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2017年10月29日 - 2017年11月4日

2017.10.30

■感想 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『ブレードランナー 2049』


Blade Runner 2049 Trailer #2 | Harrison Ford, Ana de Armas, Ryan Gosling, Jared Leto - YouTube.

 上記動画は予告篇ですが、かなりストーリーに踏み込んでいるので、視聴はご注意ください。

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『ブレードランナー 2049』IMAX 3Dで観てきた。
 白紙で観るのをお薦めしますので、まずはネタバレなしの感想ですが、未見の方は御注意を。



 『ブレードランナー』の正に正当な嫡子であり、ドゥニ・ヴィルヌーヴの正統SF映画である傑作、これが見終わったあとの感想である。

 見事に前作のテーマと物語の続篇として成立し、そして新たに追加されたヴィルヌーヴ印の新作映画としての、本格的なSFの香り。その香りは、前作のテーマを深化させて、レプリカントと名付けられたアンドロイドの進化と孤独を見事に描き出している。

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 SFとして、今回もちろんブレランのサイバーパンク的な継承は溢れている。しかし、この映画は、原作のフィリップ・K・ディックやサイバーパンクの代名詞であるウィリアム・ギブスンというよりは、ジェームス・ティプトリー・Jr的ではないか、というのが僕の感想。

 本作で凄く良かったのが中盤から後半で出てくるSFの大ネタ二つなのだけれど、それらがとてもジェームス・ティプトリー・Jr的だったのだ。

 もちろんティプトリーもサイバーパンクの文脈で語られることの多い作家だけど、『ブレラン』の1982年より遡る70年代の彼女のある傑作短篇を想い出させる秀逸なSFイメージが今作のある意味でのコアになっている。

 ディックに比べて映像化では作品数に恵まれていないティプトリーだけど、今作は彼女のSFイメージと作品のハート部分をうまく映像化している作品と捉えることもできるのではないかと。僕の思い込みかもしれないが、、、。

 ハート部分は、ジェンダーの問題と新たな地球上の知的存在(レプリカント)の存在をめぐる部分。ティプトリーが描いてきた宇宙の知的存在の有り様みたいなものがうまく今回の物語に表現されていると感じたのは僕だけだろうか(今のところ、twitterとかFacebookのキーワード検索で調べても引っかからないので、個人的な受け止め方かもw)。

 

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 ヴィルヌーヴは、『メッセージ』でテッド・チャンのSFを見事に映画化した監督ですが、おそらくティプトリーとかそうしたSFも読んでいるんじゃないかと思わせる、見事なSF小説のコアエッセンスを自作に取り込んでいる作家と言えるのではないだろうか。(今作の脚本は前作と同じハンプトン・ファンチャーマイケル・グリーン、『メッセージ』はエリック・ハイセラーということで、物語にどれだけヴィルヌーヴが入り込んでいるかは不明だけど、、、、w)

 あと映像としてリドリー・スコットの前作にリスペクトしながら、酸性雨の2019年の都市は、雪と乾いた砂漠の未来都市のイメージが映画として混入し、そうした映像感覚は、『複製された男』『メッセージ』にも通ずるヴィルヌーヴ風の映像。そして3D映画としての立体視を意識した映像レイアウトも素晴らしく正に堪能した。

 酸性雨にむせぶダウンタウンの映像は前作のモニタから、予告篇にある3D映像に変化し進化。加えて描かれる砂漠、海等の未来描写も素晴らしくアーティスティックに表現されていて、1シーン1シーンが見てて飽きない深みを持っている。

 特に前作で美しいシーンであった、タイレルコーポレーションでデッカードとレイチェルが初めて会うシーンの美しさに対して、今回はラブとKが会うシーンが光と影を見事に使い、建築のデザインは前作と随分違うが、リスペクトが明らかにわかる素晴らしいシーンになっていた。

