2021.09.13

■感想 城定秀夫監督『アルプススタンドのはしの方』


映画『アルプススタンドのはしの方』予告編

 城定秀夫監督『アルプススタンドのはしの方』録画見。
 アトロクで20年に大評判だった本作、楽しみに観てみました。

 こういうシチュエーションで映画として描くというところ、元の演劇に全ての発想があるのは当然ですが、斬新で面白いですね。

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 映画というのは映像を観せて何ぼですが、この映画のようにある部分観客の想像力に委ねるタイプの映画は、例えば最近ではデンマーク映画グスタフ・モーラー監督『THE GUILTY/ギルティ』とか、古くは宮坂武志監督『大怪獣東京に現わる』とか、思いつきます。いずれも映像に映るキャラクタのセリフや音響により、その画面の外側を観客に想像させることで成立している。

 本作も同様に、人物のセリフと、野球場の音から見えない映像を観客の頭の中に投影するタイプの作品。

 この手法って、SF小説はイメージ喚起が真骨頂なので、その映画化にも相当に有効な手法のはずですね。あとホラーとか。この切り口で斬新なSF映画、ホラー映画が出てくることも期待したいですね。

 本作は、淡々とした冷ややかなアルプススタンドのはしの席の情景から、クライマックスの熱い盛り上がり、想像力を喚起して、涙腺を刺激する見事な展開に、脚本と元の演劇と、そして城定秀夫監督の映画の采配に拍手です。

【高校演劇】『アルプススタンドのはしの方』

 元になった東播磨高校演劇部の舞台がYoutubeに全篇公開されているので、こちらも観てみました。
 かなり映画とシナリオはおなじですね。応援に来ている先生とか、アルプススタンドから主人公たちが離れているシーンが映画オリジナルで、その他は一つ一つのポイントになるセリフもほぼ同じ。高校演劇のレベルの高さが感じられます。素晴らしい。

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2021.09.08

■情報 TVアニメ「平家物語」


TVアニメ「平家物語」PV 2022年1月よりフジテレビ「+Ultra」ほかにて放送開始&9月15日(水)24時よりFODにて先行独占配信!

" TVアニメーション「平家物語」は、2016年に河出書房新社より刊行された古川日出男訳を底本に採用。主人公であり、物語の語り部である琵琶法師としてアニメオリジナルキャラクターの「びわ」(CV. 悠木碧)を据えました。平清盛(CV. 玄田哲章)の長男・重盛(CV.櫻井孝宏)や、その妹・徳子(CV.早見沙織)をはじめとする平家の人々とびわの交流を軸に、叙事的な史実にとどまらず、時代に翻弄されながらも懸命に生きたひとびとの群像劇としての「平家物語」を展開します*。

監督を務めるのは山田尚子、シリーズ構成・脚本は吉田玲子。漫画家の高野文子が、自身初のアニメーションキャラクター原案を担当します。音楽は牛尾憲輔。アニメーション制作は、「映像研には手を出すな!」で第24回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞し、2022年初夏には劇場アニメーション『犬王』(原作:古川日出男、監督:湯浅政明)の劇場公開も控えるサイエンスSARUが手掛けます。"

 TVアニメーション『平家物語』、古川日出男訳を底本に採用。監督は『映画 聲の形』の山田尚子、シリーズ構成・脚本は『映画 聲の形』『夜明け告げるルーのうた』『きみと、波にのれたら』『若おかみは小学生!』他の吉田玲子。アニメーションキャラクター原案が『絶対安全剃刀』『おともだち』等の漫画家 高野文子が初のアニメキャラクターを担当。とりわけ高野文子のキャラクタは、80年代の高野ファンとしては、嬉しい。

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 そして制作は『犬王』(原作:古川日出男、監督:湯浅政明)の劇場公開も控えるサイエンスSARU!!
 これがヒットしたら、サイエンスSARUによる古川日出男作品のアニメ化が続くかも。『アラビアの夜の種族』を是非!!

◆関連リンク
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2021.09.06

■情報 原 將人監督『焼け跡クロニクル』クラウドファンディング開始 !


原 將人監督『焼け跡クロニクル』(Youtube)

不慮の火事で自宅が全焼!
原 將人監督が描く、家族による再生のドキュメンタリー『焼け跡クロニクル』をご支援ください!

(Motion Gallery)

"『20世紀ノスタルジア』等の映画監督 原將人の自宅が不慮の火事で全焼。原は火傷を負って入院し、全ての家財道具と映画フィルム機材が焼失した。ゼロからの再起を記録した『焼け跡クロニクル』の完成・上映への支援をお願いします!

  2020年にアメリカのミネアポリスで起きた、白人警官による無罪の黒人の殺害事件を、勇気を持って記録し続けた18歳少女のことを思い出してください。撮影することによって獲得できる未来があるのです。

 あのスマホ映像は、アメリカという国の、奴隷制や人種差別という、大きな物語を喚起させ、人種的平等という未来を獲得する動きへと繋がっていったものですが、この映画、私たち家族に起きた火事とその後の映像は、それに比べたらごくごく小さなものです。歴史的な物語や権力への抗議などを想起させるものはありません。

 しかし、たまたま、この世に生まれてきた者同士が家族を作り、未来へ向かっていのちを紡いでいくということのいとなみが、やはり、たまたま火事に出会うことによって、スマホという小さなカメラにつぶさに記録されて、作品として完成し、多くの人々に見てもらえるとしたら、そして、その作品が日本中の人々に届けられたら、さらに、字幕が加えられ、世界中の人々に届けることができるのならば、やはり、私たちのあり得るべき未来を獲得することにつながるのではないでしょうか。

 かつて小津安二郎監督の『東京物語』がそうであったように、小さな家族の小さな映画を、世界に羽ばたかせたいという思いを込めて、『焼け跡クロニクル』プロジェクトを立ち上げます。"

 原將人監督の新作クラウドファンディングが始まりました。
 リンク先の予告篇、まさに原將人作品の雰囲気ですばらしいです。サムネイル画像以外のところがとても良いので、是非クリックして御覧ください。

