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2016年5月

2016.05.31

■写真レポート 諏訪大社式年造営御柱大祭 と 茅野市の縄文をめぐる『暗黒神話』な旅

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信州諏訪 御柱祭 平成二十八丙申年「諏訪大社式年造営御柱大祭」
御柱祭 - Wikipedia

"御柱(おんばしら、みはしら)または御柱祭(-さい、-まつり)は、長野県諏訪地方で行われる祭である[1]。諏訪大社における最大の行事である。正式には「式年造営御柱大祭」といい、寅と申の年に行なわれる式年祭である[1]。"

諸星大二郎: 『暗黒神話』と古代史の旅 (別冊太陽 太陽の地図帖 27) 平凡社公式

"この御柱の由来には、神霊降臨の依代、聖地の標示、社殿建て替えの代用などさまざまな説がある。『古事記』では国譲りの際、タケミカヅチに追われることとなったタケミナカタが諏訪湖畔で降伏、この地から出ないことを約束し、その結界として、神社の四隅を仕切ったと伝える。"

 5月中旬に「諸星大二郎: 『暗黒神話』と古代史の旅」をガイドに、一度、見てみたかった御柱祭を長野県諏訪市で見てきた。今回は、御柱祭と諏訪市の隣、茅野市にある縄文の遺跡等を見学した『暗黒神話』を辿る簡単なレポートである。

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 詳細はWikipedia等を見て欲しいが、この御柱祭は平安時代から続く諏訪地方の壮大な祭である。諏訪大社の4つの社に、それぞれ4本づつの巨大な樅の大木を建てるのだけれど、それらは山から切り出した後、諏訪と茅野の市内を物凄い数の氏子の人々によって人力で運ばれ、そして最後にお宮の四隅にこれも人力で立てられて、各社に結界を張るものである。
 物凄い数というのは、各柱が15m程度ありこれを運ぶのにおおよそ50人ほどの人が3日間×3週の時間をかける。そしてそれが16本、つまり(仮に)50人×3日間×3週×16本=7200人日の工数がかかるわけである。諏訪地方の氏子の方々がおそらく総出でやっているのではないかという祭は、会場に行ってみると、多くの人がほとんど法被を着た氏子とその家族。僕らのような観光客はおそらくかなりマイナーな人数でないかと思えるほどである。(7200人日という人出は下衆な話だが、人件費換算したらおそらく4億円ほどはかかっているのではないだろうか)

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 そしてさらに凄いのは、地元のケーブルテレビでこの9日間、24時間中継が実施されていること。朝からに晩は各社と柱を引いている街からの生中継で、夜中はその録画番組。諏訪地方の大勢の方がそこに登場しているはずで、丁寧に捉えた映像は、おそらくその家族の人々のために24時間放送されていると思われる。
 人が多くて祭り本番の会場は、ほとんど肉眼で柱を見ることができないのだけど、この中継によって、僕も祭のコアの熱気に触れることができた。
 上の写真は、そのCATVの画面写真である。
 LCV御柱特設サイト こちらがCATV局 LCVの特設サイトである。

◆茅野の縄文

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 まずは諸星大二郎『暗黒神話』の冒頭の舞台となった茅野市尖石縄文考古館。主人公 山門武が謎の老人 竹内と会う場所である。
 ここには蛇体把手付土器他、多数の縄文時代の土器、土偶が展示されている。
 興味深かったのはもちろんその土器土偶の造形。特に館内のビデオで述べられていた土器の文様が文字のなかった縄文時代の何らかの形態による意志伝達の手段ではないか、という説。

 人々の心に浮かんだ物語等を精緻な文様で表したのではないか、という説が、日本各地の縄文遺跡から似たような文様が見つかっていることから紹介されるのだけれど、形象による記録というのが文字よりも絵に近いもので原初的に行われていたというのはとても器用み深い。
 その当時、言語は会話として用いられていたと思われるが、それをそのまま一文字づつに割り付けるのではなく、文様として表現し記録するというのは、どこか画像による現代のコミュニケーションを彷彿とさせて、究極映像研としては興味が尽きない。

