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2015年6月

2015.06.29

◼︎情報 ヤノベケンジ「PANTHEON-神々の饗宴-」「ミュージアムロード・オブジェ Sun Sister」

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琳派400年記念祭 ヤノベケンジ×増田セバスチャン×髙橋匡太 「PANTHEON-神々の饗宴-」....

"会場:京都府立植物園 観覧温室前「鏡池」
会期:2015年7月25日[土]〜10月25日[日]
入園時間:9:00〜16:00(17:00閉園)
*イベントにより異なる場合があります
◆ 序章 「雷神ー黒い太陽」2015年5月26日[水]より ◆ 1章 「フローラ降臨」7月25日[土]より ◆ 2章 「風神の塔」8月中旬より ◆ 最終章 「New Generation Plant」(増田セバスチャン) 9月中旬より ※髙橋匡太によるライトアップ 仲秋9月27日[日]~10月11日[日]夕刻"

 現在既に「黒い太陽」が展示されているということだが、この後、引き続き「Sun Sister」と「Anger from the Bottom」らしき展示があるらしい。
 チラシ裏のイメージ画によると「Anger from the Bottom」は小豆島の物と異なりアレンジされているようで、どんな新作になるか楽しみである。

兵庫県/ミュージアムロード・オブジェ「Sun Sister」の完成お披露目式の開催

" 兵庫県立美術館から神戸市立王子動物園までを結ぶ「ミュージアムロード」に、沿道の賑わい創出につながるオブジェ第2弾として、未来の希望を象徴するオブジェ「Sun Sister」が完成します。

 これを機に、制作者のヤノベケンジ氏を招き、地元の子どもたちの参加のもと、下記のとおりお披露目式を開催します。

作 品
 「Sun Sister」(サン・シスター)
 (高さ約6m、外装FRP、ステンレス、鉄骨構造)
 《制作者の作品コメント》 
  過去・現在・未来を見つめ、希望の象徴としての「輝く太陽」を手に持ち、大地に立つ少女像

お披露目式
 (1) 日 時
  平成27年6月28日(日曜日)11時30分~12時00分
  (受付11時00分~) 
 (2) 場 所
 兵庫県立美術館南側敷地 大階段下 オブジェ設置場所付近"

ヤノベケンジ《サン・シスター》 - Kenji Yanobe Supporters club.

"《サン・シスター》の誕生と旅路 《サン・シスター》は様々な困難と葛藤の時間を過ごしてきた阪神淡路地区の経験から、東日本大震災から復興しようとしている人々に、苦しみを共有し慰めや 勇気を与えられることがあるのではないかということで、《サン・チャイルド》よりも経験を積み、少し大きくなった少女像として構想されました。
《サン・シスター》は、プロトタイプとして2014年、京都文化博物館別館で展示されました。座りながら目を閉じて深く瞑想し、太陽の光とともに目覚めて立ち上がる《サン・シスター》は人々に安心を与え、希望の訪れを告げるシンボルとして作られました。その後、武蔵野美術大学で行われた展覧会「オオハラコ ンテンポラリー」に出展され、地元の中学生とのワークショップ「みらいのたいよう計画」も行われました。さらに、福島現代美術ビエンナーレ2014においても、会津地方の喜多方の石蔵で展示され、東京国立博物館の展示デザイナー・木下史青氏による照明の演出が行われ評判となりました。 兵庫県立美術館前に設置される《サン・シスター》は、それらの旅路が終わり、瞑想から目覚めて立ち上がっています。そして、南を向いて海から登る太陽を手 に持ち、様々な苦難の日々を過ごしてきた人々の過去と現在、そして未来を見守り続ける存在となるよう、希望のメッセージが込められています。スカートはときに人々の雨宿りになり、日差しの強い日には日傘の役割を果たすでしょう。 そして、《サン・シスター》と《サン・チャイルド》という二体が一つとなって、世界中のすべての災害からの復興・再生を見守り、応援し続けることでしょう。"

 こちらは「サン・シスター」、2014年のアナザーヴァージョン('14年のはプロトタイプという位置付けのようである)。造形的には「ウルトラ・サン・チャイルド」につながるように感じる。

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2015.06.24

■情報 オーディオブック スタニスワフ・レム『ソラリス』Stanislaw Lem - Solaris [Audiobook]


▶ Stanislaw Lem - Solaris [Audiobook] - YouTube
 7時間45分におよぶ英語版でのオーディオブック大作の全篇がYoutubeで公開されていたので、ご紹介。