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 大雨、コロナ等の災害が世の中で続いていますが、そんな中で希望を描かれる作品を期待。双子ちゃんの成長する様子も楽しみです。

 完成をお祈りして、私も参加させて頂きました。

◆関連リンク
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2021.08.30

■情報 「高山良策展 空想する闇と光」 足利市立美術館

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高山良策展 空想する闇と光  足利市立美術館所蔵品による

"2021年8月21日(土)~10月10日(日)
開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
休館日:月曜日(ただし9月20日は開館)、9月21日(火)、9月24日(金)
観覧料:一般710(560)円、高校・大学生500(400)円、中学生以下無料
( )内は20名以上の団体料金
主催:足利市立美術館
協力:公益財団法人足利市みどりと文化・スポーツ財団、一般財団法人おもい・つむぎ財団

 高山良策(1917-1982)は、青年期に影響を受けた、空想の世界などを克明に描くシュルレアリスムの手法をもとに、絵画や立体作品の制作を生涯にわたって続けました。戦後復興期の、社会の歪みや闇の部分を題材にした作品から、その後の、より自由な空想に身をゆだねたものまで、闇と希望が交錯するような独特の表現活動を、足利市立美術館が所蔵する約700点から厳選した作品によって紹介します。"

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 『ウルトラマン』他の怪獣造形で有名な高山良策さんのシュルレアリスム絵画展。
 足利市立美術館公式HPに掲載された上記の絵画は、いずれも僕は初めて観るのだけれど、これら幻想的な雰囲気の絵画作品が以下リストによると178点が展示されているということです。

 怪獣体験を幼児期に衝撃的に受けた我々世代は、怪獣から絵画的な世界の見方、シュルレアリスムを原体験に焼き付けられた世代なのかもしれないですが、その原初体験のさらにルーツに触れることができるこの機会、とても貴重かと思います。

 残念ながらコロナ禍で栃木県までは行くことができないですが、足利市美術館の収蔵品とのことなので、いつの日か、観に行ってみたいものです。

高山良策 展 空想する闇と光 出品リスト

◆関連リンク 当ブログ関連記事
感想 成田亨『特撮と怪獣 わが造形美術』『特撮美術論』

"「怪獣とシュルレアリスム」ということでは、成田亨氏の美術監督/デザインを受けて、実際に怪獣を造形物として作った高山良策氏の系譜が重要かもしれない。
 日本にシュルレアリスムを紹介した画家 福沢一郎に師事していたシュルレアリスムの作家 高山良策氏。"

『怪獣のあけぼの』造形家・高山良策を追った実相寺昭雄監修番組
足利市立美術館で「高山良策展」 約280点の展示で初期から晩年までを回顧

"同展では、同館が所蔵する高山良策の作品700点から約280点を紹介。年代別の構成で制作初期の作品や中国戦線の中で兵士として過ごす中で描いたデッサンから独特な世界観を持つ戦後の作品、最晩年の絶筆までを展示し、高山の生涯を振り返る。絵画に関連する立体作品6点も展示するほか、日記や愛用の画材、仕事で携わった絵本や広告のデザイン、特撮関連のスケッチなども展示する。2021/08/24 14:59"

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2021.08.23

■感想 長久允監督『WE ARE LITTLE ZOMBIES』


【公式MV】ZOMBIES BUT ALIVE (映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』エンディング曲)

 長久允監督『WE ARE LITTLE ZOMBIES』('19)録画見。

 全く前知識なく観て、意外な開幕から怒涛のような観たことのない映画が画面で展開されて、エンドクレジットまで息つく暇なく、隅々まで楽しませてもらいました。これは新しい日本映画と言っていいでしょう。素晴らしい。

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 監督は電通に所属しCMプランナーとして活躍、長篇映画は本作が初作品ということで、フレッシュな魅力が爆発しています。

 印象的なセリフ、一つ一つが斬新な映像、どこか外しているけれど味わいのあるパンクな歌。カラフルな異界が眼前に展開します。

 これだけ斬新な子供心の溢れた映画は、同じくCM畑出身の中島哲也監督『パコと魔法の絵本』以来でしょうか。随分テイストは違いますが、意表を突かれて、カンドーした度合いでは、僕には近いインパクトがありました。

 主演のいとうせいこうにちょっと似ているボーカルのヒカリ役 二宮慶多と、キーボード担当の中島セナがとても良い。特に中島セナのツンデレ美少女の眼の素晴らしさには、惹かれるものがありました(^^;)。

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 そしてとりわけ素晴らしかったのはエンディング。
 これも少し違いますが、エンディングの爽やかさ(?)は、北野武『キッズ・リターン』を想起させます。
 いやーお見事でした。次回作、とても楽しみです。

◆関連リンク

And so we put goldfish in the pool. /長久允監督『そうして私たちはプールに金魚を、』
from Koto Production on Vimeo.
 長久監督の初監督短篇映画、全篇がVimeoで観られます。第33回サンダンス映画祭ショートフィルム部門でグランプリを受賞された作品。
 『WE ARE LITTLE ZOMBIES』へと発展進化するモチーフがここでも描かれています。27分の作品ですので、ご興味があればご覧下さい。映像的には100倍くらい、『WE ARE LITTLE ZOMBIES』の方がぶっ飛んでいます(^^)。



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2021.08.16

■感想 ロバート・ゼメキス監督『マーウェン』: Welcome to Marwen


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 ロバート・ゼメキス監督『マーウェン』録画初見。信頼するWOWOWのW座作品ということでw、実はゼメキスの映画であることも含め、どんな映画か全く知らないで録画ディスクからヒョイと選んで観てみました。

 前知識ゼロで観たことで、冒頭シーンからの意外な展開にどんな映画になるかワクワクしながら最後まで観ました。これ、話題にもなっていなかったし、世界的にもオオコケだったみたいですが、なかなかの傑作じゃないですか!

