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2018年12月

2018.12.26

■感想 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『静かなる叫び』『灼熱の魂』


静かなる叫び PV - YouTube

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『静かなる叫び』WOWOW録画初見。モントリオールで起こった銃乱射事件を描いた09年のヴィルヌーヴ長篇3作目の作品。

 モノクロで描かれた乱射事件、過度のドラマ性は避けられ淡々とドキュメントのようにカメラが被害者と犯人に寄り添って記録され、まるでその現場に立ち会っているかのような感覚になる77分。

 そしてエンディングのクレジットでは現実に亡くなった14人の女性の名前が一人一人挙げられ追悼の言葉が捧げられている。

 ヴィルヌーヴ監督のベースにこうした社会派の作品があるのに何だか納得する一本。丁寧にそしてどこかクールに人間を描くヴィルヌーヴ演出はこうして作られた、という感じ。

 途中、凄いと思ったのは、犯人の学生が車で現場へ向かうシーンで、画面が天地を逆さまにして、凍りついたケベックの川を映し出す。この心象風景の描写が素晴らしい。
 天地が逆になるのは、他にも一シーン。惨劇後の学校のロッカーが並んだ通路を描いているところ。これは日常が裏返って生活空間が異様な光景を見せているシーンだけれど、こうした描写が素晴らしい。


映画『灼熱の魂』予告編 - YouTube.

 続けてWOWOWで録りためていたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の長篇第4作『灼熱の魂』初見。

 内乱となったレバノン(とは本篇では述べられていない)の焦土に描かれる、ある家族の血の物語。

 母親と双子の探索の旅がパラレルに描かれ、そしてだんだんと明らかになる真相。戦乱の地ゆえに起こった苛烈な現実の姿。しかしここでも前作に続いてその悲劇を過度な演出ではなく、事実の提示として描き、主人公たちの感情的なシーンはかなり抑えて描き出されている。

 ところどころにインサートされる焦土と荒野のレバノンの土地が登場人物の心象風景として雄弁に観客に悲劇を想像させる手腕が見事。のちに『ボーダーライン』でそのドラマを最大限に盛り上げるその演出力はこちらでも既に本格的に結実している。

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2018.12.24

■感想 高山羽根子『オブジェクタム』

高山羽根子『オブジェクタム』

"小学生の頃、祖父はいつも秘密基地で壁新聞を作っていた。 手品、図書館、ホレスリコード、移動遊園地――大人になった今、記憶の断片をたどると、ある事件といくつもの謎が浮かんでは消える。 読み終えた後、もう一度読み返したくなる不思議な感覚の小説集。

すばらしかった。
ふと気づいてもそのまま忘れてしまうことや、
自分では気づくことすらできずにいたあれこれを、
ひとつずつ丁寧に目の前にかざされているような読み心地だった。
酉島伝法(作家)

何度でも味わいたい、小説の魔法。
高山羽根子、文学の最前線に立つ。
大森望(文芸評論家)"

 名だたるレビュアー、そしてあの奇想の極北『皆勤の徒』を書いたSF作家 酉島伝法氏までもが絶賛する高山羽根子『オブジェクタム』を期待して読みました。噂にたがわぬ深い味わいの奇想小説3篇でした。

 まず「オブジェクタム」、過去と現在の日常から、少しずれた世界の断層を描いた佳作。子供の頃遊んだ草むらの秘密基地、学校で書いた壁新聞等々、久々に懐かしい記憶を思い起こしつつ、少し不思議な世界へ連れ去られて、街の裏に展開する幻のような世界を垣間見ることができる生活感のある幻想世界。

 「太陽の側の島」、僕はこの短篇集の中で本作が一番感銘を受けた。
 戦争に出た夫と残された妻との書簡。最初、現実的に描かれていた世界が、戦地の不思議な風習が描かれて、まるで想像していなかった世界へ連れて行かれる。この幻想の切れ味が素晴らしい。もっと他の作品も読んでみたいと思わせる傑作。

