アニメ・コミック

2019.10.21

■情報 諸星大二郎×佐藤健寿『世界伝奇行 マッドメン 編』

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 『世界伝奇行 ―パプアニューギニア・マッドメン編―』を購入。
 『諸星大二郎 マッドメンの世界 (文藝別冊/KAWADE夢ムック)』の「増補決定版」。60ページ分のコンテンツ追加だけれど、既存分の再編集もあり、全体頁数は80ページ増。特に佐藤健寿氏の「ハイランド地方の部族たち」オマ・マサライ族の写真(以下の引用写真、最下段の左から2枚目)が素晴らしく買ってしまった(^^)。

 内容がダブっている、『諸星大二郎 マッドメンの世界』は売らないと…w。しかしそれにしても、河出書房新社、アコギな商売してますね。ファン心理をくすぐる増補版。

奇界遺産 (佐藤健寿さん Facebook 公式)

"9月14日に諸星大二郎先生と一緒に作った本「世界伝奇行」が二冊同時刊行されます。ひとつは中国の新疆ウイグル自治区とシルクロードを巡った「西遊妖猿伝」編。もう一冊はパプア・ニューギニアを巡った「マッドメン」編。先生と実際に現地を旅しながら、作品の舞台を撮影しています。
・世界伝奇行 西遊妖猿伝 編
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4309290450
・世界伝奇行 マッドメン 編
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4309290469
(こちらは2015年刊行のムックを改訂、新規撮影の現地写真と、諸星先生と萩尾望都先生との対談など追加)
・発売にあわせ、9/14からタワーレコード渋谷店で「諸星大二郎x佐藤健寿 展」も開催します。諸星先生の原画と一緒に現地の写真を展示します。物販もあるそうです(奇界遺産展の物販もこちらで販売予定)。
・9/21にはサイン会も開催するので、ぜひお越しください。受付は28日より、詳細は↓よりどうぞ。
 http://towershibuya.jp/news/2019/08/09/136959"

 東京で展示会もあったようですが、すでに10/14までで終了しているようです。オリジナルの生写真でニューギニアの奇想を直接みたかったです。

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 今回、増補されていたのは、萩尾望都との対談とマッドメンイラストギャラリー、前述の「ハイランド地方の部族たち」の3パートです。

◆関連リンク
佐藤健寿 さん公式HP

・当ブログ記事 情報 諸星大二郎 『マッドメンの世界』と原画展
・       感想 諸星大二郎 原画展 マッドメンの世界 @ 京都国際マンガミュージアム

諸星 大二郎, 佐藤 健寿『諸星大二郎 マッドメンの世界 (文藝別冊/KAWADE夢ムック)』

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2019.10.14

■感想 野﨑まど原作 鈴木清崇監督『バビロン』


アニメ「バビロン」第二弾PV

"「生きることは善いこと」 その常識が覆される時代が訪れたら、あなたはどうする。 読む劇薬・野﨑まどが綴る衝撃作が、遂に禁断の映像化! 「その啓示は、静かにそっと訪れる-」 東京地検特捜部検事・正崎善は、製薬会社の不正事件を追ううちに、一枚の奇妙な書面を発見する。そこに残されていたのは、毛や皮膚のまじった異様な血痕と、紙一面を埋め尽くすアルファベットの『F』の文字。捜査線上に浮かんだ参考人のもとを訪ねる正崎だが、そこには信じがたい光景が広がっていた。 時を同じくして、東京都西部には『新域』と呼ばれる新たな独立自治体が誕生しようとしていた。正崎が事件の謎を追い求めるうちに、次第に巨大な陰謀が見え始め--?"

 Facebookのタイムラインで評価が高い、鈴木清崇監督『バビロン』Amazonプライムにて第1章(第1話 - 第3話)を観ました。

 第1話、アニメでこれやるのは…?? と思ったのですが、3話まで観て、原作読んでないのですが凄く関心。こう来ましたか。3話のクライマックスがとても見事。

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 SAC 2ndとか今敏監督の某作や、園子温監督の某作を思い出すヴィジュアルと展開。何しろ行政特区の設定と登場人物の女の底知れなさの魅力が物語の強烈なドライブになりました。今後がとても楽しみ。とりわけ、曲世愛という謎の女、この人物のセリフのこの世ならざる感が凄いので、期待です。

◆関連リンク
Amazonプライム『バビロン』
野﨑まど『バビロン』(原作, Amazon)

"<2019年10月、絶望のアニメ化決定!!>
「鬼か、悪魔か、野崎まど、か。世界はまどに惑わされる」"

