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2016年1月

2016.01.27

■情報 ピーター・ティエリャス『日本合衆国』 : Peter Tieryas "United States of Japan"

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【画像あり】『United States of Japan(日本合衆国)』という小説が発売予定 | World Action

"2016年3月1日に発売予定の『United States of Japan(日本合衆国)』。この本は著者いわく、フィリップ・K・ディックの『高い城の男』の「心の続編」であるそうだ。違いといえば、『高い城の男』が大日本帝国とナチス・ドイツによって分割占領されている旧アメリカ合衆国領を舞台にしているのに対し、本作品では日本が唯一の支配国であることだ。それともう一つ大きな違いがある。日本が巨大ロボの軍を用いてアメリカを支配しているのだ。

今回ここにあげるファインアートは、著者のPeter Tieryas氏がJohn Liberto(商業的なゲームアーティストの中でも最高の1人)に描いてもらったものだ。この中の一つは表紙にも使われる。"

 『高い城の男』の「心の続編」(^^)、ストーリーはキワモノ的に見えますが、ディックと巨大ロボットって実は結構親和性が高そうなので、面白そうな小説ですね。
 John Liberto公式HPでこのイラストレーター氏の作品はいくつか見られます。

United States of Japan : Peter Tieryas : 9780857665348
 こちらに少し詳しいあらすじが書いてあります。

" 10年前に日本が世界大戦を勝利した世界。
 反乱軍は、アメリカが勝った世界を描いた違法ビデオゲームを拡散している。ビデオゲームを取り締まる、キャプテン石村紅子は..."

 ビデオゲームで描かれる幻想のアメリカ合衆国。そして動き出す巨大ロボット、、、まずはワクワクする設定かと。

 ディックと日本アニメの親和性も実は高いと思うので、ハリウッドだけでなく、日本でのPKD映像化も期待したいものです。

◆関連リンク
Peter Tieryas: 洋書『United States of Japan』
 日本のAmazonでも予約できます。アメリカ本国のAmazonでは$9.6です。
 おもしろいようなら、是非翻訳版の日本での出版を望みます。

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2016.01.25

■感想 大林宣彦監督『野のなななのか』


大林宣彦監督作品『野のなななのか』予告編180秒ヴァージョン - YouTube
映画『野のなななのか』公式サイト

第37回ぎふアジア映画祭2015 (会場:岐阜市文化センター小劇場)

"13:30 野のなななのか上映
16:35 大林監督トークショー"

 12/6(日)に、『野のなななのか』を観て、その後、大林宣彦監督の講演を聴いた。
 言語と映像と音楽が高密度に繰り出され、瑞々しい現実と幻想を融合した3時間弱の映画。トークショーで語る監督と同じく、とても想いのこもった映画である。

 主人公の元病院長の鈴木光男(品川徹)が、若き日に親友と交わす芸術論。
 "絵の線では描けない、人とは?  心だ、魂だ、立体だ、詩で描くんだ"
 
 従来の物語映画で描かれる人物は、ストーリーという言語によって、一本の線としてその人生が表現される。それに対してこの映画は、時制と起承転結、そして生と死の境界までもが、混沌として線ではなく立体で描かれている。
 一本の物語の線でなく、こうして立体で描かれた映画のなんというふくよかな豊潤。ドキュメンタリーとドラマの垣根を越えて、やはり豊潤を描いた前作『この空の花 ー 長岡花火物語』よりも、ドラマではあるが時制や幻想を織り交ぜて、この混沌をさらに進めた本作の獲得した映画の「立体感」がとにかく素晴らしい。

 若き日の鈴木光男と綾野と信子。とりわけ、中原中也の詩を援用しながら描かれる精神性が素晴らしい。人の記憶に言語として結晶化する何ものかに、眩暈にも似た感情を込めた大林監督の筆致。
 これを映画芸術と呼ばずして何を映画と呼ぶのかってくらい、本当にため息しか出ないこの映画の瞬間瞬間には心を持っていかれます。

