書籍・雑誌

2009.11.09

■古川日出男「どのあたりが犬の視線か?」
 (『4444』河出書房新社より)

4444 4444 古川日出男|河出書房新社

当ページのテキストは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス.の下で提供されています。「クレジット表示」「非営利利用のみ」「改変禁止」のライセンス条件内であれば、あなたのブログなどに自由に転載していただけます。

 古川日出男の小説がネット掲載されている。
 現在、掌編が18本。そしてそれは全文転載も可。

 というわけで、以下、我がブログ初となるプロの作家の小説掲載です。しかもあの古川日出男。これが全文です。引用ではありません、お楽しみください。

16 どのあたりが犬の視線か?|4444 古川日出男|河出書房新社

 この話を聞いた人間はいない。彼女は毎日身長が変わったそうだ。それは二十一歳の誕生日とともにはじまったそうだ。毎日、目覚める瞬間まで「何センチ」 になっているか、わからなかったそうだ。ただし一一一センチより小さかった例はないそうだ。最大で一八二センチだったそうだ。この現象には精神的ななにご とか、たとえば傷が関与しているのだろうか? わたしたちは以前、年齢とともに身長をのばしていた。すなわち年齢と身長はほぼ比例していて、それが十代のある時点までつづいたのだ。その時点をすぎるや、年齢だけはさきに進んで、身長はその場から一歩も動かなくなった。この事実を彼女は重く受けとめすぎたのだろうか? 朝、一五三センチのとき、彼女は中学時代の自分を感じるが、一三〇センチだと小学時代のそれも半ばに戻ってしまうし、土曜日の朝に身長一七八 センチだったりすると仮想の二十八歳・ビジネスウーマンを生きているような気になったそうだ。しかし本当は、彼女は犬になりたかった。x歳の自分よりも、すなわち(たいていは)過去に戻る自分よりも、大型犬の視線の高さや、中型犬のそれに。しかし、なかなか体高一一一センチ以上の犬はいない。だとしたら、何センチになって目覚めたらよかったのか? 彼女はいまは身長が変わらない。そして起床のたびに絶望している。この話を聞いた人間はいないのだから、あなたはこの話を聞いていない。

◆関連リンク
EnJoe140 (EnJoe140) on Twitter
 こちらは円城塔氏のtwitter小説。傑作が目白押し。ハッシュタグは #twnovel 。
雑誌「フリースタイル」で相対性理論が各界の人々とコラボ

 ポップカルチャー誌「フリースタイル」10号が11月11日に発売。(略)
 やくしまるえつこがイラストを描いた古川日出男の書き下ろし小説「深夜バス、バスジャック、ジャックお座り」

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2009.10.20

■新刊メモ『フルカワヒデオ スピークス!』『歌の翼に』
『蛮幽鬼』『ジョン・マーティン画集 復刻版』『マックス・フライシャー アニメーションの革命者』

古川日出男『フルカワヒデオ スピークス!』(エクス・ポ・ブックス)
エクス・ポ日記 : エクス・ポの書籍版が始まります  公式Twitter

音楽、戯曲、詩、、美術、ダン ス、ファッション……疾走し続ける作家・古川日出男を作家たらしめている核が明らかになる! セッションの相手は、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、iLL(中村弘二)、坂本慎太郎(ゆらゆら帝国)、黒田育世、桑原直(sunao kuwahara)、大竹伸朗、和合亮一、岸本佐知子、佐藤良明、佐々木敦他の11人。

□刊行記念ライヴ『フルカワヒデオ200ミニッツ』 10月23日(金)午後7時開演(午後6時開場) 会場:渋谷O-Nest

□古川日出男トークショー&サイン会 11月7日(土)午後4時開演 会場:タワーレコード渋谷店7F

  『聖家族』以来の新刊。小説が読みたいのだけれど、これは対談本。
 合わせて、ライブ等イベントがあるようなので、関東の古川ファンはお見逃しなく。僕はいつものYoutube待ちですね(^^;)。

: トマス・M・ディッシュ, 友枝康子訳『歌の翼に』(未来の文学)

 サンリオ文庫の改訂新版。僕は未読なので、これは楽しみ。
 この本の未来の文学続刊のところに『ダルグレン』は第Ⅲ期の刊行に変更との記載。ショック!!

中島 かずき『蛮幽鬼』

 復讐の鬼となった男がもくろんだ結末とは…。謀略に陥り、何もかも失って監獄島へと幽閉された男。そこで出会ったもう一人の男。二人の思惑が重なったとき、新たな運命は動き出した。壮大な陰謀が渦巻くなかで繰り広げられる復讐劇。

 『グレンラガン』の、というか「劇団☆新感線」座付作家 中島かずき氏の歌舞伎台本。
Photo
INOUEKABUKI SHOCHIKU-MIX『蛮幽鬼』(ばんゆうき)公式ウェブサイト  公式ブログ
 この公式サイトの画像、なかなかワイドスクリーンバロックな雰囲気を醸しだしています。この芝居も観たいなー。大阪公演は予定されているが、名古屋はないのであった。

『マックス・フライシャー アニメーションの革命者』リチャード・フライシャー(作品社)

ベティ・ブープ、スーパーマン、ポパイの生みの親、ディズニーに比肩する天才アニメーターの栄光と挫折の生涯を、息子である名映画監督リチャードが温かく、感動的に描き出す。アニメファン必読の決定版評伝!【アニメーション黎明期の超貴重図版満載!】

 出版社サイトにもあまり詳しく内容は紹介されていないが、これも楽しみな一冊。

『ジョン・マーティン画集 復刻版』 〈エディシオン・トレヴィル〉

バビロン等の古代文明の威容、その墜落と傲慢に下された怒れる神々による大洪水や天変地異・・・ 「狂えるマーティン」の異名をとりモダニズムの中に忘れられた画家が現出させた恐るべき終末のヴィジョンは、経済危機なのか戦争なのかあるいはウイルス禍 なのか世界が未曾有の危機に向かって突き進んでいるかのように感じられる昨今、そのヴィジョンが現実のものとして迫りくる恐怖を覚える。 美術が美的価値とともに世に対し警告を発する力があるとすれば今まさにジョン・マーティンをあげなくてはならないだろう。 版を重ねる『ベクシンスキー画集』や復刻が待ち望まれてきた『モンス・デジデリオ画集』に通じるジョン・ マーティンの終末的世界観を、50点の作品群にて紹介。

editions treville | アポカリプスの画家ジョン・マーティン.

19世紀に活躍したイギリスの歴史画家ジョン・マーティン最晩年にして畢生の大作「神の大いなる怒りの日」。それは新訳聖書の最後に配された唯一の預言の書『ヨハネの黙示録』に登場する「審判三部作」のひとつである。

 『ベクシンスキー画集』に続くトレヴィルの復刊。上記リンクで荘厳な幻想画をお楽しみください。  

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2009.10.15

■新刊メモ 西宮大策写真集『hi mi tsu ki chi ヒミツキチ』

西宮大策写真集『hi mi tsu ki chi ヒミツキチ』(小学館)

東京近郊の少年少女たちは、今も、ナイショで「秘密基地」を作っていた。 新進気鋭の写真家・西宮大策が2年半の間、子供たちに聞いて回って、探しに探して歩き、 ようやく辿り着いた、大切でナイショの場所。 「へんてこ」で、「たいしたことのない」、けれども「感動的な」正真正銘、本物の秘密基地。 作家・川上弘美、ミュージシャン・甲本ヒロトが絶賛した奇蹟の写真集。

 今年6月にこんな素晴らしいコンセプトの本が出ていたようです。上の小学館のHPをクリックすると、秘密基地探索ができる仕掛けになっています。

 ワクワクしますね「秘密基地」。

 僕の子供時代の「秘密基地」は、近所の空き地の草むら、工業高校の倉庫、農協のガスボンベ置き場、そして自動車修理工場に放置された乗用車だったりしました。特にお気に入りはこっそり入り込んでいたガスボンベ置き場。そこにはボンベを上げ降ろしするエレベータのようなものがあり、気分はサンダーバードだったわけです。
 その頃の写真が残されていたら、きっと甘酸っぱく懐かしいのでしょうね。この写真集で秘密基地を写真家に探り出された子供達は、大人になってこの本のページをどんな気持ちで開くのでしょうか。

 あと蛇足ですが、僕の現在の「秘密基地」は、何を隠そう、ここ「究極映像研」。
 だからリアル世界の知り合いには極ひとにぎりの仲間にしか伝えてません(^^)。いつだって秘密基地の所在は、まわりの大人には秘密なのです。

 現代の子供達もこっそり仮想空間にもいっぱい秘密基地を作っていそうですね。

◆関連リンク
Daisaku Nshimiya 西宮大策公式HP

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2009.10.02

■新刊メモ『時の娘』『イリュミナシオン』『地球移動作戦』
 『バレエ・メカニック』『全滅脳フューチャー!!!』

中村融『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』(東京創元社)

本邦初訳3編を含む名作9編。
ウィリアム・M・リー「チャリティのことづて」
デーモン・ナイト「むかしをいまに」
ジャック・フィニイ「台詞指導」
ウィルマー・H・シラス「かえりみれば」
バート・K・ファイラー「時のいたみ」
ロバート・F・ヤング「時が新しかったころ」
チャールズ・L・ハーネス「時の娘」
C・L・ムーア「出会いのとき巡りきて」
ロバート・M・グリーン・ジュニア「インキーに詫びる」

 これら作品、今まで一篇も読んでません(^^;)。時間SFとロマンチックというのはベストマッチかと。にしてもアンソロジスト中村融氏のイメージと合いません(失礼(^^;))。それだけに、どんな作品が選ばれているか、期待。

山田 正紀『イリュミナシオン 君よ、非情の河を下れ』 (ハヤカワ・オンライン)

 アルチュール・ランボーを追え! ランボーの詩に隠された、時空を凌駕する秘密を、使徒パウロが、エミリー・ブロンテが、ヴェルレーヌが読み解く。 内戦に揺れる東アフリカの国家サマリスの国連領事・伊綾剛に与えられたのは「『反復者』を追って、『非情の河』を下れ」という任務だった。人類の理解を超越した侵略者との戦いを、ランボーの詩に乗せて奏でる華麗なる幻想ハードSF。

 山田氏のあとがきを読むと燃えます。
 「ワイドスクリーンバロック」をはじめて書けたかもしれない。これからが「想像力の限界に挑む」本番かもしれない。老いぼれてはおれない。という趣旨のことを書かれています。
 山田節健在か。

山本 弘『地球移動作戦』 (ハヤカワ・オンライン)

西暦二〇八三年、接近する新天体により、地球は壊滅する運命にあった。天才少女・魅波は人工意識コンパニオンのマイカとともに、地球を救う大計画に挑む??実力派が満を持して贈る本格宇宙SF 西暦2083年、超光速粒子推進を実用化したピアノ・ドライブの普及により、人類は太陽系内のすべての惑星に到達していた。

 『地球移動作戦』(山本弘氏HP記事)

 東宝映画『妖星ゴラス』(1962年)を初めてテレビで見たのは中学生の時。南極にロケットを建造して地球を動かしてしまうという壮大なスケールの物語に、「すげー!」「面白ええーっ!」と興奮したものでした。
 それ以来、「いつかこれを小説にしてみたい」と思っていました。その夢がようやく叶ったわけです。(略)
 この作品を書くにあたり、ピアノ・ドライブ、拡張現実、ACOM、クレイトロニクスマシンなど、原作にない要素を大量に投入しました。『ゴラス』にあったいくつかの科学上の問題点も克服しました。アクションや萌え要素を盛りこみ、徹底的に楽しめるものを目指しました。
 これは「新しい作品」でなくてはならなかったからです。
 僕は誇りを持って言います。『地球移動作戦』はノスタルジーではなく、21世紀の新しいSF作品であると。僕のオリジナリティにあふれていると。

 東宝特撮『妖星ゴラス』を現代に甦らせる!! なんと壮大な試みでしょう。
 そして今までの山本作品で見事に描かれている人工意識とか、ARとか、重力場等のハードSF要素等々、、、ワクワクするラインナップ。これは読まないわけにはいかないでしょう。

津原 泰水『バレエ・メカニック』(ハヤカワ・オンライン)

造形家・木根原の娘・理沙が昏睡状態に陥ってから九年、東京ではハイテク機器が暴走し、巨大な蜘蛛が跋扈していた──『妖都』他の希代の幻視者が、テクノロジーと生命の交錯を描く連作長篇。

海猫沢めろん『全滅脳フューチャー!!!』

 オタクにしてホスト、そして・・・ぼくが人類を全滅させる!?
 
 著者の特異な経歴で「本人」連載時から話題を集めた青春小説が、カバー作品制作に気鋭のアート集団Chim↑Pomを迎えてついに完結!
 実話をもとに描かれる、神なき時代を生き抜くための「新しい希望」!極限の問題作!

 この二人の作家については一作も読んでいないのだけれど、本屋で見て、惹かれました。
 今月の早川書房のラインナップ、なんか期待です。

◆関連リンク
当Blog記事
山本 弘 『アイの物語』
山本弘『MM9』

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2009.09.17

■新刊メモ 『映像+ 7 ラ・マシン特集』『Character AGE 秘密基地特集』他

La_machine_elephant 『映像+ 7』 (グラフィック社)

特集 巨大マシンの現場
 ヨーロッパを中心に活躍する巨大スペクタクル・アート劇団「ラ・マシン」を特集。横浜「開国博150」でも話題を呼んだ、巨大スペクタクル・アート劇団のフランス中部ナント市の工房内を取材、代表・フランソワやクルーたちにインタビュー。、デザイン画などを掲載する。

 このBlogでも何度か紹介している巨大スペクタクル・アート劇団「ラ・マシン」の全74ページに渡る特集。横浜「開国博150」で世間に知られたとはいえ、マスメディアへの露出としては極限定的だっただけに、デザインスケッチ・インタビュー他、このボリュウムの特集はたいへん貴重。
 ファンの方はお見逃しなきように。

Himitsu_kichi 『Character AGE VOL.3』

 これはネットにもあまり情報がないのだけれど、本屋で観たら、『サンダーバード』他の秘密基地を特集している。
 60,70年代SF少年少女にはたまらない企画。『サンダーバード』秘密基地プラモは、買ってもらえなかった憧れの品No.1です(^^;)。

 オトナ買いしたいけれど、きっと邪魔になるだけなんだよなー。
 というわけで本で写真を持っていれば十分なのかも。

ポストメディア編集部『ドリル大全』 
 これも血わき肉踊るムック。
 僕はやっぱり『サンダーバード』のジェット・モグラが一番です。

いしかわ じゅん『秘密の本棚―漫画と、漫画の周辺』 
 マンガ夜話で秀逸な漫画論を展開しているいしかわじゅんのエッセイ集。
 いしかわじゅんの本棚は是非のぞいてみたいものです。

◆関連リンク
【著者に聞きたい】いしかわじゅんさん『秘密の本棚 漫画と、漫画の周辺

「新聞や雑誌などに書ける分量は400字詰め原稿用紙1、2枚程度。書き切れないことが多かった。でもネットだと分量の制約がなく、自由に書ける。最初5枚程度でと依頼されたが、結局1本あたり8~10枚は書いていました」

・朝日カルチャーセンター『秘密の本棚』出版記念講座-漫画青春記-

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2009.08.13

■感想 村上春樹『1Q84 BOOK1<4-6月> BOOK2<7-9月>』

1q84_double_moon いまさらベストセラーの書評というのも気がひけるのだけど、『1Q84』の感想。
 いろいろとメモとっていたら、結構長文になった。ネットで長文は苦痛なので、興味のない向きは、右の写真だけ見て、読み飛ばしてもらえれば幸い。

 写真はNASAの写真を加工したもの。あなたの1Q84にどれだけイメージが合っているか、、、。
 あれ、全然雰囲気違うぞ。そーです、僕も小説とはイメージ合わないなー、と思いつつ掲載(^^;)。このイメージではSF、また別の物語ですね。

★★ネタばれ注意★★  (一応、御約束)

◆総論 紙の月 ではまず『1Q84』冒頭のエビグラフから。

ここは見世物の世界
何から何までつくりもの
でも私を信じてくれたなら
すべてが本物になる

It's a Barnum and Bailey world,
Just as phoney as it can be
But it wouldn't be make-believe
If you believed in me

"It's Only A Paper Moon"
 (E.Y.Harburg & Harold Arlen)

 『ペーパームーン』のこの歌詞の引用から開幕した今のところ二冊の長編は、脆弱な基盤に構築された現実が、あるポイントで幻想世界へと分岐していく様子を描いた物語である。
 この歌詞のとおりに、村上の書く我らが現実は見世物のようだし、そこに描かれた二つの月を持つ世界は、紙のように作りものだけれど、天吾と青豆の10歳の時の教室の記憶が、幻をひとつのリアルにする。

◆村上春樹の空気感

 この本が何故売れたか。大げさにいえば現実が村上春樹的世界に近づいている証左ではないか。
 人との深いかかわりを遺棄して希薄化していく現在。しかしそれを望んだにもかかわらず、相反して拡大する底知れぬ不安。
 これって、僕らがそのデビュー作から読んできた村上作品そのもののコアのような気がする。デビュー当時、僕は凄く村上の登場人物が、浮世離れした者にみえて、実は馴染めなかった。5年ほど前に『風の歌を聴け』から再度、読み直してみた。まるで空気のように今度は違和感なく読めた。感覚が小説世界に馴染み、すんなりと自分に入ってくるし、次の作品を空気を求めるように読みたくなって一気読み。

 村上が書いていた乾いた人間関係の物語が現実に近づいていて、そして人々がそれを空気のように求めた。その根底には、希薄化した人間関係だけでは辛くなっている部分に、何らかの対応策が述べられているのではないか、という期待も無意識のうちにはあるのじゃないかな、というのが僕の見方。
 そして人間関係だけでなく、自分自身との関係も希薄にしていくような、世界に対する違和感といったものが村上小説のコアにある。

◆登場人物の持つ違和感

「(略)私たちは自分で選んでいるような気になっているけど、実は何も選んでないのかもしれない。それは最初からあらかじめ決まってい ることで、ただ選んでいるふりをしているだけかもしれない。自由意志なんて、ただの思い込みかもしれない。(略)」(青豆)
「もしそうだといたら、人生はけっこう薄暗い」(あゆみ) (P344)

「(略)空に浮かんだ月は同じでも、私たちはあるいは別のものを見ているのかもしれない。四半世紀前には、私たちはもっと自然に近い豊かな魂を持っていたのかもしれない」
「(略)人間というものは結局のところ、遺伝子にとってのただのキャリアであ
り、通り道に過ぎないのです(略)」(老婦人 P385)

 では村上の登場人物は、どのように世界に対して、自分に対して違和感を抱いているのか。今回、上に引用したこのような部分で顕著に描かれていると思う。

 自由意志のない意識の問題を、遺伝子の乗り物であるという観点から諦観として描いている。 そして青豆の生き方に顕著に示された体の自然な行動の肯定(但しそれは彼女の幼い日の親による宗教的制約を背景にしているのだが、、、)。

 ここにあるのは、自由意志という意識偏重による近代人の持つアンビバレンスそのものだろう。それによる世界の薄暗さの認識と、そこに端を発した自分への不信と他人との距離感のスタンス。
 自由意志によりコントロールできないコミニュケーションの不全からの回避。これが自分や他人に対する距離感になり、そして逆に自由意志らしく見える自然体を肯定することになる。

 ただここで僕はなんらかの齟齬を感じる。
 自由意志を妨げているのが、自然体の自分ではないのか。諦観を持って否定しているようにみえる自由意志を妨げている自分の中の自然の動き、これを肯定しているために、意識優先なのか、それを否定するのか、といったところに齟齬が生じている。この齟齬そのものが問題だということを村上は書こうとしているのか。上の引用部分もそうだし、小説全体からもそのようなスタンスは実は浮き上がってきていない。

 意識偏重と書いたように、自由意志を優先しようとする近代の問題そのものは村上は肯定しているように思う。しかし体感的に実は自然体であることを本来の姿として描こうとしている。本来は意識の否定につながる自然体である姿の肯定という齟齬をかかえて。

◆齟齬をどう超えていくか。続編への期待

 ここが現代的な部分かもしれない。しかしその齟齬をどう超えていくのか、というのが本来の主題であるはずなのに、その部分はまだ手つかずだ。テーマの一つになっているカルトの問題も、この齟齬の上に無理やりに回答らしき姿を提示する現代的な事象にすぎない。そこを掘っていくことで、超える形を描けるかといったらなんか違うのではないか。リトル・ピープルに騙されてはいけない(^^;)。彼らはたぶん自由意志とは相反するところのものを象徴する存在なのだろうけれど、リトル・ピープルの否定からは、この齟齬の問題には、けりは付かないと思う。

 そのとき青豆が月に向かって何を差し出したのかはもちろんわからない。しかし月が彼女に与えたものは、天吾にもおおよそ想像がついた。それはおそらく純粋な孤独と静謐だ。それが月が人に与え得る最良のものごとだった。(P390)

 月は相変わらず寡黙だった。しかしもう孤独ではない。(P394) 

 月に象徴されるものは、青豆の生活として描かれた「孤独と静謐」を尊ぶ自然体でフィジカルなあり方なのだろう。しかしそれは意識と齟齬した紙の月なのかもしれない。この紙の月を真実に変えるのが天吾との邂逅であるはずだ。自由意志と自然体との齟齬の超越、これが続巻のメインテーマであることを楽しみに待ちたい。

 青豆をみつけよう、と天吾はあらためて心を定めた。何があろうと、そこがどのような世界であろうと、彼女がたとえ誰であろうと。(P501)

◆関連リンク
・当Blog記事 感想 池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』

  この本で西洋近代の「我思うゆえに我あり」という意識尊重主義(?)に対して、科学的な最新の実験結果を示しながら、大きな風穴を開けていることは確か (^^;)。(略)
 今回は自由意志というものがどういうものか、ということをデータで示している部分で、かなり突っ込んだ意識についての認識を示している。

 自由意志に関して僕の関心は、この本の内容にダイレクトにつながっていきます。
【『1Q84』への30年】村上春樹氏インタビュー(上) : 出版トピック : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

(略)地下鉄サリン事件で一番多い8人を殺し逃亡した、林泰男死刑囚のことをもっと多く知りたいと思った。(略)ごく普通の、犯罪者性人格でもない人間が いろんな流れのままに重い罪を犯し、気がついたときにはいつ命が奪われるかわからない死刑囚になっていた――そんな月の裏側に一人残されていたような恐怖を自分のことのように想像しながら、その状況の意味を何年も考え続けた。それがこの物語の出発点になった。

自分のいる世界が、本当の現実世界なのかどうか確信が持てなくなるのは、現代の典型的な心象ではないか。9・11のテロで、ツインタワーが作られた 映像のように消滅した。あれだけあっけない崩壊を何度も映像で見せられているうちに、ふとした何かの流れで、あの建物がない奇妙な世界に自分は入り込んだ のだと感じる人がいてもおかしくはない。

イッツ・オンリー・ア・ ペーパー・ムーン( It's only a paper moon ) - ブルームーン
 ペーパームーンのナット・キング・コールの歌の動画と歌詞
今週の本棚:沼野充義・評 『1Q84 Book1、2』=村上春樹・著 - 毎日jp(毎日新聞)

 とはいえ、第二巻まででも、すでに物語の力は相当なものだ。面白い小説を読んだ後、世界がなんだか少し違って見えることがあるが、『1Q84』の読者も用心していただきたい。読み終えた時、あなたの周りの世界はもう200Q年になっているかも知れないのだから。

村上春樹「1Q84」に登場するヤナーチェック「シンフォニエッタ」の演奏を比較する。: ユーフォニアム認知度向上委員会.

この曲に関して、ヤナーチェックは「今日の人間の自由、平等、喜び、そして時代に立ち向かう勇気と勝利への意志」と書き記している。なお、スコア自体には記 載されていないが、第2楽章「城」、第3楽章「僧院」、第4楽章「街頭」、第5楽章「市役所」という表現がそれぞれ与えられているようだ。全部で約25分 程度の短い曲なので、是非全楽章を聴いていただきたい。最後の楽章では再度ユーフォニアムのファンファーレが再現される。

単純な脳、複雑な「私」 池谷裕二さん : 著者来店 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞).

心の問題から、「自由とは何か?」という哲学的な問いかけまで幅広く、深いテーマを、脳の働きや機能を検証しながら語っていく。最新の論文に至るまで脳研究の最前線を紹介し、時には自らの「仮説」にも踏み込んだ。

『ヤナーチェク:シンフォニエッタ: ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団』
 試聴可能
『1Q84』重箱の隅 - 旅行人編集長のーと.

  まず、この本をめくって謎だったのが、「装画=NASA/Roger Ressmeyer/CORBIS」というクレジットである。NASAの装画って何だろうとぱらぱらと本をめくってみたが、絵も写真も1枚も入っていな い。それなら表紙かと思ってカバーをめくってみたが、そこにもない。不思議だ。それからむきになって隅々まで点検して、ようやくそれらしきものを発見し た。皆様はお気づきになりましたか。カバー表の右下に1は黄色く、2は水色のシミみたいにくっつているものがある。これ、よーく見ると月なんじゃないかと 思われる。いや、ストーリーから考えてもこれは月でしょう。

1Q84 村上春樹 @wiki - エピグラフ - It's Only a Paper Moon.