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 そして茅野市尖石縄文考古館に隣接して、縦穴式住居が多数復元されている。
 五月の青空と緑、そして古代を忍ばせる茅葺の色。この空間は、気持ちをリラックスさせてくれる極上の場を形成している。ここで昼寝してみたい(^^)。

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 そしてこれも隣接する縄文土器が発掘された尖石遺跡。
 上の写真はその尖石で、「諸星大二郎: 『暗黒神話』と古代史の旅」の記述によると、この1mほどの石の小ささにがっかりしたが説明文の「地中に埋まっている部分の大きさは不明」という記述から、足元に何十mもの巨石が埋まっていることを想像し、展示品の蛇体把手付土器とそれが結びついて『暗黒神話』の構想につながった、とある。
 ここに立った諸星大二郎氏の想像に頭を巡らせ、ここでも4本の柱で結界を張られた石から、いろいろな想像を膨らませた。

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 こちらは諏訪大社下社春宮の近くにある、万治の石仏wikiはこちら
 岡本太郎が賞賛したことで有名になったらしいが、なんとも素晴らしい石仏の顔である。近くには太郎氏筆による「万治の大仏」銘が刻まれた石板も存在する。岡本太郎がこの地で何を思ったのかも知りたいところである。

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 さて次は、尖石の高地から茅野市内に降りて、神長守矢家祈祷殿
 建物はこの地に生まれ育った路上観察学会の藤森照信氏の建築家としてのスタートに設計された建物。で、中は動物供養の祭事「御頭祭」の復元展示等がある神事空間。建物の雰囲気はのちの藤森建築を象徴する落ち着いた土着的なもの。
 この裏手に、ミシャグジ社と呼ばれる原始諏訪信仰の聖地である祠がある。
 そしてさらに裏手には藤森照信氏の実家の土地に建てられた藤森建築の白眉「空飛ぶ泥舟」と「奇想の茶室 高過庵」が存在する。

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 藤森照信氏「空飛ぶ泥舟」。こちらはあいちトリエンナーレ で移設されて展示されていたのを一度観たことがあるのだけれど、縄文の地 茅野市のこうした空間で見ると、脈々と歴史的文脈につながっているような気がして、たいへんに趣がある。

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 そして藤森照信氏「奇想の茶室 高過庵」。
 もちろん僕も水木しげるの「鬼太郎の家」を想像としてしまうのだけれど、その脚の造形がまた素晴らしい。木の表面の皮を見事に継いで付け足されたウロコ状の模様がまるで「ハウルの動く城」のテクスチャに見える。縄文で宮崎駿にもその地下水脈ではつながっているのではないだろうか。

 ということで駆け足で諏訪湖近郊の縄文奇想物体の紹介でした。うちから2時間ほどのところなので、またさらにゆっくりとこの空間に浸りに来たいものです。

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2016.05.30

■写真 押井守監督『ガルム・ウォーズ : GARM WARS』映画館展示フィギュア

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 『ガルム・ウォーズ』上映中の映画館で展示されていた、映画作成のために作られたフィギュアの写真を紹介する。

ガルム・ウォーズ - [詳細!初日舞台挨拶] 日にち:2016年5月20日| Facebook

"写真はTOHOシネマズ六本木ヒルズでの展示です。
CGモデリング用に制作された模型と撮影台本とアフレコ台本を展示しております。"

 リンク先の『ガルム・ウォーズ』公式Facebookで紹介されているのはコルンバ属の空母キアクラ。ここに記されている通り、映画館で展示されているフィギュアは、CGモデリング用に制作された模型ということである。
 関連リンクに掲載したように、これらのモデルは、以前東京八王子市夢美術館の押井守展で出品されていた『G.R.M』当時に作られた模型のようである。

"巨人 聖なる森 「ドゥアル・グルンド」の番人"
 まず掲載するのは、僕が本業の東京出張の帰りに、新宿バルト9に寄って撮ってきた『ガルム・ウォーズ』の「巨人」。
 フォルムもディテールも素晴らしい迫力。写真だけでは分かりにくいと思うが、冒頭下の中央、巨人の右半身アップで顕著なように、微細で密集した造形が施され、わずか60cmほどの大きさの像がとても巨大な存在に見える。

