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2015年3月8日 - 2015年3月14日

2015.03.11

■感想 ノンフィクションW さらば愛する日本よ~密着・押井守の世界挑戦800日~(『GARM WARS The Last Druid : ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド』メイキング)

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ノンフィクションW さらば愛する日本よ~密着・押井守の世界挑戦800日~|ドキュメンタリー/教養|WOWOWオンライン 公式HP

" 『GARM WARS The Last Druid』が完成するまでの道のりは決して平たんではなかった。1997年に一度企画が凍結され、再始動できたのは2012年。ハリウッド映画製作等で活用されているカナダ政府による補助金制度を利用した映画製作に取り組むが、想像を超えた制約が大きく、プロジェクトは数々のトラブルに直面する。番組では2012年10月から押井をはじめ、今回初めて海外での実写の映画に挑戦することになり、さまざまな障害に直面するプロダクション・アイジー社長・石川光久らが参加する製作委員会の奮闘にも特別に密着取材。
 なぜ押井があえて海外への進出を図るのか?海外での映画製作に取り組み、日本と異なる製作スタイルとの調整を行ないながら、自分の求める映画を追求する彼の挑戦を追う。"

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「鬼才・押井守の世界」 最新作密着取材ドキュメントと代表作4本、WOWOWが放送 | ニコニコニュース

" 監督は「ここ十数年のデジタル映画を見てきた結論として、実写でやろうと。世界にひとつという役者の顔で。フルCGでは表現できることが足りなくて、本物の役者で実景で撮る中、合成も生きてくる」と撮影意義を語る。
 「ファンタジーの世界観を作るのは過酷で、手を抜 いたらそのようにしか画が撮れない。すべてを満たして成立する世界。その環境を手に入れるためにも、海外でやるしかないと思った。ファンタジーを表すのに、日本語でいいのかとか、役者に合わせた衣装にするのか、衣装に合った役者を選ぶのか?衣装の重要性もこの十数年で学んだ」とも。"

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 WOWOWで放映された押井守監督ドキュメンタリー「ノンフィクションW さらば愛する日本よ~密着・押井守の世界挑戦800日~」(2月28日(土)午後1:00)を観た。押井ファン、垂涎の映像だった。以下、ポイントを記します。
 3/2 25:30〜、3/22 8:00〜の2回再放送がある。3/22の分は、今からでも間に合うので、この記事で興味を持たれた方は、是非WOWOWにご加入を。押井ファンにとっては十分な価値があります(^^)。

・パイロットフィルムのシーンは、現在ネットに上がっているものとは別だった。それにしても映画の検討用に作られた模型は圧巻でした。八王子の展示会で見た巨人ダーナ他、ディテイルがハイビジョンで映し出された(冒頭の引用写真。テレビを撮影したものなのでディテイルが潰れていて申し訳ないです)。

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・『G.R.M. THE RECORD OF GARM WAR(ガルム戦記)』の頃のパイロットフィルム(一部)や設定資料、フィギュア等、門外不出資料がかなり画面に映し出された。興味深かったのは、そのロケハンで押井が訪れたアイルランドで、自らが欧州映画から受けた影響のルーツを、そのアイルランドの岩場の地に起源があることを体感した経験を語るところ。
・ケルト神話については語られていなかったが、欧州の文化が荒野の開拓から始まり、それとケルト神話の深い関係が映画の根底に横たわっているということなのだろう。

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・再始動した『ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド』のカナダでの制作の舞台裏。カナダ政府の映画振興で、制作費4割が戻って来ることから、カナダのスタジオとの共同制作となった。

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・『ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド』の押井による絵コンテ制作風景。絵コンテを描くプロダクションI.Gの机の上に、ハヤカワSF文庫青背が7-8冊置かれていたが、残念ながらタイトルは読めず。
・カナダでの撮影。スタジオでの1ヶ月の準備期間、予算とロケーション日数削減のせめぎ合い。日本から参加した7人(できるだけ日本人は少人数にするべき、という『アヴァロン』から学んだ押井の方針)、佐藤敦紀副監督と押井によるカナダ側プロデューサー ケン・ナカムラ氏とのせめぎ合い。
・撮影IN。俳優たちへの世界観説明という、興味深いシーン。予算面で暗礁に乗り上がりそうだったところでの、石川光久プロデューサーによるI.Gからの予算捻出(予定の5倍だったとか)。

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・制作,資金のトラブルからの、カナダ側プロデューサー更迭。スタジオ撮影と、ロケ地の情景。『天使のたまご』にも登場したあの押井戦車の実景撮影。森のシーンの戦闘シーンが美しい情景になっていた。
Img_1262  特に荒野のシーン、カナダの情景をかつて行ったアイルランドの岩場に見立てていることは確実で、その情景でしか描き得ない、ケルトの血脈が映画にどう表現されているか、とても気になる。

