■フランツ・カフカ 「変身」 山下肇訳
カフカはプラハで生まれ暮らした作家である。プラハへ行った自分の記憶が新しいうちに、一度読んでみようと思い、手ごろ(文庫で80頁弱)な「変身」から手を出した。(ちなみに今年2004年はカフカ没後80周年らしい)
1915年に発表された本作は、文学作品の中でもその冒頭の一文の知名度が一番の作品かもしれない。
物語はその冒頭の一文のインパクトが拡大されることもなく、家族の物語として最後までモノトーンで描かれている。「毒虫」になった主人公グレゴール・ザムザは、それにより近代の人間の価値となった「職」と、家族の中での自分の関係を喪失する。
ただそれだけの話、という感想が率直なところ。話の広がりも展開もほとんどなく実は結構退屈。岩波文庫の表紙には「自己疎外に苦しむ現代の人間の孤独な姿を形象化した」とあるが、現代の「疎外」は、すでにこの「変身」で衝撃を受けるには重過ぎるところまで進んでしまっているということなのかもしれない。なんて。
奇想小説としてみた場合、河出書房新社の<奇想コレクション>のハミルトン、ベスター、スタージョンが1930年代~の短編となっている。それよりも「変身」は20年昔。同じくチェコのカレル・チャペックの『R.U.R』が1921年。『R.U.R』が有機型のロボットを描いている先進性からすると、この「変身」の奇想度は低いと言わざるを得ない。
小説の舞台は作中でプラハに限定された記述はない。しかしプラハの石畳に沈む寒い冬を想うと、どこかに「毒虫」に変身したザムザがいても不思議はない気がする。プラハとのつながりで言うとそんな感じだった。
・ワレーリイ・フォーキン監督の映画『変身』公式サイト
日本公開は渋谷ユーロスペースで11月にはじまり既に終了。順次大阪名古屋でも2005年1-2月に公開予定。名古屋では名古屋シネマテーク で1/29-。
・『変身』 (岩波文庫) (Amazon)
・"Die Verwandlung"で検索すると、このような表紙イラストがあります。
いろんなイメージがあるものですね。僕はてっきりでかい芋虫と想っていた。
それにしても一番右のは酷過ぎます!
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コメント
となえさん、おはようございます。
となえさんとは付き合いも長いですが、カフカファンとは知りませんでした。全集、僕も先日書店で見かけてほしくなったりしてますが、書棚のキャパを考えると文庫でそろえようかな、と。
またGHOST-GUNでカフカの感想も読ませてください。ではではよいお年を。
投稿: BP | 2004.12.31 08:17
こんにちは。
カフカ全集、結構以前に購入しましたが半分も読んでない内に
度重なる引っ越し移動で散逸…多分何処かにしまってあるとは
思いますが(泣)。
因果律の法則に支配されていたそれ迄の小説と異なって、不条理
な理解し難い出来事(災難)が起こっていくというまあさきがけ
という位置づけで。
「変身」はザムザ役をポランスキーが演じる舞台があったのです
が…結局日本公演は叶わなかったようで。
それではまた来年、よいお年を…。
投稿: となえ | 2004.12.30 14:22