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2019年6月

2019.06.26

■感想 山田太一『男たちの旅路』最終話「戦場は遥かになりて」他

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 山田太一『男たちの旅路』、ちょっと前にNHKで1-3話が再放送された際に観はじめて、録画してあったDVDで全話を十数年ぶりに見直した。
写真は最終話「戦場は遥かになりて」(BS2での再放送録画版)のOPと冒頭部分。このドラマが放映された1982年の4年前にヒットした『さらば宇宙戦艦ヤマト』が10カットほど動画で流される。(しかもノンクレジットなのである。気骨があったNHKということだろうか?)

 鶴田浩二演じる特攻隊生き残りのガードマン会社の吉岡司令補が、第一作「非常階段」で若いガードマンに戦争体験を美化して語るのに対して、最終話「戦場は遥かになりて」では戦友に美化してはいかん、あの頃俺たちは…と戦争に突入して行った日本の実情を生々しく語らないといけない、と話すようになり変節している。これは第4部の1話「流氷」で水谷豊演じる杉本陽平が吉岡を北海道から連れ帰る際に、あんたらには戦争がどんな風に起こったのかを語る責任がある、と訴えたシーンの、山田太一の結論と見ることができる。

 ヤマトの映像はOPで流されるだけで、当時の世相についてもドラマ中で何も語られないが、この吉岡の発言から、ヤマトの特攻シーン、当時ブームになり好戦的な雰囲気が(特に制作側に)あったこと等から、批判的に引用されてるのは明らか。

 よく引用が許されたものだと思う。DVDでは戦争映画のポスターか何かに差し替えられてるらしい。ネットにもこのOPの画像は存在しないようなので、1つの記録として掲載します。

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 この物語が上記のような吉岡の戦争感の変節を描いたものなのに、なぜかドラマのクライマックスは自衛隊協力のUS-1を使った、このドラマシリーズらしからぬスペクタクルな雰囲気で終わっていく。もちろん自衛隊が救命隊として日本の生活に軍事的でなく有益に働いている、という非戦的な描写と考えることもできるけれど、なんだかこの勇壮な雰囲気でドラマの本筋が鑑賞後に余韻としてあまり残らない感じになっていたのは何故なのだろう、とか考えてしまった。

 最後に個人的なこのドラマの影響について蛇足的に書くと、学生時代に熱中して見ていた『男たちの旅路』を今回全篇観直して、本業の会議の時に時々自分の中に沈殿した司令補が熱い発言(もちろん戦争についてではないですw)をしてしまうのを感じたりするのでした(^^;;)。

◆関連リンク
「男たちの旅路スペシャル・戦場は遥かになりて」(ブログ「フルタルフ文化堂」さん)
 上記感想は、リンク先のブログ記事を参考にさせて頂きました。

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2019.06.24

■感想 酉島伝法『宿借りの星』

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『宿借りの星』(東京創元社 公式サイト)
 酉島伝法『宿借りの星』読了。『皆勤の徒』に続き、まさに文字(主に漢字の造語)で異世界にトリップできるVR-SF。
 電車の中で読んでいて駅で降りると、コンコースの看板の文字が不思議な感覚にゲシュタルト崩壊する。あれ、ここはどこの異世界だっけ、すっかり『宿借りの星』住人視点で日本のヒトの町が異質に見えてしまうという破壊力。

FORBIDDEN PLANET Soundtrack - a) Main Titles - Overture - b) Giant Footprints In The Sand
 今回読んでいる最中にずっとBGMに聴いていたのが 50年代の異星の文明を描いたSF映画『禁断の惑星』サントラの電子音楽。これが妙に甲殻類なSFに合うんですねw、なぜだか。

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 ムーミン+次郎長三国史というのが酉島氏自身が本書のイメージを伝えるためにつぶやかれた言葉だというが、そのようなありもののワードで簡単に表現出来るような小説世界ではない。作者も入り口として敷居の低いイメージを提示したかっただけだろうから、あたりまえだけど、、、。
 じゃあ、どういう小説か? と問われると、これは表現が超難しい。かといって敷居が高い作品かというとそうではなく、割とすんなり読み進められるが、その際に読者が脳内で連れ去られる世界の芳醇さ/奇想さ/ぶっとんだユーモア感覚はかなりの複雑さを呈している。