野﨑まど (wiki)
 シリーズ構成と脚本を担当されたアニメ『正解するカド』しか知らないのだけれど、勝手に女性と思い込んでいましたが、男性だったのですね。大変、失礼しました。
大森望 「HELLO WORLD」「バビロン」野崎まどのSF世界

" 根源的な問題をつきつけられた人類が議論で答えを模索するドラマという意味では、「正解するカド」暗黒版。それにしてもこの先いったいどうなるのか。ますます目が離せない。"

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2019.09.11

■動画 ロシアのドキュメンタリー「今 敏 が夢を映画に変えた方法 」


Как Сатоси Кон превратил сны в кино ( 今 敏 が夢を映画に変えた方法 )

 今敏監督が亡くなって既に9年。ロシアのTV局が作成したドキュメント番組です。あらためてこのような素晴らしい監督を失ったことが残念でなりません。

 今敏監督の漫画とアニメの特集番組。ロシア語で全く分からないですが、ザクッと観てみました。映像は国境を越える、映像オタクとしてビンビン、そのマニアックな引用映像から、この制作スタッフが今敏作品を深く愛していることが伝わります。

 ディヴィッド・リンチからジョージ・ロイ・ヒル、ジャン=ピエール・ジュネ、テリー・ギリアムとの幻視しているファンタジー世界の通底、ダーレン・アロノフスキー『ブラックスワン』、クリストファー・ノーラン『インセプション』への今作品の影響シーンの対比分析まで、物凄く深く捉えています。

 『妄想代理人』を絵コンテ含め相当量の映像を引用、平沢進の音楽、『夢みる機械』についてもかなり時間を使って紹介しているのが、とても嬉しい。

 字幕は一度、ロシア語字幕を出した上で翻訳すると日本語字幕が表示できます。割と意味がわかるようになります。

 日本語字幕で全篇観てみましたが、この番組の密度は凄い。速射砲のように41分間に圧縮された今敏論。おそらく欧米露では今作品の研究論文も発表されているのではないでしょうか。日本のお役所も本気で日本アニメ文化を育てたいなら、そうした研究論文をどんどん翻訳して、世界的な映像文化の定着を図っていけばいいのに(^^)。

 日本でもここまでの特集は作られてないような…。是非、日本でも翻訳し放映してほしいものです。

◆関連リンク
当ブログ 「今 敏」関連記事

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2019.07.22

■感想 新海誠監督『天気の子』

映画『天気の子』予報
 新海誠監督『天気の子』@ミッドランドスクエアシネマ、観てきた。

 いきなりの『The Catcher in the Rye』の無邪気な登場に、新海誠健在と感じて、新宿の雑踏の緻密な美術世界にスムーズに入っていけましたw。

 今回も、初期新海作品が苦手な僕には、相変わらずだなあ〜ってちょい引くモノローグはあるけれど、RADWINPSの曲とエンタメストーリーは闊達に、微妙なところで、モノローグ的世界に行きっぱになるのを回避している。

 美術とアニメートのディテールの高精細解像度が、観客にその映像世界のリアリティーを把握させる手腕は見事で、その世界の奇想に登場人物とともに浸って行ける。

 場内は2〜30代の若者で満席だったけれど、そんな奇想は彼らにも自然に感じられたんじゃないだろうか。

 ポスターのメインビジュアルになっている空のシーン。アニメートの自由な空間描写で大空に描かれたアートが素晴らしい。雲の下、東京の陰鬱な空間に対しての開放感。言語で描けない大空をキャンバスにした、なにものかの描写が本作の白眉。

 詩的モノローグから言語空間として組み立てられていたような初期作品に対して、無意識的な言語化される前の映像的なイメージから構築された最近の新海作品らしい伸びやかな映画世界。

 主人公の選択と東京の街の変貌。水を中心に描いた今夏の『プロメア』『海獣の子供』『きみと、波にのれたら』に比べると(空に対して)水の映像は今ひとつだったけれど、そこは現出した街と主人公たちのこれからのイメージの広がりで、なかなかの傑作になってたと思う。

◆関連リンク
感想 新海誠監督『君の名は。』

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2019.07.17

■感想 「高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの」@東京国立近代美術館

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「高畑勲展 日本のアニメーションに遺したもの」@東京国立近代美術館

"会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
会期:2019年7月2日(火)~10月6日(日)
開館時間:10:00-17:00 ( 金曜・土曜は10:00-21:00 )
休館日:月曜(7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館)、7月16日(火)、 8月13日(火)、9月17日(火)、9月24日(火)"

