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2004.04.10

■ユリイカ「押井守 イノセンスのゆくえ」

Amazon.co.jp: 本: ユリイカ4月号

 少し長文になりますが、上野俊哉との対談で、押井守の発言がなかなか刺激的なので、まずは引用です(抜粋は発言の順を一部入れ替えてます)。

 日本は、第一次大戦で身体欠損者を大量に生み出したヨーロッパとは違うけれども、戦争に参加しなかったことによって、逆に時代の中で身体を失ってきたという気がする。

 自分史を振り返ってみても、いつ頃から身体がなくなってしまったのか記憶にないんだけれど、つくづく身体がないなと思ったんですね。そうすると、何故自分が人形が好きなのか、犬と暮らしたいのか、街について考え続けてきたのかということがわかってきた。戦車とか軍艦にしても全部僕にとっての身体だった。それは僕だけじゃなくて、人間にとってみんなそうだったんじゃないかと思えてきた。

 近代というのは欧米でも基本的に人間が身体の欠損に気が付いていく過程であって、日本はその格好のサンプルになると思う。身体がある時点でなくなったということではなくて、ないことが自分の身体だという本質に気が付く、その裏返しとして外部に自分の身体を求めるということに突き動かされてきたんじゃないかと自分の人生を振り返ってみて思い当たった。別に求めるものは人間の身体じゃなくてもよくって、機械でも犬でもかまわない。
 戦後の日本を支配してきた基本的な情緒もニヒリズムだったんじゃないかと。たとえば、自分の身体に関して、これほどにニヒリステックになった民族が他にあるだろうかと思うのね。茶髪、ピアス、タトゥーと身体はいじり放題だし、携帯とかテクノロジーはなんでも受け入れる。自己放棄とすら言えるくらい。
 もともと理念を持たないことで日本人は日本人たりえてきたとも言えるわけで、ある種の機械主義は日本人に親しいものであったのかもしれないけど、自分の身体に対しても、そういう考えが適用されだした。僕は、サイバーパンクというものは、欧米では決して本流ではなくアブノーマルなものだったと思うのね。だからこそインパクトがあったと思っているんだけど、日本ではあっという間にエンターティンメントになったからね。

 引用の範囲を超えてそうなので、自分のコメントを書かないとまずいのですが、、、、( ^ ^; )。
 まずは後段のサイバーパンク論は、とても秀逸。SFプロパーでこうしたコメントは聞いた覚えがないけれど、、、。僕は日本のサイバーパンクのレベルがアメリカのそれに比べて、どうみても高く感じていたので、押井発言で、なんとなくそういうことか、と納得したりしてしまった。(ちなみにウィリアム・ギブスンより士郎正宗『攻殻機動隊』の方がサイバーパンクとして凄いと思う自分です。押井『攻殻機動隊』は嫌い)

 前段の身体論はこれは難しい。「身体」という言葉を押井守がどう定義して使ってるか、ということが重要でしょう。
 文面からすると、人間の「野生」とかいう意味? 「脳とその幻想の住まう物理的棲家」? 僕は後者ととらえて読んでみましたが、どちらかというとその方がしっくりイメージできましたが、、、。ポストモダン思想家の言説でいう「身体」で、この押井発言に近いイメージのものは誰の概念になるのか、誰か詳しい人、教えてください。(養老孟司の「脳化社会」とかのイメージしか浮かんでません>>自分。)
 この文脈から読んでいくと、日本でヒューマノイドロボットの開発が欧米より進んでいることの推進力が何だったのかということも、イメージしやすいですね。この文脈で二足歩行ロボットの商業展開を考えたら、どんな製品コンセプトになるのかなーー。AIBOは「身体」の希求として売れたのかどうか? 脳がイメージする身体を日本人に与えられるロボットは愛玩とかなごみ系だけではないはずですね。考えてみようっと。
 あと押井は言ってませんが、日本人(特に男性?)にとって「異性」というものもこの「身体」の視点でみてくと面白いのかなーー、とか。

 この対談以外にも、刺激的押井守論が載ってて読みがいがあります、このユリイカ。
 残念ながら映像論・美術論として『イノセンス』を読み解いた文章はほぼなし。凄いとはみんな書いてますが、、、。そこに一番触れているのは上記上野俊哉との対談で、監督自らが語っている内容。チャイニーズゴシックについてとか、3Dに2Dを乗っけていく苦労とか、、、。面白いです。

 BGM 一青窈 「犬」
 (嘘のような偶然ですが、これを書いている時、たまたま聞いてたこの曲、♪変わりたいよう 犬になりたいよう♪と唄っています )

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コメント

 shamonさん、TBありがとうございます。

>>イノセンスつながりってことでここにTB送らせて頂きました。

 アニメーションノート、観てきました。
 『イノセンス』のメイキングは、まだまだメディアに載っているのが少ないので、期待したのですが、ちょっとくい足りない感じでした。あの5倍くらい濃くしてほしかったり、、、(^^;)

 ということで購入は見送りました。
 I.Gの作品もそれほど観てないので、、、。

投稿: BP | 2007.12.23 00:27

連投失礼します。
イノセンスつながりってことでここにTB送らせて頂きました。

このユリイカは私も持っていますが記事を拝見してまた読みたくなりました^^。

投稿: shamon | 2007.12.20 21:08

 ナカモトさん、はじめまして。

 ご紹介のサイト、なかなか充実してますね。楽しく読みました。

 ナカモトーク2004!も拝見しました。アイマックス、僕も行きたい!しかし東海地方からは遠いっす。

 ナカモトーク2004! : blogは風に書いた文字である 同感!! 鴻上尚史の芝居、ぼくもしっかり好きです。風に書いた文字であり、幻の「第三の舞台」のようなblogにお互い出来たら、最高ですね。がんばりましょう。これからもよろしくです。

投稿: BP | 2004.04.16 00:24

イノセンス検索で来ました。

自分もユリイカ買いました。まだ半分も読めていませんけど・・・。
ここもおすすめですよ。
http://media.excite.co.jp/book/news/topics/075/

投稿: ナカモト | 2004.04.15 05:32

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» アニメーションノート No.8 [ひねもすのたりの日々]
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受信: 2007.12.20 21:07

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