■日本のアニメーターの賃金
浜野保樹氏『日本発のマンガ・アニメの行方』015
「日本のアニメーターは、どれほど貧しいか」(Hotwired)
実態は知らなかったのですが、本当に劣悪な環境にあるようです。
政府がアニメを芸術として、産業として、本当に振興していく気があるなら真剣に考えてほしいものです(税金がそのように使われるなら、増税も許す、、(^^;))。浜野保樹氏がこうした文章を書かれる活動が実を結んでいくのを期待したいです。ささやかながらこのBlogでできることがあれば協力したいと思います。
以下は要旨(特に数字部分は誤解があるといけないので、原文を読んでみてください)
◆日本には500人前後いると言われている専業のアニメーターの低賃金は衆知
◆社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)まとめ
労働時間は1日平均10.2時間、月間労働時間は推計250時間
平均年収 100万円未満26.8%、100万円以上200万円未満19.6%
200万円以上300万円未満18.6%
うち動画 出来高払いが8割で、1枚あたり平均186.9円
年収は100万円未満73.7%
◆映画演劇関連産業労組共闘会議04年11/10「要望書」
(1) 新人アニメーター最低(保障)賃金 月額124,960円
(2) アニメーター モデル賃金
原画 1カット3500円×月40カット+月保障7万円=月額210,000円
動画 一枚250円×月450枚+月保障5万円=月額162,500円
◆ハリウッドでは動画の新人の時給約2500円で、日本の組合の要望額、月額124,960円を割ると50時間、アメリカでの週給がほとんど日本の月給
※BP所見
上記要望額ですらハリウッドの約1/4。芸団協まとめの数字から、実態は1/8以下。どうやって生活されているのでしょうか??
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コメント
>>あらゆる背景や立場(略)をナシにして、ただアニメーターの改善要求に賛同するという一点で声を集めるとかでき
>>ないもんですかね。
どうなんでしょう。具体的な提案が何かないと、なかなか難しいかもしれないですね。誰に何を要求するか設定できればいいのかもしれませんが、、、。
ひとつこの問題で聞いてみたいのは、宮崎駿氏が自社以外の状況について、今現在、どう思っているのか?ということ。きっと宮崎氏ならこの状況に憤りを持っていると思います。
たとえば宮崎氏がアニメータの最低賃金保証について業界に提言し、もし認められないなら今後一切作品を作らない、と言い出したらどうでしょう。これがどの程度の効力を業界にもたらすか、、、。
それにしてもこうやって取り組むことが結果的には業界の弱体化を招く危険はあります。それか外国制作への拍車がかかるだけになったり。
やはり業界が潤い、アニメータへ還元されるビジネスモデルを作り出す活動の方が僕は有効だと思います。とにかくアニメ立国を発展させるには、自然とお金が回っていく構造の構築は必須と思います。
投稿: BP | 2006.01.30 23:48
テレビ局によるアニメ買取価格の異常な安さは手塚治虫に始まるそうです。
秋田孝宏『「コマ」から「フィルム」へ マンガとマンガ映画』によると、彼は虫プロのアニメを売るときに、自分のマンガの収入をあてこんで(マンガの収入を社員の給料その他にして)ダンピングを行い、それが現在まで至るアニメの不当な安さの原因になったとか。
アニメ「産業」が巨大化してるのに、労働状況が改善されないのはやはり構造的不当があると思われますが。新構造を求めるのも一手ですが、旧構造の偏りを是正するのも一手でしょう。
検索で探してみるとアニメ業界の待遇改善の声がないわけではないのですが、ネットの常というか喧嘩が始まって立ち消えていました。
あらゆる背景や立場(たとえば最低賃金要求をするのは左翼だとか労組はアカだとか)をナシにして、ただアニメーターの改善要求に賛同するという一点で声を集めるとかできないもんですかね。
昔あった「うる星やつら」復活希望署名よりはるかに有意義だと思いますが。ちなみにこの署名により「うる星やつら」は映画の続編が作られました。
投稿: | 2006.01.28 02:43
巡回のものさん、こんばんは。
アニメータの更なる悲劇的実状レポート、ありがとうございます。
>>その結果、アニメ製造業の裾野が現象することで、質の低下が顕著になることと、
>>韓国・中国などの技術的キャッチアップにより、長期的には日本のアニメ産業は一
>>部を除き、滅亡・・・