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 愛すべき主人公、元イラストレーターのマークが展開する奇想な日常にカンドー、映像技法的にもCGと実写の自然な融合は、この物語を語る手法としてなかなかのもの。

 世間ではリアル世界に対する幻想部分が比率として高すぎるという批判がある様ですが、僕はもっとそちらの比重が高くてもOKかと。テーマ的にもゼメキスの趣味の方向性としても、その方が自分の観たい志向に合っているのになぁ〜的な。

 これって、正にアウトサイダーアートを描いた作品で、シュヴェルの理想宮とか、ヘンリー・ダーガー『非現実の王国で』のヴィヴィアン・ガールズと同類ですよね。しかも実話が元になっているということで、一番上のリンク先のドキュメンタリーが激しく観たくなっています。

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 『ザ・フォール』も同様にドキュメンタリーが先にあって、ゼメキスにそれが映画企画を刺激した様ですが、ゼメキスの志向している映画(と手法)に両作ともマッチして、彼の映画心をくすぐったのでしょうね。

 いや〜、楽しい映画を観せて頂きました。ゼメキスに感謝。

◆関連リンク
ドキュメンタリー『MARWENCOL』(ブルーレイ)

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2021.08.04

■情報 日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』

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日曜劇場『日本沈没ー希望のひとー』(公式HP)

"原作:小松左京「日本沈没」
脚本:橋本裕志(『華麗なる一族』『獣医ドリトル』『LEADERS リーダーズ』)
プロデュース:東仲恵吾(『グッドワイフ』『グランメゾン東京』『おカネの切れ目が恋のはじまり』)"

 既に映画として二作、テレビドラマ一作、漫画 二作、アニメ 一作、ラジオドラマ 二作と多くのメディアで作品化されている小松左京の『日本沈没』ですが、今度、TBSで2回目のテレビドラマ化になるとのこと。

 上記公式ページには、各登場人物のインタビューが掲載されている。このコロナ禍での映像化ということで、同じ小松左京のSFだと『復活の日』があるわけだけれど、今回は日常が壊れて巨大な非日常に人々がどう対応していくか、というところで共通してこのタイミングでの映像化は興味深いものと思います。

 このブログでは、小松左京『日本沈没』には日本のメディアミックスの初期的な巨大なイベントとして大きな影響を受けているので(関連リンク参照)、今回もとても楽しみにしています。

 田所博士は、小説版と同じ様な設定で登場の様ですが、あとの登場人物は名前も設定も原作とは大きく異なる様で、ここは原作ファンとしては不安もあります。

 また危惧だとは思うけれど、主人公らが「日本未来推進会議」という団体に入っている設定の様だけれど、ちょっとこのネーミングが現政権と関連の深いとされる某日本の政治団体を想起させてキナ臭い感じが、、、。危惧だろうけれど、この名前の相似は誰でもがすぐ思いつくはずなので、なるべくならば、避けて欲しかったかな〜と。

橋本裕志(wiki)
 このシナリオライターさん、テレビドラマも多数手掛けられていますが、あまり僕は見てないタイプのドラマが多く、映画だと、テルマエ・ロマエII(2014年)、いぬやしき(2018年)くらいですが、どちらも割と好きだったので、期待したいと思います。

◆関連リンク
当ブログ 『日本沈没』関連記事 

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2021.08.02

■感想 クリス・マッケイ監督『トゥモロー・ウォー』


THE TOMORROW WAR (2021) Behind the Scenes
 クリス・マッケイ監督『トゥモロー・ウォー』Amazonプライム 初見。

 なかなかのエンタメでこんな新作大作をタダ(追加料金なし)で堪能させてもらって感謝という感じです。

 特に前半、いろいろとタイムパラドクス的には謎の展開もありますが、それでもまずは未来へのトラベルなので、特に大きな破綻なく、何より家族の描写がなかなかでかなり楽しめます。『ターミネーター』の時間軸を用いた悲劇とどこか共通するムードだと言ったら誉めすぎでしょうか。僕はあの情感の動きはかなり好きです。

 でも後半、さすがにSFファンとしては、口あんぐりなとんでもエンタメ重視展開で興醒めでした。惜しいなぁ〜この後半はもっとアイデアをギリギリまで練って欲しかったですね。

 映像的には、エイリアンの造詣もまあまあ及第点という感じで、SFXもなかなか見事なものでした。ただストーリー展開に比べると目新しさの感じられない映像が続き、ここはいまいちだったかも。

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トゥモロー・ウォー ホワイトスパイク (Google 画像検索)
 Googleで検索すると都内で実施されたこの映画のキャンペーン画像がいくつかみられますが、これはなかなか良い感じで見てみたかったですね。ネタバレの様な気もしますが、公式がこれだけ盛大にやっているので、ご容赦ください(^^;)。

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2021.07.21

■情報 ヨハン・ヨハンソン監督『最後にして最初の人類』


『最後にして最初の人類』予告編 公式サイト

"『メッセージ』などの音楽を手掛けた作曲家、ヨハン・ヨハンソンの監督作。オラフ・ステープルドンのSF小説を原作に、16ミリフィルムの映像とヨハンソン監督による音楽を織り交ぜながら、過去の記憶やユートピアについて語られる。ナレーションを務めるのは『フィクサー』などの女優ティルダ・スウィントン。『アウトロー』などの製作に携わってきた、ソール・シグルヨンソンが製作を担当する。
作品情報:https://www.cinematoday.jp/movie/T002...
配給: シンカ
(C) 2020 Zik Zak Filmworks / Johann Johannsson
劇場公開:2021年7月23日"

 どんな映画なんだろう。ステープルドンの小説の朗読とスポメニックの映像とヨハンソンの音楽だけで構成されてたら、凄いかもしれない。
 予告篇見ると、かなり実験的にもみえるけれど、ワクワクします。愛知県でも2館で上映予定ですね。この手のでここまで拡大公開される映画って珍しい様な、、、。
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『最後にして最初の人類』原作 アーサー・C・クラーク(「2001年宇宙の旅」)にも大きな影響を与えた絶版中のSF小説の序文が期間限定で特別公開! ヤマザキマリによる特別イラストと寄稿も一部掲載

"ヤマザキマリから原作に寄せられたテキストとイラストも公開される。ヤマザキは、原作と映画を評して「オラフ・ステープルドンによる原作は、1ページの中に綴られた文字数の100倍以上の情報が織り成されていると言っていい、壮大な叙情詩である。その圧倒的な世界観を、わずか70分の映像は余計な負荷も虚勢もまとうことなく、堂々と、そして飄々と顕していた」と記し、高く評価した。"

 原作を読んだ時の感動を思い出させる文章ですね!

