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2018年2月25日 - 2018年3月3日

2018.02.28

■情報 1963年のチェコSF映画公開! スタニスワフ・レム原作, インドゥジヒ・ポラーク監督『イカリエXB-1』 : Ikarie XB-1


Ikarie XB-1 (1963) - Investigating a Derelict Spaceship - YouTube
映画『イカリエXB-1』デジタル・リマスター版 公式サイト

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奇蹟のSF映画蘇る!『2001年宇宙の旅』『スター・トレック』誕生前―1963年 チェコスロヴァキアで生まれた『イカリエXB-1』劇場初公開! - シネフィル - 映画好きによる映画好きのためのWebマガジン.

"『2001年宇宙の旅』『スター・トレック』誕生前― 1963年 チェコスロヴァキアで生まれた奇蹟のSF映画! イカリエ-XB1 『2001年宇宙の旅』『スター・トレック』誕生前に共産主義下のチェコでつくられた初の本格的SF映画『イカリエ-XB1』(原題:IKARIE XB 1)が、5月19日(土)より新宿シネマカリテほかにて公開が決定しました。

22世紀後半、生命探査の旅に出た宇宙船イカリエ- XB 1は、アルファ・ケンタウリ系へと向かう途上で、漂流中の朽ちた宇宙船を発見する。それはかつて地球から旅立った宇宙船だったが、船内にあるのは謎の死を遂げた乗組員たちの死体。この難破船に積まれた核兵器の爆発により調査員たち数名を失うという悲劇の後、変わらず旅を続けるイカリエ-XB1。だが謎のダークスターによって乗組員たちはみな眠りについてしまい……。

1963年にチェコで初めてつくられた本格的SF映画『イカリエ-XB1』は、密室の中で徐々に狂気に汚染されていく乗組員たちのサスペンスフルな人間ドラマと、近未来のユートピア的世界を、独創的なスタイルで描き出した。
そのオリジナリティ溢れる世界観は、『2001年宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック、68)にもインスピレーションを与えたという逸話を持つほど。"

イカリエ-XB1 - Wikipedia.

"インドゥジヒ・ポラーク監督『イカリエ-XB1』(原題:Ikarie XB-1)は、1963年制作のチェコスロバキアのSF映画。 スタニスワフ・レム原作のSF小説「マゼラン星雲」の映画化。欧米でも大ヒットし、後に『スタートレック』などに影響を与えた。"

 レムの影響も受けたというチェコのヌーヴェルバーグにも連なるという本格SF映画!これは観たいです。
 インドゥジヒ・ポラーク監督(Jindřich Polák - Wikipedia)生涯で17作の映画を撮っていて、どうやらSFは一作。後年は子供映画を撮られていた方のようです。

◆関連リンク

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スタニスワフ・レム氏追悼ブックレビュー(Anima Solaris(アニマ・ソラリス))
 非常に丁寧にレムの「マゼラン星雲」について語られています。
 貴重な情報ですので、引用させていただきます。リンク先にレム追悼特集として他の作品についても大変興味深い記事が掲載されていますので、ぜひご覧ください。

栄村(フルネームが記されていないですが、SF関係者で検索すると栄村光哉という方のようです)
" 『金星応答なし』の後に「マゼラン星雲」というSFを書くのですが、これも検閲に引っかかり、しばらくの間出版できませんでした。

 「マゼラン星雲」は、30世紀の社会主義ユートピアを舞台にしています。この時代、人類は太陽系のすべてを植民地化しており、ケンタウルス座アルファ星系に向け、初の恒星間飛行を試みます。「ゲア」という宇宙船に227人の男女が乗り込み、8年間にわたる飛行の後、プロキシマ・ケンタウリを回る惑星のひとつで生命反応を見つけます。三重連星であるアルファ星系に属する惑星のひとつが、知的生命体によって生命が生存できる環境に変えられたのか?