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 物語は卑徒(ひと)と呼ばれる種が滅んだ後の異星で、甲殻系の(地球感覚からは)異様な生態系を持った蘇具(ぞく)たちの倶土(くに)を舞台に、主人公マガンダラと弟分のマナーゾ(上図 左)の道中が描かれる。異質生態系の奇妙な世界、食と行動と習俗を段々と自分の身体が甲殻化するような体感をしながら、そしてあるものが体内に寄生し宿っていく過程は精神的な侵食も進んでいく。

 描かれるクライマックスの情景は、正直まだ自分の貧困なイマジネーションではイメージがぼんやりとしているけれど、その星の世界が神話的に大変動するダイナミックさ。

 他の映画や小説で何か例えてこの読書体験を伝えたいと思ったのだけれど、なかなかこの世界は他に例が思い浮かばない。ので、興味を持たれたら、上記東京創元社の公式リンクで冒頭を立ち読み/または池澤春菜さんによる本書朗読を聴かれる(以下リンク参照)ことをお薦めします。(あえて言うとヤン・シュヴァンクマイエルとブラザーズ・クエイとヴァーツラフ・シュヴァンクマイエルのシュルレアリスム作品をAIでミックスして、自動書記自主映画を生成したような、、、w)

◆関連リンク
池澤春菜さんによる本書紹介@TBSラジオ アフター6ジャンクション(アトロク)は以下。本作の貴重な朗読は、4:38から聴けます。
酉島伝法 初長篇『宿借りの星』進捗(Togetter)
 今回の記事の添付画像は、twitterでつぶやかれた作者自身の本書収録イラストを使わせて頂きました。そのtwitterのまとめは上記リンク。
酉島伝法初長篇『宿借りの星』感想集(Togetter)

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2019.06.19

■情報 デイヴィッド・リンチ、アカデミー名誉賞受賞!!

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『ツイン・ピークス』デヴィッド・リンチらにアカデミー名誉賞が贈られることに!(excite ニュース)

"アカデミー名誉賞はアカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミー(AMPAS)の理事会がガバナーズ賞として芸術のために人生を捧げ、卓越した業績を残した世界の映画人に授与する賞で、毎年開催されるアカデミー賞授賞式で授与されていた名誉賞を独立させたもの。"

THE ACADEMY TO HONOR GEENA DAVIS, DAVID LYNCH,
 WES STUDI AND LINA WERTMÜLLER 
AT 2019 GOVERNORS AWARDS
 (アカデミー協会 公式)

"  4つのオスカー®像は、10月27日日曜日にアカデミーの第11回年次総督賞、ハリウッド&ハイランドセンター®のレイドルビーボールルームで発表されます。"

 デイヴィッド・リンチ監督がアカデミー名誉賞(カバナーズ賞)を受賞!
 リンチは今まで、『エレファント・マン』『ブルーベルベット』『マルホランド・ドライブ』で監督賞、作品賞等ノミネートされていますが、残念ながら受賞は逸しています。
 本当は新作を撮って、作品で賞を取って欲しかったけど、まずはおめでとうございます。名誉賞撮った後、作品で再び受賞というのもクールなので、リンチには是非頑張ってほしいものです(^^)。

“No Input, No Output”: Jim Jarmusch on Strummer’s Law, Favorite Horror Directors, and Twin Peaks

“But I think the masterpiece that took the last few years in American cinema is really Twin Peaks: The Return. Eighteen hours of incomprehensible T.V. It wasn’t easy for him, and, by the way, no one will finance David Lynch’s feature films — so, what the fuck, I don’t get it. That is a real work of incredible beauty because it is so incomprehensible. I just found it to be a masterwork.“

 映画監督 ジム・ジャームシュが『ツインピークス ザ・リターン』をここ数年のアメリカンシネマの傑作である、と言ってます。これはファンとして凄く嬉しい。
 WOWOWとブルーレイだけという、日本の限定的公開と、とりわけSFシーンからの反応の薄さが残念でならない、真にSF映画と言えるこの傑作について、もっともっと語られていいと思うので…。
 上記引用は、リンク先の最後のパラグラフです。
 ジャームッシュの『ツインピークス ザ・リターン』評が読んでみたいものです。

