映画・テレビ

2019.10.07

■感想 トッド・フィリップス監督『ジョーカー』


映画「ジョーカー」US版予告

 トッド・フィリップス監督『ジョーカー』、昨晩、ミッドランドシネマ名古屋空港にて観てきた。
 噂に違わぬ傑作。

 『ダークナイト』当時、ヒース・レジャーを超えるのジョーカーは、今後、ありえないだろうと思ったのだけれど、こう来ましたか。










 以下、ネタバレ注意。




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 この映画は現代社会の問題を見事に転写した異様なハリウッド映画になっている。笑えないコメディ、弱くてかっこよくないヴィラン、正義の姿がどこにも見えない抑圧感....。

 ここにはヒース・レジャーのような絶対悪も、「ダークナイト・トリロジー」「DCエクステンディッド・ユニバース」のような正義のバットマンと彼の美しい両親との過去の記憶も何もない。

 あるのは、幼児期のトラウマで歪んでしまったコメディアン志望の中年のヒステリックな暴発と、集団による無責任な暴力、そして安っぽいマスコミの正義だけである。

 ここで表出している「現在」は、アメリカのポピュリズムによるトランプ政権の出現だったり、日本の社会状況だったりの写し鏡のような、見たくない現実とそのメカニズムである。

 これらを露骨に映画館に現出させた手腕は見事。今後、DC映画がこの延長線に乗ることはおそらくないのだろうと思うけれど、そんなDCユニバースが観たいというマゾヒスティックなファンは、今は僕だけではないだろう。
 
 まずはそんな映画が観たい人間はAmazonプライムの『ザ・ボーイズ』を観るのしかないかもしれないけれど、、、(ちょっと違いますね)。

◆関連リンク
トッド・フィリップス(wiki)
トッド・フィリップス(Amazon検索)
 Amazonプライムで観られる映画がいくつかあります。コメディ主体、観てみたいです。

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2019.10.02

■感想 パク・チャヌク監督『オールド・ボーイ』

オールド・ボーイ 日本語予告
 今更ながら、パク・チャヌク監督『オールド・ボーイ』初見。
 素晴らしく映画的な傑作でした。カンヌでタランティーノが審査員特別グランプリ
に選ぶだけのことはある傑作。タランティーノの諸作よりもむしろ映像による映画的語り口は上を行くのではないかと思ってしまう。冒頭から特に前半、主人公が外に出るところまでの、映画としての映像の鮮烈さは本当に素晴らしい。
 このところ幾つかの韓国映画を観て、今まで食わず嫌いであまり観てこなかった不明を恥じるばかりです。韓国映画ファンの皆さんには何を今更と笑われるのでしょうが、、、。
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 かなり無理のある展開でスリリングな前半。
 それでもそれらが見事に収斂するクライマックス。原作の漫画と大筋は変わらないらしいので、原作の成果なのかもしれないが、奇妙な前半の事件設定から、主人公が真相を知っていく過程、物語の情動の動き、本当に見事としか言いようがない。映画としてのオールタイムベスト10級の作品なのかもしれない。
 後年、スパイク・リーがハリウッドでリメイクしているとのことだけれど、この空気感は東洋の映画でないと表現できない湿気を含んだものではないだろうか。どんな映画になっているか、興味半分で観てみたいものである。

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2019.09.30

■感想 ジェームズ・グレイ監督『アド・アストラ』



Ad Astra: A Conversation with Brad Pitt, James Gray and NASA Officials

 ジェームズ・グレイ監督『アド・アストラ』109シネマズ名古屋 レーザーIMAX、観てきた。
 ストーリーや科学的ディテールは、眼をつぶりましょうw。素晴らしい宇宙映像。これくらいNASA映像的な宇宙の情景を見せてくれる映画はそうそうないのではないか。そして全体に暗鬱な雰囲気の映像が素晴らしい。

 IMAXで124分、2001年に迫る宇宙描写と、ブラピの悩む姿を観たい方にお勧めです(^^)。
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以下ネタバレ、注意。
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 真面目な話、冥王星へ至る冥界的な悪夢宇宙描写はなかなか。こんなダークで何にもない宇宙を描くなら、どうせ受けないはずだから、徹底して We are alone. な絶望感溢れるSF映画にして仕舞えばよかったのに。