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"ブリガ属主力巡洋艦「ロスメルタ」"
 こちらは、僕が映画を観た109シネマズ名古屋のロビーに展示されてたブリガ属の主力巡洋艦「ロスメルタ」の写真。
 全長70cmほどの板金(?)で作られた模型は、まるで鯨と烏賊を融合したような生物的な肢体の無骨な艦である。こちらは巨人ほどの微細なディテールではないが、砲塔等が丁寧に作られ、そして何よりもその生物的フォルムが素晴らしい。
 CGの琥珀色の表現も良かったが、これらの模型を使った実写特撮も観てみたかったと溜息をつきつつ、映画館で凝視してしまった。

 こちらは3Dハンディカムで立体映像も抑えたので、いずれ何処かで紹介します(^^)。その場にガルムの戦場が現れたようにリアルです(^^)。

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・当Blog関連記事
 ■八王子市夢美術館「押井守と映像の魔術師たち」 『ガルム戦記 G.R.M. THE RECORD OF GARM WAR』 
 2010年に東京でひっそりと展示された『G.R.M』のフィギュアについてのレポート。ひっそり、というのは権利関係からかこの展示物については図録等に掲載されず会場では写真も撮れず、その全貌は記憶とメモに留めるしかなかったため。当時、スケッチした僕の稚拙な絵もリンク先に恥ずかしながら掲載。
 ■感想 ノンフィクションW さらば愛する日本よ~密着・押井守の世界挑戦800日~(『GARM WARS The Last Druid : ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド』メイキング)
 ガルム 当Blog関連記事 Google 検索

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2016.05.25

■情報 ヤノベケンジ個展「CINEMATIZE シネマタイズ」 @ 高松市美術館


ヤノベケンジ「シネマタイズ」展 特報1 - YouTube

ヤノベケンジ個展「CINEMATIZE シネマタイズ」 高松市美術館 | 京都造形芸術大学ULTRA FACTORY.
高松市美術館 プレスリリース_ヤノベケンジ - 01.pdf

"「シネマタイズ」とは、ヤノベがストーリー性とキヤラクター性のある虚構的作品を様々な場所に設置するととで、空間や現実自体が映画のように変容する効果を意味しています。 (略)
 さらに、展示室全体を映画セットにするインスタレーションが行われ、実際の公開映画のための撮影も予定されて います。まさに、美術館自体が「シネマタイズ」される画期的展覧会です。

ノベケンジ展 「CINEMATIZEシネマタイズ」
2016 年7 月16 日(土) ~ 9 月4 日(日) [会期中無休]
高松市美術館 http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/museum/takamatsu/index.html
開館時間:月~土9:30~19:00 日曜日9:30~17:00 * 入館は閉館30分前
入場料:一般1,000円、大学生500円、高校生以下無料

~これは映画か?現実か?あるいはアートか?妄想か?~
第1部 Cinematize Reality
「サヴァイヴァルからリヴァイヴァルへ 未来の廃墟のドキュメント」
第2部 林海象×永瀬正敏×ヤノベケンジ コラボレーション展示 Cinematize Fiction
「パラレル・フィクション 妄想世界の水域へ」
●永瀬正敏写真作品 特別展示
『BOLT』主演の俳優であり、写真家、アーティストでもある永瀬正敏が、ヤノベ作品をモチーフにした写真作品を特別展示します。
●林海象監督映画『BOLT』(パイロットフィルム)『GOOD YEAR』特別上映。映画『BOLT』パイロット版短編と『BOLT』の後日譚である作品を特別上映します。

出展予定作品
デビュー作《タンキング・マシーン》(1990)、《サヴァイバル・システム・トレイン》(1992)、 チェルノブイリでの《アトムスーツ・プロジェクト》写真(1997)、《アトム・力一》(1998)、人工稲妻装置内蔵の《黒い太陽》(2009)、 3.11以降のモニュメン卜《サン・チャイルド》(2011)、増田セバスチャンとの共作《フローラ》(2015)等。その他大小合わせて30数点"