[AUDIOBOOK] Stanisław Lem - Solaris - YouTube
 こちらはポーランド語(?)のオーディオブック。(正確には(^^;)ポーランド語かどうか、よくわからないが、少なくとも語感は東欧のようであるw。)


Solaris (1972) trailer - YouTube
 アンドレ・タルコフスキー監督の映画『ソラリス』の予告篇。
 音楽が本編と異なるようで、イメージが全然違う。もう観たのは20年以上前で記憶は薄れているが、タルコフスキーはこんな映画を撮るはずはないでしょう、、てな予告。
 ひさびさにタルコフスキー版も見返したくなりました。

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2015.06.22

■感想 スタニスワフ・レム著、沼野 充義訳『ソラリス』: Stanislaw Lem "Solaris"

Solaris

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ソラリス | ハヤカワ・オンライン

"惑星ソラリス――この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた 研究員たちを目にする。彼らにいったい何が?ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく……。人間以外の理性との接触は可能か?――知の巨人が世界に問いかけたSF史上に残る名作。レム研究の第一人者によるポーランド語原典からの完全翻訳版"

 冒頭の画像は、Stanislaw Lem "Solaris" - Google 画像検索によるもの。いずれも書影のようで、世界各国でこの名作が読まれていることがここからもわかる。

 今回、僕は本書3度目の読書。
 以前は、飯田 規和訳『ソラリスの陽のもとに』を二度。今回、はじめて沼野充義訳を読みました。
 もちろん、今回も異星の存在の不可知性とソラリス学という架空の学問体系のディテイルは圧倒的で、傑作の感を再度体感したのだけれど、今回、僕が違和感を持ったのが、世にラブ・ストーリーと称される、ケルヴィンと幽体Fのハリーとのシークェンス。

 これは本当にラブ・ストーリーなのだろうか、という疑問。ここで登場するハリーは、あくまでもケルヴィンの記憶から抽出し「ソラリス」によって再構成された物体でしかない。ハリーというケルヴィンにとっての他者ではなく、あくまでも彼の記憶に刻まれた、情報としてのハリーに過ぎない。

 多くの男性作家によって書かれたラブ・ストーリーが、男のイメージで描かれた女性像でしかない、と言って仕舞えば、まさに本書はラブ・ストーリーそのものかもしれないw。ケルヴィンの内部的な存在が実体化した幽体F ハリーが、自身の有り様に気づき悩むところ、ここも男の夢想としての恋人の悩みを描いているとみれば、なかなか味わい深いストーリーであるが、今回僕がモヤモヤと感じたのは、以下のような別の夢想である。

 本来、男と女(もしくはひとりの人類と別の他者でも良いけれど、、、)という、ある種異質な存在同士の交接を描く物語がラブ・ストーリーの本来の語義であるわけで、そうしたものと正に異なるのが、「ソラリス」上空でのケルヴィンとハリーのシークェンスなのである。

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 異星生命体の徹底した異質さを描いたレムが、もし人類のペアの異質な存在性をも深相まで沈んで書き上げていたら、、、というようなことを夢想しながら今回は読み進めた。

 例えばハリーの情報は、ケルヴィンの記憶からだけでなく、地球との通信ネットワークを用いて、別の情報もソラリスが捉えていたとする。その情報によりケルヴィンが体感する、自身の記憶の存在と、他者ハリーの異質性。
 あくまで言語的な記憶(意識かな)により構成された幽体F ハリーが当初ケルヴィンの前に現れる。そしてその後、更新され、言語的情報以外(例えば映像による身体的情報かも)も含めて、新たに表現された幽体F' ハリー。

 異質な知性である海と対比して、ステーション内でもそうしたものに徹底的な異質をケルヴィンが感じ、そして人類の認識の限界を両面で体感する。
 フラクタル的に描写されて、異質な知性への幻惑が、ミクロな2人の関係とマクロな惑星レベルの両面で、圧倒的なパワーで読者の脳内に解凍されるそんなSF。レムが現代の作家であったなら、もしかしてそうした意識と意識以外の知覚の両面の描写で描いたかもしれないなぁ〜と、そんな夢想をしながら読んだのでした。

