■幻の万博 YANOBE KENJI 『KINDER GARTEN』
ヤノベケンジ企画展 - キンダガルテン - 豊田市美術館 2005.6.24(金)から開催
愛知万博 長久手会場と瀬戸会場を結ぶゴンドラの下の田舎道を車で走りぬけて一路豊田へ。万博会場からわずか車で30分南にある豊田市美術館で、今日、巨大ロボットを観てきました。
10mあまりもの大きさの巨大ロボットが腕と体を動かし、咆哮するのをついにはじめて眼にしました。自分の中の一番奥に眠る映像記憶、鉄人28号とちょうど同じくらいの大きさのロボットがついに現実の空間で動き出した瞬間です。
ヤノベケンジの作品を初めて観たのは、1999年夏の終末を人類がのりきった9月。名古屋港の現代美術館の企画展<ヤノベケンジ個展 ルナ・プロジェクト>「エマージェンシー・ショッパーズ」でした。
この時の展示会場でノスタルジーというか失われた未来との遭遇というのか、とにかく感じたのが物凄くその空間に馴染んでいくような感覚でした。チェルノブイリや大阪万博会場跡に佇むアトムスーツの写真。毒ガスマスクと丸い金属製潜水服を組み合わせたようなオブジェ。どこかで観たような懐かしい気持ちを呼び起こす作品群には、大阪万博で未来に魅了され自然とSFを呼吸するように体験した世代を鷲掴みにする魅力があふれていました。(って感じたのは、自分だけ??) とにかくいつまでもその空間に居続けたいと思った美術展というのは後にも先にもこの一回限りでした。
◆巨大ロボットオブジェ
で、今回の展示にワクワクして、会場へ向かったわけですが、入り口でまず眼に入ってくるのが、この巨大ロボット。写真の人との大きさを比較してみて下さい。巨大さがわかると思います。で、僕は現実にこれだけの大きさの人型ロボットが動くのを観たのは今回が初めて。これを興奮せずしてなんとしましょうか。
このロボット、名前は「ジャイアント・トらやん」と名付けられています。名前がメチャかっこ悪いのは気にせんといて。デザインはいつものヤノベのノスタルジックな曲線とどこかユーモラスな表情が特徴。鉄板の体に鋲打ちされたテクスチャーもたまりません。おまけに背中にはロケット噴射ノズル、頭には2本のツノ。モノクロアニメにワクワクした世代には、これもたまらないガジェットです。
このロボットは本来、写真手前のヒヨコ隊長の頭のようなオブジェの口に5歳以下の子供が手を入れて、「トらやん」と声をかけると、声の調子にあわせて動くらしい。らしいというのは、会場の女性にうかがった話で、僕が行った時はその装置は止められていた。このヒヨコ頭オブジェの中に2台のコンピュータが搭載されていて、名工大だかの技術で音声認識をするらしいのだが、温度上昇に弱いため、しばらく止めてあるとのこと。
ただロボットのデモは約10分おきに自動的にいくつかのパターンで動くようにしてあり、僕は二つのパターンに遭遇。ひとつは首を振って少し弱い声で話す。もうひとつは前述した手と腰と首を大きく動かして咆哮するというもの。これは一見の価値があります。
このロボットは金沢21世紀美術館でも使われたものだけれど、金沢では座っていたのが今回新たに二足で立ったのが進化とか。金沢では火を噴くパフォーマンスも披露されたようです。→ムービーはこちらから。
◆トヨタ廃棄物によるマンモスオブジェ
ロボットオブジェのとなりにいるのが、このマンモス。ヤノベ氏が自身で乗っていたトヨタ ハイエースを解体して、その廃材で構築されたオブジェ。写真ではわかりにくいが、その体内にはディーゼルエンジンが搭載され、左目の上くらいにイグニションスイッチとステアリングがある。イグニッションにはキーが付いていた。会場の美術館ボランティアの説明員(?)の女性によると、初日はエンジンが始動され、巨大な鼻が動いたという。さすがに会場でいつも排気を出すわけにいかず、止めてあるという。ヤノベ氏が会場へイベントで来る際には動かされることもあるという。(モーターショーでは排気管に換気ダクトをつないで展示会でエンジンを動かすこともある。トヨタ自動車のお膝元でそうしたアドバイス、処置が何故実施されていないのか不思議。あと今回の展示はトヨタ車もヤノベ氏自前で協力のクレジットにトヨタの名前はありません。)
で、2Fの展示で流されていた「マンモスプロジェクト」のビデオでそのコンセプトがヤノベ氏によって語られています。これが凄い。
愛知万博の企画として20mの産業廃棄物で出来た巨大マンモスロボットを会場で動かす。これを20世紀文明の環境破壊の象徴として位置づける。会場で暴れたマンモスを名古屋港から船積みしシベリアへ運び、永久凍土層に埋め、1万年後に掘り出すという企画。(詳しくは下記Mammoth Projectのページ参照)
読売新聞(?)かどこかと具体的にこの企画は動いていたらしいが、政治的な問題で中止の憂き目に会ったらしい。なんということでしょうか、、、、。万博の目玉として発掘されたユカギルマンモスとこの産業廃棄物のマンモスの競演が実現していたら環境アプローチが古代から未来まで円環を閉じるように完結していたのに。
あと20mの巨大オブジェ。大阪万国博覧会にあって愛知万博に足りないのは、建築群のアート的アプローチだと思うので、これが実現していたら太陽の塔に変わるようなインパクトを今の子供たちに与えて、20-30年後に第二第三のヤノベケンジ他の万博キッズが現われていたかと思うと残念でなりません。
こうしたコンセプトを知ると、今回トヨタ車を20世紀の産業廃棄物の象徴として選んだとしたら、お膝元での開催は物凄いゲリラ的行為なのかもしれない。いやあくまでも私の邪推ですが、、、。
◆会場の様子とカタログ等
それにしても開催直後の日曜日にしては会場が空いていました。ひとつの展示会場に数人だけ。万博で2時間も企業パビリオンに並ぶ暇があったら、是非こちらの展示へ足を運ばれることを薦めます。こちらは冷房もしっかり効いて涼しいし、、、。
あと今回の展示専用のカタログ,パンフレットは用意されていないようですが、大阪のキリンプラザのEXPOSE2002(磯崎新とのコラボレーションとか)、ルナ・プロジェクトとかのカタログが販売されていますので、ヤノベファンで買い逃した方にはチャンス。
また今回の展示カタログを兼ねて7/24に発売されるヤノベケンジ初の本格的作品集 『ヤノベケンジ 1969 - 2005』(青幻舎刊)の先行予約を会場でやってました。ここで予約するとサイン入りが買えます。僕はしっかり予約してきました(^^;)。
うちの子は、増殖したアトムスーツのトらやんが怖いと言ってました。顔と十数体があちこちに湧き出ているのが怖かったらしい。たしかにヒゲ面のオヤジ子供のトらやんは僕も馴染めません。
◆関連リンク
・YANOBE KENJI ART WORKS /// ヤノベケンジ アートワークス(公式ページ)
・Mammoth Project Office KENJI YANOBE ARTZONE
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