 本業の出張ついでに一泊して、開催第1週の週末 7/6(土)に行ってきた。情報量が凄いと事前情報を聞いていたので、朝一番10:00に入って、昼飯挟んで約5時間みっちり観てきた。はじまったばかりだったが、館内はなかなかの人混み。まだ入場待ちは発生していない様だったけれど、今後、混雑が予想されるので、じっくりと観たい方は早めの見学をお薦め。

 圧倒的な資料に記憶の中のいろんな映像が刺激され脳内再生される。前半見たところで昼飯休憩しヒートアップした頭を休めた。
 前半、まず『ハイジ』まで観て、ほとんど僕は観たことのなかった直筆の宮﨑駿レイアウト、原画を舐めるように見て、その鉛筆の線に痺れ、頭の中がいい気持ちに(^^)。

◆総論
 僕はアニメーター、特に宮﨑駿とか大塚康生、小田部羊一氏の作画に興味があるため、とにかく彼らの肉筆の絵、その鉛筆の線に目がいってしょうがなかった。まさにその点でもこの展示会は、しっかりとアニメーターの作画をじっくりと観ることが出来て、とても堪能できる。観終わった後も、高畑勲の演出というよりも実はその印象が非常に強い。

 演出家を美術展で取り上げることの難しさ。それがこの観終わった後の印象にも影響しているのかもしれない。

 演出家は、コンセプトを言語化して伝えるのが仕事である。企画書も絵コンテもメモであったり、絵コンテの作画担当への口頭での依頼だったり、いずれも言語が介在する職種である(一部、高畑氏も絵を自身で描かれている展示もあったけれど)。

 それに対して、この美術展は企画メモ、構想ノート等が大量に展示され、加えて高畑氏のインタビュー映像による演出意図のビデオが飾られている。いずれも言葉での表現である。一方、大量のメモを読むのに、美術館の展覧形式は適していない。高畑氏のメモは、かなり読んだつもりであるが、読めたのはおそらく展示で示されている(メモのページがたくさんあって奥にあって見えない資料も数々あり)1/10位だったと思う。

 実は美術というのは、言語化できない領域の芸術表現である、と思っている僕は、美術館へ美術展として観に行っているので、どうしても絵に重点を置いた見方になってしまったのではないかと思う。それが観終わったあと、「東映動画初期作画展」「『カルピスこども名作劇場』作画展」といった印象を強く持ってしまった要因なのではないかと思う。

 言語で表現される演出家の「芸術」領域は、ご本人執筆の本や構想・企画メモ、絵コンテの文字部分を読むことで受け止めることができる。それは美術展というより個人的な読書での鑑賞の方がふさわしい形式のように思う。

 それに対して、演出家の言語化できない無意識の「芸術」領域とは一体なんなのだろう。もしかしたら、美術展で演出家を取り上げる際のポイントはそんなところかもしれない、とぼんやり考えていた。
 もちろん今回の展示が、その構成で描いているように、高畑勲氏が漫画映画界に残したコンセプトは、多大なものであり、その功績は膨大な展示物とその構成によって見事に表現されていたと思う。それはコンセプトとして、先に述べた言語で表現できるレベルの高畑氏の考えである。ここで触れたいと思ったのは、そこから先、演出家の無意識の表現をダイレクトに体感できるような美術展というのはどういうものなのだろうか、と夢想し考えているということです。

 絵コンテが描ける演出家はその絵の鑑賞がそのひとつとして挙げられる。加えてFOとかカット割りの演出を絵コンテで体感というのもあるかも?
 が、そう考えると、後者の場合はやはり出来上がった映像が展示されていれば良いことになる。それは美術展というより映画館もしくは劇場で開催すべき回顧上映といったイベントが適している。

 今回も館内でいくつかの映像シーンは展示されていたが、それはごく限られたシーンであり、全体の印象として演出家のイメージを十分に体感できるボリュームにはなっていない。(これは美術展なのである意味、当たり前なのだけれど、、、)

 同時期に博多で開催されている、富野由悠季展がどういうアプローチをされているか、興味深い。が、しかし静岡に来るまでは僕はいけないでしょう。(今回も冨野氏の『アルプスの少女 ハイジ』の絵コンテが飾られていたけれど、あの絵から映画監督の無意識のイメージが伝わったかというと、ちょっと違いますね。)

