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2016年8月7日 - 2016年8月13日

2016.08.10

■感想 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督 『複製された男』Enemy


複製された男(日本語吹替版) - YouTube

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『複製された男』HD録画 初見。
 『ブレードランナー』続篇を撮る予定のヴィルヌーヴ監督の映画も初めて観たのだが、これはなかなか素晴らしい傑作。

 落ち着いた色調で撮られたトロントの街。時々挿入される蜘蛛のイメージを用いた幻想。そして謎の「複製」。
 淡々とした映像に、忍び込む狂気。ラストまで観ても僕にはこの物語が何を意味しているのか、実は理解できなかった。

 しかし映画のトーンが素晴らしく、いい映画を観たという感想が強く感じられる。このタッチで現代のサイバーパンクが撮られるのであれば、、、。『ブレードランナー2』にも大いに期待が膨らむ。

 さきほど調べてみたら、ネタバレになるので、リンク先を読むのは注意頂きたいのだけど、重要な蜘蛛のイメージに使われたのが、カナダにあるルイーズ・ブルジョアによる「ママン」という彫刻。
 映画の重要なキーイメージとして素晴らしい映像を提供している。

◆関連リンク
複製された男 シネマの世界<第453話> : 心の時空
複製された男 - Wikipedia
ルイーズ・ブルジョワ - Wikipedia

"カナダ国立美術館 ニューヨークのグッゲンハイム美術館、オタワのカナダ国立美術館、ビルバオのビルバオ・グッゲンハイム美術館、ロンドンのテート・モダンサンクトペテルブルクエルミタージュ美術館、ソウルのサムスン美術館 Leeum東京六本木ヒルズなど、9か所に展示"

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2016.08.08

■感想2 (後半ネタバレ) 庵野秀明 総監督/脚本, 樋口真嗣 監督/特技監督, 尾上克郎 准監督/特技総括『シン・ゴジラ』


All Shin Gojira/ Godzilla Resurgence Scenes In Order ( ために、すべてのシンゴジラシーン) - YouTube.

 金曜の夜、109シネマIMAX@名古屋で2回目。
 先週に比べると座席は8割くらいの入り。しかし3~40代男性がほとんどだった先週に比べ、女性客2割くらいと20代男性が増えていた。明らかに広い層へ浸透している感じ。

 2回目は、ストーリーわかってるので、落ちついて細部とそして画面レイアウト中心に堪能。カラー(khara.inc)スタッフ陣の絵コンテと庵野総監督自らの画面設計が、従来のゴジラ映画にない映像のワンダーを創り出している。

カラー(khara)スタッフ陣による画面設計(まずはネタバレなし)
 シン・ゴジラ - Wikipedia

"画像設計:庵野秀明
イメージボード:前田真宏林田裕至、丹治匠
画コンテ:轟木一騎摩砂雪鶴巻和哉前田真宏樋口真嗣庵野秀明"

 映像設計の中心的なスタッフと考えられるメンバーをwikipediaより抽出した。庵野総監督を筆頭に、まさに株式会社カラーの演出家がコアを成していることがわかる。

 ヱヴァンゲリヲン新劇場版に顕著なのだけど、彼らの手に成るあの映像空間設計は何であれだけ魅惑的なのだろう。その最も素晴らしい成果として想起するなら、僕はまず『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の冒頭、海上を歩行する第7使徒に、上空で輸送機から放たれた式波・アスカ・ラングレー操るエヴァンゲリオン2号機が挑む空中戦を挙げる。
 あのキレキレの、そしてそんな流行の軽い言葉だけでは表現できないハリウッド映画ほか世界のどこの映画でも観たことのない縦横無尽に流れる様に動くカメラ視点と2つの機体の融合レイアウトによる映像空間の革新。

 そしてその成果の延長上に位置する、今回の『シン・ゴジラ』映像は、そんなカラーによる日本アニメの先端と、特撮番組のDNAが進化し融合した「完全生物」的映像であると思う。それがシン・ゴジラの、(日本特撮というより)映画の革新である。

 テクニックとその魂は戦闘シーンは言うに及ばず、今回、会議シーンにも脈々と活きづいている。

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 まず戦闘シーンは、まさにセンス・オブ・ワンダーの宝庫。
 従来ゴジラ映画からの「シン」の革新のひとつは、自衛隊を徹底してリアルに描いたことに加えて、ヱヴァから受け継ぐ鮮烈な画面レイアウトのまさに賜物と感じられた。

 例えばネットから引用した自衛隊F2-A機のコクピットからのシーン。
 パイロットを俯瞰で捉え、その頭上を左から右にスライドしていく僚機。このパキッと決まったレイアウトは恐らく事前のプリヴィズ映像で作り込まれた画面設計の成果なのではないか。

