SF

2020.08.03

■感想 2020年 世界SF作家会議

 
【世界SF作家会議】#6 劉慈欣インタビュー (Youtube)

【フジテレビ】SF作家の想像力がアフターコロナの世界を照らし出す!『世界SF作家会議』

"日本SF界より、レジェンド・新井素子、鬼才・冲方丁、俊英・藤井太洋、新進気鋭の小川哲、が豪華集結!中国SF界から『三体』の劉慈欣も緊急参加!"

 『三体』の劉慈欣のメッセージが素晴らしい。

 SFを読んできて、911, 311, コロナ等々、SF作家(特に小松左京)が予測した事態の、斜め上を行くような事態に、ある種の驚愕を覚えながら、まさに今も続く、(SFからは想像できなかった)真綿で首を絞める様なパンデミックの事態を体感しているわけです。

 そろそろ終わりが見えてきた人生のあとうん十年で、もしかしたら今まで以上のSF的事態をまだ垣間見ることになるんじゃないかと、時々考えることがある。
 次はファーストコンタクトかもしれない、と血が騒ぐセンス・オブ・ワンダーを感じたりもするわけですがw、劉慈欣は正にそれをここで警鐘している。

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 さすが『三体』、特に「黒暗森林」理論を冷徹に幻視したSF作家。
 日本の作家陣がコロナについて、斜め視点で(それなりに興味深い発言もあるんですが)語っている、このほぼ日本人ばかりの"世界SF作家会議"で、唯一SFの現在の価値を正々堂々正面から語る劉慈欣の本格SF魂に共鳴します。

 この堂々たるSFの王道を突き進む姿で、『三体』は受けているのでしょうね。"世界SF作家会議"、今後も是非とも続けて頂きたいものです。

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2020.07.15

■情報 マルチメディア展開 劉慈欣『三体』『三体II:黒暗森林』舞台化、ファンメイド映像

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The Three-Body Problem II: Dark Forest
Beijing Poly Theatre

"Project Characteristics of The Three-Body Problem
Adapted from the First Hugo Award-Winning Work in Asia-The Three-Body Problem
A science fiction enlightenment in the history of Chinese drama
Naked Eye 3D Technology
A Multimedia Special Effect Feast"

 北京で2019年に開催されたPhilippe Decouflé演出、Lotus Lee Drama Studioによる『三体』『三体II:黒暗森林』のステージ化。
 マルチメディアによる裸眼3Dを実現しているとのこと。どんなものなのか観てみたい。

 ネット検索すると一部動画と舞台写真が見られるので、以下ご紹介。 
Lotus Lee Drama Studio(Facebook)
  ここにある予告編映像が素晴らしいです。劉慈欣『三体』ファン必見!!
 映像と舞台のプロップを見事に使った三体映像が現出している様です。

 日本でも観てみたいですね。中国で三体をステージ化しているLotus Lee Drama Studioによるマルチメディア舞台の予告篇映像。
 あの名場面、そして三体世界の恒星の動きを舞台上で展開(以下写真引用の右下。よく見ると気球とミニドローンを組み合わせて惑星の自由な動きを作り出している様です)。

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Lotus Lee Drama Studio
'Three Body Problem' novel hits the stage in play
'Three-Body' trilogy book gets drama treatment
China set to become the brightest sci-fi star
 『三体』の舞台化についての記事。上記画像の引用元です。

◆ファンメイドフィルム
 上記舞台ほどの完成度ではないですが、ファンメイドもなかなか微笑ましく頑張っています。

My Three Body "Dark Forest" Theme Song - Music Video (English Subtitles)
 『三体II:黒暗森林』のテーマソングMV(^^)。マインクラフト的映像で、『三体』と『三体II:黒暗森林』のあの名場面が映像化されていますww。ネタバレ、ご注意ください。世界での『三体』人気の一端。


My Three Body Season 3 - Episode 8
 20分にわたって、『三体II:黒暗森林』のあの戦闘シーンを映像化。ネタバレ注意!!