 何故だか人力で整備してる宇宙アンテナからの墜落とか、月面のチェイス、全く意味不明の実験ザルの暴走とか、中途半端でストーリーにちっとも貢献してないエンタメ要素を配して、ひたすら宇宙探査の絶望を延々と描いてくれた方がなんぼか良かったか。

 $80-100millionという凄いバジェットは、いかにブラピ制作でも彼の暗鬱な演技だけでは、資金調達は無理だったにしても、どうせなら振り切った暗黒SF映画でカルト化を狙って欲しかったのは僕だけではないはず…。

◆関連リンク

// ArtFX OFFICIEL // Ad Astra MAKING-OF from ArtFX OFFICIEL on Vimeo
 "Ad Astra"のメイキング探していて見つけたCGメイキング。
 名前が紛らわしいですが、ArtFXという大学の卒業制作プロジェクトのCGメイキングのようです。
 ロシアのソユーズとかのCGシーンのメイキングが楽しいです。

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2019.09.23

■感想 「ウルトラQ カネゴンの繭」上映&スペシャルトーク

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ウルトラマンアーカイブ ULTRAMAN ARCHIVES (公式HP)
 「ウルトラQ カネゴンの繭」イオンシネマ名古屋茶屋ライブビューイング観てきた。トークショーはイオンシネマ板橋で行われているのをライブで全国4箇所のイオンシネマで放映したもの。

 大画面で観るクリアなウルトラQは初。特にカネゴンの造形が、素晴らしかった。
 体表の質感、足先の光、眼の表情。繭から生まれる手前の、シュールな空間表現が、奥行きを示す白いラインと、目玉等のモールで、CGの様な空間がアナログで表現されている。

 森永卓郎の金融への興味はカネゴンが起点だったとか、鴻上尚史の新作がウルトラシリーズオマージュの『地球防衛軍 苦情処理係』という演劇だとか、1時間以上のトークもなかなかでした(^^)。

 以下の写真は、ライブビューイング用に撮影タイムが設定されていて、イオンシネマ名古屋茶屋のスクリーンの画面を撮った物。#ウルトラマンアーカイブス というハッシュタグを付けることを条件にネットに掲載するのがOKとのことなので、ハッシュタグ、付けます。

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◆鴻上尚史のトークから
 以下、お二人のゲストのトークから、興味深かったエピソードを箇条書きでメモします。

・当時のカフカ、カミュほかの影響下で、シュルレアリスムの影響が大きい。ラストでカネゴンがロケットのように打ち上げらけたり、パラシュートから金男が現れたりするのが面白い。
・カネゴンは、カフカのザムサの毒虫。
・円谷プロの特撮シリーズでは、怪獣もの以外の『怪奇大作戦』とか『ウルトラQ』が好きだった。特に「1/8計画」とか。「カネゴンの繭」のような子供の潜在意識にお金への執着が強いことだという意識を埋め込むような、現代的なドラマを円谷プロには作って欲しい。
・カネゴンの造形は、成田亨の天才的仕事、というより天才の仕事。
・異物が生活空間に居ることに違和感を持たない。現在は正義という名の下に事象や他人を否定することで異物を排除してしまう。
・子供にとっての何物でもない土地としての空き地をうまく描いている。
・僕はドラえもんで唯一損をしたクリエーター。2千万円の赤字。(ドラえもんの芝居を制作したのが、赤字だったらしい)
・今は、クレーマーの時代、SNSで「正義の言葉」を語る人間が増えた。誰も否定できない様な「正義の言葉」を語ることで、自己主張する人達が増えた。アメリカでは、これを「ソーシャル・ジャスティス・ウォーリアー」と呼んでいる。

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◆森永卓郎のトークから
・自分が経済学をやることになった原点。本来は金は、労働の対価として得られるもの。資本を回して稼いでいるだけの金の亡者が多くなっている。特に六本木周辺に住む、金融資本で稼ぐ人たち。カネゴンはそのアンチと考えられる。
・そうした金持ち層は、労働者を設備投資と同じ物として捉えている。
・自分の息子も禿鷹ファンドに一時居た。カネゴンのDVDが出てなかったので、見せることができず、教育に失敗した。
・カネゴンの足で光っているランプは、足元に落ちているお金を見るため。