 ラブストーリーを中心に描いたソーダバーグでは期待しようもない、そんな解釈の3度目の映画化、というのもあっていいかもしれないですね(^^;)。

◆関連リンク
ワルシャワのバラエティ劇場で開催された『ソラリス』の舞台(Google 翻訳)
 すぐ上の写真はここから引用しました。
【受付終了】『ソラリス』解説文アンケートのお知らせ|SF MAGAZINE RADAR|SFマガジン|cakes(ケイクス)
 牧眞司、菊池誠、中野善夫、島村山寝、岡本俊弥、大森望各氏による『ソラリス』解説文。

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2015.06.17

◼︎情報 磯光雄監督「アニメーションの方角から2036年を妄想してみた」

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Webサイト企画「西暦2036年を想像してみた... | リコーグループ 企業・IR | リコー

"  株式会社リコー(社長執行役員:三浦善司)は、Webサイト上の企画「西暦2036年を想像してみた」の第5弾コンテンツとして、テレビアニメ作品「電脳コイル」の原作・監督で著名なアニメーター/脚本家の磯光雄さんが想像する未来を本日公開しました。
 第5弾では本日公開のエッセイを皮切りに、2036年のオフィスデバイスについてのエッセイ4本と、磯さんとリコーの研究者との対談記事3本の、合計7つのコンテンツを掲載しています"

 最近、表面的には、なかなか情報として伝わってこない磯光雄監督の動向。
 昨年の11月にこのような刺激的な企画で、磯監督の論考と対談が公開されていたので紹介する。

 まずは引用としては長文になるが、僕が興味深かった部分を引用してみます。
 もちろん全文を読まれるのをおススメしますが、斬新なポイントは以下です。文脈が取りにくいところは、僕の引用の悪い部分なので、そんなところは、ぜひ本文を当たってください。磯光雄監督ファンは必読です。
 赤字は僕が特に興味深かった点。

アニメーションの方角から2036年を妄想してみた:磯光雄 | リコーグループ 企業・IR | リコー

"◆「人格アバター会議」
「人工人格」。コンピュータ上で言語的な人格を再現する技術、もしくは人間の人格の一部をプログラムとして抽出して仕事させたりできてたらいいなと。(略)

言語化できない自分自身、つまり自分の無意識にアバターをかぶせて語らせてみたら、言語に縛られない自由なイメージを表現してくれるかもしれない。あるいは、若いころの自分自身を保存しておいて議論できたとしたらおもしろい体験です。

言語外情報を丸見えにする「丸見え超視覚化ツール」と「自分翻訳機」
私は絵描きなので似たような経験が多いのですが、身体から伝わってくる情報っていっぱいあるんです。でも、頭が切り捨ててしまうことも多い。だから、自分で描いてみた絵から「ああ、こうしたかったのか」と、自身の手に教えてもらう、みたいな経験が実際あるんですよ。

スポーツ選手も似たようなことを言いますね。絵描きじゃなくても、触覚や聴覚、ほかにも心拍や脳波といったものを総合的に視覚化することで、それまで自分でも気がつかなかった身体的な情報を発見できるかもしれない。(略)

頭の中にあるアイデアはすばらしいのに、説明しようとすると壊れてしまうことって結構あると思います。人間の脳内や身体には言語的でないイメージが、資源のように埋蔵されてると思うんですが、そんな言語化しにくいアイデアを、自分の無意識を視覚化して発掘できないかなってね。前のトピックの「人格アバター」をかぶせてしゃべらせてもいい。これはいわば未知の自分から情報を取り出す「自分翻訳機」ですね。(略)

「物語」である脚本作業に、作画の「動き」の感覚を投影したりしていました。「動き」と「物語」の間に、共感覚があるのかもしれません。

「真実のウソ」をついて想像力を引き出してくれる「ウソつきコンピュータ」
アニメーションのウソはシナリオ以外にもいくつかあり、まず動きに関するウソ。(略)飛び飛びの絵でも滑らかに動く「リミテッド」と呼ばれる技術ですが、少ない枚数でもちゃんと動いて見えるように、現実とは違う、誇張したウソの動きを描きます。(略)

次に、光や空間に関するウソ。(略)プロになるとみんな気づくことですが、なぜか上手にウソを使いこなした映像のほうが、ウソをつかずにつくった映像よりリアルに、本物に見えることがあるのです。これがフィクションのマジックです。

このように、人間にとって有益なウソがあるわけです。(略)

おそらく人類は言語を発見したときから、言語による描写と現実世界の食い違いが発生するという現象に気がついた。つまり言語とウソはほぼ同時期に発見されたんじゃないかと思うんです。(略)

