■中島らも 『酒気帯び車椅子』
中島らもの遺作。遺作がこんなパンクでめちゃくちゃな表紙というのも、いかにもらもさんっぽい。B級SFの臭いがプンプンしてくる表紙ですが、物語はほぼリアル。近未来という感じでもなく舞台は現代。
主人公が家族ともども無残な仕打ちを受け、復讐に向かう話。前半、この主人公の洒落っ気の効いた仕事振りと家族(妻と娘)との幸福な日常が描かれる。中島らもにしてはあまりに平和な風景の描写が後半へ向けて破壊される予兆を感じさせて、前半がガラス細工のようにいつ壊れるのかとドキドキしながら読まされる。(私ごとだけど特に家族環境が娘一人であることを除くと家族は妻と娘でサラリーマン、飼っている犬の種類までうちと偶然同じでなんだか非常にリアル。日曜にうどんを打つのも同じだし、、、、(^^;))
で、後半の活劇のスピーディさも幕切れの痛快さもカラッとしていてエンターティンメントしてました。(願わくばもっとラディカルにアル中描写や車椅子描写を極めていてくれたら、ぶっ飛んで読めたかとは思うのだけれど、、、。)
最後までエンターティンメントで、読者をハラハラさせてくれた作家中島らもに拍手をおくりたい。
◆関連リンク
・『酒気帯び車椅子』中島らも著(Amazon)
・『ロカ』中島らも著(Amazon) もうひとつの遺作。連載中に亡くなり、こちらは未完だけど傑作→当Blog記事
・アル中描写がかなり似ている、こちらはまだ死んでへんけど、悲惨な吾妻ひでおの『失踪日記』(Amazon)
・『Comic 新現実 Vol.3』大塚英志編(Amazon)は、特集:吾妻ひでお。で、「うつうつひでお日記」が連載開始。
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