■テリー・ビッスン『ふたりジャネット』
The Two Janets 中村融編訳 (河出書房新社)
日本オリジナルで編まれたテリー・ビッスンのベスト短編集のレビュウ。最近、注目の海外短編小説を出している河出書房新社の奇想コレクションの一冊。
僕の気に入った順は、「穴の中の穴」「時間どおりに教会へ」「宇宙のはずれ」「未来からきたふたり組」「ふたりジャネット」「熊が火を発見する」「冥界飛行士」「アンを押してください」「英国航行中」。
つまり、はじめに挙げた3作の《万能中国人ウィルスン・ウー》シリーズがバカSFで語り口が特にユーモラスで気に入ったというわけ。
このシリーズ、ルディ・ラッカーのハリイ・ガーバー&ジョー・フレッチャーコンビの活躍するシリーズを髣髴とさせる(『時空の支配者』、「遠い目」、「自分を食べた男」、「慣性」)。科学的にはラッカーの方がひねりがあって傑作だと思うけれど、こちらは3本が語り手アーヴィンのひとつながりの物語になっていて、そこも楽しめる。
「奇想」という点では、いずれも期待したのよりは奇抜なイメージを描き出しているわけでないのが少し残念だったけれど、それよりもユーモラスな語り口で楽しむ小説だと思った。下記リンクにあるテリー・ビッスン本人のページを見ると、《万能中国人ウィルスン・ウー》シリーズは今のところ、この三本だけのようであるが、是非、長編でも活躍させてほしいものである。
最後に本の作りについて、、、、電車で本を読む中年サラリーマンには、この表紙は辛かった(うちの娘二人から「お父さん、女の子みたいな本読んでるね」って、この表紙で冷やかされるし、、、。なんとかして)。 同叢書の『フェッセンデンの宇宙』もこの路線。なかなか数が出ない海外SF短編集をなんとか売ろうとしているのはわかるけれど、もう少しなんとかならないものか。「奇想」を売るなら、この表紙で買わない海外小説ファンもいるはずなので、「奇想」な表紙を望みたい。
◆関連リンク
・Terry Bisson 本人のHP
・本国の短編集 Bears Discover Fire and Other Stories(Amazon)の表紙絵
・奇想コレクション 『ふたりジャネット』(Amazon)
・その他 テリー・ビッスン作品、Terry Bisson洋書(Amazon)
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