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2020.07.13

■感想 劉慈欣『三体II:黒暗森林』( 大森 望 , 立原 透耶 , 上原 かおり , 泊 功 訳 )

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 劉慈欣『三体II:黒暗森林』、読了。
 前作にも増して、骨太で壮大なストーリーと、大ネタ小ネタとつるべうちのSF奇想アイデアの数々を堪能。
 
 前作に続くストーリーは、四百数十年後の三体星人による地球侵略艦隊の到着へ向けて、迎え撃つ地球側のストーリーを中心に進む。
 とりわけ面白いのが、三体人の独特のコミュニケーション能力に対抗して、取られる地球側の前代未聞の面壁計画(ウォールフェイサー・プロジェクト)で選出される四人の面壁者と呼ばれる主人公らの対応策。ここのコンゲーム的な筆運びは本書のエンタテインメント性の多くの部分を負って、優れたリーダビリティをもたらしている。面白くてページを繰る手が止まらないといった状態。上下巻670ページ余りを一気に読ませる筆力である。

【発売中】劉慈欣『三体Ⅱ 黒暗森林』訳者・大森望氏あとがき

" インタビューなどで、往年の〝大きなSF〟に対する偏愛を隠さない劉慈欣だが、《三体》三部作には、クラークやアシモフに代表される黄金時代の英米SFや、小松左京に代表される草創期の日本SFのエッセンスがたっぷり詰め込まれている。こうした古めかしいタイプの本格SFは、とうの昔に時代遅れになり、二一世紀の読者には、もっと洗練された現代的なSFでなければ受け入れられない──と、ぼく個人は勝手に思い込んでいたのだが、『三体』の大ヒットがそんな固定観念を木っ端微塵に吹き飛ばしてくれた。黄金時代のSFが持つある意味で野蛮な力は、現代の読者にも強烈なインパクトを与えうる。それを証明したのが『三体』であり、『黒暗森林』『死神永生(ししんえいせい)』と続くこの三部作だろう。『三体』がSFの歴史を大きく動かしたことはまちがいない。"

 本書に感じるのは、まさにSFを読み始めた頃の、小松左京や光瀬龍、そしてクラークやスタニスワフ・レムといった往年のSFの巨匠たちの、宇宙を舞台にした巨視的な骨太の"大きなSF"の、堂々たるセンスオブワンダー溢れる物語への興奮である。

 特にネタバレになるので詳しくは書けないけれども、クライマックスのある面壁者の透徹した思考の果てに生まれた秘策を巡る、宇宙知的生命の活動を総括的に、そして俯瞰で眺める視点が素晴らしい。フェルミのパラドックスの一つの解の提示なのだけれど、それが恐ろしくペシミスティックで、宇宙の真空の広大な空間を感じさせるこの部分の筆致には震えました。

 前半の理想の仮想女性、後半の大宇宙戦闘シーン、そして『銀英伝』や『2001年宇宙の旅』と言ったアニメ系映像系SFファンを引き込む、というか劉慈欣友達だね的ネタとか、嬉しくなる様なまさに骨太なSFであり、SF映像である本作、日本の読者も大いに楽しめる傑作だと思う。前作にもましてお薦めです。
 
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 ■感想 劉慈欣『三体』( 立原 透耶 翻訳監修, 大森 望, 光吉 さくら, ワン チャイ訳 )
 ■感想 劉慈欣原作、郭帆監督『流転の地球(さまよえる地球) : The Wandering Earth』

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2019.11.20

■情報 小松左京原作『日本アパッチ族』ラジオドラマ『鉄になる日』他


小松左京生誕85周年ラジオドラマ「鉄になる日」

『日本アパッチ族』(wikipedia)

"2012年11月21日 『鉄になる日』MBSラジオ(演出:島秀一、脚色:林一郎)

現代風にアレンジ。文化庁芸術祭ラジオ部門大賞、ギャラクシー賞ラジオ部門大賞を受賞[2]。アジア太平洋放送連合(ABU)賞大賞を受賞。"

 小松左京『日本アパッチ族』を原作としたラジオドラマ『鉄になる日』が、Youtubeにアップされていました!
 ずっと聴きたかったのですが、東海地方では放送されなかったので、これは嬉しいです。ということで先日の『日本沈没』ラジオドラマに続き、ご紹介したいと思います。

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 小松左京展でも紹介されていたように、『日本アパッチ族』は第一長編で、当時貧乏で小松左京夫妻の唯一の娯楽だったラジオを質入れしてしまったため、奥さんのために小松左京が毎日少しづつ執筆したという、まさしく娯楽巨編奇想SFです。(実はラジオは質入れしたのでなく修理に出していたということですが、おかげで我々はこんな抱腹絶倒の奇妙な傑作を読めたわけですが(^^) )