 高畑勲展では、そのためのアプローチの一つとして、『アルプスの少女 ハイジ』の第1話のハイジがおんじのアルムの小屋に向かっていくところで厚着の服を脱いでいくシーンの演出意図とその原画/映像展示とか、『かぐや姫の物語』のかぐや疾走シーンの演出意図と原画から映像までの多角的な展示が印象的だった。こうしたところに美術展での演出家の展示企画のポイントがあるのかもしれない。言語化されない無意識の表象としての美術、この定義自体がどちらかというと僕の個人的なものなので、より一般的な意見を聞いてみたいものです。
 皆さんはどう思われますか。コメントいただけると幸いです。

 と書きつつ、このブログでも取り上げているけれど、僕は今まで、映画監督のアート展を実はそこそこ鑑賞してレポートしている。ヤン・シュヴァンクマイエル、デイヴィッド・リンチ、ブラザーズ・クエイ、ユーリ・ノルシュテイン等々。
 彼らは、いずれもその造形だったり、絵画だったり、かなり映像作りにアート的表現が侵食している作家たちである。映画と独立してアートとしての表現も確立されているため、今回の高畑勲展とは一概に比較できないかな、と思った次第。

◆以下、各展示メモ
 いずれも会場で展示物を見て、忘れないように、iPhoneにメモを入力したものです。
 まだ図録がほとんど読めていないため、図録に書かれていたり、もしかしたら当たり前の話もあるかもしれないので、あくまでもこのブログなりの備忘録くらいとして、読み飛ばしてやってください。

◆ナウシカの映画音楽についてのメモ
「王蟲の聖なる役割につける音楽、苦悩を背負っている (しずかな) 根源的生命力
 ミュンベルクウェーベルン→バッハ
              ペンデレツキ」
 と書かれていた。ペンデレツキの陰鬱な曲が王蟲の姿にかぶっていたら、相当な迫力だったかも。

◆ドラえもん企画メモ
 「シリーズの構成は不要であり、いかにバラエティを考えるかだけが重要」。
 物語というよりショートショート的に一話ごと見せていくことの重要性を言われているのでしょうね。

◆ルパン23話 絵コンテ 一冊。ただし展示は表紙しか見えません。
 この中身が見たかった!! ハイジとかと同じく高畑氏が文字、宮崎氏が絵を話し合いながら書いていったのであろうか。
 今回の企画協力者に宮崎氏が挙がっていなかったが、その辺りの具体的な進め方が今後明らかになるといいですね。(NHK「なつぞら」で小田部羊一氏監修でそこらがドラマで再現されると一番良いのですが、、、)

◆やぶにらみの暴君
 後年、監督により再編集された『王と鳥』と高畑氏はどっちを好きだったか、知りたくなる。著作に当たれば両作への感想は書いてあるのだろうか。(『王と鳥―スタジオジブリの原点』『漫画映画(アニメーション)の志―『やぶにらみの暴君』と『王と鳥』』の2冊、読んでみないと)

◆かぐや姫 メモ
 高畑氏が1959年東映動画入社まもなく、内田吐夢監督による『竹取物語』漫画映画化の企画があり、応募はしなかったということだが高畑氏が企画を練った際の資料メモ「ぼくらのかぐや姫」「『竹取物語』をいかに構成するか」の展示。
 「美のアルチザンとしての翁の目つきに対して、かぐや姫が翁を殺してしまう」という過激なストーリー、「特に好きでもなく作りたくなかった」という当初の『竹取物語』への考え方、「音楽劇 影絵」動画として作る考えとかが読め興味深かった。

◆狼少年ケン
 24話 象牙の湖 の彦根氏との一話が高畑氏のお気に入りだったとのこと。
 僕は展示されていた、(たぶん)月岡貞夫氏のコンテの、キリンとダチョウの絵がべらぼうにうまいと感じました。目福(^^)。

◆太陽の王子ホルスの大冒険
 ここのコーナーは、制作当時の資料が相当の量で展示されていて、充実しています。
 香盤表とか、キャラクタの担当表が、制作過程をうかがわせて興味深かった。
 キャラクタについては、「作者、(作画)責任者」がそれぞれ分けて書かれ、ひとりが両方担当する場合(「氷象」は「作者、責任者」とも宮﨑駿)と、「岩男」のように分かれている場合(「作者」 : 宮﨑駿、「責任者」: 大塚康生)があったとのこと。またカットごとの原画の担当表も展示されていた。こういうのがとても興味深いが、残念ながらこの資料は図録に掲載されてなかった。

 岩男と氷象の戦いの 宮﨑駿氏の原画 5枚が展示されていた、凄い筆致で思わず見とれてしまった。
 あと大塚氏の 高畑勲と一緒に描かれた絵コンテ。その生原稿(一部、青焼き)が観られたのも収穫でした。肉筆の迫力は何ものにもかないません。