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2009.07.16

■新刊メモ 『定本アニメーションのギャグ世界』
 『光瀬龍 SF作家の曳航』

森 卓也『定本アニメーションのギャグ世界』
 (アスペクト ASPECT ONLINE)

 ミステリマガジンの連載をまとめ、1978年に奇想天外社から発売された森卓也著『アニメーションのギャグ世界』を、書き下ろしエッセイ、オリジナル「トムとジェリー」全作品解説、単行本未収録アニメーション評論などを追加収録して復刻しました。

 大部のアニメ解説書。
 森卓也氏は東海地区在住、地元中日新聞に映画評を書かれていたので、なじみ深い。「トムとジェリー」全作品解説ってなんか凄い偉業。
 森卓也氏は『カリオストロの城』から宮崎アニメを高く評価していた。今回の追加分にも『ポニョ』評が掲載されている。

光瀬龍, 大橋博之『光瀬龍 SF作家の曳航』

光瀬龍没後十周年メモリアルとして刊行。 大学生時代に菊川善六名義で書かれた未発表習作「肖像」を含む、単行本未収録作品13編(加筆され単行本化される以前の雑誌での初出バージョン等を含む)とエッセイ39編。 光瀬自身が単行本のあとがきや雑誌のエッセイなどで語った心象風景やこだわりが、各作品へと昇華される過程を、徹底検証してつまびらかにした「光瀬龍自伝」。

 光瀬龍のエッセイを自伝風に構成し掲載。
 既に亡くなって10年になるのですね。
 数々の在りし日の写真も掲載されていて、ファン待望の書。
 この方が描く詩情あふれる宇宙は、もっと広く評価されてもいいと思います。

◆関連リンク
光瀬龍−SF作家の曳航(ラピュータ公式)

●第一章 幼い頃──記憶の中に灼きついて消えないもの 【エッセイ】幼い日の記憶/私のUFO体験/ある疑惑/夢は哀しいか/懐かしきブリキ製の夢/あとがきにかえて/私の《ファーブル昆虫記》/あとがきにかえて/三月が来ると/有明と無明の間/あとがきにかえて 【小説】帝都上空に敵一機 【解題】大橋博之
●第二章 青年の頃──意欲と情熱だけを抱いて彷徨う 【エッセイ】岩手県南、前沢町 茫洋と流れる北上川/《上野原》の想い出/私の正月/あとがき 【小説】見果てぬ夢を ロン先生の青春記 【エッセイ】遠い海鳴り—ロン先生の虫眼鏡/後記—闇市の蜃気楼/ここは遠きブルガリヤ・ドナウのかなた/幸福な作家、団鬼六氏/アメリカ・カンゴッタン/美人するとき/ロン先生の公開日記──ああ 青春/夢の後に または私のディエンビエンフー 【小説】肖像(菊川善六) 【小説】二十年前、新宿で 【解題】大橋博之
●第三章 作家の道──流浪の末に辿り着いた終着点 【エッセイ】火星年代記から漢書に托したもの/タイタン六世の頃/あとがきにかえて/あの頃とSFマガジン 【小説】タイタン六世 【小説】晴の海1979年 【解題】大橋博之
●第四章 時空の旅──人はそれを東洋的無常観とよぶ 【エッセイ】あの頃のこと/あとがきに代えて 【小説】暁はただ銀色 【エッセイ】作者の言葉/「派遣軍還る」あれこれ/《派遣軍還る》を書いた頃/あとがき/私の『東キャナル市』 【小説】残照一九七七年 【小説】ある日の阿修羅王 【小説】説法 【小説】 廃虚の旅人 【エッセイ】アンドロメダ・ストーリーズ 【小説】少女イル外伝 決闘《毒蜘蛛亭》 【解題】大橋博之
●第五章 今、再び──虚無を呑み込む暁の砦 【エッセイ】ある女性/行きつけの床屋さん──青坊主万歳!/龍おじさんのへそまがり動物記 わが家のフクロウ 子ネコそっくり/ハナと歩く ロン先生の虫眼鏡・番外編 【小説】 暁の砦 【解題】大橋博之 光瀬龍 略年譜 【解説】 光瀬龍は、なぜ光瀬龍なのか(大橋博之)  編集後記

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2009.07.08

■新刊メモ『SF本の雑誌』 『アニ・クリ15 DVD×マテリアル』
 『超弦領域』 『ペルディード・ストリート・ステーション』
 『ユリイカ2009年7月号 特集=メビウスと日本マンガ』『歌の翼に』

『SF本の雑誌』 WEB本の雑誌

本の雑誌が選ぶ◎SFオールタイムベスト100 大森望・鏡明・風野春樹
バナナ剥きには最適の日々 円城塔
SFサブジャンル・こだわりベストテン
〈書評漫才〉出前篇
「本の雑誌」傑作選
日本SFアート史 大橋博之
コラム SF偉人伝 牧眞司
翻訳SF担当編集者座談会
 「海外モノに大コケなし、バカ売れもまず(笑)なし!」
本の雑誌はSFをどう伝えてきたか 1976年創刊号〜2003年236号

 リンク先の目次からほんの一部を抜粋。
 他にもコンテンツ目白押し。

 僕は翻訳SF担当編集者座談会「海外モノに大コケなし、バカ売れもまず(笑)なし!」が、一番楽しみ。今、海外SFファン人口って、いったいどれくらいなのでしょうね。アニメータにこだわるアニメ作画マニアの1/50くらいかなー??(5000人くらい??日本人3万人に一人くらいはいるでしょう)

日下三蔵, 大森 望『超弦領域 年刊日本SF傑作選』 東京創元社

法月綸太郎「ノックス・マシン」
小林泰三「時空争奪」
藤野可織「胡蝶蘭」
最相葉月「幻の絵の先生」
Boichi 「全てはマグロのためだった」
堀  晃「笑う闇」
小川一水「青い星まで飛んでいけ」
円城 塔「ムーンシャイン」
伊藤計劃「From the Nothing, With Love.」

 15人の作家の15作掲載(上はその一部抜粋)。
 往年の(SF第三世代までの)作家は、堀晃さんだけですね。やはり円城 塔、伊藤計劃の両氏が近年の日本SFを支えていたのだろうか? 改めて伊藤計劃氏のご冥福をお祈りします。

『アニ・クリ15 DVD×マテリアル』

 日本を代表するクリエイター15組が作った60秒アニメーション「アニ・クリ15」のDVDブックが登場!! トップクリエイター映像制作の極意がここにある! 全クリエイターのロングインタビューに加え、全15作品の絵コンテを完全収録!! カラーページには、各作品の設定資料も掲載。
 全15作品の本編(15分)+各作品4分ずつのメイキング映像(60分)を収録。 DVD単体では発売されていないので、この本でしか見られない75分の映像体験! そのほか、スペシャルおまけとして、河森正治監督作品「プロジェクトΩ」に登場するNHKロボのペーパークラフトつき!

 これ、NHKで時々見かけたのだけれど、全然フォローできていなかったので、このDVDは嬉しい。メイキングも期待ですね。

チャイナ・ミエヴィル『ペルディード・ストリート・ステーション』

 異端の科学者と翼を奪われた〈鳥人〉の冒険を、唯一無二のスケールで描くダーク・スチームパンク。「バス=ラグ」と呼ばれる蒸気機関と魔術学が統べる世界で、最大の勢力を誇る都市国家ニュー・クロブゾン。その中心には巨大駅ペルディード・ストリート・ステーションが聳え、この暗黒都市で人間は鳥人や両生類人、昆虫型や植物型の知的生命体と共存していた。大学を辞め、独自の統一場理論の研究を続ける異端の科学者アイザックは、ある日奇妙な客の訪問を受ける。
 みすぼらしい外套に身を包んだ鳥人族“ガルーダ”のヤガレクは、アイザックに驚くべき依頼をする。忌まわしき大罪の代償として、命にもひとしい翼を奪われ たヤガレクは、全財産とひきかえにその復活をアイザックに託したのだった。飛翔の研究材料を求めはじめたアイザックは、闇の仲買人から、正体不明の幼虫を 手に入れる。そのイモ虫は特定の餌のみを食べ、驚くべき速さで成長した。そして、成虫となった夢蛾スレイク・モスが夜空に羽ばたくと、ニュー・クロブゾンに未曾有の大災害が引き起こされた。
 モスを解き放ってしまったことから複数の勢力から負われる身となったアイザックは、夢蛾を追って、この卑しき大都市を さまようことになる。翼の復活を唯一の望みとするヤガレクト共に…英国SF/ファンタジイ界、最大の注目作家であるミエヴィルが、あらゆるジャンル・フィ クションの歴史を変えるべく書き上げたエンターテインメント巨篇。アーサー・C・クラーク賞/英国幻想文学賞受賞作。

 長文の抜粋になってしまったけれど、この概要でもワクワクしてきます。
 「統一場理論」「夢蛾」、イマジネーションを刺激します。

『ユリイカ2009年7月号 特集=メビウスと日本マンガ』

【シンポジウム】
メビウス∞描線がつなぐヨーロッパと日本
             / メビウス×浦沢直樹×夏目房之介
メビウスが語る、メビウスを語る
             / メビウス×りんたろう×大友克洋

【最強メビウスファン対談!】
われら、メビウスの徒 その線、色、世界に酔う / 谷口ジロー×寺田克也

 今まで特集されたことがなかったっけ? と言いたくなるような特集。
 浦沢直樹と大友克洋が同席していないのは、なんだか、とても残念。
 この他にも多数の記事有。今から、ポチっとします、私。

トマス・ディッシュ『歌の翼に』 国書刊行会

2009年ラインナップのお知らせ、第二弾!
 お待たせしました、国書刊行会、2009年刊行予定のお知らせ第二弾です。

歌の翼に トマス・M・ディッシュ/友枝康子訳 (1/29)
ディッシュの最高傑作長篇を復刊!

 まだAmazonにも新刊として掲載されていないけれど、ディッシュの最高傑作がラインナップされています。サンリオ文庫版は買い逃しているので、出版が楽しみ。

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2009.07.01

■感想 池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』

池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』 動画特設サイト

 『進化しすぎた脳』に続く、高校生への脳科学講義第二弾。
 眼から鱗の脳の正体を描いた前書に続き、今回はどんな脳の秘密に触れられるのか。

 この本で西洋近代の「我思うゆえに我あり」という意識尊重主義(?)に対して、科学的な最新の実験結果を示しながら、大きな風穴を開けていることは確か(^^;)。

 前作では、意識の正体について、ぼんやりとその外周を描き出して、そこから先は科学者として、推測になる部分が多くなるため、言葉を止めていた感じがあったのだけれど、今回は自由意志というものがどういうものか、ということをデータで示している部分で、かなり突っ込んだ意識についての認識を示している。これが、西洋近代哲学の根底を覆すような言説になっている凄いところ。

 研究活動の合間にその最前線をレポートすることは、自分の研究活動に支障になるのではないか、こうした仕事は科学ライターにまかせればいいのかもしれない、と池谷氏は書いている。(もしかして別の脳科学者M氏への皮肉?(^^;))
 脳科学がこんなにも人間の自己認識に鋭いメスを入れられる素晴らしい知見を得ていることは、是非これからも一般に知らせてほしい。ここに社会と世界のいろんな課題を解く鍵があるはずで、物凄く重要な仕事になっていると思う。

 では少し詳細な感想。

◆まずはお約束 脳のとらえる現実について

 哲学では「存在とは何ぞや」と、大まじめに考えていますが、大脳生理学的に答えるのであれば、存在とは「存在を感知する脳回路が活動すること」 と、手短に落とし込んでしまってもよいと思います。つまり私は、「事実(fact)」と「真実(truth)」は違うんだということが言いたいのです。
 脳の活動こそが真実、つまり、感覚世界のすべてであって、実際の世界、つまり「真実」については、脳は知り得ない、いや、脳にとっては知る必要さえなくて、「真実なんてどうでもいい」となるわけです。(P34)

 岸田秀の唯幻論や栗本慎一郎の経済人類学/言語学に通じる視点。
 脳の視点からは世界はそのような存在となる、というまずは前説。

◆無意識の脳の活動は、運動を学習する基底核が実行

 サブリミナル効果の実験とその際にMRIでとらえられた脳の活動部位である基底核について述べた箇所。

 テニスラケットのスイングの仕方、ピアノの弾き方、自転車の乗り方、歩き方、コップのつかみ方―(略)基底核は、少なくとも「体」を動かすことに関連したプログラムを保存している脳部位なのです。

 この「身体」に関係した基底核が、どうしても身体ともっとも関係がなさそうな「直感」に絡むんだろう(略)
 つまり方法記憶は無意識なんですね。(P81)

 ここを読んで思ったのは、天才的スポーツ選手が自分の運動能力について語る時の口調。具体的にはイチローが自分のその能力をまるで他人事のように、こうなっているのではないか、と語っているのをテレビで観たことがある。
 スポーツマンの運動を制御するのは脳である(これが基底核)。だけれどもそれを意識でとらえることは本人にも難しい。そうした時の自分のことであるが、自分でもどう脳が働いているかよくわからない、というスタンスの発言になる。そのメカニズムは下記のように描かれる。

◆脳活動と認知レベルの順番と差異

認知レベルと脳活動レベルの関係
 認知レベル ①動かそう ②動いた
 脳活動レベル ③準備 ④指令
実験結果 ③準備→①動かそう→②動いた→④指令 (P251)

 「自由は、行動よりも前に存在するものではなくて、行動の結果もたらされるもの」
 自由意志は「動かすのを中止することしかできない(P258)」という概念が実験的に確認されているという事象は重要。

 これは先に述べたスポーツだけでなく、おそらく人間のいろんな活動の全てに、そうした事象が発生している。
 脳の働きに対して意識のとらえられる幅は恐らく小さい。そして意識は、後追いで認識し、まるでその脳活動のスポークスマンとして存在するって感じ。
 (これは漫画家の発言にも共通する。参照 浦沢直樹が語る「半眼」)

◆そして意識が発生したメカニズム

 おそらく進化の過程で、動物たちは他者の存在を意識できるようになった。そして次のステップでは、その他者の仕草や表情を観察することに寄って、その行動の根拠や理由を推測することができるようになった。他者の心の理解、これが社会行動の種になっている。
 しかし逆に、この他者モニタシステムを、「自分」に対して使えば、今度は、自分の仕草や表情を観察出来るよね。(略)
 僕は、こうした他者から自己へという観察の投影先の転換があって、はじめて自分に「心」があることに自分で気づくようになったのではないかと想像している。(P180)

 他者との関係性から意識が発生したというような記述。自己認識が先にあって、他者とコミュニケートしたという順番でなく、他者がまずあって、そこから派生的に自己が表出したと読める。
 しかし本書では、これ以上は突っ込んで書いていない。高校生と、自由意志の介入する部分の狭さを怖い事象だ、というような会話をしているが、ここらも、意識尊重主義の亡霊にとらわれているように見える。

 本当は一歩突っ込んで、意識は自分の主人ではなく、脳の無意識の活動が実は自分の本来の主人である。意識は他者との関係性から、その活動を客観視して他者に伝える必要性から発生してきた。とか、大雑把な僕は、そんな風にとらえてもいいのではないか、と本書を読みながら考えていた。

 これって、西洋近代の否定の根本的な否定ですよねー。
 言語論とも通じるし、脳科学のデータや知見が、哲学の領域のポストモダンを証明しつつある、ダイナミックな動きに見えるのは僕だけだろうか。

 そしてさらに本書は生命のシンプルなゆらぎを利用した構造について述べている。この知見が生み出すものの可能性って、もしかしたら社会学とかの分野と、それから工学の分野で大きな広がりがあるのではないだろうか。池谷氏の研究については、今後も注目したい。

 生命らしい特徴が垣間見えるときは、システムの素子が相応しい構造を持った回路でつながっているというのが前提にある。構造さえしっかりしていれば、後は簡単なルールを繰り返せば、自然と生命現象が創発される。(P368)

◆補足 究極映像研的に視覚についてのメモ

・眼の網膜は効率の悪い進化の失敗作(P232)
 何層もの薄い膜構造の一番奥にあり光の透過の効率が悪い。

・最新の報告で、網膜を通さず大脳皮質に光を感受するチャンネルを作成することに、ネズミで成功(P240)。大脳皮質がダイレクトに受け取る映像って、どんな映像なのだろうか。

・未来を見る実験。脳による遅れ補正 右手と左手の感覚入力も学習補正されている(P290)。

◆関連リンク
・脳のすみずみについて電子顕微鏡写真で明確にするプロジェクト
 コネクトーム - Wikipedia.

コ ネクトーム(connectome)とは、生物の神経系内の各要素(ニューロン、ニューロン群、領野など)の間の詳細な接続状態を表した地図、つまり神経 回路の地図のこと。つながる、接続するといった意味を持つ英語のコネクト(connect)という言葉と、「全体」を表す-オーム(-ome)という接尾 語から作られた言葉。

意識 - Wikipedia.

ルネ・デカルトは仏: Je pense,donc je suis(我思う、ゆえに我あり メルセンヌ神父によるラテン語訳羅: Cogito ergo sum)などの方法論的懐疑により、後世に主観的でありしかもなお明証性をもつ羅: Cogitoと表現される認識論的存在論を展開した。デカルトは世界を「思惟」と「延長」から把握し、思惟の能動性としての認識と受動性としての情念をそれぞれ主題化した。

前野隆司 - Wikipedia.

意識に関する仮説「受動意識仮説」を見出す。これをより詳細な理論へと昇華すべく現在も鋭意研究を続けている。

ヒトとロボットの心の研究 「意識」は受動的だろうか?.

『人の「意識」とは,心の中心にあってすべてをコントロールしているものではなくて,人の心の「無意識」の部分がやったことを,錯覚のように,あとで把握する ための装置に過ぎない。自分で決断したと思っていた充実した意思決定も,自然の美しさや幸せを実感するかけがえのない「意識」の働きも,みんなあとで感じ ている錯覚に過ぎない。そしてその目的は,エピソードを記憶するためである。』

 意識を受動的なものだとする説を調べていたら、この工学者の方の説が見つかった。
 ここでは、エピソード記憶のために意識が生まれた、というところに違和感。コミュニケーションのためとか言語表現のためと解釈した方がいろいと説明しやすいと思うのだけれど、、、。

当Blog記事
 『進化しすぎた脳』レビュウ

 視覚の不思議と、脳とアニメーション原画の関係について。池谷氏の記述から勝手に映像論を展開してみました。
 『進化しすぎた脳』 感想
   無意識の脳活動と芸術家の「半眼」

  これと上記の意識より前に脳は行動を開始しているという部分をあわせて読むと、「半眼」の正体が見えてくる。ここまで書いたら言わずもがなだけれど、豊か な描線を無意識の脳活動が描こうとしていて、それを邪魔してしまうのが、この時、後追いで生成された「描こう」と自分では思っている」クオリアとそれによ り無意識の活動に介入する意識なのだろう。  それを意識をぼんやりさせて「半眼」で動き出した脳活動にまかせる、というのが、池谷的に表現した浦沢の描線の豊かさの秘密なのかもしれない。

 意識を持ったロボット

「意識」と呼ばれている脳活動(ニューロンの発火?)は、その上位構造が下部の情報(クオリアも含まれる)を「みつめる」時に発生しているのではないか。 その脳活動が「意識」。自分の脳内の活動を、統合した形で「上」から眺めるパースペクティブが「意識」なのかもしれない。

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2009.06.25

■新刊メモ 『単純な脳、複雑な「私」』『コンピュータ・グラフィックスの歴史』
 『美術手帖 09.07月号アウトサイダー・アートの愛し方』

池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』 動画特設サイト

 『進化しすぎた脳』に続く、高校生への脳科学講義第二弾。
 眼から鱗の脳の正体を描いた前書に続き、どんな脳の秘密に触れられるのか。

 実は昨日、読了してレビュウを書きたくてしょうがないのですが、残念ながら今週はじっくり書き込む時間がとれません。来週はしっかり書きたいと思います。

 それにしても面白い。
 この本で西洋近代の「我思うゆえに我あり」という意識尊重主義(?)に大きな風穴を開けていることは確かです。
 当Blog記事『進化しすぎた脳』レビュウ

大口孝之『コンピュータ・グラフィックスの歴史 3DCGというイマジネーション』
 (FILM ART | フィルムアート社)

「それまでまったく存在していない 技術」はいかにして巨大産業に発展したのか?
コンピュータ・グラフィックスという巨大なイマジネーションをカタチにしたパイオニアたちの努力の物語。貴重な図版と用語解説、キーパーソンの解説を付し た、CG史の決定的入門書です。

 「特殊映像博物館」の大口孝之氏によるCGの歴史。
 大口氏と言えば、このBlogでは何度か書いていますが、富士通の立体CG映像「ユニバース」。自らも特殊映像の作家である氏の描く、専門書に期待です。
 まだ実物の本をみていないですが、入手して詳細を紹介予定。

『美術手帖 09.07月号アウトサイダー・アートの愛し方』 (『美術出版社)

アウトサイダー・アートの愛し方 “生の芸術”ってなんだろう?
王国の10大巨匠は誰だ!?
[SPECIAL REVIEW] ヤノベケンジ《ウルトラ―黒い太陽》
黒焦げの太陽 椹木野衣=文

 ヤノベケンジ《ウルトラ―黒い太陽》の紹介記事と、椹木野衣氏による評論。
 これを目当てに買ったのですが、特集の<アウトサイダー・アート>がなかなか素晴らしい。これもいずれ詳細を紹介予定。

 アウトサイダーと言っても、アトウサイゾウとは何ら関係ありません(^^;)。

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2009.06.04

■新刊メモ 笠井 潔『例外社会』 ベイリー『禅銃(ゼンガン)』
 クラーク『太陽系最後の日』

笠井 潔『例外社会』(朝日新聞出版)

秋葉原テロ事件は、なぜ起きたのか? 格差、ニート・フリーター問題から、下流、ワーキング・プアといった新たな貧困層の出現。また、教養主義崩壊以降、サブカルチャー的な知性の台頭、インターネットの興隆によって、人間のあり方まで大きな変化が起こっている。「ゆたかな社会」が終焉を迎え、未曾有の「例外状況」にある日本社会。その決定的な変化を世界史的なレベルから総括しつつ、「階級論」「教養論」「群衆論」という三つの視点から、新たな社会思想の潮流を展望する著者久々の社会評論集。

 SF界でもっとも世界を救おうとしている人 笠井潔の新作評論集。
 このテーマ、『東のエデン』に通じるものがありそう。

バリントン・J・ベイリー『禅銃(ゼンガン)』(ハヤカワ・オンライン)

栄 耀栄華を極めた銀河帝国は、いま黄昏を迎えていた。激減した純人間を補うために動物たちが宇宙艦隊に乗りくんでいる。その折も折、辺境星域に帝国を滅ぼす 力を持つ武器が出現したとの報をうけ、アーチャー提督は早速調査に赴いたが……英SF界の鬼才が奔放なアイデアで描く傑作ワイドスクリーン・バロック!

 カバー画が刷新されて復刊されたベイリーのワイド・スクリーン・バロック。
 既にこの本の初版から24年ほどたっているのですね。

 新しいカバー絵が素晴らしかったので、掲載しようとしたのですが、残念ながらまだネットには画像がありませんでした。

アーサー・C・クラーク『太陽系最後の日
(ザ・ベスト・オブ・アーサー・C・クラーク 1) 』
(ハヤカワ・オンライン)

人類のために奮闘する異星人たちを描いた表題作のほか、名作『幼年期の終り』の原型短篇「守護天使」、作品集初収録の中篇「コマーレのライ オン」、大戦中の空軍士官クラークの体験をつづるエッセイ、年譜などを収録した日本版オリジナル短篇集第一弾

 未読の「守護天使」を是非読みたい。
 こういう出版は嬉しい。

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2009.05.26

■村上春樹の最新長編小説『1Q84』 5月29日発売!

Photo

村上春樹『1Q84』
      (新潮社 公式HP)

 5年ぶりの新作が今週発表される。
 面白いのが新潮社の公式HPに置かれた過去の作品の海外版カバー装丁画。

 右に引用した『海辺のカフカ』以外に、『ねじまき鳥クロニクル』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の二作が並べられている。どれもカラフルで、そして各国のお国柄をしのばせ、味わい深い。

 今回の作品は、まだ謎のベールに包まれている。
 下記のような推測レビュウも出ているが、どのように読まれ、世界でどういう装丁画が描かれるか期待。

◆関連リンク
livedoor ニュース - 村上春樹の新作「1Q84」は「魯迅に捧げる中国色溢れる作品」、東大教授が分析―上海市.