伝えたい戦後70年 復興の光と影「アパッチ族」

"終戦から10年あまりたった昭和30年代。日本が高度成長の道を走り始めた頃、戦災復興から取り残され、自分たちだけでしたたかに生き抜こうとした「アパッチ族」と呼ばれる人たちが大阪にいました。著名な作家達が相次いで文学作品の題材にした「アパッチ族」とは。"

 そしてこれが、噂に聴いた 本物の 大阪アパッチ族 の様子を伝えるドキュメント!
 小松左京はこのニュースを知って、スペキュレイションを広げて、鉄で食う出なく、鉄を食う『日本アパッチ族』を書いたのでしょうね。

日本アパッチ族 小松左京 (大阪弁・30年以上前の録音)
『日本アパッチ族』(wikipedia)

"1972年5月27日 NHKラジオ第1放送文芸劇場(NHK大阪放送局制作)"

 こちらも貴重な46年前のラジオドラマ。上のドラマに比べると昭和の匂いが懐かしい感じです。こちらのワイルドな感じが原作の記憶に近いような気がします。もう一度これを機に40年ぶりくらいになりますが、原作を再読してみたいものです。

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◆関連リンク 
松岡正剛の千夜千冊 1713夜『日本アパッチ族』小松左京

"なんとも奇っ怪な小説を書いたものだ。いまなおこの話に匹敵するSFがない。"

 あの松岡正剛氏にここまで言わせる奇想小説 !

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2019.11.18

■録音版公開 2 小松左京原作、岡本愛彦演出 ラジオドラマ『日本沈没』(1973年)


ラジオドラマ『日本沈没』 No 4 94〜103回

原作:小松左京 (光文社カッパノベルス刊)
演出:岡本愛彦 脚色:蓬莱泰三 音楽:田中正史
効果:高田暢也 演出助手:竹内東弥

キャスト
小野寺浩介:江守徹 阿部玲子:太地喜和子 田所雄介博士:加藤武
幸長信彦助教授:金内喜久夫 中田一成:高橋悦史 邦枝:角野卓造
山本総理:北村和夫 渡老人:龍岡晋 吉村秀夫:下川辰平
ナレーター:川辺久造 その他出演:文学座

 映画版、テレビ版より早い1973年10月8日から1974年4月5日の半年間、毎日放送制作で、9:00 - 15分の帯番組として、月曜から金曜の毎日、全国ラジオネットワーク(NRN)系列局で放送された。全130回。 今回はその東海ラジオの録音版公開の第二回として中盤の94回から最終回のご紹介です。AM放送故の雑音、古いカセットテープからのデジタル化で再生速度の不安定さはご容赦下さい。
 46年前にこのように素晴らしい作品を作られた制作者の皆様に感謝いたします。

 まず1本目(前回記事から数えると4本目)、73年年末に放送された中盤の一部です。 映画版と比べても遜色のない重厚なドラマの雰囲気をお楽しみいただければ幸いです。

 


ラジオドラマ『日本沈没』 No 5 116, 120, 123, 126回

 いよいよ放送も終盤に差し掛かり、日本はほぼ壊滅し海の底に沈む寸前です。
 ここら辺りは、小野寺と玲子の物語は、原作から少し離れて別の展開を見せています。


ラジオドラマ『日本沈没』 No 6 最終回

 そしていよいよ最終回。ここは最後ということで全篇の録音が残っています。今までの録音と異なり、冒頭から最後まで、本来の放送の形が唯一残っている回になりますので、お聴きいだければと思います。

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 No.1-6の全てを聴いていただいた方がいらっしゃったとしたら、お聞き苦しい中、ありがとうございました。
 ラジオドラマというメディアを最大限に活かして作られたSFドラマの白眉の傑作だと思いますので、お楽しみ頂けたとしたら幸いです。

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◆関連リンク
ラジオドラマ 日本沈没 (1973) Wikipedia

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■録音版公開 1 小松左京原作、岡本愛彦演出 ラジオドラマ『日本沈没』(1973年)
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2019.11.13

■録音版公開 1 小松左京原作、岡本愛彦演出 ラジオドラマ『日本沈没』(1973年)


ラジオドラマ『日本沈没』 No.1 ダイジェスト1〜94回

原作:小松左京 (光文社カッパノベルス刊)
演出:岡本愛彦 脚色:蓬莱泰三 音楽:田中正史
効果:高田暢也 演出助手:竹内東弥

キャスト
小野寺浩介:江守徹 阿部玲子:太地喜和子 田所雄介博士:加藤武
幸長信彦助教授:金内喜久夫 中田一成:高橋悦史 邦枝:角野卓造
山本総理:北村和夫 渡老人:龍岡晋 吉村秀夫:下川辰平
ナレーター:川辺久造 その他出演:文学座