◆関連リンク
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Jóhann Jóhannsson’s sci-fi opus: Last and First Men
 2020年ベルリンのインターナショナルフィルムフェスでの上映/上演風景
『最後にして最初の人類』(国書刊行会) オラフ・ステープルドンの原作。

"世界終末戦争、火星人との闘争を経て、進化の階梯を登り始めた人類は地球を脱出。金星や海王星に移住するが、ついに太陽系最後の日が……20億年に及ぶ人類の未来史を神話的な想像力で描いた伝説的作品。"

・当ブログ記事 ■感想 オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』 浜口稔訳 (国書刊行会刊)

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2021.07.19

■感想 細田守監督『竜とそばかすの姫』


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 細田守監督『竜とそばかすの姫』観てきました。今日はこちらも36℃とついに夏本番ですが、まさに細田作品らしい、真っ青な空に伸びる入道雲がとても似合う素晴らしい作品でした。劇場からの帰り道の空と雲が映えること映えること。また自転車の高校生とかなりすれ違ったのですが、普段はそんなこと滅多に思わないのに、細田作品を見た後、自分にとってはもううん十年も過ぎ去った高校生の姿がとても眩しく見えるのが印象的。

 『バケモノの子』『ミライの未来』と実は続けて自分には低調な作品が続いていたので、今回、劇場で観るのを少し迷ったのですが、予告篇に感じるところがあり、映画館へ脚を運んで本当に良かったです。壮大なスケールで、映像と音のシャワーを、まさにスクリーンで浴びるのが最適な映画作品でした。

 今回、音楽が重要な要素を占める作品なのですが、CGによる壮大な空間の完成度の高さ、そして音楽映画ともいえる伸びやかな音響。映画の贅沢さとはこうあるべきという、ある意味、世界レベルの作品を見せて頂いた気分です。

 そしてこの映画の物語は一見『アナと雪の女王』『美女と野獣』等を思い出すファンタジーですが、実は現在の技術の延長で実現出来る近未来世界です。電脳空間の可能性を描いたそこが、この細田作品の凄さ。これは“現実”の物語ですね。
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★★★★★★ネタバレ注意★★★★★★ .
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 クライマックスが特に涙腺を刺激してやばかったですが、この現実とヴァーチャルでの人の存在の姿の描き方、まさに新しいネットとリアル空間からなる、現実世界のクロスする様相を見事に結晶化して描いたところが、傑作になっているところなのでしょうね。

 そこにはネット空間の持つ精神的な連帯と共感と誹謗中傷、そして現実空間の持つ/肉体で地面に縛り付けられたヒトの関係の暖かさと鬱陶しさみたいなものを、数々想起させて融合し表出させ、入道雲の様に清々しい景色が存在していました。

 特にネット空間の匿名性で、大袈裟に言えば精神の自由と趣味の世界の追求を何というか現実の会社員生活とは全く切り離すことでちょっとだけ昇華させてきた自分のブログ活動とかを、全然規模も到達点も違うけれど、ダブらせてみてしまったので、何というか感無量な感慨でした。

 物語としては、もちろん『美女と野獣』が下敷きにされていますが、こちらは野獣だけでなく「Belle」も仮の姿と実の姿が描かれています。これをミュージカルとして仕立て上げて、見事に『美女と野獣』のあの名シーンをある意味超えてディズニー映画を凌駕したところも特筆すべきかと。

 加えて、テーマ的には『アナと雪の女王』でエルサが氷の城で初めて自分の自由を手に入れるあの歌のシーンにも肉薄するミュージカルシーンになっていて、意識的にディズニーをその超える目標においていることがよくわかり、しかも超えている部分がしっかりあるという傑作になっていると思いました。

 そしてそうした骨格に対応して、映像としても手描きとCGの両方を融合して描かれた現代的手法の見事さが映えます。
 東宝公式のメイキング映像で細田監督が語られている「CGでも手描きでも、CGは血が通っていないということを言う人もいるが、どちらも人によって描かれていると言うことでは同じ」という視点で融合して描かれたヒトの営みとしてのネットとリアル。テーマにまさに適合したこの手法も素晴らしい。デジタル映像としては、細部をとことん描きこんで、映像圧縮技術の破綻寸前wの映像だったが、デジタルにしかできない映像の可能性を切り開いている様に思う。

 ヒトの有り様として、これからも人類はリアル空間とネット空間の両方の現実世界の中を往還しながら過ごしていくことになるのでしょうが、その一つの結晶化した姿をこの時点で描いた最高傑作の映画なのかもしれません。凄いものを見せてもらいました。

◆その他 メモ
・本作で描かれたリアルと幻想は、ネットを使うことによって、実は今現在の現代にも非常に近いものが存在している現実的な存在であるところが凄い。ネットというもののある意味の本質、ヒトの幻想を"現実化/実体化"するものとしてのネット。このあたりの本質を描き出している点でも本作は鋭いと思います。

・仮想空間 <U> に存在する"正義"を守るチーム「ジャスティス」の隊員たちのユニフォームと身体のフォルムが、何故か手塚治虫風に見えたのは、僕だけでしょうか。もしくは石ノ森章太郎というか、昭和の時代の漫画を思い起こさせます。どんな意味を持たせているのだろう。

◆関連リンク
東宝公式Youtube 「Making of 竜とそばかすの姫」#1〜10
 大変、興味深いメイキングです。これはファン必見。こういう企画、素晴らしいです。
・特に #6「Making of 竜とそばかすの姫:細田守とクリエイター~Uの発想~」
 ボディシェアリング研究者 玉城絵美 琉球大 教授のインタビューは興味深い。

竜とそばかすの姫:公開3日間で興収8.9億円突破 動員60万人 すず、ベルの夏空ビジュアルも
 公開の週末8.9億円。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が初週11.8億円。『竜とそばかすの姫』の方が一般家族層には受け入れられやすい感じなので、これは相当のヒットが期待できそうですね。

 それにしても上記ポスター画像の左、すごく良いですね! やはり細田映画は夏空が似合う!

