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2016年8月

2016.08.29

■感想 新海誠監督『君の名は。』


「君の名は。」予告 - YouTube

 新海誠監督『君の名は。』初日観てきました。今日はネタバレなしの感想です。


 ★★★ 一部、物語の舞台については具体的に触れているので、前知識なしに観たい方は御注意ください。 ★★★




■劇場の客層
 実は、新海作品を劇場で観るのは今回初めて。全作観ているのだけど、いまひとつ波長合わないので劇場までは行ってなかった。でも前作の『言の葉の庭』が今までと作風は延長上なのだけど、何処か印象が違って作品の昇華度が高かった。そして今作は素晴しく前評判が良かったので、最近癖になってる週末、会社帰りにいつものイオンシネマ大高で初日の18:35回を観て来た。

 劇場はこの映画館では中程度の広さで、7割の入り。ほぼ20代男女。『シン・ゴジラ』の初日の年令層との差は歴前。きている方々が新海ファンなのか、それとも楽曲を提供しているRADWINPSのファンなのかは、判然としない。うちの娘がラッドファンなので、聞いてみようかとw。

■何と地元が舞台
 冒頭予告篇にもある流星のシーンが素晴しい。そこにかぶる新海節の独白にはじまり、急展開な物語、と何かどこかで聞き覚えのある方言。何とこの映画、飛騨が舞台。うちは同じ岐阜でも南の東濃なのでイントネーションは結構、違うけど、明らかに親近感のある言葉、そしてところどころ出てくる「高山ラーメン」の看板とか見知った光景(^^)。

 twitterで検索すると、この夏の長編劇場版アニメは、岐阜ブームらしいので、また吃驚。
 『聲の形 』の舞台が大垣市、『ルドルフとイッパイアッテナ』が岐阜市に帰る話、そして『君の名は。』の舞台が岐阜県飛騨市(古川駅が出てくる)付近に設定された架空の街。

 飛騨を舞台にしたという山の中、何もない感はなかなかの親近感でした。飛騨の山々と星の流れがとてもマッチしている。特集本をみると企画書では山中の村か島の設定とのことでしたが.....。

 新海監督自身山の国である長野出身だけれど今回何故岐阜を舞台にしたのか聞いてみたい。雰囲気としては山深い森の多いシーン、そこにある少し神秘的な情景を持つ山村というのが飛騨にイメージが合ったのかもしれない。ちなみにカミオカンデがあるのは飛騨市神岡。そうした宇宙とのつながりのイメージも影響したのかもしれませんね。

 あえて岐阜県人としてひとつ苦言を呈すると、「あほ」という言葉は「たわけ」と言ってもらった方がより地元感が出たかと(^^)。

 それにしてもこの映画が岐阜県の北部 飛騨地方では上映されていないのが残念でならない。現在、飛騨には映画館が実はないのですね。

■総論 
 と以上は映画そのものに大きく関係するわけでないどうでも良い話地元話なんですがw、ここからが本題。

 物語の不思議の提示とある危機をめぐるサスペンス、そしてそれを裏打ちする日常の確かな登場人物の息遣いの聞こえてくるエピソードのてんこ盛りで映画は息つく間もなくクライマックスへ。ここの捻り方が絶妙で、上手い構成に涙腺をやられます。
 SF映画としても、よくある設定を重層的に重ねることで、新しい緊迫感が生まれていて、壮大な流星の光景とともに見事なSFの「絵」を構成しています。

■映像について
 これ以上書くとネタバレになるのでストーリーについては止めておきますが、映像は超絶な背景とかは今回少し薄味。全体が110分と長いので、新海監督自らによるあの超絶な光と影による光景描写はある一定程度の領域に留まり、冒頭とか山の中の紅葉シーンとか絶品なシーンはあるのですが、そこは今回少なくて、一般的なアニメの背景的シーンも多かったかな、と。

