眼球,臓器,生殖器など)の各部分にガイガーミュラーを装着しており、放射線が人体を突き抜けるた びに閃光、その数値をカウントしていく。人はこれを装着することにより、アトランダムに降り注ぐ宇宙船、自然放射線、あるいは人為的につくられた放射線を 感知する 「地球のアンテナ」となる。"

Img_7353tilevert

Img_7336vert_3

 ヤノベケンジ「ラディエーションスーツ・アトム」が、エゴンシーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」、そしてクリムト「オイゲニア・ブリマフェージ」、志賀理江子「カナリア」と饗宴しているということだけで、もう僕は気持ちがワクワクと高まってしまう(^^)!

 エゴンシーレとクリムトは、今までも豊田市美術館で何度も観ている絵だが、ガイガーカウンタで放射線が検知され、1分に1回ほどの頻度で、スーツのフラッシュが光る緊迫感の中で観ると、また違った感慨が…。

 スーツの細部をじっくりと観てきたが、手縫いとみえるスーツの白い生地、尖ったガラス管とその内部の回路基板、そして赤い口…そうしたディテイルもリアリティを醸し出している。

 そして気づいたのはその手袋。
 右の写真をクリックして、拡大してもらうと分かるが、手袋には"Chemical Protection"と明確に書いてある。
 こうしたところまで本格的に機能的に作られているようだ。

◆関連リンク
名古屋三越に公式ショップ あいちトリエンナーレ2013
 ヤノベケンジグッズも数点。僕は、8月上旬発売予定の『サン・チャイルド』ミニフィギュア 販売価格 1,050 円は入手しようと思ってます(^^;)。

ヤノベケンジ 当Blog関連記事 Google 検索

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013.06.19

■感想(2) 映像の絵画への影響と意識の解体、そして映像への回帰『フランシス・ベーコン展 : Francis Bacon』@豊田市美術館

Muybridge_bacon

Francis Bacon & Photography « Cedric Arnold.

"L: Bacon’s “Two Figures” – R: Muybridge reproductions found in Bacon’s studio. Bacon on Muybridge “Michelangelo and Muybridge are mixed up in my mind together, and so I perhaps could learn about positions from Muybridge and learn about the ampleness, the grandeur of form from Michelangelo. …"

 これはセドリック・アーノルドという写真家が紹介している、ベーコン“Two Figures”(1953年)とエドワード・マイブリッジの分解写真を比較して並べたもの。

 今回ベーコン展では期待していた“Two Figures”の展示はなかったのだけれど、いくつかの作品で感じたのは、動画のコマを複数重ねたような、映像があったからこそ生まれた物凄く映画的な絵画だな、という感想。

 犬や人物の顔が透明になったりブレたりするのも、映像におけるシャッター速度と被写体の動作から初めて生まれてきた絵画表現であろう。また「ジョージ・ダイアの三習作 : Three Studies of George Dyer」(1969年)に代表される、顔が丸を基調にして歪んでいる絵画も、どこか魚眼レンズによる円形の歪みのように見える(そして黒い穴はさらにひっくり返して人間の視覚上の盲点の描写?)。

 会場のビデオ上映で紹介されていたように、ベーコンは写真から絵画のイメージを膨らませていたようで、まさに映像の世紀に生まれた新しい絵画表現のエッジにいたひとりと言うことが出来るだろう。

FrancisBacon_bluevelvet
右はリンチ『ブルーベルベット』

 前回紹介した「横たわる人物像 No.3 : lying figure No.3」(1959年)の背骨の表現は、X線写真の登場で生まれた絵画表現だとのこと。世界で最初のX線撮影装置は1898年ドイツのシーメンス社が開発に成功したらしいので、まさに20世紀のテクノロジーの絵画への利用形態である。

 ベーコンの表情が消えたような、昏い鈍い輝きを持つ人物の顔々を眺めていると、20世紀のテクノロジーや社会の複雑化による憂鬱の表情とも観えてくるのだけれど、そうした表情の抽象化において、まさに20世紀のテクノロジーを用いた絵画表現を用いているところが強く我々を揺さぶるのかもしれない(ちょっと強引だったかなw)。

 〈物語らない身体〉というコーナーもあったが、複数の空間と人物を描いていることで、そこからストーリーが生まれてしまうのを避けようとしたのだという。
 人物の形態を崩すことによる物語の解体。
 絵画の身体の壊滅と意識の解体が生み出したものは、言語により整然と形象化された認識ではなく、もっと原初的な、言語を介さないヒトの認識の映像を産みだしているようだ。

 このように考えると、ベーコンの絵画は、言語を解体し意識の向こうにある、無意識とか身体が持つ知恵のプログラミングを形象化ような新たな映像表現。それは言語にはもしかしたら相当に表現することが困難な何者か、なのかもしれない。
 「身体がイメージに回収されることに抗っている」というのはある絵を説明した展示会場の紹介文にあった言葉なのだけれど、どちらかというと僕は「身体が言語/意識に回収されることに抗っている」ととらえた。

Photo_3

 そんな絵画に、デイヴィッド・リンチ他の映像クリエータが刺激を受け、そうした言語を解体した様な映像世界を形作る。(右上がベーコン、下はリンチ『マルホランド・ドライブ』。詳細は拙Blog過去記事 情報 「フランシス・ベーコン展」@東京国立近代美術館, 豊田市美術館)
 
 20世紀の映画の祖であるマイブリッジから生まれた新たなヒトの認識が、ベーコンという絵描きの直感を通じて、新しい21世紀の映像表現へと回帰していく。
 そんな映像史的な興味を掻き立てる刺激的な展示会であったと思う。

◆そしてベーコン作品のパフォーマンス化

 そんなことを考えながら観た美術展の最終コーナーは、ウィリアム・フォーサイスのダンス映像(ペーター・ヴェルツ/ウィリアム・フォーサイス  「重訳|絶筆、未完の肖像(フランシス・ベーコン)|人物像を描きこむ人物像(テイク2)」  2005年 ゲーツ・コレクション)。
 これは上に述べた様なベーコンの強度を、残念ながら充分に表現できているとは感じられなかった。

 残念でならないのは、ここに、何故フランスのアーティスト オリビエ・デ・サガザンのパフォーマンスを持ってこなかったのだろうということ。

 ベーコンの人体変容芸術(^^;)を見事に体現できている、サガザンのパフォーマンスの衝撃を、もしあの会場でベーコンの絵画を観ながら体感できたとしたら、凄まじい体験になっていただろうにと残念でならない。
 特にサガザンは欧州では知られているが、日本では広く美術ファンに知られている訳ではないので、ベーコンを観た後、はじめてサガザン体験をする観客がいるとしたら凄い衝撃になっていたはずだ。

 サガザンについては手前味噌になるが、当Blog過去記事を参照頂きたい Olivier de Sagazan "performance O de Sagazan 08" オリビエ・デ・サガザン 人体変容パフォーマンス まさにベーコンファンが驚愕する表現です(^^)。

An Interview with Olivier de Sagazan - Loving Mixed Media

"5. What are your most important influences?
 I see some evidence of Soutine and Francis Bacon. Rembrandt is my main inspiration, and after him, Bacon."

