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2016年11月27日 - 2016年12月3日

2016.11.28

■感想 片渕須直監督『この世界の片隅に』


映画『この世界の片隅に』予告編 HD - YouTube
この世界の片隅に - Wikipedia

" 片渕自身がこの作品のアニメーション映画を企画し、こうのに許諾を請う手紙と自作『マイマイ新子と千年の魔法』のDVDを送った。
 こうのは1996年に放送された片渕のテレビアニメ『名犬ラッシー』にあこがれ、「こういう人になりたい、こういうものが作りたいと思う前途にともる灯」として捉えていたため、この手紙を喜び枕の下にしいて寝たという"

 片渕須直監督『この世界の片隅に』を名古屋伏見ミリオン座で観た。
 まず第一に、冒頭のことりんごの主題歌が出てくるシーンの素晴らしさ。息を飲むような素晴らしい空のシーンにまずじんわりと映画全体がそこに結晶したような感覚を(冒頭なのに)何故か覚えたのは僕だけだろうか。

 そしてそれに続く本篇のアニメーション表現の何と豊かなことか。
 冒頭の化け物の背追い駕篭から、座敷わらし。空襲のリアリティとファンタシー。衝撃的な場面の心象を前面に出したようなアニメーション映像。

 音響設計と相まって、映画を芳醇にする、まさに魅せる映像になっている。
 こうの史代の原作も、ロ紅で描いたり、左手で描いたりしたそうだが、映画の心象を見事に表現した、アニメーションの柔軟な描写が活きている。

 片渕須直監督と、そして監督補・画面構成を担当された浦谷千恵さんのアニメーション表現が存分に発揮されたみごとな映像。
 アンドウの頃からの活動を会誌で少し知っていたので、このお二人のアニメーションの結実がなんとも素晴らしく感動です(^^)。

 淡々とそしてユーモラスに描かれる日常のリアル。
 絵を描くシーンも日常の家事も、いずれも主人公すずの手作業を丹念に追い、そこに息づく人間のぬくもりを伝えてくる。ホワッとしたすずの人柄がなんとも微笑ましい。
 そして呉という街の独特の雰囲気と、その日常描写があいまって、映画は戦時中の人々の生活をリアルに描き出している。

 そうした人の手の作業を前半で描き、それに退避して描かれる後半の痛ましい現実。積み上げた日常を破壊する戦争という過酷な現実の表現として、ほわっとしたすずのあるシーンでの慟哭が強く胸を撃つ。

 戦争と市井の人間を描いた素晴らしい傑作。多くの人に観てほしいアニメーション映画です。

◆蛇足 岩井俊二監督『リップヴァンウィンクルの花嫁』との関連
 この映画を観て、僕は今年観た『リップヴァンウィンクルの花嫁』を何故か強く思い出していた。主人公 皆川七海の浮遊感と、状況への巻き込まれ感がきっとその原因なのだろうと思う。

 描いている時代もテーマも大きく違うが、ここにもうひとつの現代の『この世界の片隅に』が存在しているような気がする。いささか強引だけれど、描かれている人の気持ちはとても似ている。こうした市井の心象の丹念なスケッチは、日本映画の見事な堆積物の賜物のような気がするのは僕だけだろうか。

◆関連リンク
・当ブログ記事 ■感想 岩井俊二監督『リップヴァンウィンクルの花嫁』: Bride wedding scores for rip van winkle

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