 映画版、テレビ版より早い1973年10月8日から1974年4月5日の半年間、毎日放送制作で、9:00 - 15分の帯番組として、月曜から金曜の毎日、全国ラジオネットワーク(NRN)系列局で放送された。全130回。 その東海ラジオ放映の、73年年末に放送された1〜年末回までのダイジェスト放送と94回までの一部録音版です。 AM放送故の雑音、古いカセットテープからのデジタル化で再生速度の不安定さはご容赦下さい。

 46年前にこのように素晴らしい作品を作られた制作者の皆様に感謝いたします。

 映画版と比べても遜色のない重厚なドラマの雰囲気をお楽しみいただければ幸いです。

 うちにはカセットテープ3本が存在します。そのA,B面を6本のデジタル音源に変換したので、全部で6本の動画としてYoutubeに順次公開していきます。本日の記事はその前半3本のご紹介です。残り3本は今週末にアップして、次週の記事として記載したいと思っています。


ラジオドラマ『日本沈没』 No.2  30〜36回

 30-36回の一部録音版です。
 上のNo.1 ダイジェストとこのNo.2は一部、時系列が逆転しています。ラジオで録音した順番(放送の順番)は、YoutubeアップのNo.2、No.3、No.1の順です。 ややこしくてすみません。

 当時、中学生でカセットテープを買う小遣いが足りなくて、ラジオを聴きながらここだっ! と思ったシーンをその場で録音していくという録り方をしているので、話が飛び飛びなのはご容赦ください。

ラジオドラマ『日本沈没』No.3  4?, 51, 53, 54, 55回

 本日の最後は、前半の4?, 51, 53, 54, 55回の一部録音版です。

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 このラジオドラマのシナリオは、演出された岡本愛彦さんに手紙を書いて、特別に譲って頂いたものです。
 シナリオ裏表紙に制作時に出前された食事の数が記されているのが生々しいです。五目そば 三、ギョウザ 三、ライス 一、焼きそば(かため) 二と書かれてます。

 岡本さんは、TV「私は貝になりたい」等で有名な映画とテレビドラマの監督さんで、すでに2004年に79歳でお亡くなりになっています。
 数少ないラジオドラマの演出がこの『日本沈没』です。ラジオドラマでありながら大変視覚的な演出でイメージ喚起力に優れるこのラジオドラマを作られたのも、映像畑の演出家でいらっしゃったことが大きく影響しているのかもしれません。

 最後になりましたが、改めて素晴らしいドラマを制作された岡本愛彦さんに追悼の意を表したいと思います。何も知らない中学生に丁寧にご返事いただき、不躾なお願いにも関わらず、シナリオと長文のお手紙を頂き、本当にありがとうございました。

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ラジオドラマ 日本沈没 (1973) Wikipedia

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2019.11.06

■感想 「小松左京展「D計画」」@世田谷文学館

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「小松左京展「D計画」」@世田谷文学館 (美術手帖)

"会期 2019年10月12日~12月22日  会場 世田谷文学館
 開館時間 10:00~18:00 ※入場・ミュージアムショップの営業は閉館30分前まで
 休館日 月(10月14日、11月4日は開館)、10月15日、11月5日
 観覧料 一般 800円 / 65歳以上・大学・高校生 600円 / 小中学生 300円

 代表作『復活の日』や『日本沈没』など、人類の滅亡の危機を描いた小松の作品は、徹底した取材・調査と膨大な知識・想像力が生んだもの。その迫力と高いエンターテインメント性で読者を圧倒し、地球規模災害や世界の変化など未来を予見したような作品の設定も驚異的だ。
  
 本展は、作家・小松左京が誕生するまで、代表作の魅力の再発掘、また大阪万博のテーマ館サブ・プロデューサーを務めるなど多分野での活動に注目。多彩な資料をもとに、「小松左京」とは何者かを探る。"

 東京出張にくっつけて「小松左京展「D計画」」を10/22に見てきた。
 生原稿から企画メモ、『さよならジュピター』メイキング、映画のミニチュア、万博の資料、飼われていた猫たちまで、充実の展示。
 ディスプレイされた著作から引用された言葉群を展示とともに読み進め、小松SFを過去へ/未来へ旅する、感慨深い3時間でした。