 そのクライマックスで描かれる、野の中の楽団のシーン。パスカルズというバンドの主題曲「野のなななのか」が映画の密度をさらに高めている。

 現在、この幻のような映画が、自主上映でしか観られないのが残念でならない。
 が、いよいよ今度の春、ブルーレイとDVDが発売されるということで、これから何度か観て、幻の正体に近づいてみたいと思う。

◆関連リンク
ブルーレイ予約フォーム | 野のなななのか

"DVD特別版 ¥4,352(税別)
 【映像特典:『野のなななのか』予告編+TVスポット集etc】
BLU-RAY特別版 ¥5,278(税別)
 【映像特典:『野のなななのか』予告編+TVスポット集etc】
メイキング特別版(予約受付申込み)¥3,240(税別)
 【映像特典:『野のなななのか』メイキングヴィデオ】
※メイキング特別版は、1000枚以上のお申込みを頂いた時点で販売が正式にスタート致します。万一、予約数が1000枚に満たない場合は、販売は行われませんので予めご了承ください。"

 「メイキング特別版」は予約数獲得が販売条件なので、皆さん、是非ご予約を。
寺島咲(wiki)

"金曜ドラマ 3年B組金八先生(TBS)- 清水信子役 "

 この女優さんがとても素敵だったので、wikiで調べてみたら以前に『野のなななのか』で常盤貴子演ずる幻の女性 清水信子と同じ役名を以前に演じているのですね。これは偶然なのか、それとも大林監督の考えがあったのか。
PASCALS(パスカルズ) - 野のなななのか nononanananoka [AOYAMA Cay, Tokyo, JAPAN - 2014-03-19] - YouTube
ライムスター宇多丸 ムービーウォッチメン 大林宣彦監督 常盤貴子出演「野のなななのか」- YouTube 

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2016.01.21

■感想 テリー・ギリアム監督『ゼロの未来』 & 園子温監督『ラブ&ピース』


映画『ゼロの未来』予告編 - YouTube

 テリー・ギリアム監督『ゼロの未来』DVD初見。
 冒頭の未来都市のカラフルで猥雑な光景、クリストフ・ヴァルツ演じる主人公コーエン・レスの住む寂れた廃墟の教会等の美術が素晴らしい。
 物語はほぼこの教会の中で描かれるためにスケール感は少々乏しいが、閉塞されたコンピュータ社会、単調な仕事に勤しむ社員と管理職、解放のイメージを描く女性キャラクター、会社の中枢にある巨大な装置、、、それらの意匠と主人公のキャラクターが、自然と彷彿させるのが『未来世紀ブラジル』。

 コンピューターやネット、ヴァーチャルリアリティを描く光景は少々異なるが、これはギリアムのセルフリメイク的な小品になっている。 VRとして描かれたネット空間上の浜辺の光景とベインズリーという女性との交流にギリアムの理想郷が描かれているのかも。ちょっと『コンタクト』の異星の浜辺に似ていますね。


映画『ラブ&ピース』×『忌野清志郎 ロックン・ロール・ショー The FILM ~#1入門編~』コラボ忌野清志郎「スローバラード」ミュージックビデオ - YouTube.

 園子温監督『ラブ&ピース』DVD初見。
 もともと1990年頃に園監督はこの映画の脚本を書き、忌野清志郎主演で撮りたいと考えて清志郎にもオファーしたということだけれど、もしそれが実現していたらと考えると残念でならない。
 ボーカルがキーになる映画で、朴訥とした演技でこの主役を清志郎が演っていたら、、、。
 前半の会社員としての清志郎の違和感は、本作ほど奇怪な主人公にならなかったのじゃないか、そして後半のブルースマンとしての演技と、園監督が書いた曲をあの清志郎の声で歌われていたら、、、。
 そしてクライマックスでかかる「スローバラード」。

 歴史にIFはないけれど、そんな幻の映画が実現していたら、その後の園監督作品と清志郎の、さらなるコラボレーションでどんな作品が生まれていたか、、、。二人のファンとして、存在しなかったそんなパラレルワールドの共作映画を想像しないわけにいかない。