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2019.06.17

■感想 ラース・フォン・トリアー『ハウス・ジャック・ビルト』


『ハウス・ジャック・ビルト』予告編
 ラース・フォン・トリアー『ハウス・ジャック・ビルト』@ ミッドランドスクェアシネマ2、観ました。
 いや〜、トリアー史上でも一二を争う鬼畜ぶり。

 残虐なシーンに弱い僕は、ところどころ指の間から画面を覗きつつ、ジャックの“アート”とやらをウェッとか心で呟きつつ、脅迫性障害のシリアルキラーという場面で思わず吹き出したり…。

 ネタバレどうこういう作品ではないですが、予備知識なく観たい方は以下ご注意下さい。










 トリアーらしい衒学的なダイアローグや絵画の引用、自作や戦時のドキュメントを中心とした映像シーン、そしてデイヴィッド・ボウイの“FAME”、グレン・グールドの演奏。ジャックが見るネガな光の世界。これらが伏線になって(?)、観客が誘われるクライマックスの煉獄の映像が素晴らしい。

 実在のサイコパスがどんなものだったか、殺人後の”アート“シーンもその実物がモデルなのか、トリアーの創作との関係に興味は尽きない。

◆関連リンク
【イベント】映画公開記念 アートから読み解く『ハウス・ジャック・ビルト』 ラース・フォン・トリアー監督の頭のなか 滝本誠×小谷元彦トークショー

"2019年 06月15日(土) 蔦屋書店1号館 2階 イベントスペース
劇中に幾度も唱えられる“芸術”という言葉、不穏に鳴り響くデヴィッド・ボウイの名曲『FAME』。
シリアルキラーの内なる葛藤と欲望はアーティストのそれと同じ、それ以上なのか。
視聴覚に強烈に訴えかけてくる"破格の問題作"をアートの視点から読み解きます。"

 すでに先週末に開催されたイベントですが、滝本誠さんの語る『ハウス・ジャック・ビルト』、異常に聴きたかった。
ラース・フォン・トリアー「ハウス・ジャック・ビルト」に登場する絵画について
『ハウス・ジャック・ビルト』公式知恵袋
 たとえば、僕の知りたかった「テッド・バンディ」についても書かれています。ネタバレありなので、リンク先ご注意です。

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2019.06.12

■感想 Oculus Quest

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 待望の Oculus Quest を公式サイトで購入。Amazonで予約してたのが一向に送付されず、5/29にキャンセルして、公式で香港からほぼ2日間で届きました。

 4日ほど試した感覚、6DoFのトラッキングが見事で、身体の動き頭の動きに対する追従性はほとんど違和感のないレベル。またモニタ解像度も、PS VR、Oculus Goに比べて高精細でじっくり見ないと画素の粗さは目立たないレベル。流石に4Kテレビを見てるのより粗いけれど、全天周映像になってるので迫力は満点。

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 家の狭いリビングが大画面映画館になったり、アラスカのオーロラの原野になったり、ダリの幻想的な広大な3Dアート空間になったり、素晴らしい出来です。

 今後、モニタ解像度の高精細化はまだまだ進み続けるはずで、5年もあればヒトの視覚にかなり迫るはず。3D映像オタクとしては3Dテレビは廃れて残念だけど、ヘッドセットで立体映像の未来は明るいと思う。個人的には3Dプロジェクターの4K化は不要かなと思います。

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 VRとしてOculus Questはスタンドアロンの自律型なので、ゲーム機やPCにつなぐケーブルレスで、ボクシング(クリードになれますw)、テニス等のスポーツでも身体の自由度がありがたく、思わず狭いリビングを忘れて汗かいてます(^^)。

 チュートリアルソフトとか、標準で付属しているスポーツアプリでまずはかなり遊べます。

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 ただし欠点は、ソフトがまだ少ない事。
 Oculus Goで楽しめた Samsung VRとかAmaze VR とかがまだ未対応で遊べない事。Google Earthなんかもまだないのが残念。
 Youtube VRは楽しめるけれど、360° や180° 3D動画は、カメラ移動と身体移動のギャップでちょっと酔う。やはり前半述べた6DoF ソフトの方が酔いの面でもかなり有利ですね。