もちろん人を陥れたり悪意ある嘘がNGなことは変わりはありませんが、2036年にはこんなふうに上手にユーザーを啓発してくれるような「ウソつきコンピュータ」があったらうれしいですね。こういった流れを、もっといまの文明に沿った新テクノロジーとして構築して、イノベーションを起こせないかなって妄想しているんですよ。"

人間をインターフェースにすれば、新たな仕事の概念も生まれる:磯光雄 | リコーグループ 企業・IR | リコー

"アニメーター/脚本家の磯光雄さんとリコーの研究者 齊所賢一郎による、未来の働き方についての対談

インターフェースはこの数十年間で劇的に発達しましたが、実は人間の身体、あるいは言語も、インターフェースの一種だと思うんですね。だから、身体や言語をインターフェースという目的だけに特化させれば、何か新しい概念が発見されて、それを独走させることでいろいろなものと会話できる世界がくるんじゃないかと妄想しています。(略)

普段は言語力のハンデで評価されていない知性が、急に鋭い意見を語りだす可能性もある。いまは「言語力=知性」と思われていますけど、知性と言語は別のものとして分化すべき時期ではないかと感じています。"

 ここで対談している齊所賢一郎氏は、リコーで自動車のHUD:ヘッドアップディスプレイ、それを利用したARの開発をしている技術者とのこと。今回はあまり述べられていないが、AR,MRについても『電脳コイル』観点で討議して欲しかったなぁ〜というのはファンの想いかと。

 今回の予測は、AR関連ではないけれど、言語と非言語の知性を、どう未来技術として取り込んでいけるのか、という問題設定は、まさに現在のSFの最先端をいくテーマ。興味深い論考と、対談です。

 上の引用文で赤字をしたところ、このブログを熱心に読んでいただいている方なら分かるかもしれないけれど、時々本Blogでも関心を持って突っ込んで書いてきている、人の言語と非言語/身体の知性の問題に、磯監督が強い関心を持たれていることがわかったのが収穫。

 公開されている未来予測のイラストは残念ながら磯氏のものではないけれど、多彩なアイデアが検討されており、ここから次回の新作が生まれてくるかもしれないと、ワクワクしてしまった。
 前回の記事に関連し、ここからいろいろな特許アイデアも出てきそうだけれど、今回は是非リコーとタッグを組んで、特許戦略もよろしく御願いしたいものです(^^)。

◆当ブログ記事 関連リンク
■解読 神林長平『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』
■感想 村上春樹『1Q84 BOOK1 BOOK2』
■ネタバレ感想 伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』: The Empire of Corpses
その他「意識」と「言語」に関連する記事

■感想 円城 塔『道化師の蝶』そして「松ノ枝の記」
■感想 円城 塔『Self-Reference ENGINE』
神林長平「いま集合的無意識を」関連つぶやき - Twilog

続きを読む "◼︎情報 磯光雄監督「アニメーションの方角から2036年を妄想してみた」"

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2015.06.15

■情報 米IT企業のAR技術と『電脳コイル』の特許的進歩性について


Magic Leap augmented reality demo gives glimpse of Google's $500m investment

 最近、AR:オーグメンティッド・リアリティ、MR:ミックスド・リアリティの技術が賑やかだ。MicrosoftのHololensとか、上の動画に見られるような、Googleに関係するARとか。
 動画を観てもらうとわかるが、これは明らかに『電脳コイル』が描いた世界を追いかけている様にみえる。
 VRで先行していた日本発で、AR/MRは世界に誇れる技術になれたはずが、GoogleやMicrosoftやOculusやAppleに先を奪われているのが凄く残念でたまらない。

 でも彼らが特許を出す時、その基本概念は磯光雄監督が映像として既に8年前公開してるので、それが公知資料となって、特許取得は難しいはず。どうだ、参ったか!(^^)

 もし磯監督によって特許出願されてれば、軽く新作映画を撮れる位のロイヤリティーが獲得できたかも…。

特許情報プラットフォーム|J-PlatPat
 念のためこのリンク先の特許検索サイト(誰でも自由に使える)で、磯光雄氏の名前を入れて特許検索をかけてみたが、残念ながら出願されてない様だ。
 磯監督の特許出願は、個人ではハードル高かったかもしれないが、企画段階でNHKとか企業側に少しでもITについて目鼻が付く方がいれば、組織として出願できていたのに、と残念。
 政府のクールジャパン政策も、そうした面の支援もひとつの手かもしれないと思ったり。