・映画の公開をどうするかの、制作委員会の会議シーン。作家性の強い作品になったので公開は限られたファン層に向けたものになるのではないかという意見に対して、押井「最後まで作りきってくれって要請があったから、現実的にどこを落とそうかと枝葉を切っていったら、いつもの私のスタイルの映画だったってだけの話なんだよ! これを怒らずして何を怒るんだって。それでさ、作家性がどうたら言われてさ。やりながら向こうと交渉しながら後手に回らざるを得ない。僕らにとっても石川にとってもこれに関わった人間にとって大きな反省材料」。どうやらカナダ側プロデューサー更迭に絡んでの発言のようであるが、更迭の詳細は描かれていなかったので、残念ながら深くはこのドキュメントだけではよくわからなかった。

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・本来15年前にやりたかったこと、それはその後『アバター』をピークに先にやられた。その丘に登ってみないと見えないことがあるはずで、今回それが見えた。今後、どう影響していくか、という感慨を含めたコメント。
・最後に今回の経験から、いい役者との出会いが今後の実写映画において重要だと感じている、と語る押井。また、次回作はヴァンパイア映画を撮りたいとも。文化的背景から、日本の風景には馴染まないそれをまた海外(どことは語らなかったが当然トランスヴァニアでしょうw)で撮りたいとコメント。

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 『ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド』の撮影の修羅場と、海外との共同の現場の充実が見事に映像として記録されていて、まさに押井ファン必見でしょう。痛々しかったのは今回の撮影の苦労が、押井監督の頭髪を奪ったという事実。映像での変化がその労苦を克明に語っている。

 それにしても、本篇の公開はいつなのだろうか。
 番組では今回もそれについては、何も語られなかった。
 以下の動画で、公開に苦戦している状況が伝えられている。

2月15日(日)@イオンシネマ高松東 『GARM WARS The Last Druid』 ゲスト/押井守監督、石川光久 ‐ ニコニコ動画:GINZA.

"さぬき映画祭 2015 2月15日(日)@イオンシネマ高松東
『GARM WARS The Last Druid』
ゲスト/押井守監督、石川光久"

 さぬき映画祭上映前トークショー動画。今だ正式公開が決まらない状況。
 石川Pの発言「I.Gでは押井実写には手を出さないはずだった。これだけのつもり」というのが切実に響きますね。是非、世界公開成功して欲しい。

◆関連リンク
押井守最新作『GARM WARS』ワールドプレミア感想まとめ! - Togetterまとめ
 twitterの友人Uotukiさんによる感想のまとめ。
押井 守『GARM WARS 白銀の審問艦』
 『ガルムウォーズ』の小説が、新刊として予定されているとのこと。映画公開より先行する4月刊予定。

・当Blog関連記事
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 ・情報 ノンフィクションW さらば愛する日本よ~密着・押井守の世界挑戦800日~(『GARM WARS The Last Druid : ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド』メイキング)

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2015.03.09

■感想 岩井俊二監督『花とアリス殺人事件』


「キットカット」 x 「花とアリス殺人事件」スペシャルコンテンツ - YouTube

"『花とアリス』はサウンドトラックのファンも多いことで知られていますが、岩井監督自身がメンバーでもある音楽ユニット「ヘクとパスカル」が本作の音楽を担当。作品の大き­な見所のひとつとなっています。このショートフィルムでは、「ヘクとパスカル」が歌う­主題歌「fish in the pool」に『花とアリス殺人事件』特別編集の短編動画です。"

 まず上の動画の紹介。
 絵コンテの(映画エンドクレジットで流れたものと同様の)映像と、ヘクとパスカルの主題歌「fish in the pool」が聴けます。ヘクとパスカルの歌は『なぞの転校生』のラストで流れた「風が吹いてる」に惹かれて感心を持ってますが、この主題歌もいいです。

 で、ここから映画の感想。
 岩井俊二監督『花とアリス殺人事件』、新しいアニメ映画の登場って感じでした。
 ロトスコーピングと3D-CGを使った独特の映像と、岩井俊二監督らしい、リアルで(そして数奇!で愉快な)きめ細かい学生生活の物語に爆笑しつつ、グッと来るのを抑えつつw、観終わりました。

 世間で岩井監督作は「リリカル」という言葉で表現されるけれど、実はあまりこの言葉は岩井作品のコアを射抜いていない。この映画も「リリカル」ではなく中学生の生活を「リアル」に描き、そして結構ブラック。
 人物のきめ細かい感情の動きを丁寧に追っているところがたぶん「リリカル」と言われる所以であろうが、そのディテイルで描かれるのが、実はリアルでブラックな人の有り様であるのは、あまり語られていない。
 もちろん詩的な側面もそのきめ細かさの中から前面に出てきているが、そこだけを取り上げるのは岩井監督のコアを掴んでいないと思うのだけれど、いかがだろうか。例えばこの映画の「ムー篇」に現れている中学校のリアルを象徴的に描くワンカット。学校にある子供達にとってのリアルな痛み/ストレスをブラックに痛々しく、そして滑稽に象徴的に描き出した出色のシーンで岩井監督らしさ全開と思うのだけれどw。
 そして次に独特のアニメ映像について。