 ボリュームとしては会場の広さと資料の量では、『高畑勲展』に比べると1/3ほどかもしれないけれど、他では見られない創作メモ等、その情報密度はこちらも重量級で、半日みっちりじっくり鑑賞したが、まだ情報の1/4ほどしか見切れていない感じ。

 以下は簡単なレポートと、僕が撮ってきた写真記録です。(写真は会場内は3箇所のみ撮影可)

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 会場は『高畑勲展』と比べると観客の数ではもの凄く空いている。表現者として考えると、アニメーションの高畑監督と比べると一般性は少し小さいかもしれないが、現在の日本の文化/文明に対する影響では、小松左京の巨大さは疑うべくもない。もっとこうした作家の展示というのは大きく、そして大勢の人々に見られてもいいのではないかと思ってしまう。
 特にこの資料の密度は圧倒的なので、是非、小松左京作品に触れたことのある方には、みて欲しいものです。

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 小松左京の書斎を再現したコーナー。
 このすぐ横に『日本沈没』コーナーがあり、当時、執筆に際してD計画の各種計算に使われた電卓等も飾られていた。

 代表作については、キーとなる作中の文章がパネルに文字として大きく引用されいて、かつて読んだ記憶が想起され、たの展示品共々、小松ワールドが眼前にまざまざと展開される構成で、そのイメージ喚起は圧巻でした。

 小松SFから小説や映画に興味を持ってきた僕としては、ここで示される『日本沈没』『日本アパッチ族』『果てしなき流れの果てに』『エスパイ』『復活の日』『結晶星団』『ゴルディアスの結び目』『虚無回廊』『地には平和を』等々のSF小説とその映像/メディアミックス作品については、原点的に感じられて非常に感慨深い空間でした。

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 この写真は『さよならジュピター』のメイキング映像と、そのオーディオコメンタリーが流されるコーナーの隣に置かれた小松家の歴代の猫達のコーナー。
 各作品で苦労された小松左京の心を癒したであろうねこ達の姿と、そこに横たわる小松の写真。自身が撮られた猫のホームビデオも流されていて、猫への深い小松左京の愛情が伝わる良いコーナーでした。

 そして最後のコーナーに生賴範義氏の描いた2008年の小松左京さんのあの絵が飾られていたが、世界をそして宇宙を洞察するあの眼の輝きが素晴らしかった。

◆展示物から知った情報
 展示されていた企画書やメモ等から知った濃い情報を以下箇条書きにします。他で既に公開されているのかもしれないですが、少なくとも僕にとっては初めて知った情報。写真撮影は不可であったため、その場でiPhoneでメモを取ってきたものです。もし一部記録ミスがあったら申し訳ありません。文責 : BPということで、、、、(^^;;)。

wikipedia「日本沈没」等に記載されているメディアミックス作品として、ラジオドラマは1973-74年半年間に渡って放映された毎日放送の連続ラジオドラマ版と1980年のNHK版があるのは知っているが、昭和48年1973年の11月に文化放送で単発ドラマとして「ここを過ぎて悲しみの都へ(日本沈没より)」という芸術祭ラジオドラマ部門へ出品されていた作品があったのを初めて知った。時期的に毎日放送のラジオドラマと並行して放送されたということになるが、どういう事情だったのでしょうか。映画の公開直前ということで、キャンペーン的な意味合いがあったのか、、、。展示品はこのドラマのシナリオでした。(逆に展示コーナーには、毎日放送版のシナリオは展示されておらず、うちにあるシナリオは貴重かも、と思ったり、、、。)

 このラジオドラマについて、ネット検索すると、以下の情報がありました。
 公開セミナー「鉄になる日」関連番組(pdf)

"小松左京「日本沈没」よりドラマ「ここを過ぎて悲しみの都へ」文化放送1973/11/4 50分
大地震が次々と日本列島を襲う。沈没を予告された日本列島に生きる日本人の運命は?。小松左京の「日本沈没」をラジオドラマ化。
原作:小松左京。脚本:横光晃。出演:中尾彬,日色ともゑ,前田昌明,加藤嘉,久米明,杉山とく子,松本のり子。"

・キネ旬 73.12/15 「映画 日本沈没 のイメージを探って」と題した小松左京、森谷司郎他の対談記事。
 これは読んだ記憶がないので、いつか入手したいものです。

