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2013年4月14日 - 2013年4月20日

2013.04.19

■感想 村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

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村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(Amazon)
文藝春秋 特設サイト - 本の話WEB

 村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』主要な舞台の一つ名古屋で読了w。

"生まれ落ちてから、基本的には一歩もその街を出ていない。学校 もずっと名古屋、職場も名古屋。なんだかコナン・ドイルの『失われた世界』みたい。ねえ、名古屋ってそんなに居心地の良いところなの?"

 という文章に行き当たり、思わず爆笑w。
 何と名古屋はロスト・ワールドだったのか!?
 (ちょっと小さい声で…)実は名古屋人には常識ですが、東京や全国の人には内緒、日本の『失われた世界』名古屋の東山動物園には恐竜がいます(うそ(^^;))

 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』真面目な読後感は、村上長篇の中では、少し『ノルウェイの森』系列かもしれない。
 主人公の"色彩"は、まさしく『ノルウェイの森』の主人公"ワタナベトオル"の感性に近似。"キズキ"と"直子"と"僕"の高校時代が再話され、そこを起点に物語は北の湖の地にまで広がる…。

 今回、奇想小説風味は少ぉ〜しだけあるけれど、ほとんどリアリズムです。僕は"ワタナベトオル"的感性にぼやぁ〜と漂いながら読みやすい文体を追っていくのも嫌いでないので、なかなか快適な読書時間を持てました。
 出版から数時間でツイッターで呟かれた、大森望氏の最速レビューの不評を読んで期待してなかったのが良かったかもw。

Twitter / nzm

"『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』読了。途中までは面白くなりそうだったんだけど……。ああもう、うっとうっしいったら!"

ハルキ祭りの夜は更けて──『多崎つくる』発売カウントダウン・レポート - 大森望|WEB本の雑誌.

"80年代歌謡曲の有線放送をBGMに二色丼(ネギトロと中トロ)を食べつつ続きを読むも、「それだけひっぱっといて真相がそれかよ!」と脱力し、後半どんどんスピードが落ちてゆく。  残り100ページで店を出て、日比谷線恵比寿駅ホームのベンチ、始発電車の車内、東西線茅場町駅のベンチ、車内と読みつづけ、西葛西駅のホームで午前6時に読了。楽しいハルキ祭りの夜でした。これで小説がもうちょっと面白かったら完璧だったな。"

 うちの町の書店で『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』今朝10冊ほど在庫有。本当はほぼ同時に出た海猫沢めろんさん『全滅脳フュー チャー!!!』を先に読もうと思っていたのに何故か売ってない!もしかしてうちの町は春樹より『全滅脳フューチャー!!!』が先に売り切れる街なのか(^^;)!??
 先日記事にしたように、『全滅脳フュー チャー!!!』傑作だったので、この順番で読んで正解だったかも。

 で、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を今日買ったのは読みたかったこともあるけれど、食卓に置かれた僕の本を指さして、朝のニュースを見ながら妻の放った一言が効きましたw。
 「そんな誰も家族が読まない様な変な本(ラファティ『蛇の卵』)より娘も読むかもしれない村上春樹を買わないの!?」w
 (僕の村上春樹でまずは少しの奇想に洗脳して、家族にラファティを読ませる計画は、こうして発動したのでしたw。きっとだめだろうな〜)

 以前、『1Q84 BOOK1 BOOK2』について感想を記事にした時に書いた、"自由意志と自然体の相克"みたいな問題は、今回、まったく進化されていない。
 少しだけそんな側面も期待していたのだけれど、それは次の本格的長篇まで持ち越しでしょうか。

 最期に名古屋と並んで、本書の基調を構成する、ピアニストのラザール・ベルマンの演奏するフランツ・リスト『巡礼の年』「Le Mal du Pays」について。

Liszt Le Mal du Pays - YouTube
 例えばリストの曲については、ここで聴けます。が、ラザール・ベルマンのピアノによるものはありません。

村上さん新作で「巡礼の年」CD再生産 - 音楽ニュース : nikkansports.com.

