2008.07.14

■アーサー・C・クラーク『宇宙島へ行く少年:Islands in the Sky』

Inland_in_the_skytile_2

アーサー・C. クラーク, 山高 昭訳『宇宙島へ行く少年』(amazon)

司会のエルマー・シュミッツが、スポットライトをあびながら叫んだ。「それでは、優勝者をご紹介しましょう。ロイ・マルカムです!」興奮で体がしびれた。え、なぜかって?ぼくの名前だったからさ!それに、このワールド航空主催の航空クイズ番組に優勝したものは、世界中のどこへでも、ただで旅行させてもらえることになっていたからだ。もちろん、はじめから行き先は決めてあった。ぼくの行きたいところはただひとつ―地上500マイルに浮かぶ島、宇宙ステーションだった!大宇宙にあこがれる少年の夢と冒険を、巨匠クラークが生き生きと描きだした傑作宇宙SF!

 クラークが亡くなって何か未読の作品を読もうと思っていた。
 主要作品はだいたい読んでいたので、積読になっていた1952年のジュヴナイル作品である本作を読んだ。

 上の紹介文でわかると思うけれど、ストーリーはまさに少年の初めての宇宙体験を描いたジュヴナイル。

 ストーリーははっきり言うと、いまでは見慣れてしまった風景で面白みはない。
 しかしディテイルの書き込み、宇宙旅行を臨場感を持って描く手腕がとにかく素晴らしい。まだ人間が誰も宇宙へ出ていなかった時代に、クラークは脳内で確実に宇宙を体験していた、と思える描写。無重量と真空の描写が克明。

 さて最後に表紙について。どれも少年なのかよくわからないイラスト。
 特に右上の2枚目は凄い(^^;)。それにしても流線形の宇宙船と球形の宇宙島がノスタルジーを誘います。リアルにこんなデザインの宇宙船で映画化してほしかったりします。(『宇宙のランデブー』の映画化はどうなっているんでしょうか。)

◆関連リンク
・スペースコロニー - Wikipedia   
・Island in the Sky (1953) これはジョン・ウェイン主演の飛行機の映画。同名。
・Atomic Rocket: Space Suits.
 '50,60年代の宇宙服のイラストを集めたページ。なかなかいいですよ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.06.23

■マイクル・コニイ『ハローサマー、グッドバイ』の続編
   Michael Greatrex Coney "I Remember Pallahaxi"

I_remember_pallahaxi I Remember Pallahaxi (PS Publishing Current Catalogue).

Synopsis / Contents: I Remember Pallahaxi is the previously unpublished sequel to Michael Coney's classic Hello Summer, Goodbye. Set hundreds of years after the events recounted in Hello, I Remember Pallahaxi is a mystery story: a murder mystery on one level, and on another level a mystery about the origins of the native aliens.

 山岸真さんのコメントで『ハローサマー、グッドバイ』の続編があるという情報をいただき、調べてみました。
 右の表紙のハードカバーが、コニイが亡くなった2005年のあと、2007年12月に500部、電子出版されたようです。

 下記に出版の経緯がコニイの家族とのメールという形で記されています。

Michael Coney'--I Remember Pallahaxi.

Dear Friends, Neighbours and Fans,
(略)
When Mike knew he was terminally ill and that his time was very limited he decided to put some unpublished novels on his website as a gift to his readers to download free. As you will see, since then Peter Crowther of PS Publishing and Dorothy Lumley, Mike's agent have decided it would be a much greater gift to publish two titles "I REMEMBER PALLAHAXI" and "HELLO SUMMER GOODBYE" in a deluxe slipcase containing both titles. 
(略)
  Sincerely, 
  Daphne Coney and Family

Michael G. Coney『I Remember Pallahaxi』(amazon)

 500部発行らしいけれど、日本のAmazonでも購入可能。

 山岸真さんのコメントによると、日本でも今回の『ハローサマー、グッドバイ』の売れ行き次第では続編の翻訳出版の可能性があるとのことですので、是非、コニイファンは新訳を購入しましょう。

 またコニイ未読の方も、瑞々しい筆致で書かれたコニイの物語世界はお奨めですので、お手にとられて至福の読書体験を。

Hello_summer_goodbye ◆関連リンク
Michael Coney 作品リスト (PS Publishing)
 右の書影は電子出版版『Hello Summer, Goodbye』。
 この表紙ならsay*3さんもOK?
・ネットでダウンロードできるコニイの作品
 コニイの5短編他
 長編 Flower of Goronwy

Author's Note: An impossibly perfect young woman appeared in my novels Charisma and Brontomek and generated a lot of fan mail. People asked if she was based on a real person; and if she was, what a lucky guy I was to know such a woman. Well, unfortunately she was not real, and I emphasized this point by having her disappear into nothingness at the end of each novel. She was an impossible male dream. Her physical appearance was based on the movie star Susanna York (a clue to that is her fictional name Susanna Lincoln) but her personality was all my own erotic imaginings.(略)

 非常に興味深いコニイの女性キャラクタについてのコメントです。
 『ブロントメク!』のキャラクタは特別本編の主題と密接に関係しているので、このコメントと照らし合わせてじっくり再読してみたいものです。
・そして上の文章の末尾でコニイがモデルにしたと語っている英国の女優
 スザンナ・ヨーク(Susannah York) のプロフィール - allcinema

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2008.06.20

■マイクル・コニイ 『ハローサマー、グッドバイ』 山岸真新訳 !

Hello_summer_goodbye『ハローサマー、グッドバイ』(amazon)
             河出書房新社

マイクル・コーニイ 著  山岸 真 訳
定価893円・本体850円

内容紹介
戦争の影が次第に港町を覆うなか、少年と少女は出会う。惑星規模の機密計画が姿をあらわす日が近いことは、いまだ知らずに……少年の忘れえぬひと夏を描いた、SF史上屈指の青春恋愛小説、待望の完全新訳版。

 復刊.comのメールで知りました。
 なんか無性に懐かしいマイクル・コニイ 『ハローサマー、グッドバイ』が、山岸真の新訳で読めるとはたいへん嬉しい。

 にしてもこの表紙は、さすがに照れくさい。
 思わず書店で「娘へのプレゼントなんです。包んでください」といいわけしながら、自分の分を買ってしまうかも(^^;)。

 ネットで誰か何か書いていないかと思ったら、同世代の殊能将之氏が書いてました。
 殊能氏とコニイは、アンマッチな感じなんですが、、、(^^)。

a day in the life of mercy snow. 