 魯迅文学に関する研究や村上春樹作品と中国の関係についての研究で有名な藤井省三教授は(略)「村上作品が魯迅の影響を受けており、中国の濃厚な香りがするからだ」と指摘した。(略)
 「1Q84」では、タイトルの「1」がアルファベットの大文字「I」につながり、「Q」は名前。つまり「『私はQ』。 IQ84の意味だ」と説明。「オーウェルの『1984』を連想させると同時に魯迅作品との深いつながりを感じさせる」としている。

藤井省三

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2009.05.13

■新刊メモ『外套』『SFM 09.05』『モーフィー時計の午前零時』他

最近、ご無沙汰していた新刊メモ。古いのも溜ってたので、まとめて行きます!
ニコライ・ワシーリェヴィチ・ゴーゴリ/ユーリ・ノルシュテイン/フランチェスカ・ヤールブソヴァ 『外套』(未知谷)

今回、ゴーゴリの文章と映画の動きの元(絵コンテ)がはからずも結びつけられることになった。別の目的で作られた一連の絵が、古拙な趣の挿絵として鑑賞されることになったのだ。これは、正に当を得ていることなのかもしれない。(ノルシュテイン)

 山村浩二氏に「アニメーションのサグラダ・ファミリア」と呼ばれる『外套』の映画と小説のコラボ。
 こうやってノルシュテイン氏は制作費を稼いで映画を一歩づつ進めているのだろうか。みんなで本を買って応援せねば。

『S-Fマガジン 2009年 05月号』

特集 バリントン・J・ベイリー追悼
2008年10月14日に逝去した奇想SF天才作家を悼む、本邦初訳短篇3作・作家による追悼エッセイ・邦訳著作解題などで構成する

特集 トマス・M・ディッシュ追悼
2008年7月4日に逝去したSF界きっての知性派作家を悼む、本邦初訳短篇3作・追悼評論・邦訳著作解題などで構成する

 これは即買い!でした。
 ふたりの奇才を同時に失い、そしてまたバラードまで。世代的には、こうした作家たちが鬼籍に入ってしまうのですね。人は誰も残らずいずれは死を迎えるわけですが、残念でなりません。

『モーフィー時計の午前零時』  国書刊行会

チェスプロブレム作家でもある若島正セレクトによる本邦初のチェス小説アンソロジー。
・モーフィー時計の午前零時
       フリッツ・ライバー/若島正訳[単行本初収録]
・シャム猫    フレドリック・ブラウン/谷崎由依訳[初訳]
・素晴らしき真鍮自動チェス機械
             ジーン・ウルフ/柳下毅一郎訳[初訳]
・ユニコーン・ヴァリエーション
            ロジャー・ゼラズニイ/若島正訳[新訳]
 ほか

 国書刊行会からは、いまだディレイニー『ダルグレン』の刊行期日はあきらかにされていませんが、こうした作家たちのラインアップで短編集が組まれていて、なかなか素敵なチョイス。

金田 益実, 円谷プロ『昭和41年ウルトラマン誕生』

神話、ここに誕生す。「ウルトラマン」(S41年)の生まれた、その“瞬間”にタイムスリップ!企画、クランクイン~放送終了までを、貴重なメイキング写真&資料でつぶさに再現。(略)完成直後に撮影されたヒーロー、怪獣などの各種造型物写真、迫力の特撮シーン・メイキング写真、撮影の合間をとらえたスナップ写真、企画関係の第一級資料、画コンテほか、新発掘もまじえた貴重&秘蔵写真を満載。

 こういうのいまだにワクワクするのだけど、やはり刷り込みの効果は絶大。
 あの客観的に見たらへたれなデザインのジェット・ビートルが最高に格好良く見えるのは、既にDNAレベルに転写されている感(^^;)。

ナンシー クレス『ベガーズ・イン・スペイン』(ハヤカワ・オンライン)

〈ヒューゴー賞、ネビュラ賞、スタージョン賞、アシモフ誌読者賞受賞!〉ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞の表題作など、7中短篇を収録する日本オリジナル短篇集

 SF画アーティスト ステファン・マルティニエア:Stephan Martiniereという記事で紹介したイラストレータ氏の手になる表紙がかっこいい。ごめん、ナンシー・クレスは一冊も読んでないや。

トマス・D・ カウフマン『綺想の帝国―ルドルフ二世をめぐる美術と科学』(青土社)

一六世紀プラハ―ルドルフ二世の宮廷に集った画家、彫刻家、詩人、天文学者、数学者、魔術師たち。彼らはその庇護者に奇怪で謎に満ちた多くの作品を捧げた。(略)これまでマニエリズムの名のもとに見過ごされてきたルネサンスの魔術的想像力の真意が、気鋭のワールブルク派美術史家の手によって、はじめて解き明かされる。

 ハプスブルク家のプラハ奇想芸術はゴシックSFファンの心のふるさとです。なんちゃって。

ロバート・ウェストール, 宮崎 駿画『水深五尋』(岩波書店)

 宮崎駿は矛盾している。本当は戦闘シーンを映像でバリバリ描きたいのに、反戦思想が強く思う存分にはやれない屈折、なのに小説の挿絵はそうしたものを描いている(それともこれも反戦小説なのだろうか?)。

◆関連リンク
ジェネオン エンタテインメント 

「プロジェクト ウルトラセブン」
「ウルトラヒロイン伝説 アンヌからセブンへ」
「ウルトラマン怪獣伝説-40年目の真実-DVDプレミアムセット」
「ウルトラQ怪獣伝説-万白目淳の告白-DVDプレミアムセット」

 

 こういうのも実は全部観てみたいのだけれど、、、。
TSUBURAYA公式オンラインSHOP

ヒーロー、怪獣、メカなどの造型制作の現場や、特撮・ドラマの撮影風景をとらえた臨場感あふれるメイキング写真を、時系列に そってダイナミックにレイアウト。企画ノートや絵コンテなどの第一級資料も掲載した、充実のビジュアルブック。さらに、付属DVDには、怪獣ブームの「空 気」をリアルに伝える「中日ニュース/連休怪獣繁盛記」、伝説のイベントを記録した「会津博」などのニュース映像をソフト初収録し、新事実発見をふくむ関係者インタビューも収録。

 上の本紹介記事。こういうのって、どっかのマニアの所有物が公開されるのか、円谷の倉庫に埋もれていたものか。でも微に入り細に入り、全ての関連物を見たいのって、マニアの性ですね。

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2009.05.01

■ダンス ― 脱領域のクリエイション ―
 黒田育世×古川日出男『ブ、ブルー』

YouTube - 黒田育世×古川日出男『ブ、ブルー』予告

川崎市アートセンター | Beyond the Border Series Vol.1 ダンス ― 脱領域のクリエイション ―

2009年2月14日(土)19:30/2月15日(日)15:00
古川が描く世界を、黒田が読み解き動きに変える。ダンスと文学、境界を超えてぶつかる、エネルギーの化学変化を目撃せよ!
※公演中、演出効果のため大きな音(爆発音等)が出る場面があります。あらかじめご了承ください。

YouTubeに『ブ、ブルー』予告編をUPしました。

アフタートーク決定!
14日(土)黒田育世、古川日出男
15日(日)黒田育世、古川日出男 ゲスト 柴田元幸氏(翻訳家、東京大学教授)

 既に終了したイベントですが、Youtubeに公式に予告篇が置かれています。
 もともと演劇からスタートしている古川日出男の舞台でのパフォーマンス。
 小説を読んでいても、まるで舞台のセリフを聞くようなテンポが封じ込められているわけですが、その作家によるダイレクトな表現が確認できます。

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2009.04.03

■新刊メモ 想像力の文学 『猿駅/初恋』『ミサキラヂオ』
 『メイキング・オブ・ピクサー―創造力をつくった人々』

0903 田中 哲弥『猿駅/初恋 (想像力の文学)』
ハヤカワ・オンライン

無人の改札口を出ると、そこはもう一面の猿だった―母への想いを猿の群れに昇華させた「猿駅」、とある村の儀式を通して白い肌の記憶を回想する「初恋」、そして知性化猿ショウちゃんと女子高生・静枝の逃避行を描く幻の未発表中篇「猿はあけぼの」まで十篇を収録。

瀬川 深『ミサキラヂオ (想像力の文学)』
ハヤカワ・オンライン

半島の突端にあるこの港町には、ここ半世紀景気のいい話などなかった。だが、演劇人くずれの水産加工会社社長が、地元ラジオ局を作った時、何かが少し変わ り始めた。土産物店主にして作家、観光市場販売員にしてDJ、実業家にして演歌作詞家、詩人の農業青年、天才音楽家の引きこもり女性、ヘビーリスナーの高校生――番組に触れた人々は、季節が移り変わる中、自分の生き方をゆっくりと見出してゆく。自分勝手な法則で番組と混沌とを流し出す奇妙なラジオ局のおかげで……。

 <奇想コレクション><未来の文学>に刺激されてか(?)、老舗早川書房から、新シリーズの開幕。この後、どんな作家が続くのか、楽しみ。
 神林長平に非SF作品を書いてもらうのもありかも。『七胴おとし』のような作品がまた読んでみたいもの。

デイヴィッド A.プライス『メイキング・オブ・ピクサー―創造力をつくった人々』 ハヤカワ・オンライン

〈ハヤカワ・ノンフィクション〉
『トイ・ストーリー』から最新作『ウォーリー』まで、驚異のCGアニメーションで映画業界の寵児となったピクサーは、いかに苦難の日々を抜けて卓越した創造の場となったのか。天才たちの物語。

 「創造力をつくった」とは凄い表現。この不遜さはどこから来ているのだろう。この興味からだけでも読んでみたかったり、、、。

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2009.03.10

■新刊メモ 『奇想遺産〈2〉世界のとんでも建築物語』 『レッドムーン・ショック』
 『アッチェレランド』 『ハチはなぜ大量死したのか』

鈴木 博之, 隈 研吾, 松葉 一清, 木村 伊量, 藤森 照信
 『奇想遺産〈2〉世界のとんでも建築物語』
(新潮社)

やっ ぱり、この建物、ちょっとヘン! 古今東西を唸らせた奇観――怒濤の物語! ヘンテコで、奇妙な建物たちは一体、なぜ建てられたの? 権威に裏打ちされなくとも、見る者の意表をつき、惹き付けてやまぬ迫力で君臨してきた存在感。そ こに宿されていた建築家の情熱と深い哲学、時代の精神。専門家も思わず目を凝らしてしまう77の“迷作品集”、待望の第二弾。

 前作は書店でもかなり山積みになっていたので、ヒットしたのでしょう。続編の登場です。
 朝日新聞をとっていないし、本書をまだ手にしていないので、どんな建築が紹介されているか。
 前作で有名どころが登場していたので、今回は小粒な気もするが、世界は広い。どんな奇想が飛び出すか!?

マシュー ブレジンスキー
 『レッドムーン・ショック―スプートニクと宇宙時代のはじまり』
(NHK出版)

1957 年――アポロ11号による月面着陸成功の12年前、人類と宇宙の関係を変えた世界初の人工衛星スプートニク1号が打ち上げられた。2人の天才科学者、元ナチス党員でありながらアメリカに渡ったフォン・ブラウンと収容所がえりのコロリョフによる宇宙へのあくなき挑戦、冷戦下、全世界を巻きこむ二大国の競争がスリリングに描かれた、熱き人間ドラマ。写真も多数収載。

 この手の本は、日米宇宙競争の時代に少年時代を送った我々に、いまだにワクワク感を感じさせますね。たくさん出ているこうしたドキュメントのうち、この本はどんな位置づけとなるんでしょうか。

チャールズ・ストロス『アッチェレランド』(ハヤカワ・オンライン)

〈ロー カス賞受賞〉ギブスンの鮮烈×クラークの思弁!
 時は、21世紀の初頭。マンフレッド・マックスは、行く先々で見知らぬ誰かにオリジナルなアイデアを無償で提供し、富を授けていく恵与経済(アガルミク ス)の実践者。彼のヘッドアップ・ディスプレイの片隅では、複数の接続チャネルが常時、情報洪水を投げかけている。(略)
 〈特異点(シンギュラリティ)〉を迎えた有り得べき21世紀を舞台に、人類の加速していく進化を、マックス家三代にわたる一大年代記として描いた新世代の サイバーパンク。

 ギブスン+クラークの思弁! なんか最強な気がしますが、果たして。
 これ、連作集ということですね。

ローワン・ジェイコブセン『ハチはなぜ大量死したのか』 (文藝春秋)

2007 年、300億匹、北半球のハチの4分の1が消えた。ある朝養蜂家が巣箱をあけると、そこにいるはずの働きバチがいないのです。働きバチは二度 と帰ってくることなく、そのコロニーは全滅します。謎のその病気は蜂群崩壊症候群(CCD)と名付けられます。その原因追究から「生態系の平衡の歪み」というより大きな枠組みに読者をつれさる知的興奮の科学書です。

 シャマラン『ハプニング』でも話題に出てきた「ハチの大量死」を追ったノンフィクション。
 立ち読みでは真相は不明でしたが、スリリングな追及の話になっているようです。

◆関連リンク
当Blog記事
『奇想遺産 世界のふしぎ建築物語』リンク集

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2009.03.02

■新刊メモ『ユリイカ2009年3月号 特集*諸星大二郎』

『ユリイカ2009年3月号 特集*諸星大二郎』(青土社 )

特集*諸星大二郎  

【インタビュー】
モロホシは一日にしてならず 奇妙なものの存在感を求めて / 諸星大二郎 [聞き手・構成=斎藤宣彦]

【幻の初期作品】
硬貨を入れてからボタンを押して下さい / 諸星大二郎

【徹底討議】
不定形な世界に魅せられて 諸星大二郎のうまさの底にあるもの / 夏目房之介×都留泰作

【資料】
諸星大二郎バイオグラフィー / 編=斎藤宣彦
諸星大二郎主要作品解題 / 蔓葉信博+スズキトモユ+前田久

他多数

 『ユリイカ』で諸星大二郎の特集。これって、いままで既に発行されていたようなデジャヴュがありますが、意外とまだだったのですね。

 掲載されているビブリオを見ると、この作家の特集本って、1979年の「ぱふ」の「特集 諸星大二郎の世界」以降、彷徨社の「彷徨月刊」という超マイナー雑誌で「特集 このさき諸星大二郎一丁目」 (2005年6月25日発行)(「彷書月刊を読む」より)というのがあるだけなんですね。本当に意外。

 掲載されている初期作品は、1970年のCOMへの投稿作品で全頁公開は初とのこと。
 あの諸星タッチがすでにしっかり出ているが、ペンは今よりも随分細くてボソボソしている。まだ内容はもったいなくて、読んでません。

 各界からの論考を読むのが楽しみです。

◆関連リンク
・元アシスタントの箱ミネコさんによる諸星大二郎氏の漫画制作の様子

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2009.02.17

■感想 中沢 新一, 波多野 一郎『イカの哲学』

中沢 新一, 波多野 一郎『イカの哲学』

 21世紀の平和学はここから始まる 特攻隊の生き残りで、戦後スタンフォード大学に留学した在野の哲学者波多野一郎が、一九六五年に少部数のみ出版した書『イカの哲学』。(略)
 イカが人間とコミュニケーションがとれたら、という奇想天外な発想から、人間同士だけではなく森羅万象と人間との相互関係にまで議論の範囲を広げ、本質的な意味での世界平和を説く。『イカの哲学』全文収録。

 かなり飛躍した記述もあるが、提示されている「平常態」「エロティシズム態」「超戦争」「超平和」という視点がとても面白い。
 学術的にみたら論拠に貧しいが、しかしある種のフィクション(もちろんSF)として見ると、斬新なパースペクティブを提示して新しい眼で世界を眺められる装置となっており、素晴らしい。

 本書は在野の哲学者波多野一郎氏の著作を中心に据えているのだけど、でも実際はそれを一つのきっかけにして、中沢新一が思考し書き綴った人類と生命の関係をとらえなおした新しい視座が抜群に面白い。この視座の根っこには、波多野氏が特攻隊員として極限で考えたこと、先の大戦の大量殺戮の目撃が重く横たわっている。(波多野氏の文章は非常に軽妙に描かれているのだけれど、、、、)

 まず「平常態」と「エロティシズム態」として描かれた生命論。

 生物がまわりの環境から分離された、非連続な個体であり続けようとする側面こそ、生命というものの本質だ、と考えやすい。(略)生物には自分を非連続な個体として維持しようとする面ばかりではなく、むしろ非連続であることを自分から壊して、連続性の中に溶け込んでいこうとする強力な傾向が隠されているということを、バタイユは見出して、それを「エロティシズム」という概念でとらえようとした。(P91)

Photo_2  そして描かれる右図のような「平常態」、「エロティシズム態」における「戦争」と「平和」。ここから以下のふたつの平和概念が提示される。

「平和態の平和」
 労働と法によって豊かで穏やかな世界を作ろうとする

「エロティシズム態の平和」
 生命の奥にセットされた「個体性を壊してまでも連続性を自分の内に引き入れようとする」エロティシズムの原理をネガティブにしか実現しない戦争を否定する

 「エロティシズム態の平和」が「イカの哲学」に直結する。要約すると、他の生物の実存を認識しそれに対して共感する「平和」(精神的な連続性)。(「共感」ってP・K・ディックのキーワードでもある)

 この視点から、現在の食用とする生物を消費財としてしか見ていない現在は、「エロティシズム態の平和」が消えかかっていることが描かれる。
 資本主義の下での生命に対する軽視。
 この視点(イカの哲学)から考えたらマスコミの垂れ流すグルメ番組などは醜悪の極み。
 そこでは人間以外の生命の実存への心配りというものは消失している。

02  さらに拡大した視点で、この「エロティシズム態の平和」が消失したことを起点に生じた核爆弾等の大量殺戮兵器による近代の戦争を著者は「超戦争」と呼ぶ。他の生命の実存の完全否定。

 「超戦争」に対峙できる「超平和」とは。
 これはこれだけ要約して書くと、ひどく陳腐に受け取られる可能性があるので、ここでは省略する。興味を持った方は、本書を手に取ってほしい。

 一時期、人間の営みのあれこれをエントロピーで説明すると、非常にわかりやすく整理できるのではないかと思っていたことがあるのだけれど、この本の描いている「エロティシズム態」というのは、生命が基本として持っている、その形態を保つことによる「ネゲントロピー(負のエントロピー)」を破る行為のことを指していると考えるとわかりやすい。生命の本質を「ネゲントロピー」とすると、「エロティシズム」はそれを壊した時に生まれるものということになる。

 その状態で過去配慮されてきた「平和」。これは狩猟における動物の命に対する尊重、戦争における敵の死者に対する尊厳、といったものである。

 なんだか本書をなぞって紹介するだけになってしまったけれども、この視点でいろんな事象を眺めると、面白い分析ができそうだったのでまずは書いてみた。

 とりあえずは、『東のエデン:Eden of The East』の読解に使おうとしているな、と思った貴方は鋭い(^^;)。

◆関連リンク
ネゲントロピー - Wikipedia
イカ・ナビゲーションのイカ漁のページ
 イカは本書で書かれたような投げ網でとることもあるそうです。
amazonのカスタマーレビュウ いろいろと興味深い記述がある。
・当Blog記事
 中沢新一著『森のバロック』 総論 ←この本は大傑作。

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2009.02.11

■新刊メモ 『雪男たちの国』 『人生に希望をくれる12の物語』
  『劇画 オバQ』 『マリオネット・エンジン』

ノーマン・ロック, 柴田 元幸訳『雪男たちの国』 河出書房新社

「ある朝突然、スコット探検隊の一員として南極にいた」建築家の手記。記されているのは、過酷な自然に放り込まれた驚き、憤り、痛いほど白い世界で死に憧れ、幻覚に身を委ねる男たちの姿――柴田元幸が発掘した究極の物語。

 南極の孤独と幻覚は素晴らしく相性がいいように感じる。
 はるか小学生時代に読んだスコット探検隊のノンフィクションも、白い世界の幻想の記録として読めた記憶。柴田訳のこの小説、面白そうです。

鴻上 尚史『人生に希望をくれる12の物語』 (講談社)

著者がみずからの来た道と重ねあわせながら紹介する読書案内!

人生には意味がなくて、意味がある。
「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス
「劇画・オバQ」藤子・F・不二雄
「大いなる助走」筒井康隆 他 12の物語

 ついに、鴻上がこんなふやけたタイトルの本を書いたかと第三舞台ファンとして嘆きながら書店で手に取る。
 でも「劇画・オバQ」が入っていたので許してしまう(^^;)。劇団休止の理由と藤子不二雄への賛歌が描かれたこの一編を読んで、ひとり嬉しくなるのであった(立ち読み(^^))。
 まだこの漫画を読んでない幸運な貴方に御紹介→ YouTube - 劇画 オバQ

 僕は中学時代に筒井康隆の『SFベスト集成』でこの藤子自身の筆になる短編を読んで、衝撃を受けました。(ちなみに、僕の最古のお気に入りオモチャの記憶は、「Qちゃんゴム人形」です(^^;)。)

Photo西澤 保彦『マリオネット・エンジン』 講談社

パー トナーを機械で理想のタイプに変換し愛することのできる時代が到来した。(略)表題作『マリオネッ ト・エンジン』をはじめ恐怖に満ちた6作品を収録!

 西澤 保彦のSFホラー短編集。
 であるが、僕がオッと思ったのはこの加藤直之の表紙。
 なんか懐かしい絵だなー、なんの表紙かなーと手にとって、あとがきを読むと、、、。

 これ、他の本の表紙ではなく、加藤直之の早川SFコンテスト・アート部門入賞作(1974年)。西澤氏がこの絵の大ファンで、今回初のSF短編集の表紙として使わせてもらうように依頼したという。
 そして実はこれ、入選作そのものでなく、この表紙のために手が入れられているとのこと。

 僕も当時、この絵をSFマガジンで熱心に観ていたことを想い出した。
 丁寧に描きこまれた細部には、その後の加藤SF画を超えるような情熱のようなものを感じます。描き足されたのはどの部分なのだろう。

◆関連リンク
オバケのQ太郎 - Wikipedia.

この様に「FとAの間で起きた権利問題」と、「その周囲の人々で起きている問題」で出版が見送られているとの説が最も有力であった。2007年になって安藤 健二の『封印作品の謎2』が『封印作品の闇』と改題の上、文庫化された際になされた小学館の元幹部への追加取材を通じて、Aの側は再版の許諾を出してお り、増刷を拒否しているのはF夫人であることを明らかにし、その理由としてFとAが共同で著作権を持つ作品を出したくないとの意向をF夫人が持っているためであると安藤は結論づけている。

SF画家加藤直之 時空間画抄

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2009.02.03

■新刊メモ 『『話の話』の話―アニメーターの旅 ノルシュテイン』
『コマ撮りアニメーションの秘密』『肩胛骨は翼のなごり』
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

クレア キッソン『『話の話』の話―アニメーターの旅 ユーリー・ノルシュテイン』

1979 年、世界はかつてない30分もののアニメーションを目にする―仔狼、詩人、若い男女、列車、リンゴ…戦後、ノルシュテインが子供時代を過ごしたマーリナ・ ローシャの思い出が流れ込む映像が記憶そのものであるかの『話の話』。ノルシュテインの人生を辿ることで難解とされる映像に記憶の断片を探り当て映画完成 までの当局との争いのドラマを見る本格的論考、アニメーターの旅。

 出版社 未知谷の本。
 こんな本が出版されていることがとても嬉しい。凄くマニアックでいい本を出しますね、未知谷って(おすすめは、幼い頃のティプトリーを描いた『ジャングルの国のアリス』とか『ユーリー・ノルシュテイン』とか。
 このノルシュテインの『話の話』のあの映像の論考。これは是非読みたい。

ユーリー・ノルシュテイン『フラーニャと私』

 ノルシュタインでこんな本も出てるんですね。

オリビエ コット『コマ撮りアニメーションの秘密―オスカー獲得13作品の制作現場と舞台裏』

本書ではアカデミー短編アニメ映画賞を受賞した珠玉のアニメーション13作品、「隣人」、「フランク・フィルム」、「砂の城」、「ハエ」、「アン ナ&ベラ」、「木を植えた男」、「バランス」、「マニピュレーション」、「階段を降りるモナリザ」、「クエスト」、「老人と海」、「岸辺のふた り」、「ハーヴィ・クランペット」に着目。著者が、各作品の監督と制作に携わった関係者へのインタビューを通じ、各作品の制作舞台裏を明らかにし、これら 作品に使われたハイレベルな制作技術を独自の視点で紹介。

 これも深そうな本。実物を見ていないので、中味はわからないのですが、それにしてもこちらもため息の出るような貴重な一冊。映像のメイキング本には眼がないのです。

デイヴィッド アーモンド『肩胛骨は翼のなごり』

【カーネギー賞/ウィットブレッド賞受賞】 古びたガレージの茶箱の陰に、僕は不可思議な生き物をみつけた。青蠅の死骸にまみれた彼は誰……それとも、なに? ありふれた日常が幻想的な翳りをおびる 瞬間、驚きと感動が胸をひたす。英国児童文学の新しい傑作!

 表紙と帯の「宮崎駿推薦」の文字につられて手に取った。
 児童文学でこの表紙はちょっとと思うのだけれど、、、。

スコット・フィッツジェラルド『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

ブラッド・ピット主演×デビッド・フィンチャー監督の同名映画原作。老人の姿で生まれ、若返っていった男の、哀しくも美しい物語。 「人生は夢であると感じることはないだろうか。どんなに幸福な瞬間でも、過ぎ去ってしまえばもう、本当にあったのかどうかさえわからない。写真を見ても、 ただぼんやりとした記憶が残っているだけだ。そして、F・スコット・フィッツジェラルドぐらいそうした感覚に取り憑かれ続けた作家もいないだろう。」―― 訳者あとがきより

 文庫も出ているけれど、表題作だけで一冊にしたこちらを紹介。
 この本を書店で観るまで、フィンチャーの新作がフィッツジェラルド原作と知らなかったので、実は吃驚。それにしてもこれの映画のCMの量は凄いですね。フィンチャー作品でも飛びぬけているのではないかと、、、。

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2009.01.22

■新刊メモ『STUDIO VOICE 視覚コミュニケーションの新次元!!』
  『ARToolKit拡張現実感プログラミング入門』
 『幻影シネマ館』 『ハーモニー』

『STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2009年 02月号
特集 NEW MEDIA HORIZONS 視覚コミュニケーションの新次元!!』

対談:ひろゆき×宇川直宏 "共有形態"の現在と未来!
鼎談:チン↑ポム×宇川直宏 MAD的アートフォーム、タグ的発送法
コンテンツハルマゲドン前夜の公開実験現場としてのEXLIE
対談:菊地成孔×宇川直宏 ニコ動的空間に降り立つ覚悟はあるのか!?
対談:ジャガー×宇川直宏 元祖共有型MUSIC
映像と音楽の現在@非公開BBS

 視覚コミュニケーションの切り口で最近の映像関連の新しいネタについて書かれている。
 興味深い情報がいろいろと掲載されているので、ネット等でこの雑誌をガイドに確認してみたい。

橋本 直『3Dキャラクターが現実世界に誕生!
         ARToolKit拡張現実感プログラミング入門』

机の上で3Dキャラクターが歩き回るアプリケーションが作れる。ブームを作るきっかけとなった「工学ナビ」の作者が現実世界と仮想世界を融合する「拡張現実感」アプリケーションの作り方を優しく解説。

 『電脳コイル』放映中に評判になったソフトの解説書。

佐々木 譲『幻影シネマ館』

世界初の〈実在しない映画〉の本!36本の幻の映画を、そのストーリーはもちろんスタッフ・キャストの魅力までをも縦横に論じた衝撃の書。
たとえば――ハリソン・フォードが私立探偵を演じる「ザ・バッド・コントラクト」(1991年作品)。著作権盗用問題で裁判中のため(訴 えたのは、あのロバート・B・パーカー)いまだ未公開。(略)
――「椿三十郎」と「総長賭博」のハリウッド版リメイクから若きケビン・コスナーの主演作、そしてポランスキーの知られざる傑作、さらにはエロティシズム溢れるケン・ラッセルの問題作まで、観たことも聞いたこともない映画が36本。

 映画ファンなら誰でも夢の映画を夢想することがある。
 ちょっと趣味が違うような気もするけれど、楽しそうな本。

伊藤 計劃『ハーモニー』

 「一緒に死のう、この世界に抵抗するために」―御冷ミァハは言い、みっつの白い錠剤を差し出した。21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人 類は医療経済を核にした福祉厚生社会を実現していた。誰もが互いのことを気遣い、親密に“しなければならない”ユートピア。
 体内を常時監視する医療分子に より病気はほぼ消滅し、人々は健康を第一とする価値観による社会を形成したのだ。そんな優しさと倫理が真綿で首を絞めるような世界に抵抗するため、3人の 少女は餓死することを選択した―。(略)

 傑作『虐殺器官』に続く、オリジナルSF第二作目。
 こちらもハードなスタイルで期待大。

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2009.01.20

■新刊メモ 『Cinefex No.11 日本版』 『虚構機関』
 『iPhone SDKプログラミング大全』『たのしいCocoaプログラミング』
 『クイック・ジャパン Vol.81』