 こちらはサガザンのインタビュー。
 やはり最も影響を受けた芸術家として、ベーコンを挙げている。(そしてもう一人はベラルーシの画家 シャイム・スーティン(Chaïm Soutine - Google イメージ検索))

 是非、次のベーコン展が日本で開催される折りには、サガザンの日本初来日を企画して頂きたいものである。

◆関連リンク
Cedric Arnold — Bangkok Based Photographer
 上で紹介した写真家セドリック・アーノルドの公式HP。
タイの精神世界を体に刻んで | Picture Power | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
 セドリック・アーノルドのタイでの写真を紹介する記事。
Pirates & Revolutionaries: Moving through Paralysis [36] Francis Bacon: After Muybridge - Woman Emptying a Bowl of Water & Paralytic Child 1965 Deleuze on Bacon, Painting Series
 
フランシス・ベーコン展 Francis Bacon|豊田市美術館|図録・グッズ
Mylène Farmer - A L'Ombre - YouTube
 フランスの歌手 ミレーヌ・ファルメール:Mylène FarmerのPV、オリビエ・デ・サガザンが参加している。

『美術手帖 2013年 03月号 フランシス・ベーコン』

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013.06.17

■感想(1) 『フランシス・ベーコン展 : Francis Bacon』@豊田市美術館

Francis_bacon

フランシス・ベーコン展 Francis Bacon 豊田市美術館

"2013年6月8日[土]-9月1日[日] Jun.8 [Sat] - Sep.1 [Sun], 2013"

 待ちわびていたベーコン展、ついに豊田市美術館で開催。スタートから一週目の土曜にさっそく行ってきました。
 絵画の持つ圧倒的な黒と緑の重力に吸引されて、魂を奪われそうだった(^^;)。
 このような超重力空間が近郊にある至福(^^)。

 まず最初の<捧げられた身体>のコーナーの後半。
 1957年の作品「ファン・ゴッホの肖像のための習作V : Study for "Portrait of Van Gogh" V」に心臓を撃たれる(^^;)。それまで昏い色だけで描かれていたベーコンの絵に赤とオレンジが登場する。Ac65a69559d1dba6b7263f8a1c006423horフィンセント・ファン・ゴッホ「タラスコンへの道を行く画家」(1888年、第二次大戦で焼失)、フランシス・ベーコン「ファン・ゴッホの肖像のための習作V」(1957年)
 図録の解説によると "ゴッホの作品(「タラスコンへの道を行く画家 : The Painter on the Road to Tarascon」(1888年))を着想源に、鮮やかな色彩と厚塗りによる絵の具の物質感を画面に取り入れることに"とか、"ベーコンがこの連作に着手する前に滞在していたモロッコのタンジールや、南仏の明るい日差しに由来するとも言われている"とのことの様です。

 この絵の、赤とオレンジの背景に緑色の輪郭の男(ゴッホ)が振り向いて立っている肖像。縦長に伸び幽鬼を漂わせた顔と、平たく水掻でも付いたかの様な足が魅力。そしてこれらをつなぐ体の右側を縦に支える緑色の輪郭とその上に落ちた黄色の雫。
 会場に置いてある図録と絵を見比べて確認したのだけれど、この絵の特に緑の魅力が印刷では全く表現できていない。御近くの方は是非実物を観られるこの貴重な機会をお見逃しなきよう(^^;)。
 そこまでの展示で昏く重かったベーコンの絵が獲得した、この光と奇想の融合。ゴッホの絵にない強い赤の色の導入と、人物のフォルムの何とも言えない佇まいに溜息がでるばかり。
 この絵の深い魅力に魅入られて、この日だけで10回近く、見入って沈思黙考してしまった。まだこの魅力の秘密は言語化されていないw。

 そして、次のコーナー<捧げられた身体>。

Pt003francisbacon_300x400_artprint

 ここの最初の三枚の空間が圧倒的。「横たわる人物像 No.3 : lying figure No.3」(1959年)と「歩く人物像 : Walking Figure」(1959-60年)、「横たわる人物像 No.1 : lying figure No.1」(1959年)が美術館のL字コーナーに置かれたベンチを囲むように配置された閉じた空間。ここが本展覧会で僕が最も気に入ったスポットになったw。
 特に「横たわる人物像 No.3」の黒い重力には押しつぶされそうで空間からの脱出に時間を要した。ベーコン超重力!
 そして対面の「歩く人物像」の奇妙な立ち姿。

 この「横たわる人物像 No.3」は、もちろん大胆に配置されたこの黒色の構図も凄いのだけれど、男がその重みに耐えている様な姿勢をとっていることが重力の強度を増している。そして呼応する緑と男の首から生えた黒い背骨。歪んで肉の溶けた手足。
 この黒と緑が、「歩く人物像」の全面の緑と床の黒に呼応/共鳴して異様な空間の迫力が生まれていたのだと思う。
 
 もちろんw僕はここでデイヴィッド・リンチの映画の黒を思い起こすのだけれど、明らかに繋がっているベーコンの絵の黒の世界と、リンチ映画のカーテンの向こうの漆黒、、、リンチブラックの強度はこうしたベーコンの超重力によって獲得されていたことを視覚の緊張とともに痛感したのであった。

 この後の絵は、僕には実はあまり強いインパクトを与えなかった。少し離れたところにあった「座像 : Seated Figure」(1961年)は凄いと思ったが、このL字コーナーの三枚の圧倒的なイメージには叶わない。もし「横たわる人物像 No.1 : lying figure No.1」に変わって「座像 : Seated Figure」がそこに置かれていたらと想像すると身震いするのだけれど、、、。