◆関連リンク
ウルトラマン温故知新を語る 森永卓郎、鴻上尚史が「カネゴン」から学んだこと

" カネゴンがお金を食べても食べてもきりがないため友達が離れていくシーンについて聞かれると、「これがお金中毒なんです」ときっぱり。「お金お金と言っているとカネゴンになっちゃうぞ。これが私の人生の第一歩」と、自身の金融観に大きな影響を与えたことを明かした。

 最後に森永氏は「カネゴンというのはイソップと並ぶ日本の最高傑作の寓話だと思っている」と強調した。"

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2019.09.16

■感想  ジョン・クラシンスキー監督『クワイエット・プレイス』


『クワイエット・プレイス』本予告

 2018年の大ヒットホラー、WOWOWで録画初見。
 噂通り、なかなか緊迫化のあるホラーになっている。「音を立てる」ことにより恐怖が到来するという設定が音と映像のエンタテインメントである映画に独特の緊張感をもたらしている。

 既にあちこちで褒められている映画なので、何をどう書こうか少し迷ったのだけれど、究極映像研的には、①音の出ないことの徹底で得られる新しい映画の可能性 と ②SFとして観た時の恐怖の存在の設定の可能性 について簡単に書いてみます。そんな映画であったなら、もっと凄みのある究極映像映画になっていただろう的観点(^^;)。エンタテインメントとしては本作のような作りがベターかもしれないですが、奇想映画としてはいろいろともっと工夫の余地があるんじゃないかな、という。

 ネタバレも含みますので、以下は鑑賞後の方のみ、ご覧ください。






 以下ネタバレ注意。

 

 

 

Quietplace
◆①音の出ないことの徹底で得られる新しい映画の可能性

 まず足音等の生活音が結構出ているために、本当に音を立てたら死ぬという状況に見えない。
 そして空を飛ぶ鳥が鳴いているのに殺されない、など不徹底が気になる。
 
 いっその事、全くの無音でないと生きていけないような世界設定にして、その凄い制約の中でどう生きているかを描いた方が面白いのではなかったか。どう食料を確保するか、寝言を出さないようにどうしているか、音楽もなく他の音も全然ない状態で静音の空間が映画館で作られたら、少しの音も出せないという物凄い緊迫感の映画ができたのではないだろうか。

 こうやって勝手に書く事はできますが、どんな物語になるか、想像もできません(^^;)。

◆②SFとして観た時の恐怖の存在の設定の可能性

 クリーチャーが過去のホラー異星人映画の焼き直しにしか見えないのがSFファンとしては残念だったところ。
 視覚のない惑星の生物をどう創造するか、ここを徹底的に描かれた映画というのも観てみたいもの。音の感覚のみを持って進化した得意な生物を構築できたはずなので、奇想な発想としてはせっかくの設定が勿体無い気がしてしまう。

 たとえば参考書としてはアンドリュー・パーカー著『眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く』を推します。
 視覚のない生物の惑星の成り立ち、その惑星からどうクリーチャーが地球へ渡ってきたか。そもそも真空の宇宙空間に対して視覚のない生物が宇宙進出するという技術の進化がありえるのか。
 と考えると、このクリーチャーは、カンブリア紀以前の視覚を持たなかった地球生物がどこかの地球の空間で進化を続け、それが何らかのきっかけで視覚生物への攻撃を開始し、、、、、、。

 続篇が作られるらしいがそんなこともワンダーとして取り込まれた映画になっていることを期待します。

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2019.09.09

■感想 リドリー・スコット監督『ブレードランナー ファイナル・カット』IMAX上映


IMAXで伝説を体感!『ブレードランナー ファイナル・カット』

 リドリー・スコット『ブレードランナー』、作られた時には、遥か37年後の未来だった2019年にIMAXレーザー@ 109シネマズ名古屋にて、2度目の劇場鑑賞。
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 まず素晴らしい音響で奏でられるヴァン・ゲリスの音楽に震えます。そして酸性雨ふるロサンゼルスの雑踏に紛れ込む音の臨場感。
もう何度も観ているこの映画だけれど、大画面での鑑賞は改めて、“映画”としての『ブレードランナー』を体感させてくれる。何度観ても「メモリーズ オブ グリーン」を背景に描かれるレイチェルの哀愁は素晴らしい。