オレもおっさんだからさ、「心の故郷」が復活するのはうれしいんだけど、若者たちはなにをやっとるのかね。オレが知らない新しくおもしろいSFやミステリってないのか?

マイクル・コニイ 復刊特集ページ

ブロントメク! マイクル・コニイ  復刊リクエスト投票.

 惑星アル カディアを回る六つの惑星が五二年に一度揃って空にかかる時、高潮に乗って何兆というプランクトンの群れが、海面にカタツムリの足跡のように輝いた。この マインドと呼ばれるプランクトンと巨頭鯨は共生関係にあった。マインドは密集することにより人間のテレパシー能力を増幅させる、リレー効果を持っていた。 人々は催眠術にかかったように次々に海に入り、やがて黒いヒレの群れとひとつになり血の海に呑み込まれてゆく。子供を守る見返りにマインドは餌を要求する のだ。こうして過去二年の間に全人口の3割は他の惑星へ移住、経済は崩壊に瀕していた。そんな折、巨大企業ザリントン機関が経済復興の援助を申し出、アル カディア議会はそれを承諾。やがて移民として無定形生物と巨大トラック・ブロントメクの群れが送り込まれて・・・。

 僕は『ハロー、サマー』より断然『ブロントメク ! 』派でした。
 これ、本当に素晴らしい傑作 ! 続けて河出から山岸氏訳で出版されることを望みます。

◆関連リンク
マイクル・コニイ, 千葉 薫『ハローサマー、グッドバイ』(サンリオ文庫版)
『ブロントメク ! 』(サンリオ文庫版)

| | コメント (9) | トラックバック (1)

2008.06.09

■平山 夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』

平山 夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』(amazon)

 遅まきながら平山夢明氏の短編集を読んだ。この平山夢明氏って、自主映画番組えび天で、「ペキンパーの男」を作ったデルモンテ平山氏らしい。僕は「怖い話」シリーズを一冊読んだことがあるだけだったので、どんな小説世界が開陳されるか期待してページをめくった。

 噂に違わぬ傑作。暴力と人体改変等の強烈なインパクトのある7編の短編。
 良かった順に簡単な感想です。もともと映画を撮っていた人なので、このままヒットを続ければ、いずれ自作の映画化もあるのかも。

「Ω(オメガ)の聖餐」
 映像的に強烈なイメージ。Ωの異様さにゲぇッとなりながら、数学の探究とか、幼い頃の匂いの記憶と養蜂家のエピソードで清廉なイメージをパラレルに感覚させる話。この重層的な幻想、たしかに癖になりそうなトリップ感がある。

「C10H14N2(ニコチン)と少年 ― 乞食と老婆」
 いじめられるこどもの視点と大人の世界。乞食を通して語られる恐ろしい街の現実。しかし一皮剥けたこの世界が、どっか日本の典型のように見えてしまうところが凄く怖い。

「無垢の祈り」
 これも現代の子供の世界の闇を描いた作品。
 ラストに登場する者に象徴化するイメージがなんだか凄い。何が描かれたか、実は具体的に掴めないのだけれど、それでもこのラストの必然は無意識の何かを形象化している感覚で凄い。

「独白するユニバーサル横メルカトル」
 タクシードライバーと地図の物語。
 半村良の「箱」を思い出した。もう一歩ひねりあったら傑作かなーって感じ。

「卵男(エッグマン)」
 ラストへ向けた変転がうまい。幻の記憶のリアリティと、隣の独房の男の言語崩壊感が面白かった。この作品、CGアニメ化されるのですね→ここ(Egg Man)。

「すまじき熱帯」
 『地獄の黙示録』21世紀版。熱帯世界のガイキチな社会に頭がクラクラしてくる。これにも言語崩壊なシーンがいくつもある。

「オペラントの肖像」
 異様な社会体制と芸術の位置づけの変容と、そこでのラブストーリー。
 ラストのまとめかたが鮮やか。

「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」
 この拷問話は痛すぎる。痛さに著しく弱いので、いちばん後ろに来ました。

◆関連リンク
光文社エンタテインメント Blog:
 3刷できました。新オビです。パネルも作りました。
 
咄嗟の判断でオリーブオイルをよける:
 「平山夢明とデルモンテ平山のゴミ鍋~大毅サイボーグになれ編 」

Edoardo Belinci ARTWORK Gallery
 表紙のイラスト「WATERMETER」のアーティストのギャラリー。
 ここ、なかなか素晴らしいので、明日の記事へ続きます。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008.06.07

■宇宙軍大元帥 野田昌宏氏 宙へ旅立つ

Noda_shambleau_press_all_3

訃報:野田昌宏さん74歳 (毎日新聞)

日本のSFファンの代表的存在として「宇宙大元帥」のニックネームで親しまれたほか、作家としても活躍した。ガチャピンのモデルといわれる。

 今朝の新聞で知りました。先日のクラーク今日泊亜蘭氏と、今年はSF作家たちの訃報が相次いでいますが、とても残念です。今夜は宇宙に向かって、野田さんに黙祷を捧げたいと思います。

 右の写真は、野田さんから送ってもらったソユーズ宇宙船の欠片。日本初の宇宙飛行士の秋山豊寛氏が持ち帰られたものをフロッピィのケースに入れ、色紙として綺麗にまとめられています。SFマガジンの大元帥の連載エッセイのプレゼントに応募していただいたもの。うちの家宝です(^^;)。破片はソユーズのもので、TBS鈴木順アナウンサーの好意によるものとのこと。

 数年、リビングに飾っておいたので、すっかり日焼けしてしまっていますが、野田さんのサイン代わりの「あの逆三角形眉毛の顔」と自分の名前が描かれているのが嬉しい(名前はモザイクにしました)。

Noda_daigensui  一部拡大版も掲載。
 Shambleau Pressとか、加藤直之氏のカットが入っていたり、こういうこだわりが楽しい。氏のエンターテインメント精神がこんなところにも活き活きと表れています。

 SFの翻訳では、学生の頃、『キャプテン・フューチャー』や『スター・ウルフ』でワクワクし、著作『銀河乞食軍団』のべらんめいなスペースオペラを楽しませてもらいました。あと<日本テレワーク>ものも大好き。

 でもやはり僕にとっての野田大元帥は、SFマガジンの連載でのSFイラストの熱い紹介記事の数々が忘れられません。「SFは絵だ」の言葉は有名ですが、氏の紹介で観るアメリカのSFイラストの光り輝いていたこと。
 僕らは絵そのものを観ていたのでなく、神田の古書街で米兵が残していったSF雑誌を見つけた時のセンス・オブ・ワンダーを加味した野田氏の脳内イメージをそこに観ていたのだと思う。数々のエピソードとともに、それらのイラストを眺めるのは、本当に楽しい時間でした。