 一度、昼の食事で外へ出て、次に戻って二回目は、デイヴィッド・リンチの音楽をヘッドホンでガンガンに効かせて観た。
 両方試してみたのだけれど、リンチ映画のサントラ アンジェロ・バダラメンティではなく、この絵画空間と共鳴したのはデイヴィッド・リンチ自身が作った音楽だった。特にソロアルバム ディヴィッド・リンチ『気違いピエロの時間:Crazy Clown Time』
 ベーコンの溶けた人体と黒と緑の闇空間に、リンチとカレン・Oのヴォーカルが怪しいレゾナンスを奏でる。ファンは必聴です(^^;)。

◆関連リンク
フランシス・ベーコン展 Francis Bacon|豊田市美術館|図録・グッズ

『美術手帖 2013年 03月号 フランシス・ベーコン』

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013.06.14

■情報 Xia Xiaowan : 夏 小万 氏の3D立体ガラス絵画作品

Xtile

怖過ぎ!?ガラスを重ねて作られた立体作品がガクブル級のホラー

"中国のアーティストXia Xiaowanの作品をご紹介します。これはちょっと近づきがたい作品ですね。普通に怖いです。このアーティストはガラスを何枚も重ねることによって立体的な像を作りだしています。単なる人物や物体や像ではなく、存在するかどうかわからない曖昧な形態感を表現することでより一層リアリティが増しています。"

 1959年北京生まれのアーティスト:夏 小萬 (夏 小万)氏の超絶3Dアート
 元々、幻想的な油絵を描いていたようだが、ガラスをキャンパスに変えて、重層的な幻の様な作品を制作されている。

 これ、カラーで描いたり、周りの照明に色を付けて照射したり、まだまだいろいろな可能性が開けていますね。これとプロジェクション・マッピングの組み合わせなんていうのも観てみたい。

 でもこの作品、一方向からでなく彫刻のように周り込んでみたらどんなイメージに見えるのだろう。ネットで画像検索してもほとんどが正面か少し斜めからの画像なので、動画がないか、探してみた。

Cajón del Arte; 3D Painting & Anamorphosis - YouTube
 ここ2'30"くらいに、横へ周り込んだ映像がある。星雲を描いたもの。少し分かりにくいですね。もっと人体が変容している様な画で立体的な感覚を伝えている動画が観てみたい。
 日本での展覧会を期待したいものである。

Schoeni Art Gallery - Xia Xiaowan - YouTube
 油絵からガラスペインティングまで、自作を語っている。

◆関連リンク
夏小万Xia Xiaowan_当代艺术圈_东方视觉
 この中国のサイト、多くの作品が観られるのも良いが、何と作品の売れた価格が掲載されている。これは中国らしくダイレクトw! 2010年の全絵画作品の売り上げは、約1.4億円。
Xia Xiaowan on artnet 公式サイト
Xia Xiaowan - Google イメージ検索
Xia Xiaowan - YouTube
 動画で周辺を周り込んで、この造形を立体的に見せてくれる映像がないか、探してみたが、残念ながら見つからなかった。
Xia Xiaowan (Chinese, 1959) on MutualArt.com
Xia Xiao Wan - Wikipedia, the free encyclopedia
夏小万_百度百科

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013.06.12

■情報 デイヴィッド・リンチの新作 セカンド・アルバム『The Big Dream』


David Lynch - The Big Dream (OFFICIAL ALBUM TRAILER) - YouTube

"The Big Dream will be released on 15 July (UK & Europe) and 16 July (USA & CAN) Pre-order your copy from iTunes: http://smarturl.it/8nyamg and receive I'm Waiting Here by David Lynch and Lykke Li as an instant download! Tracks featured in trailer: 'Wishin' Well' and 'Last Call'
http://www.davidlynch.com"

デヴィット・リンチの新作『The Big Dream』、アルバム・トレーラーが公開 - amass

"デヴィット・リンチ(David Lynch)がミュージシャンとしてリリースする新たなアルバム『The Big Dream』。本作のアルバム・トレーラーが公開。発売は日本で7月10日、欧州で7月15日、米国で7月16日に発売。国内盤のみのボーナストラックもあり。

自らの音楽スタイルを"モダン・ブルース"と称するリンチ、新作について「大半の曲はブルース・ジャムのようなものから始まり、そこから逸脱していく。その結果生まれるのが、ハイブリッドでモダナイズされた陰鬱なブルースなんだ」とコメントしています。

『THE BIG DREAM』は、CD/LP/デジタルのフォーマットでリリースされ、その全てにダウンロード可能なボーナストラックとして、リッキ・リー(Lykke Li)をフィーチャーした「I'm Waiting Here」が追加されます。また重量盤仕様の2枚組LPには、リッキ・リーのトラックを収録した7インチのボーナス盤が封入され、さらにそのB面にはリンチが彫ったエッチングが施されています。"

"『The Big Dream』
01 The Big Dream
02 Star Dream Girl
03 Last Call
04 Cold Wind Blowin
05 The Ballad of Hollis Brown (Bob Dylan cover)
06 Wishin' Well
07 Say It
08 We Rolled Together
09 Sun Can't Be Seen No More
10 I Want You
11 The Line It Curves
12 Are You Sure
13 And Light Shines ( Bonus Track - Japan Exclusive )

+ I’m Waiting Here with Lykke Li ( Download Bonus Track - Worldwide )"

 リンチの単独アルバム、第二弾がリリースされる。
 今回も自身で監督したと言われるトレーラーが公開。映画でリンチの映像を観られなくなった現在、ファンには貴重な映像だ。
 今回も演奏するリンチの映像と、素早く切り替わるカットの連続。前作よりさらにアグレッシブな印象を受けるが、どうなのだろうか。

 日本が世界最速の発売とか(それにしても公式トレーラーで日本の発売日が表示されないのは、何とも寂しい限り。まだ中国発売が告知されていないだけ良いか…(^^;))。

TBD716 - YouTube
 こちらは2013.5/31にリンチのYoutubeチャンネルで先行公開されたテザー映像。まさにノイズ!
::: BEATINK Official Website / Sunday Best / David Lynch - The Big Dream ::: こちらがリンチの音楽活動の情報多いです。