・映画企画 『新日本沈没』、東宝で95-96年に企画されていたようです。これもwiki等にない情報。検索してもネット情報も見当たりません。
 企画書 1995 6/30。提案 北山裕章。
 同企画書 1996 4/24、12/12。企画 提案 橋本幸治 北山裕章。
 ストーリー 米村正二 藤田伸三。正篇のリメイク+続篇を加えた全長版とのこと。
 監督案として、大森一樹 澤井信一郎 滝田洋二郎 崔洋一 伊藤俊也 降旗康男の名が書かれています。
 配役案は、小野寺 真田広之 中井貴一 緒形直人、玲子 宮沢りえ 後藤久美子 清水美沙、田所 柄本明 ビートたけし 勝新太郎という記載。
 僕はこの監督陣なら、澤井信一郎版とか観たかったかも。ビートたけしの田所博士はさすがにないかとw。

・1999年公開予定の松竹版。大森一樹監督として制作発表されたもの。ポスターが飾られていました。
 ネットでこの映画のポスターとして知られているものと同じでした。

・日本沈没 全6回バージョン 2002.10/2 (株)東宝映像美術企画。全6回と書かれていたので、たぶんテレビ企画ではないかと。
 イメージキャスト 地球物理学者 伊東四朗 、潜水艇乗り 坂口憲二 、女優志願 小池栄子 以上未交渉と記載。

・半村良の小松『日本沈没』の読後の書簡 73.3/25
 「沈没でSFをはじめてやっと納得できる教範に会った心境です。」という記載あり。ここを起点に半村良によるSFへの再チャレンジに火がついた様子が伺えます。もしかしたら傑作SF『妖星伝』等は、この『日本沈没』がなければ産まれなかったのかも。
 その他は、半村良先生の『日本沈没』への書簡 (小松左京ライブラリ)参照。

・アーサー C クラークの『さよならジュピター』 参加辞退の書簡。
 特に説明書きがなかったため、詳細は不明ですが、たぶん映画化の際に協力を仰いだのかと。これも当時聞いたことはなかったし、ネット検索しても出てこない情報なので、なかなか貴重。もしクラークの協力が得られていたら、どんな映画の変更があったのか、夢想させます。

・映画『さよならジュピター』について、「興行的には収支とんとん」の文字。

・万博のテーマ特別委員会 資料に「候補者名簿 芸術部門 黒澤明」の名があり、丸が打ってある。
 もし黒澤明による万博企画があったとしたら、、、これもいろんな想像を膨らませられます。

・その万博に関する小松左京の1970年3月13日の言葉「地下第三スペース  全展示場をもう一度見回った。私にとっての万国博の本当の終わりだった」。全力を尽くして走り回った後の気持ちだろうか。奥の深い言葉として、展示の最後のコーナーで感慨深く感じました。余韻を引く言葉です。

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2019.10.31

■感想 アン・リー監督『ジェミニマン』 IMAX HFR (ハイフレームレート)

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 アン・リー監督『ジェミニマン』109シネマズ レーザーIMAXで 観てきた。3D HFR 120fps (片眼 60fps)。
 ウィルスミスのSFにいい思い出がなくw、ノーマークだったんだけれど、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のアン・リー監督で 120fps HFR 3D映像とのことで、『ライフ・オブ・パイ』の3Dが素晴らしかったので、これは行かねばと馳せ参じました。

 IMAXのHFRは、109シネマズ 菖蒲、川崎、名古屋の3館のみのようです。名古屋でやってて感謝。
 予約しようとしたら、何と3000円!「通常料金+1,100円 IMAX3D料金に加え、+100円の追加料金をいただきます」って!!
 高すぎるので感謝はやめました(^^)。まあ、でも落語会とかに比べれば、まだ映画の3000円はお手頃ですけれど、、、w。

 ダグラス・トランブルが理想とした60fpsを3Dで実現した初めての長篇映画。
 何とエンドクレジットには、ダグラス・トランブルが確か「ハイフレームレートムービーコンセプト」とクレジットされていた。

 まずHFRの映像であるが、確かに生々しい臨場感がある。僕が知ってる映像では、3Dハンディカムで撮った実写3Dが一番近い。その場にいるような、現実の空間を持ち帰ってそれが眼の前にある様な生々しい臨場感が映像で再現されている感覚である。

 ただし、映画としてみると、45fpsのホビット程でないが何故か違和感がある。まるでロケ現場を、映画の舞台裏を見てるような、空々しさが画面から感じられる。

 映画は、おそらくそれを撮っているロケ現場で生の情景をそのまま観ても、映画らしさを感じないだろう。現実の空間をHFRで再現できていたとしても、それはロケ現場のそのままの空間であるだけで、映画映像空間が創生されているわけではない。

