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2017年2月12日 - 2017年2月18日

2017.02.15

■感想 大童澄瞳『映像研には手を出すな!』第1巻

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「映像研には手を出すな! 1」第1話 試し読み  小学館公式

    " アニメは「設定が命」の浅草みどり、カリスマ読者モでアニメーター志望の水崎ツバメ、金儲けが大好きな美脚の金森さやか。
   ダンジョンへ、戦場へ、宇宙へ--想像の翼を広げて、電撃3人娘が「最強の世界(映像)」を創り出す!    

 「月刊!スピリッツ」連載時よりSNSで「すげえ漫画が始まった!」と驚異の拡散!

〈 編集者からのおすすめ情報 〉
ドラえもん、宮崎駿、そしてザリガニが好きな方、設定・世界観・背景フェチの方には絶対刺さります!

第1話 最強の世界 第2話 映像研、爆誕す!
第3話 無給! ブラック・パラパラ漫画 第4話 映像研の災日
第5話 手間を減らして派手にしろ!! 第6話 1日48時間労働の危機
第7話 鉛筆を強く握れ! "

 サンプル 第1話がリンク先で読めます。波長があった人は是非1月に出た第1巻を読んでみてほしい。

 スーパーアニメ一ターを目指す少女たちの物語。タイトルの「映像研」に同じ映像研仲間として、強烈にシンパシィを感じて(^^)、第1巻読んでみました。

 途中、たとえば「井上さんが作画監督のアニメが今日から始まるんだ!」というセリフがあったり、作画ファンにも堪らないくすぐりが随所にあります。もちろんこの名前は、カリスマアニメーター井上俊之氏のことではないか。そして「映像研」の名に相応しい物語が展開する。

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 人物はアニメ的な省略の効いたデザイン。そして背景がとても凝っていていい。右引用画に示すように『ブレードランナー』風のデッドテックなイメージとジブリの構造物との融合体的なアニメファン、SFファンの郷愁を誘うテイストになっている。

 また物語は、舞台となる柴浜高校(この名前がまたレトロ! 落語ファンの琴線もさすりますw)で、新設された同好会である、映像研究会が校内の予算獲得に向け、短篇アニメを制作するところから始まる。

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 部室の確保から、ストーリー、設定、キャラクター、イメージ画と物語の進行とともに制作過程が刻々と描かれる。主人公達がそれらをイメージする時に、芝浜高校は未来都市になり、部室の椅子が宇宙機になり、浅草みどりがお年玉をはたいて買ったリュックは、生命維持装置に変わる。学生生活の部活動の夢想が広く宇宙にまで羽ばたく気分が、漫画の媒体で最大限活きていて、あの高校生独特の精神世界が見事に活写されている。

 第1巻の途中で主人公が宮﨑駿監督『未来少年コナン』を観るシーンがある。まさに本作は『未来少年コナン』の直系の雰囲気を醸し出しており、若いファンだけでなく、往年の宮崎ファンにも優しいw、広い世代の漫画映画ファンに受ける絵柄と物語になっている。特にメカデザインの丸っこさは、コナンメカを彷彿とさせる。

 また何回か出てくる「面白くなってきやがった」というのは言わずもがなの『カリオストロの城』からの引用かとw。

 この漫画家の名前 「大童澄瞳」、ペンネームと考えられるが、字義を考えて眺めてみると、まさに『未来少年コナン』直系、漫画映画の明日を担って頂ける素晴らしい名前ではないだろうか。

 このまま人気が拡大して、スーパーアニメーター達によるテレビアニメ化/漫画映画化されることを望むものである(^^)。

大童澄瞳氏 対談!!
【単行本発売記念】大童澄瞳×りょーちも、魂のアニメ対談!【映像研には手を出すな!】 - コミスン(comic soon)

"大童 母が、「ルパンは緑まで」「ウルトラマンはセブンまで」という感じの人で。怪奇大作戦みたいなのが好きで、僕からの着信音はレッドキングで、姉からの着信音はバルタン星人っていう......。

ちも なぜこういう作品を作るようになったのか、すごく感じるところが多いです。全体としては、すごい昭和なんですけど、舞台がどこなんだろうというのがわからなかったので、この人はどういう時空を生きているんだろうって。
大童 高校時代には、後輩から「あなたは第一世代オタクのコピーだ」って言われました。
ちも それを断言できる後輩もおかしいよ!(笑)

大童 僕は玩具をあまり買ってもらえなかったので、子供用のハンガーをメーヴェに見立てて、モモンガのぬいぐるみを載せて『風の谷のナウシカ』のコルベットに追いかけられるシーンを......てれれってってて~♪というのをずっとやっていて。"

 なんとりょーちも氏との対談! そして大童氏のルーツが語られる。
 素晴らしいお母さんをお持ちのようです! まさに直系!