岩井俊二 僕の「やぶにらみの暴君」 - 映画「王と鳥」公式サイト

"  個人的には最近の日本のアニメの「動き」にどうも辟易していて、こういう海外の古いアニメの方が好きなんですが、その理由のひとつには、動きがリアルだから、というの があります。いわゆるフルアニメとリミテッドアニメの違いというのはあるんでしょう。トレーシングという技法のせいもあるでしょう。しかしそれだけではなく、この時代のアニメには、こういう動きにはこのパターン、という「型」がまだ確立していない気がして、それが妙な生々しさを生んでいる気がするわけです。たとえば人間が歩く。どう歩くのか。人を歩かせてみる。それを描いてみる。こういうプロセスがいちいち存在し、しかもそれがまだ荒削りなので妙に生々しく見える。この生々しさがいまや逆に新鮮というか。

 アニメ界では実写をなぞるなんていうのは邪道だという風潮があると誰かから聞いてがっかりしたことがあります。それは本末転倒だろうと思いました。アニ メの原点とはなんなのか? それはそもそもモノがどういう風に動くのかなぞることじゃなかったのか?

 進化しすぎたアニメ界はまるで現実から得るものはもはや何もないと思っているのか?
 まあそんなこともないんでしょうが、現在のアニメが大友克洋の絵と宮崎アニメの動きを手本に進化したのは否定できないことでしょう。"

 この言葉に現れているように、本作は岩井監督による新しいアニメ映像へのトライ作品である。ここで書かれているのは、大友宮崎らによって定式化されて、現実からある部分乖離した今の日本のアニメに対するアンチテーゼの提示である。そして本作は、、、。

 奥行きを感じさせる映像/映画のレンズによる効果をアニメで再現したようなシーンは、とくに遠近の移動する部分でパースの変化が心地よく、今までのアニメにない、独特の質感を獲得している。(リンクした動画からもそこは感じて頂けるかと。)
 加えて人物を一定の距離離れて捉えた、全身作画のシーン。人の歩きのランダムさや、定式化されたアニメと比較するとグニャグニャと動くシーンは独特の作品のリアルを支えている映像だ。
 これが岩井監督がロトスコープにこだわった理由かも知れない。

 もう一つ特筆すべきは、滝口比呂志美術監督の背景。ロトスコープと合わせるかのように、実写映像をトレース(もしくは画像変換処理)した水彩/HDR写真のようなリアルで、現実強化した風景が素晴らしい。(滝口美術監督は『言の葉の庭』も担当されたとか。あの作品の背景も素晴らしいものでした)
 一部その背景が3D的に回り込んだシーンもあり息を飲みました(^^)。

 あとあまりネットでも書かれてませんが、エンドクレジットに「作画協力 磯光雄」の文字が!
 素晴らしい動きのアニメートがあったけれど、磯光雄氏の超絶作画の血が注がれているのだろうか。 『電脳コイル』後、久々の正式クレジットだけに、岩井監督と磯光雄作画のコラボレーションにも注目。
 ロトスコーブ映像の、手描きによる修正が磯氏ほか手描きアニメーターによって実施されたのであろうか。どこをどう修正されたか、そうした面も今後紹介されたら嬉しいと思う。そこまでやった時に、現代アニメへのアンチテーゼがしっかりと提示されることになるのではないだろうか。

▶ 花とアリス殺人事件 ショートカット「ムー篇」 - YouTube
▶ 花とアリス殺人事件 ショートカット「走る篇」 - YouTube
▶ 花とアリス殺人事件 ショートカット「花篇」 - YouTube
▶ 花とアリス殺人事件 ショートカット「タクシー篇」 - YouTube
 映画のシーンが4つ紹介されています。映画を観るかどうか迷っている方は、これでまず合うかどうか、確認してみるのをおススメします。
 特に「ムー篇」が僕の推奨(^^;)。

◆関連リンク
ヘクとパスカル『ぼくら』

"映画監督の岩井俊二、女優でシンガー・ソングライターの椎名琴音、作編曲家の桑原まこで結成された“ヘクとパスカル”のデビュー作。岩井俊二が企画・脚本を手掛けたTVドラマ『なぞの転校生』の挿入歌となった岩井俊二作詞作曲の「風が吹いてる」、岩井俊二監督の短編アニメーション『TOWN WORKERS』のエンディング・テーマ「ぼくら」他を収録"

 岩井俊二の音楽ユニット、初CD。僕のiPhoneはiTunesで入れた「風が吹いてる」ヘビロテしてます。
岩井俊二が運命的に結成した音楽集団 ヘクとパスカルインタビュー - 音楽インタビュー : CINRA.NET

当Blog関連記事
リチャード・リンクレイター監督『ウェーキングライフ』 Waking Life
 ロトスコープで衝撃的だったのがこの作品。必見です。
リチャード・リンクレイター監督『スキャナー・ダークリー:A Scanner Darkly』  アニメと実写を融合した技法「ロトスコープ」とは
 続いてリンクレーター、PKディックとその新映像の融合ということで期待したのですが、こちらはイマイチでしたw。

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