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2016年5月8日 - 2016年5月14日

2016.05.11

■感想 黒沢清監督『岸辺の旅』、モルテン・ティルドゥム監督『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』、M・ナイト・シャマラン監督『ヴィジット』、中田秀夫監督『劇場霊』、リッチ・ムーア、バイロン・ハワード監督『ズートピア』


Journey to the Shore - Trailer - YouTube 公式サイト

 今回は、GWに観た映画の感想5本立て。特に脈略なく、自分がその都度観たい映画を並べているので、関心を持ってもらえる映画について読んでいただければ幸い。

 黒沢清監督『岸辺の旅』DVD初見。
 これは黒沢清にしか語れない、詩的なゴースト・ラブストーリー。幾多の黒沢ホラー映画の手法を土台に、日常に存在する霊的存在を端正に描き出した秀作。
 予告篇はラブストーリーの側面を強調しているが、全体にはそれよりもずっと霊的な映画になっていて、全体に漂う幽玄な感覚に痺れる。

 最初の新聞店のエピソード、花のスクラップと廃墟の映像が素晴らしい。そして滝の村のエピソード。暗黒が画面に漏れ出してくる感覚はまさに黒沢映画の真骨頂。  浅野忠信と深津絵里の、霊界に飲まれているような演技も素晴らしい。黒沢清の、秀逸な死の映画。この作品あたりは、日本映画としては北野武映画との共鳴度合いが強いですね。 


イミテーション・ゲーム / The Imitation Game UK予告編 - YouTube

 モルテン・ティルドゥム監督『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』録画観。

 アラン・チューリングについては通り一遍のことしか知らないのだけど、映画として大変楽しめた。エニグマ解読のくだりも面白いが、特に解読出来てからの物語を知らなかったので、ここに感銘を受ける。

 現代のコンピューターの祖の一人がチューリングということだけれど、この映画はそのコンピューターのベース技術の一つが生まれる過程を描いた、歴史的に興味深い映画であるとともに、その背景にあったチューリングの生い立ちを物語として抽出しているのが面白い。

 キーワードは「クリストファー」だけれど、本来の解読器のネーミングは、ポーランドの解読チームがその元を作った「ボンベ」という名前らしい(http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/…/saibokog…/imitation_game.html )。

 「クリストファー」というネーミングが映画の創作かどうか、ちょっとネットを調べただけではわからなかったが、このネーミングは映画の背骨を表現するものとして秀逸だ思う。

 「クリストファー」という名前で表現された部分、まるで映画は人工知能の誕生を描いたような気配をこのネーミングによって纏うことになり、チューリングをもう一人のフランケンシュタイン博士のように描き出している。

 人が人を再生したいという欲望、これが今後の人工知能の進化にどう影響していくか。人工知能 はどこまで行ってしまうのか。チューリングのイマジネーションがどう世界をさらに今後変えていくのか、そんなことも想起させる、まさに人工知能のスタート を描いた秀逸なSF映画でした。


The Visit - Official Trailer (HD) - YouTube

 M・ナイト・シャマラン監督『ヴィジット』ブルーレイ初見。 

 噂通りのシャマラン復活の1作。それにしても後味が悪すぎる作品。ギリギリと狂気が迫ってくるあの感覚、観た後に、自分の寝室のドアの外にあの登場人物がいるような気配を強く感じてしまう観客は僕だけではないはず。
 主人公たちが撮ったドキュメンタリー映画という手法も、映画のテーマにバッチリ。子供たちの一人称が見事な臨場感をもたらしている。

 シャマランはこの映画をコメディとして撮る考えもあった( http://www.eiganohimitsu.com/800.html )ようだけれど、コメディ版も観てみたくなる。恐ろしくブラックなコメディになるはずで、そんなシャマラン映画も一度でいいから観てみたい。

 ちなみにここまでの僕のシャマラン映画ベストは、1.アンブレイカブル 2.シックスセンス 3.ヴィレッジ 4.ヴィジットとなりました。


中田秀夫監督最新作『劇場霊』予告編 - YouTube

 『劇場霊』ブルーレイ初見。
 『女優霊』が素晴らしく良かったので、期待して観たが、これは非常に痛い出来。あきらかに失敗作だろう。

 その理由は、まず人形という物理的な存在を中心に置いて、霊的な存在感を出せていないところ。そして人形造形の悪さも大きく響いている。

 話の展開もなんだか安っぽいテレビドラマのようで、映画的な空気感が出ていない。映像に存在感を焼き付ける手法はドラマツルギーだけでなく、映像に込める想いの組み立て方だと思うのだけれど、そうした配慮が残念ながら大きく欠如している作品。残念でした。


『ズートピア』予告編 - YouTube.

 リッチ・ムーア、バイロン・ハワード監督『ズートピア』3D吹替、観てきた。僕は、物語も映像もいまいちという感想。CG映像のクリアでサイケデリックな絵が好きなのだけれど、本作はその物語からかリアル志向の映像で、CGならではの細密でエッジの効いた絵にはなっていなかった。CGのエッジの効いた絵というのは、例えば『モンスターズ・インク』とか『シュガー・ラッシュ』のようなヒッピーの桃源郷のような映像w、と書いたら理解してもらえるだろうか。どこにも存在しないが稠密でシュールレアルなあのハイキーな映像。

 今回観たイオンシネマ名古屋茶屋が小さいスクリーンで、しかも通路の照明で画面がくっきりしていなかったのも一つの原因かもしれないが、ズートピア、というある種、動物たちの夢が実現したような、ユートピアを描く映像は、もっと幻想的でもよかったかも。もっともテーマがテーマなので、ユートピアがくすんでいる、という映像にしたかったのかもしれないが、、、。

 CG映像らしいリアルワールドの描写、というものをどう今後構築していくかは、ひとつの課題かもしれない。

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2016.05.09

■動画 ヤン・シュヴァンクマイエル エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーについて語る


On Eva - YouTube
(Jan Švankmajer - YouTube ヤン・シュヴァンクマイエル公式チャンネル)

ヤン・シュヴァンクマイエル、亡き妻エヴァを語る。 - simonsaxon.com

"彼女の創作活動に関するどんな指示も受け入れてくれなかったから。彼女はこどもだからね。指示なんて理解できるわけがなかった。でも、彼女にまかせたものは、わたしがやるよりももっと本質的なかたちで表現される"

 これは興味深い。映画での共同作業についての証言。
 その絵画作品等で、ある意味、シュヴァンクマイエルの個性さえも超える形でチェコ・シュルレアリスムを象徴するエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー。彼女の絵画からうかがい知れる強い意志は、ヤンとの共同作業においても妥協のない、自己の世界の探究となっていたようだ。

 ふたりの共同作業によるヤン監督の映画と、エヴァさん亡き後のヤン監督作品では明らかに画面のタッチが異なる。代表的に言うと、『悦楽共犯者』等で顕著なエヴァさんの美術による「赤」のタッチが抜けているのだ。

 日本ではその一部が公開されただけのエヴァさんの絵画、もっと観たいですね。あのシュールな「赤」に魅せられているのは僕だけではないと思うので。

On surrealism - YouTube
 公式チャンネルには、他にも幾つかのヤンのインタヴューが掲載されています。例えばシュルレアリスムについても語られていて、とても興味深い。

◆関連リンク
『GAUDIA(ガウディア) 造形と映像の魔術師 シュヴァンクマイエル』
 エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーの絵画について。
エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー 当Blog記事 - Google 検索
ヤン・シュヴァンクマイエル 当Blog記事 - Google 検索

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