 そしてもうひとつは、野田氏の手による宇宙開発のドキュメント。
 『NASA これがアメリカ航空宇宙局だ』他、フロリダの現地からの氏の宇宙開発の現場のルポルタージュは、これも宇宙への夢と希望にあふれていて、ワクワクしました。

 今頃、野田大元帥はクロパン大王に乗って、銀河のどのあたりを飛んでいるのだろうか。これから僕らは宇宙を見上げるたびに、そんな想いを想い描くことになるんだろうね。合掌。

◆関連リンク
野田昌宏 - Wikipedia
SPACE FORCE GENERAL STAFF OFFICE
ガチャピン日記にはまだ訃報の記載はありません。
・2ch 【訃報】大元帥、宇宙に還える 野田昌宏さん-74歳
野田大元帥やすらかに(Youtube)

・(6/8追記) 野尻ボードにて野田さん追悼の文を、TBSの鈴木順氏が書かれています。
上のソユーズの破片についても触れられています。破片の正体は「ソユーズの二段ロケットのアクリル保護カバー」とのこと。

| | コメント (3) | トラックバック (2)

2008.05.26

■飛 浩隆『ラギッド・ガール―廃園の天使Ⅱ』

飛 浩隆『ラギッド・ガール―廃園の天使Ⅱ』

人間の情報的似姿を官能素空間に送りこむという画期的な技術によって開設された仮想リゾート“数値海岸”。その技術的/精神的基盤には、直感像的全身感覚をもつ一人の醜い女の存在があった―“数値海岸”の開発秘話たる表題作、人間の訪問が途絶えた“大途絶”の真相を描く書き下ろし「魔述師」、“夏の区界”を蹂躙したランゴーニの誕生篇「蜘蛛の王」など全5篇を収録。

 硬質な文体で綴られる幻想的でシュールで、そして痛い傑作。
 飛 浩隆氏、きっとジェームス・ティプトリーJr.「接続された女」とかジョン・ヴァーリー「ブルーシャンペン」とか好きなんだろうなー。阿形渓というキャラクターの造形とかサイバーな感覚とか、直接的ではないにしても同様のイメージを感じた。

 ということで調べてみたら、下記のような記事が。

2006年度第6回Sense of Gender賞 大賞
飛浩隆『ラギッド・ガール―廃園の天使2』)

短編「ラギッド・ガール」は、露骨に「接続された女」の影を匂わせているにもかかわらず、実は執筆にあたり(その後も)一度も読み返さないままでした。
というのも「ラギッド・ガール」に専念した七ヶ月のあいだ、私の視野をおおっていたのは阿形渓嬢の圧倒的印象であり、それと格闘するだけでいっぱいいっぱいだったからです。
格闘の相手は印象であり質感であって、つまりは言語化以前の領域でした。そして、阿形渓の質感とこすれ合うことによって、さらなる怪物、安奈・カスキがしだいしだいに飛の中から研ぎ出され形を得ていった、という記憶があります。(略)

 AIの描写とか意識について深く考察した記述が多く、「質感との格闘」というのが的確に物語の雰囲気を表現している。作家の頭の中の「質感」として立ち現れた登場人物や物語を文章として紡いでいく「格闘」。このような意識的な「質感」の表現が丁寧にひとつひとつ硬質な言葉づかいをされた物語に結実している。

 官能素空間について、「感覚器官のふるまいを律儀に計算し、その延長上に人間の意識を描きだそうとすれば、少なくとも体内で生起するあらゆる電気的、化学的反応を逐一計算しなければならない。とうてい実現不能なその難事を正面から解決せず、間に合わせの便法で済まそうとするのが、情報的似姿の本質だった」(P166)と記述されている。

 感覚器官と意識の間に横たわる人間の世界認識のメカニズムが、人それぞれ固有の世界像を形作っていて、それが個性の大部分を占めるような気もしている。少し違和感を持ったのは、そこを官能素として統一してしまうと、各個人がそれぞれに把握する世界像の差がなくなってしまうのではないか、ってこと。そこのところの違和感について、次作『空の園丁』で描きこまれていたら面白い、と個人的に思った。

◆「夏の硝視体(グラスアイ)」
 漁師ジョゼと少女ジュリー、グラスアイの発見『グラン・ヴァカンス』の前日譚的物語。
 『グラン・ヴァカンス』と同じ<夏の区画>が舞台。

◆「ラギッド・ガール」
  官能と残虐の描写が冴えている。ヴラスタ・ドラホーシュ教授のキャラクターが秀逸。「人間の意識と感覚は、秒40回の差分の上に起こる」。小説の読者と登場人物の関係の本質と、そこを伏線としたラスト。特に終盤の6ページの変転は素晴らしい。

◆「クローゼット」 
 死んだ恋人の残された似姿の再生。多重現実と“数値海岸”の組合せで現れる新たなイメージ、ここからまだまだ多くのワンダーを生みだせそうだ。

◆「魔述師」 
 〈数値海岸〉の〈大途絶〉の真相を東欧(チェコ?)を舞台にして描いた一編。
 このタイトルの原題はLATERNA MAGIKA:ラテルナ・マギカ。本書では〈数値海岸〉を運営する会社がラテルナ・マギカ社。そして飛氏のHPのタイトルがラテルナ・マギカ。あれ、HPは確認したら題材不新鮮というタイトルに急に変わってる。
 僕の知っているラテルナ・マギカはチェコの劇場とそこで上演される映像と演劇を融合したパフォーマンスの名前(日本の大阪万博にも来てたらしい)。(当Blog記事 チェコプラハ ラテルナマギカ)。
 映像とリアルが混在するチェコの舞台に刺激されてこのネーミングを付けたのだろうか。
 似姿が体験してきた仮想世界を再生して体感する<数値海岸>とチェコの映像を再生して演じられる舞台。どこか近いものがある??

