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2013年3月3日 - 2013年3月9日

2013.03.08

■感想 ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』: L'ECUME DES JOURS

Lecumedesjours

 当Blog記事で述べたミシェル・ゴンドリー監督『日々の泡 : L'ECUME DES JOURS』の原作、ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』を読んだ。

 何とも不思議な味わいの小説。
 少女漫画の様に何とも楽しく物悲しい物語。これは傑作ですね。グッときます。

 パイナップルの歯磨き粉に引き寄せられ洗面の蛇口から現れるウナギとか、演奏によってカクテルを生成する"不在のピアノ"、土から生えてくる銃を作るアルバイト、ジャン・ポール・サルトルを模した哲学者ジャン・ソオル・パルトル「嘔吐」といったガジェットやエピソード。

 アンニュイでワンダーな、若者6人を描く物語は、裕福で能天気な主人公のデラシネな青春に始まり、奇妙な睡蓮の病を転機に180度暗転。

 睡蓮を中軸に据えた後は、前半がポップな感じだっただけに、深い感慨を呼ぶ小説でした。

Lecumedesjours_affev13

 ボリス・ヴィアンの傑作と、ゴンドリーとの異種化学反応が凄く楽しみ…。
 ゴンドリーらしいキッチュな映像と不思議な物語の融合に期待。

 あと僕が読んだのは、ハヤカワ文庫版の伊東守男訳。
 訳出されたのが、1979年と30年以上前。前半の奇妙さ、不思議な印象に貢献していたのは、訳文の現代と異なる古い文体も影響している。
 一例を挙げると、なんとフランスの警察の警部(?)を「奉行」と訳している! 奉行ですよ、奉行(^^;)。さすがに1979年でも圧倒的に感覚が古いと思う。それとももしかすると、原作もわざとそれに相当する古いフランス語を使っているのだろうか。

 …ゴンドリーの映画に合わせて、ここは村上春樹訳とか出版されると良いのに。村山文体で是非読んでみたい小説でもある。

 冒頭の引用画は、原題"L'ECUME DES JOURS"で検索した本の表紙画等。
 とてもバリエーションがあって、いろんな受取り方が出来る本であることがここからもわかると思う。(下にある日本版の表紙は、硬すぎる印象ですね)

◆関連リンク
L'ECUME DES JOURS / bande-annonce - YouTube
曽根 元吉訳『日々の泡』(新潮文庫)
伊東 守男訳『うたかたの日々』(ハヤカワepi文庫)
ボリス・ヴィアン『日々の泡』 - Wikipedia
Mood Indigo (film) - Wikipedia, the free encyclopedia
L'Écume des jours (film, 1968) - Wikipédia
  Charles Belmont監督による1968年の映画化作品があるのですね。以下がその映像。
 ・Marie-France Pisier & Sami Frey-L'écume des jours - YouTube
 ・Marie-France Pisier & Jacques Perrin-L'écume des jours - YouTube

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2013.03.06

■感想 いとうせいこう『想像ラジオ』

いとうせいこう『想像ラジオ』

"耳を澄ませば、彼らの声が聞こえるはず----

ヒロシマ、ナガサキ、トウキョウ、コウベ、トウホク……
生者と死者の新たな関係を描いた世界文学の誕生"

いとうせいこう、16年ぶり長編小説は震災時のTwitterをもとにした『想像ラジオ』

"東日本大震災時に自身が始めたTwitterアカウント「@seikoitoDJ」をもとにした作品。「想像」という電波を使って「あなたの想像力の中」だけで聞こえるラジオ放送「想像ラジオ」…"

 13.3/2発売のいとうせいこうの久々の長篇新作。
 僕は、いとうを特集した『文藝 2013年 02月号』で読んだので、単行本での改稿がどの程度なされているかは未確認。

 物語は静かなトーンで語られている。かつてのいとうの『ノーライフキング』や『ワールドエンドガーデン』『解体屋外伝』を熱中して読んだファンには、当時のエッジの立った文体とは違い、落ち着いた小説の趣き。
 そしてそのトーンが胸にしみてくる読後感。
 まさに「想像ラジオ」を聴くように、耳を澄ましていとうせいこうが描く新しい小説を体感しよう。

 『文藝 2013年 02月号』には、小説が書けなくなっていた理由と、今回の作品への想いが語られている。本書を手に取った後、インタビューを読むととても興味深い。

◆関連リンク
『文藝 2013年 02月号』
DJせいこう(@seikoitoDJ) - Twilog

"いとうせいこうです。 仙台のフォロワーから、またいつか見たいなあと言ってもらった途端、この文字DJを思いつき、とにかく始めました。 本体の@seikoitoもよろしくw。"

TBS RADIO 954 kHz │ 菊地成孔の粋な夜電波 - 第24回(2011年10月2日)

"反響の大きかった、ラストのブロック。番組スタート時の思い出話〜アントニオ・カルロス・ジョビン『三月の水』曲紹介の流れです"

 いとうせいこう『想像ラジオ』印象的な曲はアントニオ・カルロス・ジョビン『三月の水』。これと復興を重ねた菊地成孔の粋な夜電波との共鳴。
菊地成孔の粋な夜電波が面白い
 リンク先の11.10.02分 放送の38分目〜に、そのラジオプログラムが掲載されている。曲と『三月の水』の詩の日本語訳。
 菊地がジョビンの復興時点の生涯を語る言葉が響く。震災直後の11.4/17にスタートした「粋な夜電波」で語られるAntonio Carlos Jobim"Two Kites : 凧"
 "絶望と混乱と疲労の淵にあって今まさに復興に着手したばかりという瞬間"。
 AMラジオな冒頭の幽界からの声のような番組名のコールから始まる音は誰かの「想像」なのかもしれない。
3月の水〜菊地成孔の粋な夜電波10月2日分ラスト書き起こし