David Lynch & Lykke Li - I'm Waiting Here - YouTube
 冒頭引用したリンチの唄は、少ししか聴けないけれど、こちらのリッキ・リーのトラックはしっかり聴けます。リンチの作る女性ヴォーカル、今回も物憂げで沁みます。
David Lynch & Lykke Li - I'm Waiting Here [Javision] - YouTube
 その別バージョン。音は一緒だけれど、PV映像が別。
・David Lynch - I'm Waiting Here ft. Lykke Li (Official Doll Cover Rmx no Music or On Screen Lyrics) - YouTube さらに別バージョン。こちらは歌も崩してますね。
Lykke Li / リッキ・リー|Warner Music Japan
 「スウェーデンの美麗シンガー、リッキ・リー」とのこと。
Lykke Li - YouTube 彼女の公式Youtube。
Lykke Li - the official website... こちらは公式HP

 それにしても、いつリンチとラナ・デル・レイは響宴してくれるのだろう。このコラボを期待するファンは多いはず(^^;)

◆関連リンク
 Amazonでは、4種類予約受付中。どれを買ったらいいんだ!?(^^;)。
 前回、輸入CDにしたのだけれど、今回は国内盤にしようかなぁ〜。
デヴィッド・リンチ 国内盤CD『The Big Dream [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / ゲートフォールド式紙ジャケ仕様 / 12ページ・ブックレット / DLコード付カード封入]』
デヴィッド・リンチ 輸入盤CD『The Big Dream [ゲートフォールド式紙ジャケ仕様 / 12ページ・ブックレット / DLコード付カード封入]』
デヴィッド・リンチ 輸入アナログ盤LP『The Big Dream [ゲートフォールド式ジャケット / ヘヴィーウェイト・ヴァイナル / DLコード付 / 2LP + 7インチ]』
 「リッキ・リーのトラックを収録した7インチのボーナス盤、B面にはリンチのエッチング」というのはこれのことみたい。他の2倍以上の値段。LP再生環境はあるけれど、、、ファンとしては悩むところですw。
デヴィッド・リンチ 輸入盤CD『Big Dream [Import]』
 これが最安なのだけれど、ちょっと不安。自己責任でどうぞw。

リンチの音楽 当Blog関連記事 Google 検索

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013.06.10

■感想 古川日出男『南無ロックンロール二十一部経』

21_3

古川日出男 新作『南無ロックンロール二十一部経』(Amazon)
河出書房新社 公式HP

" あのカルト教団事件と3・11後の世界との断絶。失われたものは何か? 浄土はあるか? 稀代の物語作家が破格のスケールで現代に問う、狂気の聖典。構想執筆10年。デビュー15周年記念作品。"

 2007年の『ロックンロール七部作』(当Blog感想)に続き刊行された新著、古川日出男『南無ロックンロール二十一部経』を読了。

 「輪廻転生」に「ロックンロール」とルビを打ち、自著『ロックンロール七部作』をリーインカーネーション。幻視の強度が深まりパラレルワールドとして語られた日本の崩壊前と後の描写、地中へ陥没した東京タワーとおよそ770匹の鬼と馬頭と牛人の被曝地獄図…。

 迫力の世界は、古川物語文学の新たな境地を切り開いたと言える力強さで、まさにゴツゴツとした岩隗のように読者の頭上にガツンと落っこちてきます。ファン必読。SFや奇想文学ファンにも是非読んで欲しい一冊です。

21

 たとえば、この右に引用したページ、ロックンロールと20世紀の若者と動物の奇想!このページなんて、ラファティの短篇だよって言っても通じそうなんですが…w。
 もちろん全体の読後感はラファティとは明らかに別もの。ただし想像力の源流でその水脈はつながり、奇想の血脈がラファティファンの血も騒がせることは間違いないでしょう(^^;)。

 ここまでで感想は終えても良いと思うのだけれど、ひとつだけこれは記しておいた方が良いだろう。

ネタバレ注意。まったくの白紙で読みたい方は、以下、飛ばして下さい。
 ラストは賛否両論、大きく分かれるのではないだろうか。
 しかしここで記憶に留めておきたいのは、古川が敢えて自身と同じ名前の作家を登場させて、あの宗教との関わりを描き、まさに一人称のスタンスで潜入し一体化し、そして浄土への道を本書で歩んでしまっているところ。
 
 村上春樹が『アンダーグラウンド』『約束された場所で―underground 2』で被害者と加害者両方について、インタビューでルポルタージュしたのに対して、古川日出男が本書で、自身の土俵であるフィクションの場で、それを一人称で語ることの決意は大きいと思う。しかもあの教祖の言説を肯定的な筆致で描いた後に…。

 村上が自身の砦であるフィクションの中に敢えて直接は取り込まなかったものを、まさにその砦の壁を突き崩して、自らが入信し行為する現実を描いてしまった古川の覚悟に想いをはせる…。
 どれほどの重さをこの作家は引き受けてしまったのであろうか。そしてこの後の作品は…そんな凄絶なイメージに読後感じてしまったことはここに記しておきたい。これからも古川作品に僕は向き合っていきたいと思う。

◆各書について
 本書を構成する"第一の書"から"第七の書"について、簡単に以下。
 各書は、<コーマW>と名付けられた眠る少女を見つめる「私」の短い記述にはじまり、<浄土前夜>と名付けられた日本の崩壊を描くパート、そして『ロックンロール七部作』に通じる世界七大陸+αを描く<二十世紀>という三つのパートで構成されている。
 この<二十世紀>パートが、『ロックンロール七部作』の各話に相当し、物語は各々、リビルドされている。
 このリビルド(小説のリーインカーネーション?)の中身について、二つの本を詳細に分析することが必要だと思うが、今回は時間がなく、その比較は残念ながらできません。(興味のある方は、本Blog以前のレビューを読んで頂きたいですが、実は比較ができるほど詳細に書かれていない(^^;;))

●第一の書
 リトル・リチャード 「トゥッティ・フルッティ」"Tutti Frutti"(Youtube)を陽気に歌いながら、飢えた少女のために自ら焼き鳥になる雄鶏の「おまえ」。
 <浄土前夜>パートは、リーインカーネーションで動物に生まれ変わり、自分が何者か気づかない状態から、自分が動物であると気づく様を、二人称で描く興味深い描写。
 私小説がその名付けの通り、近代の「意識」を描写していたのに対して、二人称で意識のないはずの動物の意識らしきものを描く試み。
 古川の小説は、動物を描いたものが多くあるが、この意識外の存在を描く試みは、ここでも近代の小説を超えていく迫力を獲得していると思うが、どうだろうか。