 ヤノベケンジ個展「CINEMATIZE シネマタイズ」の情報が公式リリースされた。林海象監督のtwitterで4月頃から呟かれていた情報で、映画とのコラボレーションが実施されるのはわかっていたけれど、このような美術展と映画撮影の融合とはヤノベファンでさらに映画好きの僕としては楽しみでなりません。

 林海象監督はヤノベと同じ京都造形大学で教鞭をとられているため、そんな中から実現したコラボレーションではないかと思う。もともと映画的意匠をまとったように見えるヤノベ作品なので、映画との協業はとても興味深い。映画的意匠というのは、ヤノベが特撮やアニメで育ち、その蓄積も含めて、その記憶を結晶化したような作品を作られていることからの僕の勝手な推測(学生時代に仮面ライダー等のコスプレをしてそれらの造形をしたことがヤノベアートの原型になっているようにもみえるため)。

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 一方の林海象監督、僕は今回も出演される永瀬正敏氏が主演をしていた『私立探偵 濱マイク』シリーズとか天願大介監督の『アジアンビート アイ・ラブ・ニッポン』の原作とか、それら作品を観ているだけの薄いファンなのだけれど、『濱マイク』で描かれた横浜の映画的空間(映画館が舞台)での軽やかなハードボイルドの世界がとても良かったので、少し趣の異なるヤノベ作品との異化融合がどんな映像を形作るのか、とても楽しみ。
 今回のポスター、永瀬が身にまとった「アトム・スーツ」と「ULTRA 黒い太陽」の禍々しさの重厚なイメージは、期待して十分な迫力です。

 巨大彫刻3体等、30数点の作品が創り出す映画的空間!
 これは盆休みにふたたび青春18切符で高松へ赴くしかない(^^;)。

◆関連リンク
・「ヤノベアプリ」 待望のヤノベケンジのスマートフォン用アプリが登場。

「瀬戸内国際芸術祭 2016」、高松市美術館個展「シネマタイズ」開催に合わせて、関西~瀬戸内地区のヤノベケン ジの巨大モニュメントをスマホで撮影して集めるフォトスタンプラリー「サン・チャイルドとトらやんの大冒険」に 加え、アプリ限定の「ヤノベ作品集 1990-2015」が収録されています。アート旅行、展覧会のガイドにぴったりのアプリです。(無料)
Apple App Store 
 https://itunes.apple.com/jp/app/yanobeapuri-xian-dai-mei-shu/id1082933880?mt=8
Google Play 
 https://play.google.com/store/apps/details?id=com.yanobekenji.app


「彌勒MIROKU」神戸公演、 初のメイキング・ムービー公開! - YouTube.
 林海象映画作品と京都造形大のインスタレーションのコラボ。

謎の映画「彌勒 MIROKU」予告編其ノ一 - YouTube
林海象 - Wikipedia

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2016.05.23

■感想 押井守監督『GARMWARS ガルム・ウォーズ』


『ガルム・ウォーズ』予告 5月20日(金)ROADSHOW - YouTube
映画『GARMWARS ガルム・ウォーズ』公式サイト

 やっと日本で公開された、念願の押井守『ガルム・ウォーズ』を吹替版で観てきた。ファンタジーと言われているけれど、しっかりと異世界SFとして成立し、そして押井映像美学が素晴らしい一本。

 押井はパンフレットの文章で「この世界はいつから始まって、どう終わるのか。それがないファンタジーはファンタジーじゃない。世界の起源を問う物語。それが本来のファンタジー」と書いているが、この映画は、異世界の戦闘装置とクローンとネットワークを用いて、世界の意味を描いたまさにSFと呼んでもいい映画になっている。

 かつてこれだけの異星世界を描いた実写映画は、少なくとも日本映画には存在しない。押井守ファンはもちろん、SFファンもファンタジーという制作側の言葉を横に置いて、観に行くべき作品だと思う。確かに予算と制作期間(実質の撮影はカナダで1か月ほどだったとか)の規模から、この物語のスケールの映画としては、重厚感に劣るシーンがあるのは否めない(確かに戦車や巡洋艦の動きがこなれていないとか、時間と制作費が潤沢であれば、きっと完成度を上げられただろうシーンが幾つか)。