 3Dシーンは、雪の効果、水の立体感ほか、随所に立体を意識した映像が用意されていて、高いレベルを実現している。今回、

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 ちょっと残念だったのは、ハンス・ジマーによる音楽。
 意味なくいろんなシーンで、「ドーン」という衝撃音を鳴らしているのだけれど、全体的に大仰/深刻な重いトーンで僕は馴染めなかった。新しいサントラ、という意見もあるようだけれど、確かに新しさとしては認める部分があるにしても、この映画に合っていたかというと少し違うのではないか、というのが僕の感想。

 どうしても前作と比較してしまうのだけれど、ヴァンゲリスの音楽はもっと幅があったと思う。そしてあの音楽こそがブレランでもあるわけで、音楽だけでもヴァンゲリスをベースにして、それをアレンジ形にできなかったのかと思う。

 特にレプリカントの切なさ、そして主人公をめぐる後述する愛の物語に、前作のサントラ「メモリーオブグリーン」が聴こえてこないのが残念。思い込みだけれど、あの音楽こそがブレランの真髄と感じているので、勝手に頭の中で鳴らしていたのだった。

 ネタバレ注意 




 以下に直前に見直した前作の感想を書いたが、テーマとして僕が感じるのは、記憶と新たに人間によって作られた、地球上の知的存在であるアンドロイドとAIの持つ寂寞感。

 そのテーマは、今回、主人公のブレードランナーであるKと狩られるレプリカント、そしてジョイという存在によって見事に表現されている。

 僕がティプトリー的と感じたのは、そのKとジョイの交流。そのクライマックスは町で知り合ったレプリカントの女性を二人の部屋に呼んで、ジョイがその女と同期してKと肉体的な接触を果たすシーン。

 そしてアナ・ステリン博士。彼女がヴァーチャル空間で紡ぐレプリカントの記憶の物語。

 これら二つのシーンで僕が想起したのは、ティプトリーJr.の「接続された女」である(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア, 浅倉 久志『 愛はさだめ、さだめは死 』(ハヤカワ文庫SF所収)。サイバーパンクに先立つ、ティプトリーのその作品と『2049』の共鳴は、少なくともうなづいていただけるのではないかと(^^)。

 あと関連作として思い出したのが、日本アニメの影響。
 レプリカントの捜査官であるKの部屋は綾波レイの部屋を思い出させる無機質さを持っている。またそれによってジョイの存在の鮮やかさが際立っている。

 上で書いたアナ・ステリン博士のシーンは、未来少年コナンの過去を記憶したヴァーチャルリアリティの部屋を思い出させた。ヴィルヌーヴが見ているかは定かでないが、ティプトリーの影響含め、聞いてみたいポイントである。どなたかインタビューで聞いてください(^^)。

◆関連リンク
黒酢さんのツィート

"To 3D Or Not To 3D: Buy The Right Blade Runner 2049 Ticket
『ブレードランナー2049』IMAX3D版の3D映像についてのレビュー。部分的な映像の暗さが指摘されるが、3D映像としての質の高さは太鼓判級で長尺も問題無し。撮影監督のR・ディーキンスは撮影段階で3Dを意識、3D映像も監修している。"

"R・ディーキンスはIMAXを好まないし3Dも嫌いだと明言しているが『ブレードランナー2049』をIMAX3Dで上映する以上は全てを自身で監修してプロとしての仕事を行っているという事か。"

 3Dについての興味深いツイート。嫌いだからこその見事な出来だったのかも。

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア, 浅倉 久志『 愛はさだめ、さだめは死 』(ハヤカワ文庫SF)
ブレードランナー 2049 - Wikipedia

"Blade Runner 2049 は、標準の2Dおよび3Dフォーマットに加えて、 IMAXシアターでリリースされた。 [56] 北米の映画愛好家の間で、IMAX 2D(3Dとは対照的に)の人気があったため、この映画はIMAXの劇場ではアメリカ国内では2Dでしか見られなかったが、国際的には3D形式で上映された。"

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