 日本の「クール」なアニメで、今日もいろんな基本特許技術がパブリックドメインになっているわけです(^^)。

◆『電脳コイル』の特許性
 というわけで、前から整理したいとも思っていたので、以下、特許性について確認と検討をしてみました。(実はこの上の文章をFacebookに書いたところ、ある方からコメントで『電脳コイル』技術の特許性(特に概念的な部分)についてコメントを頂いたので、そのれをきっかけに考えてみました。僕のFacebookでそのやりとりは見て頂けると思いますが、この記事はその中から僕の検討結果部分を改稿して、さらに追記を加えて掲載するものです。考えるきっかけになる、貴重なコメントとやりとりを頂きここで感謝します)

 上で述べた『電脳コイル』が公知資料となるのは、「基本概念」部分。
 技術者がもっとも抑えたい「基本特許」と言われる、請求範囲がもっとも広い部分である。

 この基本特許をアメリカの超巨大IT企業に取られると、技術的には回避に苦労する。(細かい請求範囲の特許で他社と本数のバーターにしてパテント料を軽減する手は常道としてありますが、、、)。

 『電脳コイル』の放送によって世間一般に公知となったあの概念は、もはやどんなIT企業でも特許化は不可能。あの映像で描かれた技術は、概念として多様に表現されているので、そうしたものの基本特許は取れない。
(もちろん特許の審査官が『電脳コイル』を知らないとしたらw、審査過程でライバル企業なり我々『コイル』ファンが特許庁に公知資料情報を報告しないといけないw)。

 確かに『電脳コイル』技術の細部は別にして概念部分は、ARやMRそのものと言えるかもしれない。なので、ARやMRが既に世の中で語られていた2008年時点で、そこまでの広い概念の特許化は無理(そうした概念自体がそれ以前にどこかで特許として出願されているかもしれないですが、、、東大舘研周辺とかw)。

 そうしたARやMRは公知としても、『電脳コイル』で示された概念は、その先進性と独自性から少なくとも僕には衝撃力を持っていたので、基本特許レベルの新しいアイデアがあったと思っている。

 ではそれが何なのかと言われると、今のところ思いつくポイントは、町全体のデータ構築と、それを現実の位置変化も含めて、リアルタイムに更新かつ、その位置情報に合わせて映像をオーバーレイしていくところだと思う。

◆『電脳コイル』の特許請求範囲 第一クレーム 試案
  特許的に書くと以下のような請求範囲になるw。
 (特許文章はもっと厳密に書く必要がある。これはあくまでも雰囲気だけと思って下さいw)。近年、ITでの知財権を守る為、必ずしも装置に落とし込む必要はなく、ソフトウェア特許というものもあるが、まずは旧来の特許で求められる装置的な表現をしてみた。

 「地形と建物の外部と内部、家具、道具に至るまでの3次元位置情報から仮想の街をシームレスにデータ化し、随時移動体の位置を更新する情報処理装置を持ち、当該情報処理装置にアクセスし現実の街での3次元位置情報と装着者の視線情報を検出するセンサを持ったメガネ型デバイスに、現実の街の映像に重ね合わせて3次元映像として投影することを特徴とする仮想現実装置」
 サブクレームで「仮想上のアイテムを現実の物体の位置とそれとの干渉の度合いをフィードバックしながら、重ね合わせて表示することを特徴とする仮想現実装置」

 うーん、確かにAR,MRそのものと捉えられかねない。特許庁から拒絶査定が来そう(^^;)。拒絶に対する意見書で訴求するとしたら、この特許の独自性は「仮想の街を地形から内部の道具までシームレスに」という部分で頑張るんでしょうけど、公知資料の組み合せで容易に思いつく、と言われるかもしれないですねww。
 これは特許で求められる「新規性・進歩性」の両要件のうちの「進歩性」の問題。(「新規性・進歩性」についてはここのサイトの説明がわかりやすいです)

 厳密には08年までの出願特許含めリサーチしないといけないが、おそらく上に書いた請求項は「新規性」は大丈夫ではないかと思う(VR/AR/MRについてかなり興味を持って世間の情報をみていたので、その感覚的な判断です(^^)。公開特許のウォッチングはしていないので、いい加減なものですが、、、w)。

◆『電脳コイル』の特許的進歩性

 では、次に進歩性は? といったところで課題が残る。
 進歩性とは、簡単に言うと、世に知られた技術の単なる組合せでなく、誰でもが思いつけるようなアイデアではないか、どうか。どれだけ斬新な着想かを問う観点である。