 この短編、鯨の映像的なイメージとAIの人権問題というネタが効いている。

◆「蜘蛛の王」 
 『グラン・ヴァカンス』の〈夏の区界〉に登場したランゴーニのエピソード。〈汎用樹〉区界という世界設定も素晴らしい。

 『空の園丁』の刊行が待ち遠しい。

◆関連リンク
ラテルナ・マギカ Laterna magika Národní 4, Prague 1(CSA-jp.com)

ラテルナ・マギカの歴史は、1958年ベルギーはブリュッセルで開催された万国博覧会までさかのぼります。当時のチェコ・パヴィリオンにおいてのプログラムがラテルナ・マギカと呼ばれ、後にこの劇場の名前として与えられました。プログラムは言葉を使わず、フィルム・プロジェクターに、ライヴの動きであるダンス、音と光、パントマイム、ブラックライトシアターの要素をからめたパフォーマンスで、劇場は世界中を巡りました。

 「ラテルナマギカ」は、言葉の意味としては、元々「幻灯機」のことのようですね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.04.29

■飛騨高山 留之助商店 本店  訪問記

Tomenosuketile
                          ※その他写真はアルバムで公開。
飛騨高山 留之助商店 本店 公式HP

 SF映画研究家 中子真治氏が店主の留之助商店 本店へ行ってきました。

 高速が開通し、うちからなんと約2時間で高山まで着いてしまった。この距離に、ターミネーターやエイリアンの映画で使われた本物が存在していると思うと、それだけで嬉しい(^^;)。

 繁華街の大通りに面して留之助商店はある。
 店先には「玩具みたいな芸術みたいなオブジェモチャ専門店」、「ハリウッドSFX映画プロップ・ギャラリー」の二つの看板が向かい合って並んでいる。そして入場料500円を払って中へ。

 60m2くらい(推定)の広さの店内にはところ狭しとオブジェモチャとプロップが並べられている。特にプロップはそのまま置いてあるが、オブジェモチャはほとんどガラスのショーケースに収められている。それぞれがまさに壮観。店主さんのBlogで観たことのあるものが多いが、それにしても写真でなく実物の存在感は圧巻。特に写真ではわからない大きさの感覚と、(オブジェなので当たり前なのだけど)それが物体であることによる立体感。

◆オブジェモチャを鑑賞する脳の回路の物語

 あの写真のこれは、この存在感だったんだね、って、そんな感じでじっくりと見入ってしまった。
 特にプロップは以前アプライド美術館と倉庫で観ているので、今回眼に新しかったのが、オブジェモチャ。アートとフィギュアの中間に位置するアーティストの立体造形作品のポップなイメージを堪能。あまりこうしたものは日本で紹介されていることを知らないのだけれど、この味わいは脳の新しい回路を刺激する。

 正直、店主さんのBlogで拝見してた時は、頭の回路が着いて行ってなくて、どうもいま一つピンとこなかったのだけれど、今回立体物で全体の質感がとらえられて、なんだかとても感心して見入ってしまった。これが新しい脳の回路が開拓されていく瞬間なのだろう。

 無性にほしくなるアイテムもいくつかあったのだけれど、これ以上収集するものを増やすと、金銭的にもスペース的にも、そして家族の視線的にも辛いので、今回はオブジェモチャは一つも買わずに帰ってきた。同行した妻は、ざっとひととおり見て、また旦那の趣味が増えるのかと危惧しつつ、先に高山のGWの雑踏へと出て行ったのであった。(自制心という言葉は私の辞書にまだかすかに残っていたようだ(^^;))

 というわけでお土産は写真とアメリカの「HI-FRUCTOSE:ハイ・フルクトース」という“アートの秘境ガイド”誌。写真はアルバムとして公開します。いつものようにハイビジョンハンディカムで撮影した動画から切り出した静止画です。店内は撮影自由、Blogでの公開も店長さんにOKをもらったので、よかったら見てやってください。
 「HI-FRUCTOSE:ハイ・フルクトース」については刺激的な雑誌なので、後日詳細をご紹介する予定。

そして中子真治氏は今回不在

 実は今回、もしかしたら中子氏に会うことができるのではないかと期待して、氏がSF映画作家論を連載していた雑誌「奇想天外」と大作『超SF映画』を持参して行った。もし会えれば、それらのファンであるという話とサインをもらいたいと思ったから((^^;)。ミーハーと笑って下さい)。

 でも本当にこの「奇想天外」誌の連載「新主流派SF映画作家論」は、僕の学生時代のSF映画鑑賞のバイブルだった。鋭い分析とクールな文体は今も輝きを失っていない。この連載が単行本として纏まっていないことが今も僕には残念でならない。

 話をさせてもらった店長さんによると、中子氏は昨日来店してたとのこと(!)。
 最近は本業が忙しく、ほとんどここには来られないらしい。

 本にサインをほしかった、という話をすると、親切にも預かってお送りすることもできます、と言ってもらったのだけれど、さすがに気が引けてご遠慮しました。

>>店長さん
 プロップとオブジェモチャの紹介と、そして中子さんの話をありがとうございました。

◆関連リンク
mixiに「中子真治」氏のファンのコミュニティを作りました(今までないのが不思議!)。
 ファンの方、よろしけれぱ参加下さい。現在、会員は私だけ(^^)。
・Blog 店主55才、玩具道(オモチャミチ)の光と影
留之助商店 Download資料室
 むかしオブジェモチャのCMフィルムが観られる貴重なページ
・留之助商店 YAHOOでオークションの出展
Hida-Takayama travel guide - Wikitravel

For something completely different (and slightly out-of-place), Tomenosuke is a science-fiction movie gallery-store hidden a few blocks north of the Train Station. Inside the store you will find some very cool original movie props (a beast mask from Star Wars, the original robot suit from Spaceballs, and a 1/4 model of the Alien queen for example) in addition to replicas and American designer art figurines. There is an admission fee of 500 yen, but it is well worth it.

 留之助商店の紹介記事がイギリスのWikitravelで大きく取り上げられているとのことで原典をペーストしました。僕が見てた時、外国人観光客は入り口で興味深そうにしてたけど入店しませんでした。

◆当Blog記事
・92年 下呂のアプライド美術館と中子真治氏の倉庫
『ブレードランナーの未来世紀』町山智浩氏と中子真治氏
中子真治氏のオブジェモチャ専門店 飛騨高山 留之助商店 本店

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.04.09

■伊藤計劃 『虐殺器官』 メモ

『虐殺器官』 ハヤカワ・オンライン

ポスト9・11の罪と罰を描く小松左京賞最終候補作
すごい男が現れた。
イーガンの近未来で『地獄の黙示録』とモンティ・パイソンが出会う。
日本SF史に残る衝撃のデビュー長編。    
猛毒注意。あなたはこの結末に耐えられるか?――大森望

 「SFが読みたい! 2008年版」でベスト1になった『虐殺器官』を読了。
 大森望氏の言葉通り、デビュー長編であるのに、かなり衝撃の一冊。近未来軍事SFとうたわれているけれど、エンタテインメントと思弁的・政治的な側面を両立させた傑作言語テーマSF。