 ネットで見るとかなり評判良く、数は出そうなので、今後のソフト数拡大が楽しみ。

 これはVRを初めて導入しようとしてる方に、初めて薦められるVRデバイスですね(^^)。僕もこれが初購入になります(PS-VRは買ったけど試してすぐ売り払いました)。
 ちなみに猫にVR体験させるチャレンジはまだしてませんので御安心をw。

◆関連リンク
Oculus Quest 公式
MoguraVR Oculus Quest関連記事
 VRの記事がもっとも充実しているサイトです。

・当ブログ関連記事
 ■感想 Oculus Go の VR世界(1) ハードウェア中心に
 ■感想 Oculus Go の VR世界(2) アプリ、コンテンツ

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2019.06.10

■感想 渡辺歩 監督『海獣の子供』"Children of the Sea"

 
『海獣の子供』 予告2(『Children of the Sea』 Official trailer 2 )
 渡辺歩 監督『海獣の子供』@小牧コロナ、観てきました。

 ファンタジーアニメーションとして最高峰に到達した素晴らしい映画でした。手描きアニメーションと背景美術をCGにより幻想的な映像として昇華させた傑作。

 五十嵐大介 原作、渡辺歩 監督、小西賢一 キャラクターデザイン・総作画監督・演出、木村真二 美術監督ほかスタッフ陣が構築した新しい作品世界に111分間、劇場で浸ることができます。
 
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 まず冒頭の港町の中学生の溌剌とした夏休みの描写に惹きつけられます。特に部活動のハンドボールでトラブって学校から帰宅する主人公 琉花の背景描写の美しさ。手描きの背景を3D-CGモデルの中で縦横に動かすシーンの画面全体の躍動感に打たれます。

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 そして水族館はじめ、海の生物たちの鮮やかで幻想的な息をのむ描写。クジラや夜光虫の描写は、アン・リー監督『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の海のファンタジックなシーンを想起させますが、フォトリアルなそれと比べ、手描きゆえの独特の味わいはそうした世界一級の幻想シーンに勝るとも劣らないものに仕上がっています。

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 物語は、海と宇宙と生命の交点である浜辺を舞台として、哲学的詩的空間を構築しクライマックスを迎えます。この宇宙的な広がりもファンタジー映画としての達成のひとつのキーポイントと言えます。畳み掛けるように描かれた宇宙と海の生命の交感は、原作を読んでない私にはとても一回の視聴では噛み下せない詩的な内容だったので、次に観る時に言語的なセリフと映像描写の相関を少しでも読み解けるように、鑑賞したいものです。

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 映画はアウタースペースとインナースペースをつなぐようなビジョンを展開するわけですが、アニメーションという表現形式が特にインナースペースを描き出すことが得意な映像手法なので、人の手から脳内イメージを直接描き出されることでこのファンタジーをより一層魅力的に見せているのだと思う。

 おそらくこの映画がひとつの手本としたものに同じくアウタースペースとインナースペースの融合というクライマックスをSFXという手法で描いた『2001年 宇宙の旅』があると思うけれど、アニメーションというイマジネーションを直接画面に描写できる手法を活かしきったところで、ある部分においては、それを超える現代的な表現を獲得できているのではないだろうか。と書いたらさすがに褒めすぎだろうか。しかし『2001年』もスターゲートシークエンスは眠くなりますからね(^^;)。

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2019.06.05

■情報 ARグラス nreal light

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公式サイト

 サングラスのような軽快なタイプのARグラス、nreal light、かなり輝度の高い映像のようです!
 登場は、2020年初頭とのことで、Magicleapより早く市場投入かと思われます?しかもこの軽快なデザインがそのまま商品化されれば、なかなかの市場インパクトでしょうね。そして同じくARに力を入れている Apple も黙ってないでしょうね。

 Andoroidとつなぐことで、システムを軽くして $499との事なので、これ出たら、僕もメガネからコンタクトレンズに変更して、いよいよ電脳コイルな世界へ第一歩、踏み切るかな(^^)。

CES2019での展示品の動画 (twitter kajiken0630 さん)

 こちらのリンク先に動画がありますが、展示会場という周りが結構な照度の照明の中、なかなかの鮮明度を持った画像を、メガネのシースルーの外の光景に対して重畳していて、CG映像がしっかり見えて、期待が高まります。

