アニメ・コミック

2019.06.10

■感想 渡辺歩 監督『海獣の子供』"Children of the Sea"

 
『海獣の子供』 予告2(『Children of the Sea』 Official trailer 2 )
 渡辺歩 監督『海獣の子供』@小牧コロナ、観てきました。

 ファンタジーアニメーションとして最高峰に到達した素晴らしい映画でした。手描きアニメーションと背景美術をCGにより幻想的な映像として昇華させた傑作。

 五十嵐大介 原作、渡辺歩 監督、小西賢一 キャラクターデザイン・総作画監督・演出、木村真二 美術監督ほかスタッフ陣が構築した新しい作品世界に111分間、劇場で浸ることができます。
 
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 まず冒頭の港町の中学生の溌剌とした夏休みの描写に惹きつけられます。特に部活動のハンドボールでトラブって学校から帰宅する主人公 琉花の背景描写の美しさ。手描きの背景を3D-CGモデルの中で縦横に動かすシーンの画面全体の躍動感に打たれます。

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 そして水族館はじめ、海の生物たちの鮮やかで幻想的な息をのむ描写。クジラや夜光虫の描写は、アン・リー監督『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の海のファンタジックなシーンを想起させますが、フォトリアルなそれと比べ、手描きゆえの独特の味わいはそうした世界一級の幻想シーンに勝るとも劣らないものに仕上がっています。

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 物語は、海と宇宙と生命の交点である浜辺を舞台として、哲学的詩的空間を構築しクライマックスを迎えます。この宇宙的な広がりもファンタジー映画としての達成のひとつのキーポイントと言えます。畳み掛けるように描かれた宇宙と海の生命の交感は、原作を読んでない私にはとても一回の視聴では噛み下せない詩的な内容だったので、次に観る時に言語的なセリフと映像描写の相関を少しでも読み解けるように、鑑賞したいものです。

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 映画はアウタースペースとインナースペースをつなぐようなビジョンを展開するわけですが、アニメーションという表現形式が特にインナースペースを描き出すことが得意な映像手法なので、人の手から脳内イメージを直接描き出されることでこのファンタジーをより一層魅力的に見せているのだと思う。

 おそらくこの映画がひとつの手本としたものに同じくアウタースペースとインナースペースの融合というクライマックスをSFXという手法で描いた『2001年 宇宙の旅』があると思うけれど、アニメーションというイマジネーションを直接画面に描写できる手法を活かしきったところで、ある部分においては、それを超える現代的な表現を獲得できているのではないだろうか。と書いたらさすがに褒めすぎだろうか。しかし『2001年』もスターゲートシークエンスは眠くなりますからね(^^;)。

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2019.05.27

■感想 今石洋之監督『プロメア』


映画『プロメア』第二弾PV 制作:TRIGGER

 今石洋之監督、中島かずき原作,脚本、TRIGGER 原作,アニメーション制作、舛本和也 アニメーションプロデューサー 『プロメア』@イオンシネマワンダー で観てきた。

 『グレンラガン』『キルラキル』ファンはもちろん、『スパーダーバース』に痺れた先端アニメ好きは必見。かつ何故かどこか東映動画初期長篇の薫りを感じたのは僕だけでしょうか(^^)。冒頭からのいきなりアクションと物語の立ち上げ方の映画的なところからかな?

 完全オリジナルで冒頭からここまで熱く惹き込まれる作品はなかなかありません。『グレンラガン』『キルラキル』ファンはあのシーンやこのシーンを想起して目頭が熱くなるわけですが、それだけでないパワーを感じる。むしろそれらを観たことのない映像ファンが劇場で椅子から落っこちそうになるくらい驚く所が観てみたい。

 シナリオと声優陣のセリフの熱さとそれを超える作画レイアウト、奇怪な動きと3D CGの快感。とにかくとめどない映像シャワーの圧を感じに劇場へ是非!

