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2015.06.17

◼︎情報 磯光雄監督「アニメーションの方角から2036年を妄想してみた」

20150614_193407

Webサイト企画「西暦2036年を想像してみた... | リコーグループ 企業・IR | リコー

"  株式会社リコー(社長執行役員:三浦善司)は、Webサイト上の企画「西暦2036年を想像してみた」の第5弾コンテンツとして、テレビアニメ作品「電脳コイル」の原作・監督で著名なアニメーター/脚本家の磯光雄さんが想像する未来を本日公開しました。
 第5弾では本日公開のエッセイを皮切りに、2036年のオフィスデバイスについてのエッセイ4本と、磯さんとリコーの研究者との対談記事3本の、合計7つのコンテンツを掲載しています"

 最近、表面的には、なかなか情報として伝わってこない磯光雄監督の動向。
 昨年の11月にこのような刺激的な企画で、磯監督の論考と対談が公開されていたので紹介する。

 まずは引用としては長文になるが、僕が興味深かった部分を引用してみます。
 もちろん全文を読まれるのをおススメしますが、斬新なポイントは以下です。文脈が取りにくいところは、僕の引用の悪い部分なので、そんなところは、ぜひ本文を当たってください。磯光雄監督ファンは必読です。
 赤字は僕が特に興味深かった点。

アニメーションの方角から2036年を妄想してみた:磯光雄 | リコーグループ 企業・IR | リコー

"◆「人格アバター会議」
「人工人格」。コンピュータ上で言語的な人格を再現する技術、もしくは人間の人格の一部をプログラムとして抽出して仕事させたりできてたらいいなと。(略)

言語化できない自分自身、つまり自分の無意識にアバターをかぶせて語らせてみたら、言語に縛られない自由なイメージを表現してくれるかもしれない。あるいは、若いころの自分自身を保存しておいて議論できたとしたらおもしろい体験です。

言語外情報を丸見えにする「丸見え超視覚化ツール」と「自分翻訳機」
私は絵描きなので似たような経験が多いのですが、身体から伝わってくる情報っていっぱいあるんです。でも、頭が切り捨ててしまうことも多い。だから、自分で描いてみた絵から「ああ、こうしたかったのか」と、自身の手に教えてもらう、みたいな経験が実際あるんですよ。

スポーツ選手も似たようなことを言いますね。絵描きじゃなくても、触覚や聴覚、ほかにも心拍や脳波といったものを総合的に視覚化することで、それまで自分でも気がつかなかった身体的な情報を発見できるかもしれない。(略)

頭の中にあるアイデアはすばらしいのに、説明しようとすると壊れてしまうことって結構あると思います。人間の脳内や身体には言語的でないイメージが、資源のように埋蔵されてると思うんですが、そんな言語化しにくいアイデアを、自分の無意識を視覚化して発掘できないかなってね。前のトピックの「人格アバター」をかぶせてしゃべらせてもいい。これはいわば未知の自分から情報を取り出す「自分翻訳機」ですね。(略)

「物語」である脚本作業に、作画の「動き」の感覚を投影したりしていました。「動き」と「物語」の間に、共感覚があるのかもしれません。

「真実のウソ」をついて想像力を引き出してくれる「ウソつきコンピュータ」
アニメーションのウソはシナリオ以外にもいくつかあり、まず動きに関するウソ。(略)飛び飛びの絵でも滑らかに動く「リミテッド」と呼ばれる技術ですが、少ない枚数でもちゃんと動いて見えるように、現実とは違う、誇張したウソの動きを描きます。(略)

次に、光や空間に関するウソ。(略)プロになるとみんな気づくことですが、なぜか上手にウソを使いこなした映像のほうが、ウソをつかずにつくった映像よりリアルに、本物に見えることがあるのです。これがフィクションのマジックです。

このように、人間にとって有益なウソがあるわけです。(略)

おそらく人類は言語を発見したときから、言語による描写と現実世界の食い違いが発生するという現象に気がついた。つまり言語とウソはほぼ同時期に発見されたんじゃないかと思うんです。(略)

もちろん人を陥れたり悪意ある嘘がNGなことは変わりはありませんが、2036年にはこんなふうに上手にユーザーを啓発してくれるような「ウソつきコンピュータ」があったらうれしいですね。こういった流れを、もっといまの文明に沿った新テクノロジーとして構築して、イノベーションを起こせないかなって妄想しているんですよ。"

人間をインターフェースにすれば、新たな仕事の概念も生まれる:磯光雄 | リコーグループ 企業・IR | リコー

"アニメーター/脚本家の磯光雄さんとリコーの研究者 齊所賢一郎による、未来の働き方についての対談

インターフェースはこの数十年間で劇的に発達しましたが、実は人間の身体、あるいは言語も、インターフェースの一種だと思うんですね。だから、身体や言語をインターフェースという目的だけに特化させれば、何か新しい概念が発見されて、それを独走させることでいろいろなものと会話できる世界がくるんじゃないかと妄想しています。(略)

普段は言語力のハンデで評価されていない知性が、急に鋭い意見を語りだす可能性もある。いまは「言語力=知性」と思われていますけど、知性と言語は別のものとして分化すべき時期ではないかと感じています。"

 ここで対談している齊所賢一郎氏は、リコーで自動車のHUD:ヘッドアップディスプレイ、それを利用したARの開発をしている技術者とのこと。今回はあまり述べられていないが、AR,MRについても『電脳コイル』観点で討議して欲しかったなぁ〜というのはファンの想いかと。

 今回の予測は、AR関連ではないけれど、言語と非言語の知性を、どう未来技術として取り込んでいけるのか、という問題設定は、まさに現在のSFの最先端をいくテーマ。興味深い論考と、対談です。

 上の引用文で赤字をしたところ、このブログを熱心に読んでいただいている方なら分かるかもしれないけれど、時々本Blogでも関心を持って突っ込んで書いてきている、人の言語と非言語/身体の知性の問題に、磯監督が強い関心を持たれていることがわかったのが収穫。

 公開されている未来予測のイラストは残念ながら磯氏のものではないけれど、多彩なアイデアが検討されており、ここから次回の新作が生まれてくるかもしれないと、ワクワクしてしまった。
 前回の記事に関連し、ここからいろいろな特許アイデアも出てきそうだけれど、今回は是非リコーとタッグを組んで、特許戦略もよろしく御願いしたいものです(^^)。

◆当ブログ記事 関連リンク
■解読 神林長平『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』
■感想 村上春樹『1Q84 BOOK1 BOOK2』
■ネタバレ感想 伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』: The Empire of Corpses
その他「意識」と「言語」に関連する記事

■感想 円城 塔『道化師の蝶』そして「松ノ枝の記」
■感想 円城 塔『Self-Reference ENGINE』
神林長平「いま集合的無意識を」関連つぶやき - Twilog

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