 あと宮﨑駿氏の提案書 25枚ほど。
 「シータ(ヒルダ)は ホルス(パズーという名はどうでしょう)」という名前を変えてしまう提案とか大胆。
 「全体にリアルなものにしたい」「しかしシンドバット的リアルはエセリアルなり」「東映調反対」なーんてところが変革者としての気概を感じさせます。

 森康二氏による作画修正も、ヒルダの冷たさが 口元や目の線一本のわずかの位置の違いで表現されていて、素晴らしい。

 小田部氏によるホルスの船出シーン。ここも抜群にうまいです。波含めて凄い迫力。人の手によって映像が生み出される凄みを感じさせて、漫画映画の持つ力の一端が表現されています。

◆長くつ下のピッピ
 えんとつ掃除シーンについて、「ピッピ ここで超能力を見せる」というメモ。ピッピが超能力を持っているのは知りませんでした。

◆パンダコパンダ
 宮﨑駿氏の絵コンテ 6枚、雨ふりサーカス レイアウト22枚。
 脚本準備ノートとか含めて、柔らかい線が素晴らしい。メモの「ものすごーく大きな」という表現だとか目が点で表現されているがその表情の豊かさ、このころからハイジくらいまでの宮崎氏の絵の稚気が溢れてるところがとても和みます。波の表現も絶妙で感動。

◆アルプスの少女 ハイジ
 第1話のコンテ。ここでも宮﨑駿の絵が凄い。まさに画面の原型であり、この鉛筆のタッチは、出来上がった映像を超えているのでないかというくらい、味わい深い。
 富野由悠季氏のコンテも#18が展示。

 びっくりしたのはハイジのOP。TBSラジオ アトロク(以下関連リンク参照)で小田部氏が「OPの踊りの参考にするため、宮﨑氏と小田部氏ふたりで踊ったところを8mmフィルムで撮った」と語っていたところ。なんとそのシーンの原画は森康二氏でした。それを小田部氏が修正。自分たちの姿を大先輩に描かせるという二人の若手アニメーター、凄い(^^)!
 その森康二氏原画と作画監督 小田部氏の修正が並べて展示されている。前者の柔らかな描線が良いが、キャラデザが違うため、そこは小田部氏が直しているというのがよくわかる。
 OP映像もプロジェクタで上映され比較できるようになっていたが、ここは是非8mmフィルムも合わせて上映して欲しかったのです。凄まじい展示になったのにと残念ですw。

◆母をたずねて三千里
 ここでも宮﨑氏のレイアウトが多数、見られた。
 船のロープが水面に落ちているシーンに「今日の標語 レイアウトそのままやると失敗す。信ずるな、例え天下のレイアウトでも(字あまり)」と書いてあって、笑ってしまった。

 ペッピーノ一座と寂しそうなマルコの対比。

 アメデオの原画 9枚、宮﨑氏によるとものでこれが凄い。目とアメディオのポーズ。動物の持つ知性とかわいさの表象が素晴らしい。

 「原画参考」と描かれた人形を操るフィオリーナのおそらく宮﨑駿氏による絵も、映像のフィオリーナが持っていた寂しさが生の絵としてそこにあり、どれだけ見ていても飽きることがない味わい。

◆赤毛のアン
 レイアウトは1話〜15話が宮﨑駿氏のはずなのに、展示の絵にはクレジットがない。展示されていたものの中では、46話のみ別の方のはず。何故、ここだけクレジットがないのでしょうね。こちらのレイアウトの絵も味わい深いけれど、前述した稚気というようなものは物語の違いもあり、あまり感じられません。

◆じゃりんこチエ
 レイアウトと背景画が充実。ここでレイアウト図と背景が並んで展示されていたので、じっくりと見てみた。
 以前から思っていたレイアウトでのデッサンと質感の良さが、背景画では何故かドロップしてるような気がするのは、僕だけでしょうか。

 例えば冷蔵庫と家の質感。全体のバランスよりひとつづつの事物を写実として描こうとしているからなのか、レイアウトでのいい味が十分表現されていないと感じた。

 三千里やハイジも、そういう見せ方で宮﨑駿レイアウトがどう背景画で変わったか見たかった。

◆かぐや姫のものがたり
 高畑氏の制作意図から、橋本晋治氏の作画が多面的に表現されている。

◆ミュージアムショップ
 今回の展示原画を使った絵はがきやグッズ類がたくさん売っていたのですが、アニメーターの名前は残念ながら書かれてません。
 作画監督とか画面設計とか中心スタッフ名で代表してクレジットされているのですが、権利的にはどうなっているかわからないけれど、美術館での販売として、絵をこうして売るのであれば、その原画を描いた人の名前をクレジットしてしかるべきではないだろうかと思った。
 展示としては、アニメーターの名前がかなりのボリュウムで今回表記されていただけに、そうしたところは少し残念でした。