 僕は金田伊功ファンとして、今石監督の昇華(消火?w)進化したアクション作画、特に火炎龍と幾何学デザインチックな圧倒的なアニメートを観れただけでも大満足なのでした(^^)。以下に金田伊功氏の『幻魔大戦』の火竜と『プロメア』の予告篇で流されている火竜を比較。本篇には発火描写の中心イメージとしてドラゴンは出まくっているので、本篇ブルーレイが出た後に再度ここは検証してみたいですが、この二つを比較するだけだと、金田作画のタメの感覚が、やはり今でも火龍描写の最高峰と感じさせます。

 とは言え、それだけでなく特に幾何学模様を多用したグラフィカルなアクション描写は、金田伊功を起点にして(後述関連リンク参照)、そうとう先鋭的に進化発展させたものになっている、というのが僕の感想です。
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◆関連リンク

『プロメア』のドラゴンのシーン。0'50"あたり。

金田伊功のドラゴン集成。0'10"あたりに『幻魔大戦』の火龍シーン。

 映画本篇の冒頭映像。

当ブログ関連記事
感想 静野孔文・瀬下寛之監督、ストーリー原案・脚本/虚淵玄『GODZILLA 星を喰う者』『GODZILLA:The Planet Eater』
 金田伊功の龍のアニメートとキングギドラについて、少し書いています。
ガイキングオープニング 金田伊功の作画の進化
 『プロメア』にも影響していると考えられる金田伊功後期のグラフィカル表現の進化について述べています。幾何学模様の作画利用としては当時の先端を切り開いていたと思います。今回の今石監督のグラフィカルな作画演出はそれをさらに先鋭化した感じです。

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2019.01.30

■感想 谷口悟朗監督『revisions リヴィジョンズ』1-2話


TVアニメ「revisions リヴィジョンズ」本PV - YouTube.

 谷口悟朗監督×シリーズ構成 深見真×キャラクターデザイン原案 近岡直×アニメーション制作 白組×CG監督 平川孝充『revisions リヴィジョンズ』1-2話録画見。

 いつか街に破滅的な事象が起こって、その時に自分のSFファンとしての知見が活かせるんじゃないか、という妄想wが現実化した様を描く、白組の3D CGアニメによる本格ロボットアクション(^^;)。

 まずは楳図かずお『漂流教室』、押井守『ビューティフルドリーマー』を彷彿とさせる冒頭。そして直後に校舎屋上で繰り広げられるシビリアンと名付けられた奇想巨大ロボットによる殺戮シーン。この奇想ロボット作画が素晴らしい。蜘蛛と使徒を合体させたような?造形と、抜群のレイアウトとカメラアングルによる迫力のCG映像。

 細部を描き込めるCGモデリングの特性を最大限に活かして、細かなディテイルのメカを、とても手描きでは描ききれないような画角で存分に描き出した白組のCG映像に感嘆。

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 CGの持つポテンシャルを最大限に引き出したCGアニメーターのセンスが最高。第1話で力が入っているとは言え、ヱヴァンゲリヲン新劇場版の最高レベルの作画に近いものがテレビアニメの画面で観られるのも、CG技術の進化の賜物か。

 人物の作画は、モーションアクター/モーションキャプチャーで撮られているようだけれど、なんとなくまだこなれていない感がある。このあたりは『亜人』や『虚淵ゴジラ』で先行して手がけるポリゴン・ピクチュアズが一歩リードというところでしょうか。

 それにしてもスピーディな動きは、CGを用いることで、リミテッドアニメというよりフルアニメっぽいコマ運びを実現しているようで、これも素晴らしい。今までテレビアニメはブルーレイの4倍速で録っていたけれど、これは4倍速ではもったいない出来で、DR録画が必要かもと思っています。というよりいよいよ4Kが必要なのかもw。

 今後の物語の展開と映像が楽しみです。

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2018.09.03

■情報 富野喜幸監督『無敵超人ザンボット3 Blu-ray BOX』発売予定


「無敵超人ザンボット3」SD/HD比較映像PV - YouTube 公式サイト

"初回放送から41年。サンライズ初のオリジナル作品『無敵超人ザンボット3』が遂にブルーレイで登場!ニュープリントマスターポジフィルムから2Kスキャンした最高画質の全編フルHDリマスター映像! 発売日:2018年12月4日 希望小売価格:30,000円(税抜)

【封入特典】ブックレット(200P)※内容予定
・シリーズ構成・設定書、長編映画構成台本など未公開の貴重な資料集
・富野由悠季監督、安彦良和氏へのインタビュー

【映像特典】※予定
・ノンテロップOP/ED
・クローバー「ザンボット3 コンビネーションプログラム」CM集
・番組告知CM

【静止画特典】※予定
・第1話絵コンテ
・完成台本(全23話分)"