 つまり従来概念として公知となっていたAR,MRの技術と、GPS他の位置情報を街から家の中までシームレスにトレースする公知技術の二つの組合せで、同業他社なら容易に思いつく、と特許審査の際に、特許庁の審査官から進歩性がない、特許にはできない、と拒絶の査定がでるのではないか、ということ。

 確かにその二つの技術を知っている技術者であれば、思いつくのは比較的容易なのかもしれない。ただそれがその時点で、世の中に発想があったかどうかというと僕はそこに磯光雄監督の新しいアイデアがないと、あの光景は描けなかったのではないか、と思うのだ。まさに「進歩性」はあの映像を観て、既知の感覚でなく、何か新しい物を観た、という驚きを感じたファンにはわかってもらえるような気がする。

 今回のMicrosoftのHololensとか、Google関連の上記動画Magic LeapがARで考えていることは、まさに磯光雄監督がこの世に初めて現出させた光景。
 そして映像を観た時にこんなもの見たことないとか驚きの感覚があり『電脳コイル』の発想の進歩性がそこにあるという印象は拭えない(^^)。

◆進歩性のポイントとアメリカでの可能性
 先に書いた「シームレス」が真のポイントではなく、通信電波網を利用し街のどこでもからでもどのメガネからも同じ3次元位置データの情報処理装置にアクセスできるところとか、街全体がその情報処理装置の中に仮想空間としてデータ設定されているところとか、そうした部分を丹念に拾っていけば、きっと進歩性は訴求できるのではないだろうか。

 もし仮に「進歩性」が認められないとしても、比較的アメリカの特許庁は(僕の本業での特許経験から言うと)この「進歩性」部分は評価点が甘い。
 先行特許と公知技術にそのままの請求項の記述がなく「新規性」が認められれば、「進歩性」は特許申請の課題設定とか効果をうたう文章の中で、公知資料とは目的が違う、とうまく説明すれば、特許成立する可能性は十分あったと考える。
 アメリカの特許は、比較的「コロンブスの卵」的なものが認められる(僕の本業の自動車関連でも、時々とんでも無いペテント(ペテンのようなパテントw)が権利化されていたりするのだ)。ここらあたりもベンチャーが育まれやすい土壌なのかもしれない。

◆『電脳コイル』のオリジナリティ
 記憶に頼って書くが、あの当時、AR,MRは、ごく局所的な場で使われるような構想が一般的であった。そこを街全体に拡張することによって、あのような豊かな(豊かでそして危険な)広がりが我々の世界に現出するというビジョンは、『電脳コイル』のまさにオリジナリティである。あれだけのIT関連の着想は、今も少なくとも日本国内では見たことがない。

 MicrosoftやGoogleがやっと今、その一端に近い構想を現実化しようとしているが、まだまだあの広がりのある『電脳コイル』世界には追いついていない。
 暴論を承知で書くと、そんな先駆的ビジョンが認められない特許制度というのはありえないはずで、たぶんここまで書いてきた僕の特許的なスキルが足りないだけではないか、と思ったりもする(^^)。どなたかVR,AR,MRの専門の方、ご意見いただければ幸いです。
 日本のITが米国に比べて弱いのは、こうした大きな構想の部分だと思うので、『電脳コイル』の描いたヴィジョンというのは、日本の貴重な資産だと思うのだけれど、、、。

◆『電脳コイル』の価値
 出されてもいないw特許についてアレコレ考えてきたが、あとは若干の蛇足。
 例え特許が成立するような技術が提示できていなかったとしても、『電脳コイル』の斬新なAR/MR映像/映画としてのルックの衝撃力は高いレベルで評価されると考える。なので、最悪、特許でなく意匠での登録もありえるかもしれないw。

 特許、意匠といった権利関係はともかく、あのオリジナリティのある世界は、本当は映画、テレビといった映像の世界だけでももっと幅広い物語を紡げるだけの深みがあると思う。

 いまだ沈黙を守る磯光雄監督に、コイル世界の別の物語なり、次の作品を是非とも作っていただきたい、という多くの映像ファンの気持ちを書いて、この駄文を締めたいと思う。磯監督、待ってます。

 と書いたところでネット検索して、磯光雄監督による「2036年の未来予測」というのを見つけた。新作につながるような、またも斬新なヴィジョンが語られているので、次回の記事で詳細を紹介したい。

