映画・テレビ

2021.03.03

■感想 イ・チャンドン監督『オアシス』


『オアシス』日本版劇場予告編

 イ・チャンドン監督『オアシス』Amazonプライムで観ました。
 
 これも凄い映画でした。前知識ゼロで観たので画面から目が離せない展開でズシンときました。ネタバレになるので、何も言わないし、予告篇も観ないで頂きたいですがw、『バーニング』はマジックアワーを見事に描いたシーンが印象的でしたが、『ペパーミントキャンディ』も『オアシス』もマジカルな瞬間が素晴らしい映画でした。

 『ペパーミントキャンディ』に続く主役のソル・ギョングと、ヒロインのムン・ソリの力いっぱいの演技が印象的でした。
 そして本作でのマジカルは、主に二箇所。ネタバレはできないですが、ヒロインの"演技"とタイトルのオアシスを示す小道具をネタにしたシーンはとても素晴らしいシーンでした。
O0250037514405514351side
 ただ、僕はムン・ソリの演技については力演だと思う一方で、実はちょっと不自然に観えました。これは同じ脳性麻痺の主人公を描いた『37セカンズ』を観た後だからかもしれません。症状の重さが違うことは別にして、どこか不自然さを拭えなかったというか、、、、。ただしマジカルなシーンの一つとして電車の中や、その他シーンで描かれるヒロインのある姿のために、こうした演技プランにしていた節もあり、やはりイ・チャンドン凄腕の監督さんです。デビュー作含み、残りあと3本、楽しみに観ていきたいと思います。

| | コメント (0)

2021.03.01

■感想 原將人監督『初国知所之天皇』


『初国知所之天皇』予告編
2021年2月14日(日)初国知所之天皇復活ロードショー

"日本/カラー/1973-2021/108 分
監督・撮影・編集・音楽・脚本・主演:原 將人
自宅焼失というアクシデントで燃えてしまった伝説のフィルム『初国知所之天皇』が、 2020年12月に京都市主催のクラウドファンディングで復活した。イマジカラボに保管されたネガから、16㎜フィルム​ニュープリント、デジタルリマスター版がリプリント<復活>された『初国知所之天皇』の世界は、より透明感を帯び,​「​映画 とはなにか? ​」​という命題に寄り添いながら創造性​を​激しく​刺激する。"

 2/13-14にネット配信された原 將人監督『初国知所之天皇』激生ライブを4時間観ました。
 「『初国』以上の映画体験を未だに経験していない」(以下に引用した瀬々敬久監督の言葉)と世に言われている伝説の映画、そしてその2021年バージョンを体感できたのはとても貴重な映画体験であった。

 多分初めてこの映画のタイトルを聞く方は、タイトルに含まれる「天皇」という言葉が観る際の一つの障壁になるような気がします。まず最初に書いておきますが、本作は政治的な偏向は特になく、むしろここから述べるように映画の可能性に挑戦した、映像詩ならぬ音楽のような映画なので、映画の持つ可能性の先端を気にしている映像ファンは是非とも鑑賞されることをお薦めします。

◆感想
 以前僕は、8mmで撮られて16mmにブローアップした映像で構成された2画面マルチ映像、1993年に作られた16mmマルチヴァージョン 1Hour48Min版というのをDVDで観て感想を書きました。大きくはその感想は変わらないですが、今回、配信版は21.1月にコロナ禍でライブが無観客で実施され、その様子をカメラで撮って、原監督自らの手で再構成されたもので、2面マルチというよりは、過去の8mm/16mm映画映像と今回の生ライブ映像を二重映しに合成した新たな2021年版の"新たな"『初国』である。

 前後篇、ほぼ4時間の大作だが、47年前に撮られた映像が夢幻な雰囲気で、さらにそこに生の音楽が被って詩的な空間が広がる。そしてさらに映像も47年前のロードムービーが手前と奥に、時に時間をずらして、さらには二重映しで重層的に描かれている。

 ここまでが正に劇中で述べられている通り、ミュージカル映画というよりは、映画の/映像のミュージカルというか、音楽のように映像がその空間に揺蕩い、そして舞い踊る独特の新しい映画を構成している。

Photo_20210228200701
 さらに特筆すべきは、特に前篇の冒頭に顕著な、今の原監督によるナレーション。
 詩的な言葉というよりか実はかなり哲学的な論考が映画にかぶせて語られる。ここが凄みを出している部分ではないかと今回思った。

 原監督の著作『見たい映画のことだけを』を遅ればせながら最近入手して読み始めたのだけれど、ゴダールとハイデッカーとメルロ・ポンティ等を引用しながら、未来の映画について語る原監督の言葉が、今なお生ライブの形で語られている。

