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2005.02.19

■押井守,篠崎亨『「イノセンス」methods
       押井守演出ノート―From layouts of “Innocence”』

innosence_methods この本の絵コンテの横に書き込まれた押井守のコメントを読んでいくことで、この映画の製作過程でどんなコンセプトを押井が構想し演出したかの一端に触れることができる。それは絵作りであったり思想であったりアニメとしての段取りであったり多種のアプローチであるが、いずれもが映画としての『イノセンス』という何ものかを現出させる試みであったことがわかる。
 特に『イノセンス』が物語というより画面の質感であったりイメージの連鎖であったりするため、絵コンテによる各スタッフへの指示が重要な意味を持つ。そこが臨場感を持って読者に伝わってくる。
 そして本編を思い出していくと、各レイアウター、アニメーター、CGクリエータがどう演出指示を受けとめ、そして超えていったか、というのがわかる仕掛けになっている。
 革新的な映画の誕生の軌跡として、興味深い記録本であると思う。

ランダム・メモ
・監督のコンセプトはいろいろあったようだけれど、あの緻密に過剰に描き出された映像について、特にチャイニーズゴシックは、押井守監督のコンセプトの勝利なのだろうけれど、アニメータたちの完成度の追求が凄かったようで、想像以上のできであったというコメントがいくつかあった。そういう意味からも、レイアウトと原画家、CGクリエータの名前をシーンごとに記述しておいてほしかった。この映画の革新は監督だけでなく、彼らの成果なのだと思う。映画一般にスタッフの総力なのだろうけれど、これについては特筆しても良いのではないかと思ったので。

3D-CGで出すことのできないパース(単純なひとつだけの消失点で描かれていないような)2Dのアニメータの腕を賞賛している部分がいくつかあった。ここで思ったのが、PIXERの『Mr.インクレディブル』。あの3D-CGは既にそうしたCGの課題をクリアしてダイナミックなアニメートを作り出していると感じたのは僕だけでないと思う。ジョブズCEOが年2-3作映画を作れるようになっていると語っているのをどっかで読んだけれど、日本アニメの脅威になるのは間違いないと思うのだけれど。

・監督がこの映画で描きたかったことも、コメントの中でかなり直接的に書かれている。アニメで出てくるものが人形だろうが人間だろうが、どちらも等価な作り物に見えるということを意識的に用いている。人間と人形の等価性犬と子供で描き出すそれとは異なる何者かの描写。ラストシーンに顕著なその描写について、かなりしつこくコメントで語っている。

・私ごとだけれど、最近犬を飼い始めて、この犬と子供(特に幼児)の等価性についてしばし考えている。自分の子供は既にある程度大きくて、明らかに押井守が犬を用いて表現したかったものと違ってきている。しかし人間の幼児と犬はなんかかなり似ている存在に思える。脳に人間というものをインストールされる前の存在、というか、、、、。犬を飼って『イノセンス』が少しわかる気がしたって感じです。(少し謎)

・この本で特に感じたのは、映画やテレビの映像の進化に対して、印刷技術の停滞の痛々しさ。せっかく映画のシーンをカラーで再現しているのに、まったく画面の緻密さが印刷で再現されていない。これではDVD画面をキャプチャーして自分ちでインクジェットでプリントしても今なら勝てるのでは?と思ってしまう。技術革新がないと本は本当に終わるかもしれない。

◆関連リンク
『「イノセンス」 methods押井守演出ノート―From layouts of “Innocence”』(Amazon)
Pinxterbloemの日記さんが篠崎 亨氏(CGIアートディレクター)の『イノセンス』に関する発言(月刊アスキー 2004/4)を引用されています。それにしても解像度が低い!DVDの解像度720×480より少し高いくらい。ということはかなり映画を再現できているということなのか、、、。PIXERのとかはどのくらいなのだろう。

解像度ってどれくらいなんですか?
篠崎:意外にこの作品は映画の中では低いほうなんです。ハイビジョンより低い。横1212×縦655だったかな?
Discreet >3ds maxユーザー事例 3ds maxと独自の実写的方法で創る3次元CG空間-アニメーション映画「イノセンス」のチャレンジ
・篠崎亨氏のパートで、「カメラマップ」というのが恥ずかしながら良くわからなかったので、調べてみました。カメラマップとは(古賀信明氏(有)スペシャルエフエックススタジオ)
 通常のCGではUVWマップというのが一般的。つまりオブジェクトの面に対し直角に貼り付けるというのをやると、ポリゴン(ワイヤーフレームで構成される面)同志の直角に合わさった境界線がものすごくシャープに出てしまい、それがCG独特のリアリティのなさを生むというデメリットになる。それを何とか解消すべく考案された方法がカメラマップで、広範囲のモデルに対し一度に質感を与えられる。
 凸凹した建物の立体、何もディテイルのないものに、カメラの位置からこういう風に見えるべきだというもの、例えば家の形をした真っ白な石膏のミニチュアに対しそれなりの家のディテイルを投影したと思っていただければいいと思う。プロジェクターで単純な面に投影されているにもかかわらず、非常にリアルなものとなる。

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コメント

こんばんは、BPさん。お返事&私のブログへのコメントありがとうございます。

「イノセンスノート」持ってないんですよねぇ^^;。高いので二の足踏んでます。

>あ、完全に見逃しました。
あらららら(^^;。
BP家では8月の放送待ちですね。
このインタビュー、作画スタッフと声優さんについて何も無かったのが残念でした。話に出てこなかったのか、それともカットされたのか・・・。
拡大版であるといいのですが。

今月はファミリーチャンネル(http://www.fami-geki.com/special/index.html)でも押井作品が上映されますね。
7/8「パトレイバー」「パトレイバー2」
7/15「うる星やつら ビューティフル・ドリーマー」
7/16「ミニパト」

なかなかのラインナップです(笑)。
7/16には「日本SF大会 HAMACON 2 」にて押井氏が新作を語るし、愛知万博もそろそろ「狗」。7月は押井マンスリー?

投稿: shamon | 2005.07.05 20:33

 あ、完全に見逃しました。全然知りませんでした。いつもはケーブルどっぷり(カトゥーンネットワーク)の子供が、いいのがあると父親の趣味を知っていて教えてくれるのですが、センサに引っかからなかったよーです。

 インタビュー、観たかったーー。
 検索したら、ここで一部観えますね。今からみます。

http://spbb.jp/catalog/meta/p_meta_an30hgh005V527001.html

投稿: BP | 2005.07.04 22:59

こちらでもこんばんは、BPさん。

ええとご覧になったかもしれませんが念のため。
昨日(2005/7/3)の「日本映画専門チャンネル」で「イノセンス」及び押井監督のインタビュー(約50分)を見ました。

いろいろ話題は出たのですが、映像について
「いろんな要素盛り込んだんだけど皆気づいてくれなくて・・」とぼやいておられましたよ(笑)。

投稿: shamon | 2005.07.04 22:09

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