Vangelis - Memories of Green

 「メモリーズ オブ グリーン」はリンク先の名曲です。
 今回、レイチェルが髪を解くシーンで、クリムトの描く女性の顔を想起したのですが、そう見えたのは、先日豊田市美術館で「クリムト展」を観たからでしょうか…。
 クリムトはともかく、名画に匹敵するシーンであることは間違いありません。IMAXの大画面に描かれる、映像に定着された名画。

◆ 『ブレードランナー』とクリムト
 海外のサイトでブレードランナーからクリムトの絵を想起したと書いてる人がいました。
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"Re-watched Blade Runner recently. An all time favorite film. This time certain scenes made me think of art."

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 画像、左がレイチェル。右がクリムトの"Pale Face (Blasses Gesicht)" 1907。
 リドリー・スコットが意識していたかどうか、聞いてみたいものです。

◆ 4K IMAXがお薦めです。

 帰ってきて、2K版を家の4Kテレビで観てみると、圧倒的にIMAX 4Kの鮮明さがわかりました。
 2Kは粒状感とぼやけた感じ、4Kはくっきりでデッカードの服の質感、レイチェルの顔、セバスチャンの肌の具合、街の細部等、全然違ってました。

日本全国版 IMAX® & Dolby Cinema®&Dolby Atmos®シアター情報 (ひろぶろぐ さん)

以下引用
“「グランドシネマサンシャイン池袋」現時点では日本最強のIMAX
・4K IMAX®レーザー/GTテクノロジー(4Kツインレーザープロジェクター)
・25.8× 18.9 mの巨大スクリーン
・12.1chサラウンドシステム

「109シネマズ 大阪エキスポシティ」
・4K IMAX®レーザー/GTテクノロジー(4Kツインレーザープロジェクター)
・26m×18mの巨大スクリーン
・アスペクト比 1.43:1
・12.1chサラウンドシステム

次に良いIMAXシアターは
・4Kレーザープロジェクター
・12chリアルサウンド
を備えた「TOHOシネマズ日比谷」「TOHOシネマズ新宿」「109シネマズ二子玉川」「109シネマズ川崎」「シネマサンシャインららぽーと沼津」「109シネマズ名古屋」「TOHOシネマズなんば (本館)」「109シネマズ菖蒲」「ユナイテッド・シネマ浦添」
他のIMAXは、2K (ハイビジョン)”

 IMAXでも上記劇場以外では2K上映なので、4Kでの鑑賞をお薦めします。

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2019.09.04

■感想 クエンティン・タランティーノ監督『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

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 クエンティン・タランティーノ監督『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』@ミッドランドスクエアシネマ 、心温まる古き良き60年代アメリカ映画/TV文化の果実。

 もちろんタランティーノなので、速射砲のようなセリフの妙は相変わらず健在でノアール風味もあるけれど、でもエンドタイトル含め、幸福なハリウッドを体感できる。

 ディカプリオとブラッド・ピットが楽しんで演じているのも多幸感を醸している。

 この映画を見て、タランティーノが次作に予定してると噂される『スタートレック』が俄然観たくなる。本作でも特徴的な過去作のリミックスによる当時の映画のリボーン、これで60年代SF映画を再構築されたら、古き良きSF映画ファンは悶絶するでしょう(^^)。

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◆関連リンク

タランティーノ版『スター・トレック』実現すれば「宇宙版パルプ・フィクション」に ─ 監督就任の場合、引退作にする意向

"「サイモン・ペッグ(モンゴメリー・スコット役)には困っているんです。実際は何も知らないのに、さも知っているかのようなコメントをしているでしょう。“宇宙版『パルプ・フィクション』にはならないと思う”と彼が言っていたことがありましたけど、なりますよ!(爆笑) 僕がやるんだから、確実にそうなる。宇宙版『パルプ・フィクション』ですよ。脚本を読んで『パルプ・フィクション』的な側面を感じましたし、こんなSF映画の脚本は読んだことがない。こんな要素の入ったSF映画、ありませんよ。だから作りたいんです。少なくとも、そういう意味では唯一無二の作品ですね。」"