 今回の見所のもう一つはアニメーターの作画シーン。作画の良いパートは何とも素晴しい出来。
 エンドタイトルを見てると作画監督のジブリ出身安藤雅司氏の他に、沖浦啓之、橋本敬史、松本憲生、井上鋭、黄瀬和哉氏といったスーパーアニメータの名がクレジットされ、さらにジブリの名アニメータ 稲村武志、田中敦子、賀川愛氏といったの方々の名前がある。あのアニメーターはこのシーンかな、とかいろいろ思い致るも想像でしかないので、担当シーン情報が知りたいものです。twitterで検索すると幾人かの人が幾つか予想していて面白い。

 橋本敬史、松本憲生氏は流星のシーンとか、途中の抽象画的シーン、沖浦啓之氏は主人公たちが駆けるクライマックスのどこかかな、とか。沖浦氏は、例によって(?)ミニスカートのシーンかもしれない(^^)。

 いずれにしても今までの新海作品の良い部分と、ジブリ、IG等の日本アニメの財産が結晶化したような映画作品になっています。そして前述した丁寧な日常の積み上げとひねりの効いたクライマックス。新海作品で波長の合わなかったセンチメンタルに振ったシーンも、緻密で稠密な重層的物語構造によって、自然に流れに身を任せて物語に惹き込まれて観ることができる、なかなかの傑作です。

 ラッドの歌も、少し五月蝿いかな、と思うところもあったけれど、映画の雰囲気に合っていて、作品の厚みを増していてとても良かったです。

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2016.08.24

■感想3 (後半ネタバレ) D-BOX 庵野秀明 総監督/脚本, 樋口真嗣 監督/特技監督, 尾上克郎 准監督/特技総括『シン・ゴジラ』

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 『シン・ゴジラ』3回目@イオンシネマ大高、DBOXで8/16(火) 21:20回を観て来た。さすがにこの時間帯、客は2割の入りで、DBOXがその半分くらい。

D-BOX(ディー・ボックス)|イオンシネマ
 DBOXは初体験だったのだが、席が上下前後左右に動く仕組みで、4DXの様なにおいや水、スモークと言った演出はない。そして4DXの様に大きな音や、画面の中で何かが動くとめったやたらに振動する様な事はなく、演出が落ち着いている。

 感覚的には画面のすぐ手前に自分がいてその場所が振動する様なシーンでのみ椅子が動く。ほぼ振動するのはゴジラの破壊シーンと戦闘兵器の部分のみ。なのでかなり体感度は高いと言える。

 特にその振動効果により、最初のゴジラ上陸シーンの衝撃が、過去2回より相当インパクト大。
 ただし映像の臨場感はIMAXが圧倒的。DBOXはスクリーンから席が後へ離れているため、IMAX映像への巻き込まれ感に対して、今回は情景を景めてる感じ。両方の相乗効果を試してみたいので、DBOXのIMAX版をどこかでやってほしいものだ。

★★★以下、ネタばれ注意★★★








シン・ゴジラを楽しむための地図を作りました - QuZeeBlog@Hatena


 この図は、上記リンク先の、ゴジラ上陸後の経路を地図上に示されているHPからの引用。
 今回、観てチェックしたのは、タバ作戦の行われる武蔵小杉駅北。ここで自衛隊の攻撃によりゴジラは進行方向を一旦、西へ変える。しかしこのあとあきらかに進路を前のコースへ戻す様な動き方をしている。そしてそのコースの先には東京駅と皇居が存在する。

 今回も、やはり疑問は本当にゴジラは皇居を目指していたのかどうか、というところ。今のところ、この点について明確な解釈をしている感想は見当らないので気になってしかたない。

 『ゴジラ』(54年版)は太平洋の英霊が宿っているという解釈で理解できるのだけれど、何故、54年版と関係のない初代『シン・ゴジラ』が皇居を目指すのか?
(別に映画のテーマとしてはそこはどうでも良いところのような気がするのだけど、これだけ緻密に組立ててある構造の作品で、その行き先の謎が全く考えられてないと言うことはないはずで、この謎が読みとけてないのは、映画を体感するための重要なピースがひとつ欠けているような宙ぶらりん気持ちで、ひっかかってしようがないのだ。どなたかこの経路の解釈について、何か情報あれば教えて下さい)

