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2005.09.24

■『GAUDIA(ガウディア)
    造形と映像の魔術師 シュヴァンクマイエル』

GAUDIAGAUDIA(ガウディア) 造形と映像の魔術師 シュヴァンクマイエル
 (求龍堂公式ページ) 2,625円 (本体2,500円)

チェコの映像作家シュヴァンクマイエルの日本初の夫妻展(9月10日~11月6日神奈川県立近代美術館 葉山、11月12日~2006年1月15日 新潟市新津美術館で開催)に合わせて制作された図録です。
カラー96ページ(収録作品数約170点)のほか、映画のメーキング写真も掲載。また、ヤン・シュヴァンクマイエル本人による書き下ろしエッセー「蒐集物の陳列室」、「触角についての総括」、映画の美術を担当しているエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーの文学作品も収録。
さらに、スタニスラフ・ウルヴェルの映画論が翻訳されているほか、シュヴァンクマイエル夫妻の創作の背景にある1920年代以降のアヴァンギャルド運動や社会背景の解説は、チェコ(スロヴァキア)文化史の数少ない概説と言えるでしょう。

  シュヴァンクマイエル展を観てきた友達のとなえさんから贈ってもらいました。まさかこんなに早く眼にすることはないだろうと思っていた図録を眺められて、感謝感激。本当にありがとう!!

chicket  もったいなくて、まだチラチラとしか見てませんが、とてもいいです。
 他の国内で発行されている作品集(関連リンク参照)と比べると、『シュヴァンク=マイヤー百科事典』『大冒険物語』や一部コラージュはダブっていますが、概略6割くらいは本に初めて収録されたもののようです(ザッと観ただけなので、信頼性30%(^^;))。ただチェコで昨年開催された夫妻展『Jidlo』(FOOD)の図録とは、シュールリアリスム的な絵(ヤンとエヴァ)がかなりダブっています。オブジェもダブっていますが、撮影のアングルが違うので見比べてみるのも面白いです。

 特に国内刊行の本であまり掲載されていなかったこのヤンのシュールリアリスムの絵がなかなか興味深い。今までの映画、オブジェ、コラージュとかなり肌合いの違うものに感じられるが、皆さん、いかがですか? これらの絵は年代不明になっていますが、いつの作品か非常に気になるところです。
 メディアム・ドローイングという手法の絵だそうだけれど、これに関するヤンエヴァのコメントが記載されているがなかなか興味深い。オートマティスム・ドローイングとも書かれていて、瞑想状態で手が自分の意思と分かれて描き出したものということらしい。割とどこかで観たようなタッチの絵もこの手法のものとして紹介されているが、下の4点はとにかくインパクト大。色合いといい形態といい鬼気迫るものがあり、凄い。ますますこの実物を観るためにも葉山へ出向きたくなったのでした。
GAUDIA02

◆関連リンク
・ヤン・シュヴァンクマイエル,エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー著, 籾山 昌夫編纂
 『GAUDIA―造形と映像の魔術師シュヴァンクマイエル幻想の古都プラハから』(Amazon)
神奈川県立近代美術館:開催中の展覧会
 造形と映像の魔術師 シュヴァンクマイエル展 幻想の古都プラハから

 開催 9/10-11/6。
・レセプションでのシュヴァンクマイエルと柳下毅一郎氏のツーショット
Salon de Blancoさんの「Svankmajer展でシュヴァンクマイエルに会う
 これはうらやましいです!
・チェコ総合情報誌CUKR[ツックル]編集日記さんのレセプションパーティーレポート  Diary of Caviargirlさんの「葉山とシュヴァンクマイエル
レセプションに参加された方のレポートは他にもいろいろあります。 
ヤンの食卓bbs シュヴァンクマイエル展のレポート有。
新作『ルナシー』

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コメント

 担当者様、こんばんは。

 今朝、私もネットの関連サイトでこの訃報に触れて、残念な気持ちでいっぱいです。

 もし神奈川県立近代美術館さんから展示会に関係して、ヤン・シュヴァンクマイエル氏にお悔やみのご連絡をされることがありましたら、日本でもいくつものサイトで訃報に対して御冥福を祈る言葉が書き込まれていることをお伝えいただけないでしょうか。