 会議シーンでは、例えば、特に自衛隊の中央指揮所が最初に出てくるシーン。
 鶴見辰吾演じる統合幕僚副長と隣の陸幕長 面長の男(國本鍾建氏というオフィス北野の俳優さん)、このシーンの映像の切れの良さは特筆に値するでしょう。エヴァのネルフや軍関係シーンの直系なのだけれど、画面設計(と照明)で抜群にインパクトのある映像になっている。自衛隊の鍛え上げた人間の面構えが、これから始まる戦闘への期待感を高める。
(僕は特に好戦的な人間ではないけれど、これだけ素晴らしい日本人の顔は久しく映画で観たことがないのではないか、というくらいゾクゾクきた。精悍な顔の役者陣をこのシーンでは選んだのであろうが、画面設計と役者による見事な革新の日本映画のワンシーンであろう)

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 このカラースタッフ陣と樋口監督以下実写スタッフによる麻薬的映像。何度も観に行きたくなる秘密はここにもあるのかも。

 レイアウトを徹底したアニメ制作は(宮崎駿と)押井守の開拓した手法だが、それに実相寺他の映像DNAと組合せて、日本映像文化の結実として実写映像の革新を生んだスタッフに最大限の拍手を贈りたい。

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庵野秀明責任編集『シン・ゴジラ』公式記録集 ジ・アート・オブ シン・ゴジラ - :EVANGELION STORE

庵野秀明責任編集『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』

 画面設計の資料がこの本にどれくらい掲載されるか分からないけれど、本の広告チラシのコンテンツの中には絵コンテとかレイアウト画の表記は残念ながらありません。絵コンテ集は、別で出るのかな?

 あとブルーレイには、是非、プリヴィズ映像も入れてほしい。日本のアニメ映像の先端が実写のDNAに抽入された貴重な映像記録として(^^;)


★★★★ネタバレ注意(絶対読んじゃだめです)★★★






◆反映された現実の重み(ネタバレ)

 実は前回の感想で書かなかったのだけれど、一回目を観た後、映像としては初代ゴジラに勝っているのだけれど、そのテーマ性、背負っている監督以下スタッフがその時代から感じている何ものかの強度が、やはり初代にはかなわない部分となっているのではないか、と思ったのだった。

 だけれど二回目を観て、その思いは軽減された。前回、テーマ的には圧倒的に傑作なのは初代ゴジラなのではないか、と思っていたのだけれど、今回観て画面設計の再評価だけでなく映画に込められた想いの強度も、かなり初代のそれに近づいているのではないか、と思えたのだ。

 それは前回の感想で書いた福島東電原発と東日本大震災の象徴としてのゴジラ部分と、さらに重畳された原爆被爆国としての日本の描写。カヨコ・パターソンの祖母の被爆体験とその語りの後にインサートされる2つの広島の被爆写真。第三の核の洗礼を、いまだ属国としての扱いを続ける米国から受けることになる危険の高まる終盤の展開。

 一回目観た後、なぜシン・ゴジラも初代と同様に皇居を目指したのかが、最大の謎だと思っていた。明確には語られないが、そこには人類史上唯一の核攻撃を受けた国の被爆者たちの想いや、牧元教授の妻の受けた放射能被害、そうしたものの漂う霊気のようなものがシン・ゴジラの背後に纏われていたのかもしれない。(そのようにでも考えないと皇居を目指す意味は全く不明だ)

 熱核攻撃の危険性を描くことで、この国の過去の被爆体験を想起させ、それすらもゴジラに纏わせた今作の製作陣の想い。皇居と東京駅を一望できる科学技術館の屋上から俯瞰された最後の戦闘は、同じ場所でクライマックスを描いた被爆映画『太陽を盗んだ男』の長谷川・ゴジ・和彦監督がそこに込めた想いも召喚し、日本人の戦後を総括したひとつの怨念の形象としてのシン・ゴジラ像を東京のコアに創出した。

 凍結したシン・ゴジラの姿は、戦後の日本の姿のネガ画像のようでもある。

 そうした描写だとぼんやりと理解したところで、初代ゴジラの持っていたものを皇居(宮城の緑)の姿から再度召喚し、そしてさらにまさに現在の日本人に重くのしかかる震災と原発、そしてアメリカとの国家間関係を具体的に描き出して、結晶化したシン・ゴジラの佇まい。

 ニッポンの陰画がクライマックスで東京の中心に焼き付けられた。
 そしてそこに立ち向かった日本人のチームワークが、ひとつの救済のイメージを、映画全体にポジ画として相対。エンターテインメントとしてのカタルシスと、そして埋め込まれたテーマ。その映像としての形象があの凍結したゴジラの姿なのであろう。