『Cinefex No.11 日本版』

ダークナイト
- IMAX映像と実写エフェクトで追及したリアリズム - ・現実世界へのこだわり ・IMAXカメラでの撮影 ・制作パイプラインの再整理 ・バットモービルの模型 ・回転するトレーラー ・トゥーフェイスのフェイシャルアニメーション ・リアリズムの追求

 映画も映像も素晴らしかったので、IMAXカメラによるメイキングにはワクワク。

木下 誠『iPhone SDKプログラミング大全』

iPhone用アプリケーションの開発キットである「iPhone SDK2.2」に準拠した開発手引書。 SDKの入手方法、インストールから、開発環境構築、開発法まで幅広く解説する。

木下 誠『たのしいCocoaプログラミング[Leopard対応版]』

Cocoaプログラミングの第一人者 HMDTの木下 誠氏による、Macのデスクトップアプリケーション開発の実践的入門書です。プログラミング初心者にもわかりやすく、そして楽しく、Cocoaプログラミ ングの基礎を解説しています。

 Intel MACがないので遊べませんが、いつか「iPhone SDK2.2」でソフト作ってみたいものです。触覚インタフェースで何かシュールなものを作るのはどうでしょうか。

『クイック・ジャパン Vol.81』

I do what I must do. 15,000字浦沢直樹インタビュー
小説 古川日出男「叱れフルカワヒデオ叱れDLX」

大森 望, 日下 三蔵『虚構機関―年刊日本SF傑作選』

 僕らの世代だと、年刊の傑作選ということでは、70年代の筒井康隆編『日本SFベスト集成』が強く記憶に残っている。これで各作品のSFの中での位置づけを学習していたので、どっか今も自分の根っこにこの基準が残っている感覚がある。
 漫画から奇想なSFとは思えない短編まで、視点の広さにワクワクした。
 この傑作選が今後毎年刊行されることを祈ります。21世紀のスタンダードになるか。

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2008.12.27

■新刊メモ 『歌うネアンデルタール』 『異端者の快楽』
  『エレクトリックな科学革命』

: スティーヴン・ミズン『歌うネアンデルタール―音楽と言語から見るヒトの進化』

 音楽は進化の過程でことばの副産物として誕生したというのが、これまでの主要な意見であった。しかし、ミズンは、初期人類はむしろ音楽様の会話をしていたはずだとし、彼らのコミュニケーションを全体的、多様式的、操作的、音楽的、ミメシス的な「Hmmmmm」と名づけた。絶滅した人類、ネアンデルタールはじゅうぶんに発達した咽頭と大きな脳容量をもち、この「Hmmmmm」を使うのにふさわしい進化を遂げていた。

 20万年前の地球は、狩りをし、異性を口説き、子どもをあやす彼らの歌声に満ちていたことだろう。一方、ホモ・サピエンスではより明確に意思疎通するために言語が発達し、音楽は感情表現の手段として熟成されてきたものと考えられる。

 認知考古学の学者スティーヴン・ミズンの本。
 (あ、これ新刊でなく2006年発行。最近本屋で見かけたので、、、。)
 意識と言語と映像認識の関係も当Blog記事の関心領域なので(^^)、メモメモ。

 ネアンデルタールが歌を歌っていたというのは、かなり詩的な映像になりますね。映画としても面白いかも。

見城徹『異端者の快楽』

僕はきっと絶望して死ぬだろう。死ぬとはそういうことなのだ。
しかし、絶望しきるために熱狂して生きなければ人生に何の意味があるだろうか。
その時まで僕は悲痛な日を送らなければならぬ。異端者の快楽を唯一の友にして。

 この既に伝説的な編集者の本、表紙も内容も刺激的です。
 雑誌で見城氏が愛犬(シェルティー)といっしょにニコニコして写っている写真をみた。んで、こわもてなこの編集者に最近、親近感を持ったのでした(^^)。

デイヴィッド・ボダニス『エレクトリックな科学革命―いかにして電気が見出され、現代を拓いたか』

電気が「流れる」とはどういうことか。何もないところを伝わる「電波」というものがあることに、いったい誰がどのようにして気づき、確かめたのか。ここには数式を知らなくても面白く鑑賞できる、知的かつ人間的なドラマが脈々と続いている。傑作『E=mc2』のボダニスが贈る、電気・電子の発見・開発物語。

 あ、これも2007年の本(^^;)。ロシア・アバンギャルドな表紙がいい。
 今回の3冊は本屋で表紙にひかれて、紹介したくなった本たちです。本の表紙ってどうしてこんなに魅力的なのでしょうね>>本好きの皆さん。

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2008.12.19

■新刊メモ 『柴田元幸ハイブ・リット』 『村上春樹ハイブ・リット』
 & レイモンド・カーヴァーの関連映像

『柴田元幸ハイブ・リット』(amazon)

収録作品:※朗読はすべて作者
ハッピー・バースデイ/バリー・ユアグロー
私たちがやったこと/レベッカ・ブラウン
大いなる離婚/ケリー・リンク
ペット・ミルク/スチュアート・ダイベック
雪人間/スティーヴン・ミルハウザー
オーギー・レンのクリスマス・ストーリー/ポール・オースター

『村上春樹ハイブ・リット』(amazon)

収録作品:
レイニー河で/ティム・オブライエン(朗読:ティム・オブライエン)
ささやかだけれど、役に立つこと/レイモンド・カーヴァー
                  (朗読:グレッグ・デール)
レーダーホーゼン/村上春樹(朗読:ジャック・マルジ)

 さすがにレイモンド・カーヴァーの朗読は残っていないのですね。
 とても残念。でもケリー・リンクとポール・オースターは、是非聴いてみたいもの。

◆レイモンド・カーヴァーの関連映像
 というわけで、Youtubeでカーヴァーを検索してみました。さすがYoutube、いくつもの映像があります。これは別途じっくり見て記事にしないといけないですね。(今週、本業がテンパッてて簡単な紹介にとどめます)

・YouTube - Raymond Carver
 カーヴァーの母がレイモンドについて語っています!
・YouTube - Raymond Carver (1 of 5)
 こちらもカーヴァーのドキュメンタリー。このビデオの最後にカーヴァーの語る映像が収録されています!
YouTube - Raymond Carver (2 of 5)
 こちらは冒頭から本人の語り。そして後半には"Why don't you dance?"を原作にした短編映画が収録。
YouTube - Cathedral: After the Blind Man Came.
 こちらは傑作「大聖堂」にインスパイアされた学生のショート・フィルム

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2008.12.05

■矢作俊彦『傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを』

Photo 名作ドラマ「傷だらけの天使」を小説化 矢作俊彦さんに聞く

 「2年前の暮れに、『傷天』の続編を映画化したいからあらすじを含めた企画書を書いてくれという話がありました。で、書いているうちに熱が入ってセリフやらギャグやらがいろいろ浮かんで、結局100枚くらいに膨れあがってしまった。それからまもなく、探偵事務所のオーナーで悪女キャラの重要な登場人物だった岸田今日子さんが亡くなり、なんとなく映画の話も立ち消えに……。だったらそれを小説にしないかという話になったんです」(略)
 「70年代の放映時、僕は20代半ばで毎日飲み歩いてたからそう熱心にドラマを見てたわけじゃない。(略)今回の小説で再び映画化の話が盛り上がればと思っています」

 僕らの同世代にとって、『傷だらけの天使』はアニメにおける『ルパン三世』と同等の位置をTVドラマにおいて持っているような気がする。
 どちらも夕方の再放送で眼にした大人の世界として(^^;)。

 そして矢作俊彦がその続編を小説化。
 この懐かしいOPを表紙とした本を手にとらないわけにいきません。

 結果はオリジナルTVドラマの設定と精神をすくい取った見事な続編でした。
 エンタテインメントとしての完成度と読ませどころも秀作にまとまっています。

 そしてなんとこれはネットワークとヴァーチャルリアリティとクローンを描いたSFでもあった!
 CGによるヴァーチャルな日本。と、そこにいる亨。ある部分、去っていった昭和と自分の過去も重ねたりして、目頭が熱くなります(^^;)。昭和と現在の邂逅の物語。

 ネットと外国人に溢れる現代日本に鉄鎚が下ろうとするそのテロ描写は、なかなか手に汗握ります。

 クライマックス付近で綾部貴子が主人公小暮修に言うセリフ。

 「(略)あなたのようなチンピラには信じられないようなものをいくつも見てきた。オリオン座の近くで燃えつきた宇宙船。タンホイザーゲートのオーロラ。そんな思い出もじきに消える。時が来ればー雨降る中のー涙のように、ーほら、その時がきた」

 唐突感はいなめないけれど、これもちょっと渋い。

 映画化の企画としてはじまったということだけれど、岸田今日子の死で流れたとのこと。
 どちらかというと、ここに出る綾部貴子は吉行和子でもいいかも。岸田の怪しさより、むしろ吉行の品の良さの方がこの小説に合っているので、今でも映画化が復活してほしい。

◆関連リンク
矢作俊彦オフィシャルサイトは現在工事中。
・以前、この公式HPで連載されていた小説『気分はもう戦争』は現在こちら→Internet Archive Wayback Machine矢作俊彦オフィシャルサイト(過去のアーカイブ)
矢作俊彦『傷だらけの天使 魔都に天使のハンマーを』
・ファンサイト ●傷だらけの天使● 東京シンヂケート
 米フォード社 サンダーバード 1965年モデル 幻のBGM「マヅルカ」
  みんなが真似した!オサムの朝食 しっかりと小説中にも出てくるコンビーフやトマト。
Dailymotion - 傷だらけの天使, a video from retudou. ドラマ, 主題歌, OP, 井上堯之, 大野克夫 オープニングの動画
・当Blog記事
 矢作俊彦プロデュース『気分はもう戦争』映画化
 矢作俊彦『ららら科学の子』映画化
  この2本の映画化企画も最近うわさを聞きませんネ。

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2008.12.01

■新刊メモ 『直筆で読む「人間失格」』  『贋作王ダリ』
 諸星大二郎『巨人譚』

『直筆で読む「人間失格」』 (集英社新書)

 本書は、太宰治の代表作「人間失格」の直筆原稿を、写真版で完全収録したものである。
 この「人間失格」の直筆原稿は、太宰の死後、遺された家族の手で、太宰本人が愛用した着物の生地を使い表装された和綴じ本4冊から直接撮影したものである。

 これ、凄い企画ですね。書店で手にとってなんかカンドー。
 作家の肉筆には、書き手の気持ちがなんらかの形で表れていると考えると、理想的な形なのかも。しかし現代では肉筆の作家っていったい何人いるか、、、??

スタン・ラウリセンス『贋作王ダリ―シュールでスキャンダラスな天才画家の真実』 (アスペクト)

 20世紀美術界最大の奇才、サルバドール・ダリ。なんとその全作品の約75%は「贋作」だった!
  ダリ専門アートディーラー兼詐欺師で、晩年のダリの隣人であった著者が克明に綴る、知られざるサルバドール・ダリの波乱万丈の生涯。欲望と狂気とスキャンダル渦巻く美術界を描いた驚愕のノンフィクション! 22カ国語に翻訳された世界的ベストセラー、ついに日本上陸!アル・パチーノ主演で2009年映画化決定!

夢のもののふさん 超現実ライフスタイル — スタン・ラウリセンス『贋作王ダリ』
 Stan Lauryssens: Crime writer(公式HP)

 原題は"Dali & I: The Surreal Story"。まさに超現実的な事実があったようです。
 調べてみたら映画は、なんと!

Dali & I: The Surreal Story (2009).

Director: Andrew Niccol

 監督があのアンドリュー・ニコル!!これは期待できます。
 『ガタカ』『シモーヌ』『ロード・オブ・ウォー』と現実の幻想性について描いてきたニコル監督の手になるシュウルレアリストの幻想的物語に期待。

諸星大二郎『巨人譚』(amazon)

 諸星大二郎、幻の作品集、遂に刊行!!
 短剣に印された“巨人の絵”を巡る 四つの物語。古代メソポタミア、古代ギリシャ、古代アフリカ──それぞれ の時代を生きる人々が繰り広げる人間模様。新作「ギルガメシュの物語」49 頁(予定)・カバー・口絵・解題を描下ろし+単行本未収録作品。

 諸星大二郎の描く巨人というと「僕とフリオと校庭で」をすぐ思い出しますが、今度はどんなタッチの物語が展開されるか。

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2008.11.22

■新刊メモ『夢のアロマ VENEZIA』 『ミスター・ミー』
 『MUSIC MAGAZINE08.11』 『幻影の書』

新美 直『夢のアロマ VENEZIA』(amazon)
 (株式会社 アップフロントブックス)

冬の日、ヴェネツィアはカーニバルにきらめく。
異教徒の海の風景、運河と歩道の石畳が織りなす迷宮、
光と影が交錯する町、そこに悦楽と孤独の匂いが漂う。

非日常的な空気が支配する水の迷宮都市ヴェネツィア。
背徳的な衣装と仮面をつけた群衆が広場にむかうとき、
みつめる人々もまた中世の幻想に迷い込む。

  以前記事にした鮮烈な写真集 新美直『アリゾナの青い風になって』~Spiritual Journey~に続く、写真家・新美直氏の新しい作品集。
 まだ実はこの本、見たことがないのだけれど、前作のような鮮やかな色合いとシャープな画角でベネチアの幻想が切り取られているのだろうか。

アンドルー・クルミー『ミスター・ミー』(amazon)
 (東京創元社 海外文学セレクション).

 書 物に埋もれて暮らす八十代の老人、ミスター・ミーは、失われた謎の書物・ロジエの『百科全書』の探索に熱中しパソコン導入に至る。ネット検索の果てに老人 は、読書中の裸の女性のライブ映像に行き着いた!
 彼女の読んでいる本のタイトルは『フェランとミナール――ジャン=ジャック・ルソーと失われた時の探 求』だった。

 書物の世界とネットの海の探索の物語(?)。
 この紹介文を読むだけで、ドキドキしてくる本ですね。誰か読みました?

『MUSIC MAGAZINE (ミュージックマガジン) 2008年 11月号』(amazon)

特集ザ・ブルーハーツ、ザ・ハイロウズ、そしてザ・クロマニヨンズ
 甲本ヒロト&真島昌利が語る二人の現在、ヒストリー+アルバム・ガイド、『TRAIN-TRAIN』で僕はブルーハーツ・フリークになった、他

 表紙がいいです。甲本ヒロトのヴォーカルと真島昌利の詩はグループが変遷してもいつも凄い。

ポール・オースター『幻影の書』(amazon)

救いとなる幻影を求めて――人生の危機のただ中で、生きる気力を引き起こさせてくれたある映画。主人公は、その監督の消息を追う旅へ出る。失踪して死んだと思われていた彼の意外な生涯。オースターの魅力の全てが詰め込まれた長編。オースター最高傑作!

 これは映像をめぐる探索の物語。
 セオドア・ローザック『フリッカー、あるいは映画の魔』を思い出します。そして著者がポール・オースター! これも期待の一冊です。

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2008.11.04

■レビュウ 古川日出男 『聖家族 生まれちゃったんだよ、俺たち。』

Photo_2
Photo
古川日出男と聖家族(公式サイト)
記録シリーズ・天狗 古川日出男|RENZABURO レンザブロー

扉一
狗塚らいてうによる「おばあちゃんの歴史」

扉二
聖兄弟・1 地獄の図書館・白石
聖兄弟・2 地獄の図書館・大潟
聖兄弟・3 地獄の図書館・郡山
聖兄弟・4

扉三
「見えない大学」附属図書館

扉四
記録シリーズ・鳥居 聖兄妹・1
記録シリーズ・天狗 聖兄妹・2
記録シリーズ・学府 聖兄妹・3
記録シリーズ・DJ

扉五
狗塚カナリアによる「三きょうだいの歴史」

 2005年の夏から書き進められ、ついに刊行された古川日出男渾身の2000枚の大作。738ページにおよぶ大部の小説を一ヶ月近くかかってやっと読了(結構遅読(^^;))。

 読後の感想をどう記したらいいのか。これはわかろうとしてはいけない物語かも。
 読むことによって通り過ぎて行ったもの/ことの残した痕跡/記憶のかけらを拾い集め、姿を変える全体イメージを、時々頭の中に浮遊させるべき本か。

 、、、、、というわけで、Blogの短い文章でこの膨大なイメージを受け止めるために、今日は文章を破たんします、とあらかじめ宣言。

◆物語を喰い破る無意識の侵犯

 羅列された記憶と歴史の断片が「無意識」の領域となって、物語という「言葉」の世界に属するもの/「意識」される何ものかを侵犯していく。
 そうして読者の頭の中に展開される、広大な古川の脳内みちのくイメージ。

 通常、作家は自らの脳内世界と格闘し、読者とコミュニケーションするために言語というツールを使って物語を紡ぎだす。

 だが古川日出男は音楽も使用する。それは独特のテンポで切り出された言葉による音楽。文体というよりも音楽と呼ぶのがふさわしいような何ものか。音楽のような古川のリズムを直接体感するには以下をクリック。それは物語を破壊し、言語コミュニケーションの限界を越えようとしている作家の戦術。

朗読ライブラリ(古川日出男公式サイト)
 聖兄弟・2  01_100k.asx (video/x-ms-asf オブジェクト).P225-229

 朗読のリズムを体感し、その音楽的なテンポで彼の文章を頭の中の声として読みこむ。作家の頭のイメージが、読者の中に少しだけ正確に再現される気分。

 だが「言葉」の世界でコミュニケートする我々読者は、物語部分にどうしても魅力を感じてしまう。
 ダイナミックなイメージを展開するのは、やはり物語として構築された部分である。特に前半の短編はそうした色彩が強い。大部を読ませるため前半に置かれたこれも作家の作戦?

 馬の切り裂かれた胴に頭を入れて死んだらいてうの夫。それを見てヂゴクを得た牛一郎と羊二郎兄弟の父 真大。
 平成元年で時間を止め、街全体がテーマパークとなってしまった街 白石。(これは現実にそうした街が存在すると思わせるリアルな描写。しかし現実の白石はそうではない。)

 前半の短編のイメージ喚起力は絶大。破綻の手前の物語がまず我々に提示され、リーダビリティを獲得する。そして続けて、後半炸裂する物語の破たん。

◆市井の長大な歴史のパースペクティブ

 時間の切り取りのテク。語っている現在のポイントの跳躍。
 壮大な家族の歴史、市井の人々の歴史を描くのに、個人の年齢を跳躍して描く手法。

 『ベルカ吠えないのか』の犬たちの歴史。
 『ロックンロール七部作』のロックの歴史。
 それら市井の歴史を描く古川の筆。歴史を描く、音楽的な跳躍文体。歴史丸ごとを本の中に圧縮して閉じ込める古川日出男の実験は、さらに完成度を増し、この本の中にある。

◆私の読書の記憶としての記録

・おばあちゃんの歴史 異能の狗塚家の七百年
・聖兄弟 土地の記憶 ご当地ラーメン 殺人体術 対人練習
・図書館シリーズ 東北の三つの街 真大と有里が「見えない大学」のためのフィールドワークを進める
・鳥居の向こうから現れる神隠しの記憶 鉄と馬と剣の歴史
・見えない大学 附属図書館 船の形の図書館 両眼を包帯で覆った老人司書
・新興宗教 誘拐事件とDJたち 森の中の船
・記録シリーズ・天狗 歴史から不要とされた異類である烏天狗

◆関連リンク
・執筆中の日記(五月前半脱稿)
古川日出男『聖家族』(amazon)
・当Blog記事
 超大作『聖家族』シリーズ 朗読ムービーファイル
 朗読ギグ 古川日出男×向井秀徳
 『爆笑問題のススメ』 古川日出男の巻 『ロックンロール七部作』 『ボディ・アンド・ソウル』 『ベルカ吠えないのか』  『LOVE』 NHK週刊ブックレビュー 特集 古川日出男『LOVE』を語る

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2008.10.16

■新刊メモ 『ビバ・イル・チクリッシモ!』 『可笑しな家』
  『浦沢直樹 原画集 漫勉』 『宇宙細胞』『モレルの発明』

大友 克洋, 寺田 克也『ビバ・イル・チクリッシモ!』(2冊セット) 完全限定版(amazon)

発作的に結成された自転車チーム"クラブ・パンターニ"による連載コラム7年分85本一挙掲載の《カーボンハート》《おしゃれハンドル》
◎ジロ・デ・イタリアを追いかけて1ヶ月、大友、寺田が見て撮って書いて描き下ろした観戦画集+エッセイ《ジロ・デ・イタリア》本、両A面
◎汗と涙と腰痛と自転車愛がサドルに踊る、総ページ192P、イラスト点数280点、うちフルカラーの新作50点、エッセイ15万字の2冊組

 大友克洋、最近、作品を眼にすることがなくなっていたと思ったら、こんな活動を、、、。またSFが読みたい。

黒崎敏 ビーチテラス『可笑しな家 世界中の奇妙な家・ふしぎな家 60軒』(amazon)

「え、こんな家に住んでるの?」 ここに建築の夢と未来がある──世界中の奇妙な家・ふしぎな家・建築家の傑作から素人の手造りまで60軒を収録! 世界中の変てこでユーモラスな個人住宅ばかりを集めた写真集。
黒崎敏 APOLLO一級建築士事務所

 立ち読みしたけれど、面白い家がいっぱい。
 こんな家が自分の家だったら最高(!?)なのに。

浦沢直樹 原画集・イラストブック『漫勉』(amazon)

浦沢直樹の画業二十五周年を記念して、子供時代の貴重な落書きから、未発表のカラー原稿まで、ロングインタビューと本人の解説により、浦沢直樹の全ての仕事・足跡を追った画集!!

 これはビニールで封印されていて、中味を観てません。
 いつの間にか、大友漫画を凌駕しつつある浦沢氏の画業。

黒葉 雅人『宇宙細胞』(amazon)

本の雑誌(10月号)の書評で「荒削りの魅力。新人賞だから商業出版ができた世界にも類がない作品」と紹介されました。第9回日本SF新人賞受賞作。

 このてらいもなくダイレクトにSFなタイトルに惹かれます。

アドルフォ・ビオイ・カサーレス『モレルの発明』(amazon)

 ブラザーズ・クエイの『ピアノ・チューナー・アースクエイク』の原作の新版。表紙がクエイの本なんて、画期的。
 映画もいよいよ公開ですね。

◆関連リンク 当Blog記事
『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』予告編 & 回顧展『ブラザーズクエイの幻想博物館』 
ブラザース・クエイの新作 The Piano Tuner of Earthquakes

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2008.10.07

■新刊メモ『樺島勝一 昭和のスーパーリアリズム画集』
 『少年マガジンの黄金時代 ~特集・記事と大伴昌司の世界~』他

Kabashima_syouwa_no_hyper_realism 樺島勝一 昭和のスーパーリアリズム画集(公式HP)
伝説のイラストレーター樺島勝一原画集1

昭和の 少年たちを熱狂させた冒険ロマン(略)の挿絵画家として一世を風靡した樺島勝一。本書 は、綿密な考証に基づく、リアルでドラマチックな挿絵185点を初めて原画から収録した資料的価値の高い画集。

弥生美術館・竹久夢二美術館

生誕120年記念
ペン画の神様 樺島勝一展
-写真よりリアルな密描画-
会期: 2008年10月2日(木)~12月23日(火・祝)

『樺島勝一昭和のスーパー・リアリズム画集』(amazon)

Img_0198  海野十三『太平洋魔城』の挿絵とか軍艦、潜水艦のイラストが素晴らしい。
 本屋で約30分、じっくりと立ち読みをしてしまいました。

 今の視点で観ると、さすがに「写真よりリアル」とはいかないけれど、昭和初期の少年の眼を疑似的にインストールして見ると(世代的には僕はずっと後です(為念))、飛び出すように迫力のあるリアルな画が迫ってきます。

 樺島氏の人となりも巻末に丁寧に語られており、興味深く読みました。

 東京では美術展も開かれているようなので、ファンの方は是非。

まるで写真を見ているようだ (樺島勝一の絵の秘密分析) (兵器生活)
 当時の雑誌の飛行機の写真と樺島画の関係を分析されている貴重な記録。

週刊少年マガジン編集部
平野 暁臣『岡本太郎と太陽の塔』
(Shogakukan Creative Visual Book) (amazon)

発見された資料を基に太陽の塔の全てを解説
永久保存が決まり、1995年に補修工事を終えた「太陽の塔」の全てを解説。初公開となる初期スケッチや写真、説計図などを用いて、岡本太郎が太陽の塔に 込めたメッセージを探ると共に、失われてしまった太陽の塔内部展示を誌面上にて再現。詳細な解説と、ビジュアル両面から岡本太郎の代表作に迫る。

 われわれ「20世紀少年」たちの未来の魂の故郷(おおげさ(^^;))、太陽の塔の貴重な資料集。これも樺島画集と同じ、Shogakukan Creative Visual Bookの一冊。今後のこの叢書からどんな本が刊行されるか楽しみです。

週刊少年マガジン編集部
『少年マガジンの黄金時代 ~特集・記事と大伴昌司の世界~』(amazon)

週刊少年マガジン掲載のなつかしい記事の集大成。1970年代、口絵の魔術師:大伴昌司の構成による少年マガジンのグラビア記事が一世を風靡した。 創刊から80年代までのマガジン黄金時代の記事・グラビアを公開します。

 そしてもう一冊、これも「20世紀少年」たちの魂の故郷、大伴昌司氏の作りだした未来。
 表紙が濃いですが、これは買います。

日本SF作家クラブ『世界のSFがやって来た!!―ニッポンコン・ファイル2007』(amazon)

 つけたしみたいになりましたが、昨年のワールドコンのレポート本。これも読んでみたい一冊です。

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2008.09.24

■古川日出男『聖家族』ついに刊行!