 初のブルーレイ化!リンク先の動画を観ると、オープニングフィルム(35mmとか)のみですが、見たことのない鮮やかな色になってますね。(ザンボットはあの淡い色合いが好きなので複雑だったりしますが…) 。

 「幻の長編映画構成台本などの未公開の貴重な資料や、 富野由悠季監督ほかへのインタビュー」、御存命なら金田伊功さんの作画語りが収録されたかもしれないと思うと残念でなりません。

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 また「幻の長編映画構成台本」、あのエキサイティングなストーリーが長篇映画の尺でコンパクトにインパクトを持った映像として語られるというのはファンが夢見ていたことです。どんな話に再構成されているか興味深いです。

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◆関連リンク
富野 喜幸 監督『【Amazon.co.jp限定】無敵超人ザンボット3 Blu-ray BOX (安彦良和氏複製サイン入りB2サイズ布ポスター(三方背アートBOXイラスト使用)+オリジナルキャラファインボード付) 』
富野 喜幸 監督『無敵超人ザンボット3 Blu-ray BOX 』

金田伊功 ザンボット3 関連当ブログ記事 Google 検索

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2018.08.20

■感想 細田守監督『未来のミライ』


「未来のミライ」予告3 - YouTube

監督メッセージ |「未来のミライ」公式サイト

"子供と、その親の子供時代は、時代こそ違えども、
じつはきれいな相似形を成していることに気づく。
  あれだけ反発した親と全く同じ言葉を、
親になった自分が子どもに言ってしまっていることにハッとなる。
  果てしない子育ての苦労は、実のところ、
自らの子供時代の視点を変えた生き直しなのかもしれない。"

 細田守監督『未来のミライ』@各務原イオンにて観てきた。

 僕には、残念ながら細田作品としてはつまらない部類の作品でした。丁寧な描写、コメディシーン、幻想的シーン等々、確かに見せるシーンは多々あるのだけれど、とても眠い出来。

 要するに、細田監督の子育ての記憶のディテイルを映画として定着させたいの? って思ってしまうようなモチーフがプンプン。うちも子供二人、映画の家族と同じ位の歳の差だったので、いろいろと想い出す諸処の描写は懐かしい。でもなぁ〜。かつての細田作品のエンタテインメントとしての映画の結構がないのが残念でならない。





★★★★以下ネタバレ注意★★★★





 映画冒頭で2回、この家族の住む港に近い街が俯瞰で映る。このシーンで家と海との距離に不穏さを感じたのは僕だけだろうか。

 主人公くんちゃんが前半でトリップする街に薄く溢れている水。ここで僕はもしかしてこの映画の舞台はクライマックスで津波か何かで水に沈む街なのか?と感じてしまった。

 後半駅のシーンで、海抜3mとかの看板が描かれていたり、そうしたほのめかすようなディテイルもそんな気持ちをフックする。

 なんでもない日常、過去から未来への連綿と繋がる人と人の連鎖。それらのかけがえのなさを描いている映画は、幻想シーンで色々な不穏なイメージが描かれることで、そうしたカタストロフを迎えるのか、と思ったのは僕だけの誤解だったのか。

 もちろんそのまま描けば、映画の骨格は、あまりに安直な構成と感じられるだろう(震災後映画とも呼ばれるアレやコレにあまりに似てしまう)。もしかしてそれを醸し出しつつ、最後でそこにまとめるのを避けたのか?? と考えるとクライマックスのカタルシスのなさは合点が行くが、、、、。

 『未来のミライ』と津波のキーワードで検索しても、そうした邪推に触れている感想はひとつも見つからない。なので、たぶん僕だけの妄想だったのでしょう。もしそんなラストを臆面もなくやっていたら、どういうイメージの映画になっていたか、想像してしまうのでした。

 以上から、これはもしかしたら、ひとつの震災後映画なのかもしれない。

 なんでもない日常、過去から未来への連綿と繋がる人と人の連鎖を断ち切る、関東圏、横浜での震災の予感を描いているのかも。ということは、ミライの未来は実は来ないのかもしれない。時空が交差するシーンは、そうした災害により失われてしまった過去と未来の走馬灯なのかもしれない。

 と考えると、細田監督があえて、私小説的にディテイルを描いたのもある程度納得できる気がしてきました。

 とはいえ、僕はこの映画、あまり「好きくない」ですが、、、(^^;)。

◆関連リンク
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2018.07.25

■情報 ススキダトシオ(小林 治)展 @ 埼玉近代美術館

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ススキダトシオ(小林 治)展 | COMMENT.

