« ■走る人間サイズロボット HRP-2LR | トップページ | ■エストニア・アニメーション »

2004.04.17

■意識を持ったロボット

 茂木健一郎『意識とはなにか―「私」を生成する脳』(ちくま新書)
 ユリイカ「押井守 イノセンスのゆくえ」に、「意識の中の時間の「今」は(略)100ミリ秒という(略)凍りついた時間の表象」というこの茂木健一郎氏の面白い記述があったので、手ごろな本から読んでみた。(一応クオリアMLは入っているのだけれど、積読だし。)

 冒頭、「脳を理解するという人類の試みは、実際絶望的といってもよいほどの壁にぶつかっている(略)なぜ、脳の中の神経活動によって、私たちの意識が生み出されているのかが、皆目わからない」と書いてある。それに対してひとつの解明のアプローチが示されるのかと思って、エキサイティング!!と思って読んでいった。しかし残念ながらその取っ掛かりも示されていない(と思う)。やっぱ果てしない道なのだ。あと残念ながら読みたかった「100ミリ秒という凍りついた時間」の話は載ってませんでした。

 で、便利なクオリアの概念から、読みながら自分の脳と意識を参照して、こんなことを考えてみた。(素人なので、なんでも書けるのが強み。与太話(^^;))
 

★まず結論★ 脳内の階層的な情報処理の過程を俯瞰するのが「意識」と呼ばれる脳活動かも。

◆1.脳の中には、いろいろな外界の刺激に反応する特定の部位があるらしい(『脳のなかの幽霊』より(だっけ?))。

◆2.その特定の部位が反応している状態を一次情報と呼ぶ、原始的な脳内情報の発生である。で、これらがニューロンのネットワークで結ばれて(もしくはその一次情報そのものが)クオリア(「赤い」という時の脳内の「赤い」イメージ)を形成する。

◆3.それら一次情報を統合した形で、なんらかの二次処理が行われる脳活動が存在する。これは人間を脳がコントロールするために必要な処理である、膨大な情報に対して一次情報はそのまま扱えないから。
(生命現象の基本にエントロピーの減少のベクトルがあるという気がするけど(生物が生きるということが世界にとっては一つの秩序の生成になっている)、これは生命の基本原理として脳内情報処理にも適用されているような、、、。)

◆4.さらにその二次情報の統合で、情報を整理する上位の脳活動がある。何層かの階層構造が存在するかもしれない。

◆5.「意識」と呼ばれている脳活動(ニューロンの発火?)は、その上位構造が下部の情報(クオリアも含まれる)を「みつめる」時に発生しているのではないか。その脳活動が「意識」。自分の脳内の活動を、統合した形で「上」から眺めるパースペクティブが「意識」なのかもしれない。

◆6.この意識活動の中で「自己」が発生する。たとえば他の動物が自分にぶつかろうと近づいてきた時を考えてみるとイメージしやすい。視覚聴覚等の外界情報で脳内に他者接近の一次情報が発生。それを避けようとするためには、どうしてもコントロールしてその他者から逃げるための対象として「自己」を脳内で想定する必要が生ずる。そのようにして「自己」「意識」が発生。「意識」のひとつの形態(?)が「自己」?

 現在のロボットでも、コンピュータ内で、これに近い情報処理は行われているはず。そこに簡単に意識が発生するとは言えないところが難しい。

 でも、もしロボットのコンピュータ内の活動を階層構造にして、下位情報を統合する上位の情報処理の処理過程を語るようなプログラムを書いたら、ロボットの原初的な意識が、表出できるかもしれない。

 「今、赤い物体が近づいてくるのを認識しました。それに対して自分の体は衝突コース上にあります。衝突は体の破壊の可能性あり、自分の体を回避行動をとります。」と言わせることはASIMOでも可能。
 で、その後にこの情報処理過程を俯瞰して語らせる「物体は「赤く」とても早く迫ってくる。(自分の体が)壊れることは怖い、だから逃げます」、、、これは意識と呼べるかもしれない。(「怖い」というのは予め重み付けをして、ある条件に反応して活動するサブルーチンがプログラミングで与えられているとします。)

◆特許ネタのようなもの(アバウトな表記でごめんなさい)
 「意識を持ったロボット」
1.メインクレーム 階層的な情報処理過程を持ち、それを俯瞰してその概要を外部へ表出する手段を持つことを特徴とするコンピュータ
2.サブクレーム 情報処理過程で、情報に美醜、安全/危険、人の五感に相当する重み付けを行い、それを表出することを特徴とするコンピュータ
3.サブクレーム 上記コンピュータを搭載し、搭載されたボディを「自己」と識別する手段を持ったロボット


 ここまで書いてソニーのインテリジェント・ダイナミクス2004を検索したら、「ロボットは意識を持つか」のセッションで、ソニーのロボット開発のリーダの土井利忠氏発言に

「センサー入力とモーター出力からなる多くの混沌とした情報の中から、自己のモデルを抜き出し、自分と外界とのかかわりを客観的に、統合的に、かつ価値観をともなって把握し、それに基づく行動を計画する心の働き」
と書かれている(PCウォッチ 森山和道の「ヒトと機械の境界面」より)。

 案外早くQRIOは意識を持つかもしれない。

□おまけリンク□
英国の研究者、ロボットに意識を持たせる研究を開始へ (MYCOM PC WEB)

 

|

« ■走る人間サイズロボット HRP-2LR | トップページ | ■エストニア・アニメーション »

コメント

 クオリアネタで、も一個追加。

 「SF Japan Vol.04」(徳間書店)に載った山田正紀の『神狩り2』の掲載分に、クオリアが重要なキーワードとして出てきます。神に対して、クオリアで挑むつもりのようです、山田正紀。うーーん、03年秋の刊行予定はどうなったのだろう。『イノセンス』を書いてる場合ではないのでは??

投稿: BP | 2004.04.21 23:28

 たりぽんさん、トラックバックとコメントをありがとうございます。

 『脳とクオリア』、3年程前に借りた本で読みました。
 、、、、、しっかし内容を覚えていない。また今度読み直してみます。以前読んだ時は、クオリアがとても新鮮な言葉で、刺激的でした。

 クオリアという言葉を知った時、以前から自分の中で言語になる前の感覚というか脳の中のぼんやりふわりとしたイメージに名前が付いてなかったのですが、それに初めて名前を付けられたような気がしました。で、言語よりそういう感覚の方が自分の中では重要かなと思っていたので、『脳とクオリア』、共感して読みました(ちょっと違うかな??)。

投稿: BP | 2004.04.21 23:19

2つもトラックバックしちゃいました。ご存じだとは思うんですが「脳とクオリア」って本には結構「凍りつく時間」のヒントのようなことが書かれていました。物に触れた瞬間と脳が反応するませの時間差は物理的には存在するが意識の中では「同時」である、というような説明でした。

投稿: たりぽん | 2004.04.21 21:17

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■意識を持ったロボット:

» ネットとクオリア [たりーず・ふぁいる]
なんだか、わからんようなタイトルですな。 最近ずっと読み続けている「脳とクオリア」って本があります。ずっと読み続けているというのは何回も読んでいるのではなくて... [続きを読む]

受信: 2004.04.21 21:13

» プロジェクト2501 [たりーず・ふぁいる]
「イノセンス」見てきました〜。  印象としては「やっぱりビューティフルドリーマーやね〜」って感じです。押井節炸裂なせりふ回しなどは期待を裏切らないですね。映像... [続きを読む]

受信: 2004.04.21 21:15

« ■走る人間サイズロボット HRP-2LR | トップページ | ■エストニア・アニメーション »