 東京の都心へ向かうという意味だけか、東京駅を目指す意味があるのか、その先の福島を実は目指していたのか...とか考えるのだけれど、やはりどれもしっくりこない。

 牧元教授の奥さんの死と、目的地が何らか関係している、という謎の設定くらいしか思い付きません。少くともドラマの中では、そうしたことに触れている部分は皆無だと思うけど、、、。

 あと気になったのは、ラストの、ゴジラの皇居に対する向き。
 矢口蘭堂とカヨコ・パターソンの会話の背景には、東京駅と皇居とそしてシン・ゴジラの姿。このシーンの冒頭では、科学技術館に背を向けているように観えたシン・ゴジラだが、その後、カヨコが蘭堂に「あなたも好きにしたら」と言って去って行く背景のシン・ゴジラはこちらを向いているように見えた。これは僕の見間違いか??
(ちなみに、この「好きにしたら」は牧元教授の言葉に引っかけたセリフだが、そこにシン・ゴジラの姿が映像として映っているのは、明らかに、牧が巨大完全生物になった/もしくは融合したことを暗示しているのだろう。蘭堂が巨災対の室で、「どう好きにしたんだ?」とつぶやくシーンも同じことを暗示している描写かと)

 このシン・ゴジラの最後の向きの謎も含めて、まだまだ噛み足りない奥行きのある怪獣映画『シン・ゴジラ』です(^^)。

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2016.08.22

■情報 公式図録『クエイ兄弟 —ファントム・ミュージアム—』: The Quay Brothers Phantom Museums Catalog

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クエイ兄弟 —ファントム・ミュージアム—(求龍堂公式HP)

"アートアニメーション、映画、CM映像、舞台美術など、幅広いジャンルで独自の美を創り上げてきた双子・クエイ兄弟が発信するミステリアスな美の世界は、本拠地であるロンドンを始めとした欧米や日本でカルト的人気と影響力を誇る。 本書は、世界のクリエイターを魅了し続ける創作の源泉を含め、知られざるクリエイティブの全貌が明らかになる、世界初の公式データブック! アジア初の巡回個展の公式図録兼書籍。

【構成】
 各作品のビジュアルとともに、正確なデータを掲載。これまで未発表であった作品の情報も記録。
1. デコール(映像作品のボックス型模型再現)の部分アップで、独特な耽美的装飾が細部まで見て楽しめる。
2. ブラックドローイング(初期のタブロー作品一連)映像へ進む前の、クエイ兄弟のイメージの源泉が見える。
3. ポーランドポスター、ブックデザイン(空想装幀、実際の仕事作品など)
4. Student Films(学生時代の実験的映像作品)
5. Films(アニメーション、長篇実写映像作品)
6. CM Films(コマーシャル用作品 バドワ、コカコーラ、コムデギャルソンなど)
7. 舞台美術(演劇、バレエ、オペラなど)"

 クエイ兄弟の展覧会『ファントム・ミュージアム』、以前記事で紹介しましたが、図録が書店等に並びば締めています。うちの近所の田舎の本屋で遭遇しかなり吃驚。郊外量販店にも入っているということは相当の本屋さんに展開されているのでしょうか。

 上記出版社の公式HPに、本の各ページ写真が掲載されています(上の写真もそこからの引用です)。

 葉山の展覧会は行けなさそうなので、図録だけでも買おうかなと思っています。中身は値段相応に充実。欲を言えばもっと細かい字で読み物部分もがっつり充実させて欲しかったかなっと。で、即断できず、まだ入手していません(^^;)。

『クエイ兄弟 ファントム・ミュージアム』 (amazon)


Quay Brothers - Phantom Museum (Re-Score) - YouTube

"Important! I do not own the rights to this film but I do own the music.