 原監督に一昨年、映像短歌というのを教えて頂いたのだけれど、本作は映画/映像ミュージカルであると同時に、映像短歌ならぬ、映像論考というどこにもない映画を現出させているのが、今回の劇生ライブ版は感じさせた。

 以下に瀬々敬久監督の言葉を引用したが、まさしくどこにもない映画体験が本作の魅力なのだと思う。47年間に渡って原監督が育ててきたこの映画が、今も正に成長しているということで、今後も眼が離せません。

◆以下関連リンク
当ブログ感想 原將人監督『初国知所之天皇(はつくにしらすめらみこと)』DVD

【上映会 21. 3/13 】初国知所之天皇復活ロードショー 上映会

"コロナにより延期になっていた、待望の 劇生ライブ上映会!
 1970年代、国家と社会に全面的に異議を申し立てた全共闘運動が終焉した。当時、映画を志す22歳の原 將人は、既成の映画に対して全面的に異議を申し立て、国家を根底から考える 映画『初国知所之天皇』を製作した。8㎜と16㎜フィルムを併用し、2 台の映写機を切り替えながら自ら映写する8時間に及ぶ長編作品は、同世代、とりわけ映画を志す若者たちに熱狂的に支持され、伝説のフィルムと呼ばれるに至った。その 後、摩耗する8㎜を16㎜に引き伸ばした4時間のリフレイン版を、その20年後には4 時間を左右に切り分けた2時間の2面マルチバージョンが完成した。"

【上映会:3/14】初国完成47周年記念 原 將人 激生ライブ上映会 2021-03-14

"激生ライブ​上映​は『初国知所之天皇』の誕生から47年間ずっと変わらない、原監督の生演奏付きの映画上映である。​このライブ映画の上映スタイルで、会場をまるごと映画空間へと昇華させる「映画体験」を実現させる。今年70歳になる原は、上映会場でナレーションを読み上げ、歌をうたい、ピアノを弾く。至高の仕方で、既成の映画概念を見事に突き破る。日本映画界において『初国知所之天皇』が、伝説と称される所以である。クリエイターたちにも絶大なファンを持つ。これだけのハイクオリティーの映画のライブ上映は、世界中見回しても、原にしかやれない。初国完成47周年を記念する今回の激生ライブ上映会では、2人のミュージシャンとスペシャルセッション。ハイクオリティーの音響設備を備え、6台のカメラ、7チャンネル​で世界へ向け、リアル動画ライブ配信される​。
遠藤 晶美 (ミュージシャン・コンポーザー)
島田 篤 (ピアノ・キーボード演奏・作編曲家・弾き語り)"

『初国知所之天皇』 復活上映会に寄せて 瀬々 敬久より

"『おかしさに彩られた悲しみのバラード』を高校生の時に見て以来、8ミリで映画を撮り始めた。それほど原將人信者だった。大学生の頃、原將人全作品上映の企画をして上映会を行った。その大きな理由は、噂に高い『初国』が見たかったからだ。『初国』は遥かにその伝説を超えていた。映写機と見る者、その空間、それらが混然一体となったまさに映画体験だった。上映という行為でしか成しえない作品、それでしか享受できない感動。あれ以来、僕は『初国』以上の映画体験を未だに経験していない。
瀬々敬久:映画監督『64ロクヨン』『最低。』『友罪』『楽園』『糸』"

 

| | コメント (0)

2021.02.24

■感想 イ・チャンドン監督『ペパーミントキャンディ』


イ・チャンドン監督伝説の傑作『ペパーミント・キャンディー』予告編

"1999年、春。旧友たちとのピクニックに場違いな恰好で現れたキム・ヨンホ(ソル・ギョング)。 そこは、20年前に初恋の人スニム(ムン・ソリ)と訪れた場所だった。仕事も家族もすべてを失い、絶望の淵に立たされたヨ ンホは、線路の上で向かってくる列車に向かって「帰りたい!」と叫ぶ。すると、彼の人生が巻き戻されていく。自ら崩壊させ てしまった妻ホンジャ(キム・ヨジン)との生活、互いに惹かれ合いながらも結ばれなかったスニムへの愛、兵士として遭遇し た「光州事件」...。
そして、記憶の旅は人生のもっとも美しく純粋だった20年前にたどり着く...。

1999年/韓国・日本/本編130分/韓国語5.1ch/ビスタ/原題:박하사탕
(英題:Peppermint Candy)「第3回アジア・フィルム・フェスティバル」NHK国際共同制作作品"