Photo_3古川日出男公式サイト 『聖家族』発売決定 2008.9/26

 これは僕のデビューからの十年間のビブリオグラフィ(著書目録)において、確実に最大規模の作品として登場するはずです。最大、とは、枚数の面でもそうだし、内容でもそうです。いったい小説において“スケール”とは何か――ということを、正面から己れに問いかけてもいます。

 2005年の夏から書き進められてきた2000枚の大作がついに刊行される。
 『すばる』『小説すばる』『青春と読書』他の各誌掲載分に書き下ろしを加えた小説。

 執筆中の日記(五月前半脱稿)を読んできたので、これにかける古川の意気込みの熱気に当てられている期待の一冊、こころして読みたいと思う。

◆関連リンク
古川日出男 挑戦者募集

編集部内で選考の上、20名の方に『聖家族』の校正刷りをお送りいたします。
選ばれた方には8月11日頃、校正刷りを発送しますので、お読みになった感想(40字以上)を、9月5日(金)までに指定のアドレスにメールでお送りください。

 こんなイベントがあったんですね!これを逃したのはファンとしては痛い。
青山ブックセンター:『聖家族』刊行記念
 古川日出男ナイトVOL・7 (六本木店:2008年10月11日)
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古川日出男『聖家族』(amazonではまだ登録されていない)
・当Blog記事
 超大作『聖家族』シリーズ 朗読ムービーファイル

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2008.08.23

■笠井 潔『青銅の悲劇 瀕死の王』

 笠井 潔『青銅の悲劇 瀕死の王』(amazon)

◆総論 メタフィクションでないアンチミステリー(この項 ネタばれはなし)

 「矢吹駆シリーズ日本篇 待望の第一作」、夏休みに読み切れず、結局、今週通勤電車に持ち込み、さらにオリンピック(野球)の韓国優勝をTVで流し観しながらさきほど読了。772ページの本を毎日持ち歩くのは疲れます。

 にしてもこの厚さは無駄ではない。厚さの理由は、謎に対する徹底的な推理論議が描きこまれているからなのだけれど、有機的に終盤のテーマに収斂していく。

 その終盤のテーマは一応の全ての謎解きの後に記述されるナディアによる20世紀本格推理小説論。しかもこれが小説としてのメタレベルで語られるのではなく、あくまでも物語世界のリアリティの中で、リアルだからこそ語られるところに本作の透徹した思考がある。笠井潔、やっぱり凄い。今年の本格ミステリーの(他を全く読んでいないけど(^^;))たぶんトップ。

◆推理徹底論議と、描かれる終焉間際の昭和の習俗

 今回、物語は笠井の『天啓の宴』等に登場する作家宗像冬樹が主人公。
 笠井自身をモデルにしたこの宗像と、「矢吹駆シリーズパリ篇」のワトソン役(?)ナディア・モガール、そして北沢響という高校生が探偵役で、旧家で起こった事件をあらゆる角度から推論/推測していく。最初、冗長かとも思われたそれらシーンは、しかしかなり緻密に整理されていて読みやすく、あきさせないで大部の小説を最後まで読ませていく。

 先の新刊メモで書いたナディアの日本アニメ・漫画研究のパートも、ある登場人物を描くのに重要な部分を形成している、そしてこの時代の日本のリアルを描くのにも成功している。
 全共闘の時代も当然このシリーズでは重要な位置づけで描かれるのであるが、今回は次回作への一つのステップとして、矢吹駆および宗像冬樹周辺の過去の描写と、そしてこれも1989年の日本のリアルを浮き彫りにするのに(先のアニメパートとの対比で大きく)貢献している。

◆アンチミステリー そして本質直感批判 

 ★ここからは、テーマに関するネタばれ有。
  でも犯人についての謎解き部分は触れません。

続きを読む "■笠井 潔『青銅の悲劇 瀕死の王』"

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2008.08.14

■新刊メモ 笠井 潔『青銅の悲劇 瀕死の王』

 笠井 潔『青銅の悲劇 瀕死の王』(amazon) 僕の感想はここ

待望の矢吹駆シリーズ!!
1988年末、東京郊外の旧家、鷹見沢家に続発する奇妙な事件!そして冬至の日、会席の席上、当主の信輔が突然倒れる!旧家に纏わる忌まわしき因縁とは?!

 この本、すでに7月に出てたんですね。知りませんでした(^^;)。昨日、本屋で見つけて、吃驚。

 『バイバイ、エンジェル』からスタートした笠井潔の哲学本格推理、既に30年近く読み続けてきただけにこれは外せません。今回、舞台をフランスから移して「矢吹駆シリーズ日本篇 待望の第一作」とあります。772ページという大部の本なのでとても電車で毎日持ち歩けないので、この夏休みが読み切るチャンスと即買。この厚さで2310円というのは、お得な値段設定で嬉しい。

 さっそく昨日の夜から読み始めたのだけれど、何が吃驚したかというと、ナディア・モガールが日本へ留学しているのだけれど、その目的は「日本のアニメとマンガの研究」!!
 フランスにおける日本文化の受容が進んでいるのは有名だけれど、ナディア、お前もか!?って感じ。そして、出てくる『ナウシカ』、『ヤマト』、『ガンダム』という作品名。今のところ(70ページ分)、哲学者の名前はフッサールもハイデッカーもひとつも出てこずに、アニメ作品名が頻発。どうした、笠井潔!!

 究極映像研としては、なにやら楽しい展開ではあるのだけれど、この先、どうなるのか、心配。笠井潔の現象学的アニメ論が展開されるのか!?? 乞うご期待!!

 

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2008.07.22

■新刊メモ 『銀の感覚』 『要するに』 『世界のサブカルチャー』
  『キングキラー・クロニクル 第1部 風の名前』
  『Core Memory ―ヴィンテージコンピュータの美』

 新刊+旧刊メモ。ほとんど自分の備忘録です。


ラルフ・イーザウ, 酒寄 進一訳『銀の感覚』 上 (amazon)

 これは07年刊行の本。表紙にも惹かれますが、中身も面白そう。

 銀の感覚 - PukiWiki. 幻想の20世紀データベース - PukiWiki

山形 浩生『要するに』(amazon)

 山形氏のエッセイ等を収めた本。これも出てるの知りませんでした。

パトリック・ロスファス, 諏訪原 寛幸, 山形 浩生, 渡辺 佐智江, 守岡 桜『キングキラー・クロニクル 第1部 風の名前』(amazon)

おとぎ話の存在と思われていた、青い炎の殺人集団チャンドリアンに旅芸人の両親を殺されたクォート。復讐のため、そして自らの生き残りをかけ、彼は 風の名前を呼ぶ秘術を学びに大学に赴くが――田舎宿屋の亭主に身をやつした伝説の英雄が語り起こす、壮大な物語の序章。綿密な世界観と複雑な人間造形に裏 打ちされた、子供だましでない大人のためのファンタジー、ここに始まる。 --山形浩生(訳者代表)

 こちらは訳書。山形浩生, 渡辺佐智江という組合せのファンタジーって、いったいどんな光景が展開されているのでしょう。どなたか読まれた方、コメントいただけると幸い。

『S-Fマガジン 2008年 08月号』(amazon)

 表紙がとてもいいです。スプロール・フィクション特集。

『世界のサブカルチャー』(amazon)

 ベタなタイトルだけれど、アートパートで面白そうな作家が多数紹介されている。

John Alderman『Core Memory ―ヴィンテージコンピュータの美』(amazon)

 こういう技術史系のアート本って、なんかいいんですよねー。
 これはいつか買いたい一冊。

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2008.06.17

■新刊メモ 岸川 靖『空想科学画報 Vol.1』
  アンナ・カヴァン『氷』  クリストファー・プリースト『限りなき夏』

岸川 靖『空想科学画報 Vol.1-SF DETAIL,The Pictorial Magazine』

カラーグラフ原子力潜水艦シービュー号
(シービュー号外観上の変遷前期型 劇場版およびTV第1シーズン改装型 TV第2シーズン~第4シーズンフライングサブ ほか)
海底軍艦・轟天号(伊号403潜マンダムウ潜航艇轟天号考察 ほか)

 表紙が僕らの世代のセンス・オブ・ワンダーを誘います。
 轟天号というより、シービュー号の世代なのだけれど、このフォルムがたまりません。中から出てくる潜水艇フライングサブとか。

 Amazonのレビュウで何故かこの本、批判されているので、購入はぜひ実物を観てから。

アンナ・カヴァン『氷』(amazon)

異常な寒波のなか、夜道に迷いながら私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気象変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて少女は姿を消し、私はその行方を必死に探し求める。軍事独裁下の某国に彼女がいることを突きとめ、要塞のような〈高い館〉へ乗り込んだ私は、強大な力で少女を支配する長官と対峙するが……。

サンリオSF文庫版 (1985年刊) を全面改訳! (略)
その魔法の力によって、『氷』は唯物論的なサイエンスファンタジーの視界を超えた領域に到達している。――ブライアン・W・オールディス

 サンリオ文庫版持っていないので、是非こちらで読んでみます。オールディスの評に心躍りますね。

<未来の文学>クリストファー・プリースト『限りなき夏』 国書刊行会

連作「ドリーム・アーキペラゴ」シリーズを中心にデビュー作「ラン」、代表作「リアルタイム・ワールド」「限りなき夏」など、研ぎ澄まされた達意の文章で綴られた傑作群全8篇を集成。日本の読者に向けた書き下ろし序文を特別収録!

 プリーストの初短編集。
 『奇術師』『双生児』の評価が高かったのが、このハードカバーの出版に結びついたのかも。今後の訳出も楽しみにしたい。

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2008.05.08

■黒沢清 『トウキョウソナタ』カンヌ出品
 新刊『恐怖の対談』

Variety Japan | 黒沢清『トウキョウソナタ』で5年ぶりカンヌへ.

黒沢監督は、「うそと疑心暗鬼と徹底した無視が、家族たち全員をどっぷりと浸しているところから出発させてみようと思った。最後にはどうにかしてある種の希望にたどり着きたい。(略)」

 イーストウッド、ソダーバーグ、ベンダース監督最新作がカンヌへ!
 Variety Japan | 2008年 第61回 カンヌ映画祭 関連ニュース一覧

 5/14に開幕するカンヌ映画祭<ある視点>部門に黒沢清の新作が選出されたとのこと。
 映画は今秋公開ということで今しばらくお待たせなのだけれど、カンヌでの結果が期待されます。黒沢清って賞をとってしっかりヒットしてほしい監督だと思うのだけれど、、、。

黒沢 清『恐怖の対談―映画のもっとこわい話』 (青土社)

Ⅰ 恐怖論
 高橋洋×鶴田法男 斎藤環 手塚眞

Ⅱ 作品論
 中原昌也 柳下毅一郎 青山真治

Ⅲ 作家論
 テオ・アンゲロプロス  サエキけんぞう  蓮實重彦

 伊藤潤二

 対談の相手がなかなか面白い取り合わせ。特にⅠの恐怖論が読んでみたい。

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2008.04.01

■中島 らも『君はフィクション』

中島 らも『君はフィクション』 (amazon)

 未発表作含む鮮烈な小説集。 04年7月、52歳で急逝。原作映画もヒット、没して猶存在感が増す中島らも氏の未発表2作を含む、小説集。幻想、愛、恐怖、笑い、毒…。不世出の異才の多面的な作風と魅力の全てがこの本にある!

 ユリイカ 特集『中島らも*バッド・チューニングの作家』を見るまで、実は情けないことに、この短編集は知らなかった。最近、リアル書店へ行くことが減っていることの弊害だ(^^;)。

 ユリイカを見て、特に「DECO―CHIN」を読みたくなって、手に取った。

 傑作。
 「DECO―CHIN」は凄かった。ロックの神髄がここにある。もしかしたら絶筆となった『ロカ』の書かれなかった展開は、この「DECO―CHIN」につながっていくものだったのかもしれない。なんて。

 ホラーの三本もいい。セオドア・ローザックの傑作『フリッカー、あるいは映画の魔』を思わせる「コルトナの亡霊」、民話的怪異譚「水妖はん」、「山紫館の怪」。「コルトナの亡霊」は以前取り上げた幻の映画、『シエラ・デ・コブレの幽霊』を想い出させたり。

 あとどうでもいいけれど、個人的に本書は岐阜県短編集って感じで感銘。

 中島らもと岐阜の関係は全く知らないけれど、本書の舞台は二編が岐阜。
 一編が中津川フォークジャンボリーを舞台にした「結婚しようよ」。
 で、もう一編は可児の具体的な地名(広見と明智)まで出てくる「狂言「地籍神」」。

 それにしても最後に苦言。この松尾たいこの装丁はなんとかならなかったか。最近SFの短編集他も松尾たいこの表紙が増殖しているが、独自のあの絵の世界自体はいいのだけれど、とにかく本の雰囲気とのミスマッチが多い。

 特にこの中島らもとのカップリングのミスマッチは大きい。僕の感覚だと、きっと中島らもが生きていたらこの表紙にはしなかっただろう。「DECO―CHIN」を果たして松尾たいこは読んだ上でこの絵を描いたのだろうか。

◆関連リンク
・青春と読書  小堀純氏の本書へのコメント

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2008.03.17

■諸星 大二郎 短編小説集 『蜘蛛の糸は必ず切れる』

諸星 大二郎『蜘蛛の糸は必ず切れる』(amazon)

 メフィストに掲載された四編と書き下ろしの一編を加えた諸星大二郎の第二短編集。
 雑誌掲載時に読んでみたかったのだけれど、今回まとめて読んで逆によかったかな、という印象。マンガの諸星作品を彷彿とさせるが、小説ならではの力強いイメージ喚起力に溢れていて秀逸な幻想小説集になっている。

 漫画から想像していたのとは違って、意外と端正な文体でつづられている。彼の漫画から想像していた泥臭さとか不可思議さとは少し違ったすっきりとした文体。
 しかし登場人物の感性と描かれる舞台はあくまでも諸星大二郎の世界。そして小説であるからこその内面描写で、よりリアルに立ちあがってくる部分がある。

 あと本の装丁が素晴らしい。真黒な背景に、諸星のカラーの蜘蛛と蝶の絵。本のページの端面もすべて黒。(挿絵ももちろん諸星。)

「船を待つ」
 いつくるかわからない船を待つ奇妙な人々。
Donzoko 倉庫での寝泊まりのシーンは、黒澤明の『どん底』のドロドロの世界を思い出させる。
 食堂のオモちゃんとの会話で主人公も読者も一息つくのだけれど、このオモちゃんというキャラクターも黒澤っぽい。
 漫画の絵にしない方がイマジネーションをかきたてる世界で、諸星が小説にしたのがよくわかる。

「いないはずの彼女」、「同窓会の夜」

 この2編は一人称の漫画では表現しにくい叙述もの。
 後者は、読者にはフェイントをかけたりして仕掛けが楽しめる。
 先日、実は卒業後三十ん年ぶりの同窓会へ行ってきたので、この「同窓会の夜」は、妙に各シーンがリアルに感じられた(^^;)。小説にしかできない世界。

「蜘蛛の糸は必ず切れる」

 芥川龍之介「蜘蛛の糸」の諸星版リメイク。地獄のリアルな描写が素晴らしくもおぞましい。ここは諸星のあの絵で見せてほしかったかも。
 クライマックスの主人公 ※(「牛へん+建」、第3水準1-87-71)陀多の体がバラバラになり、蜘蛛の糸を掴んだ手だけが意志を持って登っていくシーンは秀逸である。

 伏線の破戒僧の使い方とか、舌を巻くうまさ。釈迦の残酷性の描写が余韻をひく。これと「船を待つ」がお薦め。 

◆関連リンク
・諸星大二郎 最新情報他 - 葵屋 
芥川龍之介 蜘蛛の糸 全編。(こんなに短い話だっけ?)

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2008.03.03

■新刊メモ 『僕たちの好きだった革命』 『封印映像大全』
  『テルミン学習帳』

鴻上 尚史『僕たちの好きだった革命』 (amazon)
(角川書店)

携帯もCDも知らない47歳の男が僕たちの高校に復学してきた。30年の眠りから覚めた山崎の言葉は、理解できないことばかり。だけどいつの間にか僕たちは、革命に向かって走り出していた。大人気舞台を小説化!

 初小説『ヘルメットをかぶった君に会いたい』に続く、鴻上文学第二弾。
 今回も革命ネタ。前作、実はあまりいい感想を持てなくて、レビュウも書かなかった。
 もともと鴻上は、第三舞台の第一作『朝日のような夕日をつれて』を小説化すると言っていた。これがずっーと持ち越しで、ファンは待ちくたびれた。きっとあの笑いとシリアスとスピードの芝居は小説のエッジを広げるのではないか、と期待していたが結局今に至るも出版されていない。

 実録とフィクションが微妙にミックスされたような『ヘルメットをかぶった君に会いたい』。ここにスピードと笑いはあまり感じられなかった。

 第二作は、どうだろうか。今回は図書館にします。

『封印映像大全』(amazon)

ビ デオ・DVD化されない映画やドラマ、流出してしまった“あの有名人”の映像、決して再放送されないアニメ、歴史の闇に葬られた特撮作品、日本では見られ ないCMなど、有名な「封印映像」の数々は意外とインターネットで誰でも簡単に見られることを知っていますか?

 立ち読みして、さっそくYoutubeで『サザエさん 伝説の第1話』を検索して観ました。
 イヤー、いいものみせてもらいました。その他、観たかったあの作品が、、、、。

佐藤 沙恵『テルミン学習帳』(amazon)

  大人の科学マガジン Vol.17 (テルミン)はいま一つチューニングがうまくいかず、本棚の肥やしになってます。やはり本格的なのでないと、楽しめないのだろうか。
 この本買ったら、ちゃんとした楽器がほしくなりそう。

◆関連リンク
thirdstage.com
KOKAMI@network「僕たちの好きだった革命」
  中村雅俊、片瀬那奈、塩谷瞬のお三方へインタビュー!

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2008.02.25

■ユリイカ 特集『中島らも*バッド・チューニングの作家』

_ 「中島らも バッド・チューニングの作家」 青土社

 僕たちの世界から中島らもがいなくなって、既に3年半が経ってしまった。
 ユリイカでこんな特集が編まれた。事実上の処女作である幻の『全ての聖夜の鎖』が掲載されているだけでもファンには嬉しい本。

 まず表紙のインパクト。
 ピンクの文字に若かりし長髪のらも氏と兎の頭と洗濯バサミ。
 このパンクな雰囲気、中島らもらしさが炸裂。

 「バンド・オブ・ザ・デイズ」と名付けられた写真アルバムも、中島らもの実生活を生々しく伝えていて、なかなか興味深い。本で読んだあのジャンキーアル中な日々やなにわの「頭の中がカユい」日々はこんなだったわけですね。

 放送作家 鮫肌文殊氏が書く「フレームレスTV」というTVの中の中島らもが興味深かった。関西で放映されていた伝説の番組を僕もリアルタイムで体験したかったと感じることしきり。

 で、今はなんとネットで手軽にその一端に触れられる。Youtubeにその伝説が一部置かれている。

◆中島らも TVの日々
・どんぶり5656 竹中直人とのくだらないギャグ
・中島らも カネテツCM このバカバカしさもたまりません。
・中島らもの理想の死 今となっては笑えない。
 今日読んでいた中島らも『逢う』の松尾貴史との対談では、松尾といっしょにいた時も酒に酔って階段を落っこちたことがあるらしい。
・中島らも いいんだぜ 無修正版 この歌、初めて聴けました。
 で、ライブ映像はこちら 中島らも いいんだぜ
 これまさにラリってる。にしてもこの虚無感、凄い。

◆関連リンク
ユリイカ 特集『中島らも』(amazon) 

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2008.02.21

■KIASMA vol.19 古川日出男×(虹釜太郎+鈴木康文)
  on FREAK OUT!( Space Shower TV)

Freak_out [ FREAK OUT!
 Space Shower TV ×CoolSound ]

(キアズマさんのmixi情報より)

古川日出男
 ×(虹釜太郎+鈴木康文)

■初回放送:
2/22(金)21:00~22:00

■リピート:
2/28(木)24:00~
3/8(土)26:00~

 以前紹介したKIASMA vol.19 2008年1月18日 (金) @ 渋谷O-nest の朗読ギグがスペースシャワーTVで今週放映されるそうです!

 残念ながら昨年末にケーブルテレビの契約を縮小して同チャンネルを観られなくなっている私ですが、スペースシャワーTVのネットコンテンツDAXでのムービーファイルの公開を待ちたいと思います!

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2008.02.12

■新刊メモ 原 克『流線形シンドローム 速度と身体の大衆文化誌』

原 克『流線形シンドローム 速度と身体の大衆文化誌』(amazon)

自動車、蒸気機関車から、建築、警察、ゴルフクラブ、ミルクボトル、農作物、さらには流行歌、デートコース、女性の身体にいたるまで……すべての道は流線形に通ず!? 1930年代、アメリカ・日本・ナチスドイツ――かっこよくも危ういイメージの系譜をたどる大衆文化論です。★図版178点!

20世紀前半に一世を風靡したデザイン、流線形。スピード化・合理化の時代を象徴するそのイメージは、自動車や機関車にとどまらず、日用品や大衆文化、女性の身体に至るまで感染症さながらに拡大適用されてゆく。 本書は、科学/ファッション雑誌等を渉猟し、米国・ドイツ・日本でそれぞれ特徴的に展開した流線形イメージの系譜を比較文化論的に描く。

 流線形というのは、僕たちの子どもだった頃の未来そのもの。それを系譜でたどってあり、なかなか面白そうな本。
 著者 原克氏は早稲田大学教育学部教授。 専門は表象文化論とドイツ文学ということだが、末尾のAmazonリンクを見てもらうとわかるように、うちのBlogの関心領域について、いろんな著作があるようです。この方のことは知らなかったけど、世界一受けたい授業とかにも出てたみたい。

 書籍・論文リスト論文検索を見てみると、「ラテルナ・マギカ,あるいは映像戦略の図像学」「ミリオラマ,あるいは消費される空間疑似体験――十九世紀,動く画像への胎動」とか面白そうなものが並んでいる。(なかなか入手が難しそうな学会誌だったりするけれど、、、。) 

◆関連リンク
・当Blog記事 未来の車 GM Firebird Ⅲ
流線型 流線形 streamline (Google Image検索)
 あまり良い写真が出てきません。

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2008.02.05

■新刊メモ 筒井 康隆『ダンシング・ヴァニティ』

筒井 康隆『ダンシング・ヴァニティ』(amazon)

驚異の反復文体に中毒必至の傑作登場!

この小説は、 反復し増殖する、驚愕の文体で書かれています。この作品を読んだあとは、人の世の失敗も成功も、名誉も愛も、家族の死も、自分の死さえもが、全く新しい意 味をもち始めるでしょう。そして他の小説にも、現実生活にさえも、反復が起きる期待を持ってしまうかもしれません。この本を読むには相当の注意が必要で す!

 

冒頭部分掲載 雑誌『新潮』編集長・矢野優氏から (新潮公式)

「一般読者や同業者が首を傾げたり、もしかすると「錯乱の産物」として眉を顰めるかもしれないような小説を創ることこそわが使命」。これは本号掲載の「ダンシング・ヴァニティ」(長篇第1部130枚)を予告した筒井康隆氏の言葉だ

 文学の極北を今も突き進む筒井康隆の新作。
 これら言葉の魔力に惹きつけられるようにして、購入しました。どんな「錯乱の産物」を見せてくれるのか。

◆関連リンク
・筒井康隆公式サイト

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2008.01.29

「古川日出男・東京・REMIXED」
  ~作家・古川日出男がTBSラジオに初登場~

「古川日出男・東京・REMIXED」
~作家・古川日出男がTBSラジオに初登場~
(TBS RADIO)
 (キアズマさんのブログ | KIASMA | ライブイベント・キアズマより)

放送日:2月3日(日) 19時00分~19時30分

普段は「東京を歩きながら作品を構想している」ということで、 番組では、いつものように「東京を歩きながら」の番組ロケを敢行。 なぜ、東京なのか。なぜ歩きながら書くのか。 そして、その視線は何を見ているのか。それらを語って頂きました。

最新作「ハルハルハル」(河出書房新社)冒頭の舞台となった、 新宿・箱根山から始まり、青山霊園、月島、古川(渋谷川)の東京の4ヶ所を歩きました。 そこで語られた、東京の存在、小説、作家になった経緯。 古川日出男本人による作品の朗読も交えて進行。 さらにナレーションも本人の語りで構成。 ラジオ版「ロード・ノベル」のような実験的な番組を目指しました。

 イワナミさんのコメントで教えていただきましたが、TBSラジオで放送されるとのこと。
 作品の朗読というのが、とても楽しみ、、、だけれど我が東海地方では聴けないのだ。(Pod castとして公開されるといいけど、、、。

◆関連リンク
・古川日出男公式サイト.

