■鴻上尚史『リンダ リンダ』
2004年のKOKAMI@network vol.6『リンダ リンダ』の戯曲が出た。芝居は観たかったけど行けなかったので、とりあえず戯曲購入。(本当はDVDを買えば芝居観えるんですけど。)鴻上尚史の戯曲はほとんど買っているので、ちょこっと惰性だったりしますが、表紙もいいので(これ、「立体イラストレーション」とあるけど、3D-CGということなのかな?)(この表紙のアーティスト・ワクイアキラ氏のHP)
本書は、山本耕史、松岡充、SILVAらを主演に迎えて東京・大阪・福岡の各地で大成功を収めた音楽劇の完全戯曲化である。
大手レコード会社にヴォーカルを引き抜かれ、空中分解寸前のロックバンド「ハラハラ時計」。残されたメンバーたちは、元活動家や警官などを新たに迎え入れ、なんとか夢を追いつづけようと苦戦する。そして「本物のロックバンド」になるために、彼らが企てた無謀な計画とは……。
『終わらない歌』『キスしてほしい』『TRAIN-TRAIN』など、80年代に爆発的な人気を誇った伝説のバンド、ザ・ブルーハーツの名曲全19でつづる青春音楽劇。
で、戯曲のみ読んだ感想ですが、鴻上尚史、シンプルな話になっているなー、という感想。どっかで今はわかりやすい物語を書くと言っていたけれど、昔と比べると拍子抜けするほどシンプル。
畳み掛けるようなギャグと複雑に入り組んだ話、そしてしんどい脱出の物語、というのが滅茶苦茶大雑把にまとめた鴻上尚史の戯曲のイメージなのだけれど、確かにその要素は持っているけれど、これは別種の戯曲ってほどシンプル。
◆諫早湾??!
なんせ脱出の物語は諫早湾干拓事業(戯曲では「アザハヤ湾」)。これほど具体的な対象物をストレートに描いているのは、第三舞台の芝居とあきらかに異なる(KOKAMI@networkだし)。そりゃ「あとがき」にあるように、諫早湾問題に批判したい気持ちはわかる。だけど、それなら実際行動すりゃいいじゃん、っていうのが感想。芝居で(しかもわけわかんない「アザハヤ湾」への単語の変更まである。ここまでわかる固有名詞なら、せめてまんま「諫早湾」でいいと思うけど。)
あとがきにはこんなことまで書いている。「もし僕に、荒川さんのような知り合いがいたら、間違いなく僕はあの堤防に戦いを挑んでいただろうと思うのです。計画に向かって、揺れ、怯え、迷う自分は、ウォークマンから流れるザ・ブルーハーツの音楽が助けてくれたはずです。」(「荒川さん」というのは大高洋夫演ずる過激派の爆弾製造中年のこと。) 嘘!!??、そこまでナルシスティックに言うなら芝居でなく本当にやればいいじゃんって言うのが酷だけれど正直な感想。これって、ポーズで書いていい文句とは思えない。やはりここからは単なる商売の道具にしたんでしょって、言いたい気持ちしかわいてこない。ここで「荒川」の名を出しているのが、決定的にずるい感じ。どうしちゃったの?鴻上さん?(本当に「やる気」だったとしても、ファンが鴻上尚史にやってほしいことはそういうことでないと思う。)
具体的対象物を描いたとたん現われる馬脚??抽象的な脱出を芸術として描くことが、今までインパクトを持っていたのに、、、、。実際行動ではなく鴻上尚史がやることは、もっと違うことと思うけれど、煎じ詰めると「諫早湾」へ行っちゃうわけですか??
どうせならこの芝居、荒川さん登場シーンでボケかますように同じムツゴロウ救うのでも、動物王国の畑正憲救いに行く話しの方が、よほどか演劇としての魅力が出てたような気もするけれど、、、、。
(見苦しい文章ですみません。なんか読後はそれほど思わなかったのに、これ書いててだんだん腹立ってきた。)
◆ザ・ブルーハーツ
でもブルーハーツの曲がガンガンかかるだけで、まさに「ザ・ブルーハーツの音楽が助けてくれたはずです」な芝居だったんだと思う。戯曲だけれども挿入される甲本ヒロトや真島昌利の詩がいいもの。
僕は好きな「青空」と「キスしてほしい(トゥー・トゥー・トゥー)」が詩として挿入されているだけで、目頭が熱くなりました。そういう世代です。^ ^ ;。
◆関連リンク
・鴻上尚史戯曲『リンダ リンダ』(Amazon)
・鴻上尚史が朝日新聞劇評に抗議! こんなこともしてたんだ。
朝日の記事も鴻上の反論も既にネットから消えていますが、ここに痕跡。
・thirdstage.com 『リンダ リンダ』(公演の記録)
・チケットぴあ/「リンダ リンダ」/山本耕史インタビュー
・山本リンダHP (ググってたら必ずここがヒットしたので、おやじギャグ)
・舞台のDVDはこちら(Amazon)。
・演劇ぶっく113号 『リンダ リンダ』の記事あり
・当Blog記事 ■鴻上尚史作・演出 『リンダ リンダ』 (芝居は観てないので、感想ではありません)
・最近、評判の映画『リンダリンダリンダ』
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コメント
りゃまさん、sassyさん、コメント、ありがとうございます。超遅レスですみません。
『リンダリンダ』、芝居観てないのにここまで書いていいのかなーと思いつつ書いてしまっていますが、ネットなので万が一、鴻上尚史氏も読むのではないかと自意識過剰でドキドキしてます(^^;)。
sassyさん、鴻上の芝居だったら、やはり代表作の『朝日のような夕日をつれて』がお薦めです。僕は'87年版ではまりました。DVDも出てますので、機会があれば、、、、。
投稿: BP | 2005.09.03 18:15
遅ればせながら、TBありがとうございました。
鴻上さんの作品は、同級生が高校の演劇部でやってた位の知識しかなく、
それこそブルーハーツの力もあって、私には単純に懐かしく楽しい舞台でした。
でも、確かに"あざとさ"感はありますよね。
こういった人たちが「自分にできる方法で」みたいな事よく言うけれど、
それって方便じゃないのかって思ったりしますし。
ともあれ、彼の作品をもっと知りたいと思うようになりました☆
投稿: sassy | 2005.08.31 23:13
はじめまして、りゃまです。
TBありりがとうございました。
リンダリンダの戯曲本が出たのは、新聞の広告で見ました。
本屋で見掛けたら、買ってみようと思っている所です。
投稿: りゃま | 2005.08.12 09:05