■京極夏彦『百器徒然袋 風』(講談社ノベルス)
講談社 公式ページ
しがない電気工事の図面引き 本島を語り手にした薔薇十字探偵シリーズ(?)3本を収めた中編集。
「五徳猫 薔薇十字探偵の慨然」
「雲外鏡 薔薇十字探偵の然疑」
「面霊気 薔薇十字探偵の疑惑」
と並んだ三作が前作の薔薇十字探偵の”憂鬱””鬱憤””憤慨”に続き漢字しりとりになっている、と京極夏彦ネットコミュニティ 掲示板 京極情報交換にあった。あ、本当だ。気付かない私は本島クン並に鈍いのか、、、。どーでもいいけれど、会社休んでばっかの本島の首が心配なシリーズでもあります。&関口といつ邂逅するのか?しないのか?
今回もこのシリーズはユーモラスな作風。語り手が関口ではなく、この本島であるところが、作風を決定している。同じ京極堂を描いていても、本島を通して語られる京極堂は、どこかユーモアが漂っている。人はその関係性で表情を変える部分があるけれど、それを切り口の違う連作それぞれで小説化しているというのも、文化人類学的/民俗学的作家(?)京極夏彦ならではかもしれない。こんなんして、主人公達の見え方を変えている小説って他にもあったと思うけど、なんだっけ?誰か知ってたら、ご教示を。
今週は仕事がべらぼうに忙しくて疲れきっていたけれど、この連作を電車の中で読むのでほっと一息付けてました。いや、京極でここまで肩の力を抜いて楽しめる本作は貴重です。しかし、榎木津礼二郎がでるたびに阿部寛の顔を思い浮かべてしまったのだけれど、かなりイメージ違いますね。もっとエキセントリックな役者はいないのかぁぁーー!にゃんこ。
◆関連リンク(以前、読んだネタ。榎木津の本物は、小説よりすごいらしい! 会ってみたいと思いませんか?)
・これらシリーズのモデルとなった京極夏彦の友人達の写真はこちら。
「ちなみに京極堂を抱きしめてるのが益田くん(仮名)で、そのとなりが関口巽(仮名)さんです。」大森望氏の狂乱西葛西日記より。
・「驚いたのは、なんと榎木津のモデルになった人は、某大手有名企業のサラリーマンなんだって。あんな人が普通のサラリーマンをやっているとは、夢にも思わなかった(笑)。益田のモデルになっている人も、作中と同じく榎**さんの部下なんだって。しかも、実物どおりに書くとリアリティーがなくなるから、ずいぶん控え目な描写になっているそうな。どういう人なんだろう(笑)。」 「2000年2月のミステリー三昧、必殺三昧」 貫井徳郎氏HPより。
・故辰巳四郎に変わり、今回から装丁を担当した坂野公一氏(welle design)のコメント。
これまで故辰巳四郎さんが手掛けられていましたが、豆腐小僧の装幀が縁となり、坂野公一と石黒亜矢子コンビでその役を引き継がせていただくことになりました。(辰巳さんは装画、デザイン、撮影のすべてをこなしていたと聞いて驚きつつ)
・装画の石黒亜矢子氏のウェブのギャラリー。現代的でカラフルな妖怪画!!平成の鳥山石燕??
・石黒亜矢子氏の妖怪画集『平成版物の怪図録』(Amazon)
・当BLOG内関連記事 ■京極夏彦『姑獲鳥の夏』 実相寺昭雄監督で05年夏映画化
・『百器徒然袋 風』講談社ノベルス(Amazon)
・ウォーカープラス 東京 本『京極夏彦』インタビュー
「最初から『雨・風』の2作で完結という構想で書き進めていたものですから、百器徒然袋はこの『風』でおしまい。しかしまわりの要請があって、自分も納得できる形で作品を作れる実力があれば、再開することもありえます。でもその場合は、また新しい作品、違うやり方を考えないといけないので、語り手としての本島はお役御免。ほかの形、役割を与えて使うしかないですね。今までイスとして使っていたものを、壊してたきぎにするとか、そういう風に(笑)」
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