 「L.H.Q.Q.Q」、いなくなった犬を巡る不思議なユーモアに溢れた掌編。
 この雰囲気、癖になります。

 短篇「居た場所」が芥川賞候補になっているということで、今後の活躍が楽しみです。

◆関連リンク
旅書簡集 ゆきあってしあさって

"三人のものかきが旅の記憶を送りあう、幻想旅情リレー書簡集です。 (酉島伝法、高山羽根子、倉田タカシ)"

 幻想の旅先から、酉島伝法、倉田タカシ両氏とリレー書簡された「旅書簡集 ゆきあってしあさって」を以前に掲載。作風を彷彿とさせる素晴らしい奇想の旅情をお楽しみください。

いま〈SFを書く〉とは? – ゲンロンカフェ.

"今年、第2回ハヤカワSFコンテストにおいて、『ニルヤの島』で大賞を受賞した柴田勝家さんと、最終候補に選出され、12月19日に『鴉龍天晴』でデビュー予定の神々廻楽市さん、そして第1回創元SF短編賞佳作を受賞し、11月28日に『うどん、キツネつきの』でデビューしたばかりの高山羽根子さんをお招きし、いま「SFを書く」ということの意味、「SF作家としてデビューする」ということへの思いについてうかがいます。"

高山羽根子 - Wikipedia
オブジェクタム 書評|高山 羽根子(朝日新聞出版)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」  評者:町口 哲生(評論家)

"題名の「オブジェクタム」とは、前に投げる、前に置くから派生した「目的・対象」という意味のラテン語である。この語は中世以降、たとえばデカルトやスピノザの哲学においては、realitas obiectivaという風に使われたが、これは「表象された最低限の事象内容」という意味である。高山がこの用語を念頭において本作を執筆したと仮定するなら、その「最低限の事象内容」とは「主人公の主観において把握できた客観的事実」という意味合いになる。"


創元Genesisラジオ 第2回 ゲスト:高山羽根子さん - YouTube.

 こちらで高山羽根子さんの初長篇の話題が語られています(終わり部分)!
 何と「映画を使って人と人とが戦ってる話」でタイトルが『暗闇にレンズ』。映像SF小説に眼がないので来春の発刊が楽しみ!

 創元ラジオ、高山羽根子さんと東京創元社の編集者 小浜徹也さんの興味深いお話が聴けます。(第1回もありますがどちらから聴いても大丈夫です)

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2018.12.19

■感想 トラヴィス・ナイト監督『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』Kubo and the Two Strings


Kubo and the Two Strings 'Creatures of Darkness' Featurette (2016) - YouTube

 トラヴィス・ナイト監督『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』WOWOW録画初見。
 素晴らしいパペットアニメーションでした。

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 特にメイキング動画にある骸骨のパペット。4m超えの巨大なパペットを使ったそうだけれど、この迫力は凄い。劇中にも、歌川国芳「相馬の古内裏」が出てくるように、まさに浮世絵を立体的に再現しようとしたような描写。そしてさらにはヱヴァンゲリヲンや宮崎駿 巨神兵へのリスペクト。髑髏が赤いのは、巨神兵もしくは暴走2号機オマージュでしょうかw。

 単なる日本趣味の美術だけでなく、神社の森に顕著なように、そこに生える草木まで日本の自然を活かそうとした画面が素晴らしい。
 3Dで劇場へ観に行かなかったことを悔やむ素晴らしい立体感を2Dでも感じる映像。3Dブルーレイ、絶対買わないとね。

◆関連リンク
『 KUBO/クボ 二本の弦の秘密 3D&2D Blu-rayプレミアム・エディション(2枚組)』

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2018.12.17

■感想 バンダイナムコ VR ZONE「シン・ゴジラVR」


VR ZONE SHINJUKU/『ゴジラ VR』 - YouTube
ゴジラVR - VR ZONE SHINJUKU(公式HP)

ASCII.jp:デカイ! 怖い! リアル! シン・ゴジラの世界が目の前に「ゴジラVR」.