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2021.07.12

■ケイト・ショートランド監督『ブラック・ウィドウ』


Marvel Studios' Black Widow | Official Trailer
 ケイト・ショートランド監督『ブラック・ウィドウ』@ 関シネックスマーゴで 観てきました。

 スカーレット・ヨハンソンは相変わらずカッコ良く、『ミッドサマー』主役のローレンス・ピューもなかなかだし、冒頭のシーケンスから始まるストーリーの骨格もグッと来るし、コメディタッチ部分も最高に笑えるし、クライマックスのアクションもとびきりなのでなかなか満足な仕上がりなのだけれど、後ほどネタバレで述べる様なシナリオの不徹底が何とかされていれば傑作になったと思わせるだけに、僕にはちょっとそこが残念な映画でした。

 新しいMCUのスタートとしては、あ、こういう形で再スタートするのか、と新鮮な気持ちにもなるのでした。ブラック・ウィドウ リスペクトとしては面白い切り口かもしれない。

 それにしてもクレジットからはStereo D社等が担当した3D版があるはずなのに、日本の劇場で上映されていないのは、寂しすぎる(4D版は上映館があるが、立体映像で上映されているのでしょうか)。ついに3D映画低調時代が本格化した様で、寂しくてならないです。







★★★★★★以下、ネタバレ注意★★★★








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 脚本的な欠陥としか思えないところ。『ゴジラvsコング』も書いたエリック・ピアソンは『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』のスクリプトドクターでもあったということだけれど、以下は何とかならなかったのだろうか。冒頭や家族コメディシーン、そしてアクション他が良いだけに、残念でならなかった。

・ナターシャとエレーナが再開するところで何故いきなり戦うのか。
・お母さん、やってることが超極悪。なぜあの流れで良い話にもっていけるか。もう少しケアしても良いのでは。
・敵役ドレイコフが感情を露わにするところ、あれだけの巨悪のはずなのに小者感が半端ない。また空中浮遊基地も唐突感と最後のフェールセーフゼロのシステム設計が何だか残念。
・世界の虐げられてきた女性の解放というテーマは良いのだけれど、ストレートすぎるというか、例えば『ブラック・パンサー』等にあった政治的な改革の視点が弱い様な気がした。もしもう少しそこが配慮されていたら、本当に素晴らしい映画になったのではないかと残念至極。

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2021.07.07

■感想 マイケル・ベイソン『2001:キューブリック、クラーク』

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 マイケル・ベイソン『2001:キューブリック、クラーク』読了。
 公開50周年の2018年に出版された575頁のメイキングの大著。キューブリックとクラークの邂逅から始まる4年間の映画制作とその公開までを関係者の証言とメモから再生し、まるでその現場にいる様な臨場感で描き出した傑作ドキュメンタリー。

 あの映画のあのシーンはどの様に着想され、具体化されていったかを、微に入り細を穿つ描写が素晴らしい。

 例えば、HALの読唇術シーケンスは、フランク・プール役のゲイリー・ロックウッドの発案がきっかけで作られたとか、デイヴ・ボーマンの食事シーンでワイングラスを割るシーンは、キア・デュリアの着想だったとか…意外と現場でのスタッフ、キャストの発想で、ある意味即興的要素を取り入れながら、作られていった様子が生々しい。セリフを排したタッチだけでなく、ドキュメンタリー的な風合いが感じられるこの映画の一つの秘密に近づけた様な感覚が感じられた。

 もちろん特撮シーンについても、ダグラス・トランブルはじめ、スタッフの証言含めて、リアルに現場が語られている。特に興味深かったのは、ディスカバリー号の重力区画を描いた巨大な円形ホイールのセット。当時はもちろんLEDも液晶ディスプレイもなく、巨大な重くて熱い照明が時々落っこちてきて危険な職場であったとか、あの優雅なディスプレイの裏には16mm映写機が画面の数だけ巨大ホイールに括り付けられてセットされていたとか、まさに想像を絶する力技で、2001年の未来が構築されていたことが証言されている。

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 若かったダグ・トランブルが現場でキューブリックに認められてどんどんSFXの中核スタッフになっていく描写も心地良いが、主な担当シーンとして、モニタに映る各種アニメーションとスリット・スキャンが代表的だけど、ムーンバスの模型にリアリティを付け足すのにも貢献していたり、かなり幅広くタッチしている様子も窺い知れて良かった。またキューブリックのみがアカデミーの特殊撮影部門の受賞者であった顛末、後年のトランブルのみが2001の特撮を作ったのではないというキューブリックがだした新聞広告について、そしてそのエピローグとしてトランブルがキューブリックの葬儀に参列している感慨深いシーンも本書のクライマックスの一つである。

 プレヴュー上映での酷評と、公開直前でのキューブリックによる冗長シーンのカット(間に合わず各劇場でフィルムカットして)公開、その後若者中心に大ヒットして68年の全米No.1ヒットというくだりも臨場感があって興味深く読めた。

 あとスリランカとイギリスを行き来して携わったクラークの当時の生活、特に当時のパートナー マイク・ウィルスンの制作していた007のパロディ映画『ソルンゲス・ソル (ジェーミス・バンドゥ)』の資金繰りに苦しむクラークの様子は、傑作映画と並行して今は全く語られないC級作品の、資金繰りに苦心する巨匠の生々しい人間的な姿がリアルに立ち上がって好きなシーンだった。(ウィルスン監督のパトロンという位置づけだったらしい)

 そして本書のラストは、クラークの死の数時間後に、75億光年という、観察可能な宇宙の年齢の約半分の時間をかけて太陽系に到達したガンマ線バーストについて語る著者マイケル・ベイソンの筆で閉じられる。クラークらしい宇宙的詩的なシーンに感激して読者は本を閉じることができる。素晴らしい名著をありがとうございました。うちのニャンコも感謝して本を齧っておりましたw。