◆関連リンク
電脳コイル 当Blog関連記事 Google 検索
 当時の興奮を今回改めて思い出しつつ書きましたが、当時の僕の感想はこちらです。

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2015.06.10

■感想 デイビッド・クローネンバーグ監督『マップ・トゥ・ザ・スターズ』


▶ Maps to the stars - Official Trailer - YouTube
映画『マップ・トゥ・ザ・スターズ』公式サイト
 デイヴィッド・クローネンバーグ『マップ・トゥ・ザ・スターズ』DVD初見。
 クローネンバーグ、最近どんどん悪魔的な風貌になってきていますが、まさに本作も悪魔を描いた作品。

 ハリウッド映画界を描いた作品なのだけれど、これがクローネンバーグ初のアメリカで撮影した映画。映画界の悪魔を撮るにはハリウッドしかない、という監督のラディカル、ここもうんとひとが悪い。心底、悪魔めいた人だと確信w。

 謎めいたミア・ワシコウスカが素晴らしい。カンヌではジュリアン・ムーアが女優賞を獲ったとのことだけれど、本当の主役はこの女優だろう。ジュリアン・ムーアのレ◼︎シーンやトイレでのオ◼︎ラシーンも体当たり的には凄いけど、50代のおばちゃんと見てしまえば、それほど凄いこともないので、僕は女優賞をミア・ワシコウスカに与えたいw。って確かに、やってることからは、演技にも少し凄みが欲しかった気もするが、、、。

 しかしハリウッドを舞台にした映画というと、『マルホランド・ドライブ』やそのルーツとなった『サンセット大通り』を想起するのだけれど、どの映画もハリウッドに漂う幽鬼あふれる空気感はただごとではない。やはりあの空間には多くの妄念がうずまいているのではないだろうか。

 カナダの悪魔クローネンバーグとハリウッドの幽鬼がコラボレーションした鬼気迫る一本である。

◆関連リンク
クローネンバーグ 当Blog関連記事 Google 検索.

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2015.06.08

■感想 シディ・ラルビ・シェルカウィ演出『プルートゥ PLUTO』 (浦沢直樹×手塚治虫原作)

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森山未來 主演『プルートゥ PLUTO』|ローチケ.com

" アトムと高性能刑事ロボットのゲジヒトが事件の核心に迫っていく物語をプロジェクションマッピングも取り入れて舞台上に再現する。
 ロボットが主人公という漫画の世界観を、現代舞台芸術をリードするベルギーの鬼才シディ・ラルビ・シェルカウイがどのような演出で舞台によみがえらせるのか注目が集まる。"

 以前の記事で紹介した観たかった舞台、シディ・ラルビ・シェルカウィ演出『プルートゥ PLUTO』 (浦沢直樹×手塚治虫原作)が、NHK Eテレで放映されたので録画見。

 正直、あまり期待していなかったのだけれど、かなり興味深い舞台だった。
 引用画は、以下のサイトからであるが、この画像にあるように単なる芝居でなくマルチメディア的に構成された複合的な演劇が眼前に展開された。

 プロジェクタによる漫画シーンの投影、コマ割りのように構成された立体的なステージ、そして浦沢デザインをベースにした数々のロボットの登場と、長篇漫画全体をカバーするストーリー展開。

 通常ならあの原作を2時間半の芝居にすると、ダイジェストで何が何だかわからないものになる恐れがあるけれど、こうした複合的な舞台構成により、少なくとも原作漫画を読んだ観客には、立体的にあの『プルートゥ PLUTO』の世界の全貌が圧縮解凍されて眼の前に提示されることとなる。

 特に秀逸だったのが、画像下段中央、大きな布のスクリーンが巨大な球体を構成し、その表面に浦沢の絵が展開し、森山未來他の俳優が包まれて演技するシーン。音楽の効果と相まって漫画の広大なイメージが見事に舞台に立ち上がっていた。ストーリー的にもう少し一般観客にも訴求できるような、ポイントを絞った展開であったなら、もっと芝居の感動は高まったと思うけれど、このシーンが観れただけでも、なかなか素晴らしい、進化した演劇を体感できた。

 こうした新しい舞台に今後も期待したい。漫画と演劇の融合、まだまだ発展する可能性を秘めていますね。

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2015.06.03

■情報 大伴昌司の生涯を描いた 幻の映画シナリオ 池田晴海『OH 星に還った男』 電子書籍(Kindle)無料配信

Oh

幻の映画シナリオ『OH 星に還った男』 電子書籍としてKindle無料配信!