" 「ゴジラVR」が、11月3日から全国のVR ZONEで楽しめる。
 稼働店舗は、VR ZONE SHINJUKU (東京都) 、VR ZONE OSAKA(大阪府) 、namcoイオンモール各務原店(岐阜県)、namcoイオンモールKYOTO店(京都府)、namcoイオンモール大日店(大阪府)。"

 各務原イオンで『シン・ゴジラ VR』を体感してきた。

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 以前試したPS VRの「『シン・ゴジラ』スペシャルデモコンテンツ for PlayStation®VR」(右引用画像)と比べると、画像の解像度が高くなっていて、より映画のCGに近づいている。ただしとは言っても、映画のフォトリアルと比べると一昔前のCG、ゲーム画面のCGに近い(特に街並みとか)ため、さすがに映画の世界に入り込んだような臨場感までは持たせられていない。

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 全体の構成は、PS VRが東京駅近く丸の内からゴジラの進撃を眺めているだけだったのに対し、今回は自衛隊の戦闘ヘリの操縦席に自分が乗って、シンゴジラの近くまで寄っていくので、ずっとこちらの方が迫力あって見ものになっている。加えて戦闘ヘリの動きに合わせてシートも動くため臨場感もそこそこ出ている。ヘリでゴジラの近くまで寄って、特にその足元から上を見上げるシーンは、その巨大感はなかなかのもの。

 ただしヘリの操縦は、シートに操縦桿はあっても自分では操縦できなくてただ動画のように自分の視点が動いていくだけなので、そこは残念。操縦桿で貫通弾と血液凝固弾は打てるが、それも擬似的なのが惜しい。

 ヘリを自分で操縦し、自分の機だけ、自分の攻撃だけで倒すところまでやれたらもっと臨場感があってすごいかもしれない。

 7-8分 1000円は映画と比べると、ちょっと高いので、15分くらいで自由に動けてそこまでやれたらいいのかも。

 PS VRに比べると、ゴジラを追撃していくため、巨大な尻尾の下をくぐったり、眼の前に巨大な口が開いたり、背びれからの光線が眼の前を切り裂いたり、そうした迫力も相当のレベルなので、操作性が加わるとさらに凄いはずで残念なところ。(とは言え、そうすると全シーンリアルタイム計算が必要なのでここまでの画像クオリティは確保できないだろうから、どちらを取るかですね)

 今回のシステムは、HTCのVIVEを使用したシステム。

 ゴジラの紫の光線の迫力がとにかく素晴らしかったということで、『シン・ゴジラ』ファンにはお薦めです。

 それにしても各務原イオンのVR ZONEは、空いていた。
 週末で広大な駐車場の空きがないような店内の混雑状況にもかかわらず、VR ZONEにはまるで人がいなくて、貸切状態。やはりVRはまだまだ一般的なものではないようだ。こうした施設の存続がいつまで続くか不安になる。いずれ家庭に高解像度のものが入って行って、テレビに置き換わるような存在にならないとポピュラルなものにはなっていかないのかもしれない。立体映像ファンとしては、3Dテレビに続き、VRもそれと同じような末路を辿り、家電店からもゲームセンターからもなくなることがないように祈るばかりである。

◆関連リンク
・内閣総辞職ビームに震える、VR ZONE OSAKA「ゴジラVR」体験レポ | Mogura VR - 国内外のVR/AR/MR最新情報.

"「ゴジラVR」は発射許可まで待機する演出のため、「自分から何か行動する」よりも「眺めている」時間が長い印象はあります。体験時間は心なしか短く感じるかもしれません。ただ、「ゴジラVR」はたくさん体験者に操作させるぞ! というアクティビティを作るなら当然考えるであろう選択をせず、「シン・ゴジラの世界はこうでなくては!」とあえて操作をさせない大胆な演出を選んでいるんですよ。私はこの選択を評価したい! ゴジラという脅威に、一兵卒として立ち向かう。まさしく思い描いた夢そのままの体験が待っています。"

 たしかに演出意図としてはそうした映画での効果を狙ったものかもしれないが、アトラクションの短い時間の中では、上述したように、シートの動きと客のアクションを最大に活かす、インタラクティブなものを狙ったほうがよかったと思うのである。

