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2005年1月

2005.01.30

■ヴェルナー・ヘルツォーク監督
  『白いダイヤモンド ~南米ガイアナ・ジャングル飛行船の旅~』

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 Cinema.nl: Herzog in de ban van de jungle [recensie] The White Diamond van Werner Herzog(ドイツのサイト)
 05.1/24 NHK BShi ハイビジョン特集・国際共同制作 ヴェルナー・ヘルツォーク監督『白いダイヤモンド ~南米ガイアナ・ジャングル飛行船の旅~』(5・1サラウンド放送)

 RecPOT M(HVR-HD250M)のおかげでハイビジョンをちゃんと録画できる環境になった。んで、月曜日のゴールデンタイムのこんな番組もちゃんと観える様になったのはいいが、有限なハードディスクの容量から土日に消化する宿題を背負ってしまった。DVDですら観る時間なかったのに(^^;)。(仕事さえなきゃ、20:00-からの番組くらい本来は生で観えるはずなのにネ、、、)
 ま、愚痴は置いといて、これからちょくちょく週末はハイビジョンによるBP世界紀行の旅を紹介するので、お付き合い(斜め読み)ください。世界紀行と名づけるのは、ハイビジョン+DLPプロジェクタ120inchでの臨場感は相当のものでミニミニではありますが、旅行体験に近いものがあるため。(余談ですが、東大舘暲教授のアール・キューブ構想のためのツールは日々進化して家庭へ潜入しているわけです(ひとつ前の記事を参照)。

 (前置きが長くなったが)ヘルツォーク監督の『白いダイヤモンド』は、飛行船で空から南米を研究しようという研究者Graham Dorrington氏の活動のドキュメンタリーである。
 内容はヘルツォーク自身のナレーションで進められ、ガイアナでの新しい飛行船の初飛行をとらえたもの。圧倒的な迫力の滝(というか瀑布)のシーンと緑の深いジャングルに浮かぶ白い飛行船のショットがとにかく美しい。しかしヘルツォークの関心はそれら風景よりも人間にあったようで、Dorringtonの過去の痛ましい体験のインタビューが中心になっている。以前の同じ飛行船での探索で同僚が目の前で落下して亡くなった体験が生々しく語られている。
 映像的には前述の飛行船と滝に尽きる。もっといっぱいそれらの映像を見ていたい、という感じ。なかでも印象的だったのは現地の人の言葉。滝の裏側は誰も覗いて見たことがない。村では巨大な蛇が住んでいるとも伝えられている。それをカメラの映像がとらえたとしても、他の人に見せないでほしい。それが村の文化の中心を破壊することになるからと語る。
 そしてヘルツォークは、滝の裏をとらえた映像があるはずなのに一切使用していない。これは映像とその認識によって世界が変容していくことへの配慮と、もうひとつは文化・民族的な背景から人に見える本当の滝の裏側の究極映像を、ヘルツォークとハイビジョンでもとらえられない、ということの敗北宣言なのかもしれない。

◆関連リンク
 このドキュメンタリー、日本のサイトではほとんど情報が見当たりません。NHKの扱いも全然ヘルツォーク作品としてアピールしてるように見えません。で、情報はドイツのサイトがメインです。(いいのかNHK!!)
The White Diamond | Filmstarts.de
ヘルツォーク.com(ここは英語)

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■東大舘暲研究室
  相互テレイグジスタンスの第二世代
  テレサ2とツイスター4に関する報告

TWISTER
 少し古い話題だけど、04年12/9,10テレコミュニケーション,テレイマージョン,テレイグジスタンスに関する国際シンポジウムというのが開催され、タイトルのような最新の研究成果が報告されている。(PC Watch 森山和道氏の<ヒトと機械の境界面>「箱から出るコンピュータ、実空間と融合するVR空間~テレコミュニケーション、テレイグジスタンスの未来」に詳細。)
 ヴァーチャルリアリティとテレイグジスタンス、アールキューブというコンセプトで有名な東大舘暲教授の講演内容は下記の通り。

1980年の昔に提案した通常のテレイグジスタンスシステムでは、操縦者には遠隔環境にいるような実時間の臨場感を提供するものの、遠隔環境にいる人にとっては、そこに代理ロボットが臨場しているに過ぎず、操縦者が臨席している感覚は生じなかった。相互テレイグジスタンスは、まさにこの問題を解決することを目指しており、相互に臨場感を与えることによりロボットの働く遠隔にいる人にもロボットではなく操縦者がいるという明らかな操縦者の存在感が得られるようにしようとしている。このことが実現すれば、人間はバーチャル(等価的)に、ユビキタスになれる。すなわち、同時にどこにでも存在できるようになるのである。
 通産省が舘教授と進めていたアールキューブは知らない間にHRPというなんだか現実的な作業ロボットのプロジェクトに移行してしまって、(出渕メカデザインより)本来SF的研究としてセンス・オブ・ワンダーに満ちた上記のマッドな構想が後退してしまったのがとても残念だった。だけれど、東大舘研ではまだしっかりワンダーでマッドな研究が続けられているということで、SFファンとしてはワクワクしてしまう。

 没入型フルカラー動画裸眼立体ディスプレイ「ツイスター」、マスタースレイブ型のロボット「テレサ2(TELESAR 2, TELE-existence Surrogate Anthropomorphic Robot)」、「RPT(再帰性投影技術)」というのがその中核技術。特に「ツイスター」というのは現物を観ないと本当の感触はわからないのでないか。上記PC Watchの記事に動画があるが、これは3D CGの素材でデモをしているようだ。本来なら臨場感を示すのであれば、ハイビジョンもしくはその先にウルトラハイビジョン(だっけ)でデモするべきではないのかなーー。同記事では「愛・地球博期間中の2005年6月9日(木)から19日(日)まで開催される「プロトタイプロボット展」にて、光学迷彩の技術と合わせた形で、ロボットの内部に操作者の3次元映像を投影するというデモを行なう」とのことなので体感に行ってこようかと思う。

 本来、アールキューブ構想HRPで本気で取り組まれていたら、万博ではもっとこうしたロボットとバーチャルリアリティを融合した日本の取り組みをアピールする展示がSF的未来として提示されていたはずで、なんか残念でならない。本当は押井の『めざめの方舟』より、そういう本来万博が持たなきゃいけないテクノロジーによる未来開拓のコンセプトがみたいのだけどなーーー。
TELESAR たとえば、パビリオンの中に100台のマスター(ロボットの操縦側であり人が遠隔環境の臨場感を得るコックピット)が並び、世界各地(もしかして宇宙,月にも)100台のスレーブ側のロボットが派遣されている。観客は一人づつ、マスターに座り、エベレストの登山と月の1/6重力を体感する。情報/映像技術とロボット技術の融合の未来産業像はきっと新しい世紀を予感させたと思うのだけどなーー。(左の写真の動画はここで観られます)
 某自動車メーカの愛知万博の目玉であるロボットの振り付けとオーケストラでは残念ながら未来は体感できません。だって30年前の大阪で既に僕らはフジパンロボットでそんなコンセプトは体験済なのだから、、、。