また、過日行なわれた朗読ギグ「古川日出男×(虹釜太郎+鈴木康文)」の模様も一部、挿入予定です。

・ラジオワールド
 http://www.tbs.co.jp/radio/format/world.html
TBS RADIO podcasting 954(Pod cast)

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2008.01.23

■井上晴樹『日本ロボット戦争記1939-1945』

Robot_sensou_ki 井上 晴樹『日本ロボット戦争記―1939~1945』(amazon)
NTT出版 (公式HP)

 名著『日本ロボット創世紀 1920~1938』に続く、井上晴樹氏のロボット年代記。値段が高かったので、まずは図書館で借りて読んでみた。

 もの凄い膨大な資料を調査して、1939-1945年という第二次大戦下でのロボットの動向を緻密に描き出している。写真、挿絵、書誌事項、そして登場する人物の生没年まで詳細に記載されており、資料的価値も恐ろしく高い。とにかく1939-1945年の間に、ロボットと名の付くものは人形だろうが、自販機、自動ドアだろうが、広告のロボット風のカットだろうが、全部網羅されているのではないかと思えるほどの充実ぶり。

 まさにロボットを語るには、必携かも。この資料的価値だけでも、この本の値段は納得できる。僕は自分で買うことにしました。

 戦前と戦中に、「ロボット」という用語が現在のロボット+自動戦争機械+タンク(装甲装置的意味)+制御装置+コンピュータという広範囲の技術領域を指す言葉として使用されていたことがよくわかる。

 そして見事に最終章では、「戦争記」そのものといっていい記述がある。ここはネタばれになるので書かないけれど、是非最後まで読んでみてほしい。戦争の意味と人間のロボット性についての記述が感慨をもって語られている。「戦争記」としての見事な終章だと思う。

◆関連リンク
福本和夫『カラクリ技術史話』(amazon)(1943)
 たぶん上記の本の中身の紹介として下記のような人造人間の話が大変興味深かったので、ネットで検索。(正確には『技術史話雑考』に出てくる話として紹介されている)
中国科学説話雑識 番外編 中国古小説のロボット
 中国の人造人間に関する記述。話が本当なら、既にBC1000年頃にこのようなバイオテクノロジカルなロボットが中国で作られていたことになる。恐るべし。

Image1 「偃師造人」  『列子』湯問篇

なるほど、みな革や木を材料として膠や漆で固め白黒赤青といった色を塗って組み立てたものであった。穆王が詳細に調べてみると、内は肝臓・胆嚢・心臓・肺臓・脾臓・腎臓や胃腸、外は筋肉・骨格・手足や関節・皮膚や毛髪・歯に至るまで、全て作り物であった。しかも揃っていないというものは無かった。それを組み立てると元通りになった。穆王が試みに心臓を取り外すと口がきけなくなり、肝臓を外せば目が見えなくなり、腎臓を外せば歩けなくなった。穆王は「人間の技術も極めれば造物主と同じ事が出来るのかのう」と感心して、副車(乗り換えるための予備の車)に命じて偃師を載せて都へ連れ帰った。

・『列子』湯問篇 偃師 宇田整骨院・ロボット・鉄腕アトム・人造人間 こちらにも同様の記述
福本和夫著作集 全十巻(こぶし書房)2008年刊行予定

・エニアックの前に作られた機械式のコンピュータ。
Harvard_mark_1horz_2
the IBM Automatic Sequence Controlled Calculator aka The Harvard Mk I
『海野十三傑作選〈2〉地球要塞』(amazon) 
 『ロボット戦争記』の表紙絵はこの本の伊藤幾久造氏によるイラスト。
 ちなみにテキストは青空文庫で読めます→『地球要塞』
・その他作品は、作家別作品リスト:海野 十三(青空文庫)

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2008.01.04

■古川日出男「首都完全制圧! 古川日出男絶対革命4DAYS」
  朗読映像『ゴッドスター』@丸善丸の内店

Godstar 古川日出男さんの朗読映像『ゴッドスター』@丸善丸の内店
 2007年12月13日 | KIASMA | ライブイベント・キアズマ

YouTubeの映像は、その夜のクライマックスとして、古川さんのテンションが最高潮に達した部分です。(YouTubeは最大10分までしかアップできませんのでしぶしぶ3パート、なのです。)

 キアズマさんコメントで情報をいただきました。
 記事にした「首都完全制圧! 古川日出男絶対革命4DAYS」での『ゴッドスター』朗読会映像。(この朗読、是非見たかったのでナニワダさんに感謝です)

 最新作『ゴッドスター』のクライマックスが作家自身の朗読で体感できます。
 こんなタッチで古川日出男はこの小説をイメージしていたわけです。読んだ方も、これから読む方もこの朗読と読書を対比されることをお薦めです。

◆関連リンク
2007.12.8 古川日出男朗読『ゴッドスター』@六本木abc(Youtube)
Kiasma_goth_trad_2KIASMA vol.19
 2008年1月18日 (金) @ 渋谷O-nest

出演
 EL NINO ( OLIVE OIL × MC FREEZ )
 GOTH-TRAD
 ユダヤジャズ
 古川日出男×(虹釜太郎+鈴木康文)

 キアズマさんの次のイベント。
 こちらも新たなギグでどんな新しいチャレンジが行われるか、期待のイベント。古川日出男氏の熱い朗読と、新たなミュージシャンとのブッキングの相乗効果にはワクワクします。キアズマさんの素晴らしい企画、遠方で僕は行けませんが、またネットで参加された方のコメントが楽しみです。
 右のフライヤーもかっこいいので引用させていただきました。

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2007.12.24

■新刊メモ ポール M.サモン
  『メイキング・オブ・ブレードランナーファイナル・カット』

ポール M.サモン『メイキング・オブ・ブレードランナーファイナル・カット』 
公式HP

 SF映画の金字塔として、今なお輝き続ける「ブレードランナー」。 本書「メイキング・オブ・ブレードランナー」は、その製作の過程を克明に追った究極のドキュメンタリーとして、 1997年に初版が発行された。(略)

 本書は「ブレードランナー」の再生に合わせ、ファイナル・カット誕生に至る経緯とその間の関連事象を解説する新たな章と、主演のハリソン・フォードが、映画公開から25年を経て、初めてその口を開いた貴重なロング・インタビューを追加収録した、「究極のメイキング」のファイナル・カット版である。

 映画のメイキング本に眼がないので、手を出しそうですが、以前の1997年版からの進化の度合いをみてからにしたいと思います。

 いまだにこうして語られる『ブレード・ランナー』なのだけれど、僕は最初の公開の時にはディックの原作が大好きだったのと、映画としてストーリーに眼が行き過ぎていて、実はあまり良い評価をしていなかった。たしかにヴィジュアルには圧倒されたけれど、当時物語視点が強くて、大したSFじゃないじゃんってな生意気な感想を持っていた大学SF研人だった。浅はかな(^^;)。

 後年、映画はやはりヴィジュアルだと段々視点も変わってきて、評価は高くなっていくのだけど、でも最初の印象の影響がでかい。(いまだに『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』を完璧に映像化した作品を観てみたいと思い続けている。)

◆関連リンク
店主54才、玩具道(オモチャミチ)の光と影 : ブレードランナーの宇宙に移住する日。

映像に過剰な改変は見当たらず、世界はあの時のままに保存されていた。
大きな変化は鼓膜が聴き分けることとなった。
新しい効果音が幾層にも重ねられ、厚みを帯びて画面から溢れ出し、ついには観客を包み込む。

 やはり『ブレードランナー』と言えば、この方の文章は必読です。あの頃と変わらないクールで熱いあの文体がネットで読めることに感謝です。
Don Shay『Blade Runner: The Inside Story (Transmetropolitan) 』(amazon)
加藤 幹郎『「ブレードランナー」論序説 (リュミエール叢書 34)』(amazon)
【初回限定生産】『ブレードランナー』製作25周年記念
 アルティメット・コレクターズ・エディション(5枚組み)
(amazon)

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2007.11.27

■新刊メモ 古川日出男『ゴッドスター』
  古川日出男朗読による日本近現代詩名作選「詩聖/詩声」CD

古川日出男『ゴッドスター』(amazon) 新潮社公式HP

はじまりは、絶望の中にあった。ごく普通のOLだった私を一人の少年が変えていく。疾走する時間、崩壊する日常、そして広がる新しい世界――天地創造って、こんな感じだったの? フルカワ史上、最速・最強! 圧倒的リズムで語られる東京湾奇譚、いよいよ降臨。

 この紹介文を読むと、いままでの古川日出男の延長上の作品であると推測されるけれど、「フルカワ史上、最速・最強!」とは? テンションの高い公式HPの日記を読んでいても、どんどん先へ先へと突進している感じがあるので、今度も眼が話せません。

古川日出男公式サイト

12月8・13・16・21日 「首都完全制圧! 古川日出男絶対革命4DAYS」開催

最強の最新刊『ゴッドスター』(11月30日発売)と古川日出男選、古川日出男朗読による日本近現代詩名作選「詩聖/詩声」が収録された史上初のCD付き文芸誌「新潮」2008年1月号(12月7日発売)の発売を記念して、師走の東京を古川日出男が完全制圧!

天地創造ってこんな感じだったの?――言葉の力が世界を変える4日間。

Furukawa_kyoto  そして朗読ギグも引き続き開催されている。「言葉の力が世界を変える」とは、これまた宣伝文にしても、アジテーションが効いている。

 僕は電車の中、携帯のデジタルオーディオ機能で、今も週に一度は古川日出男と向井秀徳のギグを聴いている。上記イベントの一部は録音自由とのこと。どなたか参加される方がどこかに音声ファイルをアップされることを切に希望。本人周辺が下記リンクのようにYoutubeにアップする可能性もあり、地方ファンとしては期待してます。

◆関連リンク
イベント「どうにかなる日々」(12月1日開催)のタイムテーブル決定

12月1日(土)に横浜 ZAIM で行なわれるイベントでの、出演時間帯が決定。
 ギグ vol.1:15時40分から16時10分まで
 ギグ vol.2:19時00分から19時30分まで

古川日出男 朗読ギグ『サウンドトラック』(1/2) (2/2) @博多百年蔵 2007/9/2 (Youtube)
「新潮」2008年1月号(amazon)
  古川日出男朗読CD 日本近現代詩名作選「詩聖/詩声」収録

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2007.11.20

■ヤノベケンジ 『トらやんの大冒険』

Trayan_no_daiboukenn トらやんの大冒険(公式HP)
YANOBE KENJI ART WORKS
/// ヤノベケンジ アートワークス

  予告編 Quick Time Windows Media Player

“ある夜 星を見ていたら ひかりのかけらが
落ちてきた  「流れ星?」
それは小さな小さな太陽だった。”

 ヤノベケンジがチェルノブイリの保育園で見つけた人形と太陽の絵の物語を10年の歳月をかけてまとめ上げた初の絵本作品。
 実際に展覧会場ではインスタレーションツールとして登場。また、アトムスーツを身にまとった特装版も限定販売中。

 ヤノベケンジがチェルノブイリで観た保育園の壁の太陽の絵。ここを起点にした小さな太陽とトらやんの物語。

 ヤノベが描いた初の童話は、自身の作品を物語でつないだような作品。コンテで描かれたような素朴なタッチの絵がいい。うちの子供が嫌がったトらやんのヒゲもなくなって、可愛い絵本として仕上がっている。

 小さな太陽が地球を復活させる物語はチェルノブイリの街の再生を願ったものかもしれない。再生のキーワードが楽しく明るい未来のメッセージを運んでくる。

 先日見た核融合科学研究所が産みだそうとしている核融合の小さな太陽を僕は想像した。あのLHDの螺旋を素材にして、アートとしてヤノベケンジにモニュメントを作成してほしいと思ってしまった。

◆関連リンク 当Blog記事
核融合科学研究所(1) LHD そのテクノロジーとアート
核融合科学研究所(2) 夢の核融合発電実現まであと29年(目標) 

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2007.11.19

■小宮 正安 『愉悦の蒐集ヴンダーカンマーの謎』

小宮 正安『愉悦の蒐集ヴンダーカンマーの謎』

 この本を読んでまず思ったのは、世界がその隅々まで解明されていない時代の想像力を刺激するワンダーな事物への人々の憧れとか遊び心といったものだった。

Wunderkammer この本に登場する珍奇なヴンダーカンマーには、科学に毒され(あえてそう表現してしまおう)、空想力が著しく制限された現代が持ち得ない精神の自由な感覚に溢れているといったら言い過ぎだろうか。

 著者の小宮氏がこんな風に書いている。

 存在が確認されているものはもとより、存在未確認のものすら、それを作り出してでも展示しなければならない。世界を映し出すヴンダーカンマーにおいては、存在する「はず」のものはまがい物であろうとも、堂々と蒐集された。

 この本に溢れている人々が奇妙なものを求めてやまなかった好奇心には凄く憧れる。何か珍しいものに強烈に惹かれる人々。仰天させることに無常の楽しみを感じる蒐集家とそれを観る人たちの感じた驚異の世界。奇想な小説や映画を観て感じる驚異を、現実の世界で体験していた人々の愉悦が紹介される展示物の数々から感じられる。

 こうした幸せな時代の想像力にシュルレアリストたちがインスパイアされていた事実もさもありなん。現代は科学やテクノロジーによってその驚異を感じるのしか残されていないのかも。SFが生まれてきたメカニズムもこんなところに原点がありそうな気がしてくる。

 奇想と人間の関係を紐解くのには、最適なガイド本である。

◆関連リンク
高山宏の読んで生き、書いて死ぬ
 『愉悦の蒐集-ヴンダーカンマーの謎』

ヴンダーカンマー研究書は、ぼく自身、一時かなり蒐めたものだが、肝心の図版類はどれもこれも似たようなもので、あまりインスパイアされることがなくなっていた。見たこともない視覚材料で網膜がおかしくなるのは斯界御大のパトリック・モリエスの"Cabinets of Curiosities"で、2002年。眺めて嬉しいという点では、小宮氏の本はお世辞でなく、それ以来の嬉しさである。文化史ファン必携。

Patrick Mauries "Cabinets of Curiosities"
ニッポン・ヴンダーカマー荒俣宏の驚異宝物館
・当Blog記事 小宮 正安 『愉悦の蒐集ヴンダーカンマーの謎』

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2007.11.06

■『奇想遺産 世界のふしぎ建築物語』リンク集 (1)

『奇想遺産―世界のふしぎ建築物語』
 鈴木 博之/藤森 照信/隈 研吾/松葉 一清/山盛 英司
(amazon)

 この本、奇想遺産の入り口としては適当だけれど、写真も文章も各建築2ページでは少なすぎる。もっと知りたい、もっと観たいのに、と思うこと必至。というわけで僕の気に入った建築についてリンク集を作ってみました。

Kisou01

ル・ピュイ・アン・ブレ: le puy-en-velay 公式HP
こちらの方が新しい 公式HP
Le Puy en Velay~St.Michel d' Aiguilhe(ロマネスク美術館) Googleイメージ検索

シアトル中央図書館:Seattle Public Library 公式HP
Googleイメージ検索

名護市庁舎  公式HP
Googleイメージ検索
Architectural Map ぞぶろぐ: 象設計集団の日々

タ・プローム:Ta Prohm Angkorvat  orientalarchitecture.com
Googleイメージ検索 上智大アンコール遺跡国際調査団

Kisou02

サグラダ・ファミリア:Sagrada Familia
El Temple de La Sagrada Familia 公式HP
Googleイメージ検索

ゲートウエー・アーチ:Gateway Arch 公式HP
Googleイメージ検索

ポルト・ドーフィーヌ:Porte Dauphine Hector Guimard HP Subway
Googleイメージ検索

アブラクサス:Abraxas Bofill HP
Googleイメージ検索 映画の中の建築

◆関連書籍

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2007.11.03

■新刊メモ 『特集:星 新一』 『遺跡の声』 『ポップ科学大画報』
  『絶滅危惧ビデオ大全』 『京極夏彦 全小説徹底解析編』

『小説新潮 07.11 特集:星 新一 没後十年 いつか見た未来』(Amazon)

◆小松左京/僕が愛した宇宙人
◆追憶対談:最相葉月×新井素子/「文学」より大きいひと
◆名作再録:星 新一 ショートショート ベスト3
◆石田衣良、恩田 陸/星新一に捧げるショートショート

 もう没後10年ですか。あらためて星新一のショートショートってこうしていつまでも復刻が続くといいですね。僕も子供たちに読ませようと、子供向けのを一冊買ってあげました。ジュヴナイルSFとしても最高ですよね。

Hori_iseki_no_koe_3 堀 晃『遺跡の声』(Amazon)

このシリーズは最終話「遺跡の声」が先に書かれ、つぎに最初の話「太陽風交点」が書かれた。 銀河系辺境部に散在する宇宙遺跡の謎。
星々を巡る下級調査員の私と、助手である結晶生命トリニティの旅路。

 名作「太陽風交点」を含む結晶生命トリニティの物語、これ初文庫化なのですね。感慨深いものがあります。硬質でリリカルなこの作品集の再刊はとても貴重です。東京創元社の最近のラインナップは素晴らしいですね。
『遺跡の声』 文庫版あとがき[全文] 堀 晃

原 克『ポップ科学大画報 1―20世紀・科学神話の時代 (1)』(Amazon)

(略)貴重な図版をふんだんに盛り込んだ「ポップ科学大画報」の第一弾である本書では、人類最大の汚点である「原子爆弾」にまつわる神話、ナチスのプロパガンダとして利用された「アウトバーン」にまつわる神話などを題材としています。先の視点からこれらを見直すことで、新たに見えてくる事実。

 早稲田大学の原克教授によるポップな図録集。
 60年代生まれの郷愁を誘うこのポップを楽しみたいと思います。

植地 毅『絶滅危惧ビデオ大全』(Amazon)

ビデオ・レンタルの黄金期はバブルでした。つまり、回収が見込めないようなタイトルでも平気でリリースできた、という特殊な状況が存在していたのです。その時代に出回ったビデオ販売のみの作品数は、現在のDVD市場を軽く凌駕しています。(略)本書では、そんな「絶滅危惧ビデオ」を一挙に公開します。
【本書掲載ビデオ(一部)】
真由美~大韓航空機爆破事件/連続殺人鬼 冷血/ボディコン労働者階級/愛の三分間指圧/クローン人間ブルース・リー 怒りのスリードラゴン/佐川くんとの一週間/悪魔の植物人間/食人大統領アミン/大江戸レイプマン一杯のかけそば/ドカベン/日本ロック映像全集/ロスに喝! 織田無道 in LA/これが北方領土だ!/ノストラダムスの湾岸戦争大予言/シャロン・テート殺人事件/阿修羅 ミラクル・カンフー/安藤昇のわが逃亡とSEXの記録/吸血鬼ブラキュラの復活/ゴースト in 京都/アメリカン・バイオレンス/悪魔の凶暴パニック/ホラー喰っちまったダ!/群狼大戦/餌食/サマーキャンプ・インフェルノ

 この本、タイトルが秀逸。確かにDVD時代に埋もれてしまっているビデオが多数世の中には存在する。あと個人がTV等でビデオに録って、既に放送局にも原版がないようなものも数多いだろう。
 個人的にも自分の書棚の古いビデオを絶滅しないように早いところ、DVD化しないといけないのだけれど遅々として進まない。とりあえずWOWOWでやったリンチの『ON THE AIR』とか高城剛の『BANANA CHIPS LOVE』をDVDへ救助しているのみ。他は徐々に朽ちている、、、。あなたのビデオ棚の絶滅危惧種は大丈夫ですか?

宝島『僕たちの好きな京極夏彦 全小説徹底解析編』(Amazon)

・事件現場探訪! 日本憑物落とし紀行
・描き下ろし漫画コラム! 唐沢なをき・本島幸久
<超絶!イラスト図解>
●相関する憑かれし人々
●魍魎、塗仏、邪魅、ぬっぺぼう…etc

 あれだけ熱を入れていたのに、最近、ちょっと京極夏彦の本は積読状態。
 年末の『魍魎』映画で盛り上がれるか!??

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2007.10.27

■新刊メモ 小宮 正安 『愉悦の蒐集ヴンダーカンマーの謎』

Wunderkammer 小宮 正安
『愉悦の蒐集ヴンダーカンマーの謎』

     (集英社新書 ビジュアル版)

 ヴンダーカンマー
 :Wunderkammerとは何か?
 それは、直訳すれば“不思議の部屋”、博物館の元祖とも言うべき存在で、かつてヨーロッパで盛んに造られた。美術品、貴重品の他に、一角獣の角、人相の浮かび上がった石など珍奇で怪しげな品々が膨大に陳列されていた。

試し読み(公式HP)

 この現象の背景にあるのは、ヴンダーカンマー独特の「何でもあり」という価値観や、ジャンルにとらわれない大らかさへの再評価である。たしかに現実を振り返れば、学問にせよ芸術にせよ、あまりにも細分化、専門化されすぎた結果、一種の閉塞状態に陥っていることは否めない。だからこそ、この状況を打破するために、世界の多様な事物を総合的にとらえようとした一切智の空間、ヴンダーカンマーに立ち返る必要がある。そして、そこから再出発することで、新たな視座を獲得できるはずだ。

 やっと本を入手。まだ150点以上に及ぶカラー図版を眺めただけなのですが、ワクワクします。
 ヤン・シュヴァンクマイエルのファンなら、「愉悦」の本になることは間違いありません。
 ヨーロッパのこんなコレクションの数々が、チェコのシュールレアリストのルーツとして存在していたわけです。

 読後にまた記事書きますね。まずは本を開いた奇想な感動で取り上げてみました。怪しさ満点。

◆関連リンク
小宮 正安『愉悦の蒐集ヴンダーカンマーの謎』(amazon)
Wunderkammer (Googleイメージ検索)

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2007.10.10

■[爆音アトモス]対談
   MO’SOME TONEBENDER 百々和宏 ×古川日出男

古川日出男公式サイト

 10月3日 爆音アトモスで「MO’SOME TONEBENDER×古川日出男」
オンエア
 モーサムの vo. & g. 百々和宏さんと古川日出男さんが、酒場でひたすら呑みながら“表現”とその周辺について語るさまが、スペースシャワーTVの番組「爆音アトモス」のメインコーナーとして放映されます。
 初回:10/3(水)21:00~22:00
 再放送:10/6(土)22:00~23:00, 10/9(火)24:00~25:00

フルカワヒデオ日記

二十五日。スペースシャワーTVの「爆音アトモス」用に MO'SOME TONEBENDER の百々さんと酒場で対談。撮影されながら酒を呑むというのは初めてだが、のっけから盛りあがる。

[ 爆音アトモス ] SPACE SHOWER TV

[プレゼント]百々和宏×古川日出男サイン入り -どん底-パンフレット

「爆音アトモス」のメインコーナーVJを務めたMO'SOME TONEBENDERの百々和宏と古川日出男から百々和宏×古川日出男サイン入り-どん底-パンフレットを3名様にプレゼント!
応募 10/10(水) ※21:00まで

 という番組が放映されました。もっと早く紹介するつもりが遅くなり、ファンの方には申し訳ない。古川日出男、口ヒゲと顎ヒゲをはやしたのですね。(まさかヒゲ人類が繁栄したわけではないでしょう(^^;))

 残念ながら僕はMO'SOME TONEBENDERというグループを全然知らなかったのだけれど、お互いファン同士という間柄のようで対話はなかなかまったりと楽しいものだった。

 朗読ギグを聴くと、その前と後で古川本の読み方は変わってしまう、とか。百々和宏氏の歌詞で人称を意識するようになったのは、古川日出男の影響だとか。黒ビールをピッチャーでおいしそうに飲みながら語る二人。あとポイントを羅列メモ。

・古川作品 読者は若くなってる。360度の前線で戦う感じ。

・スキルとしてはベストセラー恋愛小説をかけると思うが、心中しちゃうカップルの恋愛話でなく心中しようとしているカップルが思いとどまるような小説を書きたい。

・音楽に近い小説、届く距離を意識する。内臓を撃てる表現、飢えがあるから何かが欠けてるから表現できてる。俺(古川)も欠けてるけど、君(読者)のそういうところを埋めたい。

 ということで、最後は古川日出男とMO’SOMEで爆発する何かをやりましょう、ということで締めくくられた。向井秀徳とのギグのような熱いセッションがこの先、開催されるのだろうか。

◆関連リンク 当Blog記事
熱い!古川日出男×向井秀徳 朗読ギグ ビデオ DAX配信
朗読ギグ 古川日出男×向井秀徳 放映&ネット配信

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2007.09.24

■天沢 退二郎 『光車よ、まわれ!』

天沢 退二郎『光車よ、まわれ!』(amazon) 復刊.com

 和製ファンタジーの金字塔、思春期の黙示録的行脚がここにある。不朽の名作ファンタジー。73年筑摩書房刊の再刊!