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2018.12.12

■動画 空山基 クリスチャン・ディオール 11mの巨大ロボット


Interview de Hajime Sorayama pour Dior – Numero magazine - YouTube
 僕らはかつて、このロボットをいかに多くのSF的な雑誌で見たことか。
 20世紀の日本のロボットデザインをある意味、象徴していた空山基氏の女性ロボットがファッションショーのランナウェイに立った。しかも11mという巨大な姿で。

 表面はアルミニウムのミラー処理を施されて、まさにあの空山のロボットが見事に現出している。

 1日だけのショーのためのロボットのようだが、この造形は恒久的にどこかに残して欲しかった。本物をこの眼で見たくて仕方がない。

◆Dior 公式動画
 いずれも素晴らしい動画ですので、是非リンク先でご覧ください。
Dior Official Instagram 「For the #DiorPreFall 2019 show from @MrKimJones, the Japanese artist @HajimeSorayama_Official devised an idealized female metallic robot」
 ロボット建造中の動画。
・Dior Official Instagram 「The excitement of the unveiling of the #DiorPreFall 2019 men's collection by @MrKimJones in Tokyo didn't end with the show! 」
・Dior Official Instagram 「Discover the towering centerpiece of the #DiorPreFall 2019 men’s show from @MrKimJones, conceived by Japanese contemporary artist Hajime」
 上記2本は、ファッションショーの動画。ミラーペイントのロボットにショーの照明が当たり、流麗なロボットが見事に映えています。

◆関連リンク
・キム・ジョーンズ率いる「ディオール」の東京ショーに高さ11mの女性型ロボット像 空山基とコラボ│WWD JAPAN

" ランウエイセットの要となる高さ11mもの女性型ロボット像を手掛けるのは、日本人アーティストの空山基(そらやまはじめ)だ。

 空山は「本当に信じられない速さで全てが進んだ。時間がなかったからもっと小さなプロジェクトになると思っていた。こんな大きなプロジェクトになると知ってたら、もっと時間をかけたのに」と、コラボの実現の速さに驚きを見せる。

 キムが選んだのは、空山が1980年代に手掛けたイラストで、のちに彫刻作品になったもの。今回のショーではこれを高さ11mの巨大な像に仕立てる。「『ディオール』は35年かけてやっと僕に追いついたみたい」と空山は冗談を飛ばすが、富山の工場からアルミ部品が届いたのはショー開催のわずか2週間前のことだった。これをシルバーのミラーペイントで仕上げるという。"

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2018.12.10

■情報 ステファン・フォン・ブーレン監督『土星の輪の中で』Stephen van Vuuren "In Saturn's Rings 8K"


In Saturn's Rings 8K (Narrated by LeVar Burton) 2018 Trailer - YouTube

 Stephen van Vuuren監督のIMAX映画 “In Saturn's Rings” の8K予告篇。
 NASAの実写映像だけで作られた42分のドキュメント。息を飲む美しさです。IMAXの大画面で見てみたいものです。

 Youtubeでは、4K版で公開されていますので、4K環境のある方は是非、4Kで観てみてください。

 調べてみましたが、いまのところ、日本での公開予定は見つかりません。残念。

IMAXのHP
In Saturn's Rings | Film for Giant Screen, IMAX, Fulldome Planetariums

 これは、2014年に4Kで制作された同タイトルの作品の8K版(2018年)ということのようです。以下に詳細データがあります。

【魂が震える】CG無し。実際の100万枚に及ぶ画像から作られた「4K映像の土星」:DDN JAPAN.

"2014年にIMAXで公開予定の作品「In Saturn's Rings」より"

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2018.12.05

■感想 体感! NHK BS 8K『完全版2001年宇宙の旅』

NHKドキュメンタリー - 8Kでよみがえる“2001年宇宙の旅”

"SF映画の金字塔「2001年宇宙の旅」の8K放送まであと少し!ハリウッドの映画会社が厳重保管してきた50年前のオリジナルネガを使い70ミリフィルムの8K化の舞台裏を特別取材!一足先に8K版体験したゲストが「これまでのハイビジョン放送での映画と違って宇宙を体感した気分になった」と大興奮。そのほか、8K化されたキューブリック監督こだわりのお宝映像を公開!"