 最近、車のディーラーは、大画面テレビが車の購入の際の最大ライバルと言っているらしいが、ハイビジョンの臨場感が移動手段と競合するというのもアール・キューブ的現象と思えてしまうのだけど、この先に元々のプロジェクトが持っていた21世紀産業の誕生は期待できないのだろうか、、、、。

◆関連リンク
・舘暲教授が語るアール・キューブ構想
・コンセプトがまとまった書籍 『アールキューブ―立花隆VS吉川弘之 ロボティクスの未来を語る』通産省アールキューブ研究会編(Amazon)
東大舘研究室 光学迷彩も有名だけど、SFとしてはやはりこのロボットとテレイグジスタンスの研究が目玉でしょ。最新は相互テレイグジスタンスの第二世代:テレサ2とツイスター4に関する報告
TELESARとTele-Existence Master-Slave System マスターとスレーブが同期して動くシーンはなかなか感動。←にある動画へのリンクはうまくつながってないですが、別のところムービーで観られます。
TWISTER
舘暲(たち すすむ) 研究文献、報告書等
 S. Tachi: Tele-Existence  , Journal of Robotics and Mechatronics, Vol. 4, No. 1, pp. 465-471 (1992)とか。
愛・地球博「ロボットプロジェクト~We live in the Robot Age/僕らロボット世代~」について 「プロトタイプロボット展」の詳細(pdf)

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2005.01.28

■ウィンザー・マッケイ『リトル・ニモ』
    Winsor Mccay ''Little Nemo"

little_nimo
 ununさんの~~ゆらゆら大陸~~より。

95年前のアニメーション。『たけくまメモ』にてW・マッケイの『リトル・ニモ』の動画が公開されています。
 たけくまメモ: W・マッケイ(2)これが95年前のアニメだ!
 ↑竹熊健太郎氏のBlogで、ウィンザー・マッケイの最初のアニメ『リトル・ニモ』がQuicktimeとMedia Player版でアップロードされています。「アメリカの著作権法の「フェア・ユース(公正利用)」の概念」に基づき、公開はOKと判断されたようです。

 どこかでスチルを観たことのある幻の作品にこんなに手軽にアクセスできて良いのか、というくらいあっけなく貴重な作品が観れて、感謝感激です。
 この記事に書かれていますが、1ヶ月で4000枚の絵を一人で描き、フィルムに直接着色してカラー化したものだそうです。動きはすこしもたついていますが、絵のタッチがなんとも良い味わいです。必見!!

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2005.01.26

■ティム・バートン『屍の花嫁』
  Tim Burton's Corpse Bride

 Tim Burton's Corpse Bride 予告編
 ティム・バートンの監督orプロデュース(??不明)で、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』に似たアニメーションが05年秋に公開されるようです。予告編のタッチは『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』に近く、ファンにはたまらない映像です。
 ただ予告を観る限りでは、ストップ・モーションというより、CGアニメっぽく観えます。果たして、どちらなのでしょう。
 どちらにしてもあのタッチには変わりないわけで、秋が楽しみです。

◆関連リンク
公式ページには上記予告編へのリンクがあるだけ。
・ティム・バートン『チョコレート工場の秘密』 CHARLIE AND THE CHOCOLATE FACTORY
 予告編もありますが、「ポップでキュート!!」って感じ。2005年7月公開。

corpse_bride_trailer

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2005.01.25

■映画「ローレライ」メイキング番組

 スカパーCh.181 フジテレビ721,739
 1/10から順次、こういう番組が放映されているようです。うちのCATVは、残念ながらこのチャンネルは視聴登録していないので、観えません。映画のCM番組なので、このときだけ無料放送にしてほしいものです。
 庵野秀明もコンテで協力しているのですね。番組を観た方、是非この記事にコメントを !

【Part1】 『樋口真嗣×庵野秀明 対談 「ローレライ」のここを見ろ!』
実生活でも親交があり親友でもある二人。樋口真嗣の監督デビューにあたり、「エヴァンゲリオン」で新時代を築いた監督でもある庵野氏自ら、劇中のCGコンテ制作をかってでた。映像クリエイトの分野において、今やカリスマ的存在となった二人が、この「ローレライ」で挑戦する新たなものは何か、そして、「ローレライ」の見所をこの二人の大ファンでもあるフジテレビ笠井アナウンサーの司会のもと、二人に語っていただく。

【Part2】 『樋口真嗣×福井晴敏 対談 「ローレライ」はこうして誕生した』
二人が出会ったのは4年前。ハリウッドに負けないエンターテイメント映画を作りたいと夢を語り合いながら、小説にする前から映画化を念頭に入れて執筆されたこの小説。執筆の過程でも樋口監督のアイデアが盛り込まれたという。まだ30歳半ばの映像のカリスマと冒険小説の若き旗手が、何を企んだのか?これまた、笠井アナを司会に、この作品に秘められた思いなどを語っていただく。

 ローレライ関連で、こんなものもありました。
 講談社 IN-POCKET 『終戦のローレライ』文庫化記念 福井晴敏インタビュー「魔女と暮らした日々」
 映画の試写の感想も語られています。なかなか熱くいい映画になっている感じ。
 いわゆるハリウッドのオープンエンターティンメントの『アルマゲドン』であるとか、そういうメジャー作品を始めて日本で翻案して、日本ならではの味付けでやりきれたという部分と、あと、今までのハリウッド対策に徹底的に欠落していた人間に対する視線など、二、三日は後味が残るような濃いドラマ、この両方をねじ込むことができたのではないかと。
 『アルマゲドン』を出すと客が減るような気がしますが、まあ、それは置いといて、樋口監督の特撮と人間ドラマにまずは期待しましょう。
 同誌に試写会の応募方法が載っています。2/27-日本5都市で10000人招待ということです。ネットでもここに情報があります。