This video was created to project a unique  interpretation with respect to the copyright holder.

My version of events.. My re-score of the film Phantom Museum by the Quay Brothers.

For More information email me at callumminton@hotmail.com
For more music visit www.soundcloud.com/callum-minton
Follow me on twitter @CallumMinton"

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2016.08.15

■映像 21世紀の『ブレードランナー』 リールビジョン "TEARS IN RAIN : HOMAGE TO BLADE RUNNER"

TEARS IN RAIN : HOMAGE TO BLADE RUNNER from REELVISION.jp on Vimeo

"Original short movie
“TEARS IN RAIN ” : HOMAGE TO BLADE RUNNER
Shoot in Tokyo and CG and VFX / REELVISION (reelvision.jp)
VFX support : Takashi Ishibashi
Music and sound effects / 日山豪echoes-breath)"

REELVISION Co.,Ltd.(Facebook)

" SF サイバーパンクの傑作「ブレードランナー」へのオマージュ映像ですw。昨年末あたりから東京の街の映像をサンプリングし、CGやVFXを足しながら、愛して止まない作品の世界観をどこまで再構築できるか実験を続けてきました。
 音楽にもこだわって制作しておりまして、オリジナルのサウンドトラックのヴァンゲリスの音に近付くよう研究し、MOOGやYAMAHA CS80 等のアナログシンセの音を使ってエコーズブレスのGo Hiyamaさんに壮大で素晴らしいサウンドをオリジナルで制作していただきました。" 

 神山健治監督の『東のエデン』OP映像等で活躍されている、映像クリエーター山口正憲氏のスタジオ 株式会社 リールビジョンによるリドリー・スコット監督『ブレードランナー』のオマージュ短篇。 

 東京の少し未来を切り取ったシャープな映像とCGとシンセの音楽の融合。ところどころ、ハッとする素晴らしい21世紀の『ブレードランナー』映像ができあがっていると思うのは僕だけでしょうか。

 未だにその映像DNAがいろんな作品に流れ続けているマスター・ピース『ブレードランナー』、そろそろこれを超える新たなインパクトのある未来映像が産まれてきてもいいのではないか、と思うのですが、こうした日本のスタジオの果敢なチャレンジが、とても頼もしくみえます。

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2016.08.10

■感想 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督 『複製された男』Enemy


複製された男(日本語吹替版) - YouTube

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『複製された男』HD録画 初見。
 『ブレードランナー』続篇を撮る予定のヴィルヌーヴ監督の映画も初めて観たのだが、これはなかなか素晴らしい傑作。

 落ち着いた色調で撮られたトロントの街。時々挿入される蜘蛛のイメージを用いた幻想。そして謎の「複製」。
 淡々とした映像に、忍び込む狂気。ラストまで観ても僕にはこの物語が何を意味しているのか、実は理解できなかった。

 しかし映画のトーンが素晴らしく、いい映画を観たという感想が強く感じられる。このタッチで現代のサイバーパンクが撮られるのであれば、、、。『ブレードランナー2』にも大いに期待が膨らむ。

 さきほど調べてみたら、ネタバレになるので、リンク先を読むのは注意頂きたいのだけど、重要な蜘蛛のイメージに使われたのが、カナダにあるルイーズ・ブルジョアによる「ママン」という彫刻。
 映画の重要なキーイメージとして素晴らしい映像を提供している。

◆関連リンク
複製された男 シネマの世界<第453話> : 心の時空
複製された男 - Wikipedia
ルイーズ・ブルジョワ - Wikipedia

"カナダ国立美術館 ニューヨークのグッゲンハイム美術館、オタワのカナダ国立美術館、ビルバオのビルバオ・グッゲンハイム美術館、ロンドンのテート・モダンサンクトペテルブルクエルミタージュ美術館、ソウルのサムスン美術館 Leeum東京六本木ヒルズなど、9か所に展示"

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2016.08.08

■感想2 (後半ネタバレ) 庵野秀明 総監督/脚本, 樋口真嗣 監督/特技監督, 尾上克郎 准監督/特技総括『シン・ゴジラ』


All Shin Gojira/ Godzilla Resurgence Scenes In Order ( ために、すべてのシンゴジラシーン) - YouTube.