 硬質な文体は翻訳SFを連想させ、無駄のない筆致と細部に盛り込まれたアイディアとトリビアなディテールが冴える。

 氏のBlog伊藤計劃:第弐位相を見ると、相当な押井守マニアで海外SFファン、ということだけど、本書はアニメ的に見ると、『パトレイバー2』の柘植の影響とか、もろもろ想像できる。映像的なシーンの鮮烈さは、まさに映画・映像ファンでもある氏の真骨頂。

 本書の面白さは、いずれ詳細に書いてみたいと思っているのだけれど、今日は駄文で締めておきます。

 本書、もしかして神山健治監督でアニメ化ということはないだろうか。
 ラストのくだりとか、もろもろ神山監督の手で映画化されたら、かなり合いそう。
 筋肉を震わせる飛行機械がタンザニア湖上空を飛翔するシーンが猛烈に映像で観たい。

 既に深く静かにそんな計画が進行しているのを夢想したりして、、、。

◆関連リンク 
・当Blog記事押井守 DVD『イノセンス』
 伊藤計劃:第弐位相へのリンク有。 といいつつ、この時アクセスして、たぶんその後はBlogを拝見してません。ずっとアクセスしてれば、新しいSF作家の誕生に立ち会えたのに残念でなりません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.03.13

■山本 弘 『アイの物語』

山本 弘『アイの物語』(amazon)
作者解題 (山本弘のSF秘密基地)

 現実はフィクションほど筋が通ってはいない。物語のように理想的なハッピーエンドを迎えることはほとんどない。ハッピーエンドを書けば「甘い」「そんなことあるわけない」「現実離れしている」と批判する人もいる。だが「そんなことあるわけない」のは、作者だって百も承知である。
 これはフィクションにすぎない。ひとかけらの事実も含まれてはいない。だが、フィクションだからこそ素晴らしいものもあるはずだ。

 いろいろな切り口で読める、噂に違わぬ傑作だった。
 まず主題として、フィクションが持つ価値についての物語。「機械とヒトの千夜一夜物語」とあるように、ロボットが語る複数の物語から焙り出されるフィクションの意味、これがまず素晴らしい。SF読み、かつ現実というよりは頭はいつもフィクションに浸っているような我々(僕だけ?)にとって、凄く共感できる。

◆未来の地球知性の進化ヴィジョン

 次に機械知性による地球の未来の描写。
 宇宙探査について描かれたこうしたヴィジョンはどこかのSFでたぶん読んだことがあると思うけれど、 最終話で語られるのはかなり迫真のヴィジョンである。未来にこんな光景が本当に現れるかもしれないという幻視力。ここは素晴らしいなー。

 このクライマックスの描写から、今現在、地球へ別の星から人工知能体が来ていないとすると、もしかして知的生命は地球にしか登場しなかったのではないかと思える。こんな想像をさせてしまうのもこのストーリーのプロットがコンセプトとして非常に優れているからだと思う。

◆何故人を殺してはいけないのか

 世の中で最近よくなされるこの問い。
 シンプルに答えられるはずなのに、何で迷ったり複雑怪奇な言説が出てきてしまうのか、不思議に思っていたのだけれど、山本弘はズバリと回答を書いている。そしてその答えをシンプルにロボットの知性の骨格に据えて、人間にはなしえない世界を描いている。

 本書冒頭で山本氏の娘さんへの言葉が掲げられている。
 この部分は、自身の子供と現代の子供たちへ向けた氏のメッセージだと思う。

 ゲド・シールドという言葉で人の持つ業を説明している。それによる人の限界と機械知性の可能性。SFらしいアプローチで丁寧に倫理を描いている。今の時代、なかなか貴重なことだと思う。(うちの子供たちにも読ませたいけど、読まないんだよなー、これが(^^;)。)

◆機械知性の意識への疑問

 と書きつつ、実はここで描かれた、人の限界と機械知性の対比には、実は僕はかなりリアリティとして疑問を持った。(冒頭で書いたようにフィクションとしては全然OKなのだけれど、、、)。

 というのは、ロボットが意識を持つ過程を書いていないことに起因する。僕にとってはこの本のひとつ残念な点である。

 乱暴にまとめると、本書の機械知性は鉄腕アトムと同じ。つまり意識の生まれる過程ではなく、本書の人工知能はすでに意識らしきものをはじめから持っていて、描かれているのはそこに自我が生成していく過程のみ。

 実は意識とゲド・シールドというのは原理的に非常に密接な関係があるんじゃないかと思う。極論すると、ゲド・シールドこそが意識そのものって感じがするので、果たして本書で描かれた意識を持った機械知性が本当にゲド・シールドからこれほどフリーでいられるのか、甚だ疑問だなー、と思いつつ読んでいた。

 と、最後暴走して全く自分のあやふやな観点で批評してしまったけれど、連作短編としてこれだけ力のある作品はなかなかないと思う。非常に丹念に人工知能のありようを地に足のついた描写で書いていて、フィクションの魅力にあふれた一冊。お薦めです。

◆当Blog記事 人工知能の意識関連リンク
意識を持ったロボット
無意識の脳活動と芸術家の「半眼」 
神林長平が描くロボットの意識『膚の下』 
茂木健一郎 『プロセス・アイ』Process A.I.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.02.27

■復刊 アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!: Tiger!Tiger!』

Tiger_tiger_02

アルフレッド・ベスター著,中田耕治訳『虎よ、虎よ!: Tiger!Tiger!』(amazon)
ハヤカワ・オンライン

 この物情騒然たる25世紀を背景として、顔に異様な虎の刺青をされた野生の男ガリヴァー・フォイルの、無限の時空をまたにかけた絢爛たる〈ヴォーガ〉復讐の物語が、ここに始まる……鬼才が放つ不朽の名作!

 ベスターのワイド・スクリーン・バロックSFの傑作が復刊。
 寺田克也の表紙が素晴らしかったので、世界の『The Stars My Destination/Tiger!Tiger!』の表紙を集めてみました。

 アメリカ映画界は最近日本の過去のアニメにまで題材を求めるようになっていますが、こんな映画向きの傑作が自分たちの国に眠っているのを知らないのでしょうか。まさしくもったいない。

Image9 それにしても最下段左ふたつの英語版イラストはなんだかなー。
 ガリバー・フォイルはこんなじゃないぞぉー。二人目はまるでドクター・スミスじゃないか!

