« ■感想 荒川格ディレクター NHK『 終わらない人 宮﨑駿』70分版 | トップページ | ■感想 大童澄瞳『映像研には手を出すな!』第1巻 »

2017.02.13

◆感想 宮﨑駿監督『風立ちぬ』 白い服の少女と漫画映画監督の救済、その完結

 前回の記事で書いた宮崎駿の作品モチーフとして描かれ続けている「白い服の少女の救済」について、『風立ちぬ』との関連で思うところあり、以下、記してみます。

O0704033913848303112

 何度目かの『カリオストロの城』がテレビ放映された昨年末に、ラストまで目が離せなくなって、十数回目を観てしまった。
 そのラスト。テーマ的にも、宮崎駿終生の「白い服の少女の救済としての浄化」を最も高度に描き出した傑作であると再確認。

 宮崎駿のこのテーマについては過去にこんな記事を本ブログに書いた。

■BS アニメ夜話 『カリオストロの城』

" 白い服を着た少女について。
 『宮崎駿の原点―母と子の物語』という大泉 実成が書いた本の中に非常に興味深い宮崎の子供時代のエピソードがある。あまりに後の作品にピッタリはまりすぎてかえって嘘くさく思えるエピソードなのだけど、、、。

 手元に本がなく記憶で書くけど、東京大空襲の中で宮崎家の自動車に乗せてほしいと言われたが、もう上院に余裕なく助けられなかった少女。
 それが原罪となって、全ての宮崎作品の感情的描写の根底にあるように思います。死んでしまった少女が持っていた無限の可能性。宮崎の描く少女(女性)のキャラクターは、その生きられなかった未来の可能性の一つ一つの姿なのかもしれません。

Img_7_m

 そしてその少女の救済、それが最も昇華した形が、『カリ城』のクラリスと『未来少年コナン』のモンスリーを描いた「大津波」(白い服ではないが、、、)。

 どちらも記憶の中の少女の姿がキービジュアルとなり(それは空襲の業火の中で宮崎の心に焼き付いた空襲で死んでしまったかもしれない少女の姿)、物語の中でその記憶の少女の成長した後の浄化を見事に描き出しています。"

 宮崎駿の映画で、この戦火/災害の業火の中に佇む白い服の「少女の救済」がそのテーマの中心にいることは数々の作品で明らか。上に挙げた以外にも、「さらば愛しきルパンよ」『風の谷のナウシカ』「On Your Mark」『ハウルの動く城』『もののけ姫』等々、監督作以外にもテレビや映画のシーン担当としても同様のテーマは枚挙にいとまがない(一度いつかしっかり確認し、まとめてみたい)。

 あと宮崎が漫画映画を志すきっかけとなったと言われる『白蛇伝』の主役もまさに白娘なのである。

Img1875_ktn02

 この文脈で考えた時に長篇最後の作品『風立ちぬ』は、大震災の業火の中で助けた「白い服の少女」と主人公を描いた物語となっている。

 主人公の飛行機設計者堀越二郎は、その設計工房がまるで初期の長編漫画映画スタジオのように描かれていることから、おそらく監督自身を模したキャラクターなのであろう。

 そして『風立ちぬ』では、今までの宮崎作品で描かれなかった監督を模した主人公と白い服の娘、その二人の結婚と後の別れまでが描かれる。
 ついに結ばれ、そしてそのラストは、当初の絵コンテでは死んだ妻が迷宮から「来て」と呼びかけ主人公がそこへ旅立つはずだった物語構成だった。

01

 大空襲の中で死んだ少女と一緒になり、そして彼女の元へ宮崎が赴くことを(物語として)ついに決意したかの様に描かれた『風立ちぬ』。

 それは宮﨑駿という一貫して「白い服の少女の救済」を描いてきた漫画映画監督自身が、その終生のテーマの集大成を意図して、まさに最期の作品として構想された作品と考えることができる。

 出来上がった作品は、ご存知のようにそのラストは国民作家のエンターテインメント作品として、あまりにブラックなセリフは一文字改変され「来て」が「(貴方は)生きて」と変更されている。

 これにより当初の意図の、白い服の少女との迷宮への旅立ちという、宮崎監督自身の思いを微妙に離れ、その監督の救済を描くことになってしまったという皮肉なオチにも受け取れます。

 まさにこれこそ作家の「業」。

 というわけで、終生のテーマに一応のピリオドを打った監督が、今まさに構想しているという長編次作で何を描くのか、期待してます(^^;)。

◆関連リンク
・当ブログ記事 宮崎駿監督『ハウルの動く城』と少女の救済

|

« ■感想 荒川格ディレクター NHK『 終わらない人 宮﨑駿』70分版 | トップページ | ■感想 大童澄瞳『映像研には手を出すな!』第1巻 »

コメント

 一度バイクでいったことがあります。なぎさ公園はいいプライベートビーチでしたね。中海の対岸には日立金属の安来工場と冶金研究所があり特殊鋼(ハガネ)の町を改めて実感させるものでしたが、不思議と近代的なイメージの鉄鋼工場だったのを覚えています。

投稿: 古代出雲ファン | 2017.05.04 22:57

 私も行ったことがあります。島根県安来市です。素敵な場所ですよね。
清水寺、足立美術館や和鋼博物館にもいきました。たたら製鉄が盛んだったらしいですね。あと和鋼博物館から見える
十神山、なんかジブリの天空の城ラピュタを思い起こすような、かわいい小山が綺麗でした。地下に続く秘密の無限回廊を降りると、巨大結晶の飛行石があったりして。夜なんかライトアップすればあらたな観光地になりそう。

投稿: 隣のトトロ(鳥取) | 2017.04.30 14:53

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ■感想 荒川格ディレクター NHK『 終わらない人 宮﨑駿』70分版 | トップページ | ■感想 大童澄瞳『映像研には手を出すな!』第1巻 »