"シャープでユニーク、しかも感じの出た動きを描く達人。 今も憧れの人です。 「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」
作画監督・原画 井上 俊之 氏

独特のダイナミックなフォルムで人物も風景も描く生々しく奇天烈な天才。
アニメーション監督 湯浅 政明 氏

今年でアニメーター歴55年。70歳を越えても未だ衰えることないススキダトシオ(小林 治)の魅力を知ってもらおうと氏を尊敬する有志で企画した個展です。個性的なキャラクター、リアルな画面作り、独特な動きやエフェクト表現。

本展では氏の手がけた「ふるさと再生 日本のむかしばなし」の担当回を中心に企画しました。レイアウト、原画、絵コンテなどを可能な限り生原稿で展示。背景美術 スタッフの協力を得てプリントした原稿も展示させていただく予定です。"

 アニメーター 小林治の展示会が、埼玉近代美術館で開催される。
 『天才バカボン』や『ど根性ガエル』で独特のデフォルメした傑作アニメートを芝山努氏と作り上げ、その後、亜細亜堂というスタジオを設立。『日本昔ばなし』等で、その独特の演出と作画で個性的な作品を作り続けられている。

 今回は『ふるさと再生 日本のむかしばなし』のレイアウト、原画等の展示ということだけれど、この天才アニメーターの独自のタッチを原画で観られる貴重な機会です。

◆関連リンク


Watch 0242 in アニメ  |  View More Free Videos Online at Veoh.com
千石田長者: まんが日本昔ばなし動画
 こちらは小林治演出作画回、このキャラクターのリリカルな佇まいが素晴らしいと思います。このタッチ、原画で是非見てみたいものです。
小林治 (アニメ演出家) - Wikipedia

"小林 治(こばやし おさむ、1945年1月9日 - )は、日本のアニメーター、アニメ監督、演出家である。東京都府中市出身、亜細亜堂所属。"

・小林治: まんが日本昔ばなし一覧
 小林治演出・作画回の動画リンクがあります。なんと65作品。
まんが日本昔ばなし〜データベース〜 - お話検索 AND : 小林治
小林治 - 作画@wiki - アットウィキ

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2018.01.24

■感想 『磯光雄 ANIMATION WORKS vol.2』

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【正式告知】C93で「磯光雄 ANIMATION WORKS vol.2」が発売! 大ボリュームの384ページ!! | WEBアニメスタイル(公式HP)

" 磯はアニメーターとして『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』『おもひでぽろぽろ』『新世紀エヴァンゲリオン』『BLOOD THE LAST VAMPIRE』等に参加。その仕事は尖鋭的であり独創的。彼が生み出した表現は、クリエイター達に多大な影響を与えてきた。(略)

 『走れメロス』『新世紀エヴァンゲリオン[TV版]』『PERFECT BLUE』『BLOOD THE LAST VAMPIRE』『ラーゼフォン』『ひるね姫』の原画を収録。

 本書はB5サイズで、ページ数は「vol.1」より大幅にボリュームアップし、384ページ。 「vol.2」もカラーの素材があるカットは、カラーで掲載。また、各カットで描かれた原画は省略することなく、全てを収録することを編集の基本的な方針とした。彼の濃密な仕事を楽しんでいただきたい"

 年末にネット予約していた『磯光雄 ANIMATION WORKS vol.2』先行予約特典『Flip Book』付が届いた。 全384ページという大部の原画集。

 上記引用したように、各カットごとの原画が全部収録されている。そしてそのタイムシートも付いているため、まさにアニメーターの絵の細部とその動きのノウハウを確認することができる。

 原画を順に追いながら、タイムシートのコマ割りをみて、頭の中で動画として再生する。タイムシートによると原画が基本3コマごと続き、所々2コマだったり1コマだったりする。

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 やはり『エヴァンゲリオン 第19話「男の戰い」』の使徒喰いシーンの全原画が圧巻!『エヴァンゲリオン』の中でも屈指の名シーンである。
 あの霧中の山の中での幽玄なシーン。その異形の存在を縦横に描いたのが磯のアニメートであることは有名で、いくつかの原画は今までも雑誌等に紹介されていた。
 しかし今回、その原画の多数が掲載された。僕はこのシーンの原画を観たくて、この本を買ったようなものだ。

