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2013年6月16日 - 2013年6月22日

2013.06.21

■感想 「身体表現の可能性」展@豊田市美術館 ヤノベケンジ「ラディエーションスーツ・アトム」

Four_pic00

コレクションによる4つのテーマ展- 新収蔵品を中心に

"2013年4月20日[土] ~ 9月1日[日]
Apr.20[Sat]-Sep.1[Sun]

テーマⅠ:「白と黒」
テーマⅡ:「斎藤義重と高松次郎」
テーマⅢ:「フランク・ロイド・ライト」
テーマⅣ:「身体表現の可能性」 "

 「フランシス・ベーコン展」と同時開催されている豊田市美術館の4つの収蔵作品展示、その中の「身体表現の可能性」に、ヤノベケンジの「ラディエーションスーツ・アトム」(1996年)が展示されている。

 今回の展示は、撮影可なので写真にてその展示風景を紹介する。ヤノベファンは、ベーコン展ともども御楽しみ頂けると思います(^^)。

Radiation Suit /// YANOBE KENJI ART WORKS.

"ラディエーションスー ツ・アトム 1996
 110cm×70cm×175cm
 ガイガーカウンター、PVC、ストロボライト、他 ヒト型放射線感知スーツ。
 人体の繊細な器官(眼球,臓器,生殖器など)の各部分にガイガーミュラーを装着しており、放射線が人体を突き抜けるた びに閃光、その数値をカウントしていく。人はこれを装着することにより、アトランダムに降り注ぐ宇宙船、自然放射線、あるいは人為的につくられた放射線を 感知する 「地球のアンテナ」となる。"

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 ヤノベケンジ「ラディエーションスーツ・アトム」が、エゴンシーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」、そしてクリムト「オイゲニア・ブリマフェージ」、志賀理江子「カナリア」と饗宴しているということだけで、もう僕は気持ちがワクワクと高まってしまう(^^)!

 エゴンシーレとクリムトは、今までも豊田市美術館で何度も観ている絵だが、ガイガーカウンタで放射線が検知され、1分に1回ほどの頻度で、スーツのフラッシュが光る緊迫感の中で観ると、また違った感慨が…。

 スーツの細部をじっくりと観てきたが、手縫いとみえるスーツの白い生地、尖ったガラス管とその内部の回路基板、そして赤い口…そうしたディテイルもリアリティを醸し出している。

 そして気づいたのはその手袋。
 右の写真をクリックして、拡大してもらうと分かるが、手袋には"Chemical Protection"と明確に書いてある。
 こうしたところまで本格的に機能的に作られているようだ。

◆関連リンク
名古屋三越に公式ショップ あいちトリエンナーレ2013
 ヤノベケンジグッズも数点。僕は、8月上旬発売予定の『サン・チャイルド』ミニフィギュア 販売価格 1,050 円は入手しようと思ってます(^^;)。

ヤノベケンジ 当Blog関連記事 Google 検索

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2013.06.19

■感想(2) 映像の絵画への影響と意識の解体、そして映像への回帰『フランシス・ベーコン展 : Francis Bacon』@豊田市美術館

Muybridge_bacon

Francis Bacon & Photography « Cedric Arnold.

"L: Bacon’s “Two Figures” – R: Muybridge reproductions found in Bacon’s studio. Bacon on Muybridge “Michelangelo and Muybridge are mixed up in my mind together, and so I perhaps could learn about positions from Muybridge and learn about the ampleness, the grandeur of form from Michelangelo. …"

 これはセドリック・アーノルドという写真家が紹介している、ベーコン“Two Figures”(1953年)とエドワード・マイブリッジの分解写真を比較して並べたもの。

 今回ベーコン展では期待していた“Two Figures”の展示はなかったのだけれど、いくつかの作品で感じたのは、動画のコマを複数重ねたような、映像があったからこそ生まれた物凄く映画的な絵画だな、という感想。

 犬や人物の顔が透明になったりブレたりするのも、映像におけるシャッター速度と被写体の動作から初めて生まれてきた絵画表現であろう。また「ジョージ・ダイアの三習作 : Three Studies of George Dyer」(1969年)に代表される、顔が丸を基調にして歪んでいる絵画も、どこか魚眼レンズによる円形の歪みのように見える(そして黒い穴はさらにひっくり返して人間の視覚上の盲点の描写?)。

 会場のビデオ上映で紹介されていたように、ベーコンは写真から絵画のイメージを膨らませていたようで、まさに映像の世紀に生まれた新しい絵画表現のエッジにいたひとりと言うことが出来るだろう。

FrancisBacon_bluevelvet
右はリンチ『ブルーベルベット』

 前回紹介した「横たわる人物像 No.3 : lying figure No.3」(1959年)の背骨の表現は、X線写真の登場で生まれた絵画表現だとのこと。世界で最初のX線撮影装置は1898年ドイツのシーメンス社が開発に成功したらしいので、まさに20世紀のテクノロジーの絵画への利用形態である。