 金曜の夜、109シネマIMAX@名古屋で2回目。
 先週に比べると座席は8割くらいの入り。しかし3~40代男性がほとんどだった先週に比べ、女性客2割くらいと20代男性が増えていた。明らかに広い層へ浸透している感じ。

 2回目は、ストーリーわかってるので、落ちついて細部とそして画面レイアウト中心に堪能。カラー(khara.inc)スタッフ陣の絵コンテと庵野総監督自らの画面設計が、従来のゴジラ映画にない映像のワンダーを創り出している。

カラー(khara)スタッフ陣による画面設計(まずはネタバレなし)
 シン・ゴジラ - Wikipedia

"画像設計:庵野秀明
イメージボード:前田真宏林田裕至、丹治匠
画コンテ:轟木一騎摩砂雪鶴巻和哉前田真宏樋口真嗣庵野秀明"

 映像設計の中心的なスタッフと考えられるメンバーをwikipediaより抽出した。庵野総監督を筆頭に、まさに株式会社カラーの演出家がコアを成していることがわかる。

 ヱヴァンゲリヲン新劇場版に顕著なのだけど、彼らの手に成るあの映像空間設計は何であれだけ魅惑的なのだろう。その最も素晴らしい成果として想起するなら、僕はまず『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の冒頭、海上を歩行する第7使徒に、上空で輸送機から放たれた式波・アスカ・ラングレー操るエヴァンゲリオン2号機が挑む空中戦を挙げる。
 あのキレキレの、そしてそんな流行の軽い言葉だけでは表現できないハリウッド映画ほか世界のどこの映画でも観たことのない縦横無尽に流れる様に動くカメラ視点と2つの機体の融合レイアウトによる映像空間の革新。

 そしてその成果の延長上に位置する、今回の『シン・ゴジラ』映像は、そんなカラーによる日本アニメの先端と、特撮番組のDNAが進化し融合した「完全生物」的映像であると思う。それがシン・ゴジラの、(日本特撮というより)映画の革新である。

 テクニックとその魂は戦闘シーンは言うに及ばず、今回、会議シーンにも脈々と活きづいている。

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 まず戦闘シーンは、まさにセンス・オブ・ワンダーの宝庫。
 従来ゴジラ映画からの「シン」の革新のひとつは、自衛隊を徹底してリアルに描いたことに加えて、ヱヴァから受け継ぐ鮮烈な画面レイアウトのまさに賜物と感じられた。

 例えばネットから引用した自衛隊F2-A機のコクピットからのシーン。
 パイロットを俯瞰で捉え、その頭上を左から右にスライドしていく僚機。このパキッと決まったレイアウトは恐らく事前のプリヴィズ映像で作り込まれた画面設計の成果なのではないか。

 会議シーンでは、例えば、特に自衛隊の中央指揮所が最初に出てくるシーン。
 鶴見辰吾演じる統合幕僚副長と隣の陸幕長 面長の男(國本鍾建氏というオフィス北野の俳優さん)、このシーンの映像の切れの良さは特筆に値するでしょう。エヴァのネルフや軍関係シーンの直系なのだけれど、画面設計(と照明)で抜群にインパクトのある映像になっている。自衛隊の鍛え上げた人間の面構えが、これから始まる戦闘への期待感を高める。
(僕は特に好戦的な人間ではないけれど、これだけ素晴らしい日本人の顔は久しく映画で観たことがないのではないか、というくらいゾクゾクきた。精悍な顔の役者陣をこのシーンでは選んだのであろうが、画面設計と役者による見事な革新の日本映画のワンシーンであろう)