 続く<二十世紀>パートは、南極大陸。
 シカゴのロックンロールスタジオに生まれた「小さな太陽」による、南極基地の虐殺と聴力の喪失。描かれた青年のやり場のない怒りが鮮烈。

●第二の書
 折れた東京タワーと鬼を狩る虎とヘリの戦闘部隊(P123)。
 流れるのは、チャック・ベリー「ジョニー・B・グッド」"JOHNNY B GOODE"(Youtube)。
 いきなりのSF展開に実は頭が/体がついていかない。
 この展開の違和感が第七の書へと…。

 <二十世紀>パートは、ユーラシア大陸。大蒜料理にまつわる食べる秘史列車"ロシア号"の様々な時代の、人々の連環。禁止されていたソ連で、レコードの材料がなく、レントゲン写真に刻まれたロックンロール (P128)をBGMに大陸縦断鉄道は走る。

●第三の書
 "穢土"と呼び変えられる"江戸"。
 <浄土前夜>は狐。KFCとカーネルより背の低い人形。鶏となって焼かれる夢。
 老人である塾長との出会い。謎のブックマンの登場。ヘリによる狐の襲撃(P194)。BGMはエルビス・プレスリー「監獄ロック」"Jailhouse Rock"

 そして南米大陸。"武闘派の皇子"は、父の遺言で遺産獲得の為に決闘の勝利を強いられた男。ブラジルでのカポエィラの修業と勝利(?)。
 BGMはチャック・ベリー「ロール・オーバー・ベートーヴェン」"Roll Over Beethoven"

●第四の書
 馬頭人身の二人称。しゃべれるが鏡には馬が写る。そして転生し再び出会う少女。BGMはエルビス・プレスリー「ハウンドドッグ」"Hound Dog"

 そしてオーストラリア大陸。"ディンゴ"は、実の母から疎まれ、義父のトラックが第二の子宮。怠惰な実母と義父の不仲により現実逃避としてプログラミングにのめり込む。
 義父の死。レム睡眠がなくなり現れる幻視。蛸の腕とカンガルーの尻尾。
 発明された脳波によりチューニングするラジオ受信機を動物に取り付ける。
 アカカンガルー、エミュー、群れる野犬ディンゴ。
 『ロックンロール七部作』でも最も印象的だったオーストラリアの彷徨は今回も僕の好みでしたw。

●第五の書
 10歳に満たない少女の地獄日記と山羊。紙を食む。
 山羊のヘッドフォーンで聴くチャック・ベリー「ロール・オーバー・ベートーヴェン」"Roll Over Beethoven"。描かれる新型爆弾の爆発と少女の被曝。

 北米大陸。祖父が倒した巨大鰐の腹の中から出たスティールを弦に手づくりしたギターを持つ1セント。ファンに殺されギターは次の若者2セントに…。そしていつか1ドル1セントへと。ヴードゥーのマジックリアリズム世界が蒸し暑い。

●第六の書
 被曝した東京。塾長。地下鉄のひすい。770匹の鬼の包囲とブックマン。

 アフリカ大陸。ニジェール川のフィールドワークをする文化人類学者"牛の女"。
 アフリカに落ちた飛行機からのロックンロールと民族音楽の融合(ここは『ロックンロール七部作』の「あなたの心臓、むしゃむしゃむしゃ」を持ってアフリカ大陸へ不時着したボーカル「曇天」の物語の次の話)。
 生まれ変わり、河川の「砂のロックンロール」。
 禁忌に触れ惨殺された女がニジェール川を流されカセットテープを空腹ヤシに拾われ、それが歌い継がれていく。この歌が実際に聴いてみたくて堪らない。映画化の際は是非実現をw。

●第七の書
 昏睡するW。実行犯。当局に見張られている。身体を六大陸に見たてている。

 ここは<浄土前夜>パートでインド亜大陸が描かれる。
 770匹の鬼に包囲されたブックマンの輪廻転生(ロックンロール)の物語。
 エルビス・プレスリーのジャンプスーツを着たインド映画のヒーロー23人。ザ・プロデューサーとザ・ディレクターとザ・ライターによる七本の映画から再編集された構成される反政府映画『インドびより』とその裏面『ダンスびより』。
 奥地に立てられた5mのエルビスの神像と白いジャンプスーツ。
 映像的にもっとも鮮烈なイメージを持った一篇。

 昇る太陽であり"日出男"であることが明かされたブックマン。
 彼が読むのはエイモス・チュツオーラのマジックリアリズム文学。
 初めて書いた短篇「機械の夢」(P530)はSFそのもの。
 そして…物語の大団円は、<浄土前夜>につながる1998年か1999年のもうひとつの東京。これは我々20世紀の日本人が一度は体験したデザスターである。
 今、我々はその後の21世紀を生きる。

 古川が21世紀ロックンロールを語ることはあるのだろうか。

◆関連リンク
古川日出男『ロックンロール七部作』
図書館で本を借りよう!~小説・物語~「ロックンロール七部作」古川日出男
 前作の粗筋が詳細にまとめられています。
Kawade Web Magazine|古川日出男 | ロックンロール二十一部作 浄土前夜
 ベースとなったと思われる雑誌「文藝」連載の『ロックンロール二十一部作』の一部がここで読めます。
「サマーライト 」ANIMA with 益子樹(ROVO)+古川日出男@SHIBUYA O-nest 2012/10/13 - YouTube
 古川日出男、朗読以上。ついに歌っていますw。シャウト!
古川日出男、大長編『南無ロックンロール二十一部経』を語る (1/2) - ITmedia eBook USER

"今“ロック”っていうと一つの音楽ジャンルになってしまったけど、本来“ロックンロール”は世間が認める音楽に対してアンチを唱えるもの、強い力にあらがうものであって、単なるジャンルではなかった。
 自分の小説にしても権威的なことをやろうとしているわけじゃなくて、読んだ人が自分の感覚をバージョンアップして、目の前の日常に向き合えればいいと思っている。そういうところでロックンロールは自分の根源にある表現力に近いものだと思う"