 ベーコンの表情が消えたような、昏い鈍い輝きを持つ人物の顔々を眺めていると、20世紀のテクノロジーや社会の複雑化による憂鬱の表情とも観えてくるのだけれど、そうした表情の抽象化において、まさに20世紀のテクノロジーを用いた絵画表現を用いているところが強く我々を揺さぶるのかもしれない(ちょっと強引だったかなw)。

 〈物語らない身体〉というコーナーもあったが、複数の空間と人物を描いていることで、そこからストーリーが生まれてしまうのを避けようとしたのだという。
 人物の形態を崩すことによる物語の解体。
 絵画の身体の壊滅と意識の解体が生み出したものは、言語により整然と形象化された認識ではなく、もっと原初的な、言語を介さないヒトの認識の映像を産みだしているようだ。

 このように考えると、ベーコンの絵画は、言語を解体し意識の向こうにある、無意識とか身体が持つ知恵のプログラミングを形象化ような新たな映像表現。それは言語にはもしかしたら相当に表現することが困難な何者か、なのかもしれない。
 「身体がイメージに回収されることに抗っている」というのはある絵を説明した展示会場の紹介文にあった言葉なのだけれど、どちらかというと僕は「身体が言語/意識に回収されることに抗っている」ととらえた。

Photo_3

 そんな絵画に、デイヴィッド・リンチ他の映像クリエータが刺激を受け、そうした言語を解体した様な映像世界を形作る。(右上がベーコン、下はリンチ『マルホランド・ドライブ』。詳細は拙Blog過去記事 情報 「フランシス・ベーコン展」@東京国立近代美術館, 豊田市美術館)
 
 20世紀の映画の祖であるマイブリッジから生まれた新たなヒトの認識が、ベーコンという絵描きの直感を通じて、新しい21世紀の映像表現へと回帰していく。
 そんな映像史的な興味を掻き立てる刺激的な展示会であったと思う。

◆そしてベーコン作品のパフォーマンス化

 そんなことを考えながら観た美術展の最終コーナーは、ウィリアム・フォーサイスのダンス映像(ペーター・ヴェルツ/ウィリアム・フォーサイス  「重訳|絶筆、未完の肖像(フランシス・ベーコン)|人物像を描きこむ人物像(テイク2)」  2005年 ゲーツ・コレクション)。
 これは上に述べた様なベーコンの強度を、残念ながら充分に表現できているとは感じられなかった。

 残念でならないのは、ここに、何故フランスのアーティスト オリビエ・デ・サガザンのパフォーマンスを持ってこなかったのだろうということ。

 ベーコンの人体変容芸術(^^;)を見事に体現できている、サガザンのパフォーマンスの衝撃を、もしあの会場でベーコンの絵画を観ながら体感できたとしたら、凄まじい体験になっていただろうにと残念でならない。
 特にサガザンは欧州では知られているが、日本では広く美術ファンに知られている訳ではないので、ベーコンを観た後、はじめてサガザン体験をする観客がいるとしたら凄い衝撃になっていたはずだ。

 サガザンについては手前味噌になるが、当Blog過去記事を参照頂きたい Olivier de Sagazan "performance O de Sagazan 08" オリビエ・デ・サガザン 人体変容パフォーマンス まさにベーコンファンが驚愕する表現です(^^)。

An Interview with Olivier de Sagazan - Loving Mixed Media

"5. What are your most important influences?
 I see some evidence of Soutine and Francis Bacon. Rembrandt is my main inspiration, and after him, Bacon."

 こちらはサガザンのインタビュー。
 やはり最も影響を受けた芸術家として、ベーコンを挙げている。(そしてもう一人はベラルーシの画家 シャイム・スーティン(Chaïm Soutine - Google イメージ検索))

 是非、次のベーコン展が日本で開催される折りには、サガザンの日本初来日を企画して頂きたいものである。

◆関連リンク
Cedric Arnold — Bangkok Based Photographer
 上で紹介した写真家セドリック・アーノルドの公式HP。
タイの精神世界を体に刻んで | Picture Power | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
 セドリック・アーノルドのタイでの写真を紹介する記事。
Pirates & Revolutionaries: Moving through Paralysis [36] Francis Bacon: After Muybridge - Woman Emptying a Bowl of Water & Paralytic Child 1965 Deleuze on Bacon, Painting Series
 
フランシス・ベーコン展 Francis Bacon|豊田市美術館|図録・グッズ
Mylène Farmer - A L'Ombre - YouTube
 フランスの歌手 ミレーヌ・ファルメール:Mylène FarmerのPV、オリビエ・デ・サガザンが参加している。

『美術手帖 2013年 03月号 フランシス・ベーコン』

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2013.06.17

■感想(1) 『フランシス・ベーコン展 : Francis Bacon』@豊田市美術館

Francis_bacon

フランシス・ベーコン展 Francis Bacon 豊田市美術館

"2013年6月8日[土]-9月1日[日] Jun.8 [Sat] - Sep.1 [Sun], 2013"