 しかし、それを補って余りある哲学と重層的な世界観が息づいていることが、観終わった後の映画の余韻を膨らませている。

 そこで描かれる異星世界はまさに押井美学にあふれている。
 ラストで語られるこの異世界の成り立ち。神の中枢とアクセスしたアンドロイド(ヘンリクセン)の口から語られる神の慟哭と言葉の何たる絶望。全篇の映像は、押井守がこの映画の原初のモチーフがアイルランドの荒廃した光景にある、と語っているように、まさに荒れ果てた神なき絶望の世界を象徴するような独特の琥珀色の映像となっている。CGによる戦闘シーンは、その独特の琥珀色で、重厚感とかリアリティとは異なる一種の幽玄な雰囲気が漂っている。独特のデザインの艦載機、その金属が触れ合う音がそうした印象を助けているようにも見える。

 また映像として、衣装の素晴らしさ、デザインもだけれど特に凄いのが異星世界の光に照らされた主人公カラの赤い戦闘服の繊細な光の反射である。前半にあった幻惑的なその光は本篇の中でも出色のシーンである。

 そして映像の印象だけれど、全篇にどこか押井が敬愛する、アンドレイ・タルコフスキーの影響が色濃く出ていると感じるのは僕だけであろうか。何がタルコフスキーかと問われると具体的には挙げられないのだけれど、映像のトーンがどこかソ連の映画監督の画面を想い出させる。

 この異星の特徴、自然の生き物としては犬と鳥しか存在しない世界。
 人間が作り物であるというのは、『イノセンス』でも顕著だった押井のテーマのひとつだけれど、バセットハウンドを神聖な動物 : グラとして描くタッチはまさにここでもその押井思想の顕現である。

ガルム・ウォーズ 5/20公開!押井守×虚淵玄 喪われた物語 - LIVE
 動画視聴者からの本質的な質問「以前よりも神が人間的になり、犬が人を見つめる視線が優しくなったような気がします。心境と時代の変化でしょうか」に対して、以下のように押井守は答える。(上記動画の終わりから28分くらいのところ)

" 神様についてはわからないけど、犬に関してはもしかしたらそうかもしれない。自分自身、犬に対する接し方が微妙に変わってきたからね。やっぱりなんかね、最初はなんつったらいいんだろう、凄くある種の神々しさというかさ、犬の眼を見ていると神様いるとしたらこんな眼じゃないかとかね。
 だけど最近は何だろう、もうちょっと愛おしいというかさ、自分が犬を愛おしいんじゃなくて、犬の眼に映る自分を見る愛おしさを感じるっていうかさ。そういう感じはしたけれどね。特にあのバセットの眼はそう見えるのかも。
 だけど動物の眼って不思議なもので、何かね明らかに人間の眼と違うんですよ。何見てるんだろうってさ。逆に言うと、人間はたぶん目ん玉開いているけど何も見てないなって。おそらく間違いない。
 人間の目玉って何も見てないなってさ。つまり見たいものしか見てない。全然世界見てないと思うよ。
 それを称してたぶん神って称するんじゃないの。ちゃんと世界を見てるって言うさ。人間ってちゃんと世界見るってたぶん永遠にできないかもしれない。基本的には自分の現実を見てるだけだっていう。都合の悪いもの、全然見えないし。そういう意味でつくづくダメだなって思う"

 押井守の犬好きは有名であるが、『イノセンス』のラスト付近で顕著なように、まさに犬の眼は、押井映画では異種知性体の眼として描写される。
 この発言にある通り、人間の本質である幻想のフィルター(これを僕は言語がその主体となる"意識"と呼んでいるのだけど)、これを通してしか現実を見られないのに対比して、押井の描く犬は、その世界の実相を幻想なしにそのままの姿で捉える。
 今回の映画にも底流として流れているのは、言語を主体としたコミュニケーションをとるガルムたちは、その世界の実相は見えていず、ただ淡々とそれを受け止めている犬だけが、世界を覗く神の目を有している。
 そして実相で描かれたこの世界の神の姿と絶望。それすらも犬は淡々と眺めるのみである。そして幻想は拡大し、ガルム世界は破滅へと至る。