 園ファンとして、もうひとつメモしておくと、本作は監督が好きな映画のベスト1に挙げるジョージ・ミラー脚本,制作の クリス・ヌーナン監督『ベイブ』を思わせる動物やオモチャたちのシーンがある。
 本作、初公開は6月だったけれど、本来は12月に上映すべき映画だったかも。園監督の『トイ・ストーリー3』オマージュにも溢れているような気がする。

 特撮映画としてもクライマックスの迫力は素晴らしい。園作品としては異色作だけれど、切なくも楽しいエンタテインメント、今更だけれど、お薦めです。

◆関連リンク
園監督の好きな映画ベスト10
・"水道橋博士と高橋ヨシキの「動物映画」特集「ラブ&ピース」「ベイブ」ほか"
 園監督も出演。

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2016.01.18

■チャーリー・カウフマン+デューク・ジョンソン監督『アノマリサ:Anomalisa』Charlie Kaufman Stop Motion Animation


Anomalisa Official Trailer #1 (2016) - Charlie Kaufman Stop Motion Animation HD - YouTube

Anomalisaposter

チャーリー・カウフマン監督&脚本のストップモーションアニメ、海外版予告編 - 映画ナタリー

" 脚本を手がけた「マルコヴィッチ の穴」や、監督作「脳内ニューヨーク」で知られるチャーリー・カウフマンが、初めてストップモーションアニメに挑んだ「Anomalisa(原題)」の海 外版予告編がYouTubeで公開された。 カウフマンが監督と脚本を担当した本作は、第72回ヴェネツィア国際映画祭にて審査員大賞を獲得。
 人生に絶望している男性作家が、ある女性と出会ったこと で生きる意味を見いだしていく姿をユーモラスに描き出す。共同監督には、ストップモーションアニメ作品に監督やプロデューサーとして関わってきたデュー ク・ジョンソンが名を連ね、本作は12月30日にアメリカの劇場で封切られる。日本での公開は現在のところ未定。

 チャーリー・カウフマンの『脳内ニューヨーク』に次ぐ監督第二作は、何とリアルな人形アニメーション!
 『マルコビッチの穴』等スパイク・ジョーンズ監督作品の脚本家で、自身の監督第1作『脳内ニューヨーク:Synecdoche, New York』(2008)が大傑作だっただけに、次回作が出るのを首を長くして待っていたのですが、第二作が8年空いてやっとアメリカで公開された。

 この作品、今回のアカデミー賞にノミネートされていますね。

"長編アニメーション賞には米林宏昌監督のスタジオジブリ作品「思い出のマーニー」、チャーリー・カウフマン監督の「Anomalisa」、ディズニー/ピクサー作品「インサイド・ヘッド」がノミネートされた。"

 AppleのiTunesのサイトによると、アメリカでは15.12/30に限定公開、この1月に全米拡大公開されるようです。日本での公開も是非実現してほしいものです。評判はとても良いようなので、アカデミー長編アニメ賞を受賞して日本公開の後押しとなるといいですね。

 ANOMALISA Official Featurette - Humanizing the Puppets (2015) Charlie Kaufman - YouTube
 こちらのメーキングを観ると、体の各パーツを多数作って、その組み合わせで微妙な演技をさせているようです。

 「人間は1人も出ていないのに15年もっともヒューマンな映画」と絶賛されたとのことで木目細かいパペットの演出が楽しみです。

Charlie Kaufman's Anomalisa by Starburns Industries, Inc. — Kickstarter
 この作品、制作費が集まらずキックスタータで予算獲得したとのこと。
 $200,000目標で、$406,237の予算を獲得したとのこと。でもこれだけの予算ではストップモーションアニメの制作費は厳しかったでしょうね。

◆関連リンク
Anomalisa (2015) - Rotten Tomatoes Tomatometerでは94%。高評価です。
・Duke Johnson - IMDb

 メアリー・シェリーの"Frankenhole"というシリーズ物が興味深い。日本でもどこかで観られるのでしょうか。 シェリーの他、ラブクラフト、ポー、ウェルズ、カフカと錚々たる作家の作品を原作にした人形アニメのシリーズのようです。
Mary Shelley's Frankenhole (TV Series 2010– ) - IMDb
H.P. Lovecraft's Vagina  Mary Shelley's Frankenhole | Adult Swim - YouTube
 タイトル通り、少し過激な動画。

Anomalisa(Facebook)
Anomalisa Kickstarter Behind the Scenes - YouTube
 こちらもメイキング映像。

・当Blog関連記事
 ■感想 チャーリー・カウフマン監督『脳内ニューヨーク:Synecdoche, New York』

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2016.01.13

■感想 原恵一監督『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』(さるすべり ミス北斎)


映画『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』予告編 - YouTube.