廃盤となっていたベルマン演奏のCD「巡礼の年」を5月15日に再発売。生産中止となっていたブレンデルのCDも再生産し、4月27日ごろに店頭に並ぶという。

 ということで、『多崎つくる』人気のおかげで、ちゃっかりCD再発売の様です(^^;)。ロシアのピアニストの曲想がどんなものか、一度聴いてみたいものです。

◆関連リンク
時事ドットコム:村上春樹氏 公開インタビュー(13.5/6)

"木元沙羅は僕を導いてくれた不思議な存在だった。今回は生身の人間に対する興味がすごく出てきて、登場人物のことを考えているうちに(登場人物が)勝手に動き出した。この作品を書いて、頭と意識が別々に動く体験を初めてした。僕にとっては新しい文学的試みだった。3~4年前なら書けなかったかもしれない。
 この作品は、(登場人物の会話を多用した)対話小説という気がする。僕は会話を書くことに苦労したことは一度もない。会話でつないでいくストーリーはわりと好き。難しいのは、会話が重なっていくうちに体温が変化している感じを出さないといけないところです。
 今までの小説では1対1の人間関係を描いてきたけれど、今回は5人という大きなユニット(の関係)だった。「1Q84」という3人称の小説を書いた後だったので、それとはまた違う形で(3人称の物語を)書きたいという気持ちが出てきたのでしょう。"

【村上春樹さん公開インタビュー発言要旨】魂のネットワークのようなものをつくりたい : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)(13.5/6)

" (徐々に)魂のネットワークのようなものをつくりたい気持ちが出てきた。みんな自分が主人公の複雑な物語を、魂の中に持っている。それを本当の物語にするには、相対化する必要がある。小説家がやるのは、そのモデルを提供することだ。
 〈新作「色彩を持たない 多崎 (たざき) つくると、彼の巡礼の年」について〉
 「ノルウェイの森」のときは純粋なリアリズム小説を書こうと思った。(新作は)僕の感覚としては、頭と意識が別々に動いている話。今回は前作「1Q84」に比べて、文学的後退だと思う人がいるかもしれないが、僕にとっては新しい試みだ。
 (多崎の恋人の) 沙羅 (さら) さんが、つくるくんに名古屋に行きなさいと言うが、同じように僕に書きなさいと言う。彼女が僕も導いている。導かれ何かを体験することで、より自分が強く大きくなっていく感覚がある。
 今回は生身の人間に対する興味がすごく出てきて、ずっと考えているうちに、(登場人物たちが)勝手に動きだしていった。人間と人間のつながりに、強い関心と共感を持つようになった。"

 この村上インタビューで語られている"頭と意識が別々に動いている"というのが、実は『1Q84 BOOK1 BOOK2』で描かれた"自由意志と自然体の相克"に繋がっているのかもしれない。大変興味深い発言だったので、追記しました(5/7追記)。

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2013.04.17

■動画 "竹谷隆之 造型ドキュメント映像" & 情報 "竹谷隆之の仕事展"


竹谷隆之 造型ドキュメント映像 - YouTube

 これはとても貴重な、優れたドキュメント映像である。
 造形師 竹谷隆之氏の仕事をとらえた、43時間でひとつの作品が出来上がる過程の動画。
 ラフスケッチから始まって、ひとつのフィギュアの工程を竹谷氏の仕事場の映像で紹介する33分のドキュメント、見ごたえ充分。

 具体的には、作品名 "珍しい獲物" という、イヌイットが墜落したUFOのエイリアンを捕獲したシーンの造形物の制作映像。
 職人の手の中で頭の中のイメージがグイグイと造形作品として現実化していく工程が凄い。まさに一分の狂いもなく、イメージが手の中で、物体化する快感がこの映像にある。