古川日出男、大長編『南無ロックンロール二十一部経』を語る (2/2) - ITmedia eBook USER

"「過去は変えられないとか、歴史は学校で習った通りだとみんな思っているけど、過去だってエディットし直せば、隠ぺいされていた歴史やなかったことにされている過去が見えてくる。この作品の中の3つの物語の1つに『20世紀』というパートがあって、ほとんど史実であるにもかかわらずフィクションのようなお話になった。このように過去や歴史が改編可能なんだから、未来は無限に選択可能なんだということを伝えたかった」

「小説に対して、作家は神 様だと多くの人は思っている。でも、おそらくそれは間違いで、僕を通して作品が生まれるけど、すべてを自分がコントロールしているわけではないし、自分がこれまでに聴いた音楽や読んだ本や、見た映像が自分を通過ごして出てきただけ。自分が小説を作ったわけじゃなくて、小説が自分を通過ごして出てきた、自分が小説に利用されているという感覚がある。それを見せるためには作家自身が作品に巻き込まれ、蹂躙されてみることが必要だと思った」"

エイモス・チュツオーラ - Wikipedia

"ナイジェリアの小説家。『やし酒飲み』などヨルバ人の伝承に基づいた、アフリカ的マジックリアリズムと言われる著作で知られる。"

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2013.06.07

■情報 筒井康隆『聖痕』

Photo_4

筒井 康隆『聖痕』

" あまりの美貌故に性器を切り取られた少年は、みなの煩悩の救い主となるのか?
 一九七三年、五歳の葉月貴夫は性器を切り取られた。しかし尚も美しく健やかに成長した彼は、周囲の人びとのさまざまな欲望を惹き起こしていく――。
 古今の日本語の贅を縦横に駆使し、小説言語の枠を大幅に広げながら、文学史上最も美しい主人公の数奇な人生を追う。朝日新聞連載中から騒然たる話題を振りまいた問題作刊行。"

『聖痕』出版記念講演会|朝日カルチャーセンター中之島教室|講座詳細

"美貌ゆえに性器を切り取られた少年の人生を綴る、奇想天外な物語は、「色色(いろいろ)しい」(=女性に惹(ひ)かれやすい)、「含(ほお)まれどなよび か」(=蕾(つぼみ)のままだがもの柔らかで優しい)といった古語や「ありきぬの(宝)」などの枕詞で彩られています。「使われなくなった古い言葉に触発 された」と語る筒井さん…"

笑犬楼大通り

"偽文士日碌にて 「聖痕」及び「枕詞逆引き辞典」に関する話題が 登場した回の一覧を作成してみました。 来たる 6/15 の朝日カルチャーセンター「『聖痕』出版記念講演会」に参加される方も、 予習に(?)どうぞ!"

776575548

 朝日新聞連載の筒井の最新作が出版された。
 話題になっているのは知っていたが、このような苛烈な(?)内容の小説だったとは知りませんでした。

 右は中日新聞に掲載された新聞広告ですが、この紹介文ならば、広告の写真は、文豪5歳当時の"美貌"の少年の写真を使うべきだったのでは? (^^;)。
 少なくてもインパクト大と思うのだけれど、、、。

朝日新聞デジタル:文体の実験、伴走に感謝 筒井康隆さん「聖痕」を終えて - カルチャー

"去勢された人間としての中国の宦官(かんがん)に見られた権力欲、即(すなわ)ちアドラーの謂(い)う「権力への意志」などは現代にそぐわないから、ある種の反社会性を持たせたままでひたすら美味を志向させたのである。"

"「毎朝読んでいる」と言ってくれた大江健三郎川上弘美ほか何人かの作家の方がたに感謝したい。この人たちのことばがどれほど力強い励みになったことか計り知れないものがある。また、毎回の作品内容に相応しい絵を制作してくれた息子・筒井伸輔にもその労を犒(ねぎら)いたい。"

 連載時は、何と御子息の画家である伸輔氏が挿絵を担当されてたのですね。
 検索すると、ミヅマアートギャラリーのHPに作品が紹介されています。

MIZUMA ART GALLERY : 筒井伸輔 / TSUTSUI Shinsuke

Photo

 作品はこの引用画像のように幻想的な絵を抽象的手法で描かれたもので、実物を観てみたくなる繊細で素晴らしい雰囲気。
 下記から検索して拝見できる『聖痕』新聞連載時の挿絵も同じ作風がにじみ出てきています。

筒井伸輔 聖痕 - Google 画像検索

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013.06.05

■情報 ジェームズ・キャメロンの深海潜水艇「ディープシー・チャレンジャー:Deep Sea Charenger」


National Geographic:-James Camron Voyage To The Bottom Of The Earth - YouTube
深海への挑戦 | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト

"ジェームズ・キャメロンは、2012年3月、マリアナ海溝チャレンジャー海淵への潜航を成功させた。人類がその世界最深の海底に到達するのは史上2度目で、かつ単独での潜航は世界初の快挙だ。
 未来的なデザインの有人潜水艇「ディープシー・チャレンジャー」の設計から携わり、7年越しの夢をかなえたキャメロン自身が、『ナショナル ジオグラフィック』誌に手記を寄せた。"

これが潜水艇「ディープシー・チャレンジャー」だ!
  ナショナル ジオグラフィック公式サイト

"徹底解説!「ディープシー・チャレンジャー」DEEPSEA CHALLENGER
共同設計者のジェームズ・キャメロンとロン・アラムがイメージしたのは、ロケットのような流線形の潜水艇。降下と上昇のスピードを上げ、深海での調査時間を増やすのが狙いだ"

 2012.3月に自身が設計にたずさわった潜水艇でチャレンジャー海淵への潜航を成功させたジェームス・キャメロン。
 そのキャメロンデザインの潜水艇「ディープシー・チャレンジャー」が格好良すぎる(^^)! このような縦型流線型の深海潜水艇デザインは観たこともなかった。
 これはきっと『アバター』の大ヒットにより資金を得たプロジェクトではないかと思うが、SFによって、空想がまた一つ現実化したと言えそうだ。

 ジェームス・キャメロンの深海への挑戦と、潜水艇「ディープシー・チャレンジャー」の映像は、上のリンク先でたっぷり観られます。

Deep_sea_charenger2horz

 上の引用画は、ディープシーチャレンジャー号の構造。
 確かに今までの潜水艇と異なり、海へ潜っていく方向に流線型。まさに理にかなったデザインであることがわかる。
 潜る前、この機体は海上に横たえられて着水。その後、重量バランスで図の下方部分が先に海に沈んでいく。
 下方に付けられたキャメロン専用に作られたという、独り乗りの耐水殻は、海上で人が上向き、海底で水平になるような角度で取り付けられているようだ。