 『ペパーミントキャンディ』Amazonプライム視聴、初見。
 『バーニング』しか観てなかったイ・チャンドンの2000年のNHK共同制作の作品。『バーニング』とは雰囲気は違うけれど、これも傑作ですね。

Pep1side 
 冒頭の衝撃的な展開から、引き込まれて時間線を遡る構成の妙にまず感嘆。丁寧に張られた伏線とその回収、細かな感情の揺れ。見事な映像描写ですね。
 ラストで示される主人公の既視感。ここだけ観るとまるでSF映画の佳作を観てるようなタイムスリップ感が画面に浮遊しています。
 次は同じくAmazonプライムに入ったイ・チャンドン監督『オアシス』を観てみます。

◆関連リンク
■感想 イ・チャンドン監督/村上春樹原作『バーニング 劇場版』
■感想 イ・チャンドン監督『バーニング』NHK放映版

| | コメント (0)

2021.02.22

■感想 山田篤宏監督『AWAKE』


映画『AWAKE』予告編

 山田篤宏監督『AWAKE』刈谷日劇にて観てきました。久々の映画館は、平日だったので客は2人だけ。

 本作は第1回木下グループ新人監督賞グランプリのオリジナルシナリオの映画化作品。AI将棋の電脳戦を描いたもの。
 この手の映画でありがちな感情の起伏を極力抑えた描写がなかなかの佳作でした。

 将棋のコマ運びは端折ってあって、将棋の局面自体はあまり分からせようとした描写にはなってない。この辺りはNetflixのチェスドラマ『クィーンズ・ギャンビット』と時期を偶然同じくして共鳴している感じ。

Awake-dennousen
 欲を言えば、AI生成過程は少しでも機械学習のメカニズムに触れて欲しかった。いかにして“人工知能”が人を超えていくかが画面に表現されてたら、せっかく大学サークル「人工知能研究会」磯野マスオ役に落合モトキという面白い役者を配していたのだから、もっと傑作になったと思うので残念でならなかった。

◆関連リンク
カントク日記 #1 映画「AWAKE」これまでの制作時系列

| | コメント (0)

2021.02.15

■感想 フョードル・ボンダルチュク監督『アトラクション 制圧』『アトラクション 侵略』


映画『アトラクション 制圧』予告編

 フョードル・ボンダルチュク監督のロシアSF映画『アトラクション 制圧』『アトラクション 侵略』WOWOW録画見。

 SFXはなかなかの本格派でハリウッド大作レベルの出来でなかなか眼の保養になりましたw。少しストーリーは大味でご都合主義なのは残念だけれど、そこは脳内補完して楽しめました(^^)。

 『制圧』は冒頭の宇宙船落下から生物的強化スーツ等、素晴らしくゴージャス。そして『侵略』は主演女優 イリーナ・スタルシェンバウムの可憐な強さとラストの寂寞感にかぶさるビリー・アイリッシュ「I Love You」がピッタリで痺れました。
3042066_92020621066_1000x0_80_0_1_cee1ae
 あと『制圧』冒頭で中国で17世紀に30万人が死んだ隕石落下事故について触れられるシーンがあるのだけれど、全く知らなかったのでググってみたら、どうやら「王恭廠大爆発」という事件らしい。「爆発範囲は半径750m、面積2.25㎢に及び、2万人以上の死者を出した。 天然ガス爆発説、隕石落下説、隠れた火山からマグマが噴出した説」ということで原因不明の爆発事件らしい。これも想像力をかき立てられますね。

 ロシアのSF映画らしくない、ハリウッドエンタメ系狙いで肩の力を抜いて楽しめるSFアドベンチャーでした。
 にしても$6.3, $14.8 millionでここまでの大作ができてしまうのってロシアは映画制作費安いんですね。

◆関連リンク
千古謎團!明朝「王恭廠大爆炸」秒殺2萬人

| | コメント (0)

2021.02.10

■感想 ニール・マーシャル監督『ヘルボーイ』(2019)

映画全篇を楽しみたい方は、リンク先はクライマックスシーンなので、観ないことをお薦めします。また相当にグロいので御注意下さい。

Hellboy (2019) Demons in London
 ニール・マーシャル監督『ヘルボーイ』(2019)WOWOW録画見。

 ギレルモ・デル・トロの前2作と比べるとストーリーが未整理で最初、なかなか映画に入り込めなかった。

 素晴らしかったのは、ロンドンに黙示録の世界が現出するリンク先動画のシーン、ここで眼が覚めました(^^;)。

 『ゴールデン・アーミー』でも、そのイメージにリスペクトされた映像が作られていた、ポーランドの地獄を幻視する幻想画家ズジスワフ・ベクシンスキー。本作でのこのクライマックスの地獄の現出も正にベクシンスキー世界を再現している。一見の価値ありです。
Hellboy2019checker
◆関連リンク
当ブログ記事 ヘルボーイ関連
・       ベクシンスキー関連

| | コメント (0)