 最下段右の寺田克也のが群を抜いていいですね。

  検索でひっかかった左のDonato Giancola氏のイラストもなかなか素晴らしい。
 この方のほかの題材のイラストを掲載した下記のサイトもお薦めです。
 Friday Favorites: Donato Giancola

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2008.02.26

■新刊メモ 眉村 卓『司政官全短編』

眉村 卓『司政官全短編』 東京創元社

地 球人類が星々に進出した時代。だが、それまでの連邦軍による植民惑星の統治が軋轢を生じさせるに及び、連邦経営機構は新たな制度を発足させた――それが司 政官制度である。官僚ロボットSQ1を従えて、人類の理解を超えた植民星種族(ロボット、植物、角の生えたヒト型生命など)に単身挑む、若き司政官たちの 群像。

 これも刊行が嬉しい眉村卓の傑作群。
 僕は『消滅の光輪』が一番好きなのだけれど、書き込まれた異星世界とロボットによる端正で知的な政治世界が魅力のSF。こんな能力があれば、ロボットに日本の政治家は一掃してほしいもの。

著者あとがき

 (略)妻が 亡くなって気がついたのは、自分が過去からやって来て現代にいる――いわば未来滞在者になっていた、ということである。要するに、老人になったのだ。そし て今の私には、新しく、書きたいものが生まれてきた。

 もしも私が司政官を書くとしたら……きっと、違う角度からのそれであろう。それは仕方のないことなのだ。ひょっとすると、老人小説として書くのだろうか? いや、そんなことは不可能だ。それとも……。

 先日の筒井康隆の本でも書いたのだけれど、日本のこの世代のSF作家が年老いていることを気づかされてしまう。もう一度新作の司政官を是非読ませていただきたいものです。

◆関連リンク
_ 眉村 卓『Hikishio No Toki (引き潮のとき)』(amazon)
 これは英訳版のようです。
眉村 卓『消滅の光輪』(amazon)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008.02.18

■筒井 康隆『ダンシング・ヴァニティ:Dancing Vanity』

筒井 康隆『ダンシング・ヴァニティ』(amazon)

この小説は、 反復し増殖する、驚愕の文体で書かれています。この作品を読んだあとは、人の世の失敗も成功も、名誉も愛も、家族の死も、自分の死さえもが、全く新しい意 味をもち始めるでしょう。そして他の小説にも、現実生活にさえも、反復が起きる期待を持ってしまうかもしれません。

冒頭部分掲載 雑誌『新潮』編集長・矢野優氏から (新潮公式)

「一般読者や同業者が首を傾げたり、もしかすると「錯乱の産物」として眉を顰めるかもしれないような小説を創ることこそわが使命」。これは本号掲載の「ダンシング・ヴァニティ」(長篇第1部130枚)を予告した筒井康隆氏の言葉だ

 「反復し増殖する、驚愕の文体」は、時に「錯乱の産物」として読者の眼前に現れ、過去の記憶と現在を混沌とさせる。

 「自分の死さえもが、全く新しい意 味をもち始める」というのは、ちょっと大げさではあるけれども、しかし後半のネタばれ部分で述べるように、まさに「死」を想像する時の自分のイメージを少し拡張されたような気になるのは、確か。

 いきなり冒頭から反復するシーン。
 内容はほぼ同じなのに、少しづつ表現が変えてあることで書かれているそのひとつづつの時間が、少しだけ別の小世界として立ち現れる。小説の構造に切り込んでいる作家の実験を感じる。少しづつの表現の違いで、読者の想起する小世界を自在にコントロール熟練の作家の技に舌を巻く。

 齢73歳の筒井、この年齢でここまでの文学的な冒険を実現できることに驚嘆しながら読み進めていたのだが、それは大変失礼な感想。

 読み終えた時には、まさにこの年齢だからこそ、死を間近なものとして切実に感じているだろう作家の想像力が描き出した世界であることがわかる(ある番組での「未来は死ぬんだよ、俺は」の発言が生々しく思い出される)。

 反復の意味。読者は本書の最後でそれに気づくことになる。たぶん。

★★★★★★★★以下、ネタばれ注意★★★★★★★★★★

 Dancing Vanityとは、直訳すると「踊る空虚/虚飾」。これは何か。
 死の直前で自分のありようを認識する主人公のシーンがまず思い出される。

 反復する文章は、死の直前の時制の混乱を示しているのだろう。反復しているのは、主人公の記憶。そしてあり得たかもしれない自分の人生。走馬灯のように、死の直前の錯乱した精神の中に立ち現れる光景がこの小説全体なのだろう。

 だから僕たちはそれを疑似体験する。正確には作家筒井が思い描く、死の直前の精神がさらされる状況なのだが、、、。虚構を究めようとしている作家が挑んだこの今回の作品のターゲットは、恐ろしく巨大なものだ。

 それが成功しているか、少しだけその尻尾を掴んだのかは、実は僕らには今は判断できない。そしておそらくそれをわかって、この本の書評を精度よく書ける人間はどこにもいないだろう。
 なぜならそれは、死に直面してみないとわからないから、、、。

 キトクロ キトクロ キノクトロ キクラト キクラト キノクラト

 果たして僕ら読者は、この言葉を自分のその瞬間に思い出すことがあるのだろうか。

 、、、、と何やら誇大妄想な感想になってしまったけれど、読んでいる間はいろいろな趣向が散りばめられていて楽しく読めるいつものスラプスティック。狂騒的に描かれるいくつものシーンの切れ味は相変わらず鋭い。

◆関連リンク
asahi.com:「場面反復」の実験的小説 筒井康隆氏 新作『ダンシング・ヴァニティ』

 「人間の記憶は、大事な部分が強調されたり、いやなことが省略されたり、回想するうちに歪曲(わいきょく)されていくもの。だけど失敗も含めて通過してきたことで現在の自分がある。どの道を通っても完成された死はない、と主人公は知るのです」

 2/20追記、筒井氏のインタビューがありました。まさにテーマについて語られています。
・筒井康隆公式サイト
BSアニメ夜話 細田守『時をかける少女』
 筒井康隆、アニメにおける文学の可能性を毒とともに語る

 この小説は雑誌『新潮』07年2,5,8,9月号に発表されたもの。
 一方、細田守の『時をかける少女』が公開されたのは06年7月15日。
 反復する小説を思いついたのは、実はこの映画を観て文学とゲーム的リアリズムの関係を描く手法を思いついたから、ということはないだろうか(邪推)。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.02.17