これが潜水艇「ディープシー・チャレンジャー」だ!
  ナショナル ジオグラフィック公式サイト

"シンタクティックフォーム 潜水艇のビーム(船体の主要部分)はロン・アラムが開発した特殊な浮力材でできている。中が空洞の小さなガラス球をエポキシ樹脂で固めたもので、マリアナ海溝の超高水圧にも耐えられる。降下中、長さ7メートルのビームは5センチほど縮まる。"

 さらに、高水圧に耐える潜水艇の躯体は、シンタクティックフォームと呼ばれる新素材の構造材で組み立てられているとか。
 このあたりの先進性も、まるで海洋SFを読んでいるかの様な興奮を誘います。

 ナショナルジオグラフィックとキャメロンの共同プロジェクトらしいこのプロジェクト、海洋ファン、キャメロンファン必見の素晴らしいものです。
 詳細記事は、下記リンクの「ナショナルジオグラフィック日本語版13年6月号」に掲載されているので、是非。

◆関連リンク
『NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2013年 06月号』 "世界で最も深い海への旅。その一部始終を映画監督ジェームズ・キャメロンの手記でお届けする"
Foto James Cameron abissi da record verso la Fossa delle Marianne - 3 di 10 - National Geographic
 こちらに写真多数。
深海潜水艇「ディープシー・チャレンジャー」|ジェームズ・キャメロン氏、マリアナ海溝最深部へ単独到達: メモノメモ
 12年3月の記録達成時の様子を紹介されたBlog記事。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013.06.03

■感想 黒沢清監督『リアル~完全なる首長竜の日~』


映画『リアル~完全なる首長竜の日~』

 黒沢清監督、『トウキョウソナタ』に続く5年ぶりの劇場映画新作『リアル〜完全なる首長竜の日〜』を小牧コロナで観た。

 前半、抑えたトーンで描かれる異様な世界。黒沢清独特の日常の光を使った不安の演出が冴え渡る。クライマックスは、少し近いテーマを描いたノーラン『インセプション』を超える崩壊描写も…(予算はかかってないけどw)。

 今までの黒沢作品、特に僕が印象的に思った『贖罪』と同様、光の当て方で独特の異質な空気感を作り出す映像が無意識の不安をかき立てる。

 そしてネタバレ出来ない中盤からの展開とクライマックス。
 僕は映像的に海岸で走る綾瀬はるかの映像をコマ送りしたい衝動に駆られましたw。あれは何だったのだろう。静の黒沢映画が動に変わる瞬間に、凄く印象的な綾瀬はるかが走り出す映像がある。ハイビジョンのコマ落ちしたような…。
 あのシーンはじっくりもう一度観てみたい。

 予告篇を観ながら、フィロソフィカル・ゾンビの描写とか、自動車の中の会話だけなのに不穏なシーンとか、黒沢清、真骨頂な映像を反芻(^^;)。
 黒沢映画として大傑作ではないが、黒沢テイストを維持しつつ万人に受け入れられるスリリングなエンタティンメント映画になっていると思う。
 単純に観終わった後の感想はそうしたものだったのだけれど、、、その感想の深層については、この後、詳細を記してみます(^^;)。ネタバレは極力しないで書きますので、ご安心をw。

◆「人の心の中の撮影」
 
映画 公式HP ABOUT THE MOVIE STAFF紹介 黒沢監督の言葉

" 人の心の中をまるで旅でもするかのように探索してまわること、それは何とも魅惑的な行為だが、同時に耐えがたい恐怖の体験かもしれない。何故なら、それは心の奥底に潜む絶対に観てはいけないものを見てしまうことでもあるからだ。ましてや、探索の先が愛する人の心の中だったとしたら。
 私は今回初めてこのような物語を扱う。その理由は、不思議な原作に出会ったことと、映画で人の心の中を撮影することはできないという原則に挑戦してみたかったからである。"

 小説と違って映画というのは、人の心を描くことが直接的にはやりにくいメディアである。小説は心の中を言葉で(一人称だろうが三人称だろうが)直接描写することができるが、映画では独白のナレーションという手段はあるが、それはやはり言語を通じた描写であり、映画メディアへの小説の導入ということに過ぎない。
 映画で心を表現するというのは、このように考えると、まさに大変ハードルの高い課題なのである。

 よくメディアの比較として、小説は読者の空想に委ねる部分が多いが、映画はダイレクトに見せてしまうから想像力を限定する、という言説があるのだけれど、実はこと人の心を対象にした時には、それは逆転し、小説がダイレクト、映画は観客の想像力に多くを委ねるメディアなのである。

 意識が言葉により成り立っていることから、このような事象となっていると考えるがどうだろうか。
 人の心を意識と捉えると、それは通常、言葉によって構成されている。
 まさに小説はそれを使って、意識をダイレクトにトレースするメディアであり、映画は映像や音や言葉を総合的に用いて、そこにいる登場人物の意識を観客に想像させる様なメディアなのである。

◆映画メディアの属性と、小説における無意識描写の限界

 予告篇、観直してたら映像の端々に繊細な演出が潜んでいるのを再発見。やはり凄いなぁ〜。黒沢清は、映像の光と影と色、および音によって、人や(霊のw)意識を映画の中に映し出す。それは言葉で直接語られることは少なく、観客の想像力に多くを委ねている。しかし確実に黒沢リテラシーを身につけた観客にはそれが明確に伝わってくる。

 繰り返しになるけれど、小説の言葉は人の意識から生まれたものである。それに対して映画においては、言葉はその構成要素のごく一部である。
 表情であったり仕草といった言葉ではない、人の心の無意識を含んだ描写は、映画の方がそれを伝えることにおいては、小説よりも優れたメディアなのではないかと思う。
 文学のリテラシーよりも、実は映画を読み解くリテラシーの方が、人の無意識領域まで対象とすると高度ではないかと思ったりするのである。
 そして黒沢映画は、隅々の光と音にそれが籠められている為に、独特の雰囲気を持ち、それは簡単には言葉で表現しきれない、映画だけの独特のものが立ち現れてくるのである。

