■福井晴敏『亡国のイージス』
福井作品は『終戦のローレライ』しか読んでなかったので、2作目。
重厚な人間ドラマと海上アクションをしっかり堪能できました。分厚いけれど、リーダビリティ最高です。如月行の幼少期からの描写と宮津艦長の自衛官としてのドラマが特に読ませます。特に如月の冒頭でのシチュエーションとか、艦長の息子との関係とかうまいなー。さすがにこの人物描写の冒頭のテンションは最後まで続くということではないようにも思ったけれど、、、、。特にヨンファについてはもう少し強い男として描いても良かったのではないか。ヒステリックというか悪役の類型になってしまっているようなところが、、、。でもその分、いそかぜがどうなるのかという物語のスリリングさが良いのだけれど。
宮津の息子の書いた論文、ここは『終戦のローレライ』の浅倉に水面下で直結している。日本に関する分析として面白い。で、物語を追ううちにそれに対するアンチテーゼが言葉ではなく、如月と先任伍長仙石の行動を通して描かれる。ここも『終戦のローレライ』と通底する。アンチテーゼと勢いで書いてしまったけれど、アンチテーゼと言い切れない所が福井作品の魅力かもしれない。たぶんどっちにも作者は思い入れがある。これにより作品が重層に感じられるのが魅力なんだと思う。
謎の兵器の描写もいい。「辺古野ディストラクション」というフィクションが現実の歴史にするっと割り込んできて、リアリティを得てしまうあたり、本当に舌をまきます。
艦上でのアクションシーン。実は巨大な艦上を二人の人間が孤軍奮闘して走り回るシーンに、僕は『未来少年コナン』を思い出してしまった。如月コナンに仙石ダイスがギガントの上を走り回るって感じ(^^;)。そんな風に思うと、宮津息子の論文とか宮津艦長による東京に戦争を現出させる企てとかは押井守『パトレイバー2 the Movie』の柘植そのものですね。
◆関連リンク
・関連本『もうひとつの 「亡国のイージス」 オールアバウト・如月行』福井晴敏監修
・同『水平線の光の中、また逢えたら―another『亡国のイージス』ジョンヒ 静かなる姫 』
・林の頁さんの海上自衛隊横須賀基地のレポート
本書で活躍したターターミサイルのランチャー写真(ミサイル護衛艦「さわかぜ」搭載)が掲載されています。
・Sankei Web 特集 「亡国のイージス」今夏公開 「【インタビュー】任務終え帰国 イージス艦「きりしま」艦長と先任伍長に聞く」という記事が面白い。現実の先任伍長が語っています。
・公式 こんなにしゃべってイージスBlog
・亡国のイージス : HERALD ONLINE
・goo 亡国のイージス Offcial WebSite
・goo 亡国のイージス 映画 Offcial WebSite 映画予告編
映画では、宮津は艦長ではなく副長。艦長が謀反を起こす話では、自衛隊の協力が取り付けられなかったのか?映画としてのなんらかの工夫か?
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