◆伊福部音楽の融合 (ネタバレ)
シン・ゴジラ - Wikipedia もうひとつ庵野総監督による音響設定について。

"音響設計:庵野秀明
音楽 : 鷺巣詩郎伊福部昭"

鷺巣詩郎『シン・ゴジラ音楽集』
(リンク先でサントラの各曲を視聴できます。)

 冒頭、初代ゴジラからの伊福部サウンドであるゴジラの足音と咆哮音の引用以降、第一 〜 第三形態のシーンでは鷺巣詩郎音楽が奏でられている。
 そしてシン・ゴジラの鎌倉上陸シーンで、満を持したように初めての伊福部音楽「ゴジラ上陸」が勇壮に流れる。

 まるでシン・ゴジラの映像により、伊福部音楽のゴジライメージが上書きをされているようだと感じたのは僕だけではないはず。
 ここに顕著なように、僕らがよく知っている伊福部音楽がシン・ゴジラの映像によって次々とイメージの上書きをされていく。それは単なる上書きではなく、今まで持っている東宝ゴジラ映像のイメージをその都度想起する我々特撮ファンの脳内に、そのイメージとシン映像の相乗効果をもたらし、より豊醸な音楽として記憶に刻まれる。

 それはまるで(ここは意見の分かれるところでしょうが少なくとも僕にとっては)初代のあと、いつしか怪獣プロレス的になっていったゴジラの姿にどこかしら伊福部音楽の勇壮さがそぐわなくなっていった、ある意味、物足りなさを感じていたファンに、あらたに音楽イメージのリビルドを行なっている様にも聴こえた。

 特に素晴らしかったのがクライマックスの『怪獣大戦争』の『宇宙大戦争』テーマ。
 科学技術館の臨時指揮所の上空にはためくシン・ゴジラのビーム砲の光。そこにかぶる『怪獣大戦争』のテーマの勇壮さたるや素晴らしいシン映像とゴジラ音楽の融合である。ここはまさに相乗効果で、イメージの爆音がファンの脳内に鳴り響き、最高にテンションの上がるところである。
 
 こうした音響効果が庵野総監督によって設計されたのか、鷺巣詩郎氏によるものなのかわからないが、この音楽と音響が映画のイメージをビルドアップしていたことは確かな事実。

◆シン・ゴジラ シリーズ
 まだ先の話を書くのは早すぎるような気もするが、このシン・ゴジラの続篇について想いを馳せてしまう。

 今回描かれて基調としてもたらされたリアリティ描写と、ゴジラという存在の設定と造形。そして世界各国と日本の関係。
 これらのフォーマットを念頭に置いた時、続篇が作られるとすれば、過去のゴジラシリーズとは全く異なる、新たな広大なゴジラワールドがここから広がっていくように感じられる。

 ゴジラ細胞による世界へのシン・ゴジラ(属?)の拡散と対処。あるいは凍結された荒ぶる神の復活と3千5百数十秒後のアメリカ含む多国籍軍の熱核攻撃を受ける日本、もしくはラストに描かれた尻尾の先端のヒト型のものの出現。
 
 これだけハードな設定がなされていれば、ただ単なるVSシリーズへ移行することは考えにくいだろう。日本映画界の優秀な監督群による、庵野のDNA(コンセプトと映像スキル)を持った続篇の登場にも期待したい。
(庵野総監督以下、カラー主要スタッフには「シン・ヱヴァンゲリヲン」シリーズの完結と来るべき『風の谷のナウシカ 第7巻』映像化に期待していたい(^^;) )

◆関連リンク
2016年08月05日(金)「シン・ゴジラが大ヒット!原爆の日を前に語る、戦後日本で核はどう描かれてきたのか」(探究モード)

" 映画「シン・ゴジラ」が大ヒット。原爆の日を前に語る、戦後日本で核はどう描かれてきたのか
■出演者 恵泉女学園大学教授の武田 徹さん、神戸市外国語大学准教授の山本昭宏さん"

 Session 22における『シン・ゴジラ』議論(たぶんその一)。荻上チキほかの気鋭の評者による読み解きをお楽しみに。
Godzilla Resurgence 2016(Youtube)
 タバ作戦の爆撃シーン等。画面設計の冴えの一端。


シンゴジラ公開記念イベント、海ほたる、除幕式後のグッズサイン - YouTube
 海ほたるのイベントで樋口真嗣監督によって語られたシンゴジラの秘密。背びれは生頼範義氏のイラストを参考に造形されたとのこと!

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