 エヴァの異形を4足歩行と使徒を喰う顔のアップで描き出したその原画。
 ポーズの奇想と動きによる異物感。異様な口の動きとその内部の興奮を表現した眼の動きの奇形。

 庵野のコンセプトを摩砂雪が絵コンテとして起こし、磯の脳内の映像が結実した原画。おそらく日本奇想映像の中でも屈指のこのシーンの原型が知れる貴重な書籍である。

◆インタビュー「収録作品について Author's Notes」
 磯光雄氏へのインタビューが巻末に4ページ掲載されている。
 興味深い内容が多数述べられているが、特に面白かった部分を以下一部抜粋させて頂く。

"自分の動きは身体と頭の中にあって、それを絵の形でダウンロードするというか。(略)
ロトスコープのアニメ作品をひたすらエンドレスで再生して観ていた時期がありました。同時にカートゥーンっぽい動きの作品もエンドレスで流して、カートゥーン的な誇張した動きと、リアルな重量感が脳内で交じり合っていましたね。そういったものが自分の動きの起源の一つになっています。

素振りと同じようなことだと思うんですけどね。(略)
絵を描くのもスポーツと同じ身体的な作業なのかなって。同じ動きを繰り返し観てると、実写とか現実に目撃した動きからも別な動きが見え始めるみたいな。(P380)

(エヴァの頃に触れて)
3コマでも全原画を精神を研ぎ澄まして描けば、フルアニメーションはできるはずだと。それは枚数が多ければいいんだという当時の常識に対する反抗で、パンクの精神でやっていたわけです。ただ、今観るともうちょっと中割りを入れたほうがよかったかな(笑)。(P381)"

 磯の脳内映像がどう形作られ、それが身体感覚として原画に結実するメカニズムの一端に触れたような貴重な記録である。このレベルでアニメーションの原画生成の秘密が語られることは滅多にないため、素晴らしく味わい深い記述。磯の演出家としての客観視点が、超絶アニメータの原画生成の秘密を分析しているのだろう。
 (タイプの違うアニメータであるが、金田伊功が生きていて磯光雄と対談して、金田のアニメートの秘密が探られていたら、、、という夢のような想像を僕は禁じ得ない。生前に磯が金田にそうした聞き込みをしていたら、是非公開してほしいものである)

 あと、最近進化しているデジタル技術について、後半『BLOOD』や『ラーゼフォン』『ひるね姫』での、デジタル作画/エフェクトについてのコメントも大変に興味深い。磯によって作られた手法もあるようで、未知の大陸に挑む姿勢がとても頼もしい。

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 先行予約特典のフリップブック(パラパラ漫画帳)は、全140ページで、片面づつで原画が連続して掲載されている。各70ページづつのパラパラ漫画になっている。
 爆発の煙の躍動感等、こちらも楽しめる素晴らしい出来である。

◆関連リンク
『磯光雄 ANIMATION WORKS vol.2』
  ※ Amazonの商品はFlip Book付いてないのでご注意を。

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2018.01.10

■感想 湯浅政明監督『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』


『夜は短し歩けよ乙女』 90秒予告 - YouTube

 湯浅政明監督『夜は短し歩けよ乙女』DVD初見。
 傑作『四畳半神話大系』に直結する快作。
 なんなのでしようね、語りと絵の魅力なのか、京都の大学の雰囲気を見事に写し取った青春の香りに満ちた映画。『四畳半神話大系』でも見事だったのだけれど、このどこか甘酸っぱい現実と夢が混濁した映像空間はどこから生まれてきているのだろう。

 樋口師匠とかパンツ総番長とか古本市の神様とか李白とか、、、そうした謎のキャラクタの魅力と黒髪の乙女の小股の切れ上がった女っぷり、そして先輩の気恥ずかしさ、そんなものが混ぜこぜになってのこの感覚。

 森見登美彦の原作を読んだことはないのだけれど、原作の持つ京都の学生の雰囲気と、そして幻想味に満ちた湯浅監督の軽妙な絵柄と演出の成果なのでしょうね。こんな世界に紛れ込んで一生出てこれなくても良いと感じてしまう空間造形が素晴らしい。