2021.01.18

■感想 アリ・アッバシ監督『ボーダー 二つの世界』


アリ・アッバシ監督『ボーダー 二つの世界』予告編 

 しばらく更新が途絶えてしまいましたが、今年もボチボチやっていきますので、宜しくお願いします。
 元旦に、2021年の初映画を何にしようか迷って、WOWOW録画ディスクから選んだ、アリ・アッバシ監督、2018年スウェーデンのファンタジー?映画『ボーダー 二つの世界』。

 全く事前情報なしで観たんですが、前半不穏な展開に全然先が読めず、意外なところへ連れて行かれる感が半端でない。
 これは思ってもいなかった映画で、年明けに当たりでした。後味の悪さも、大袈裟に言えば人類の常識を直撃するが故、自分の価値観を揺さぶってなかなかの衝撃です。

 ボカシが酷くて、想像力で補ったんですが、ある意味、設定は違うけれど「ノンマルトの使者」なんかもこのテイストを導入したら凄まじい傑作になるのかもしれない。

| | コメント (0)

2020.12.14

■感想 ジョン・ファヴロー他 監督『マンダロリアン シーズン2』


『マンダロリアン シーズン2』特別映像(字幕版 / 吹替版)| Disney+

 ジョン・ファヴロー他 監督『マンダロリアン シーズン2』6本一気見。

 『エピソード6/ジェダイの帰還』の約5年後、ボバ・フェットが属す兵団の物語で初期SWリスペクトでいい雰囲気と迫力。

 ジョン・ファヴローが多くの脚本と何本か監督してて、ジェットパックで飛ぶシーンはアイアンマン継承で燃えます!

 シーズン1から2はさらにパワーアップしてる感じで、正編レベルの回もあります。
 特に予告にある谷間のスピーダーバイクとのチェイスシーンとか、アクションのレベル、絵づくりとも見事なレベル。あと数回の週末の更新が楽しみです。

 このシリーズのもう一つの楽しみは、エンディングのタイトルバックに流れる各話のイメージアートの素晴らしさ。
 Google イメージ検索 で観られます。いずれも映画本篇と同じくらいの緻密なレベルで描き込まれています。

Themandalorianchapter9conceptart06christ
The Mandalorian concept art by Christian Alzmann.
Themandalorianchapter9conceptart10christ
The Mandalorian concept art by Christian Alzmann.
Themandalorianchapter9conceptart11brianm
The Mandalorian concept art by Brian Matyas.

◆関連リンク
StarWars mandalorian 公式サイト
 イメージボードはこちらで観られます。

| | コメント (0)

2020.12.09

■感想 デイヴィッド・フィンチャー監督『Mank/マンク』&オーソン・ウェルズ監督『市民ケーン』


『Mank/マンク』予告編 - Netflix

 楽しみにしていた久々のデイヴィッド・フィンチャー監督『Mank/マンク』、Netflixの配信が今週末に始まったので、勇んで観ました。
 なかなかの傑作。ゲイリー・オールドマン演じるマンクこと脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツが『市民ケーン』のシナリオを書き上げる経緯を描いた物語。

 『市民ケーン』を観ていないのに、こちらから観るのもいささか情けないんですがw、観てなくてもこの映画の描きたかったものは、オールドマンの素晴らしいドンキホーテな表現によって、充分伝わってきます。

 タランティーノ映画かと思う、言葉の機関銃のようにセリフが飛び交う前半。ドンキホーテと劇中のエピソード「オルガン弾きの猿」に共鳴するこれらのセリフ劇のウィットが映画を魅力的なものにしている。

Citizen_kane_side
 そして「ドルシネア」役アマンダ・サフレッドと口述筆記を担うリリー・コリンズの女優陣の充実も本作の見どころ。『ツインピークス ザ・リターン』でエキセントリックな娘を演じたアマンダのギョロ目な表情の魅力が印象的です。

 フィンチャーが『市民ケーン』の再現を狙ったという映像と音響も、見事に30,40年代ハリウッド映画的な佇まいを備えていて、タイムスリップ感が味わえます。

◆オーソン・ウェルズ監督『市民ケーン』

Citizen_kane_poster_1941_style_b_unresto 
 オーソン・ウェルズ監督『市民ケーン』@ Amazonプライム 初見。
 昨日観たデイヴィッド・フィンチャー監督『Mank/マンク』にちなんで初めて観た、数々のオールタイムベスト1に輝くマスターピース。