 単行本刊行時の装丁をほぼ再現!(司修氏による装丁デザイン・挿絵は当時のまま。ただし今回は函装でなくカバー装になります)。

 ある雨の朝、登校した一郎は、クラスの様子が、周囲がいつもと違うことに気づく。迫り来る闇の力に、一郎は神秘的な美少女、龍子たちと共に立ち向かう。「光車」とは何か?一郎たちは闇の力を無事に打ち倒すことができるのか?「指輪物語」など幻想文学好きにはこたえられない、神秘の深みを湛えたカリスマ的作品。

 いい評判を聞いて20年前に購入したのに、ずっーと積読になっていたこの本を、最近やっと読んだ。あちこちで『電脳コイル』が『光車よ、まわれ!』を思い出させるという書き込みを読んだから、というアニメな理由(^^;)。『電脳コイル』の天沢勇子の苗字は、この本の作家へのリスペクトではないか、という説もある。

 そして、読み終わった感想。これは傑作ジュヴナイルであり、素晴らしい詩的なファンタジーである。繊細に描かれた少年少女の心の動きと、つむがれている幻想的イメージが素晴らしい。ファンタジーの部分は、理屈やリアリティの構築でなく、詩的空間の構築にすべてが向けられている。

 東京なのに架空の地名の「サダヤ区」が舞台。学校にあらわれる異様に顔の長いばけものとしかいいようのないものとか、地霊文字とか、ドミノ茶とか、緑色の制服の集団であるとか。そこに論理はないのだけれど、リアリティのある小学生たちの生活描写と、これら言葉のイメージで、東京に幻の空間が切り開かれている。

 とくに不可思議な存在が中谷晃人と呼ばれる老人。この人の言う不可思議な言葉の意味は最後までどういうことだかわからない。だがどこか魅力的な詩的イメージが広がる。

 少年少女の快活さと、不可思議な幻想言語イメージ。こんな傑作が磯光雄の『電脳コイル』世界の底流に流れているのかもしれない。『コイル』世界は、今のところ理屈で割り切れる世界を着々と描き、「あっち」へと越境していこうとしている。この先の世界が、理屈を超えた詩的幻想世界を花咲かせて描写されたら、素晴らしい作品になるかもしれない。

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2007.09.20

■新雑誌 FICTION ZERO/NARRATIVE ZERO
  古川日出男のSF 『デーモン』掲載

FICTION ZERO/NARRATIVE ZERO
編者: 講談社文芸X出版部
(公式HP)

Fiction_zero_narrative_zero

ーノイズまみれの世界を変えようー「フィクションゼロ/ナラティブゼロ」は新文芸のための新しいパッケージです。(略)
 巻頭の古川日出男による「フィクションゼロ宣言」は、新文芸の誕生を謳っています。

フィクションゼロ Fiction Zero Side 
Seven Illusionsー小説・ゼロ地平の幻影
古川日出男・豊島ミホ・小川一水・壁井ユカコ・将吉・木葉功一・三田誠
ナラティブゼロ Narrative Zero Side
Six Narrationsーキャラクター世代の話法
東浩紀・福井晴敏・万城目学・虚淵玄・桜坂洋・仲俣暁生・桑島由一……
マンガ・小島アジコ
パラパラコミックス・湯浅政明
Animetic illustrations coordinated by STUDIO4℃
Art directed by Noriyuki Tanaka

 古川日出男 渋谷系SF『デーモン』冒頭の200枚が掲載されている雑誌。知らなかった、もう8月の頭に創刊されていたんだ。僕はさっきネットで知ったところで、まだ実物を見てません(最近、大きい本屋へ行ってないもんで、、、)。Amazonで買っちゃおうか、迷ってるところ。

 ということで、書評を探してみましたが、まだ長編の冒頭が掲載されただけということなので、あまり書評がない。いち早く読まれた方々の感想は下記リンク。

Blog 最後の本たちの国で さん : 「デーモン」 
Blog あくまでも。さんの 出発点はいつも、 

 それにしてもこの表紙はインパクトがある。SFだぁー。これだけでほしくなった。STUDIO4℃を起用しているところは素晴らしい。湯浅政明氏のパラパラコミックスもなんかダイナミックなものを予感させます。その他、掲載作品リストはこちら

『FICTION ZERO/NARRATIVE ZERO』(amazon)

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2007.07.15

■熱い!古川日出男×向井秀徳 朗読ギグ ビデオ DAX配信中

古川日出男 朗読ギグ『スローモーション』@京都METRO 2007/5/5
     (キアズマさんのブログ  ライブイベント・キアズマ:KIASMA)

 当サイトへ、キアズマさんからTBいただいた記事で紹介されている古川日出男×向井秀徳 朗読ギグが素晴らしい。
 DAX:SPACE SHOWER Digital Archives Xで紹介されている以下の4本が必見。残念ながら配信は07.7/15(つまり今日!)までなので見逃してる方は即。(以前の記事でDAXの配信について触れていたのだけど、どうせTV放映と同じと勝手に思い込んで、配信スタートに気づかず見逃してた。キアズマさんに多謝)

古川日出男×向井秀徳 2007.5.3 Shibuya O-NEST 

 1."6本の狂ったハガネの振動"
 2."ベルカ、吠えないのか?"
 3."USODARAKE"
 4."TUESDAY GIRL" 

 僕のお薦めはこの順番。
 「冷凍都市 諸行無常 性的衝動 リピート リポート」な1."6本の狂ったハガネの振動"が最高。2."ベルカ、吠えないのか?"もTV放映より長い9分58秒で別ver.、TV放映版の荒削りな感じもいいが、こちらの方が完成度は高い。宇宙時代の始まりの1957年スプートニクとライカをこんなに熱く表現できた存在は世界にない。

 とにかくまず聴いてみて。古川日出男の文体の凄さと向井秀徳のロックがすんごいことになってるから。文体ぶっ壊れてるって。
 「奇跡のようなギグがここにあります。必見。観てて体が熱くなる。言葉というプログラムが脳の中に展開して拡散するこの感覚。凄い」(1回目観たダイレクトな感想がこれ。とにかく一回目は熱く観ました。)

 古川は芝居の脚本・演出をしていたらしいけれど、彼の演劇ってこんなラディカルなものだったのだろうか。あー、本当に観たかった。

 古川が「FICTION ZERO/NARRATIVE ZERO」誌に書く新作は「渋谷系SF」だという。しかもタイトルは『ゴーレム』ならぬ『デーモン』。
 それが破壊された言語によるワイドスクリーンバロックだったら、日本のベスターは古川日出男に決定(^^;)。
 ベスターが生きていて『ゴーレム100』を朗読したら、きっとリンク先のギグと同様の迫力だったと思う。これも聴きたかった。

古川日出男 朗読ギグ『スローモーション』@京都METRO 2007/5/5

古川日出男公認。本人による『スローモーション』(河出書房新社刊『ハル、ハル、ハル』に収録)の朗読。

 こちらは古川日出男の朗読。詳細は読了した『ハル、ハル、ハル』の感想と合わせて、次回。

◆関連リンク
消される前に俺がテキストデータ化しておく。(Blog こめびつの中身さん)

 彼は向井秀徳とのイベントで向井の歌詞を独自解釈で朗読していた。その朗読は一種の緊張を生みだし、その声は会場を圧縮していく。その圧縮が極限まで高まった時に向井秀徳のギターがかき鳴らされ、会場はその圧縮から解放される。

 その時の古川の朗読をもう一度我々が読める文章に戻し、見直す事によって向井秀徳の歌詞によって古川日出男が作り出した物語が見えてくるのでは無いかと思った。

 上の動画のうち、『ベルカ』以外の3本をテキスト化された労作。
 引用にあるとおり、この3本はもともと向井秀徳の曲があって、それにインスパイアされて古川が朗読部分を新作したということのようである。向井秀徳の詩のラディカルさとそれをさらに破壊する古川の言葉。
『ZAZEN BOYSII』 6本の狂ったハガネの振動収録
 向井秀徳のバンドのアルバム。これも一度聴かねば。
古川日出男×向井秀徳 in 博多 

07年9月2日(日) 福岡 博多百年蔵・壱番蔵
開場18:00開演18:30 前売 ¥3,500 (税込・1ドリンク付)
出演:向井秀徳アコースティック&エレクトリック/古川日出男

 朗読ギグが9月にまた開催されるそうです。

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2007.07.07

■古川日出男 『ハル、ハル、ハル』
  & 「文藝」秋号 『特集・古川日出男』 本日発売

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『ハル、ハル、ハル』 07/07/07本日発売 (公式HP)

 乱暴で純粋な人間たちの、圧倒的な現在を描いた、古川日出男の最高傑作。

「文藝」秋号にて『特集・古川日出男』 (公式HP)

【特集 古川日出男】
フルカワヒデオ日記 「原稿よ、自由意志で増殖せよ」
〈対談〉×爆笑問題
     ×向井秀徳(ZAZEN BOYS)
〈インタビュー〉聞き手/柴田元幸、佐々木敦
〈エッセイ〉江國香織、角田光代、小澤征良   e.t.c.

古川日出男公式サイト インフォメーション

8月1日 新文芸誌「FICTION ZERO/NARRATIVE ZERO」に、衝撃の渋谷系SF『デーモン』冒頭200枚弱が一挙掲載

 うちの近所の書店では「文藝」しか置いてない。またAmazonに頼りました。こうして近所の書店が衰退していく。

 「文藝」をちょこっと読んだけれど、最初の柴田元幸との対談で相当疲れた古川日出男がいた。仕事量が半端ではないのは、公式サイトのイベント量をみてもよくわかる。くれぐれもご自愛を。

 8月に出る講談社の「FICTION ZERO/NARRATIVE ZERO」に古川SFが登場。今までも『アラビア』とか『13』とか充分SFだったわけだけれど、あえて今回SFと呼んでいるのは何故だろう。SFガジェット出まくりか。期待。

◆関連リンク
『文藝2007年08月号 特集古川日出男』(amazon)
『ハル、ハル、ハル』(amazon)

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2007.06.06

■古川日出男 超大作『聖家族』シリーズ 朗読ムービーファイル

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『聖家族』シリーズの情報ページ (古川日出男公式サイト)

 『狗塚らいてうによる「おばあちゃんの歴史」』(「すばる」06.6月号)
 『地獄の図書館シリーズ』( 「小説すばる」06.4, 7, 10月号)
 『聖兄弟』(「青春と読書」06.6月号~現在)
 三本柱でスタートした古川日出男の超大作『聖家族』シリーズの情報ページ
 朗読のムービーファイルを掲載。『聖兄弟』と『ロックンロール七部作』より「ロックンロール十段」前半後半の3本。(撮影・編集 下田彦太氏)

 当Blog記事で紹介した、朗読ギグ 古川日出男×向井秀徳を聴かれた方なら、古川氏の小説のセンスを、まるで音楽のように、そして演劇のように演じてしまうこの作家本人の朗読の魅力はわかってもらえるでしょう。
 もっと聴きたいと思っていた方、残念ながら今回は向井秀徳氏の音楽はありませんが、古川氏独特の朗読が3本、聴けます。

◆関連リンク
古川日出男インフォメーション 

6月16日 短期集中連載『聖兄妹』スタート 【Date:2007.6.1】
「小説すばる」7月号より、三ヵ月間の短期集中連載『聖兄妹』がスタート
朗読ギグ「古川日出男×向井秀徳」(5月3日開催)のグラビア速報も併録

すばる 2006年 06月号
 『狗塚らいてうによる「おばあちゃんの歴史」』収録

・当Blog記事
『爆笑問題のススメ』 古川日出男の巻 『ロックンロール七部作』 『ボディ・アンド・ソウル』 『ベルカ吠えないのか』  『LOVE』 NHK週刊ブックレビュー 特集 古川日出男『LOVE』を語る

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2007.06.05

■円城 塔『Self-Reference ENGINE』

円城 塔『Self-Reference ENGINE』(Amazon)
ハヤカワ・オンライン

〈ハヤカワSFシリーズ Jコレクション〉進化しすぎた人工知性体が自然と一体化したとき、僕と彼女の時空をめぐる冒険は始まった。イーガンの論理とヴォネガットの筆致をあわせもつ驚異のデビュー作。Jコレクション創刊5周年記念作品

 これは傑作。変態で不条理、雄大でユーモラスなハード(?)SF。
 特に奇想小説ファンは、是非読まれることをお薦め。素晴らしく脳がひっくり返る奇妙なイメージ世界を堪能できます。

 全体が二部構成、18編のそれぞれが独立して読めるバラエティに富んだ短編集(連作というよりこちらの表現が近いと思うがどうだろう)。しかし全体で、ひとつの大きな通常の人間の認識ではとらえきれないだろう世界が描かれている。素晴らしい。

★★★★★★★★以下、ネタばれ、注意★★★★★★★★

 僕が好きだったのは、下記の7編。

◆「A to Z Theory
 二十六人、ぴったりアルファベットAからZまでの名前の数学者が同時に単純にして美しい定理を発見する物語。何が起きているのかわからない不思議なダイナミズムにまず一撃。

◆「Event
 神父Cのテーゼというのがまず面白い。
 そしてそこから逃れるために巨大知性体が選択した自然現象そのもので演算する方法。これにより世界の時間律は解放され、人間が過去を改変されることに慣れてしまった世界。とにかくこれもわけがわからないが、自然現象そのもので知性体が計算を創める、というところのイマジネーションが凄い。

◆「Freud
 これぞハードSF版不条理日記。
 「床下から大量のフロイトが出てきた。」この一文のインパクトが凄い。フロイトとはもちろんジグムント・フロイトその人。二十畳の和室の畳の数と同じだけ、二十人のフロイトが亡くなった祖母の家で発見されたら、貴方はどうしますか?

◆「Contact
 人類と巨大知性体の、宇宙人とのファーストコンタクト。
 その宇宙人アルファ・ケンタウリ星人は、「Event」で描写された人類が想像すらできない巨大知性体に対して、さらに知性階梯を30段ほど登ったところにいるという。既にあまりに想像力の限界の果てのさらに彼岸まで行ってしまった存在の描写に、我々読者も巨大知性体とともにアタフタするのみ。

 この途方もないアルファ・ケンタウリ星人に言語中枢をのっとられてコミュニケーションのツールにされた巨大知性体ヒルデガルドが、その体験を詩篇として幻想的なレポートとしてまとめた25テラバイトの文章が興味深い。地球知性が途方もないものと出会った時、その表現ツールとして文学はまだ有効なようだ。しかし自然で演算する知性体の書いた詩篇、たぶん我々に理解はできません。これぞ究極映像じゃ。

◆「Japanese
 この一編、恐ろしく完成度の高い短編。
 発見された日本語文書は、その文字120億文字が全てが別々の文字で記されている。
 そして最初期に発見された14ページの一度は解読されたと思われた文書も実は、、、。人類と巨大知性体の知力を尽くした戦いの描写として、この設定とラストの落ちが素晴らしい。あー、なんて凄い短編なんだ。

◆「Yedo
 知性階梯を30段ほど登ったところにいる超越知性体アルファ・ケンタウリ星人とのコンタクトの手段として、地球巨大知性体のとった戦略は、喜劇専従の巨大知性体八丁堀とサブ知性体ハチによるお笑い駄法螺演算だった。
 超越したものとのコミュニケーションは、天才と馬鹿の紙一重を超えて、馬鹿の領域でコンタクトしようという、恐ろしくも馬鹿馬鹿しいハード数学SF(?複雑系SF?)。

◆「Disappear
 そして滅んだ巨大知性体。その理由は因果律を超えて、人間が想像した原因は全て否定されるところに存在する。決して手の届かないイマジネーションの世界を、群盲が撫でる、というのがこの本の巨大なテーマであるのかもしれない。まさにこの一編もそうした結構を持っている。

 とにかくこの不条理哲学超知性体SFに、ノックアウトされました。
 この作家の次が見逃せません。

◆関連リンク
Self-Reference ENGINE | Self-Reference ENGINE
 円城 塔氏本人のBlog。Profileによると、ここの社員さんらしい。凄まじい想像力を駆使したウェブサイト開発の仕事をしているのか!?
重力と恩寵: オブ・ザ・ベースボール―円城塔
『文学界 2007年 06月号』 文藝春秋
 第104回文學界新人賞発表-受賞作『オブ・ザ・ベースボール』円城塔(Amazon)
円城塔(wiki)
・菊池誠氏のkikulog
 Self-Reference Engine (円城塔、ハヤカワJコレクション)
nozomi Ohmori SF page (since Mar.31 1995)

(SFセミナー)合宿企画では、(略)Jコレの部屋では、「『Self-Reference ENGINE』を20分割したものを配る」というネタがそれなりにウケてめでたしめでたし。円城さんはすでにベテランの落ち着きで質問を次々に処理。新人らしい初々しさに欠けるのが問題と言えば問題か。

 ちなみに、「なにが書いてあるかわからない」と塩澤編集長から突き返された円城短篇「Boy's surface」は(予想通り)志村弘之に異様にウケていた。ちなみにBoy's surfaceとは、射影幾何の3次元空間への埋め込みのひとつで、日本語だとボーイ曲面(たぶん)。ボーイは、それを発見した人の名前なんですが(Werner Boy)、もしそれが男の子だったら……という駄洒落から生まれたボーイ・ミーツ・ガールの初恋物語(と推定)。(略)

Hash lab | Self-reference ENGINE

 ところで,円城氏は金子研のOBで,関数マップという超マニアック研究をヒトリコツコツやっている(た)人.関数が関数に作用して,関数自体が時間発展していく.要は,オペレータとオペランドの分離不可能性を真っ向から扱っている,複雑系ルール(ダイナミクス)派の仲間だと(勝手に)思っている.その彼が,「Self-reference ENGINE」と来たのだから,読むのがとても楽しみなわけである.

東大 総合文化研究科 広域科学専攻相関基礎科学系 金子邦彦研究室 関数マップ

円城塔とは - はてなダイアリー

ペンネームは金子邦彦『カオスの紡ぐ夢の中で』収録の短編「小説・進物史観―進化する物語群の歴史を観て」に登場する自動物語システムが名乗る筆名のひとつに由来する。

金子邦彦『カオスの紡ぐ夢の中で』

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2007.05.30

■上橋菜穂子『隣のアボリジニ』感想
  & 新刊メモ『ユリイカ』上橋菜穂子〈守り人〉がひらく世界

隣のアボリジニ―小さな町に暮らす先住民

 文化人類学者上橋菜穂子氏がオーストラリアでフィールドワークしたアボリジニのルポルタージュ。

 上橋氏の本は『精霊の守り人』しか読んでいないのだけれど、前半の緻密な情景描写と息詰まるアクションに感動した。そして専門の文化人類学に裏打ちされたであろう新ヨゴ皇国の設定。

 で、なぜか小説の続きを読むよりも、先に文化人類学のレポートを読んでみたくて手にとったのがこの本。200ページという薄い本ながら、白人社会の中でのアボリジニの歴史と今が生々しく伝わってくる本。

上橋菜穂子助教授 研究紹介(川村学園女子大学 観光文化学科)

 オーストラリアの先住民について、様々な角度から研究をしています。オーストラリアという国家の主流社会(アングロ・ケルト系の白人社会の中で、長い年月暮らしてきたマイノリティが、どのような文化変容を被るのか。そして、どんな風に自分たちの文化を創造していくのか……。

 「アングロ・ケルト系の白人社会の中で、長い年月暮らしてきたマイノリティ」としてのアボリジニの文化変容を、知り合った人々の語りを元に丁寧に慎重に描いてある。

 アボリジニというと、どうしてもエアーズロックの近くで管楽器ディジュリドゥを持つ孤高の民族ってイメージを思い出してしまうのだけれど、この本で描かれるのは白人の街で生活している人々なので勝手に思っていたイメージと随分異なる。
 誤解を恐れずに書くと、アメリカの白人社会の中で、歴史として迫害を受け文化的に変容している黒人やインディアン社会に近いものを感じた。

 本ではオーストラリアに白人が入ってきた歴史から紐解かれている。こうした不幸な歴史がアボリジニもあったというのは、全く恥ずかしいことに知らなかった。そして現代の彼らの変容と戸惑い。文化人類学というと、独特の風習であるとか思想を学問的に分析するイメージがあるのだけれど、ここで触れられているのはまさしく生活者としての生身の姿。文化としては呪術的側面や各種風習についても語られてはいるが、圧倒的に人々の生活の姿が興味深い一冊になっている。

『ユリイカ 第39巻第6号』(Amazon) (青土社 公式HP)

Eureka_uehashi_1特集*上橋菜穂子 〈守り人〉がひらく世界
【書き下ろし短篇】ラフラ(賭事師)
 〈守り人シリーズ〉外伝 / 上橋菜穂子

【よみがえる記憶、読書の歓び】
「もう一つの世界」のにおいを求めて / 上橋菜穂子×荻原規子

【更新されるファンタジー】
 小谷真理 安達まみ 天沢退二郎 日和聡子

【世界を読む男、変える女】
 上野俊哉 管啓次郎 長山靖生 永山薫

【はばたくイマージュを追って】
 白井弓子 大庭賢哉 小林エリカ

【ひろがりゆく上橋ワールド】
 藤津亮太 米光一成 榎本秋

【インタビュー】
「現実(リアル)」を問い直すためのファンタジー / 神山健治

 shamonさんにこういう特集本があるのを教えてもらいました。なかなか豪華な執筆陣で楽しみな一冊。『隣のアボリジニ』についても触れられているようです。

◆関連リンク
上橋菜穂子(Wiki) 
民族誌[上橋菜穂子]の講義情報
アボリジニ(Wiki) 
ピーター・ウィアー監督『ザ・ラスト・ウェーブ』(Amazon)
 アボリジニを題材にしたSF映画。ずいぶん前にSF大会で英語版で観た記憶。まったく内容を理解できず、どんな映画か記憶にありません(^^;)。この期に観てみようかな。

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2007.05.21

■北尾トロ 杉並北尾堂
  『ヘンな本あります―ぼくはオンライン古本屋のおやじさん2』

杉並北尾堂、Blog オンライン古本屋の日常(公式HP)
『ヘンな本あります―ぼくはオンライン古本屋のおやじさん2』(Amazon)

 著者は、1999年に開店したオンライン古書店・杉並北尾堂店主。本作では、多くのフォロワーを生むことになった前著「ぼくはオンライン古本屋のおやじさん」以降のドタバタを軽妙なタッチで描いた。

 たまたま図書館で手にとった本。オンライン古本屋さんの本を巡るチャレンジの記録。
 北尾トロ氏の本を読んだのは初めて。いいですね、この軽快感と脱力感。肩に力を入れすぎず、楽しみながらいろいろなチャレンジを続けるところがとにかく楽しく読める。

 古本屋としての記録だけでなく、ここを拠点にした地域密着のミニコミ誌の話とか、新刊本をオンデマンド出版するミニ出版社としての試みとか、期間限定のブックカフェとか、とにかく読んでいて次は何が出てくるのかという、ワクワク感がある。本好きにはたまらない記録である。
 なんで本の紹介に、amazonのアフェリエイトのリンクが張られていないのだろう。本をあれだけ出していて、しかも面白い北尾トロ氏のBlogならアクセスの拡大とアフェリエイトの稼ぎも馬鹿にならないだろうに。

北尾 トロ『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』

北尾トロ,高野麻結子『新世紀書店--自分でつくる本屋のカタチ』

 

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2007.05.12

■朗読ギグ 古川日出男×向井秀徳 放映&ネット配信
  単行本『ハル、ハル、ハル』刊行

古川日出男公式サイト インフォメーション

・KIASMA.vol.18「古川日出男ץ向井秀徳」(5月3日開催)で繰り広げられた古川さんと向井さんのセッションのダイジェストが、スペースシャワーTVの番組「爆音アトモス」内で放映されます。

・7月5日 単行本『ハル、ハル、ハル』が河出書房新社から刊行

Furukawamukai_1爆音アトモス
 (スペースシャワーTV) 
 ライブ:
 古川日出男×向井秀徳

 初回:5/9(水)
  21:00~22:00
 再放送:5/12(土)
  22:00~23:00
 再放送:5/15(火)
  24:00~25:00

 まさかTVで観られるとは思っていなかった。放映されたのは約7分。
 そこには『ベルカ、吠えないのか?』を熱く朗読する作家古川日出男とエレキギターを弾くロックミュージシャン向井秀徳の姿が。茶の間に。

 最初観た時は、朗読のリズムが自分の思っていたイメージと合わず奇異な感じ。
 そして2回目。頭の中に文字を思い浮かべ、手元の『ベルカ、吠えないのか?』をめくりながら観る/聴く。

 放映されたのは、P106「外見のまるで異なる雑種の七頭の子犬たち」~P112「同時に蒼穹を見上げていた」まで。+目次の各章タイトルの熱唱。

 やっと『ベルカ、吠えないのか?』のリズムが/作家の感じているリズムが、頭の中に体の中に染みてくる。向井秀徳の音も素晴らしい響きに。

 クライマックスは、ジャーマンシェパードの母犬シュメールとそのハイブリッドの七頭の子犬が、無重力の空間にいるソ連のライカと視線を合わせる「イヌたちの歴史に残る、あの1957年」のシーン。途中から向井の朗読/ボーカルがかぶる。ここが圧巻。

 素晴らしいギグに拍手を送りたい。

 再放送と、5月下旬からネット配信(http://www2.spaceshowertv.com/DAX/)もあるので、古川日出男を読まない人も彼の文学のイメージを体感できると思う。
 ファンの方は、NHK週刊ブックレビューで朗読する古川日出男を観た人もいると思うけれど、音楽とシャウトであれとはまた別種。

河出書房新社|特集|「ハル、ハル、ハル」刊行記念特設サイト

「この物語はきみが読んできた全部の物語の続編だ」
文学の臨界点に挑み続ける古川日出男の最高傑作。いよいよ7月7日発売決定!

古川さんへの質問を大募集。
いただいた質問、古川さんからの回答は7月7日発売の「文藝」秋号にて一挙掲載!

掲載させていただいた方にはなんと、「ハル、ハル、ハル」刊行記念・古川さん自身による朗読サンプラーCDを差し上げます。締切は6月1日AM0:00。

古川氏メッセージ「生まれながらのフィクション原理主義者として、親にも国家にも担当編集にも嘘をついてきましたが、読者にだけは嘘をつきません。何でも訊いてください。」

 「全部の物語の続編」、こりゃまた凄いチャレンジです。「読むものを狂気に導き歴史さえも覆す一冊『災厄の書』」を宣言して、作中作として描き上げた『アラビアの夜の種族』に続き、途方もない「全部の物語の続編」への古川のチャレンジを瞠目して待ちたい。

 朗読サンプラーCD、絶対ほしい!

◆関連リンク
「古川日出男×向井秀徳 in KYOTO」information
 (KIASMA:キアズマさんの ライブイベント紹介ページより)
ふなさんのblog真昼に見る夢 ■[ライブ]古川日出男×向井秀徳
 詳細にレポートされています。『ベルカ』のセッションがクライマックスだったとのこと。

・当Blog記事 『聖家族』シリーズ 朗読ムービーファイル
『爆笑問題のススメ』 古川日出男の巻 『ロックンロール七部作』 『ボディ・アンド・ソウル』 『ベルカ吠えないのか』  『LOVE』 NHK週刊ブックレビュー 特集 古川日出男『LOVE』を語る

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2007.05.05

■新刊メモ他 奇想コレクション 『失われた探険家』
  タカラトミー 二足歩行ロボットおもちゃ 『Omnibot2007 I-SOBOT』

Ushinawareta_tankentaiパトリック・マグラア, 宮脇孝雄訳『失われた探険家』(Amazon)
   (河出書房新社公式HP)

12歳の少女が庭で見つけた、行方不明の探検家――現代のポーと激賞される異色作家が綴る、グロテスクで官能的な世界。SF寓話からゴシックホラーまで全19篇。待望の全短編集。

 デヴィッド・クローネンバーグ監督『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』 の原作兼脚本家 パトリック・マグラアの短編集。『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』は渋くて良かったので、この短編集も読むのが楽しみ。

◆松尾たいこ<奇想コレクション原画展>開催 河出書房新社

松尾たいこ<奇想コレクション原画展>
期間:4月23日(月)~5月6日(日)  会場:丸善丸の内本店3F 

 ミステリ、ファンタジー、ホラー、現代文学のジャンルを超えて、「すこし不思議な物語」の名作を集めたアンソロジー・シリーズ「奇想コレクション」。松尾たいこさんは、この不思議な世界を、カバーのわずかな面積で 毎回表現しています。その貴重な原画を今回、一挙に初公開!この機会に、松尾たいこさんが描き出す<奇想ワールド>をご堪能ください。

 紹介記事を書くのが遅れて、すでに今日が最終日です。最近SFの表紙にどんどん進出している松尾たいこ氏の原画。近くなら覗いてみたかったのですが、、、。何故海外SFの表紙にこの方のイラストが増えているのか、ご存知の方、教えてください。イラストとしては嫌いでないのですが、奇想コレクションに合うとは僕にはなかなか思えないので、、、。

タカラ『Omnibot2007 I-SOBOT』(Amazon)
 タカラトミー、31,290円の二足歩行ロボット「Omnibot2007 i-SOBOT」正式発表.

商品名    :『Omnibot2007 i-SOBOT(オムニボット 2007 アイソボット)』
価格     :31,290 円(税別価格 29,800 円、税 5%:予価)
商品サイズ :(W)96×(H)165×(D)67 ㎜(ロボット本体)
商品重量  :約 350g(バッテリー含む)
発売日   :平成 19年7月予定
年間販売目標 :5 万個

 この手の2足歩行ロボットとしてはお手ごろな値段。どのくらい遊べそうか、まずはおもちゃ屋でいじってから検討ですかね。Amazonの取り扱いはスタートしたけれど、店頭にはいつから並ぶんだろう。

◆関連リンク
・パトリック・マグラア, 富永和子訳『スパイダー』(Amazon)
パトリック・マグラア脚本,デヴィッド・クローネンバーグ監督
        『スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする』
(Amazon)
・松尾たいこ氏公式HP、Blog a piece of life

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2007.04.26

■祝!!滝本誠氏 リンチ本 刊行予定!!
   日本推理作家協会<評論その他の部門候補作>ノミネート

 TVブロスの今号に、映画評論家滝本誠氏がエッセイで下記の2つの話題に触れられています!!