 そんな黒沢監督が挑んだ「人の心の中の撮影」。単純にとらえると上に引用した監督の言葉は、物理的に心の中を映像で撮るのは難しい、というように読めるのだけれど、黒沢ファンとしてはさらにその撮れないはずの心の映像化を、数々の手法で描いてきた黒沢が、本当の心の中にダイブして、今までの先をゆく、どんな凄い映像を見せてくれるのかと、強い斬新な表現へのチャレンジを期待してしまう言葉なのである(^^;)。

◆フィロソフィカル・ゾンビ
 哲学的ゾンビの描写。意識の中の、仮想の存在としての他人を映像化しようとした時、黒沢がとった方法は…。
 僕も他人を意識の中で駆動する時、心の中は、あんな映像かもしれないw。
 所詮、限られた能力の個人の脳の中で別の人間そのものをシミュレートすることは不完全定理的に(かなw?)不可能。

  情報量が落ちた状態で、脳の仮想の中で全人的なものでなくそのごく一部だけの情報として動く訳だから、あの無表情で画素wの劣化したような状態が、まさに 脳内映像に近いのかもしれない(^^;)。活き活きとしたものとして感じているとしたら、それは認識する側の誤解か、他人に対する放漫でしかないわけであ るw。

◆無意識の海を泳ぐ存在
 ネタバレになるからあまり書けないけれども、途中でてくる主人公が描いている漫画の実体化した様な映像とか、さらにクライマックスで主人公二人が心の中で遭遇するあの無意識が実体化した存在は、映画全体および二人の人生全体に横たわる巨大な心の堆積物の表象として、まさに心の中の映像である。

 単なるエンタティンメントのメインビジュアルと観ることも出来るが、その存在を無意識の堆積物の表象と捉えると、あのアクションも凄い深みを伴ってくると思う。ここが「人の心の中の撮影」の真骨頂なのであろう。

Photo_5

 右の引用画像の海。これは人の心の中の映像で、まさにダイレクトに無意識の表象化である(単純すぎてすみませんw。ただそれを映像で見せることは言葉で書くのと大きく違うと思うのだけれど、、、)。

 この海底を泳ぎゆく存在の映像が、とても心を打つのは、映画のテーマそのものだからなのだろう。
 単なるエンターテインメントの映像だけのように見えるクライマックスもこんな風に考えると、奥深いものに感じられる。

 その表面に貼られたテクスチャーとかCGに付けられた動きに注目して、そこに二人の無意識を想像すると深いクライマックスと感じられるのかもしれない。これは二度目に観る時の宿題として記憶しておきたい。

◆まとめ
 黒沢映画として大傑作ではないが、黒沢テイストを維持しつつ万人に受け入れられるスリリングなエンタティンメント映画になっていた。と冒頭で書いた最初の感想は、映画のリテラシーをともなう黒沢映画の従来の描写に通じる前半と、無意識を直接実体化して描いたある意味、映画のメディアとしては身もふたもない描写とも思えてしまう、一見エンタティンメントの属性を露呈しているだけに見えるアレを観て感じたことである。
 上のように考えてきた時、再見が必要だと思うのは、僕だけだろうか。
 既に今までのリアル映画に、無意識までを映し込んでいた黒沢監督が、もし覗き観れば無意識が実体化している映像がダイレクトに観れてしまうだろう心の中をどう描いたか。

 この映画はそんな切り口で黒沢映像解析が可能な、黒澤清が新しい「リアル」の領域へ踏み出した映画なのかもしれない(^^;)。

 それにしても2000年前後には、毎年の様に新作を制作していた黒沢監督のここへきての5年ぶりの新作というのは、いったいどういうことだろう。
 この映画がヒットして、また精力的に毎年新作が出来るのを期待したい。

◆関連リンク
Mr.Children「REM(Short Ver.)」Music Video - YouTube
 主題歌PV Mr.Children「REM」の映像もいいですね(これは丹修一監督とか)。
潜入!映画「リアル~完全なる首長竜の日~」|WOWOWオンライン.

"映画『リアル~』の見どころを、主演の佐藤健、綾瀬はるかへのインタビューやメイキング映像などを織り交ぜて紹介する。"

・原作 完全なる首長竜の日 - Wikipedia
 ここを読むと原作は大胆に映画でアレンジされているです。比較して読んでみるのも黒沢映画を読み解くヒントにw。
『黒沢清×椎名誠の摩訶不思議世界 もだえ苦しむ活字中毒者 地獄の味噌蔵/よろこびの渦巻』
 僕が観た小牧コロナ横のHARD OFF、ジャンクDVDコーナーで偶然、黒沢監督『地獄の味噌蔵』を100円(^^)でゲット! Amazonで4〜8千円、ヤフオクでは1000円くらいですね(^^;)
 まだ7〜8枚あったのでファンは『リアル』観賞後、是非入手をw。「ビッグバン塩釜店」という宮城の本屋だかレンタル屋だかのシールが貼ってあります。ジャンクコーナだったので黒沢作品が可哀想(^^;)…。
・映画「リアル~完全なる首長竜の日~」スペシャル | TBS CS

"6/1(土)深夜0:00~深夜0:30
6/2(日)深夜0:30~深夜1:00
6/5(水)深夜0:00~深夜0:30 ほか
第9回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した乾緑郎の「完全なる首長竜の日」を、本作が初共演となる佐藤健&綾瀬はるか主演で映画化!番組では、2013年6月1日公開予定の映画『リアル~完全なる首長竜の日~』の魅力・見どころをたっぷり紹介する。"

 こちらは今週のスカパー無料放送で観られますw。
Twitter / shin_bungeiza【新文芸坐】

"【新文芸坐・オールナイト】速報!7/27・8/3は監督デビュー30周年を迎えた黒沢清監督特集を予定! 黒沢清監督自選による今伝えたい8本を豪華トークショーとともに! 詳細は近日発表!"

乾 緑郎『完全なる首長竜の日 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)』

" 選考委員が即決した『このミス』大賞受賞作! テレビ・雑誌各誌で話題、その筆力を絶賛された大型新人のデビュー作、待望の文庫化です。
 少女漫画家の和淳美は、植物状態の人間と対話できる「SCイン ターフェース」を通じて、意識不明の弟と対話を続けるが、淳美に自殺の原因を話さない。ある日、謎の女性が弟に接触したことから、少しずつ現実が歪みはじ める。映画「インセプション」を超える面白さと絶賛された、謎と仕掛けに満ちた物語"

乾 緑郎、つかさき 有 漫画『完全なる首長竜の日』

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2013年5月 | トップページ | 2013年7月 »