 本当に65歳という年齢は若すぎます。残念でなりません。

投稿: BP | 2005.10.23 00:06

エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーさんが、10月20日に急逝されました。心から哀悼の意を表します。

投稿: 担当者 | 2005.10.22 19:48

 担当者@神奈川県立近代美術館さん、はじめまして。たいへん貴重なコメントをいただき、ありがとうございます。

 展示に際して、プラハの「フード」展の雰囲気を再現されようとした点、作品に対する深い愛情が感じられて感銘しました。

 昨年プラハを訪れる機会がありました。残念ながら「フード」展は見られませんでしたが、是非葉山へうかがって、頭の中にプラハの街をイメージしながらじっくり作品を鑑賞させていただきたいと思います。

 「プラハの春」と『シュヴァンク=マイヤー百科事典』との関係もたいへん興味深く読ませていただきました。こうした背景を想起しながら作品と対峙し、われわれは何を読み解くべきなのでしょう。

 美術作品を観る価値のひとつは、その作品をじっと眺めて、作家が描いた時の頭の中のイメージを自分の中に再現し、その感性に身をまかせてみることだと思っています。想像しきれないのですが、プラハでの弾圧の中でふたりの作家が何を感じていたのか、それをそれこそ、キャンパスの皺などの生々しい部分を観ながら想起してみたいと思っています。

 そこで浮かび上がるイメージが作品そのものよりも貴重な何ものかだと思ったりもしています。

 本当に素晴らしいコメント、ありがとうございました。

投稿: BP | 2005.09.26 23:28

こんにちは。
サイトへのご掲載、ありがとうございます。今回の出版は「展覧会図録」であり、当然のことながら、内容が展覧会と直結しています。『シュヴァンク=マイヤー百科事典』を例に挙げましょう。このコラージュ連作の中の「植物学」と「動物学」は、プラハの「フード」展においては、縦横に組まれた16点×2組の構成になっていました。この内、日本には<鳥の頭>を含む20点が送られてきたため、プラハでの雰囲気をなるべく再現しようと試み、縦横の9点×2組という構成をとりました。葉山の展覧会では、この図録の構成そのままに18点を展示しています。この組の横に映画『自然の歴史』を投影することによって、その音楽に合わせた早い映像展開と、あたかもひとつのインスタレーションのように組まれた造形作品とを関連付けようという意図です。ですから、図版の組合せ方そのものも、楽しんでいただけるのではないでしょうか。葉山の会場では、限れらた作品で「フード」展での――そもそも、プラハの街の風土の――密な雰囲気を再現するために、9点組みの間に「不連続解剖学」を挿し込み、その上に<鳥の頭>、シュヴァンクマイエルさんの言葉を冠し、さらに、その壁の前にオブジェを並べることで、想像力によって創られ、『シュヴァンク=マイヤー百科事典』に収められたもうひつの世界をできる限り再現しようと試みました。
今回、このコラージュ連作が1972年からではなく、1971年から制作が始められていたらしいことが判りました。「プラハの春」が挫折し、1年間オーストリアに滞在して、1969年にプラハに戻ってきた後、シュヴァンクマイエル夫妻はチェコスロヴァキアのシュルレアリスト・グループに参加しましたが、その後まもなく、言論統制が厳しくなる中で、この想像力によるもうひとつの世界の構築が始まったということになります。
是非、会場に足をお運びいただき、シュヴァンクマイエルさんとシュヴァンクマイエロヴァーさんの作品を直にご覧いただきたいと思います。

投稿: 担当者 | 2005.09.26 13:11

 となえさん、こんばんは。

 改めて、図録、ありがとうございます。

>>望月峯太郎の「座敷女」に出て来た絵を想起させます。

 僕は掲載した絵から、岩明均『寄生獣』を想いだしていました。今度のシュヴァンクマイエル『ルナシー』でこの絵のような凶暴さが出てきたら、今までとはまた違った迫力が出るかもしれないですね。来年が楽しみ。

投稿: BP | 2005.09.25 22:12

こんにちは。
喜んで頂けたようで何よりです。
それにしても、改めてメディウムドローイングの
神経症的鬱な雰囲気はインパクトあり過ぎだなあ
と…。
望月峯太郎の「座敷女」に出て来た絵を想起させ
ます。

投稿: となえ | 2005.09.25 18:24

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