杉浦日向子の代表作の一つ「百日紅」を、原恵一監督がアニメ映画化した群像劇。江戸の浮世絵師と­して数多くの作品を発表し、世界中のさまざまな分野に多大な影響をもたらした葛飾北斎­と、その制作をサポートし続けた娘・お栄(後の葛飾応為)を取り巻く人間模様を、江戸­情緒たっぷりに描く。アニメーション制作は、『攻殻機動隊』『東のエデン』シリーズな­どのProduction I.Gが担当する。

 原恵一監督『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』DVD初見。
 この映画、アーティストを描くことにより、映像芸術論としても大変秀でている素晴らしい傑作になっていますね。原作も読んでいないので、まさかこのような映画だとは思いもしませんでした(基本、映画は前情報をほとんど入れないようにしているので、と言い訳;;)。

 映画館に観に行かなかった自分の不明を恥じるばかりだけど、映画のキービジュアルは見ていたが、前作『はじまりのみち』の印象も手伝って、江戸の庶民の生活を地に足のついた描写で描いている作品なのかな、くらいに思っていた。
 ところがどっこい(^^;;)、これは江戸時代の人々の、記憶と幻想の視覚装置であった絵師の浮世絵と、人々の脳内映像を巡る物語である。現在、写真や映画や漫画やテレビが、人類に対して果たしている役割を浮世絵が担っていた時代の、人々の心的映像を見事に活写したアニメーションである。

 龍や鬼の絵、春画、風景画。この映画で描かれた江戸の町人の心的光景は、現在の最先端のテクノロジーにより制作されている映像文化よりも、心の映像としては深いものがあるのではないか。

 それは浮世絵が少ない色と線により表現されていることで、人の想像力に委ねていることによるのかもしれない。そしてその手前に広大に広がっているのは、科学や西欧文明によって理知的になってしまう以前の、江戸の人々が持っていた豊かな世界認識である(ヒトはそれを”未開”と呼ぶかもしれないが...)。それらが情報量の少ない絵によって、見事に広大に圧縮解凍する様が、この映画のいろいろなシーンで炸裂する。
 映画はそれだけでなく、盲目の少女 お猶が音と触覚によって、心的に見ている江戸の映像を観客に想起させることで、観客に視覚障害者の”映像"だけでなく、さらに江戸の人々の心に写っていた光景も想起させることに成功している。

 そうした奇跡的な瞬間を描くために、原監督の緻密な演出と、丹念に作り込まれたアニメーションが見事なアンサンブルを奏でている。

 また活き活きとした、過去を蘇らせるというよりも、まさに現在進行形として江戸を描くのに、富貴晴美と辻陽によるロック/ジャズの音楽と椎名林檎の曲「最果てが見たい」が最大限の効果を演出している。

 監督とスタッフ(特に作画監督/キャラクターデザインの板津匡覧氏他作画陣)の見事な手腕にとにかく感嘆して観終えました。
 原作も、是非手に取ってみなければ、、、。

 最後に蛇足ですが、この映画、江戸物ということで下町、吉原、花魁等々、落語の世界とも通ずる部分があり、その雰囲気も湛えています。
 そうした時に少し物足りなかったのが、映画の演出としてのテンポ。
 落語のような場面展開のスピーディさのようなものが取り入れられていたら、新しい江戸的な映画になったのではないか。談志師匠の落語の定義「落語は江戸の風が吹くものを言うんだ」という言葉通り、その映像にさらに江戸の風が吹いていたのではないかと想像せずにいられない(^^)。