◆関連リンク
・放送作家出身の戦略的メディアプロデューサー・豊田俊一氏のblogにこのメイキング番組の情報がありました。この番組のナレーションを書いた方のようです。試写での様子や庵野絵コンテについても語られています。
 映画「ローレライ」メイキングSPのナレーションに入魂!
 「ローレライ」続報宣言!注目点と。。。
 映画「ローレライ」メイキングSP第二弾進行中!
 映画「ローレライ」の投げかけるもの
・コメントいただいたre-editor@animatechtonicaさんの<記録。 「ローレライ」2題 「ローレライ」直前予行演習>。「ローレライ」メイキングの番組内容のレポートです。
同re-editor@animatechtonicaさんの<書籍。 「ローレライ、浮上」 「ローレライ」直前予行演習> メイキング本の丁寧なレビュウです。
・re-editor@animatechtonicaさん経由で知った福井晴敏情報局 『ローレライ』他、ホットな情報満載。
福井晴敏情報局さん経由で知った海洋堂の「世界の艦船」スペシャル 「ローレライ」編「伊507(ローレライ)」「N式潜航艇(ナーバル)」 の精密フィギュア(原型制作/谷明)。「マイクロ水中モーターを取り付けることにより、全ての艦船の水上走行が可能になります」って、かっこいい!ナーバルってこんな形だったんだ。僕は勝手に『原潜シービュー号』のフライング・サブをイメージしてたので、ちょっと意外。

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2005.01.24

■ゴシックとシュールリアリズム
  ヤン・シュヴァンクマイエル『オトラントの城』

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 少し前の記事■酒井健 『ゴシックとは何か―大聖堂の精神史』で気になっていたゴシック小説の元祖ホレス・ウォポールの『オトラントの城』(別名『オトラント城奇譚』)をベースにしたシュヴァンクマイエルの短編『オトラントの城』(’73-79/18mins.)を観直してみた。残念ながらホレス・ウォポールの本は現在絶版(国書刊行会、牧神社、講談社文庫刊)で古本を探さないと入手できない。(ストーリーはレビュアーの風野春樹氏がここで紹介されています)
 

ホレス・ウォポールのイギリス幻想小説『オトラント城奇譚』の舞台が、実は東ボヘミアに実在する城だという仮説を、現地で学者が解説するというテレビ番組という趣向。もっともらしく出てくる証拠などが逆に、歴史を捏造するいかがわしさを現す。古文書の挿絵が切り絵として動き、学者の解説と皮肉な対照をなす。(ラストの検閲でカットされたカットも収録)( タッチ&イマジネーション-触覚と想像力-」の解説より)

 シュヴァンクマイエルが72年の『レオナルドの日記』で当局の不興を買い、準備中だった本作を7年間完成させることができなかったといういわく付きの作品。この作品の後、シュヴァンクマイエルは、ポーの『アーシャー家の崩壊』というやはりゴシック小説をベースにした作品を撮っている。
 あらすじを読むかぎり(イギリスのゴシック建築オタク)ウォポールの書いた『オトラント城奇譚』にダイジェストながらシュヴァンクマイエル版は忠実なように観える。ただしこの物語と並行して、歴史学者とテレビレポータの城の研究についてのインタビューが差し挟まれる。ここの部分のひねり方が面白いのだけれど、あまりゴシックのイメージとあう話ではない。
 シュヴァンクマイエルの世界』赤塚若樹編訳に収録されたピーター・ヘイムズのインタビューによると、シュヴァンクマイエルは、ゴシックの作家達との関係を下記のように語っている。
 私が作り出すのは客観的で崇めるような脚色ではなく、オリジナルの作者が、個人的爆発の起爆装置のような役目をはたす主観的な証言なのです。それにもかかわらず、私の考えでは、ポーやキャロルの主観的解釈は、その内的な感覚を持って同じ地下水脈を流れていきます。(P80)
 僕はシュヴァンクマイエルの自宅であるガンブラギャラリーから僅か500m程東にあるプラハ城のゴシック建築ヴィート大聖堂の影響をこの短編の中にみつけようと思ったのだけれど、映画に映る城は、ちっぽけな普通の西洋の城でゴシック的大伽藍にはどう観ても関係ない。うーん、残念。(上の写真のイラスト+切り絵がゴシックの雰囲気を出してはいるが、、、。)
 ゴシックとの関係よりも、むしろ弾圧されていた政府への想いがあるのかもしれない。映画の中で城を壊すシーンがある。当時はプラハ城は圧政の象徴的建物であったはずだ(ソーダバーグ監督の『KAFKA 迷宮の悪夢』もそんな描写だった)。物語の城の破壊でチェコの人々のいろんな想いを象徴化したのかもしれないなー、とぼんやり考えた。
 もともとシュヴァンクマイエルとゴシックはあまりイメージが合わないのだけれど、彼の描くカテドラルとかも一度観てみたいものである。
◆関連リンク
・ホーレス・ウォルポール『オトラント城奇譚』の冒頭
zerostepというサイト『オトラント城奇譚』レビュウ
風野春樹氏あらすじと書評
 とはいえ、結末のイメージはなかなかすごい。物語のそこここに出没していた巨像のパーツがひとつになり、城を突き破ってそびえたつ巨人と化し、雷鳴の響き渡る中を天へと昇っていくのである。このイメージのすさまじさには度肝を抜かれました。この、人知を超えた何物かに触れる瞬間というのが、ゴシック小説のキーワードである〈崇高〉(サブライム)であり、のちにSFでセンス・オブ・ワンダーと呼ばれる感覚なのですね

映画ファンのサイト faceチェコ・アニメ特集 CESKA ANIMACEヤン・シュヴァンクマイエルの項より
 (略)1973年、準備段階にあった「オトラントの城」は、前年公開の「レオナルドの日記」が当局側の不興を買い、製作中止命令。当時の共産党政権下で、ブラックリストにのり、以後、7年間、映画製作が認められませんでした。1979年、ようやく映画製作が許可されると、中断していた「オトラントの城」を完成。

・当Blog記事 ■チェコプラハ① ヤン・シュヴァンクマイエル他監督『Kouzelny Cirkus (Wonderful Circus)』atラテルナマギカ
・同 ■チェコプラハ② チェコの壮大な究極映像 プラハ城 聖ヴィート大聖堂
・DVD 『ヤン・シュヴァンクマイエル/「ジャバウォッキー」その他の短編』(「オトラントの城」収録)(Amazon)(05.2/23に廉価版が再発売の予定ですので今購入するのは待った方が良いです)
夜想2マイナス 特集シュヴァンクマイエル「快楽 ! 触覚のアニメーション」に、高山宏氏が「シュヴァンクマイエルとゴシック小説」という一文を書かれています。
「混沌を方法的に生むさめた技術者の所業、その点でゴシック小説とシュヴァンクマイエル・アニメは何のちがいもない。結びつくのが当然の運命であろう」(P80)