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 このカラースタッフ陣と樋口監督以下実写スタッフによる麻薬的映像。何度も観に行きたくなる秘密はここにもあるのかも。

 レイアウトを徹底したアニメ制作は(宮崎駿と)押井守の開拓した手法だが、それに実相寺他の映像DNAと組合せて、日本映像文化の結実として実写映像の革新を生んだスタッフに最大限の拍手を贈りたい。

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庵野秀明責任編集『シン・ゴジラ』公式記録集 ジ・アート・オブ シン・ゴジラ - :EVANGELION STORE

庵野秀明責任編集『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』

 画面設計の資料がこの本にどれくらい掲載されるか分からないけれど、本の広告チラシのコンテンツの中には絵コンテとかレイアウト画の表記は残念ながらありません。絵コンテ集は、別で出るのかな?

 あとブルーレイには、是非、プリヴィズ映像も入れてほしい。日本のアニメ映像の先端が実写のDNAに抽入された貴重な映像記録として(^^;)


★★★★ネタバレ注意(絶対読んじゃだめです)★★★






◆反映された現実の重み(ネタバレ)

 実は前回の感想で書かなかったのだけれど、一回目を観た後、映像としては初代ゴジラに勝っているのだけれど、そのテーマ性、背負っている監督以下スタッフがその時代から感じている何ものかの強度が、やはり初代にはかなわない部分となっているのではないか、と思ったのだった。

 だけれど二回目を観て、その思いは軽減された。前回、テーマ的には圧倒的に傑作なのは初代ゴジラなのではないか、と思っていたのだけれど、今回観て画面設計の再評価だけでなく映画に込められた想いの強度も、かなり初代のそれに近づいているのではないか、と思えたのだ。

 それは前回の感想で書いた福島東電原発と東日本大震災の象徴としてのゴジラ部分と、さらに重畳された原爆被爆国としての日本の描写。カヨコ・パターソンの祖母の被爆体験とその語りの後にインサートされる2つの広島の被爆写真。第三の核の洗礼を、いまだ属国としての扱いを続ける米国から受けることになる危険の高まる終盤の展開。

 一回目観た後、なぜシン・ゴジラも初代と同様に皇居を目指したのかが、最大の謎だと思っていた。明確には語られないが、そこには人類史上唯一の核攻撃を受けた国の被爆者たちの想いや、牧元教授の妻の受けた放射能被害、そうしたものの漂う霊気のようなものがシン・ゴジラの背後に纏われていたのかもしれない。(そのようにでも考えないと皇居を目指す意味は全く不明だ)

 熱核攻撃の危険性を描くことで、この国の過去の被爆体験を想起させ、それすらもゴジラに纏わせた今作の製作陣の想い。皇居と東京駅を一望できる科学技術館の屋上から俯瞰された最後の戦闘は、同じ場所でクライマックスを描いた被爆映画『太陽を盗んだ男』の長谷川・ゴジ・和彦監督がそこに込めた想いも召喚し、日本人の戦後を総括したひとつの怨念の形象としてのシン・ゴジラ像を東京のコアに創出した。

 凍結したシン・ゴジラの姿は、戦後の日本の姿のネガ画像のようでもある。

 そうした描写だとぼんやりと理解したところで、初代ゴジラの持っていたものを皇居(宮城の緑)の姿から再度召喚し、そしてさらにまさに現在の日本人に重くのしかかる震災と原発、そしてアメリカとの国家間関係を具体的に描き出して、結晶化したシン・ゴジラの佇まい。

 ニッポンの陰画がクライマックスで東京の中心に焼き付けられた。
 そしてそこに立ち向かった日本人のチームワークが、ひとつの救済のイメージを、映画全体にポジ画として相対。エンターテインメントとしてのカタルシスと、そして埋め込まれたテーマ。その映像としての形象があの凍結したゴジラの姿なのであろう。