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 コンシューマー $499、デベロッパーズキット $1199とのこと。
 リリースは、前者が2020年初頭、後者が2019年9月とのこと。本当にすぐですね。

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nreal light | First look from inside
こっちのデモはCESのものではないですが、6Dofの追従性も素晴らしく見えます。

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 スペックは以上のようになっています。

メガネ型MRデバイス「nreal light」499ドルで2020年一般発売 開発者版は今年9月から提供 (Mogura VR)
 nreal社、元MagicLeapのエンジニアが起こした会社なんですね。
 あれ、こっちには3DoFと書いてあるけれど、上の映像は6Dofですよね。どちらがただしいのでしょうか。

◆関連リンク
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CES 2019: Trying Out NREAL AR Glasses
 こちらの映像の11分からのメガネの映像を撮ったものでは、6DoFには見えないですね。電脳コイルをやろうとすると、6DoFは必須ですが、、、。

・twitter AR_OjisanCES2019動画 (twitter)
 こちらは3DoFっぽい。

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2019.06.03

■感想 マイケル・ドハティ監督『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』


『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』日本版予告編
 マイケル・ドハティ監督『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』レーザーIMAX 3D@109名古屋で観てきました。
ネタバレの感想は一番下でします。まずは以下、ネタバレなしの感想からですが、先入観なしで観たい方はご注意ください。
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◆ネタバレなし 感想

 いや〜、凄い音響とデザスターな映像シャワーで満腹でした。マイケル監督、名に恥じずド派手w。と下らないダジャレが出てしまうくらいの好き放題で、これは賛否両論でしょうね〜〜。現実にSNSを(Facebook中心に)眺めていると賛否の幅がかなり広い。

 この映画、僕は怪作と呼ぶことにしました。ゴジラ愛に溢れる超弩級の怪作。会場は真面目な方が多かったのか笑いはなかったですが、僕は何シーンか吹き出してました。豪勢な怪作にw。

 デザスター映画としての怪獣映画の可能性をこれでもかと見せつけるんですが、なぜか悲壮感はそれほど高まらないところ、ド派手監督のマニアックな人徳でしょうか(^^)。

 キングギドラの描写に期待していたのだけれど、僕はアニメ版の方が好きだった。でも今回のハリウッドは、あの顔の造形もまさに東宝版へのリスペクトなのですね。まさに龍の顔。もっとリアリティを追求した方向に振る事も出来たはずなのいこうしたのは正にリスペクトかと(モスラは東宝リスペクトだけれど、どこかリアルを追求した感じだったけど…)。

 賛否両論の非の方は、好きなゴジラ映画をいい加減に引用されたように見えるのかもしれないですね。監督はそんなつもりでなくても、物語の無理とか山盛りに東宝リスペクトを出しすぎて、消化不良になっていることから、リスペクトが悪ふざけに見えたのかもしれない。豪華にモリモリにしすぎて、そこが真面目に作っているか、疑われたのでしょうね。僕は物語への不満は、後半のネタバレのところで書きますが、怪獣愛は感じたので、そこまで否定的でなく、贅沢なリスペクト作で、愛が溢れすぎてそれが怪作へつながったのかな、という感想になったわけです。

 正直、これだけの資金を庵野総監督に渡して、カラーと日本特撮陣で、ハリウッドシナリオ批評システムに乗っけた上で、ファイナルカットは庵野監督という形で作ったら…と夢想しないわけにはいきません。モンスターユニバースとして、ハリウッド『シン・ゴジラ2』はありえないですかね。


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◆ネタバレあり 感想 ★★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 未見の方、ご注意下さい  ★ ★

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 怪獣はアメコミヒーローにない規模の、巨大なものが都市を蹂躙する黙字録のような巨大なディザスターを描ける強みがある、というのが今作でハリウッドの巨額予算でアメコミと同等のSFXで描かれ比較できたことで画面から強く感じられたことだった。

 そしてその映像を本篇は描ききれず、予告の方が悲壮感が漂っていたように思う。

 ドビッシー「月の光」の静かな雰囲気に対して、伊福部昭のマーチ的な重層音楽が街を破壊し蹂躙していくような使い方がされていたら、面白い画面効果になっていたのではないかと思う。