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 『2001年 宇宙の旅』 NHKの2K放映をブルーレイに落としたものと、8Kレストアからの2K変換放映(メイキング特番)を比較してみた。左上に4:35とか早朝4時代の時刻表記があるものが8Kレストア版。8Kもこの放送はBSプレミアなため2K変換されているため、最終の8K映像との比較ではないが、何かの参考程度と考えてください。

 どれも映像は、ブルーレイをDLPプロジェクタで110インチスクリーンに投影し、iPhoneで撮ったもの。かなり荒い比較だけれど、できるだけiPhoneの画像を肉眼で見ている映像の特徴を拾えるように写したつもりですw。

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 解像度はこの比較ではよく分からないが、猿人シーン、宇宙食シーンでディスプレイの青色の違い、今回のレストアで以前より明瞭な色になっていることがわかる。例えば猿人の前に置かれた動物の骨の色、白の明度が上がってるのがよく分かります。

 2K放映版でくすんだような、過去の作品的な雰囲気がどこかしら出ていた、退色したような印象だった色が鮮明になってます(こちらがキューブリックの意図に近いかは分かりませんが…たぶんそうなのでしょう)。

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 ただ最後に載せたスペースポッドのコクピットは、以前の方が宇宙服の赤が鮮明w。ここらがどういう意図によるものかは不明です。

◆8K 『2001年 宇宙の旅』をどこで観るか?

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 各地のNHKの放送局ほかと家電店の店頭、今回の放映はこういった場所でパブリックビューイングされている。うちからだと、NHK名古屋放送局が本命だったけれど、公式HPで調べるとガラス張りのオープンスペースで、モニタも85インチ、立ち見ということで、あまり環境が良いとは言えない。これなら近所の家電店でシャープ8K 70インチを正面陣取って観た方が良いかと考えて、エディオンを狙うこととした。

 名古屋は22.2chの音響が用意されているらしい、一度は聴いてみたいけれど、それより人数が多いと映像も音もしっかり見聞きするのが難しいだろうとの判断もあっての選択w。

 NHK名古屋が、愛・地球博(愛知万博)の600インチ スーパーハイビジョン(8K)だったらだったら、即決なんですが、、w。

◆NHK 8K放送『2001年 宇宙の旅』、8Kは70mmをどう写し取ったか?
 エディオンにてシャープ70インチで視聴。
 放映の始まる5分前、まさかのアクシデント! 近所の店でアンテナ接続が悪く見えませんと言われ、驚愕して4軒ほど彷徨ってやっと某エディオンに落ち着いた。なんてこったい!!

 8Kの受信設定が難しいのか、家電屋のレベルが落ちてるのか…。まさかの1勝3敗には、鳴り物入りでスタートした8Kのはずなのに、家電店およびシャープの姿勢がここらに現れている、、、のかw?

 結局、1時間近く経過した後、月面車シーン以降しか見れなかったけれど、田舎の家電屋は、ほとんどテレビコーナーに客はいなくて、椅子付き独り占め環境で見れたのは幸い(^^)。ただし、家電店モニタ故、天井から降り注ぐLED灯の照明が画面に映り込み満載で、8Kが泣いているw。

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 というわけで & 店内で写真パチパチ撮るのはさすがに不味いかと、記録した映像はこの二枚。店内の照明の中ではこの程度の映像しか撮れないため、もともと比較に使える画像ではないので申し訳ないです。以下、言語の力で再現してみます。

 結論は、8Kは70mmフィルムの底力を相当写し取ってくれているのではないか、2Kとは格段に違う情報量とリアリティに感心しました。

 まずデイブの赤い宇宙服の質感。船外活動におけるポッドとディスカバリーの窓内部のプールの詳細な動き、老人ボーマンの皺の詳細、欧風調度品のあの部屋の質感等々、2K放映版 and 先日の2K IMAXよりリアルな感じ。
一方、ベースのフィルムによるものか、細部の粒状感が高精細で目立ち細かなちらつきが気になる感じでした。