 以上、長文で好き勝手にいろいろとすみませんでした。堪能させていただきました。

◆関連リンク
伝説のアニメクリエイター・小田部羊一に聞く「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」秘話に震えろ
神アニメーター、小田部羊一さんへの超貴重なインタビュー【ハイジからポケモンまで】
 TBSラジオ、アフタ−6ジャンクション公式サイト、音声ファイルあり。小田部さんと「高畑勲展」企画アドバイザーで図録の執筆もされている、高畑勲・宮崎駿作品研究所代表 叶精二さんが登場されています。

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2019.06.10

■感想 渡辺歩 監督『海獣の子供』"Children of the Sea"

 
『海獣の子供』 予告2(『Children of the Sea』 Official trailer 2 )
 渡辺歩 監督『海獣の子供』@小牧コロナ、観てきました。

 ファンタジーアニメーションとして最高峰に到達した素晴らしい映画でした。手描きアニメーションと背景美術をCGにより幻想的な映像として昇華させた傑作。

 五十嵐大介 原作、渡辺歩 監督、小西賢一 キャラクターデザイン・総作画監督・演出、木村真二 美術監督ほかスタッフ陣が構築した新しい作品世界に111分間、劇場で浸ることができます。
 
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 まず冒頭の港町の中学生の溌剌とした夏休みの描写に惹きつけられます。特に部活動のハンドボールでトラブって学校から帰宅する主人公 琉花の背景描写の美しさ。手描きの背景を3D-CGモデルの中で縦横に動かすシーンの画面全体の躍動感に打たれます。

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 そして水族館はじめ、海の生物たちの鮮やかで幻想的な息をのむ描写。クジラや夜光虫の描写は、アン・リー監督『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の海のファンタジックなシーンを想起させますが、フォトリアルなそれと比べ、手描きゆえの独特の味わいはそうした世界一級の幻想シーンに勝るとも劣らないものに仕上がっています。

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 物語は、海と宇宙と生命の交点である浜辺を舞台として、哲学的詩的空間を構築しクライマックスを迎えます。この宇宙的な広がりもファンタジー映画としての達成のひとつのキーポイントと言えます。畳み掛けるように描かれた宇宙と海の生命の交感は、原作を読んでない私にはとても一回の視聴では噛み下せない詩的な内容だったので、次に観る時に言語的なセリフと映像描写の相関を少しでも読み解けるように、鑑賞したいものです。

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 映画はアウタースペースとインナースペースをつなぐようなビジョンを展開するわけですが、アニメーションという表現形式が特にインナースペースを描き出すことが得意な映像手法なので、人の手から脳内イメージを直接描き出されることでこのファンタジーをより一層魅力的に見せているのだと思う。

 おそらくこの映画がひとつの手本としたものに同じくアウタースペースとインナースペースの融合というクライマックスをSFXという手法で描いた『2001年 宇宙の旅』があると思うけれど、アニメーションというイマジネーションを直接画面に描写できる手法を活かしきったところで、ある部分においては、それを超える現代的な表現を獲得できているのではないだろうか。と書いたらさすがに褒めすぎだろうか。しかし『2001年』もスターゲートシークエンスは眠くなりますからね(^^;)。

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2019.05.27

■感想 今石洋之監督『プロメア』


映画『プロメア』第二弾PV 制作:TRIGGER

 今石洋之監督、中島かずき原作,脚本、TRIGGER 原作,アニメーション制作、舛本和也 アニメーションプロデューサー 『プロメア』@イオンシネマワンダー で観てきた。

 『グレンラガン』『キルラキル』ファンはもちろん、『スパーダーバース』に痺れた先端アニメ好きは必見。かつ何故かどこか東映動画初期長篇の薫りを感じたのは僕だけでしょうか(^^)。冒頭からのいきなりアクションと物語の立ち上げ方の映画的なところからかな?