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Sorungeth Soru Trailer マイク・ウィルスン監督『ソルンゲス・ソル (ジェーミス・バンドゥ)』(予告篇)
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 マイク・ウィルスン『Sorungeth Soru』の予告篇。
 名作の影に存在したこうした映画も観てみたいというのは相当の屈折でしょうか(^^;)。ちなみにスタッフリストにA.C.クラークの名前はありません。

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2021.07.05

■感想 アダム・ウィンガード監督『ゴジラvsコング』

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 アダム・ウィンガード監督『ゴジラvsコング』@シネックスマーゴで観てきました。

 ネタバレ感想は後半書きますが、この映画、予告篇は事前に観ない方が良いですね、随分ネタバレしている様な気がします。

 感想としては『シン・ゴジラ』はやはり凄い映画だったw、というのが偽らざるところ。本作も怪獣バトルのアングルとかアイデアとか、未知の舞台のビジュアルとか、映像は素晴らしいものがあります。特にゴジラとキングコングの細かな表情の描写、ビルの作り込み等ディテールは白眉という他ないでしょう。凄い。

 とはいえ、観終わった後に何も残らない、この空洞感は何なのでしょうか。全体としてはとても駄目な映画でした。映画館を出る時のこの高揚感のなさは特筆すべきw。
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 やはり問題はシナリオと監督の姿勢でしょうね。

 陰謀論的な話を構築しておきながら、陰謀論を揶揄する主要登場人物。物語の骨格から逆算されて配置されたキャラクターとエピソード。要するにエモーショナルを無視した映画のための強引な物語がこの空洞感の正体であると考えます。

 可哀想なのが小栗旬。白目を剥いた捨て身の演技までしているのに、「芹沢」というゴジラシリーズにとって重要な名前を付けたのに、まるで使い捨ての扱い。悲痛でしたね〜。

 このシリーズ、ゴジラの登場理由が地球の王者というモチベーションで描かれているけれど、その人間臭さも大きなマイナスですね。円谷英二がやってしまった「シェー」と同じくらい、安直で罪深い設定と思うのは僕だけでしょうか。

 この監督と脚本家には、映画の神を舐めてもらっちゃあ困る! ときつく言いたいものです。あまり悔しい出来で脚本家出てこい!と調べてみたら、エリック・ピアソンという『マイティ・ソー バトルロイヤル』のシナリオライターで、何とアベンジャーズシリーズの『インフィニティウォー』『エンドゲーム』他のスクリプトドクターを担当した"大物"とのこと。まさに医者の不養生というやつでしょうか。自分の身体を診る事は出来なかった様です。

 脚本次回作は『ブラック・ウィドゥ』ということで来週の公開を楽しみにしていたのですが、どうしようかな、と悩むレベルですね。

 それにしても上でも書きましたが、素晴らしいSFXが泣いています。
 あの微細な表情/ワクワクする映像が描けているのに、それをドブに捨てられたSFXスタッフ陣は無念でしょうね。

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2021.06.15

■感想(ネタバレなし) 諫山創『進撃の巨人』18-34巻 ( 最終回 )

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 諫山創『進撃の巨人』18-34巻読了。

 もともと一昨年までは毎巻新しいのが出ると読んでいたのですが、年3冊ペースでストーリー展開に付いていけなくなってw、28巻で挫折していたため、最終巻が発売されたこの機に、遡って後半18巻から一気読みしてみました。

 すると(当たり前ですが)物語展開のスピードと時制が入り乱れる構成も何なくw、骨太の後半ストーリー展開を楽しむことができました。

 ネタバレなしで書きますと、前半17巻くらいまでのどうしようもない閉塞感に対して、後半は大きく物語が広がっていくのですが、その世界でもまた巨大な人の悪意の閉塞感に囚われていくという、出口のなさ感/徒労感が後半でもヒシヒシと登場人物たちの群像劇とともに体感させられます。

 最初の頃の絵のタッチに対して、シャープさを増した絵のタッチが、スピード感と迫力をダイナミックに表現していて、クライマックスの大きな奇想イメージに感嘆。広大なシーンの連続で、ここまであの巨人たちの物語がたどり着いたんだ〜という感慨もひとしおです。

 物語展開は、かなり広範囲に時間も空間も拡大したわけですが、当初からこの全体像は存在していた感じで、伏線も見事に回収されていて、作家の骨太の構想がここまで来て、全貌を読者に開示されたこと、素晴らしいと思いました。

 巨人たちのビジュアルは、これからアニメ化される29巻からの展開が映像の一大絵巻になっていく予感で、秋からの放映がまた楽しみになりました。
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 この写真撮った後、猫が気に入ったらしくこのまま1時間ほど本の上に居座りました。猫の寝床にもなる『進撃』w。

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2021.06.07

■感想 劉 慈欣著, 大森 望, 光吉 さくら ワン チャイ, 泊 功訳『三体III 死神永生』

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 劉 慈欣『三体III 死神永生』読了。
 ネタバレはしない様に書きますが、素晴らしいスケールの真っ向勝負のSFでした。I,IIからの期待を裏切らず、宇宙の深淵まで突き進んだ奇想SFの見事な大団円に感無量。


 劉 慈欣、片鱗は今までのI,IIでも充分に現れていましたが、今作上巻で炸裂するロマンティスト振りが素敵ですw。新海誠かくやという一大シチュエーションを骨格にして描かれる手際の見事さ。
 そのシチュエーションは、劉さんの徹底して突き詰めて深く探求していくSF的想像力のみが行き着ける非情な世界設定になっていて、その黒暗ぶりに今回も痺れます。

 下巻で炸裂する宇宙論を縦横無尽に使い尽くして描かれる超絶の光景。この奇想映像の極北は読者に想像力の限界を要求する、まさに今までに観たことのないイメージを脳内に展開させてくれます。
 Netflixが実写映像化するそうですが、ここまでの本格奇想SF映像は、世界の映画界でいまだかつて描かれたことのないものなので、いやがおうにも心配と期待が渦巻きますw。