 以上が観た現場で書いたメモ。以下、家へ帰って2K版を改めて観て、詳細な比較を書いてみました。

 本日8K放映された『2001年 宇宙の旅』を、70インチのシャープ8K スーパーハイビジョン液晶ディスプレイで観て映像記憶の確かなうちに、家にある同じNHK BSで放映された2Kハイビジョンとの比較をしてみた。

 僕が観たのは、月面シーン〜ラストまでだったけれど、明らかに解像度の差がよくわかったのは、顔がアップになる時の人の細部、特に肌の質感。これは明らかに70mmフィルムをデジタイズするのに、2Kでは解像度が足らず8Kですくい撮れた細部の違いがとてもよくわかる。

 例えばプールとボーマンが回収した通信機についてHALと解析結果を語る時の二人の顔の細部。特に前述した肌の質感は圧倒的。2Kでぼんやりしてつぶれているのが、8Kでは毛穴まで見えるほど。そしてプールの額に1本の毛が垂れているのが8Kで目立ったけれど、2Kではほとんど映っていない。ラストの老人となったボーマンの老いた肌の細部、メイキャップの素晴らしさも8Kで明瞭に見ることができる。

 もう一つ、HALに締め出されてポッドからハッチを開いて、真空の中をディスカバリー号に帰還するボーマンが、エアロックを閉じるシーン。赤い緊急灯の光の中、ボーマンの安堵の顔が2Kではつぶれて表情がよく見えないが、8Kでは明らかにホッとする良い表情が見えている。(その他、HALのメモリーを抜く部屋の前とか幾つかの宇宙船内の注意書きがきっちり見えるのも8Kの強み)

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 DVDとブルーレイのハイビジョンの差、とまで言ってしまうと大袈裟であるけれど、8K観た後だと、2Kのぼんやりした映像は確かに締まりが悪い。70mmフィルムの細部を捉える力、より明瞭な宇宙の世界を覗き見るために70mmを選んだキューブリックの試みに近づけた感じ。

 上に引用したNHKの各映像のベンチマーク図から言うと、70mmフィルムは、Logスケールのグラフで8Kと2Kのちょうど中間。2Kでは情報量が間違いなく落ちることがわかる。一方、35mmフィルムは2Kとほとんど同じで、通常の映画では2K解像度でフィルムの情報は写し取れているようだ。

 NHKが8K放送で70mmフィルムで撮られた『2001年 宇宙の旅』を素材に選んだ理由は、まさにこのグラフが物語っている。(今後、IMAXフィルムと同等解像度の8Kで撮られる映画の鮮明さには期待できる)

 最後に、シャープ8K液晶を家電店で観る際の注意点。

 実は素の状態では、初期の映像設定が「ダイナミック(固定)」というモードになっていて、これは映画フィルムの質感と違い光のコントラストが強く、明るい部分がスタジオの下手なライトのようで、最初『2001年』を観た時、ギョッとするほど安っぽい画質。

 店員もお客もほとんどいないのを良いことに、リモコンで画質調整を試みると、「映画」モードという設定があり、それでなかなか映画的な良いコントラストの映像を観ることができた。(少し色が薄く暗いかも、好みに合わせて設定をいじることをお勧めします)。

 そして実は面倒なのが、この設定が5分おきに、初期の「ダイナミック(固定)」モードに自動で戻ってしまうこと。

 店員さんと聞くと、たぶんシャープが店頭用にインストールしているUSBからのソフトがそうした設定を店頭向けにしているのではないか、とのこと。いちいち5分おきに「映画」モードに自分で変更して対処したが煩雑この上ない。まあタダで見せて頂いているので文句は言えないが、、、(^^;)。