第六十回日本推理作家協会賞候補作決定 日本推理作家協会(公式HP)

<評論その他の部門候補作>
上島 春彦   レッドパージ・ハリウッド
小鷹 信光   私のハードボイルド 固茹で玉子の戦後史
滝本 誠    渋く、薄汚れ。ノワール・ジャンルの快楽
巽   昌章   論理の蜘蛛の巣の中で
安井 俊夫   犯行現場の作り方

 素晴らしい!! まずはノミネート、おめでとうございます!!
 審査員は井家上隆幸、新保博久、千街晶之の三氏。他の方の本は、どれもまだ読んでいないのですが、滝本氏の受賞をかげながら祈りたいと思います。

◆滝本誠氏、5冊目の著作デヴィッド・リンチ本が6/中旬 発行予定!!

 『マルホランド・ドライブ』論がものすごく楽しみです。あとエッセイによると、パリのリンチ展には来月行かれるけれど、入稿の締め切りの関係で、レポートはこの本には納められないようです。残ー念。

 こちらの本の(予定通りの)刊行も、こころからお祈りします(^^)。

◆関連リンク
・littlewonderさんのMy favorite oneでも紹介されています。

 オープニングイヴェントに集ってくださった方々には「あ~、いよいよ・・・」と察しがつかれると思いますが、7月にデヴィッド・リンチの新作映画「インランド・エンパイア」の上映が決まってそれにぶつける形で滝本誠さんのリンチ本が刊行されることがほぼ決定したようです。(現在発売中の『TVBross』でも滝本さん自ら公言されてしまいました。)

◆当Blog関連記事
新刊メモ 滝本誠『渋く、薄汚れ。ノワール・ジャンルの快楽』
滝本誠『渋く、薄汚れ。フィルム・ノワールの快楽』
  リンチの歌姫 レベッカ・デル・リオとジョセリン・モンゴメリ

その他滝本関連記事

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2007.03.28

■池谷裕二 『進化しすぎた脳』 感想 3 + α
   アニメーター磯光雄と金田伊功と脳の構造の関係

池谷裕二『進化しすぎた脳』 
 感想 1 「脳と無限の猿定理」 感想 2 「無意識の脳活動と芸術家の「半眼」」 
 感想 3 「脳のトップダウン構造と視覚」

 前日の記事 感想3で眼からうろこの視覚論を知ったわけですが、そこからアニメやその他映像について考えてみました。箇条書きですが、まずは覚書ということで、、、。

 これだけではわかりにくいと思いますので感想 3から先に読んでください。

視覚のトップダウン構造からアニメと実写映像を解読(序論)

・アニメの動きは、複数の静止画から、脳内の視覚情報処理メカニズムが動きを生成する幻の映像である。1/24秒のコマごとに眼から入ってくる、視覚野にとってわずか3%の映像が、脳内の複雑な動きの処理メカニズムを駆動し虚構の(しかし脳内では認識される現実そのものとしての)映像体験をもたらす
 つまり残り97%は眼から入った映像ではなく、脳の別の処理メカニズムが生み出した脳内映像である。

Eva_19_eye ・天才と呼ばれるアニメータは、外部に存在する事物の動きのデータとこの脳内の処理メカニズムの両方を直感的に理解して、映像に動きを生み出す存在なのだろう。それは我々が外部世界で観たものの再現の場合もあるが、脳内の処理メカニズムを利用した、どこにもかつて存在しなかった動きの映像なのかもしれない。
(ex.右図 磯光雄EVA第19話作画。この2コマの中間に我々の脳はどんな映像を生成しているのか?( 前日記事の図 薄いブルーの長方形に相当する映像のこと。これを脳の自動中割りメカニズムと呼んでみる(^^;)))

・従来、アニメ理論として外部の事物の観察の重要性が説かれている。しかし本来は、これに加えて、アニメータには映像の光刺激そのものより、それによって脳の自動中割りメカニズムがどう起動するかを観察/分析することが実はもっと重要なのかもしれない。

 錯視のメカニズムをそのわかりやすい例として挙げることはできるが、実は映像を観ることと脳内の動きの感覚を観察することがもっと重要なのだろう。どんな静止画のコマ運びがどんな動きの感覚として感じられるのか。つまりどんな静止画のつながりが、脳の自動中割りメカニズムを起動し、それにより生み出されたクオリアがどんなものなのか。
 優れたアニメータは、脳内映像クオリアの冷徹な観察者なのかもしれない。(だんだん妄想が暴走してます、すみません(^^;))

・絵画は現在アートとしての地位を確立している。それは現実の模写から始まり、抽象画に代表されるように脳内映像としか呼びようのないものを表現しているからに他ならない。静止画の脳内映像クオリアの優れた観察者が画家として優れた芸術家である。

 ではアニメータは?これは上の論述からそのまま、脳内の感覚として動きを視覚処理した結果のクオリアを表現できる/そして新たに創出できるアニメータは優れた芸術家である、と言うことができる。
 (こういう芸術という言葉を使った記述をすると、芸術とサブカルチャーの地位の問題に過敏に刺激を与えることになりますが、「芸術」を作家が脳内に持ったクオリアを他人に伝えることと定義していますので、別に呼び方による階層の議論をしたいわけではありません。ご注意を。)

Zambot_05_garunge ・静止画はじっくりと観ることができるため、意識できる外部の光刺激としての絵画情報に対して、無意識の脳内生成映像が介入する率が低いと思われる。それに対して、動画はその切り替わるスピードから、脳内活動が映像認識に占める割合が高い(もともと動きというのは脳内で生成されているし)。本来、絵画よりも動画の方が脳内映像の芸術としての創造の可能性が高いと言えるかもしれない
(ex.左図 金田伊功ZAMBOT第5話作画。この絵の中間に生成される脳の自動中割りメカニズムが生み出したクオリアは、新たなニューロンの回路を形成し、さらに次の斬新な動きのイメージを脳内に生み出しているのかもしれない。僕の脳の自動中割りニューロン回路の起源は金田伊功によるこの敵キャラ メカブースト ガルンゲの映像だと思う。そしてそれを進化させているのが、磯光雄他のアニメ作画のエッジに位置するアーティスト。)

村上隆の金田伊功分析で、狩野山雪『老梅図襖』とか北斎『富獄三十六景』を比較対象として挙げている。西洋美術の3Dに対して日本の2Dという視点で述べている部分はそれなりに面白いのだけれど、なんだかピンとこない論述である。
 はっきり言って、アニメ作画ファンの視点からみると、映像表現の先端を広げているように観える金田のアニメートを過去の芸術の領域に回収しようとしている胡散臭い論にしか感じられなくてモヤモヤした読後感しかわかない。(胡散臭さは村上が絵画やオブジェといった過去の芸術形態でそれらを模倣しているところからも来ている。新たに20世紀が発明した動きの芸術を、静止しているもので表現しようとしていることがそもそも限界を持っているのでないか。)

 アニメーションを、脳内の動き感覚のクオリアという視点で分析し、新しい芸術形態として位置づけるような試みを深めることしか、金田らが切り開いている何かの新しさは解析しきれないのではないか。

・コマごとに絵を描くことから、アニメで説明するとわかりやすいため上のような記述をしたが、当然実写映像や特撮映像にもこれらの考え方は当てはまる。映像によって人の心を動かす映画監督(もしくは撮影監督)は、脳内映像の優れた観察家でなくてはならないはず、事物を写し撮るのでなく、そこから生み出される感覚を写し撮るために。

映画評論家滝本誠氏は、画面に映し出されたものだけでなく、自らの中で暴走した脳内映像を含めて評論を書く(と言われている)。まさに上の脳のメカニズムを考えるとこれが本来の評論家の姿なのかもしれない。実は全ての人間は同じ映画を、同じ映像認識で観ているわけではないのである。暴走する脳内映像処理メカニズムを持った映像評論家は、それ自体、芸術家であるのかもしれない

・TVとフィルムで映画を観ることの違い、スタンダードTVとハイビジョンの解像度の違いをオーディオビジュアル評論家は論ずる。しかし実は脳内で補正されることで、映像の視覚野における質は、それほど違わないのかもしれない、特に映画を観ることに慣れた(脳内の動画映像を処理する回路が優れて育成されている)観客には。オーディオビジュアルマニアの細部にこだわる感覚と映画ファンのそれほどのこだわりのなさは、こんなところから説明できる。

・さらに、実は3%以外の残り97%は眼とは別の視覚を視覚野にもたらしている。脳内で作り出された宗教的体験(神)や幽霊や宇宙人といった幻の存在を観たり感じたりするのも、この脳のトップダウン機構が影響していそうである。
 小説や映画の描く空想を現実に近いものとして感じる感情移入の体験や、ヴァーチャルリアリティの持つリアル感がどこから来るのかということの説明としてもこのトップダウン機構は有効。

 さて、うだうだとした妄想に最後まで付き合っていただけて、ありがとうございます。
 最後は、またまた飛躍しておかしなことを書いていますが、さらにちょっとだけ続けてしまいます。

・『電脳コイル』は、電脳メガネによりヴァーチャルな映像が町に溢れる世界を描いている。案外と上のように考えてくると、実は人の脳が世界を観ている構造はこのアニメの描く世界に近いのかもしれない。つまり電脳メガネが強化現実として映像を付加している『電脳コイル』の世界は、すでに現在の人間の脳がやっているとを電脳メガネというガジェットでわかりやすく表現しているだけかもしれない。

 といった認識論的な視点でも僕はSF『電脳コイル』に期待してたりします。

 ではでは、今度こそ、ここで終了!!

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2007.03.27

■池谷裕二 『進化しすぎた脳』 感想 3
   脳のトップダウン構造と視覚

池谷裕二『進化しすぎた脳』 
 感想 1 「脳と無限の猿定理」 感想 2 「無意識の脳活動と芸術家の「半眼」」

 感想 3は、このBlogと最も関係の深い視覚と脳について。脳内映像を標榜する「究極映像研」としてはたいへん興味深い内容。

◆視覚における脳内のトップダウン構造

①人間の視神経は、眼の中心部は色を認識できるが、外周部はモノクロしか識別できない。(P144)

Shinnka_nou ②正方形の次に縦長の長方形を見せると、脳の「動き」を感じる部位が活動して、正方形が徐々に縦に伸びていったと感じる(右図)。脳が意識とは別の活動として「これは正方形が縦に伸びていった」と勝手に解釈し中間の映像を生成する(右図薄いブルーが生成された映像。まさにアニメの中割りを脳が実行しているわけです。)(P138)

③2004年の『ネイチャー』の論文によると、自然の風景を見ている時と暗闇の中にいる時を比較して、大脳皮質の視覚野の神経活動は10%ほどしか違わない。つまり外からの視覚刺激があろうとなかろうとニューロンはほぼフル活動している。我々は眼の刺激だけで視覚を構成しているわけではない。(P338)
 論文 Small modulation of ongoing cortical dynamics by sensory input during natural vision PDF

④視覚野のシナプス活動のうち、視床から入ってくる視覚情報は15%に過ぎない。さらに視床そのものも眼からの情報を中継する部分(外側膝状体)は視床全シナプスの20%。つまり視覚野が処理する外の視覚世界の情報は、わずか15%×20%=3%。我々の観ている画像は、そのわずか3%が外の視覚世界でそれ以外は脳が処理した別の視覚情報(例えば上述②の止まっているものを動いていると知覚する脳内の活動情報等)。(P351)

⑤人間が机を正面から見て、次に右へ90度回って視点を変えたとする。視点による机の見え方が変わるため、ただ外部の視覚情報からだけではそれを机と認識できないはず。脳の中では「これは机なんだ」という内部情報が発生し、外部の視覚情報に対して机という認識を貼り付ける強力な脳内の「トップダウン」による情報処理の機構が働いている。
 ④の眼から視床を通過して入ってくるわずか3%の外世界の光情報を「ボトムアップ」による生データとすると、それに対して意識のレベルでは「トップダウン」方式によって内なる97%の視覚情報が覆いかぶさって我々の視覚認識がなされる
 眼の解像度が100万画素のデジカメ程度だとして、世界を滑らかに見せているのは、この「トップダウン」の視覚の認識機構によるものである。(P353)

 どうです、面白いでしょ、眼から鱗の視覚の驚愕すべきメカニズム。
 本の中では、錯視や盲点等の例を紹介して、眼からの情報だけでなく、我々が視認識しているものの正体を一部実感させてくれながら、解きほぐしてくれています。わずか3%が眼からの直接の情報であると考えると、究極映像研的にはいろいろと人間の映像処理の説明が付けやすくなります。

視覚のトップダウン構造からアニメと実写映像を解読(序論)

 上の視覚のメカニズムを使うと、いろんな映像について面白い解釈ができます。その一例を簡単に述べます。(これはいずれ書いてみたいと思っている僕の「脳内映像論」みたいなものの骨格になるかもしれません、、なんちゃって(^^;;)。以下、もう少しだけ妄想にお付き合いください)。★長文になったので、次の記事にします。(明日アップ予定→アニメーター磯光雄と金田伊功と脳の構造の関係)

続きを読む "■池谷裕二 『進化しすぎた脳』 感想 3
   脳のトップダウン構造と視覚"

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2007.03.25

■古川日出男公式サイト と 朗読ギグ

Furukawa 古川日出男公式サイト フルカワヒデオ日記
 (どちらも集英社サイト)

 取材のために南房総へ。充実した時間を過ごす。ここから二日間ほど、合計して四つの作品のアイディアが同時多発的に爆発。いったいおれの脳味噌どうなっちゃってるんだ状態になる。だが、いざ新作中編にとりかかると、地獄のはじまり。ネタが浮かぶことと小説が“書ける”ことはまったく違う、という当たり前の認識に蒼白となる。凄絶な恐怖。正直、白髪がどんどん増えるのがわかる。ひたすら新しい文体に嬲られ、それでも喰らい付きつづける……しゃにむに、死に物狂いで。

「古川日出男×向井秀徳 in KYOTO」information
(mixiに足跡を残されたKIASMA:キアズマさんの ライブイベント紹介ページより)

「古川日出男×向井秀徳 in KYOTO」
2007年5月5日 (土・祝) 17時開場/18時開演
@ 京都METRO

  最新作『サマーバケーションEP』が刊行された古川日出男の公式サイトが07年2月にできていたようです。知りませんでした。日記がなかなか注目、マジカルな文体で作家の日常がつづられています。古川日出男創作の秘密に迫れるかも??(しかし「ヒデオ日記」は「ビデオ日記」との誤読を狙っているのでしょうか。それともベストセラーひでお日記をパロった?)

 あと朗読ギグのイベントも面白そうです。渋谷でも5月3日に開催されるとのことです。
 昨年、NHK週刊ブックレビューで初めて朗読する古川日出男を観たのだけれど、あのまるで小説の文体をさらに拡張したようなテンポが舞台に炸裂するのでしょうか。京都、観たい。

◆関連リンク
   
古川 日出男「ゴッドスター」掲載 (雑誌『新潮』 2007年 04月号) 
         『サマーバケーションEP』

・当Blog記事
『爆笑問題のススメ』 古川日出男の巻 『ロックンロール七部作』 『ボディ・アンド・ソウル』 『ベルカ吠えないのか』  『LOVE』 NHK週刊ブックレビュー 特集 古川日出男『LOVE』を語る

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2007.03.21

■インディアンのカチナ と ツリーハウス
  KACHINA & TREE HOUSE

『インディアンの贈り物―ネイティブ・アメリカンのクラフト図鑑』

 最近書店に並んでいるムック。この本に載っているカチナ:KACHINAという人形がなかなかいい感じなので調べてみました。

カチナの話(カチナドールの専門店KOKOPELLI)

カチナ(kachina/katsina)はホピ族が信仰する精霊、精神のこと。それを形にしたものがカチナドールです。元々カチナドールは儀式の際子供達に与えられ、カチナの意味、目的、起源、歌、踊り、力、飾り、デザインを教えるための教材のように使われました。

 この専門店のHPにも、いくつか写真が掲載されています。
 で、グーグルイメージ検索してみました→KACHINA

Kachina
 こういう民俗学的な人形って、独特の世界観があって、どこの国のもいいですね。この本には、もっと水木しげるが喜びそうな妖怪的なものもいろいろと載ってます。
 こういうの、収集したくなりますね。

ピーター ネルソン『ツリーハウスをつくる』

 カチナから鬼太郎を連想して、彼の家を思い出したというわけではないのですが、最近、CM(ネスカフェ ゴールドブレンド「オンリーワン」篇)に出てくるツリーハウスが気にいって、ちょっとだけリンク集。
 ツリーハウスにカチナやその他、世界の不思議な形の人形を飾ったら楽しいでしょうね。退職後にコツコツ作ってみましょうか。と遠い眼(現在、仕事たいへんモードが続いており、つい夢想)。

THP | Japan Tree House Network: TOP 
TreeHouse(グーグルイメージ検索)
Treehouse_boat_1Scallywag Sloop
 まるでギリアムの世界ですね。
 素晴らしい。

Most Peculiar Tree House
 宙吊りの目玉おやじですじゃ。

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2007.03.19

■池谷裕二 『進化しすぎた脳』 感想 2
   無意識の脳活動と芸術家の「半眼」

 感想2は、こんなタイトルにしてみた。「半眼」は浦沢直樹氏の話につながるはずなのだけど、どうなることか。(自分でも書いてみないとうまくつながるか自信ない(^^;))

 まずは『進化しすぎた脳』から面白かった部分をポイントで紹介。

◆無意識の活動と意識

・病気(水頭症)で通常の脳体積の10%しかない人でも、大学の数学科の首席をとり通常以上の思考活動ができる例がある。病気にかかったとは知らずに検査で初めて気づいた。「進化しすぎた脳」はその一部だけでも充分な仕事を果たす(P84)

・ボールが投げられてからキャッチャーがうけるまで0.5秒。人間はものを見て判断するまでに0.5秒かかる。野球選手は視床から視覚野に入った映像を意識して行動をおこすのではなく、「上丘」で原初的だけど素早い視覚処理をして意識することなくダイレクトに行動してボールを打っている。意識はあとでついてくる。(P138)

・ボタンを押すという行動と脳波の関係を調べると、「動かそう」という意識が現われる1秒前に、すでに「運動前野」という運動をプログラムするところは動き出している。「動かそう」としたのは無意識の脳活動が先で、それを後追いで意識が確認している。
 「動かそう」と脳が準備してから「「動かそう」と自分では思っている」クオリアが生成されている。自由意志というのは実は無意識の脳活動の奴隷(の場合がある)。(P171)

 一番眼からウロコだったのは、意識より前に脳は行動を開始しているという部分。それを並行で意識が確認していく。そして生成されたクオリアが本末転倒な認識を形作る、というところ。これって、ものすごーく深い内容のような気がする。

 意識というものの正体が、こうした実験からある程度あぶりだされてくるのではないか、という予感に溢れている。ただ著者の池谷裕二氏はこれ以上の推測を学生たちに突っ込んで語ることはない。(別の箇所では「意識とか心というのは多くの場合、言葉によって生まれている。意識や心は言語が作り上げた幽霊、つまり抽象だ」「意識とか心は<汎化>の手助けをしている」「人に心がある<目的>は汎化するためなんだろうね」(P196))

Urasawa◆半眼のメカニズム

 さてここで、先週のNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」(創造性を生む「半眼」の境地)インタビューイ浦沢直樹氏に登場いただこう。

 クオリティーの高い作品を絶え間なく生み出し続けている漫画家の浦沢直樹さんは、アイデアを生み出す時や非常に大切な1本の線を描く時に、座禅で言う「半眼」の状態に自分を置くと言う。

 ここで面白かったのが漫画を描く時の「半眼」。一本の線を引く時に、意識が介在するよりも少しぼんやりとした「半眼」の状態の方がイメージに合ったいい線が引ける、という話。

 これと上記の意識より前に脳は行動を開始しているという部分をあわせて読むと、「半眼」の正体が見えてくる。ここまで書いたら言わずもがなだけれど、豊かな描線を無意識の脳活動が描こうとしていて、それを邪魔してしまうのが、この時、後追いで生成された「描こう」と自分では思っている」クオリアとそれにより無意識の活動に介入する意識なのだろう。

 それを意識をぼんやりさせて「半眼」で動き出した脳活動にまかせる、というのが、池谷的に表現した浦沢の描線の豊かさの秘密なのかもしれない。

 僕はイラストをちょこっと描いた経験しかないけれど、最初の鉛筆でささっと描いたネームの方が自分ではうまくみえる(脳内のイメージに近い)というのは、なんとなくこの脳活動と意識のメカニズムを想起するとよくわかる。

 天才というのは、積み上げた経験訓練が無意識の能力として高いレベルにある人のことをいうのだろう。剣豪の「半眼」というのは聞いたことがある話だけれど、まさに努力によって作り上げた脳内の回路による活動と、それを阻害しないで「半眼」の意識でうまくコントロールする状態を作り出すことが漫画家や剣豪の優秀さと直結しているのだろう。

◆蛇足 そして無意識の脳活動を恐れる人々

 例えば、P・K・ディックが小説やエッセイで描く「自分が何者かに操作されているのではないか」という強迫観念は、上で記述した意識が持つ無意識の行動への恐れみたいなものと考えると理解できるような気がする。
 実は自分がコントロールしているのではなく、脳内の無意識な情報処理、行動指示が自分の体を操作している場合があるということを過度に意識してしまったらどうなるか。クオリアという意識を騙す伏兵のようなものがいくら頑張っても、一度疑いの気持ちを持ってしまったら、自分の脳の活動と意識が乖離してひどいことになりそうだ。
 本来、全部が自分の脳活動だと、しっくり理解/体感すればいいことなのにネ、、、。

 という蛇足はここまでにして、次回は『進化しすぎた脳』から視覚の秘密をご紹介の予定。やっと究極映像研らしいネタに回帰できて、めでたしめでたしとなりますか??

◆関連リンク
Neuron池谷裕二のホームページ 東大薬品作用学教室 (公式HP)
 池谷裕二は何を研究しているのか、何を目指しているのか

 ここから神経細胞の発火パターンの映像 →

 池谷氏が開発した世界最高のリアルタイムニューロン観測。手法としては多ニューロンカルシウム画像法というものだそうです。同時に1000個の神経細胞の発火現象をとらえることが可能とか。チカチカしているのがリンク先で確認できます。

・当Blog記事
 『進化しすぎた脳 中高生と語る「大脳生理学」の最前線』 感想・1

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2007.03.18

■池谷裕二 『進化しすぎた脳
   中高生と語る「大脳生理学」の最前線』 感想・1

 池谷裕二『進化しすぎた脳』
 知らない著者の本に書店で出会い、吸い寄せられるように購入、結果、傑作!というのは本好きにとっては至福なのだけど、この本はそんな本の一冊になった。

 タイトルどおり、脳科学者の著者が中高生と語りながら、人間の脳認知の最先端状況を説き起こす本。書かれた本ではなく、語られた本なので平易。今、届いた学会誌にこんな記事がとか、まさに現在進行形の話が、ホットに語られる。あとがきで著者が述べているようにグルーヴ感に溢れた熱い一冊。(2年前に出た単行本からブルーバックスで再刊された本だけど、最後一章に自身の東大の研究室の学生と最新の情報を交えた最新分が追加されている)

 以下、刺激的な部分から僕が思ったことをご紹介。

人の脳は「無限の猿定理」の5億乗

Monkey_typing  無限の猿定理とは「無限の数の猿がタイプライターを叩き続けば、いつかはフランス国立図書館に収蔵されている書物の全てを書きあげることができる」ことを意味する定理」である。この本にこうした話が出てくるわけではないけれど、読後、僕がまず思い出したのはこの無限の猿定理。ちょっと長くなるけれど、どういうことかというと以下。

 『進化しすぎた脳』によると、脳のニューロン:神経細胞の数は1000億、そこから出たシナプスがそれぞれ1万。1000億×1万=1000兆のシナプスが神経伝達物質による神経細胞のスパイクを1000分の1秒ごとに行っているのが我々の脳の活動ということになる(P231)(大脳皮質だけ140億×1万=140兆のシナプス)。

 そして脳がものを考える時間ステップは、だいたい0.1秒、100ステップのシナプスの活動で言葉を認識したり思考したりを繰り返している(「脳の100ステップ問題」P272)。たとえば大脳皮質だけで考えると、140兆の100乗の組み合わせにより思考を生み出している。
 140兆の100乗!!これはexcelでは既に扱えない(扱える最大値はわずか9.9E307≒140兆の21乗)。この神経細胞の膨大数の組み合わせ活動が思考の源と考えると、脳科学は、「再現性があり追試が可能であることを基本とする」科学の範疇をはみ出すのではないか、という疑問も提示されている(P372)(この部分だけでも凄く刺激的)。

 で、ここからこの膨大数を理解するために僕が思い出したのが「無限の猿定理」。 わかりやすくここではシェイクスピアの本で仮定する。
 シェークスピアの本が200(文字/ページ)×300(ページ)=6万文字で構成されているとすると、猿が英文タイプライターを叩いて時にシェークスピアの作品を書き上げる確率はアルファベット26文字の6万乗。これは26の6万乗匹の猿が全員6万文字タイプすると、その中の一匹が『ハムレット』を書き上げる計算になる。
 この時タイプされた全情報量は、26文字≒2^5とすると、
 26^60000匹*60000文字*2^5≒(2^5)^60000*2^16*2^5≒2^300021≒2^30万。

 140兆の神経細胞の発火のありなしの組み合わせは2^140兆。2^140兆≒(2^30万)^5億。我々の大脳皮質が瞬時瞬時に持っている情報は、「無限の猿定理」の5億乗ということになる。もちろんこれは強引な比較だけれど、膨大数を直感的に理解するためということで、お許しを。

 つまり我々一人一人の脳の中には、大脳皮質だけでも「無限の猿定理」の5億乗の情報が存在できることになる。これは物凄い数だと理解できる。我々は26の6万乗匹の猿に任せなくても、つねに『ハムレット』5億冊を生み出せる可能性をもっているのだ。(アッテルカナ?)

 脳が意識を持つことの不思議も、この膨大な数字の積み重ねの結果なんですね。(アレ、この膨大数の話だけでこんな長文に。この本の紹介はもっといろいろ書きたいので、次回に続けます。押井対談会のレポートもあるのに、、、。)

◆関連リンク