◆関連リンク
百日紅 ~Miss HOKUSAI~(公式FB)
葛飾応為 (wiki) のちのお栄の画号。

"北斎の門人・露木為一による『北斎仮宅写生図』に、北斎と応為の肖像が描かれている。
現存する作品は10点前後と非常に少ない。西洋画法への関心が強く、誇張した明暗法と細密描写に優れた肉筆画が残る。"

 実際は北斎に「アゴ」と呼ばれるような四角いアゴの持ち主だったようです。リンク先の『北斎仮宅写生図』参照。
・お栄の作品
 月下砧打ち美人図 - 東京国立博物館
 Three Women Playing Musical Instruments | Museum of Fine Arts, Boston
(三曲合奏図)
 葛飾応為《吉原格子先の図》
 その他の作品については、こちらのブログに詳しく描かれています。
 → 2015年05月15日 : Art & Bell by Tora
原恵一監督『百日紅~Miss HOKUSAI~ (特装限定版) [Blu-ray] 』

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2016.01.11

■感想 ピート・ドクター監督『インサイド・ヘッド』"Inside Out"


Inside Out - Official US Trailer 2 - YouTube.

 ピート・ドクター監督『インサイド・ヘッド』ブルーレイ初見。脳内のヘッドクォーターに住む5つの感情による、CGアニメーションの特質を最大限活かしたキャラクターの表情豊かな描写が素晴らしい。

 コア・メモリーから構成された"島"の設定に代表される脳内の構造、夢の製造工場、抽象ゾーン、イマジネーションランド、潜在意識といった魅力的な設定が面白い。ただ上映時間は90分と短いため少し食い足りない。こうした設定を活かして、例えば抽象概念が暴れるとか空想癖のあるキャラの脳内暴走とか、もうひとひねりして全体で2時間くらいあっても良かったのではないか。




★★★★★★★★以下、ネタバレあり。ご注意! ★★★★★★★★

 公式予告篇映像にも出てくるビンボンという空想上の友達キャラの活躍が何か嬉しい。僕は幼児期にこうした空想の友達は持っていなかったけれど、それが実在した人に感想を聞いてみたい。その頃の自身の記憶を深層意識から掘り起こされて、たまらない想いを抱かせられたのではないだろうか(^^)。

 世界で大ヒットしたそうだけれど、この映画はまだまだ色んな広がりのある可能性が埋もれた素材のような気がする。例えば主人公の恋愛だとか、大人になった後の仕事のプロジェクト遂行時の感情だとか、、、、主人公を変えた物語も面白いかもしれない。僕は本作の抽象概念の描写に顕著なように、心の中の幻想的な映像描写を突き進めて、トンデモない幻想物語も観てみたい。

 これだけの大ヒットなのだから、枝篇として30分くらいで、ピクサーによるエッジの効いたアートアニメーションをトライしてもらいたいものだw。

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 あと専門家の知見を入れたという脳内の構造的な置き方はかなり面白いのだけれど、欲を言うと、さらに最先端の意識論みたいなものも踏まえていたら、最新SFの文脈で議論されるような映画になったかもしれない。そこのところは本映画が絶賛されている世間の認識に違和感を覚えるところ。

 記憶のセグメントを球で表したり、人格を島に例えるとかとても面白いのだけれど、煎じつめてしまうと、5つの感情たちはよく昔からある映画のキャラクターの周りに飛ぶ悪魔と天使の図式の延長上である。
 
 僕は意識と無意識領域の最新の知見は、無意識領域から意識領域へ情報が受け渡される部分と、意識の側の言語的な組み立てがキーになって(端的に書くと言語が意識そのものというような荒っぽい認識w)、意識側からの無意識への影響がポイントだと思っている。つまりその二つの領域の往還から、人の総体みたいなものが見えてくると思う。

 その観点から言うとこの映画はつまらない。
 なぜなら、意識サイド(つまり主役の女の子ライリー)から5つの感情に対して、逆に影響が及ぼされるような描写や、その両者間での複雑なやりとりというものが何も描かれていないから。

 さきほど古来アニメーション等で頭上に飛ぶ「悪魔と天使」の図式から出ていない、と書いたけれど、実はこの両者間でのやりとりという観点からは、「悪魔と天使」コンセプトよりもこの映画は退化しているのだ。

