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2004.09.07

■村上春樹著 『辺境・近境』 新潮文庫刊

 村上春樹の97年刊行のエッセイ集。
 ニューヨーク近郊の作家の町イースト・ハンプシャー、ノモンハン、メキシコから、うどんの讃岐まで、旅する作家の紀行集。
 この作家のエッセイは今まであまり読んだことがなかったので、小説からイメージしていたのと比較して、ああこういう人なのか、という新鮮な感じ。でも実は小説からイメージしていたのとあまり変わらなかったのだけれど(^^;)、メキシコの下りでの放浪癖の話とか、面白かった。
 P49に人が旅をする根源的な理由について、ポール・セローの小説でのある女の子の言葉を引いて、こんな風に書いている。

 「本で何かを読む、写真で何かを見る、何かの話を聞く。でも私は自分で実際にそこに行ってみないと納得できないし、落ち着かないのよ。たとえば自分の手でギリシャのアクロポリスの柱を触ってみないわけにはいかないし、自分の足を死海の水につけてみないわけにはいかないの」(略)理由のつけられない好奇心、現実的感触への欲求。

 旅先でいろんなものをつい触ってしまう私は、この意見に同意。この紀行全体にそこはかとなく、この現実的感触が描かれていて、擬似旅行できる。とーとつだけど、ヴァーチャルリアリティに大切なのは、触覚なのかも、と思うのである。
 あとノモンハンの下りで、中国に自動車各社が虎視眈々と車を売ることを考えているけれど、自動車事故でそこに現出するのは「おそらく桁違いの悪夢(中国に関するものはだいたいみんな桁違いになる傾向がある)」、、というところも興味深い。大陸で作家は幻視したのでしょう。「桁違い」という表現が身に迫ります。10年後の中国も是非レポートしてほしいものです。
 あ、讃岐でうどんを喰い続ける話も好きです。行ってみたい!超ディープな「中村うどん」へ。(ここの紹介も良い味出てます)
◆関連リンク
『辺境・近境』新潮文庫(Amazon)
『辺境・近境 写真篇』 松村 映三著, 村上 春樹著 新潮文庫 (Amazon)

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