■SFマガジン編集部編『SFが読みたい!2008年版』
   & 究極映像研 2007年SFベスト

SFが読みたい!2008年版 (ハヤカワ) (amazon)

 今年、日本はほとんど読んでいないけれど、海外は少しカバー(^^;)。
 ので僕も一応ベスト選出。

2007年 SFベスト
 タイトル部分リンクは、当Blog記事へ。もしよろしければ、コメントはそちらで読んでいただければ幸いです。(Blogに感想書くと、こういう時は凄く便利。)
 気に入った順番で挙げます。

★日本★
 円城 塔『Self-Reference ENGINE』
井上 晴樹『日本ロボット戦争記―1939~1945』
 冲方 丁『マルドゥック・ヴェロシティ』
 昨年は、この作品が読みたくて『マルドゥック・スクランブル』から続けて6冊読了。しかし機会を逸して感想は書いてない。
 僕はどちらかというとポーカーSFとしてあれだけ読ませた『スクランブル』の方が好き。でもどちらもダークで硬質な雰囲気がとても良い。

★海外★
 スタニスワフ・レム, 久山 宏一訳『フィアスコ(大失敗)』
 ケリー・リンク『マジック・フォー・ビギナーズ』
 ジェイムズ・ティプトリー・Jr. 『輝くもの天より堕ち』
 ネットでは評判がいまいちだったけれど、僕は傑作と思う。『SFが読みたい』では評判が良く安心(?)した。
 アルフレッド・ベスター『ゴーレム100
 シオドア・スタージョン他, 中村 融編『千の脚を持つ男―怪物ホラー傑作選 』 
 これも感想を書いてない、、、。ホラー風味の強いウルトラQアンソロジーで、かなり広範囲の時代の作品が読めて、幸せな一冊。アンソロジスト中村融氏、相変わらずいい仕事をされてます。

2008年 各社SF出版予定

 いつもこのコーナーが楽しみなのだけれど、今年も豪華!ラインナップ。
 翻訳SF、ここ数年充実してますね。きっと買うものをメモ。順調な刊行を祈ります!

早川書房
 ジーン・ウルフ『新しい太陽の書』復刊+5巻

河出書房新社
 奇想コレクション

 ジョン・スラディック『蒸気駆動の少年』 2月
 グレッグ・イーガン『TAP』
 マーゴ・ラナガン『ブラック・ジュース』
 河出文庫
 マイクル・コニイ『ハローサマー、グッドバイ』 !!復刊
  サンリオ版持ってるけれど復刊が嬉しい。さらに傑作の『ブロントメク!』も是非。

国書刊行会 未来の文学
 クリストファー・プリースト『限りなき夏』 3月
 S・R・ディレイニー『ダルグレン』 秋
 ジーン・ウルフ『The Wizard Knight』 秋

 未来の文学 第Ⅲ期 全八冊 (来年以降?)
 ジーン・ウルフ短編集『ジーン・ウルフの暦』
 ジャック・ヴァンスベスト『奇跡なす者たち』
 R・A・ラファティ初期長編『第四の館』
 ジョン・スラディック初期長編『ミューラーフォッカー効果』
 ジョン・クロウリー日本オリジナル短編『古代の遺物』
 ディレイニー短編集『ドリフト・グラス』
 ハーラン・エリスン犯罪小説集『愛なんてセックスの書き間違い』
 伊藤典夫編アンソロジー

徳間書店
 野阿梓『伯林星列』

◆関連リンク
未来の文学(Wiki)
ジョン・スラデック『蒸気駆動の少年』 (amazon) 柳下氏HP あとがき
映画評論家緊張日記: 『蒸気駆動の少年』発売記念トークイベント
・SFマガジン編集部編『SFが読みたい! (2007年版) 』
 & 究極映像研 2000年代前期SFベスト

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008.02.13

■山本弘 『MM9』 僕たちの町であんな怪獣を暴れさせないでくれ(^^)

山本弘『MM9(エムエムナイン)』(東京創元社HP)

Mm9  地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では、怪獣対策のスペシャリスト集団「気象庁特異生物対策部」、略して「気特対」が日夜を問わず日本の防衛に駆け回っていた。

 図書館で借りて読了。
 これは円谷ウルトラシリーズで育った世代には嬉しい一冊。全編円谷への愛に満ちている。

 特に素晴らしいのが、最終話「出現!黙示録大怪獣」。
 怪獣のヴィジュアルがいい。東宝怪獣のアレを思い出すのだが、体表の赤い色と背中にある○○が異様な光景をイメージさせている。ここは是非、樋口監督に映画化してほしいもの。

 いささか残念だったのは、その円谷への愛ゆえに、もう少しSFとして突っ込んで書いたら面白くなりそうなところも、日曜七時のTVシリーズの雰囲気を重視するあまりに人物描写や組織面等々で脇の甘さが目立って、物足りなさがでてしまっているところ。

 この点では先行するウルトラマンリスペクト作品である小林 泰三『ΑΩ(アルファ・オメガ)』の方が出来が良かった記憶。

 本作では「人間原理」を用いたSF設定がなかなか面白い。ここをもっとハードに拡張して怪獣を物凄い存在として描けていたら、SFとしての評価も高かったのだろうと思う。

◆某SF研OB 必読 「危険!少女逃亡中」

 ここからは昔の仲間に私信(^^;)。
 この話には、僕たちがよく知っている長良橋や金華橋や忠節橋といった地名が目白押し。たぶんTVでは放映できないとんでもない怪獣がよく知っている場所で暴れまわる。
 この異様なビジュアルをリアルに楽しめるのは、某SF研OBの特権。学生時代にこの作品が刊行されていたら、どんなにか盛り上がったろう。きっとだれかが自主映画化をたくらんだことでしょう(どうやって撮るんだ!と突っ込まないように)。
 必読です>>ミのつく職人くん、鬼頭くん、クマさん他。
 (どうでもいいが、金華橋は「きんかきょう」とルビが振られているが、「きんかばし」が正解)

◆関連リンク
山本弘のSF秘密基地 『MM9』
 各話あらすじと裏話、過去の災害として描写される怪獣の原典が説明されている。
小林 泰三『ΑΩ(アルファ・オメガ)―超空想科学怪奇譚』(amazon)
山本弘『MM9』(Amazon)
シオドア・スタージョン他, 中村 融編『千の脚を持つ男―怪物ホラー傑作選 』

 