 そしてナレーションと映像が、昭和の時代のNHKのドキュメントのようで、そこもなんだかベストマッチ(^^;)。

 以下の展示会のプロモーション用に作られたもののようであるが、ドキュメントには、再刊された作品集『漁師の角度』についても、少し触れられていて興味深い。

公式サイト "竹谷隆之の仕事展"

"百聞は一見に如かず。竹谷隆之 が 創り出す造形世界。       
その圧倒的な存在感は、二次元の画像から感じ取ることは不可能。
展示作品数 約80点
この機会にホンモノの立体物だけが発する“  気  ”  をダイレクトに御体験下さい!

開催期間: 13.6/1(土)〜7/1(月)
開催時間: 午前10時30分~午後8時( 最終入場午後7時30分 )
会 場 : アーツ千代田 3331 1階メインギャラリー(秋葉原)
休場日: 毎週火曜日"

 ということで、その造形物のまさに原型80点にふれられる絶好の展示が開催されるとのこと。造形物の360度の細部を確認できる貴重な機会なので、御近くの方は是非、その様子を御教示下さい。(例によって、私はこのタイミングで本業出張でも入らない限り、遠いので行くのは無理です(涙))

竹谷 隆之『漁師の角度 完全増補改訂版』(Amazon)

"立体造形師として長きに渡り活躍をし、近年では海洋堂の人気シリーズ「リボルテックタケヤ」を手がけたことでも知られる竹谷隆之氏が1999年に出版したオリジナル造形集『漁師の角度』を新規製作の造形物を加え、全面的な改稿をへて、新たに刊行します。 反重力エンジン搭載の漁船「第八十八恵比須丸」に乗って漁に出るガンコ漁師「カネヒサ爺さん」、彼の飼う犬であきらかに人語を解する「新田」、何でも屋 「蝦名商店」を経営し、キーボード付き音声発生装置で会話する猿・蝦名。山奥からやってきて人々の命を奪う山犬「キムンセタ」等、竹谷氏の悪魔的想像力か ら生み出された、ユニークな人々、メカ、生き物等がいきいきと立体造形物と文章で表現されています"

 Amazonのサイトにある、絵とキャプションがいいですね!
 特に、"恵比須丸:カネヒサ爺さんの操る漁船。重力制御エンジン搭載で空を飛び獲物を仕留める。壊れるたびに青木が修理する"。
 文章と造形に込められた物語にワクワクします(^^)。

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2013.04.15

■感想 海猫沢めろん『全滅脳フューチャー!!!』

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全滅脳フューチャー!!! (太田出版)

" オタクにしてホスト、そして・・・ぼくが人類を全滅させる!?
 著者の特異な経歴が「本人」連載時から話題を集めた青春小説、カバー作品制作に気鋭のアート集団Chim↑Pomを迎えてついに完結!
 実話をもとに描かれる、神なき時代を生き抜くための「新しい希望」!!極限の問題作!!!

 九十年代、どこにでもあるような地方都市「H市」。
 主人公の「ぼく」は十八歳、美少女アニメとゲームとマンガがちょっと好きな程度の、いたって普通の工場作業員だ。夏のある日、なんとなくトラックで職人を轢き殺そうとしたのがきっかけで、仕事をクビになってしまった。
 お別れ会と称して親方に連れて行かれたのは、どこにでもあるような安いスナック。そこで出会ったある女性の紹介で、新しくオープンするホストクラブで働くことに......。
 だが、そこにいたのはホストとはかけ離れたシャブ中のチンピラ「シンさん」だった。その出会いが、ゆるやかに「ぼく」を変えていく。

第1話「恐怖、溶解人間」
第2話「最強、土下座マシン」
第3話「夏の黒魔術」
第4話「デッドエンド」
第5話「神のゲームとヒューマントラッシュファクトリー in my ぼく」
第6話「ライフ・イズ・アニメーション」
第7話「全滅 NO FUTURE」
最終話「YES FUTURE!」"