 パンツ総番長とかゲリラ演劇「偏屈王」とか『クレヨンしんちゃん』の良い影響もあるのでしょうね。


『夜明け告げるルーのうた』PV① - YouTube

 続いて湯浅政明監督『夜明け告げるルーのうた』DVD初見。
 アニメーションだけが描ける素晴らしいイマジネーションの映画。自在なパースとハッピーな動き、特に前半の音楽シーン等、観ていて何故だかドキドキする映像がとてもここちいい。

 後半、物語を閉じるためのロジックが、映像のイマジネーションをある意味、型にはめている様な部分があって、少し残念なのだけれど、ルーのパパの描写(何故か日常に異様な人物が馴染んでいるところ)とか、クライマックスのスペクタクルと物語の登場人物の感情のシンクロとか、とにかくエキサイティングな映像が素晴らしい。

 すぐ前に観た『夜は短し恋せよ乙女』と比べると、オリジナル作品だけに、湯浅監督による映像の奇想成分の暴走がさらに気持ち良い。逆に前作が持っていた文学的な言葉による映画としての表現の奥行きは少し本作では弱い。ここが前作の原作 森見登美彦と脚本の上田誠両氏による映画の芳醇なのかもしれない。

 ということで、次作は永井豪の傑作『デビルマン』と湯浅映像のコラボレーションになるわけで、どんな融合の成果が観られるのか、楽しみでならない。
 1/5からもう配信スタートらしいけど、NETFLIX入ってないのでしばらくお預けです。

◆関連リンク
・Devilman Crybaby | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

 湯浅政明監督『Devilman Crybaby』、Netflixで全10本既に公開されているのですね。
 一気公開であの壮絶なラストまでが観られる。
 そそられますが、まだ加入していないですw。

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2017.10.18

■感想 渡辺信一郎監督「ブレードランナー ブラックアウト 2022」(『ブレードランナー2049』前日譚)


【渡辺信一郎監督による前奏アニメ解禁!】「ブレードランナー ブラックアウト 2022」 - YouTube

"『ブレードランナー2049』へ至る、空白の30年間。2022年に起きた大停電<ブラックアウト 2022>とはー?"

 『ブレードランナー』の世界を見事に映像化。全篇に『ブレラン』へのリスペクトがあふれています。リドリー・スコットがあの映画で作り出したと言っても良い「サイバーパンク」というコンセプトを意識してすみずみにその魂を入れ込んだ様な映像が素晴らしいです。

 クレジットを観るまでもなく、日本最高峰のアニメーターによる映像になっているんだろうなと思っていましたが、実際エンディングで見られた名前は「沖浦啓之、磯光雄、大平晋也、田中達之、橋本晋治、橋本敬史」各氏ほか錚々たる作画陣。そして3D CGの増尾隆幸氏ほかスタッフ。日本アニメの一つの到達点のひとつと言って良いのではないでしょうか。以下に作画、CGスタッフを引用します。

ブレードランナー ブラックアウト 2022 - アニメスタッフデータベース

"作画監督  村瀬修功、作画監督補  寺田嘉一郎
原画 沖浦啓之 大平晋也  田中達之 新井浩一 橋本晋治 高橋裕一 名倉靖博 清水洋  久木晃嗣 BAHI.JD 橋本敬史 中谷誠一  山田勝哉 栗田新一  田中宏紀 堀元宣 磯光雄 吉邉尚希 角田圭一 村瀬修功
3DCGディレクター  増尾隆幸
3DCG クリープ  山田太郎 小川裕樹 島田義己 丹羽一希
SOLA DIGITAL ARTS  八木下浩史 竹内誠  橋本トミサブロウ"

◆前日譚 あと2本の短編が公開されています。
・ルーク・スコット監督
『ブレードランナー 2049』の前日譚】「2036:ネクサス・ドーン」 - YouTube.

"『ブレードランナー2049』へ至る、空白の30年間。 デッカードが恋人の女性レプリカント《人造人間》と共に姿を消してから17 年後、2036 年の世界。そこでは、レプリカントの新たな創造主となる科学者ウォレス(ジャレッド・レト)が、<巨大な陰謀>を目論んでいた―― 『ブレードランナー』を監督した“SF 映画の巨匠”リドリー・スコットの息子、ルーク・スコットが監督を務めた短編を公開!"