 実は質問されたのはこのブログを読んで頂いている魚月さんであったのですが、魚月さんと僕のやりとり(twitter)はこちら です。
 ここで魚月さんに教えて頂いたのだけど、押井守 小説版『GARM WARS 白銀の審問艦』は、このあたりが言語SF的に語られているようで興味は尽きない。次は小説を読んでみようと思っています。

◆関連リンク


『GARM WARS The Last Druid』 Trailer YouTube
 こちらは海外版の予告篇。
・当Blog関連記事
 ■感想 ノンフィクションW さらば愛する日本よ~密着・押井守の世界挑戦800日~(『GARM WARS The Last Druid : ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド』メイキング)
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2016.05.11

■感想 黒沢清監督『岸辺の旅』、モルテン・ティルドゥム監督『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』、M・ナイト・シャマラン監督『ヴィジット』、中田秀夫監督『劇場霊』、リッチ・ムーア、バイロン・ハワード監督『ズートピア』


Journey to the Shore - Trailer - YouTube 公式サイト

 今回は、GWに観た映画の感想5本立て。特に脈略なく、自分がその都度観たい映画を並べているので、関心を持ってもらえる映画について読んでいただければ幸い。

 黒沢清監督『岸辺の旅』DVD初見。
 これは黒沢清にしか語れない、詩的なゴースト・ラブストーリー。幾多の黒沢ホラー映画の手法を土台に、日常に存在する霊的存在を端正に描き出した秀作。
 予告篇はラブストーリーの側面を強調しているが、全体にはそれよりもずっと霊的な映画になっていて、全体に漂う幽玄な感覚に痺れる。

 最初の新聞店のエピソード、花のスクラップと廃墟の映像が素晴らしい。そして滝の村のエピソード。暗黒が画面に漏れ出してくる感覚はまさに黒沢映画の真骨頂。  浅野忠信と深津絵里の、霊界に飲まれているような演技も素晴らしい。黒沢清の、秀逸な死の映画。この作品あたりは、日本映画としては北野武映画との共鳴度合いが強いですね。 


イミテーション・ゲーム / The Imitation Game UK予告編 - YouTube

 モルテン・ティルドゥム監督『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』録画観。

 アラン・チューリングについては通り一遍のことしか知らないのだけど、映画として大変楽しめた。エニグマ解読のくだりも面白いが、特に解読出来てからの物語を知らなかったので、ここに感銘を受ける。

 現代のコンピューターの祖の一人がチューリングということだけれど、この映画はそのコンピューターのベース技術の一つが生まれる過程を描いた、歴史的に興味深い映画であるとともに、その背景にあったチューリングの生い立ちを物語として抽出しているのが面白い。

 キーワードは「クリストファー」だけれど、本来の解読器のネーミングは、ポーランドの解読チームがその元を作った「ボンベ」という名前らしい(http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/…/saibokog…/imitation_game.html )。

 「クリストファー」というネーミングが映画の創作かどうか、ちょっとネットを調べただけではわからなかったが、このネーミングは映画の背骨を表現するものとして秀逸だ思う。

 「クリストファー」という名前で表現された部分、まるで映画は人工知能の誕生を描いたような気配をこのネーミングによって纏うことになり、チューリングをもう一人のフランケンシュタイン博士のように描き出している。

 人が人を再生したいという欲望、これが今後の人工知能の進化にどう影響していくか。人工知能 はどこまで行ってしまうのか。チューリングのイマジネーションがどう世界をさらに今後変えていくのか、そんなことも想起させる、まさに人工知能のスタート を描いた秀逸なSF映画でした。


The Visit - Official Trailer (HD) - YouTube

 M・ナイト・シャマラン監督『ヴィジット』ブルーレイ初見。 

 噂通りのシャマラン復活の1作。それにしても後味が悪すぎる作品。ギリギリと狂気が迫ってくるあの感覚、観た後に、自分の寝室のドアの外にあの登場人物がいるような気配を強く感じてしまう観客は僕だけではないはず。
 主人公たちが撮ったドキュメンタリー映画という手法も、映画のテーマにバッチリ。子供たちの一人称が見事な臨場感をもたらしている。