タランティーノ監督「スター・トレック4」は宇宙が舞台の「パルプ・フィクション」

" パラマウント・ピクチャーズとJ・J・エイブラムスの製作会社バッド・ロボットは、タランティーノ監督のアイデアをもとに「スター・トレック4(仮題)」の準備を進めている。すでに、マーク・L・スミス(「レヴェナント 蘇えりし者」)が執筆した草稿が存在するというが、タランティーノ自らメガホンをとる可能性について、「『スター・トレック』に関しては、誰かがその質問をするのをずっと待っていたんだ」と前置きし、「まだやるかどうかわからない。ただ、マークは本当にクールな脚本を書いてくれた。直さなくてはいけない点があるが、本当に気に入っている」と話す。

 この脚本には『パルプ・フィクション』の要素がある。こんな要素が盛り込まれているSF映画なんて存在しないんだ。だからこそ、みんなはこれを作りたいと言ってくれている。少なくとも、この点に関してはとてもユニークだからね」と説明する。"

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2019.08.28

■感想 パク・チャヌク監督『渇き』


映画『渇き』予告編

" 2010年2月27日(土)より。
 人体実験によってバンパイアになった牧師と人妻との禁断の情事を叙情的かつ暴力的に描くスリラー作品。『オールドボーイ』のパク・チャヌク監督がメガホンを取り、2009年カンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞。敬虔(けいけん)な神父から一変、血と欲望のとりこになるバンパイアを『シークレット・サンシャイン』の韓国の演技派俳優ソン・ガンホが演じる。人間の業を鋭くえぐり出しながら、ところどころにユーモアなどを織り交ぜた独特の世界観を楽しみたい。"

 前知識なしにWOWOW録画で観たのだけれど、これはなかなかの傑作ですね。
 韓国映画が苦手でパク・チャヌク監督作は『お嬢さん』のみしか観てないので、お恥ずかしい限りなのですが、奇跡 / 神 / 吸血鬼の合わせ技でこのような奇想映画を撮ってしまうとは、並々ならぬ才能ですね。

 猟奇とコメディと宗教というと、日本では園子温監督を思い浮かべてしまうのだけれど、『愛のむきだし』ミーツ『冷たい熱帯魚』みたいな作風ですね。要するに強烈で妙な笑いを誘発する、というか。だけれども人の想いがピュアだったり、、、。その監督には『東京ヴァンパイアホテル』という吸血鬼ものの怪作があるけれど、SF的情景としては、本作のラストシーンの素晴らしい朝焼けシーンには遠く敵わないかも。というくらい、このラストシーンは痺れました。

 ソン・ガンホが『グエムル-漢江の怪物-』『タクシー運転手 約束は海を越えて』での役柄とはかなり趣を変えて(どちらかというと二枚目寄り)、ハードでブラックコメディなバンパイヤ役を見事に演じている。黒でまとめた様相は、ある種、かっこいいとも言える。パク・チャヌク監督の造形力だろうか。

 エンドクレジットにエミール・ゾラ『テレーズ・ラカン』 にインスパイアされたとあるが、以下のようなストーリー。

エミール・ゾラ『テレーズ・ラカン』

"湿っぽく薄汚れたパリの裏街。活気のない単調な日々の暮しに満足しきっている夫と義母。テレーズにとって息のつまるような毎日だが、逃れる術とてなかった。だが彼女の血にひそむ情熱の炎はそのはけ口を見出せぬまま、ますます暗い輝きを増してゆくのだった。そうしたある日、はじめて出会った夫の友人ローランにテレーズのまなざしは燃える。"

 まさにテジュの家族設定に活かされているのですね。
 最後にヒロイン テジュを演じたキム・オクビンの妖しい美しさが本作の白眉、と書いて、本稿を終えたいと思います(ただ好きな女優さんになったというだけですw)。

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2019.08.26

■感想 ジョン・ワッツ監督『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』


『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』日本版特報|Spider-Man: Far From Home Trailer
 ジョン・ワッツ監督『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』@ ミッドランドスクエアシネマ名古屋空港、吹替版観てきた。
『エンドゲーム』後のMCUを見事に描いた快活な物語に拍手喝采。あの後をこう継いで行くケヴィン・ファイギとジョン・ワッツの手なみに唸らされます。