 では映画映像空間とは何か? それはもしかすると大林宣彦のいう、コマとコマの間の暗闇、そこに忍び込む人の想像が加わって、初めて実写は映画になるのかもしれない。

 今後、コマとコマの間の暗闇で人が見ている幻の代わりに、60fpsの生のリアルにCG等で現出される幻が入り込み、いずれ人の想像力を上回ることがあるのかもしれないが、そんな次世代の映画体験はまだおあずけだった。

 とはいえ、銃撃シーンで闇の中に機関銃のオレンジの光の線が走るところとか水中とか、今まで映画で見たことのない鮮烈なショットもあり、そうしたところは素晴らしかった。自分がそこに巻き込まれた様な臨場感の再生がHFR 3D立体映像の真骨頂かもしれない。

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 話題の30歳若いウィル・スミスCGは、若干明るいところの服の描写とかに違和感があるけれど、顔とかアクションとか素晴らしい出来(暗いシーン多いけど…)。もう彼の子孫は孫子の代までウィルに稼いでもらえそうな勢い(^^)。


23歳のウィル・スミスを作り出す!『ジェミニマン』メイキング映像

 あと究極映像研としては、クレイトン・“クレイ”・ヴァリスの部屋に飾られたフランシス・ベーコンの絵画「ある磔刑の基部にいる人物像のための三習作」とかプラハのクストナーホラのセドレツ納骨堂、骸骨教会と思しきシーン(違うかも、実はプラハのシーン、最近寝不足で久々寝落ちw、ちゃんと見れなかった…)とか、興味深かった。アン・リー、ただのSFアクションにはしてません。(ただSFらしさはほとんどなく、『ライフオブパイ』の方がまだSFチックだった)

◆関連リンク
ハルクとフルCGウィル・スミス制作、どっちが大変?アン・リーを直撃!

"「今後は、デジタルの世界をもっと探求したいと思っています。アクションに深みをもたせたいし、リアリティーも追求したい。新たなデジタル技術を用いることで選択肢が広がると思うので、試行錯誤しながら新作に取り組んでいきたいですね」とさらなる映像技術の追求に意欲を示した。"

 アン・リーがもしかしたら、HFRでの映画表現を生み出すのかもしれない。あとキャメロンの『アバター』続篇がどこまで行くのか、期待したい。
Trumbull Studios: The Magi Process (Youtube)
 ダグラス・トランブルがショースキャンからmagiシステムについて語っています。『ジェミニマン』はこのチャレンジの上で実現したものですね。
『ジェミニマン』公式サイト 最新情報

“映像ジャーナリスト/クリエーターの大口孝之氏が登場し、「今までは”不気味の谷現象”のように、実写の人間を描いたCGはどこかで分かってしまう瞬間があったが、この作品ではまったく感じなかったのが非常に画期的。人間の目は1秒に60枚のフレームになると現実と見分けがつかなくなるという研究結果が出ていて、この作品は全編がそこに到達していて、本当に弾丸が飛んでくる感覚を味わえる」と感嘆しながら紹介”

・3Dのステレオカメラギグは、STEREOTECのもののようです。このメイキング(Youtube)にカメラが映ってます。3Dクレジットには、Legend 3DとStereoDの名もありましたね。
・アン・リーがHFRについてダグラストランブルに教えを乞うたと発言してる記事 トランブルのMAGIシステムについて 『アバター』続編、驚異の毎秒120コマ撮影に? 特撮映画の巨匠が発明 4K×3Dの超絶映像体験
秒間48コマ 映画の「映像革命」 『ホビット 竜に奪われた王国』を撮影したハイ・フレーム・レート3D

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2019.07.01

■情報 100分de名著『小松左京スペシャル』 2019年7月

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100分de名著『小松左京スペシャル』 2019年7月 (NHK 公式HP)

"「宇宙にとって人間存在の意味とは何なのか?」「未曽有の災害に直面したとき人はどう行動したらよいのか?」「本当の意味で豊かな文明とはどんなものなのか?」……人間にとって根源的な問題をSFという手法による思考実験を通して、大胆に問い続けてきた作家・小松左京(1931-2011)。卓越した日本人論,、文明論としても読み解ける小松左京作品を通して、「人間存在の意味」や「真の豊かさとは何か」といった普遍的な問題をあらためて見つめなおします。