 完全オリジナルで冒頭からここまで熱く惹き込まれる作品はなかなかありません。『グレンラガン』『キルラキル』ファンはあのシーンやこのシーンを想起して目頭が熱くなるわけですが、それだけでないパワーを感じる。むしろそれらを観たことのない映像ファンが劇場で椅子から落っこちそうになるくらい驚く所が観てみたい。

 シナリオと声優陣のセリフの熱さとそれを超える作画レイアウト、奇怪な動きと3D CGの快感。とにかくとめどない映像シャワーの圧を感じに劇場へ是非!

 僕は金田伊功ファンとして、今石監督の昇華(消火?w)進化したアクション作画、特に火炎龍と幾何学デザインチックな圧倒的なアニメートを観れただけでも大満足なのでした(^^)。以下に金田伊功氏の『幻魔大戦』の火竜と『プロメア』の予告篇で流されている火竜を比較。本篇には発火描写の中心イメージとしてドラゴンは出まくっているので、本篇ブルーレイが出た後に再度ここは検証してみたいですが、この二つを比較するだけだと、金田作画のタメの感覚が、やはり今でも火龍描写の最高峰と感じさせます。

 とは言え、それだけでなく特に幾何学模様を多用したグラフィカルなアクション描写は、金田伊功を起点にして(後述関連リンク参照)、そうとう先鋭的に進化発展させたものになっている、というのが僕の感想です。
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◆関連リンク

『プロメア』のドラゴンのシーン。0'50"あたり。

金田伊功のドラゴン集成。0'10"あたりに『幻魔大戦』の火龍シーン。

 映画本篇の冒頭映像。

当ブログ関連記事
感想 静野孔文・瀬下寛之監督、ストーリー原案・脚本/虚淵玄『GODZILLA 星を喰う者』『GODZILLA:The Planet Eater』
 金田伊功の龍のアニメートとキングギドラについて、少し書いています。
ガイキングオープニング 金田伊功の作画の進化
 『プロメア』にも影響していると考えられる金田伊功後期のグラフィカル表現の進化について述べています。幾何学模様の作画利用としては当時の先端を切り開いていたと思います。今回の今石監督のグラフィカルな作画演出はそれをさらに先鋭化した感じです。

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2019.01.30

■感想 谷口悟朗監督『revisions リヴィジョンズ』1-2話


TVアニメ「revisions リヴィジョンズ」本PV - YouTube.

 谷口悟朗監督×シリーズ構成 深見真×キャラクターデザイン原案 近岡直×アニメーション制作 白組×CG監督 平川孝充『revisions リヴィジョンズ』1-2話録画見。

 いつか街に破滅的な事象が起こって、その時に自分のSFファンとしての知見が活かせるんじゃないか、という妄想wが現実化した様を描く、白組の3D CGアニメによる本格ロボットアクション(^^;)。

 まずは楳図かずお『漂流教室』、押井守『ビューティフルドリーマー』を彷彿とさせる冒頭。そして直後に校舎屋上で繰り広げられるシビリアンと名付けられた奇想巨大ロボットによる殺戮シーン。この奇想ロボット作画が素晴らしい。蜘蛛と使徒を合体させたような?造形と、抜群のレイアウトとカメラアングルによる迫力のCG映像。

 細部を描き込めるCGモデリングの特性を最大限に活かして、細かなディテイルのメカを、とても手描きでは描ききれないような画角で存分に描き出した白組のCG映像に感嘆。

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 CGの持つポテンシャルを最大限に引き出したCGアニメーターのセンスが最高。第1話で力が入っているとは言え、ヱヴァンゲリヲン新劇場版の最高レベルの作画に近いものがテレビアニメの画面で観られるのも、CG技術の進化の賜物か。

 人物の作画は、モーションアクター/モーションキャプチャーで撮られているようだけれど、なんとなくまだこなれていない感がある。このあたりは『亜人』や『虚淵ゴジラ』で先行して手がけるポリゴン・ピクチュアズが一歩リードというところでしょうか。

 それにしてもスピーディな動きは、CGを用いることで、リミテッドアニメというよりフルアニメっぽいコマ運びを実現しているようで、これも素晴らしい。今までテレビアニメはブルーレイの4倍速で録っていたけれど、これは4倍速ではもったいない出来で、DR録画が必要かもと思っています。というよりいよいよ4Kが必要なのかもw。

 今後の物語の展開と映像が楽しみです。

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2018.09.03

■情報 富野喜幸監督『無敵超人ザンボット3 Blu-ray BOX』発売予定


「無敵超人ザンボット3」SD/HD比較映像PV - YouTube 公式サイト

"初回放送から41年。サンライズ初のオリジナル作品『無敵超人ザンボット3』が遂にブルーレイで登場!ニュープリントマスターポジフィルムから2Kスキャンした最高画質の全編フルHDリマスター映像! 発売日:2018年12月4日 希望小売価格:30,000円(税抜)