" 『OH 星に還った男』は、あまりにも熱く激しく生きた、不世出の天才クリエイター大伴昌司の生涯を描いた映画用シナリオである。

 本作は2005年に立ち上げられ、生前の内田勝が切望しながら完成しなかった幻の映画企画だ。

 内田勝が著した本シナリオの案内書『OH あの日、あの時』を併録。
 永遠の少年・大伴昌司と、盟友・内田勝の大宇宙をお楽しみください。

 シナリオ:池田晴海 表紙イラスト:加藤礼次朗
【配信について】
 池田晴海, 内田勝『OH 星に還った男』 (kindle)
・配信開始:2015年5月30日(土)~ ・価格:¥0"

 映像研究の偉大なる先達、大伴昌司氏の生涯を描いた映画シナリオの刊行!!
 シナリオを書かれた池田晴海さんという方は、シナリオライターとして2本ほどの映像作品があるようです。

 寡聞にして、このような素晴らしい映画企画があることも、このニュースを見て、初めて知ったのだけれど、2005年に企画され映画化は未だ実現していないということだが、この電子書籍の無料配信を機に、ぜひとも映像化が実現してほしいものである。

 映画が望ましいけれど、場合によったらNHK等でのドラマ化も期待できないだろうか。今までも円谷プロ等、いろいろと怪獣関係の実録物がテレビ化されたことがあるので、ここは切に期待したいものである。
 もし映画化のために、クラウドファンディング等が動き出すようであれば、僕も微力ですが、是非協力したいと思います。

 それにしてもこの本で使われている大伴氏と内田氏の内部図解のイラストが素晴らしい。シナリオの映像化の折には、是非ともこの内部図解の映像化も実現して頂きたいものである。
 立体映像研究でも当時最先端を探索されていた大伴氏の図解映像化は、3D-CGで立体視できるトータルスコープ(完全なる映像)で観せてほしい(^^)。

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2015.06.02

■感想 フィリップ・K・ディック、佐藤龍雄訳『ヴァルカンの鉄鎚 : Vulcan's Hammer』

Vulcans_hummer

ヴァルカンの鉄鎚 - フィリップ・K・ディック/佐藤龍雄 訳|東京創元社

"20年以上続いた第1次核戦争が終結したのち、人類は世界連邦政府を樹立し、重要事項の決定を巨大コンピュータ〈ヴァルカン3号〉に委ねた。極秘とされるその設置 場所を知るのは統轄弁務官ディルただ一人。だが、こうした体制に反対するフィールズ大師は〈癒しの道〉教団を率いて政府組織に叛旗を翻した。ディルは早々 に大師の一人娘を管理下に置くが……。ディック最後の本邦初訳長編SF!"

 フィリップ・K・ディック『ヴァルカンの鉄鎚』読了。
 ディック最後の邦訳長篇ということなのだけれど、充分に面白いですw。
 滝本誠師が訳出を試みられたとのことで、ノアール風味を期待したのだけれど、そういう小説ではなく、まさにハリウッドアクションSFになりそうな、エンターテインメント。
 師がSF翻訳されるということは他では聞いたことがなく、よほど気に入られたのでしょう。師の好みのシーンは、マリオン・フィールズという名のロリータ登場シーンかなw...と邪推。

 引用した画像は各国出版の『ヴァルカンの鉄鎚』表紙。
 それにしてもあまりに直接的過ぎませんか。空を飛ぶハンマーには笑うしかありません(^^)。小説でも確かに鉄鎚の表現はあるけれど、これはあくまでも人々にある種の神が鉄鎚を食らわせる比喩のはずなので、もう少しいい感じのイラストをお願いしたいです。

 僕的には読んでいる間、ハンマーのイメージは、『電脳コイル』の「2.0」でした。こんなやつ→ http://dic.pixiv.net/a/2.0

 それにしても最後の邦訳長篇とは寂しい。
 僕はディック長篇はほぼ読んできているので、あとは何故か読みそびれていた『宇宙の眼』を残すのみ。大事なディック最終長篇としてこれをいつ読むか、まずは老後の楽しみかと思いますが、すぐ来月にも手を出してしまいそうで、、、(^^)。

 主人公バリスの綴りは"Barris"、"VALIS"とはなんら関係はないですw。

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Vulcan’s Hammer | Philip K. Dick Reading Club
 こちらに各国で出版された『Vulcan’s Hammer』の表紙画が掲載されています。
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