 ちょうどこのお盆休みに『ザ・ボーイズ』シーズン1の8本@ Amazonプライムビデオ を観終わった後だったので、MCUがどんな風に観れるのかも期待/不安だったのだけれど、ヒーローの虚構性とヒーロー未満のスパイダーマンを描くことで、見事に『ザ・ボーイズ』後のヒーロー像も垣間見せていた傑作でした(^^)。

スパイダーマン、MCUからの離脱をソニー・ピクチャーズがTwitterで公表

" ソニー・ピクチャーズはTwitterで「本日のスパイダーマンについてのニュースは、ケヴィン・ファイギがフランチャイズ(の製作)に参加していることについての最近の協議で生じました。残念ではありますが、スパイダーマンの次回の実写映画に彼が総合プロデューサーとして続投させることができないというディズニー側の決定を尊重します」と声明を公表している。"

 先週、このニュースが流れましたが、これが本当だとしたら残念です。特にアベンジャーズからのスパイダーマンの不在は寂しすぎます。
 ただ映画ファンとしては、ケヴィン・ファイギのマーベル映画での貢献度合いが知りたいので、スパイダーマン マイナス ファイギで作られた映画が今までとどう変容するか/しないかで確認できるという楽しみができたと思って、諦めるしかないですね。

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2019.06.26

■感想 山田太一『男たちの旅路』最終話「戦場は遥かになりて」他

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 山田太一『男たちの旅路』、ちょっと前にNHKで1-3話が再放送された際に観はじめて、録画してあったDVDで全話を十数年ぶりに見直した。
写真は最終話「戦場は遥かになりて」(BS2での再放送録画版)のOPと冒頭部分。このドラマが放映された1982年の4年前にヒットした『さらば宇宙戦艦ヤマト』が10カットほど動画で流される。(しかもノンクレジットなのである。気骨があったNHKということだろうか?)

 鶴田浩二演じる特攻隊生き残りのガードマン会社の吉岡司令補が、第一作「非常階段」で若いガードマンに戦争体験を美化して語るのに対して、最終話「戦場は遥かになりて」では戦友に美化してはいかん、あの頃俺たちは…と戦争に突入して行った日本の実情を生々しく語らないといけない、と話すようになり変節している。これは第4部の1話「流氷」で水谷豊演じる杉本陽平が吉岡を北海道から連れ帰る際に、あんたらには戦争がどんな風に起こったのかを語る責任がある、と訴えたシーンの、山田太一の結論と見ることができる。

 ヤマトの映像はOPで流されるだけで、当時の世相についてもドラマ中で何も語られないが、この吉岡の発言から、ヤマトの特攻シーン、当時ブームになり好戦的な雰囲気が(特に制作側に)あったこと等から、批判的に引用されてるのは明らか。

 よく引用が許されたものだと思う。DVDでは戦争映画のポスターか何かに差し替えられてるらしい。ネットにもこのOPの画像は存在しないようなので、1つの記録として掲載します。

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 この物語が上記のような吉岡の戦争感の変節を描いたものなのに、なぜかドラマのクライマックスは自衛隊協力のUS-1を使った、このドラマシリーズらしからぬスペクタクルな雰囲気で終わっていく。もちろん自衛隊が救命隊として日本の生活に軍事的でなく有益に働いている、という非戦的な描写と考えることもできるけれど、なんだかこの勇壮な雰囲気でドラマの本筋が鑑賞後に余韻としてあまり残らない感じになっていたのは何故なのだろう、とか考えてしまった。

 最後に個人的なこのドラマの影響について蛇足的に書くと、学生時代に熱中して見ていた『男たちの旅路』を今回全篇観直して、本業の会議の時に時々自分の中に沈殿した司令補が熱い発言(もちろん戦争についてではないですw)をしてしまうのを感じたりするのでした(^^;;)。

◆関連リンク
「男たちの旅路スペシャル・戦場は遥かになりて」(ブログ「フルタルフ文化堂」さん)
 上記感想は、リンク先のブログ記事を参考にさせて頂きました。

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