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2005.01.23

■ハイビジョン対応HDDレコーダー
   RecPOT M HVR-HD250Mレポート

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 以前紹介した I-O DATAのHVR-HD250「RecーPOT M」、待望のハイビジョン録画機を先日購入。
 RecPOT MというA4サイズより小さいけれど250GB、ハイビジョンを20時間以上録画できる可愛い奴です。これで観たいハイビジョン番組に合わせて家にいなくてはいけないというビデオを持つ前の頃のような原始的生活(おおげさ)からやっと解放されます。
 使い勝手は、なかなかシンプルで良いです。うちの場合は、DISITAL CATVセットトップボックス(BSチューナーみたいなものです)TZ-DCH500にi-LinkでRecPOT Mを接続。セットトップボックスで番組表から選択して予約録画を設定しておくだけで、勝手に連動して録画してくれます。平日は触ってる暇がないので、土日に一週間分、録画設定をして放っておくつもりです。(もっと使い勝手をちゃんと知りたい方は、◆関連リンクにある専門家のレポートをご覧下さい)
 再生は、上記写真のリモコンで実施。当然ですが、放送時と全く変わらない劣化ゼロのハイビジョン映像が再生されます。コマ送りやスローモーション等がないのはちょっと残念。
 あと驚いたのは録画データの消去という機能がないこと。保存用のロック設定をしないものを古いのから勝手に消去していくだけ。シンプルにザクッと割り切っています。
 データを残すのは、このハードディスク内にとっておくか、DVHSまたはブルーレイディスクへ移動(move)して保存するしかありません。両メディアを持っていない僕としては取りあえずどんどん観て消すしかないと思ってますが、貧乏性なので一度撮ったものが消せるか、不安。D・リンチ作品やチェコ関係、その他消せないような好物が放映されないことを祈るのみ、、、って何のために買ったんだか、、、、??
 あともしかして自分のPCとi-link接続して、PC用ハードディスクへデータのムーブができないかと思ったのだけれど、やっぱコピーワンスのためそのような芸当はできませんでした。どうせムーブだけなんだから、対応できても良いと思うのだけれど。要はコピーして配布するのでなく、安いPC用ハードディスクに保存しておきたいだけなのだから、ユーザの使い勝手から言ったら、絶対できてほしいのだけれど、、、。PCからはちゃんとi-link機器として認識されるだけになんか割り切れません。

 というわけで最後に恥ずかしながら、うちの「究極映像研究機器(?)」を公開。Betaの上に最新のハイビジョンレコーダーという取り合わせが自分では気に入ってます。んが、実はBeteは故障して再生できず、今や只の台座です。20年前の最先端機器F11は思い入れがあってなかなか捨てられません(^^;)。レーザーディスクも年に一度観るか観ないかだし、、、。一番上のが、うちの中では最新兵器のLVP-D2010です。で、あとは右の下がCATVセットトップボックスTZ-DCH500とVHS。左上から使っていないPS2とBSチューナ。DVD再生はさらにこの下のPC、音はヤマハのサラウンドアンプという布陣です。やはり古いものを捨てらんない、新兵器と最古の兵器が混在しているどっか小国の弱体軍みたい。
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◆関連リンク
ジョーシン 試用レポート アイオーデータ ハイビジョン対応HDDレコーダー RecPOT
AV Watch レポート
RecーPOT(Amazon) 
Rec-POT 160G(Amazon) ※まだ250G品はamazonで発売してないみたい。
・楽天ショッピング→

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2005.01.22

■『ムーンパレス』
    ポール・オースター著/柴田 元幸訳

moon_palace_fan_site BOOK OFFの100円本でたまたま手にとってポール・オースターの『ムーンパレス』を遅まきながら初めて読んだ。「それは人類がはじめて月を歩いた夏だった」という冒頭の一文に魅かれたというだけなのですが、、、。
 オースター脚本/ウェイン・ワン監督の映画『スモーク』は観てなかなか好きだったのだけれど、本は初めて。んで、これが物凄く面白い。100円本で買ったのが申し訳ないくらいの貴重な読書体験をさせてもらいました。

 前半1/3、主人公の大学生フォッグの孤独と諦念が漂うのだけれど、どこか透明感のある一人称の生活描写がグッと読者をひきつける。このまま彼の大学生活に付き合う一冊なのかな、と思っていると、そこからの展開の飛躍がここち良い。
 ところどころ奇想なエピソードが挟み込まれて、連れて行かれる先はニコラス・テスラの世界無線装置ウォーデンクリフ・タワーの建つロングアイランド、西部ユタ州の岩山の洞穴、1939年のニューヨーク万博の会場であったりする。フォッグの一人称小説のだけれど、フォッグ自身はほとんど最後までニューヨークを出ることはない。であるが、20世紀のアメリカの断片を小説はある仕掛けによって拾い上げていく。この仕掛けで描かれエピソードの羅列と思われていた中盤からラストへ、ダイナミックなひとつの物語が姿をあらわすところが、読書の喜び以外の何物でもない。本当にお薦めです。
 特に前半1/3は村上春樹の本にとても近いものを感じる。ポール・オースターは1982年から本を出版しているので、ほぼ同時並行的に日米でこうした傾向のものが書かれていたのだろうけれど、、、。
moon_palace

◆関連リンク
山形浩生氏によるPaul Auster インタビュー(『GQ Japan』1996 年春)

 かれの多くの作品で、読者はけっして人々や事件と直接対面させてもらえない。いつもそれは、手記や談話として第三者に語り聞かされる。具体的でありながら具体的でない、見えるようで見えない、真綿のはさまったような感触が。ポール・オースターのすべての作品を特徴づけている。(山形浩生)
松岡正剛の千夜千冊『ムーン・パレス
ムーン・パレス』のレビュウ
ポール・オースターファンサイト The Unofficial Paul Auster Web Site
・ドイツのPaul Auster, Moon Palaceファンサイト
 この記事の冒頭のコラージュはこのサイトのクールな一枚です。
村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』三浦雅士著(Amazon) The Unofficial Paul Auster Web Site にあるこのレビュウ
ムーンパレス』ポール・オースター著(Amazon)
moonpalace_stage_by_you_kikai芝居『ムーンパレス』(遊機械プロデュース公演)白井 晃演出
芝居『ムーンパレス』感想
 芝居もなかなかよかったようですね。観たかった。






