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2017年5月28日 - 2017年6月3日

2017.05.31

■情報 大友克洋(手描きスケッチ) 河村康輔(彩色、デジタルコラージュ) 「INSIDE BABEL」

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大友克洋さん「バベルの塔」大胆解釈 ざっくり切り込み:朝日新聞デジタル
(リンク先 インタビュー動画あり)

"大友克洋さんが、18日から東京・上野の東京都美術館で始まる「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展」に合わせて、原画を大胆に新解釈した絵画作品「INSIDE(インサイド) BABEL(バベル)」を発表する。塔にざっくりと切り込みを入れて、構造や中でうごめく人々、建設作業を想像し、ちみつに描き出した。完成作の展示を前に、大友さんが語った。"

大友克洋 「INSIDE BABEL」.pdf(プレスリリース)

"大友克洋氏が、同作からインスピレーションを得た新作「 INSIDE BABEL 」を制作しま した。 ブリューゲルを好きな作家の1人に 挙げている 大友氏が今回の制作にあたり考えた テーマ は、「バベルの塔の内部構造」。制作に先立 ち 、実際にオランダ・ロッテルダムのボイマンス 美術館などを訪れる現地取材を敢行し、 美術館学芸員と の 意見交換などを経て構想を練りま した。作品の彩色は、共同制作者 であるコラージュ・アーティストの 河村康輔氏が担当。大 友氏による手描きスケッチを元の作品画像に合成し、その上にブリューゲルの「バベルの 塔」から抽出した2万個以上の 微細なパーツ を データ上で 貼り合わせるデジタルコラージュ 手法 を用いました 。 作品は、 4 月 18 日(火)から 7 月 2 日(日)までの展覧会会期中に、東京都美術館 ロビ ー 階の企画展示室入口横ホワイエ にて特別公開されています。 本作品の観覧は無料 。 「 INSIDE BABEL 」複製原画や関連グッズを、展覧会特設ショップ や 通販サイト「朝日新聞 SHOP 」 ( https://shop.asahi.com/ ) などで販売予定"

 大友克洋の描くバベルの塔。細密建築画家としても凄腕の大友氏のバベル内部図解に興味津々。その内部にはどんな迷宮が潜んでいるのか?
 制作過程について、日曜美術館で大友克洋自身の出演で解説されたので、以下、紹介と感想です。(実物は大阪での展示会に行ってみたいと思う)

日曜美術館「ブリューゲル×大友克洋」17.5/28 - NHK

"60cm×75cmの1枚に1400人が緻密に描き込まれている。激動の時代を生き抜いたブリューゲルが絵に込めたメッセージとは何だったのか。緻密でどこか不気味なブリューゲルの作品世界に大きな影響を受け、自らもバベルの塔の内部を描いた作品を制作した漫画家・大友克洋をスタジオに招き、存分に話を聞く。"

 まず大友克洋によるブリューゲル作の分析。

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 「バベルの塔」の不穏について、特に水平線の位置が中央にあることから、その視点が神のものとも人のものとも特定できないことで不穏な雰囲気が醸し出されている、と分析。
 そして上記引用画にある細密描写について。わずか60cm×75cmの小さな絵にみっちりと描かれた人々。その数1400人とか。しかしそのリアルなポーズが素晴らしい。

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 まず大友はブリューゲルが描いた絵を精密にトレースし、その描写について把握していったという。その際には、リアリティを確保するのに、建築の装置を自分の知識から引き出しつつ細部を描いた。これにより構造を把握して内部を推定していく大友。

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 その莫大な重量が内部にかかっていくため、内部は空洞なのではないかと推定し、まず描かれたのが左上。内部空洞は同一の内径で上部まで伸びている。そしてその内側に帽子の鍔のように出ている回廊。
 さらに構造的に強度を持たせるのに、想定されたのが右上と左下、下へ行くほど太く上部を支える構造としたことで安定感が出ている。

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 大友によって描かれたバベルの塔の内壁詳細スケッチ。
 さすがに構造とデザインを両立しさらに味わい深いディーテイルが描かれていて素晴らしい。