 物語には、アトラントスというヒューマノイドが出てきますが、これは冷戦下のアメリカと北大西洋条約機構をそれとなく描いたものだそうです。

 この小説は「IKARIE XB 1(邦題:イカロスXB1号)」という題で、1963年に旧チェコスロバキアで映画化されています。63年というと日本で東宝が「妖星ゴラス」を公開した1年後ですね。もっとも話の舞台は30世紀から2163年の22世紀に変更され、物語もかなり変えられています。レムも映画化には乗り気ではなかったそうですが。日本ではNHKの衛星第2チャンネルで「イカリエ-XB1」というタイトルで放映されたことがあるそうで、御覧になった方もいるかもしれません。

 ところで、検閲に引っかかった理由ですが、サイバネティクス(人工頭脳学)を描いていたからでした。MITの数学者ノーバート・ウィーナーのサイバネティクスの研究は、当時、さまざまな分野――機械や、工場、共同体さえもコントロールできると考えられ、その応用が期待されていました。そして、この時代の人に、来るべき思考機械によるパワー・アップされた社会と産業の変化への希望を与えていたそうです。しかし、共産主義下のポーランドでは、サイバネティクスが擬似科学であると解釈され、レムが『金星応答なし』を書いた51年には、誤った資本主義の科学として禁止されていたそうです。"

Themagellaniccloud

The Magellanic Cloud - Wikipedia
 レム「マゼラン星雲」1955年の作品。調べた限りでは邦訳は見つかりませんでした。レムが初期作品を気に入ってなく、翻訳を許していない、とかあるのでしょうか?

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2018.02.26

■感想 ジョン・グエン、リック・バーンズ、 オリヴィア・ネエールガード=ホルム監督『デヴィッド・リンチ:アートライフ』: David Lynch The Art Life


David Lynch The Art Life - Official Trailer - YouTube
映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』公式サイト

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 東京から遅れること約一ヶ月、やっと名古屋で公開された『デヴィッド・リンチ アートライフ』を名古屋シネマテークで観ました。全篇リンチ独白ナレーションが被った、彼自身の視点で語られたドキュメンタリー。

 前半はホームムービー(8mmフィルムと思われる)と写真とリンチの語りによる、子供時代の彼とファミリーを描き出している。ここを見ると良識ある両親と兄弟に囲まれた幸福な子供時代だと感じられ、恐らくハリウッドのカルト映画監督の中で、これだけアメリカの良識ある家庭で育った人はいないのではないか、と思えるほど健全に見える。

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 その光景はまるで『ブルー・ベルベッド』の耳が出てくるまでの芝生のサバービアの光景である。

 前半で描かれたこの光の部分と、思春期の混沌がリンチにもたらした闇。本作品の全体の背骨になっているのは、この光と闇である。

 そしてもうひとつのポイントは、子供視点でリンチが見ていた世界の広さについての描写。彼のこの頃の世界は、周囲数百mほどの小さな生活圏が世界の全てであったという描写がナレーションでなされている。このキーワードも全体のトーンを決定づけている。

 その後に世界が広がったという子供時代と対比されるナレーションは、実はない。

 絵画と映画と音楽の世界に入っていったリンチのハイスクールと大学時代の回想は、現在の老齢のリンチが自らのアトリエでまるで孫娘のような4人目の子供 次女のルーラと過ごす映像を背景にして語られている。

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 世界の混沌を前に、自分の部屋にこもり、物思いとアートに耽溺していくリンチの姿の描写は、子供時代の狭い世界をさらに圧縮していくような光景にみえる。空間も時間も、現実も夢も、そして外界も内界も内在したそのリンチの空間で営まれるアートライフ。その密度の描写が圧倒的である。

 そのキーワードは、下の個展で飾られたらしい一枚の文字と記号で表現された作品 "DaRK Deep Darkness and SPLENDOR" で描写されている。

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‘Dark Deep Darkness and Splendor’: Yaratımın Karanlık Görkemi – Pomegra

 "闇と明るい光が/周りを包んでいる/根の中にあったものは
 やがて木になり/星空の下の家になった
 その家の中で/よく見るための眼と/長い腕を持つ男は
 明るい光に/深い闇にも手を伸ばした/そして自分自身を見た"