★★★以下ネタばれ注意★★★
 好きなところをメモ的に書き抜いておきます。
 もう二度とエミリーに会えないということ、死はそれを変えはしなかった。すでに確かだったことに裏付けを与えたにすぎない。何年も抱えてきた喪失感が、再確認されたに過ぎないのだ。(P355バーバーの視点)
 バーバーは僕にいろんな話を聞かせてくれたが、この話はその中でも一番最後のほうに聞いたものである。(略)ビクターおじさんの行動の意味を理解し、僕に対する深い愛情を改めて思い知らされて、たまらなく切ない気持ちになった。(P357フォッグの視点)
 ここだけ抜粋すると、なんだか本当にメロドラマ。話の骨格だけ取り出すと、確かにご都合主義名話かもしれない。だけれど、この二つの視点で描かれた家族の重層的な悲劇の部分と、この後に続くフォッグとキティの破局が、ある種破天荒なストーリーをグッと引き絞って余韻の残る一冊にしている。、、、今日また、BOOK OFFの100円本の棚でオースターを2冊買いました。

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2005.01.21

■押井守『めざめの方舟』完成

hakobune_pann 愛・地球博特集-押井監督が上映作品の完成発表(中日新聞)

 新作を待ち望む世界中の「押井ワールド」ファンのため、DVD販売も検討中だが、押井監督は「会場で実際に体感するのとは別物」と断言。「出来に満足しているし自信もある。ぜひ多くの人に見てもらいたい」と強調した。

 ついに完成したようです。10分間の押井守新作。
 天井と床に押井映像、まわりには百三十九体の擬人像。どんな感覚が我々をおそうのか、興味深深。欲を言えば、鳥、魚、犬の像ではなく、チャイニーズゴシックを模型で再現してほしかった。
 掲載した写真は、天井から吊るされる「汎(ぱん)」と呼ばれる精霊の人形。リンクした中日新聞のHPの写真がしょぼかったので、それよりきれいに発色している中日新聞紙面の画像をスキャンしてのっけてみました。おそらくネットの画像としては最高画質。地元の強み(^^;)。いいのか著作権(全国的な盛り上りに欠ける万博のCMと思って許してちょ。)
 リンク先には、「(C)八八粍・DEIZ/中日・CBC・東海TV」と著作表示があります。「八八粍」というのは戦車砲の名前(?)みたいなので、押井守の「二馬力」みたいなものかもしれません。
 「DEIZ」は『Avalon』とかポシャッた『G.R.M.』とか、『鉄甲機ミカヅキ』の制作プロのようです。この「DEIZ」の日記には、「名古屋での作業が急遽増えて、週末帰れるはずのスタッフが帰って来れず、本日悲しげな電話がありました。着替えがなくて、とうとうこの真冬の深夜、素肌にTシャツ短パンでコインランドリーに出没してしまった模様です。女性なのに…。お疲れ様です。」というような『めざめの方舟』関連の苦労のほか、メイキングがいろいろと語られています。

◆関連リンク
中日共同館 押井監督が映像チェック

「環境や自然が記憶している映像を目指した」と押井さん。足元で展開する縦九メートル、横十メートルの床面映像に、建築評論家の五十嵐太郎・中部大学助教授は「垂直に見下ろす感じ。迫力がすごい。人間中心の発想でない作品は、今回の万博にふさわしい」と話していた。

 五十嵐太郎は、都市論としての『イノセンス』 中華ゴシックと垂直のランドスケープという建築からみた『イノセンス』を書いた学者さんですね。

巨大床面映像で神秘的な世界へ 「めざめの方舟」概要発表

 実物大のサメが海で遊泳する姿など大自然の迫力ある映像が足元で展開される。
 また、百三十九体の擬人像(高さ二-三・五メートル)が画面を取り囲む。像の頭部は、映像の内容とともに二カ月ごとに鳥、魚、犬に変わる。天井には卵形のスクリーンも登場。
 神秘的な照明や音楽と一体化した映像ショーで、自然への畏敬(いけい)の念を体感してもらう。上映時間は一回十分で、収容人数は二百人。

「夢みる山」上映テスト 天から地から「自然」体感

 総合演出する押井守監督は「イメージ通りの出来栄え。自然に対する畏敬(いけい)の念を感じてもらえると思う」と自信をみせた。

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2005.01.17

■3.5インチ動画再生機能搭載ハードディスクケース
    TViX M3000U

M3000U製品情報 DViCO M3000U

・TVでの再生時にPC不要。
・動画ファイルやオーディオファイルの再生が可能。
・マルチチャンネルデジタル音声出力をサポート。
・画像ファイルをスライドショー形式で表示可能。
・プログレッシブ再生に対応。
・簡単にファームウェアアップグレード可能。

 これ、最近ネットのあちこちで評判を見かけます。韓国製のなかなかの優れもの。
 3.5インチの標準的なIDEハードディスクをこのケースに収めて、取り替えて使えるので、いわば容量無限のハードディスクレコーダになる。DVDをリッピングしてハードディスクに貯めこむのに適した商品で、PCと切り離してもDVDデータを再生できるところが売り。PCでどんどん貯めたDVDデータをTVやAV機器に接続して再生して楽しめるらしい。
 AV用ハードディスクでなく、安価なPC用を使えるところが評判を呼んでいるよーです。

 、、、、と言いつつ、僕はハイビジョンレコーダI-O DATA 「Rec-POT M」 HVR-HD250Mを買ってしまったのである。これで、やっとハイビジョン観るために家にいることから解放されます!
 しかしRec-POT Mはハードディスクの換装ができません。ハイビジョンが録れるこういう商品が発売されるのを切に望みたい。(SONYのVAIO現モデルVGC-RA71PRA61シリーズは、ハイビジョンチューナ等とi-linkで繋いでHD録画することができる。「録画した番組データを外付けハードディスクドライブなどにバックアップとして保存することは可能」なので、実質このM3000U相当のことをハイビジョンで既に実現している。ほしい!!が今回手が出ませんでした)
◆関連リンク
・コメントで書き込みいただいたMACでも使える新型の情報 TVIX M3000F FireWire付。
・同様の製品。GR-DVX002(DVD CUBE MPEG4)
 ・DVDドライブかHDドライブのどちらかを搭載可。
 ・HDD接続時はFAT16&32専用。上限120GB。 「NTFSフォーマット」には非対応(ここ)。WIN XPでは駄目でWIN 98等であらかじめフォーマットが必要。
 ・1万円くらい。たとえば、Yahoo!ショッピング TRY×3(トライスリー)GR-DVX002