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 そして着色され完成した「INSIDE BABEL」。
 上部の円形の天井から下へ行くほど空洞が狭まる構造。そして右下からは船が内部へ運河を通って、空洞の中に物を運べるという工夫。
 構造、絵の細部等、ブリューゲルの雰囲気に似せた興味深い作品になっている。
 この空洞でどんなドラマが繰り広げられているか想像力を刺激する。
 バベルの塔が人類を言葉によって神が分断させる前の、ひとつの大きな混沌だとすると、内部ではどんなにか猥雑な生活が営まれていたか。
 ブリューゲルは内部を描かないことによって、観る者にその混沌を想像させたのではないだろうか。
 大友克洋の今回の試みは、その内部をあえて描くことで何かを描写したかったはず。あえて混沌は描かず、地下室の暗闇と塔の奥底の闇を描くことで、観る者の想像力をかき立てる。じっくりと実物を(デジタルだから実物は?だけど)観て、それを想像したいものです。

◆関連リンク
開催概要|【公式】 ブリューゲル「バベルの塔」展

"[会期] 2017年7月18日(火)~ 10月15日(日)
[会場] 国立国際美術館 〒530-0005
 大阪府大阪市北区中之島4-2-55 http://www.nmao.go.jp/
[開館時間] 10:00 ~17:00、金曜日は19:00まで(入場は閉館の30分前まで)"

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2017.05.29

■感想 ノンフィクションW「ユーリー・ノルシュテインの、話の話。」

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ノンフィクションW ユーリー・ノルシュテインの、話の話。 | ドキュメンタリー | WOWOWオンライン

"ユーリー・ノルシュテインには、1981年から制作中の作品がある。切り絵を使ったアニメーション『外套』だ。原作は帝政ロシア時代の作家、ゴーゴリの小説で、社会から見捨てられた貧しい下級役人の悲劇を描いたもの。彼がこの作品にこだわるのは、自己保身と欲望が渦巻く現代にこそ声なき声に耳を傾けることが大切だと考えているからだ。撮影台の上に置かれたキャラクターを一枚一枚コマ撮影していくが、24枚の撮影でわずか1秒の映像にしかならない。しかも、撮影の途中で脚本を修正することがあり、撮り終えたものを作り直すことも。そんなノルシュテインを妻で美術監督を務めるフランチェスカが支える。また、彼と親交のある高畑勲は、進捗状況を聞いてプレッシャーを掛けたくないと語る。 目下、ロシアのアニメ界はソ連崩壊以降国からの製作費支援が減り衰退気味だ。ロシアアニメの未来を憂え行動を起こす彼の姿も追う。(2017年)"

 WOWOWのユーリ・ノルシュテインドキュメンタリー録画見。
 主に「外套」の撮影風景とロシアアニメーション界の状況。「外套」は23分できたところで2001年に制作が止まっていた。週に1日スタジオで作品にまつわるグッズをノルシュテイン自らが販売することでスタジオの維持費を得ている。このドキュメント撮影の日は、1日で売り上げが14万円とか。

 ロシアの資本主義政府からは支援金を得たくない、と映画監督アレクサンドル・ソクーロフに語る彼は、ソビエト時代「検閲があったからこそ映画の芸術性が保たれていた」と話す。

 長くノルシュテイン作品の美術監督を務める奥さんのフランチェスカ・ヤールブソワさんは、大病を患い「外套」の美術は降りたのだという。
 そして今年2月に「外套」の撮影が再開。

 切り絵の主人公アカーキーのアニメートについてノルシュテイン自身により精緻を極める何重ものセルを重ねて動かしながら語られて、とても興味深い。  またフィルムカメラがセットされたノルシュテイン設計のマルチプレーン撮影台。一番上のガラスには埃がわざと溜められている。これにより繊細な光の拡散が得られるのだとか。「ホコリは良き助手なんだよ」と笑うノルシュテイン。

 「外套」の一部シーンと舞台となったサンクトペテルブルクの街が実写で紹介される。影の陰影で立体感を持った登場人物たちのなんとも柔らかい全身の表情。全篇の映画館での公開を心待ちにしたいものです。

◆関連リンク
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