 この映像化には、劉慈欣とケン・リュウがコンサルタントとして協力するとのことだけれど、変にヒーローものだったりラブロマンスだったりに比重を置くのでなく、真っ向勝負のSF世界を原作通りに描いてもらいたいものです。

 そしてラストに流れる、極上のSFのみが獲得するまさに時空を超えた詩情。小松左京『果てしなき流れの果てに』を想起するこの広大なビジョンがもしNetflixで描かれたら、それは本格SFが初めて真っ当にSF映像になる瞬間かもしれない。あまり大きくは期待しないで待ちたいものです(^^)。

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【オンラインイベント】大森望×いとうせいこう 『三体』シリーズ完結記念

"本イベントはZoomウェビナー機能を使用してオンラインでライブ配信します

2021年 06月12日(土)  19:00 - 20:30 JST

六本木 蔦屋書店では、『三体』シリーズの完結を記念してオンラインイベントを開催します。
出演者にお迎えするのは、訳者の大森望さんと、同シリーズ愛読者であるいとうせいこうさん。
SFという枠を超えた極上のエンタテインメント傑作について語る機会を、どうぞお見逃しなく。

【参加条件】
イベントチケット予約・販売サービス「Peatix」にてチケットをご購入いただいたお客様がご参加いただけます。
お申込みの締め切りは6月12日(土)18:00までです。

お申し込みはこちら

(1)オンラインチケット:1,500円 〜"

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2021.05.12

■感想 レジス・ロワンサル監督『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』


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 レジス・ロワンサル監督『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』W座録画初見。

 実は全くの白紙で観たのですが、当初考えていた文学ものかと思っていたら、その部分の比重は小さく、ミステリーでした。

 ダン・ブラウンの小説『インフェルノ』出版の際、出版元が著者同意のもと、各国翻訳家を地下室に隔離して翻訳を行なったとの実話をベースにしたということだけれど、確かに予想外の展開でなかなか見せてくれました。

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 ただ、どうも色々と腑に落ちない展開があり、ラストはなかなか意外なのですが、どうもすっきりとしないエンディングでした。ネタはなかなか面白いので、途中のサスペンスを生み出すための無理を省いて、ラストを最大限に活かすミステリーとして一本筋を通したら、傑作になったかも。

 リンク先は、今日は予告篇をやめて、本篇で印象的に使われていた楽曲"What The World Needs Now"を引用しておきます。

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2021.05.10

■感想 マイク・フラナガン監督『ドクター・スリープ』


『ドクター・スリープ』US版メイン予告

 マイク・フラナガン監督『ドクター・スリープ』WOWOW録画初見。

 キングの原作は『シャイニング』しか読んでいないけれど、見事にキューブリック『シャイニング』と原作の橋渡しをして、きっちりとキング作品であり、キューブリックリスペクトもしているという、ある意味奇跡的な作品になっている。

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 僕が原作の橋渡しと思ったのは、キューブリックが品の良い(シンメトリーな)お化け屋敷と父ジャックの狂気に集中してほとんど描かなかった「シャイニング」能力について、本作は正面からテーマにしているところ。

 もちろん原作『ドクター・スリープ』にも前者はかなりの比重で描かれているはず。キングの意向を汲み取った「シャイニング」描写がとても心地よく(?)、そして苛烈に描かれているのが好感。まさに「シャイニング」が主題となった映画で、こちらの方がタイトルとして『シャイニング』がふさわしい映画ではないかと思った。

 この「シャイニング」描写と合わせて、オーバールックホテルのクライマックスの描写も原作リスペクトですね。

 僕は『シャイニング』初見時、原作を先に読んでいたので、どうもキューブリック作に乗り切れなかったのですが、本作でその溜飲が下りた感覚です。

 監督のマイク・フラナガンはキング原作の『ジェラルドのゲーム』も撮っているけれど、そちらもなかなか良かったので、キング作品のファンなのでしょうね。

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2021.05.03

■感想 ルネ・ラルー監督『ファンタスティック・プラネット』


『ファンタスティック・プラネット』予告篇

 ルネ・ラルー監督『ファンタスティック・プラネット』BSP録画、初見(正確にはウン10年前にボケボケのダビングビデオ(字幕なし)を観ているはずなのだけれど、全く言葉がわからず観たうちに入らない、、、)。

 この独特のスロー感と異世界の不思議なアート感覚は、評判にたがわず今観ても凄いですね。全く我々の知っている日本と地続きに感じられないこの雰囲気は素晴らしいです。

 と言いつつ、いろんなシーンで実は諸星大二郎の漫画を思い浮かべてしまった。諸星作品がもともと日本と地続きな感じがしないのは、こうした欧州の作品の影響を強く受けていたからなのかもしれない。

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 ネットで「ファンタスティック・プラネット」と「諸星大二郎」のキーワードで検索すると、引用した様な画像イメージが現れる。やはり多くの人が共通点を感じている様です。最初の2枚、左が諸星大二郎で、右が『ファンタスティック・プラネット』、人物のデッサン含め、非常に似たタッチであることがお分かりいただけるかと思います。

 本作は1973年制作、諸星の初期作品「生物都市」が74年なので、ある部分同時並行的に共鳴した部分があったのではないでしょうか。それにしてもキャラクターの顔や全身のタッチが凄くよく似ています。

 以下のリンク先を観ると、諸星先生は95年当時の映画ベスト10に本作を挙げている。別の情報では「ローラン・トポール」のバンド・デシネも好きだとのこと。世界を見る視点が似ているのかもしれない。

"マルコポーロ '1995.1月号 文藝春秋社【永久保存版】戦後生れ300人が選んだ、わが青春の洋画ベスト100。
 (諸星大二郎ファンのページ)

"諸星大二郎
(1) 2001年宇宙の旅
(2) 野いちご
(3) アポロンの地獄
(4) 春のめざめ
(5) キング・ソロモン
(6) サテリコン
(7) ジャングル地帯
(8 ) ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ
(9) エクスカリバー
(10) ファンタスティック・プラネット
 名画座などで古い映画も新作も区別なくごっちゃにみていたので、60年以前のものを単純に切り捨てるというのは抵抗を感じる。60年代には、リバイバル・ブームで西部劇の名作を随分みたものだ。"