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2005.01.16

■高橋洋著 『映画の魔』

eiga_no_ma_hyoushi 『映画の魔』青土社
 『リング』『女優霊』他を書いたシナリオライター高橋洋の本格ホラー映画評論集。
 『女優霊』がとにかく怖かった。そしてその脚本を書いた高橋洋は、「ユリイカ」で映画で人を怖がらせることを深く分析する文章を載せていた。その評論の恐怖映画への真剣な書きっぷりが良かったので、この本を期待して読んだ。
 期待にたがわず、マニアックぶりが楽しい(?)一冊。特に長い文がいい。自身の恐怖映画体験とその分析、そして創作の秘密。こんなに脚本家としての企業秘密(?)を書いちゃっていいのかというくらい、分析して怖がらせるメカニズムを書き出している。短い分は、深い思い入れで圧縮された言葉遣いがなされていて、高橋洋仕様の圧縮解凍ソフトがないと解読できないようになっていて、凄みは伝わるがもう少し解説してくださいって、感じ(特にP211「MJ12の秘密」なんて妖しすぎる文章だ)。僕はこういう勢いのある文章が好きなのでいいけれど、きっと何言ってんだか、ちゃんと書け、という人もいるんでしょうね。それくらい気迫があって、いい映画評論だと思う。

eiga_no_ma_yahanutagoe
 左の写真は、本書の扉絵で使われている馬徐維邦の映画『夜半歌声』のスチルである。いろいろと怖そうな映画が紹介されている本書の中でも、この作品の扱いは格別である。どんな映画だか、とにかく一度観てみたくなる。
 あとP322で「どう凄かったか説明できないくらい凄く」と表現しているモーリス・ルメートルとレスリスム展 Maurice Lemaitreでのイジドール・イズーの『涎と永遠についての概論』。これもなんだか凄そうである。しばらくこの本を片手に、「映画の魔」を旅してみようかと思ってしまう。しかし、、、、今日、高橋洋監修の『呪怨』をまず観て、怖くて自分ちの天井の方を見えなくなっている怖がりなので、探索の旅はどうなることやら、、、。

◆関連リンク
『映画の魔』高橋洋著 (Amazon)
・高橋洋監督作品 『ホラー番長---ソドムの市』
俎渡海新聞 第8号
 04.11/19新宿ロフトプラス1 「ドクトルマブゼと恐怖の映画省」 小中千昭、高橋洋両氏によるホラー講義レポート
・馬徐維邦『夜半歌声』(深夜の歌声)中国製VCDが1,400円で買えるようです。
・イジドール・イズーの『涎と永遠についての概論』のレビュウここの日記の12/08分にも。なんだかややこしい映画のようで。

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■酒井健 『ゴシックとは何か―大聖堂の精神史』

 『ゴシックとは何か―大聖堂の精神史』酒井健 (講談社現代新書)
 ヤン・シュヴァンクマイエルの自宅兼シュールリアリズム展示場であるガンブラギャラリーからわずか500mの距離にあるプラハ城 聖ヴィート大聖堂というゴシック建築を見て、「ゴシック」の文化的位置づけが知りたくなって読んでみた。
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 この本は建築様式の分析ではなく、数世紀にわたる宗教・社会・文化の視点から大聖堂を考察することを試みた本。著者は、バタイユの研究者としてフランスへ留学、そこで見たゴシックへの衝撃から本書を構想したことを語っている。

 大聖堂はなぜ建てられたのか──過疎化の極にあり不活性の底に沈んでいた都市を興隆させたのは、農村からの移住者たちだった。……だがその彼らには聖性の体験の場が欠如していた。食糧難に苦しむ農民たちは、大開墾運動の流れにのって、やむなく、崇拝する巨木の森林を滅ぼしていった。都市において、失った巨木の聖林への思いは強く、母なる大地への憧憬を募らせるばかりだった。
 巨木の森と母なる大地にもう一度まみえたい。深い左極の聖性のなかで自分たち相互の、自分と自然との連帯を見出したい。このような宗教的感情を新都市住民が強く持っていたことにゴシック大聖堂の誕生の原因は求められる。
 他方で、裁きの神イエスの脅威も彼らに強力に作用していた。最後の審判で問われる罪は贖(あがな)っておかねばならない。免罪を求めて彼らは惜しみなく献金をした。また、天国行きを執り成してくれるマリアに聖所を築いて捧げる必要性、いや強迫観念にも彼ら新都市住民は駆られていた。
 だがゴシックの大聖堂が建った理由はこれだけではない。別な動機からその建設を望んでいた者たちがいた。大聖堂の主である司教、そして国王は、自分たちの権威の象徴として巨大な伽藍の建設を欲していた。(Amazonの解説より)

続きを読む "■酒井健 『ゴシックとは何か―大聖堂の精神史』"

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■ライナー・チムニク 『クレーン男』
      der kran   矢川澄子訳

der_kran_by_zimnik
 たまたま図書館で表紙とタイトルが気に入って読んでみた。
 1956年に書かれたドイツの絵本。港町にできたクレーンとそこが気に入って住みつく男の話。
 このクレーン男と友人のテクトロの生活が、じわりと染みてくるいい物語になっている。村上春樹の少し不思議な短い小説に雰囲気が似ている。Geschichten vom Lektroというテクトロが主人公の本もあるらしい。妙に気に入ったテクトロの本もどっかで手に入れたいものです。
 たまたまこの本を読んでいた日にネットで目にした「ほぼ日」の糸井重里氏の超ロングインタビューで、村上春樹の言う小確幸(小さくはあるが確固とした幸せ)のことが出てた。この『クレーン男』って、小確幸の世界ですね。(小確幸は、『ランゲルハンス島の午後』村上春樹著, 安西水丸他に出てきます)
◆関連リンク
『クレーン男』ライナー・チムニク著,矢川澄子訳(Amazon)
ライナー・チムニクの本(Amazon)
パロル舎のライナー・チムニクの本
ドイツ語読書案内さんのドイツ語読書案内   クレーン男
・著者について詳しいページ Utrecht[ユトレヒト] | 人物リスト ライナー・チムニク Reiner Zimnik

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2005.01.15

■樋口真嗣監督 『ローレライ』 予告編

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 期待の『ローレライ』、2005.3/5公開とのこと。
 公式サイト。予告編はQuickTimeとMediaPlayerで異なります。画質はQuickTimeだけど、長くて特撮シーンの多いのはMediaPlayerとなってます。
 予告編(QuickTime)のテンポ、なかなかいいです。きっちりした画面構成とスピード感が樋口監督らしいイメージになっています。楽しみだなーー。
◆関連リンク
・アップル 映画「ローレライ」撮影現場レポート 映画製作に革新をもたらすFinal Cut Pro HD  新世代の画像処理を支えるPower Mac G5
・当Blog記事 ■福井晴敏『終戦のローレライ
・講談社から文庫が出ました。終戦のローレライ』福井 晴敏著(Amazon)
・1/20にメイキング本(福井晴敏氏と樋口監督の対談本)がでるみたいです。ローレライ ダークサイド(Amazon) タイトルが良いですね。