 怪獣によりボストンの街が見渡す限り破壊されたシーンにラドンとキングギドラが舞う破壊の美しさを極めたようなシーン、あれをあの家族の母親の冷徹な思弁によって娘が見捨てられることを重ねて描き、怪獣のディザスターと合わせて最高の悲壮感をもたせて、そしてその悲壮なシーンで地球環境が人類文明のない"自然"の状態に戻っていく様として描けていたら、凄い映画になったのではないかと夢想してしまう。

 そこで、キングギドラは宇宙怪獣(それにモナーク側環境テロリスト側が安易に過去の文献をちょっと調べてほぼ同時にわかるような安易な描写も排除して欲しい)で、その"自然"は実は偽りで、金星の"自然"に一部なりかけている、このままでは、、、という描写もしっかり欲しい。

 母親の狂信、それは自分もそして娘すらその犠牲になっても地球環境の延命のためなら犠牲すら問わないものでなくてはならなかったはず。そこまで冷徹に徹底しないで、家族のお涙頂戴描写にした本篇の物語が最悪だったところだろう。

 芹沢が死んでいくのも、潜水艦の核弾頭発射装置が故障したからという安易な設定(その前に軍用輸送機の格納扉が故障してオスプレイが収納できないという安易な設定があり、またかと観客に思わせるのが残念すぎる)。渡辺謙の力のこもった演技がもったいない。

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 劇場で、となりの席の中年男子は、エンディングのモスラの歌で泣いていました。伊福部昭の音楽とゴジラって、本来切っても切り離せないもののはずで、そうしたところをわかっているな、という好意的な気持ちとじゃあ何故本篇でもっとそのまま使わないのか、という不満が並行で自分の中に湧きおこるわけです。同じようにオキシジェンデストロイヤー、古代都市が海底に没した姿。等々が、、、。リスペクトと捉えるか、使い方が残念と思うかは、コインの裏表で、自分の脳内には両方並列で思い浮かぶのだけれど、どちらにころぶかは微妙なものがあると思うのです。

 先に、悲壮感で徹底したリアルを描く映画が見たかったと書いたのだけれど、もう一方でここまでリスペクトしたのなら、物語のハリウッド的なリアルを捨てて、モスラの小美人双子とか、金星人とか、ムー大陸(アトランティス?)出すなら海底軍艦も出すとか、徹底してやってもっと怪作路線にはちけても良かったのかとも思うw。

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 最後に飯塚定雄氏の描くキングギドラの素晴らしい引力光線について。
 上の引用画は、上の二つが『地球最大の決戦』のギドラ。下の一枚がKOMのギドラ光線。
 光線だけを見ると、それなりに飯塚光線の奔放さをうまくSFXに活かしてるようにみえるのだけれど、本篇ではその破壊力があまり感じられなかった。

 その理由はおそらく上の2枚にある、光線による街の破壊、一撃で建造物がバラバラになるあの迫力が描写されていなかったからではないだろうか。このあたりも物語の詰めの甘さに加えて、金があるがゆえにリスペクトはしているが、見せ方の工夫で破壊力を上げるような円谷特撮の知恵みたいなものが活かされていない残念なところである。否定派はそうしたところも馬鹿にされていると感じられるのかも。

◆関連リンク
もしも超絶ゴジラオタクがハリウッドで「ゴジラ」を撮ったら… M・ドハティ監督が愛を叫ぶ

“ 何にだって、どんな映画にだって、ゴジラを加えればより良くなると僕は思っている。想像してごらんよ、「スター・ウォーズ」にゴジラを足したら、やばいだろ? 「七人の侍」だってさらに良くなる。”

 マイケル・ドハティ監督、やばいっす(^^)。
 これ以外の本文は、今回の映画のちょっとネタバレがあるので、読むのは自己責任でw。
襲来! ゴジラジオ (NHKラジオ第一)
 『シン・ゴジラ』の続篇について聞かれ、樋口監督、続篇の話ということではなく、日本でのゴジラ映画の今後は、まずアメリカのゴジラが終わらないと、レジェンダリーと東宝の契約からは日本では制作できない。アメリカのもいいけれど、日本でやったらもっといろいろできるのにとモヤモヤしてしまう、と語られていた。

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