【封入特典】ブックレット(200P)※内容予定
・シリーズ構成・設定書、長編映画構成台本など未公開の貴重な資料集
・富野由悠季監督、安彦良和氏へのインタビュー

【映像特典】※予定
・ノンテロップOP/ED
・クローバー「ザンボット3 コンビネーションプログラム」CM集
・番組告知CM

【静止画特典】※予定
・第1話絵コンテ
・完成台本(全23話分)"

 初のブルーレイ化!リンク先の動画を観ると、オープニングフィルム(35mmとか)のみですが、見たことのない鮮やかな色になってますね。(ザンボットはあの淡い色合いが好きなので複雑だったりしますが…) 。

 「幻の長編映画構成台本などの未公開の貴重な資料や、 富野由悠季監督ほかへのインタビュー」、御存命なら金田伊功さんの作画語りが収録されたかもしれないと思うと残念でなりません。

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 また「幻の長編映画構成台本」、あのエキサイティングなストーリーが長篇映画の尺でコンパクトにインパクトを持った映像として語られるというのはファンが夢見ていたことです。どんな話に再構成されているか興味深いです。

20170722003014

◆関連リンク
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2018.08.20

■感想 細田守監督『未来のミライ』


「未来のミライ」予告3 - YouTube

監督メッセージ |「未来のミライ」公式サイト

"子供と、その親の子供時代は、時代こそ違えども、
じつはきれいな相似形を成していることに気づく。
  あれだけ反発した親と全く同じ言葉を、
親になった自分が子どもに言ってしまっていることにハッとなる。
  果てしない子育ての苦労は、実のところ、
自らの子供時代の視点を変えた生き直しなのかもしれない。"

 細田守監督『未来のミライ』@各務原イオンにて観てきた。

 僕には、残念ながら細田作品としてはつまらない部類の作品でした。丁寧な描写、コメディシーン、幻想的シーン等々、確かに見せるシーンは多々あるのだけれど、とても眠い出来。

 要するに、細田監督の子育ての記憶のディテイルを映画として定着させたいの? って思ってしまうようなモチーフがプンプン。うちも子供二人、映画の家族と同じ位の歳の差だったので、いろいろと想い出す諸処の描写は懐かしい。でもなぁ〜。かつての細田作品のエンタテインメントとしての映画の結構がないのが残念でならない。





★★★★以下ネタバレ注意★★★★





 映画冒頭で2回、この家族の住む港に近い街が俯瞰で映る。このシーンで家と海との距離に不穏さを感じたのは僕だけだろうか。

 主人公くんちゃんが前半でトリップする街に薄く溢れている水。ここで僕はもしかしてこの映画の舞台はクライマックスで津波か何かで水に沈む街なのか?と感じてしまった。

 後半駅のシーンで、海抜3mとかの看板が描かれていたり、そうしたほのめかすようなディテイルもそんな気持ちをフックする。

 なんでもない日常、過去から未来への連綿と繋がる人と人の連鎖。それらのかけがえのなさを描いている映画は、幻想シーンで色々な不穏なイメージが描かれることで、そうしたカタストロフを迎えるのか、と思ったのは僕だけの誤解だったのか。

 もちろんそのまま描けば、映画の骨格は、あまりに安直な構成と感じられるだろう(震災後映画とも呼ばれるアレやコレにあまりに似てしまう)。もしかしてそれを醸し出しつつ、最後でそこにまとめるのを避けたのか?? と考えるとクライマックスのカタルシスのなさは合点が行くが、、、、。

 『未来のミライ』と津波のキーワードで検索しても、そうした邪推に触れている感想はひとつも見つからない。なので、たぶん僕だけの妄想だったのでしょう。もしそんなラストを臆面もなくやっていたら、どういうイメージの映画になっていたか、想像してしまうのでした。

 以上から、これはもしかしたら、ひとつの震災後映画なのかもしれない。

 なんでもない日常、過去から未来への連綿と繋がる人と人の連鎖を断ち切る、関東圏、横浜での震災の予感を描いているのかも。ということは、ミライの未来は実は来ないのかもしれない。時空が交差するシーンは、そうした災害により失われてしまった過去と未来の走馬灯なのかもしれない。

 と考えると、細田監督があえて、私小説的にディテイルを描いたのもある程度納得できる気がしてきました。

 とはいえ、僕はこの映画、あまり「好きくない」ですが、、、(^^;)。

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