 待ちわびていたベーコン展、ついに豊田市美術館で開催。スタートから一週目の土曜にさっそく行ってきました。
 絵画の持つ圧倒的な黒と緑の重力に吸引されて、魂を奪われそうだった(^^;)。
 このような超重力空間が近郊にある至福(^^)。

 まず最初の<捧げられた身体>のコーナーの後半。
 1957年の作品「ファン・ゴッホの肖像のための習作V : Study for "Portrait of Van Gogh" V」に心臓を撃たれる(^^;)。それまで昏い色だけで描かれていたベーコンの絵に赤とオレンジが登場する。Ac65a69559d1dba6b7263f8a1c006423horフィンセント・ファン・ゴッホ「タラスコンへの道を行く画家」(1888年、第二次大戦で焼失)、フランシス・ベーコン「ファン・ゴッホの肖像のための習作V」(1957年)
 図録の解説によると "ゴッホの作品(「タラスコンへの道を行く画家 : The Painter on the Road to Tarascon」(1888年))を着想源に、鮮やかな色彩と厚塗りによる絵の具の物質感を画面に取り入れることに"とか、"ベーコンがこの連作に着手する前に滞在していたモロッコのタンジールや、南仏の明るい日差しに由来するとも言われている"とのことの様です。

 この絵の、赤とオレンジの背景に緑色の輪郭の男(ゴッホ)が振り向いて立っている肖像。縦長に伸び幽鬼を漂わせた顔と、平たく水掻でも付いたかの様な足が魅力。そしてこれらをつなぐ体の右側を縦に支える緑色の輪郭とその上に落ちた黄色の雫。
 会場に置いてある図録と絵を見比べて確認したのだけれど、この絵の特に緑の魅力が印刷では全く表現できていない。御近くの方は是非実物を観られるこの貴重な機会をお見逃しなきよう(^^;)。
 そこまでの展示で昏く重かったベーコンの絵が獲得した、この光と奇想の融合。ゴッホの絵にない強い赤の色の導入と、人物のフォルムの何とも言えない佇まいに溜息がでるばかり。
 この絵の深い魅力に魅入られて、この日だけで10回近く、見入って沈思黙考してしまった。まだこの魅力の秘密は言語化されていないw。

 そして、次のコーナー<捧げられた身体>。

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 ここの最初の三枚の空間が圧倒的。「横たわる人物像 No.3 : lying figure No.3」(1959年)と「歩く人物像 : Walking Figure」(1959-60年)、「横たわる人物像 No.1 : lying figure No.1」(1959年)が美術館のL字コーナーに置かれたベンチを囲むように配置された閉じた空間。ここが本展覧会で僕が最も気に入ったスポットになったw。
 特に「横たわる人物像 No.3」の黒い重力には押しつぶされそうで空間からの脱出に時間を要した。ベーコン超重力!
 そして対面の「歩く人物像」の奇妙な立ち姿。

 この「横たわる人物像 No.3」は、もちろん大胆に配置されたこの黒色の構図も凄いのだけれど、男がその重みに耐えている様な姿勢をとっていることが重力の強度を増している。そして呼応する緑と男の首から生えた黒い背骨。歪んで肉の溶けた手足。
 この黒と緑が、「歩く人物像」の全面の緑と床の黒に呼応/共鳴して異様な空間の迫力が生まれていたのだと思う。
 
 もちろんw僕はここでデイヴィッド・リンチの映画の黒を思い起こすのだけれど、明らかに繋がっているベーコンの絵の黒の世界と、リンチ映画のカーテンの向こうの漆黒、、、リンチブラックの強度はこうしたベーコンの超重力によって獲得されていたことを視覚の緊張とともに痛感したのであった。

 この後の絵は、僕には実はあまり強いインパクトを与えなかった。少し離れたところにあった「座像 : Seated Figure」(1961年)は凄いと思ったが、このL字コーナーの三枚の圧倒的なイメージには叶わない。もし「横たわる人物像 No.1 : lying figure No.1」に変わって「座像 : Seated Figure」がそこに置かれていたらと想像すると身震いするのだけれど、、、。

 一度、昼の食事で外へ出て、次に戻って二回目は、デイヴィッド・リンチの音楽をヘッドホンでガンガンに効かせて観た。
 両方試してみたのだけれど、リンチ映画のサントラ アンジェロ・バダラメンティではなく、この絵画空間と共鳴したのはデイヴィッド・リンチ自身が作った音楽だった。特にソロアルバム ディヴィッド・リンチ『気違いピエロの時間:Crazy Clown Time』
 ベーコンの溶けた人体と黒と緑の闇空間に、リンチとカレン・Oのヴォーカルが怪しいレゾナンスを奏でる。ファンは必聴です(^^;)。

◆関連リンク
フランシス・ベーコン展 Francis Bacon|豊田市美術館|図録・グッズ

『美術手帖 2013年 03月号 フランシス・ベーコン』

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