 たぶんこのように明度を上げないと、店頭で最新の8Kが見劣りしてしまうからだろう。隣に有機ELの4Kテレビが置いてあったけれど、圧倒的にそちらの方が絵が綺麗。いずれ出てくる8K有機ELの映像が楽しみです。

 8K視聴の後、映画館で観た『ヘレディタリー/継承』の画面解像度を、主に人の肌の質感で比較してみたいたけれど、やはり映画の画面は、8Kに比べるとぼやっとしている。今後の映画がどのような方向に進むのか、8Kもしくは4Kのデジタルプロジェクターに変更し、画質を上げていく必要が出てくるだろうな、と思って見ていたのでした。

 最後にお店に迷惑がかかるといけないので店名は伏せましたが、こちらでは放映中、ハードディスクレコーダーでこの8K『2001年』を録画されていました。おそらく今後デモ用として映写される計画と思います。皆さんも再放送の1/3まで待てない方は、お近くの家電店でもしかして録画していないか、確認してみるのをお勧めします(^^)。

◆関連リンク
【ブログ記事】11月23日午前4:30からNHK総合でOAされた『8Kでよみがえる究極の映像体験! 映画「2001年宇宙の旅」』の番組概要レポート : KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック
【ブログ記事】NHK放送博物館で8K版『2001年宇宙の旅』を視聴してきました : KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック
 『2001年』とキューブリック監督作については、日本一の情報量と考えられるキューブリックブログさんの関連記事。レストアのドキュメントは番組の書き起こしもされているので見逃された方は是非リンク先をご覧ください。

麻倉怜士の新デジタル時評--ついに新4K8K放送開始、「8K完全版2001年宇宙の旅」試写レビュー - (page 2) - CNET Japan.

" 特に素晴らしかったのは、月面基地への着陸シーンにおける基地の窓の中に働いている人々を確認できる精密さや、木星に向かう宇宙船内の壁の質感まで伝わる描写力。最後の場面に出てくるスプリットした光の襲来、スターゲイトには、体も心の感動した。

 8Kは見るのではなく、まさに体験の域。自分の体の半分が作品に吸い込まれているような感覚が得られる。2001年宇宙の旅は、映画館、VHS、DVD、BDとさまざまなメディアで見てきたが、これまでに体験したことがないレベルで作品に没入した。"

参考 NHKのスーパーハイビジョン解説。古い記事。
 愛知万博まであと半年、スーパーハイビジョンの準備も順調(平成16年9月28日)

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2018.12.03

■感想 アリ・アスター監督『ヘレディタリー/継承』 : Hereditary


映画『ヘレディタリー/継承』30秒予告 YouTube

 アリ・アスター監督『ヘレディタリー/継承』@各務原イオンシネマで観てきました。
 確かに上手い、脚本も演出も高レベルで見事なホラー映画を見せてくれます。トラウマが残るとか、観客の現実を侵食してくるとか、事前のTBSラジオ アトロク(アフタ−6ジャンクション)等での評判で、期待を高く持ちすぎた/トラウマ残ったらどうしようと構えて観たので、そういう意味では後にそれほど残らず、凄く面白い映画を観たという鑑賞感で無事帰ってこれましたw。
 『女優霊』みたいに夜トイレに行くのが怖くなるのとは少し違ったかなw。



★★★★★★以下、ネタバレ注意★★★★★★ .




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 アトロクでライムスター宇多丸氏、三宅隆太監督が言っていた「アート映画」「ダウナー系」というのはまさに。特に家族のドロドロシーンは相当なレベル。あの食事のシーンで母と息子が言い合う所、家族で究極的に雰囲気の悪いどーんとしたシーンで、何故かお腹に答えます。いや凄まじい家族映画。

 素晴らしいと思ったのが、息子が学校で怪我をして卒倒するシーンとその後の家での母親の錯乱。そして二階にあるあるものから生じた蝿の羽音。まるで自分の周りに現れたような蝿の音で、観客までもが映画の中に/母親の錯乱に巻き込まれたような感覚。映像と音の競演でこの感覚を劇場に立体的に潜入させている様が素晴らしい。