 ということでかなり構えて観た。結果は、面白い映画ではあったけれど、僕には残念ながらオールタイムベスト10級の作品とはとても思えなかった。

 「ザナドゥ城」から始まる冒頭は素晴らしいと思った。映画の構成、画面のアングル等、確かにこの時代にここまでという革新は感じられて面白いのだけれど、如何せん、オーソン・ウェルズの不自然な演技がどうもしっくりこない。そして単調な人物描写。

 ストーリーと人物の繊細さとダイナミックさが、どうしても感じられなくて、ちょっと残念なマスターピースでした。
 (先週観た『素晴らしき哉、人生』が素晴らしかったので落差を感じたのかもしれないです)

 『Mank/マンク』と比べると、これは後出しの有利さもあるけれどw、フィンチャーの勝利かと。ゲーリー・オールドマンとアマンダ・サフレッドでリメイクしたら、素晴らしい映画になるでしょうね(^^)。

 2作の連環、フィンチャーの描いたマンクによる脚本執筆が、そのまま『市民ケーン』になるような感じはあまりしなくって、その点は『Mank/マンク』の難しさなのかもしれない。あのマンクの呻吟する執筆シーンの描写と『市民ケーン』の物語がダイレクトに繋がるような構成/エピソードになっていたら、『Mank/マンク』は凄い高みに行っていたかもしれない(充分面白いんですがw)。

| | コメント (0)

2020.12.07

■感想 フランク・キャプラ監督『素晴らしき哉、人生!』


It s A Wonderful Life | Official Trailer
 フランク・キャプラ監督『素晴らしき哉、人生!』@ Amazonプライム初見。名作とは聞いていたけれど、これはクリスマスのファミリー映画であり、ファンタジーでありノアールであるという絶妙の奇跡の一本ですね。

 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ターミネーター』をはじめ、コーエン兄弟『未来は今』等々、脈々とアメリカ映画にその影響が息づいていることがよく分かりました。まさに偉大なマスター・ピースですね。

 ハリウッド映画以外でも『ベルリン 天使の詩』や鴻上尚史の芝居『天使は瞳を閉じて』等々、この作品のイマジネーションは、多くのエンタテインメントにアイディアの核として影響しているようです。

119360090side
 それにしても、SFXもCGも、特殊撮影なしにこれだけ奇想な作品を完成させられるというのは、本当に脚本のアイデアの結晶ですね。日本の映画界も予算がないことで萎縮して、漫画原作や若者向けの恋愛ものを連発するのを辞めて、まだまだ脚本の練り上げでイマジネーション豊かな作品を作れるという可能性をこの映画のDNAとして学ぶといいのかもしれないです、なんちゃって偉そうにすみません。

 あと本作のリメイクはされていないわけですが、現時点既にパブリックドメインということで、ポン・ジュノに現代風のリメイクを作ってもらいたいと思いました。この映画の物語とジュノ監督の新たなアイディアが加わったら、さらに素晴らしい映画が出来上がるようなきがします。

■デイヴィッド・リンチ作品への大きな影響
 あとデイヴィッド・リンチファンとしては、リンチへの大きな影響をそこかしこに発見できたのも収穫。

20201206-210603side
 町山智浩氏が書かれている『ブルー・ベルベット』への影響以外にも、傑作『マルホランド・ドライブ』の骨格は本作の主題の変奏曲とも考えられるし、『ツイン・ピークス ザ・リターン』の世界が大きく座標をずらすところは本作の現代的パスティーシュに見えます。

 果てはリンチが演じたツイン・ピークスのゴードン・コール捜査主任の役の設定、耳が悪く大声で喋るところは、本作の主役ジェームズ・ステュアート演じるジョージ・ベイリーのコピーに見えてきます。

 細かいところでは、ジョージの家の住所がシカモア通り、ピーカーの皆さんはニヤリとする名称です。
 上で述べた影響を受けた作品群との差は、アイディアの借用レベルでなく、リンチはこの映画の本質的な部分を自身の作品の骨格に導入しているところ。根がずっと深いです。

 何にしてもリンチファンが足を向けて寝られないw位に影響を受けた偉大な奇想映画、しかもラストの感動の質はリンチが獲得できなかったもので、いつの日かさらにリンチの幻の進化の一つのイマジネーションを幻視させ、感嘆の一作でした。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