 ほとんど一方的に5つの感情の操作によりヘッドクォーターからの指示に従うだけのライリーは、まるで操り人形のようである。
 本来、人間は内側の感情に対して、意識という自我が言語によってその主体性をコントロールするような側面がかなりあるのだけれど、それが何一つ表現されていないのがこの映画の弱点である、と思う。

 もしそうした部分まで描かれていたら、映画はもっとダイナミックなものになっていただろうし、神林長平や伊藤計劃以後の意識テーマSFと同じように大変スリリングになったと思うので残念である。(、、、そこまでやってしまうとピクサーのファミリー枠を大幅に逸脱する危険性は高いんだけれど、、(^^;))

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 同時上映でブルーレイに同梱された「南の島のラブソング」。何と海底火山の恋というトンデモないバカSFチックな素材。これも堪能させていただきました。

◆関連リンク
ピート・ドクター監督『インサイド・ヘッドMovieNEXプラス3D』

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2016.01.06

■感想 立川吉笑 『現在落語論』


立川吉笑 『現在落語論』 を語る - YouTube

"「立川談志の『"現代"落語論』から50年。孫弟子・吉笑が語る『"現在"落語論』!」と題して、吉笑さんが話題の新刊『現在落­語論』について語っています。

http://www.tbsradio.jp/ss954/2015/12/21/
TBSラジオ 荻上チキSession 22 ミッドナイトセッション 2015年12月21日 出演:荻上チキ、南部広美"

立川吉笑 『現在落語論』(毎日新聞出版)読了。
 いつもPodcastで聴いている「荻上チキSession 22」に2014年秋に登場して興味深かった落語家 立川吉笑が、2度目の登場で自著を紹介されていたので、読んでみた。引用した上のYoutubeの音声ファイルで語られている、落語のシュールな可能性についての言葉がとても興味深い。

 立川派の若手、立川吉笑による新進落語論。
 特に本の前半、落語の語りの特性からシュールな描写の可能性について述べる筆致は、まさに奇想SFや叙述ミステリーと真髄を同じくするもので、そのまま幻想文学論に援用しても良いくらい(^^;)。

 立川吉笑は本書で叙述ミステリーについては述べているが、バリントン・ベイリーとかイアン・ワトスン、R・A・ラファティ、円城塔他の想像力の極北を切り拓く、不条理SF(バカSF)は読んでいないのだろうかw。

 落語の特性、登場人物たちの語りだけで、観客の頭の中に、冥界の情景(例えば『死神』)とか、人間が真っ二つに切られてその両方が自由に動き回る(「胴切り」)光景だとかを縦横無尽に時空を超えて描けるところに着目し、そのシュールな光景で奇天烈なお笑いを描こうと考えているところが凄く期待させる。
 上のYoutubeの音声ファイルで紹介されている幻想枕「赤鬼」のくだりを聴くだけでも、吉笑奇想落語の一端を知ることができるが、これらの延長上に不条理SF(バカSF)が存在していると思うのは僕だけだろうか。
 例えば、円城塔『Self-Reference ENGINE』の短篇を落語化してみたら、素晴らしい作品になるんじゃないかとか、夢想しないではいられません。

 今後、伝統芸術と思われている落語の、若者たちへの大衆芸能としての解放に、立川吉笑奇想落語が活躍するのを期待してやまない。こうした本で落語の語り口による新しい笑いの可能性を明文化できる先鋭な落語家がトライする世界に大いに興味がわく。

 SFと落語の関わりというのは、小松左京と桂米朝の関係とか昔から幻想方面で接点があり、古くにはSF大会で米朝により「地獄八景亡者戯」が演じられたこともあったようで、奇想方面でのクロスオーバーが今後も実現したら嬉しいと思う。(最近、家族の影響で立川志の輔とか春風亭一之輔、柳家三三、桂文治他が名古屋へ来ると、高座へ出向いているのでそんな夢想を...(^^;))。

 今のところ東海地方で吉笑落語を聴ける機会は皆無なようだけれど、是非とも一度高座を聴いてみたいものです。東京から大阪へ素通りしないで、名古屋でも一席設けて頂きたいものです。

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