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2005.01.09

■ジャン=ピエール・ジュネ監督
   『ロング・エンゲージメント』予告編

予告編
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 待望のジャン=ピエール・ジュネ監督の新作。『アメリ』(2001) も良かったけれど、なんと言っても『ロスト・チルドレン』(1995)が忘れられません。今回は音楽がアンジェロ・バダラメンティで、『ロスト・チルドレン』のコンビが久々に復活です。オドレイ・トトゥが再び主演。ジョディ・フォスターの共演もよさそう。新春第二段公開らしいけれど、楽しみだなーー。
Yahoo!ムービー A Very Long Engagement
・公式サイト 日本(準備中)、アメリカ(Warner Independent Pictures Site)
■『ロング・エンゲージメント』の原作『長い日曜日』

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■クローズアップ現代
 「夢の技術が現実に~ロボットスーツ開発最前線~」

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 今週のクローズアップ現代(05.1/6)筑波大 山海研究室のパワードスーツ(というかパワードレッグ)HAL(Hybrid Assistive Limb)を紹介していた。立花隆が大絶賛。(今までの企業のロボット(ASIMOとかQURIOとか)は見世物で実用化は相当将来になる。パワードスーツは知能の部分を人間が受け持つので直ぐビジネスになる、という論旨。このおじさん、ホンダのロボットが初めて搭乗した時も同じようにはしゃいでたけどね。)

 筑波大学が開発を進めるこのスーツは下半身に装着、人間の生体電流に反応してモーターで駆動させるもので、階段の上り下りなど複雑な動きもでき、200キロのバーベルを持ち上げるパワーも持つ。多くの車いす生活者にほぼ自立した生活を可能にする他、原子炉の解体など危険な作業分野などでの応用も期待されている。(NO.2015)

 膝等の表面筋電位センサと床反力センサによる制御のようだけれど、筋電位から人間の行動の意思を先読みしてモータアシストする技術がなかなか凄いみたい。あとモータアシストが始まると人間は自分で動かなくて良いかと思って電位が下がりモータが止まってしまうので、筋電位だけでなくそれをきっかけにしてアシストするプログラムが継続して動くという技術を使っているようで、そこらがキー技術のようだった。
 かなりスムーズに動いているのが面白い。スタジオで実演していた学生の嬉しそうな顔と動きがよかった。米軍が同研究室にいっしょにやらないかと声をかけてきたというエピソードも話されていたが軍事利用は当然のように出てくるわけですね。

◆関連リンク
・これをビジネスとして立ち上げようとしている大学発ベンチャー CYBERDYNE株式会社。サイバーダインという名前は『ターミネータ』からだろうけど、「会社概要の事業目的」には軍事は入ってませんね。当然だけど(^^;)。にしてもこの名前はきな臭い。先生は知らないのに学生が付けちゃったのでは??
araska_powerdsuit Neo-mecha type:NMX04-1A
 こんな記事もありました「本気でパワードスーツづくりに励むアラスカの青年」(wired記事)。その青年Owensのサイト

Owensは巨大ロボットに車を破壊させたり、同様のマシン同士を対戦させるといったエンターテイメント的な価値の方に興味を示している。鋼鉄の巨大マシンが歩きまわり、手から火を出して車を破壊する光景は絶対にビジネスになる、と同氏は話す。
・有名なGeneral ElectricのHardiman
・当blog関連記事 ■現代の蒸気兵 UC Berkeley BLEEX Project(リンク先の7/27記事)
 UC Berkeley Human Engineering Laboratory
bleex_berkeley_lower_extremity_exoskeleton.jpg

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■攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 第15-20話

 公式ページ 第15-20話 ストーリー紹介
 DVDでシリーズ後半に入ったS.A.C. 2nd GIG 第15-20話を観た。

第15話「機械たちの午後 PAT.
第16話「そこにいること ANOTHER CHANCE
第17話「修好母子 RED DATA
第18話「天使の詩 TRANS PARENT
第19話「相対の連鎖 CHAIN REACTION
第20話「北端の混迷 FABRICATE FOG

 今回の6本のうち4本(16,18-20話)は、監督神山健治自らの単独脚本。公式ページによるとこの後、最終話まで1作(佐藤大との共同脚本)を除いて全て神山健治単独脚本。いよいよ馬力がかかってきたというところか。
 この出来次第で神山健治のストーリーテーラーとしての腕が確認できる。

 今回15-18話は、はっきり言って中だるみ気味。前回11-14話は<個別の11人>の九州タワー屋上のシーンを中心にテロを主題にした大きなうねりがあった。
 15-18話は、クゼの過去に焦点をあてて特に半島での出来事(16話)が興味深いが、それ以外は単独エピソードの感が強く本筋の<個別の11人>の先を知りたい気分に水をさされた感じ。(18話のベルリンの話はそれなりに泣けるのだけれど、、、)

 ようやっと話が回りだすのが、19-20話。19話でクゼと9課が絡みだして、20話は択捉が舞台でタチコマとアームスーツの戦闘で盛り上げる。択捉のシーンは、『イノセンス』のような映像美は望むべくもないが、相変わらず精彩のあるタチコマの3D-CG戦闘シーンが良い。いよいよラストへ向けて動き出した物語に固唾を呑んでしまう。この先が早く観たい!!

◆蛇足。
 第20話に下記のセリフと画面があり、一瞬びっくり。
KOUKAKU_2nd_GIG_BP

「ブローカーSAGAWA・K、BJレモンケーキ二十キロ、K取り分40%退職金。買い手BP紹介。」
「佐川のK。Kは北端特務課長の加賀崎か。奴が仲介屋となってキロ50万ドルで売買。売り手がボリス・ジャブロフ。買い手は、アジアンBP・・アジア難民ってこと?」
 なんのことはない、BP=Boat Peopleの略らしい。自分が出てきたかと思ってドキドキしました(<<馬鹿)。そうか、BPって、Boat Peopleの意味もあるんだ。(つまんない極私的ネタでスミマセン)

◆関連リンク
攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 08 DVD(Amazon)
攻殻機動隊PKI - B-Wiki - S.A.C. 2nd GIG 第15話 各話のセリフを書き起こしてあるページ。凄い労作。
・当BlogのSAC記事
 ■『攻殻機動隊/S.A.C. 2nd GIG』 第11話-第14話
 ■『攻殻機動隊/S.A.C. 2nd GIG』 第1話-第10話
 ■STAND ALONE COMPLEX 1-26
 ■J・D・サリンジャー「笑い男」と神山健治『攻殻機動隊 S.A.C.』
・テロ関連で、笠井潔『テロルの現象学』ちくま学芸文庫(Amazon)