 シャマランはこの映画をコメディとして撮る考えもあった( http://www.eiganohimitsu.com/800.html )ようだけれど、コメディ版も観てみたくなる。恐ろしくブラックなコメディになるはずで、そんなシャマラン映画も一度でいいから観てみたい。

 ちなみにここまでの僕のシャマラン映画ベストは、1.アンブレイカブル 2.シックスセンス 3.ヴィレッジ 4.ヴィジットとなりました。


中田秀夫監督最新作『劇場霊』予告編 - YouTube

 『劇場霊』ブルーレイ初見。
 『女優霊』が素晴らしく良かったので、期待して観たが、これは非常に痛い出来。あきらかに失敗作だろう。

 その理由は、まず人形という物理的な存在を中心に置いて、霊的な存在感を出せていないところ。そして人形造形の悪さも大きく響いている。

 話の展開もなんだか安っぽいテレビドラマのようで、映画的な空気感が出ていない。映像に存在感を焼き付ける手法はドラマツルギーだけでなく、映像に込める想いの組み立て方だと思うのだけれど、そうした配慮が残念ながら大きく欠如している作品。残念でした。


『ズートピア』予告編 - YouTube.

 リッチ・ムーア、バイロン・ハワード監督『ズートピア』3D吹替、観てきた。僕は、物語も映像もいまいちという感想。CG映像のクリアでサイケデリックな絵が好きなのだけれど、本作はその物語からかリアル志向の映像で、CGならではの細密でエッジの効いた絵にはなっていなかった。CGのエッジの効いた絵というのは、例えば『モンスターズ・インク』とか『シュガー・ラッシュ』のようなヒッピーの桃源郷のような映像w、と書いたら理解してもらえるだろうか。どこにも存在しないが稠密でシュールレアルなあのハイキーな映像。

 今回観たイオンシネマ名古屋茶屋が小さいスクリーンで、しかも通路の照明で画面がくっきりしていなかったのも一つの原因かもしれないが、ズートピア、というある種、動物たちの夢が実現したような、ユートピアを描く映像は、もっと幻想的でもよかったかも。もっともテーマがテーマなので、ユートピアがくすんでいる、という映像にしたかったのかもしれないが、、、。

 CG映像らしいリアルワールドの描写、というものをどう今後構築していくかは、ひとつの課題かもしれない。

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2016.05.09

■動画 ヤン・シュヴァンクマイエル エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーについて語る


On Eva - YouTube
(Jan Švankmajer - YouTube ヤン・シュヴァンクマイエル公式チャンネル)

ヤン・シュヴァンクマイエル、亡き妻エヴァを語る。 - simonsaxon.com

"彼女の創作活動に関するどんな指示も受け入れてくれなかったから。彼女はこどもだからね。指示なんて理解できるわけがなかった。でも、彼女にまかせたものは、わたしがやるよりももっと本質的なかたちで表現される"

 これは興味深い。映画での共同作業についての証言。
 その絵画作品等で、ある意味、シュヴァンクマイエルの個性さえも超える形でチェコ・シュルレアリスムを象徴するエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー。彼女の絵画からうかがい知れる強い意志は、ヤンとの共同作業においても妥協のない、自己の世界の探究となっていたようだ。

 ふたりの共同作業によるヤン監督の映画と、エヴァさん亡き後のヤン監督作品では明らかに画面のタッチが異なる。代表的に言うと、『悦楽共犯者』等で顕著なエヴァさんの美術による「赤」のタッチが抜けているのだ。

 日本ではその一部が公開されただけのエヴァさんの絵画、もっと観たいですね。あのシュールな「赤」に魅せられているのは僕だけではないと思うので。

On surrealism - YouTube
 公式チャンネルには、他にも幾つかのヤンのインタヴューが掲載されています。例えばシュルレアリスムについても語られていて、とても興味深い。

◆関連リンク
『GAUDIA(ガウディア) 造形と映像の魔術師 シュヴァンクマイエル』
 エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーの絵画について。
エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー 当Blog記事 - Google 検索
ヤン・シュヴァンクマイエル 当Blog記事 - Google 検索

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