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2017年8月27日 - 2017年9月2日

2017.08.30

■感想 山田正紀『ここから先は何もない』Beyond Here Lies Nothin'


Bob Dylan:ホブ・ディラン- Beyond Here Lies Nothin' - YouTube

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ここから先は何もない :山田 正紀|河出書房新社

"小惑星探査機が採取してきたサンプルに含まれていた、人骨化石。その秘密の裏には、人類史上類を見ない、密室トリックがあった……!

小惑星から発見された、化石人骨“エルヴィス”とは?3億キロの密室殺人。一気読み必至!超弩級エンタテインメント"

 壮大な地球生命史、人類史、そして宇宙の人工知能の歴史がボブ・ディランの歌のタイトルと呼応し、素晴らしいハーモニーを奏で、そして絶望を謳っている。

 ここでもある意味、山田正紀がデビュー長篇『神狩り』からテーマとしてきた、神との闘いが描かれていると言ってもいいかもしれない。

 壮大な宇宙の歴史、人類の存在意義といったSFの王道のテーマで今回山田正紀が描いたのはその存在の虚無である。まさに「Beyond Here Lies Nothin' ここから先は何もない」。

 しかしそれでもポジティブに登場人物たちを描く山田正紀の筆致が心地いい。
 宇宙の物語であるのに、市井の人々の地上の視点が貫かれている。山田正紀の得意とする必ずしも優秀でない若者たちがその自身の持てる力を尽くして戦う姿が最初から描かれていることにより、描かれた虚無がどこか相対化されていく。
 これが本書の読後感を、冷たくも暖かくしている所以なのだと思う。

 壮大な宇宙の推理トリック、宇宙史、人類史といった彼方の視点と若者の奮闘する姿。こうした幅広い視点が、「想像できないものを想像する」山田SFの真骨頂である。本書はそれを苦くも心地よく描いた山田ファンへの見事なプレゼントである。

◆関連リンク
山田正紀 当ブログ記事 Google 検索

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2017.08.28

■感想 「奈良美智 for better or worse」展 @ 豊田市美術館

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奈良美智 for better or worse(豊田市美術館 公式サイト)
 以前に古典以外で何枚かの作品を観ているが、これだけまとまって奈良美智作品を鑑賞したのは初めて。

 実は奈良作品にもっと稚気にあふれた印象が強かったのだが、全体を鑑賞した感想は、もっと反逆というか呪咀に満ちた絵だというイメージ。その理由は手に持つナイフや邪悪な視線。

 特にこの女の子たちの視線は、観客を通り越して、観客の背後の不可思議な世界を見ているように感じられる。そしてその彼女たちが見ている光景を展示会の途中から想像したら何だか寒気がして来た。

 この感覚が奈良作品のもしかして真髄なのかと感じたのは、その大小はあれ、一緒に行った家族もだったので、あながち間違いではないのではないのかもしれない。実は奈良作品論とか美術界方面の批評を見ていないので全くの的外れなのかもしれない。

◆キャシー・オリヴィスと奈良美智作品
 「奈良美智 for better or worse」展を観てきた印象の強いうちに、と以前から気になっていたキャシー・オリヴィスと奈良美智作品の違いを考えてみた。(異なるアーティストの作風の違いを云々することの無粋をご容赦ください。僕にはずっと気になっていたのでここにメモしておきます)

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 Google画像検索で比べてみるとよくわかる。

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 左が奈良美智、右がキャシー・オリヴィス。
 ふたりの作品は、どちらも額の広い女の子が主題になることが多い。そしてその眼の大きさと両目の間隔、全体的なバランスが近いイメージを醸し出す。

 しかし比較して並べてみた画像1枚目を見てもらうと顕著であるが、眼の形状と絵画としてのタッチが大きく違うことがわかる。奈良の眼は、今回の展示会で僕が感じた「反逆」とか「呪詛」といったイメージにつながるような半目で釣りあがっているのが特徴である。そして絵画で特に顕著だが、キャシーのそれは丸くそして眼にどこか温和さが宿る。

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 第一印象で似た感覚を持っていたので、今回、こうしてふたりの作家の違いを比べてみた。
 僕が好きなのは、絵画では奈良のタッチ。立体造形ではキャシー・オリヴァスの4本脚の女の子たちがもっとも印象に残る。絵画より色合いが薄いトーンになっているのと、造形で形状がシンプル?になっているのが、そんな感想を僕にもたらしているのかもしれない。

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