番組では宮崎哲弥さん(評論家)を指南役として招き、小松左京が追い求めた世界観・人間観を分り易く解説。「地には平和を」「日本沈没」「ゴルディアスの結び目」「虚無回廊」等の作品に現代の視点から光を当てなおし、そこにこめられた【日本人論】や【未来論】【文明論】など、現代の私達にも通じるメッセージを読み解いていきます。

第1回 原点は「戦争」にあり ~「地には平和を」~
【放送時間】2019年7月1日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

第2回 滅びとアイデンティティ  ~「日本沈没」~
【放送時間】2019年7月8日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

第3回 深層意識と宇宙をつなぐ ~「ゴルディアスの結び目」~
【放送時間】2019年7月15日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ

第4回 宇宙にとって知性とは何か ~「虚無回廊」~
【放送時間】2019年7月22日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ"

 小松左京の作品のうち、「地には平和を」『日本沈没』『ゴルディアスの結び目』『虚無回廊』という大好きな4作が取り上げられるので、これは必見です!
 今回は紹介記事として、以上ですが、このあと、放映後の感想も載せていきたいと思っています。 

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2019.06.24

■感想 酉島伝法『宿借りの星』

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『宿借りの星』(東京創元社 公式サイト)
 酉島伝法『宿借りの星』読了。『皆勤の徒』に続き、まさに文字(主に漢字の造語)で異世界にトリップできるVR-SF。
 電車の中で読んでいて駅で降りると、コンコースの看板の文字が不思議な感覚にゲシュタルト崩壊する。あれ、ここはどこの異世界だっけ、すっかり『宿借りの星』住人視点で日本のヒトの町が異質に見えてしまうという破壊力。

FORBIDDEN PLANET Soundtrack - a) Main Titles - Overture - b) Giant Footprints In The Sand
 今回読んでいる最中にずっとBGMに聴いていたのが 50年代の異星の文明を描いたSF映画『禁断の惑星』サントラの電子音楽。これが妙に甲殻類なSFに合うんですねw、なぜだか。

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 ムーミン+次郎長三国史というのが酉島氏自身が本書のイメージを伝えるためにつぶやかれた言葉だというが、そのようなありもののワードで簡単に表現出来るような小説世界ではない。作者も入り口として敷居の低いイメージを提示したかっただけだろうから、あたりまえだけど、、、。
 じゃあ、どういう小説か? と問われると、これは表現が超難しい。かといって敷居が高い作品かというとそうではなく、割とすんなり読み進められるが、その際に読者が脳内で連れ去られる世界の芳醇さ/奇想さ/ぶっとんだユーモア感覚はかなりの複雑さを呈している。

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 物語は卑徒(ひと)と呼ばれる種が滅んだ後の異星で、甲殻系の(地球感覚からは)異様な生態系を持った蘇具(ぞく)たちの倶土(くに)を舞台に、主人公マガンダラと弟分のマナーゾ(上図 左)の道中が描かれる。異質生態系の奇妙な世界、食と行動と習俗を段々と自分の身体が甲殻化するような体感をしながら、そしてあるものが体内に寄生し宿っていく過程は精神的な侵食も進んでいく。

 描かれるクライマックスの情景は、正直まだ自分の貧困なイマジネーションではイメージがぼんやりとしているけれど、その星の世界が神話的に大変動するダイナミックさ。

 他の映画や小説で何か例えてこの読書体験を伝えたいと思ったのだけれど、なかなかこの世界は他に例が思い浮かばない。ので、興味を持たれたら、上記東京創元社の公式リンクで冒頭を立ち読み/または池澤春菜さんによる本書朗読を聴かれる(以下リンク参照)ことをお薦めします。(あえて言うとヤン・シュヴァンクマイエルとブラザーズ・クエイとヴァーツラフ・シュヴァンクマイエルのシュルレアリスム作品をAIでミックスして、自動書記自主映画を生成したような、、、w)

◆関連リンク
池澤春菜さんによる本書紹介@TBSラジオ アフター6ジャンクション(アトロク)は以下。本作の貴重な朗読は、4:38から聴けます。
酉島伝法 初長篇『宿借りの星』進捗(Togetter)
 今回の記事の添付画像は、twitterでつぶやかれた作者自身の本書収録イラストを使わせて頂きました。そのtwitterのまとめは上記リンク。
酉島伝法初長篇『宿借りの星』感想集(Togetter)

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