◆関連リンク
大童澄瞳 - Wikipedia
 23歳にしてこの漫画映画スピリッツ、素晴らしいです。
大童澄瞳:単行本発売中 (twitter)
デンノー忍者こと大童澄瞳です。 - ザリガニを釣れ!
 ブログだけれど、まだ記事は2つだけです。
「デンノー忍者」のプロフィール [pixiv]
 オリジナルのイラストが多数見られます。
想像力が暴走する、アニメ制作JK青春冒険録! 大童澄瞳『映像研には手を出すな!』/アニメ評論家・藤津亮太のアニメな?マンガ【第4回】

大童 澄瞳『 映像研には手を出すな! 1』(Amazon)


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2017.02.13

◆感想 宮﨑駿監督『風立ちぬ』 白い服の少女と漫画映画監督の救済、その完結

 前回の記事で書いた宮崎駿の作品モチーフとして描かれ続けている「白い服の少女の救済」について、『風立ちぬ』との関連で思うところあり、以下、記してみます。

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 何度目かの『カリオストロの城』がテレビ放映された昨年末に、ラストまで目が離せなくなって、十数回目を観てしまった。
 そのラスト。テーマ的にも、宮崎駿終生の「白い服の少女の救済としての浄化」を最も高度に描き出した傑作であると再確認。

 宮崎駿のこのテーマについては過去にこんな記事を本ブログに書いた。

■BS アニメ夜話 『カリオストロの城』

" 白い服を着た少女について。
 『宮崎駿の原点―母と子の物語』という大泉 実成が書いた本の中に非常に興味深い宮崎の子供時代のエピソードがある。あまりに後の作品にピッタリはまりすぎてかえって嘘くさく思えるエピソードなのだけど、、、。

 手元に本がなく記憶で書くけど、東京大空襲の中で宮崎家の自動車に乗せてほしいと言われたが、もう上院に余裕なく助けられなかった少女。
 それが原罪となって、全ての宮崎作品の感情的描写の根底にあるように思います。死んでしまった少女が持っていた無限の可能性。宮崎の描く少女(女性)のキャラクターは、その生きられなかった未来の可能性の一つ一つの姿なのかもしれません。

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 そしてその少女の救済、それが最も昇華した形が、『カリ城』のクラリスと『未来少年コナン』のモンスリーを描いた「大津波」(白い服ではないが、、、)。

 どちらも記憶の中の少女の姿がキービジュアルとなり(それは空襲の業火の中で宮崎の心に焼き付いた空襲で死んでしまったかもしれない少女の姿)、物語の中でその記憶の少女の成長した後の浄化を見事に描き出しています。"

 宮崎駿の映画で、この戦火/災害の業火の中に佇む白い服の「少女の救済」がそのテーマの中心にいることは数々の作品で明らか。上に挙げた以外にも、「さらば愛しきルパンよ」『風の谷のナウシカ』「On Your Mark」『ハウルの動く城』『もののけ姫』等々、監督作以外にもテレビや映画のシーン担当としても同様のテーマは枚挙にいとまがない(一度いつかしっかり確認し、まとめてみたい)。

 あと宮崎が漫画映画を志すきっかけとなったと言われる『白蛇伝』の主役もまさに白娘なのである。

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 この文脈で考えた時に長篇最後の作品『風立ちぬ』は、大震災の業火の中で助けた「白い服の少女」と主人公を描いた物語となっている。

 主人公の飛行機設計者堀越二郎は、その設計工房がまるで初期の長編漫画映画スタジオのように描かれていることから、おそらく監督自身を模したキャラクターなのであろう。

 そして『風立ちぬ』では、今までの宮崎作品で描かれなかった監督を模した主人公と白い服の娘、その二人の結婚と後の別れまでが描かれる。
 ついに結ばれ、そしてそのラストは、当初の絵コンテでは死んだ妻が迷宮から「来て」と呼びかけ主人公がそこへ旅立つはずだった物語構成だった。

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 大空襲の中で死んだ少女と一緒になり、そして彼女の元へ宮崎が赴くことを(物語として)ついに決意したかの様に描かれた『風立ちぬ』。

 それは宮﨑駿という一貫して「白い服の少女の救済」を描いてきた漫画映画監督自身が、その終生のテーマの集大成を意図して、まさに最期の作品として構想された作品と考えることができる。

 出来上がった作品は、ご存知のようにそのラストは国民作家のエンターテインメント作品として、あまりにブラックなセリフは一文字改変され「来て」が「(貴方は)生きて」と変更されている。

 これにより当初の意図の、白い服の少女との迷宮への旅立ちという、宮崎監督自身の思いを微妙に離れ、その監督の救済を描くことになってしまったという皮肉なオチにも受け取れます。

 まさにこれこそ作家の「業」。

 というわけで、終生のテーマに一応のピリオドを打った監督が、今まさに構想しているという長編次作で何を描くのか、期待してます(^^;)。

◆関連リンク
・当ブログ記事 宮崎駿監督『ハウルの動く城』と少女の救済

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