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■宮崎駿監督 『ハウルの動く城』

howls_moving_castle
 『もののけ姫』『千と千尋』に比べると、適当に肩の力が抜けていて(世界を背負っていない感じ)、アニメーションらしいメタモルフォーゼとか奇想なイメージが豊かに広がっていて楽しめた。

城と飛行の奇想イメージ
 冒頭の動く城がまずいい。ハーモニー処理で描かれた各パーツを(スキャナで)取り込んで、CGによってそれぞれが独立/連係して動くようにしたらしい。山の中を歩き回るこの城のイメージがまず奇想イメージとしていい。(最初にこの映画のことを知った時は、映画のようにこじんまりした城でなくクリストファー・プリースト逆転世界のようなもっと大きな町のような城が動くイメージを思ったのだけれど、、、。) 『風の谷のナウシカ』で、ハーモニー処理「王蟲」のチャチさには、がっかりした記憶だけれど、CGの進歩と今回の歩く城の動画担当のセンスで、なかなか圧巻です。少なくともスチルの絵だけでは味わえない奇妙な感じが動きを伴うことで楽しめた。
 ハウルの魔法や戦争とかの飛行シーンの奇想度もなかなか。王室付きのサリマンとハウルが会うシーンのメタモルフォーゼと空中のイメージは出色(も一回観たい)。原作は未読なので宮崎駿のイマジネーションだけかどうかわからないけれど、最近の日本が舞台のものより伸びやかなイメージに感じる。
 メタモルフォーゼということだと、ソフィーの年齢的な変貌も面白い。特に同一シーンの中で年のとり方が様々に変化するところ。ここらへんがアニメーションらしい画面になってて良かった。
 まだまだ物語るためのアニメなのだけれど、これらのシーンをもっと幻想的にストーリーに縛られないで拡張していったものも、短編で良いので観てみたい。巨額のビジネスを背負ってるとそうも行かないだろうけれど、今回目をみはるイメージがかなりあったのでそんなことを思った。
・クリストファー・プリースト逆転世界
inverted_worldby_priest

原画マンの個性
 画面構成とかイメージは良いのだけれど、アニメータの技という点でいくと、ダイナミックな動き、ワクワクする動きは少なくて、最近のこじんまりとまとまった宮崎アニメという感じがしてしまう。なんなのかな?アニメータ宮崎駿らしい動き(彼のレイアウトでなく原画の魅力)を思い出す時に、『旧ルパン』とか『侍ジャイアンツ』(第一話)とか『空飛ぶ幽霊船』の戦車シーンとか、ダイナミックな線と動きをイメージしてそれと比較するのが悪いのか、、、、(ロートルファンの郷愁??)。ただ『ハウル』のストーリーポード観ても宮崎のそのタッチが今も感じられ、かつ原画修正で監督本人が書き直してもいるようなので、そんな原画も期待してしまうのだけれど、、、。あの躍動感(と素朴さの)味のあるアニメートを継ぐアニメータが現れるのを期待するしかないのか。ああいう原画の個性というのは、継げるものではなくって、個性そのものという気がしないでもないので、若い頃の宮崎本人を連れてくるしかないのかも。

戦争
 ストーリーとしては、戦争に対するスタンスが僕は良かった。
 クライマックスのカタルシスを戦争で描かないという姿勢、背景としての戦争。映画としてはクライマックスをもっと戦争の活劇で描いた方が盛り上がったのだろうけれど、今回はあくまで主人公たちの生活の視点で戦争のほんの一部を描いているのみ。大上段に戦争に立ち向かったのが漫画版『風の谷のナウシカ』だけど、2時間強の映画で描ける題材ではないはずで、戦争じたいを唯のカタルシスの道具にしてないのも好感。
 前にここで『カリオストロの城』について、幼少時の宮崎が空襲時に少女を助けられなかった体験がかなり大きく彼の映画に影響していると書いたけど、今回もその視点でみるとズバリ。
 ただしハウルのみが助ける話でなく、ふたりで乗り越える戦火という感じになっている。これを助ける話の発展形としてみるか、バリエーションとしてみるか、、、??

 ラストの案山子のカブのセリフで戦争の行く末をあまりにあっさり描くのには仰け反ったけれども、全体、なかなか楽しめる映画だった。

◆関連リンク
★究極映像研究所★: ■BS アニメ夜話 『カリオストロの城』

『宮崎駿の原点―母と子の物語』という大泉 実成が書いた本の中に非常に興味深い宮崎の子供時代のエピソードがある。あまりに後の作品にピッタリはまりすぎてかえって嘘くさく思えるエピソードなのだけど、、、。

・そのエピソードについては「時代を翔る アニメ監督 宮崎駿」(北海道新聞)の記事にも。
 その時-。「助けてください」。子供を抱いた近所の男性が駆け寄ってきた。しかし、小さいトラックは既に宮崎の家族でいっぱい。車はそのまま走りだした。次第に遠ざかる叫びが、荷台の兄弟の耳に残った。

ここの掲示板に『宮崎駿の原点―母と子の物語』での戦争中エピソードと『ハウル』の関係について少し触れられています。
監督が少年だった戦争時代に、救えなかった少女への生涯離れない想いが、
監督=ハウルで、二人が守り守られて幸せになる形となって表に出てきたのかな、とか。

夕刊フジ
公開中の宮崎アニメ「ハウルの動く城」(宮崎駿監督)に「何か変?」の声が上がっている。
「従来の宮崎作品に比べて迫力がない」「色づかいがらしくない」「千尋の時のような盛り上がりに欠ける」などの声も…。

・原作小説と映画脚本比較 こことか、覇王の書斎とか。
『逆転世界』クリストファー・プリースト著,安田 均訳(Amazon)
〈地球市〉と呼ばれるその世界は全長千五百フィート、七層から成る要塞のごとき都市だった。しかも年に三十六・五マイルずつレール上を進む、可動式都市である。この閉鎖空間に生まれ育った主人公ヘルワードは成人し、初めて外界に出た……そこは月も太陽もいびつに歪んだ異様な世界? 英国SF協会賞に輝く鬼才の最高傑作。

・Masslogueさんの「ハウルの動く城」と歩く建築 イギリスの前衛建築家集団のユニット アーキグラムハウルの城に関する記事。このアーキグラムの歩く建築にそっくりなフォルムを持つ現実の建築物の写真も掲載されていて、見逃せない内容です。
 

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