"アントニオ=カルロス=ジョビンは、まずこの曲の歌詞をインディオ文化に従ったラテンルーツのポルトガル語と、ネイティブ・アメリカン文化に従ったアングロサクソンルーツの英語と、ふたつの言葉で書きました。

有名な大衆音楽の評論家であり、史学の研究者でもあったレナード=フェザーは、この英語詞の方をむしろ優れていると、英語圏以外の国の人間が書いた英語の歌詞の中で歴史上最も優れた10曲に入ると言いました。

ワタシ、ジャズ屋ですからレナード=フェザーを尊敬してますが、これはフェザーの間違いです。
【10曲の中に入る】のではなく【1曲の中に入る】と思います。"

・三月の水
 "Elis Regina & Tom Jobim- Waters of March - English subtitles"
Tom Jobim『Matita Pere』

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2013.03.04

■予告篇 オムニバスアニメーション『SHORT PEACE』大友克洋,森田修平,安藤裕章,カトキハジメ監督 「武器よさらば」について

SHORT PEACE特報 - YouTube
SHORT PEACE || A KATSUHIRO OTOMO FILM(公式HP)

"2013年 7月20日より全国公開
『火要鎮』(ひのようじん)
脚本 監督:大友克洋/キャラクターデザイン ビジュアルコンセプト:小原秀一/音楽:久保田麻琴
『九十九』(つくも)
脚本 監督:森田修平/ストーリー原案 コンセプトデザイン:岸 啓介『GAMBO』
監督:安藤裕章/原案脚本 クリエイティブディレクター:石井克人/キャラクターデザイン原案:貞本義行
『武器よさらば』
原作:大友克洋/脚本 監督:カトキハジメ/キャラクターデザイン:田中達之
『オープニングアニメーション』森本晃司"

 大友克洋の9年ぶりのアニメ作品。『スチームボーイ』からもう9年も経った!
 下記の言葉からすると、この9年、大友監督でも企画がなかなか通らずに苦労された様子。

『火要鎮』大賞受賞 第16回文化庁メディア芸術祭

"大友克洋 受賞者コメント
素晴らしい賞をありがとうございます。やりたい企画もなかなか通らず、いろいろと厳しいことの 多い昨今でしたが、前向きに先を目指しています。若い人たちの作品も含め、革新的なオリジナルのアニメーション作品が世に出せる業界の環境がもっと整って くれるとよいと思っています。"

 7月公開というとまだ先だけれど、傑作と評判の『火要鎮』、絵の緻密さは予告篇からもよくわかり、期待の一本。
 そして僕がもう一本、大きく期待するのが、雑誌掲載時に熱中して見ていた大友克洋の短篇「武器よさらば」の映像化、あの作品がカトキハジメ監督によりアニメになる!

Farewell_to_weapon

 予告篇で観るとあの漫画が完全映像化される感じ。短篇漫画はかなりシンプルな話だったけれど、映画ではどんなところが膨らまされているのか期待。
 大友のデザインよりも、丸みを減らし、鋭角でディテイルを詰めた、田中達之氏のメカも楽しみである。

 個人的な想い出話になるけれど、この漫画は、雑誌掲載時に強化服を模写してたので懐かしいw。
 ちなみに僕が描いた絵は以下。
 当時、大友漫画に魅せられて、やっていたSF同人誌に三面図として見開きで掲載したもの。構造の説明の用語は、武器関係に強かった某K君のアイディアだったと思う。大友原作では、このような設定は書かれていないので、あくまでも想像図ということで理解下さい(^^;)。
 ディテイルはできるだけ、漫画に似せて描いたものなので、上の引用画像のスーツと比較してもらうと、田中氏デザインと大友オリジナルデザインの差が分かってもらえるかと思う。

Protect_suits_drawing_mini

 原作漫画「武器よさらば」は、短編集『彼女の想いで…』所収。
 この本は大友克洋が短篇漫画作家だった頃のSF作品が多く収録されているけれど、当時の代表作「Fireball」も掲載。
 今回のオムニバスで、「Fireball」も映像化されていたらと想像すると奮える。

 またオムニバスのタイトル『SHORT PEACE』は、大友克洋の初短編集『ショートピース』(奇想天外社刊!)が由来なのだろうけれど、この本からの映像化はない。
 「宇宙パトロール・シゲマ」や「任侠シネマクラブ」といった初期大友漫画の傑作のアニメ化も観てみたいものだ(^^)。

◆関連リンク
SHORT PEACE 公式 (shortpeacemovie) Twitter
大友 克洋『ショートピース』
Apple Paradise: OTOMO KATSUHIRO: Short Peace (1979)
大友 克洋『彼女の想いで…』
Apple Paradise: OTOMO KATSUHIRO: Memories (1990)
Apple Paradise: OTOMO KATSUHIRO: MEMORIES: THE COLLECTION (1994)

"Farewell to Weapons 4c (武器よさらば)

ヤングマガジン '81/11/16号"

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