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2008.01.16

■新刊メモ 円城 塔 『Boy’s Surface』

円城 塔『Boy’s Surface』(amazon) ハヤカワ・オンライン

〈ハヤカワSFシリーズ Jコレクション〉初恋の不可能性を巡る物語を語る写像の物語「Boy’s Surface」、読者を読む恋愛小説機関「Your Heads Only」、そして書き下ろしの「Gernsback Intersection」ほかを収録する数理学的純愛小説集。刊行日:2008/01/24

Self-Reference ENGINE (円城塔氏Blog)

週刊朝日2008年1月18日号(2008年01月04日発売) 決定「最強の本」ベストテン豊崎由美×大森望 「2008年活躍が期待される作家」 で言及を頂いていました。 有難う御座います。 「Boy's Surface」が7位に。まだ出ていないのに。 (短編自体はSFMに掲載頂いております。)

 昨年読んだ日本SFでベストだったのが(実はそんなに数、読んでいないのだけど、、、)『Self-Reference ENGINE』。とにかくそのぶったまげるイメージの世界に酔いました。

 で、新作はなんと「純愛小説」。もちろん一筋縄では行かないでしょう。
 「数理学的」というのは前作も同じだけれど、今回はどんな奇想をみせてくれるか、発売日が楽しみでしょうがありません。(最近、SFMはとんと買っていないので、、、、(^^;))

◆関連リンク
著者インタビュー:円城塔先生 (Anima Solaris)

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2008.01.05

■Arthur Clarke's 90th birthday reflections video
  アーサー・C・クラーク 90歳の誕生日メッセージ

Arthur_clarkeSir Arthur Clarke's 90th birthday reflections video
Sir Arthur C Clarke's 90th Birth day (Blog)

 2007.12/16に90歳になったアーサー・C・クラーク氏のコメントがThilina Heenatigala氏の手によってウェブにアップされている。

 コメントのポイントは以下(意訳もありますが御容赦あれ)。

・この90年で夢が実現してきた。50年間の政府の宇宙開発の時代をへて、いよいよ商業宇宙飛行の時代に至ろうとしている。これからの50年間で何千人もの人々が宇宙旅行をするだろう。

・この四半世紀で携帯電話が人のコミュニケーションを変革した。人々は携帯電話でまるで家族と居るようにいつでもクチャクチャしゃべっている。これが人類にとって何を意味するか。

・人類は史上最も野蛮な世紀である20世紀から何を学んだか。
 私は民族を超えて真のグローバリゼーションと呼べるような一つの家族として人類が行動するのを見てみたい。

・私には3つの望みがある。ひとつは異星人との通信の実現、石油に代わるエネルギの登場、そしてスリランカの平和である。

 クラーク氏らしい21世紀の希望を語った前向きなコメント。このオプチミズムがクラーク作品の魅力なので、現在もそうした意志がくっきりとイメージされているのが、熱いSFの原点を思い出させてくれて嬉しくなる。新年らしいコメントになっているので掲載してみた。

 先日『幼年期の終わり』をひさびさに読み直して、その素晴らしいヴィジョンに再び感動した(しかもクラークがこれを書いたのはなんと36歳の時!!)。今後も健在で我々に未来のヴィジョンを提示し続けてほしいものである。

◆関連リンク
松岡正剛の千夜千冊『地球幼年期の終わり』アーサー・C・クラーク
 この松岡氏の一文は泣かせます。もっとも上のようなクラークのコメントについては、良識的と一刀両断ですが、、、。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2007.12.31

◆<発掘記事92.10/29>
下呂のアプライド美術館と中子真治氏の倉庫

<p><p><p><p><p><p><p><p><p>下呂のアプライド美術館と中子真治氏の倉庫</p></p></p></p></p></p></p></p></p>
下呂のアプライド美術館と中子真治氏の倉庫

                             1992.10/29


アプライド美術館

 岐阜県萩原町にできたアプライド美術館に行ってきた。
 あの中子真治が協力してハリウッド特撮のミニチュアの展示をしているという のが、今回のアプライド美術館の企画である。

 僕には中子真治って特別 、思い入れがある。そして彼が岐阜の出身でどっかにいるというのが、うれしか ったりもしていたのである。(ようするに中子真治のミーハーファン!! )

 で、アプライド美術館は、国道41号を美濃加茂から北へまっすぐ1時間半く らい走ったところ萩原の駅の手前にある。ちょうど41号沿いで右手に、「メト ロポリス」のマリアの看板が見えてくるからすぐわかる。

 ぼくはもしかして中子真治に会えるかもしれないという期待にすこしドキドキ しながら入っていった。
 広さは大学の普通の教室の2倍くらいで結構せまい。
 で、展示のほうは、正確には、主催は地域(まち)づくり有志会、後援/下呂市・ 萩原町、、、下呂温泉観光協会、でもって監修/中子真治とある。どうやら、むらおこしの一貫で町に住む一種の文化人である中子真治を囲んだ有志が企画したような雰囲気である。

 なかにはいるとまず宇宙服の人形が目に入り、それから奥へ進むと あるあるあるというくらいあるSF映画のミニチュアアートと小道具の展示。充実してたのは、中子真治がよく取り上げていた(友達だという)グレッグ・ジーンの作品。

Applied

← チラシより抜粋

 以下、思いつくまま展示品を挙げると未知との遭遇のデビルスタワー、ミクロ の決死圏の潜行艇、宇宙家族ロビンソンの円盤型宇宙船、そしてフライデー(!! 実物!!!!)、宇宙戦争の火星人の円盤、宇宙大作戦(でなきゃネ)のフェー ザー、通信機、TVバットマンの各種プロップ、シービュー号のフライングサブ (ぼくは子供の頃これが大好きだったのだ!!)、レッドオクトーバーのソ連原 潜、そして2001年のあの宇宙服!!!!

 かなりおおものがあって、僕は大満足。なにしろ、実家の可児から1時間 半のところに、同じ岐阜県の地に、憧れて見ていた映画に使われたこんなものたちが展示 されているというだけでワクワクするではないか!フライデーがいるんだゼ、ボ ーマンの宇宙服があるのだゼ!!
 残念ながら中子真治はいなかったけれど、満足して帰ることとした。ここは来 年の3/14までは、この展示が続き、つぎはまた別の展示が行われるらしい。 「アプライド」の言葉から「なんでも美術館」をめざすというから、また面白い ものを見せてくれるでしょう。期待!である。

 というところで終わると思ったでしょう?(長いと言う方。えーー、まだある のーーと言わんでください)

倉庫


 実はまだ続きがある。出口の所でおもしろそうなチラシを発見!
 少し戻った下呂の町に、「倉庫」という名の「博物館のような物置 お茶もで きる」店があるらしい。
 「コンセプトは