■山田正紀のマルホランド・ドライブ
『サイコトパス』山田正紀著(光文社刊)を読んだ。
最近の山田正紀、あまり波長があわず読んでなかったのだけれど、これのあとがきを立ち読みして、つい買ってしまいました。でも実はあまり面白くない(笑)。
あとがきが、デビッド・リンチ『マルホランド・ドライブ』評になっている。これは傑作。この作品のレビュウとしては他で読んだことのない秀逸さかと。山田正紀って、押井守の映画評も凄く良いし、どっかの編集者さん、映画レビュウの本を書かせてください。絶対買う!
★★★★『マルホランド・ドライブ』と『サイコトパス』のネタばれ注意★★★★★★
そのあとがきの抜粋。
場末のクラブで司会の男が言う。It's all recorded. It is an all illusion.
そしてそのあとで女性歌手が「私は泣いている」を唄う。いや、唄ってはいない。これは実は録音にすぎない。それを見て二人のヒロインは自分が何者であるかに気がついて泣き出してしまう。そのとき私も映画を観ている私自身を泣きたかった。
多分、これが「サイコトパス」のテーマでもあるわけなのでしょう。
ここまで書かれたら、『マルホランド・ドライブ』ファンとしては読みたくなるでしょ。
しかし、あのリンチの幻惑感をこの小説は獲得できていない。はっきり言って凄いレベル差。小説という形態であのイメージを描くことの難しさがひとつ。人の記憶の表現媒体として映画は小説より優れているということだろう。あとひとつは小説としての出来、これも今一歩。登場人物のネーミングとかラストのサイコトパスの概念(SF?)はなかなかいいのだけどなーー。どうとでも書ける幻想ものにしていることで、個々のシークエンスの驚きが減衰。ということでしょうか。
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