 ここのテンションは、オカルトと現実のせめぎ合う、精神的疾患なのかどうかスレスレのところ、微妙な位置でギリギリ紙一重で鋭い刃物の上でバランスを取っているようなシーンで素晴らしい臨場感を味わえた。あのままのテンションで最後まで観客を狂気に巻き込んで突っ走っていたら凄まじい映画になっていただろうな、と夢想w。

 映画はその後、オカルトに突入し、祖母とその仲間の異様な世界を開陳して終わっていく。ここは賛否両論あるだろうけれど、僕は少しありがちな展開に見えて今ひとつだった。

 とはいえ、凡百の演出なら胡散臭くそしてゲロゲロな展開になるところを端正にまとめあげた手腕は素晴らしい。

 特にエンディングにかぶるジュディ・コリンズ「青春の光と影(原題: Both Sides, Now)」。あのラストシーンとこの歌で、映画の登場人物と観客は、カルトな側でハッピーエンディングを迎え、実はこの映画、ダークな幸福感とともに劇場を出るという稀有な体験ができるのでした。実はその時点で既にまんまと映画のダークサイドにある意味取り込まれてしまうわけです。我々は今、果たして本当に現実に戻れたのだろうか(^^;)。

◆以下、雑感。
・アート映画的なルックの生成に一役買っているのが、箱庭療法のような母親のミニチュア造形物と娘の人形。母親は箱庭療法からこうしたミニチュアを作るようになったのではないか、と想像できるし、娘もその影響を受けつつ、たぶん祖母の大きな影響で不気味な鳥の頭とか、奇異な人形たちを作るようになったと感じさせている。
・冒頭のミニチュアの使い方、随所に現実を恐怖の記憶が侵食していくような家族の不幸のミニチュア化。現実と幻想の入れ子構造がミニチュアと家族のウチで見事に映像表現されている。
「ヘレディタリー」はホラーではなく“嫌な家族映画”!? 町山智浩が別アングルから解説 : 映画ニュース - 映画.com.

"「『僕の家族にあることが起こった。そのことで傷ついた自分を癒やすために、物語を作っていったんだと思う。弟を大切にしていた……。それ以上は言わせないで』。"

 町山氏によると、監督へのインタビューで上記のようなコメントがあったという。まさに監督自身の家族の苦悩が映画ににじみ出ているということだろうか。
・映像としては、予告編にもあるカット割りが見事。例えば木の映像が夜から昼へ瞬間的に転移する。これは母親の夢遊病の病を、映像的に表現し観客に体感させる効果があるのではないだろうか。
・暗闇にカルトがぼんやりと現れるシーン、Jホラーからの引用にみえる。そこにいる存在の描写が本作、とてもうまいと思いました。
・音響のうまさも舌を巻きます。
 特にハエと舌打ちが劇場のどこかから聴こえる時、観客はトニ・コレット演ずる主人公 アニー・グラハムと同化して、狂気の淵を彷徨うのです。あれを1時間ほど徹底してやられたら、確かに狂気は観客を侵食していたことでしょう(^^;)。

 


Judy Collins - "Both Sides Now" - Hit Single Version - YouTube.

◆関連リンク
HEREDITARY (2018) | Behind the Scenes of Mystery Movie - YouTube
 メイキング動画。アリ・アスター監督の演出風景がみられます。
現代ホラーの頂点といわれる映画「ヘレディタリー/継承」の怖さを三宅隆太監督と宇多丸が力説
ヘレディタリー/継承 - Wikipedia
Hereditary (2018) Music Soundtrack & Complete List of Songs | WhatSong Soundtracks
【イベントレポート】町山智浩が「ヘレディタリー」語る「ホラーのふりをした、嫌な家族映画の集大成」 - 映画ナタリー.

"「アスター監督はもう2作目の撮影を終えてます。ベルイマンが生まれたスウェーデンが舞台らしいです。本人は、芸術映画をホラーの枠組で作っていきたいと言っていました。アリ・アスターに注目してください!」"

Ari Aster - Wikipedia.
 次回作 Midsommar (film) - Wikipedia

 

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