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2020.04.27

■感想 関根光才監督 ドキュメンタリー映画『太陽の塔』


『太陽の塔』予告編

 関根光才監督 ドキュメンタリー『太陽の塔』Bluray初見。

 テレビでやる様な、万博の企画から制作までのドキュメンタリーかと思って見始めたら、何とこれは関係者への取材というより(そうした部分も前半に一部あるけれど)、学者からアーティストといった『太陽の塔』に関心を持つ人たちの、太陽の塔の分析をインタビューで追いかけたもの。

 太郎が留学先のパリ大学でマルセル・モースから民族学を学び、バタイユと知り合ってバタイユの作った秘密結社に参加したり、といったところから、帰国後の沖縄の習俗、東北の縄文に触れていく過程。特に縄文の火焔土器と獣との共生といった概念に日本人の本質を見ようとするところが、丁寧に描かれている。

 特に岩手の「地域の平安と悪霊の退散を祈願する鹿踊」の映像とアイヌの習俗を映像で示したところが、岡本太郎の思想を映像的に表現できているのではないだろうか。

 映画は、この後、太陽の塔とほぼ同時期に構想されていた「明日の神話」/Chim↑Pom事件経由で、311の原子力と日本人の関わりについて綴っていく。ここはある意味、太郎から飛躍して描かれている部分にも思えたが、監督と製作陣の受け止めた太郎の思想を受けとめた想いが結集しているのだろう。

 最後のパートも圧巻で、南方熊楠の粘菌と太陽の塔の地下の単細胞生物に込められた太郎の思いをつなぎ、曼陀羅とチベットへと世界を広げていく。

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 そして太陽の塔とチベットのトルマ:Torma(上画像 右)という太陽への供物の形の相似から、太郎の人の原意識みたいなものに触れていた感覚を描き出している。ここはチベットの僧の言葉と中沢新一の分析であるが、こうした解析は読んだことがなかったので、とても興味深かった。

 そして映画のイマジネーションは、冒頭と節々で描かれている未来と思われる日本の風景の中で、荒野となった千里の地に残された太陽の塔が未来人に与える畏怖を映し出す。

 思想的/哲学的分析と、さらにそうした空想の映像、そして「明日の神話」の前で、ダンサーの菅原小雪が絵から受けたイメージで身体を自然に動かしていくダンスで示された、そうした多面的な岡本太郎のイマジネーションが映像として焼き付けられていて、とても密度の高い太陽の塔映画となっていました。

 太郎のあの像に関心持つ方には興味深い映画になっていると思います。

◆関連リンク
「太陽の塔」誕生秘話 (風の旅行社)

"時は1960年代、大阪万博開催の数年前。
岡本太郎が、東京の池袋で、日本滞在中のチベット人の僧と出会った。
そのとき、彼が僧から写真を見せられながら、教示を受けたのが、チベットの供物であるトルマであった。

トルマは、チベットに仏教が入ってくる前にあった人身供養の習慣の名残りだという。
たしかに、その膨らみ具合(上部と下部の二箇所あるものが多い)には、何かしら女体を彷彿とさせるし、赤色に染めるのは、血の跡、だとも言われている。

我らが岡本太郎は、このトルマの写真を見て驚愕し、「原初と未来が同時に見られる不思議なもん」(*)と語ったという。

(*)部分は、岡本太郎の上のエピソードを筆者に初めてご教示くださった、友人であるS氏(共同通信社)の配信記事からの孫引きである。"

 トルマについてはネットにこうした説明がされていました。映画での説明とは矛盾しています。真偽は確認できませんが、岡本太郎にインスピレーションを与える何かがあったのかもしれないですね。

映画『太陽の塔』とは? 監督・関根光才に訊く6つのこと。

"事前にシナリオは作りましたが、ナレーションでこちらに都合のいいように導いてしまったら話が小さくなると思ったんです。自分のイメージから外に出ていって欲しかった。バックグラウンドとしてのシナリオはあるけど、みなさんがそれぞれに話していることが、あたかも人間の大きな意識のように繋がっている。まるで曼荼羅のように。そうなればもっとスケールが大きなものになると。"

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