 『全滅脳フューチャー! ! ! 』を新しく出た幻冬舎文庫版で読了。
 「文科系トークラジオLife」をずっと聴いているのだけれど、そこでの海猫沢めろんの自身を語る逸話、そして独特のスタンスの言葉に魅かれて、自伝的小説ということでこの4月の文庫版出版を機に、手に取ったのだけれど、その鮮烈な面白さにノックアウトw。(2009年のハードカバー版出版時も手に取ったのだけど、未読のままだった不明を恥じます(^^;;))

 アニメオタクが紛れ込んだ関西のシノギ世界、中島らもを思わせる異様な人々の描写に引込まれつつ、挿入されるクールな視点の融合で醸し出される、紛れもない21世紀傑作小説。

 同時に刊行された村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を前日に読んで、続けて『全滅脳フューチャー! ! ! 』を読んだのだけれど、この二冊は現在36〜37歳の同世代を主人公にした小説。
 前者が昭和から見た21世紀の感性を描いてたのに対して、後者は明らかに平成の感性が描いた21世紀小説。
 何が違うか、もちろん作家の個性の違いが大きいw。
 だが特筆したいのは、後者について、脳内に映像作品を注入し続けて育った世代の感覚描写が凄いのだ。ここをもって21世紀小説と僕が呼びたい理由である。
 映像の世紀であった20世紀の末、映像が溢れかえる世界に生まれ、それを摂取して育った21世紀の大人、それが後者の主人公である。

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 『全滅脳フューチャー! ! ! 』の感覚を完全映画化できる監督がいるとしたら(園子温がもっとオタクならw?)、タランティーノ『パルプ・フィクション』に比肩する"日本の"新世代映画になるだろう。

"私の考える娯楽の本質は、現実逃避だ。日常を忘れてここではないどこかへいくのが、娯楽。ホイジ ンガや、ロジェ・カイヨワなんか読まなくてもわかる。では、自分の住む世界が、アニメだと思えば、幸せに生きることが可能か?そんなわけがない。心を持っ たアニメの主人公など、すぐに気が狂ってしまう。ここは現実以外のどこでもない。"(P278)

 多数挿入されるアニメソングとゲームに耽溺した感覚から発せられる主人公の言葉。自らを地球観測に送り込まれた、完璧に人間に模して作られたロボット(某レプリカントは不完全だった)と定義する感覚と周囲のズレの混沌…。

 映像の世紀が生み出した日本のいびつな2次元世界(クールジャパン?クソ喰らえw!)、これに脳を溶かされた主人公と、ドラッグで脳が蕩けている「シンさん」の凄絶な関西の地方都市での、どこにでもあるかもしれない物語。
 これを本書に引用される数々のアニメやゲーム映像をザッピングして、映画に埋め込んだら…どんな異次元空間がスクリーンに登場するか、是非とも観てみたいものだ。
 そして素晴らしいクライマックス。泣ける最終話「YES FUTURE!」!
 優れた震災映画の側面も(?)持つ、このクライマックスをそのまま映像化したら、きっと世の中では強く否定されるだろう。
 だけれどもここにはある種の僕たちの震災に対するひとつのリアルが間違いなく存在する。この側面の鮮烈な映像化もどこかで観てみたい自分が脳の中に居ますw。
 映像化は無理だとしても、それを脳内スクリーンに投射するための素晴らしい小説がここにあります。めろん先生の混沌に貴方も参戦しませんか(^^;)。

◆関連リンク
全滅脳フューチャー!!!文庫発売 (海猫沢めろん.com)

"無事発売になりました!本日から書店に並んでいると思います。ピンク色の背景と表紙の西島画伯のセラムンっぽいキャラが目印。あらすじがすげえ……(略)

ぼくのことをよろしくお願いします!"

海猫沢 めろん『全滅脳フューチャー! ! ! (幻冬舎文庫)』

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