◆伊福部音楽の融合 (ネタバレ)
シン・ゴジラ - Wikipedia もうひとつ庵野総監督による音響設定について。

"音響設計:庵野秀明
音楽 : 鷺巣詩郎伊福部昭"

鷺巣詩郎『シン・ゴジラ音楽集』
(リンク先でサントラの各曲を視聴できます。)

 冒頭、初代ゴジラからの伊福部サウンドであるゴジラの足音と咆哮音の引用以降、第一 〜 第三形態のシーンでは鷺巣詩郎音楽が奏でられている。
 そしてシン・ゴジラの鎌倉上陸シーンで、満を持したように初めての伊福部音楽「ゴジラ上陸」が勇壮に流れる。

 まるでシン・ゴジラの映像により、伊福部音楽のゴジライメージが上書きをされているようだと感じたのは僕だけではないはず。
 ここに顕著なように、僕らがよく知っている伊福部音楽がシン・ゴジラの映像によって次々とイメージの上書きをされていく。それは単なる上書きではなく、今まで持っている東宝ゴジラ映像のイメージをその都度想起する我々特撮ファンの脳内に、そのイメージとシン映像の相乗効果をもたらし、より豊醸な音楽として記憶に刻まれる。

 それはまるで(ここは意見の分かれるところでしょうが少なくとも僕にとっては)初代のあと、いつしか怪獣プロレス的になっていったゴジラの姿にどこかしら伊福部音楽の勇壮さがそぐわなくなっていった、ある意味、物足りなさを感じていたファンに、あらたに音楽イメージのリビルドを行なっている様にも聴こえた。

 特に素晴らしかったのがクライマックスの『怪獣大戦争』の『宇宙大戦争』テーマ。
 科学技術館の臨時指揮所の上空にはためくシン・ゴジラのビーム砲の光。そこにかぶる『怪獣大戦争』のテーマの勇壮さたるや素晴らしいシン映像とゴジラ音楽の融合である。ここはまさに相乗効果で、イメージの爆音がファンの脳内に鳴り響き、最高にテンションの上がるところである。
 
 こうした音響効果が庵野総監督によって設計されたのか、鷺巣詩郎氏によるものなのかわからないが、この音楽と音響が映画のイメージをビルドアップしていたことは確かな事実。

◆シン・ゴジラ シリーズ
 まだ先の話を書くのは早すぎるような気もするが、このシン・ゴジラの続篇について想いを馳せてしまう。

 今回描かれて基調としてもたらされたリアリティ描写と、ゴジラという存在の設定と造形。そして世界各国と日本の関係。
 これらのフォーマットを念頭に置いた時、続篇が作られるとすれば、過去のゴジラシリーズとは全く異なる、新たな広大なゴジラワールドがここから広がっていくように感じられる。

 ゴジラ細胞による世界へのシン・ゴジラ(属?)の拡散と対処。あるいは凍結された荒ぶる神の復活と3千5百数十秒後のアメリカ含む多国籍軍の熱核攻撃を受ける日本、もしくはラストに描かれた尻尾の先端のヒト型のものの出現。
 
 これだけハードな設定がなされていれば、ただ単なるVSシリーズへ移行することは考えにくいだろう。日本映画界の優秀な監督群による、庵野のDNA(コンセプトと映像スキル)を持った続篇の登場にも期待したい。
(庵野総監督以下、カラー主要スタッフには「シン・ヱヴァンゲリヲン」シリーズの完結と来るべき『風の谷のナウシカ 第7巻』映像化に期待していたい(^^;) )

◆関連リンク
2016年08月05日(金)「シン・ゴジラが大ヒット!原爆の日を前に語る、戦後日本で核はどう描かれてきたのか」(探究モード)

" 映画「シン・ゴジラ」が大ヒット。原爆の日を前に語る、戦後日本で核はどう描かれてきたのか
■出演者 恵泉女学園大学教授の武田 徹さん、神戸市外国語大学准教授の山本昭宏さん"

 Session 22における『シン・ゴジラ』議論(たぶんその一)。荻上チキほかの気鋭の評者による読み解きをお楽しみに。
Godzilla Resurgence 2016(Youtube)
 タバ作戦の爆撃シーン等。画面設計の冴えの一端。


シンゴジラ公開記念イベント、海ほたる、除幕式後のグッズサイン - YouTube
 海ほたるのイベントで樋口真嗣監督によって語られたシンゴジラの秘密。背びれは生頼範義氏のイラストを参考に造形されたとのこと!