チェコっと映画のネタ帖 ファンタスティック・プラネット(1973)
 監督:ルネ・ラルー フランス チェコ・スロヴァキア合作
(チェコ蔵)

"日本でも知る人ぞ知る伝説のSFカルトアニメ映画「ファンタスティック・プラネット(邦題)」日本ではフランスのアニメ映画として知られていますが、実は本編のビジュアルはチェコスロヴァキア時代の一流アニメーター達によって作り上げられたということは、残念ながらあまり知られていません。

キャラクター・デザインは「Svatební košile (婚礼のシャツ)」 で有名なヨゼフ・カーブルトが担当し、背景デザインはヨゼフ・ヴァーニャが担当しました。当初本作の脚本、キャラクターをはじめとする本作のイメージ監修を担当したローラン・トポールの直接の関与は撮影以前までで、本作がクランク・インするとカーブルト達にその全てが託されました。アニメーションの撮影自体もプラハのイジー・トゥルンカスタジオで行われ、チェコスロヴァキアの撮影スタジオに立ち入ることを許されたのは、監督のルネ・ラルーのみでした。本作の切り絵アニメーションというスタイルはチェコアニメの伝統的な手法の一つであり、本作にその独自の手法を取り入れさせたのもチェコ側でした。"

 チェコ蔵のペトル・ホリーさんにFacebookで教えて頂いたのですが、この『ファンタスティック・プラネット』、実はフランス映画というよりもそのヴィジュアルは、チェコスロバキア時代のイジー・トゥルンカスタジオで、チェコのアニメーターによって作られた作品とのこと。

 長文の引用になってしまいましたが、リンク先にはヨゼフ・カーブルトさんの作画脚本の映画が紹介されています。
 Youtubeの動画なので、こちらでも引用させて頂きます。『ファンタスティック・プラネット』とは少し印象が異なりますが、明らかに通底するイメージがあります。


strašidelný příběh, animovaný film

◆関連リンク
カルト的人気のSFアニメ『ファンタスティック・プラネット』21年5月公開

"カルト的人気を誇るSFアニメーション『ファンタスティック・プラネット』(1973)の初のDCP(デジタルシネマパッケージ)上映が決まり、5月28日より渋谷HUMAXシネマほか全国で順次公開される。

▼湯浅政明監督
ボスやシュルレアリスムにも通じる、並ぶもののない、シュールで独創的な世界。
そこで起こる対立・闘争・変化の渦へ我々は投げ込まれる。人間も家族も社会も出てくるが、物質、特徴、習慣、精神世界もこことは大きく違う。簡単な答えはない。
生き延びるには、ひたすら起こる出来事からそれを探り続けてゆくしかない。
それは我々にも必要な力、想像力だ。"


『ファンタスティック・プラネット』配信サービス

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2021.04.28

■感想 ジュリアン・シュナーベル監督『永遠の門 ゴッホの見た未来』


『永遠の門 ゴッホの見た未来』11.8公開/海外特別映像
 ジュリアン・シュナーベル監督『永遠の門 ゴッホの見た未来』WOWOW録画見。

 ゴッホ役のウィレム・デフォーがとてもいい。37歳で亡くなったゴッホを、'19年当時64歳のデフォーが演じたわけだけれど、そんな年齢差を感じさせない迫真のゴッホだったと思う。

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 この映画ほど、人々の顔のアップが多用されそして淡々と自然が描かれた映画は知らない。人の内面に映る自然の本質、というものがゴッホを通じて未来の人類に残された、という描写として、特にゴッホのクローズアップを多用した本作の映像設計は素晴らしいと思った。

 ある意味、アートの本質をえぐる様な、当時の人々の拒絶反応含めて描いたタッチは、まさにゴッホの筆になる様な映像ルックになっていた。なかなかの傑作ですね。

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2021.04.26

■感想 小松美羽ライブペインティング@身延山久遠寺


21年4月17日 小松美羽ライブペインティング@身延山久遠寺

"小松美羽はかねてより熱心に全国の寺社仏閣を訪問
身延山久遠寺にも、何度か参拝している

小松は、INORI(祈り)のアーティストとして、
仏教の霊山である身延山からも、大きなパワーを感じてきた

「日蓮大聖人ご降誕800年にあたり、
日本仏教三大霊山のひとつ・この身延山において
INORIのライブペイントを行わせていただけることに喜びを感じます
感謝をこめて描き上げます」"

 4/17(日)にYoutubeでライブ観戦しました。日蓮宗の経が詠まれる中、憑かれた様に描く小松美羽、唇の赤が血のように鮮烈です。

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 以前「小松美羽展 DIVINE SPIRIT 〜神獣の世界〜」を一宮市で観た時、数日のズレでライブペイントを見逃したのが残念でならなかったのだけれど、今回、配信とはいえ、生ライブを観られたのはとても嬉しかった。やはり録画の動画を観るのと生では、(気分だけとはいえ) 臨場感が全く違う。
 
 絵具のチューブを絞り、大胆に手と筆を使って力強く描かれる絵画の迫力。
 経典が音楽の様に鳴り響き、その場のピリピリする空気感が伝わってくる。何者かが憑いた様に描いている様は、作家が登場人物自らが動き出すというあの感覚と同種のものでないかと思う。

 自らの内なる衝動(無意識だったり、身体に修行によって染み付いた身体的なプログラミングによる自動運動みたいなものか、、、)に突き動かされて描かれた芸術は、ある時代には憑物と言われたり、狂気と呼ばれる様なものと同種だろうが、それは決して霊的なものではなく、自己の脳と身体に染み付いた経験とその場の空気を作家が感じて生み出す作品なのだと思う。

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身延山久遠寺(公式HP)
 こちらのお寺には、加山又造の「黒龍」と名付けられた11メートル四方、23,500枚の金箔に墨で描かれた作品がある様です。
 小松の絵はYoutubeの動画の中では、この久遠寺に飾られるという。合わせて、観られるものなら、一度、伺いたいものである。

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