ルーク・スコット監督『ブレードランナー 2049』の前日譚】「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」 - YouTube

"『ブレードランナー2049』の舞台である2049年の一年前、2048年の世界―。 ロサンゼルス市警は“ブレードランナー”組織を強化し、違法な旧型レプリカント《人造人間》の処分を徹底していた。軍から逃げ出し、この街にたどり着いた旧型の違法レプリカントであるサッパー(デイヴ・バウティスタ)は、トラブルを避け静かな暮らしを送っていたが…… 2022年=大停電(ブラックアウト)、2036年=新型レプリカントの存在が明らかとなったことに続き、空白の30年間を繋ぐ最後のエピソードを公開!"

 ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『ブレードランナー 2049』の前に観ておくべき短篇を抑えたところで、いよいよの公開日を楽しみに待ちたい。

◆関連リンク
ルーク・スコット Luke Scott - IMDb
 リドリー・スコットの息子さん、少し遅咲きの様ですが、今後の活躍を祈りたいものです。
Alien: Covenant | Prologue: Last Supper | 20th Century FOX - YouTube
 『エイリアン コヴェナント』のプロローグも監督している様です。

『ブレードランナー』はアニメ界も変えた 渡辺信一郎&荒牧伸志が熱弁 - シネマトゥデイ

"渡辺監督が「いまは実写の世界がアニメでほとんど表現できてしまい、境目がなくなってきている。この作品では、日本にいる2Dの手描きのアニメーターのすごい才能を活かしたいという思いが強かった」とこだわりを語ると、荒牧監督は「世界的にファンが多い作品と言いましたが、一番の『ブレードランナー』ファンは渡辺監督です。とにかくこだわりがすごかった」と苦笑いを浮かべていた。"

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2017.05.29

■感想 ノンフィクションW「ユーリー・ノルシュテインの、話の話。」

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ノンフィクションW ユーリー・ノルシュテインの、話の話。 | ドキュメンタリー | WOWOWオンライン

"ユーリー・ノルシュテインには、1981年から制作中の作品がある。切り絵を使ったアニメーション『外套』だ。原作は帝政ロシア時代の作家、ゴーゴリの小説で、社会から見捨てられた貧しい下級役人の悲劇を描いたもの。彼がこの作品にこだわるのは、自己保身と欲望が渦巻く現代にこそ声なき声に耳を傾けることが大切だと考えているからだ。撮影台の上に置かれたキャラクターを一枚一枚コマ撮影していくが、24枚の撮影でわずか1秒の映像にしかならない。しかも、撮影の途中で脚本を修正することがあり、撮り終えたものを作り直すことも。そんなノルシュテインを妻で美術監督を務めるフランチェスカが支える。また、彼と親交のある高畑勲は、進捗状況を聞いてプレッシャーを掛けたくないと語る。 目下、ロシアのアニメ界はソ連崩壊以降国からの製作費支援が減り衰退気味だ。ロシアアニメの未来を憂え行動を起こす彼の姿も追う。(2017年)"

 WOWOWのユーリ・ノルシュテインドキュメンタリー録画見。
 主に「外套」の撮影風景とロシアアニメーション界の状況。「外套」は23分できたところで2001年に制作が止まっていた。週に1日スタジオで作品にまつわるグッズをノルシュテイン自らが販売することでスタジオの維持費を得ている。このドキュメント撮影の日は、1日で売り上げが14万円とか。

 ロシアの資本主義政府からは支援金を得たくない、と映画監督アレクサンドル・ソクーロフに語る彼は、ソビエト時代「検閲があったからこそ映画の芸術性が保たれていた」と話す。

 長くノルシュテイン作品の美術監督を務める奥さんのフランチェスカ・ヤールブソワさんは、大病を患い「外套」の美術は降りたのだという。
 そして今年2月に「外套」の撮影が再開。

 切り絵の主人公アカーキーのアニメートについてノルシュテイン自身により精緻を極める何重ものセルを重ねて動かしながら語られて、とても興味深い。  またフィルムカメラがセットされたノルシュテイン設計のマルチプレーン撮影台。一番上のガラスには埃がわざと溜められている。これにより繊細な光の拡散が得られるのだとか。「ホコリは良き助手なんだよ」と笑うノルシュテイン。

 「外套」の一部シーンと舞台となったサンクトペテルブルクの街が実写で紹介される。影の陰影で立体感を持った登場人物たちのなんとも柔らかい全身の表情。全篇の映画館での公開を心待ちにしたいものです。

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