 まさに本作で描写されたリンチのアートライフそのもの。
 そこに描写されるのは、闇と光、そして家の中で光と闇の世界を眺め、自分自身の内面に行き着いた人の姿である。

 『ツインピークス』シーズン3 のあの世界は、リンチのこんな経験がまさに投影されたものなんだってところが、"もてと"興味深い。

 特にラストシーンとリンチサウンドが響くエンドクレジットには感動します。
◆関連リンク
・【インタビュー】映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』 ジョン・グエン監督「この映画を撮ることで、若い頃のデヴィッドの不安を知った」 - T-SITEニュース エンタメ[T-SITE]

"この映画を撮ることで、若い頃のデヴィッドの不安を知った。彼が“アートライフ”を、家族との暮らしや友達付き合いとは分けて考えていて、友達や家族をアトリエには寄せつけなかったことをね。

 デヴィッドは3つの生活を切り離していたんだ。全部をごっちゃにするとどうなるか分からなくて怖かったから。デヴィッドは実人生で自分を完全に切り分けているから、映画の人物にもそれを投影する。

 彼の映画のバラバラな感じ、突然切り替わる人物たちを理解するのに、デヴィッドの話が役立った。家族と話す時、友達と話す時、アトリエでジャック・フィスクと話す時のデヴィッドは全く違う。彼の映画の人物も同じだってことがよく分かるよ。

 デヴィッドにこの話をしたら同意するか、“ああ、気づかなかった”と言うかだろうね。いずれ彼とも話すかもしれないけど、僕が考えたことは筋が通ってると思う。彼のファンにも自分で感じ取ってほしい。デヴィッドの映画の観客は、作品と真剣に向き合っている。彼の作品をよく知っているし、僕らが解説しなくても作品を見直して分析するし、そのほうが彼らにとって満足度が高いはずだ。"

 この監督による言葉、僕にはとても興味深かった。
 映画の中では、彼の大学時代の下宿に父親と友人が同席することに対してのリンチの感情、たしか「怖い」と言っていたことが、まさにこの監督の分析につながっているのだろう。
 リンチ映画の、全く違う個性がひとつの身体に宿るような不思議な感覚。この原点が語られたのではないかと感じられる。

UPLINK『デヴィッド・リンチ:アートライフ』劇場パンフレット(Amazon) 
 Amazonで本作のパンフレットが扱われている。
 このパンフ、全63ページに密度の高い以下に記された方々の論評と、映画の中で映し出されたリンチのプライペート写真と絵画/オブジェ作品の写真が満載。リンチミニ絵画展の図録のような素晴らしい完成度なので、ファンは必滞でしょう

"映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』 2018年1月27日(土)より、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷、立川シネマシティほか全国順次公開

原題:David Lynch: The Art Life リンチが紡ぐ「悪夢」はどこから生まれるのか? 『ツイン・ピークス The Return』で再び世界を騒がせる、映画界で最も得体の知れない監督――その「謎」が「謎」でなくなる、かもしれない。

■監督:ジョン・グエン、リック・バーンズ、オリヴィア・ネールガード=ホルム(『ヴィクトリア』脚本) ■出演:デヴィッド・リンチ (2016年/アメリカ・デンマーク/88分/英語/DCP/1.85:1/原題:David Lynch: The Art Life) ©Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016

【パンフレット内容】
・イントロダクション ・プロダクション・ノート
・監督インタビュー ・デヴィッド・リンチについて
・「イノセント・ミーツ・ナイトメア」滝本誠(映画・美術評論家)
・「“名付けられないむき出しの怖さ"を浮き彫りにするリンチ作品」湯山玲子(著述家、プロデューサー)
・「画家リンチは一言“ハッピー・バイオレンス! "と応えた」飯田高誉(インディペンデントキュレーター)
・「アート、そしてライフ。リンチの幸せな分裂について」高橋ヨシキ(デザイナー、映画ライター)
・「絵画、映画、かすかなしるし」大谷能生(音楽/批評)
・デヴィッド・リンチ絵画作品集
 ★映画オリジナルカード付き!"

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