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2016.08.03

■情報 クリスピン・グローヴァー「ビッグ・スライドショウ」奇跡の再登場 !! @カナザワ映画祭2016 : Big Slide Show

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クリスピン・グローヴァーが金沢に帰ってくる!! カナザワ映画祭2016で「ビッグ・スライドショウ」を開催 - カナザワ映画祭主宰者のメモ帳

"「クリスピン・グローヴァーのビッグ・スライドショウ」とは、 ハリウッド・メジャー大作で活躍する俳優クリスピン・グローヴァー。彼は、ライフワーク「ビッグ・スライドショウ」のため、自らフィルムを抱えて全米各地と欧州各国を興行。そして、2008年以来満を持して、今年ハリウッドから金沢まで帰って来る!
 これまで誰も見たことのないイメージの連続、片時も目が離せない! この機会を見逃すな!

9/24(土)
・ビッグ・スライドショウ
・『It Is Fine! Everything Is Fine.』上映
・Q&A ・サイン会

9/25(日)
・ビッグ・スライドショウ
・『What is it?』上映
・Q&A ・サイン会"

カナザワ映画祭2016タイムテーブル最新版 - 目標毎日更新 カナザワ映画祭主宰者のメモ帳

 来た〜〜〜〜 ! この幻のフィルムが、また日本で観られる !!!!
 下記のリンク先に詳細を書いている様に、特殊な上映形態ゆえ、この後、もう二度と日本で観られる機会はないかもしれない。9/24,25の土日。何としても金沢へ赴きたいものだが、、、果たして行けるのだろうか!!?

◆関連リンク 当Blog関連記事
・■デヴィッド・ブラザーズ,クリスピン・グローヴァー監督  スティーブン・C・スチュワート脚本主演『It is Fine. Everything is Fine!』

" 先週末に金沢で上映されたこの映画、素晴らしい傑作であったらしい。ネットでの評判がとにかく凄い。
 特殊な興行形態であるため、日本で観たことのある観客は、カナザワ映画祭2008の会場にいたわずか百数十名のみ。そして今後、DVD等の発売の可能性はなく、日本での公開が再びあるか、まったくわからない。まさに幻のカルト映画の誕生である。
 なんとか都合を付けて観に行くべきだったと悔やんでも後の祭り。そこでネットでの感想リンク集です。"

■動画 クリスピン・グローヴァー「ビッグ・スライドショウ」Crispin Hellion Glover "Big Slideshow"

" かつてカナザワ映画祭で一度だけ日本で実演された、クリスピン・グローヴァーのカルトパフォーマンス "ビッグ・スライドショウ"、この一部が動画として公開されていたので御紹介。"


Crispin Glover - What It Is, and How It is Done. - YouTube

 以上2つのリンクは、うちのBlogの関連記事です。前回のカナザワ映画祭の機会を見逃した人間の、羨望の記事です....(^^;)。殊能将之氏ほか、大絶賛の観客の声をご参考に。


Crispin Hellion Glover Audience Q&A - YouTube.

"My friend asks Crispin Glover a question. He answers. After a screening of his movie, "What is it?" at the IFC in NYC. Crispin Glover is awesome."

 Youtubeで公開されていた、"What is it?"上映後のクリスピン・グローヴァーとのQ&A。こうした雰囲気で上映会は進められるようです。

 本当にこの幻のフィルム、いったいどのようなものなのか!?
 秋の金沢が熱い!!!!!!

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