これはアニメータばかりの問題ではなく製造業全般の問題でもありますが、特に元々厳しい作画の世界では顕著なのでしょうね。
うちの会社(非アニメ)でも既に中国より賃金が安く労働レベルの高いベトナムとかへの進出の話も聞こえてきます。
国内はアニメも、企画とかシナリオとか設定とか演出とか、労働集約型でない付加価値の高いところへシフトしていくのかも。
>>アニメーターにお金が流れる仕組みをつくることが、その未来を回避できるのでし
>>ょう。
本当は原画は、もっともキーになるので、付加価値が高いはず。それを労働集約型で外国へもって行くと、まさに魂がなくなります。やっぱ原画マンの復興運動が重要。
こんな凄い原画マンがこんなシーンを描いた、という情報の流通と、その作画シーンの有料ネット放送化(Google Video?)、もしくはCM付きサイトでの無料ストリーミング(GYAO?)。こういう企画を立ち上げることじゃないでしょうか。IT企業はコンテンツを欲しているはずだ。
株価があがって資本を持ったはずのI.Gとかにこうした企画をやってほしいものです。沖浦作画シーンをGoogle VideoかiTUNEストアみたいなものを作って売るとかいいと思うけど、、、。
投稿: BP | 2006.01.17 23:47
BPさんコメントありがとうございました。
ところで、いまさらですが、どうも初めましてこんにわ。
補足なのですが、元アニメーターの彼の話では
「社長が営業して仕事を取ってくるが、安い仕事しかない現状では、給与は月数万円が精一杯だ」(社会保障費税金等抜かれたあと、手取り6万~8万前後と聞いた気がします。)
「工賃は中国などに拠点を持つ会社と比較されるので、これ以上の単価は取れない。」
「1日の労働時間は最低必ず10時間はあり、12~16時間以上など納期にあわせて幅がある。同様に1ヶ月の労働日数も納期にあわせるため、休みがない月もある。」
冗談で「まるでフィリピンのようだ」と私が言うと、「いや、フィリピン以上だよ」と半ば真剣に言ってられました。
中国では美術大学卒業の絵描きの方が2万円程度で雇用可能だそうです。そのような方を雇用する企業との競争下で受注するには、日本語が通じることや、距離的なアドバンテージだけでは上記のような給与になるのでしょう。
おそらく、やがて彼の仕事である、低工賃で作れる製品は日本から滅びてしまう。
そして、一部の利益の上げられる製品(ジブリなど)のみ日本で製造できる。
その結果、アニメ製造業の裾野が現象することで、質の低下が顕著になることと、韓国・中国などの技術的キャッチアップにより、長期的には日本のアニメ産業は一部を除き、滅亡・・・
といったシナリオが頭に浮かびます。BPさんの言われるアニメーターにお金が流れる仕組みをつくることが、その未来を回避できるのでしょう。
でも、具体的にどうしたらよいかは判りませんが。
もっとも商業的低工賃アニメ製造が滅びるだけで、非商業の同人活動で多額の利益をあげるサークルが存在するといった現状では、そう悲観することもないのでしょうか。
数年前東京都の石原都知事が東京を国際的なアニメ製造都市にする(?)ような事を述べられてた気がしますが、きっと気のせいなのです。
投稿: 巡回のもの | 2006.01.16 12:28
巡回のものさん、はじめまして。コメント、ありがとうございます。
>> 1ヶ月28日以上1日10時間以上の労働で、月に手取り10万円未満だったので、
>>貯金を食いつぶして3年頑張ったそうです。
ぎゃー、280時間/月の労働ですか。それで10万円いかないというのはとんでもない仕事ですね(時給357円未満)。それでも頑張れるのはアニメの持つ魔力としかいいようがない。
この情熱にみあう金銭を確保するには、マーチャンダイジングで設けているアニメ製作会社以外の高給取りの給料をアニメータへ持ってこれる仕組みにしていくしかないんでしょうね。
あとアニメータ個人の芸術性をもっと認めて、あるアニメータのみのシーンを集めたDVDで収益を得られる構造を作るとか、、、、あ、でもこれだとスターアニメータにお金が集中するだけか、、、。難しいですね。
ウェブのコンテンツとしてアニメータの担当シーンごとのアーカイブを作って、それに課金してアニメータごとに金を落とすビジネスモデルも考えられますね。僕は「本田雄」とか「沖浦啓之」とかのシーンだったら有料でもしっかり観たいです。あ、こんなアーカイブ、凄くほしい。、、、著作権のしがらみがあって権利関係を整理するのに労力がかかりそうだけど、誰かやってくんないかな??
投稿: BP | 2006.01.11 21:50
NHK教育等へ向けたアニメを作る社員10人前後のところでの話です。
1ヶ月28日以上1日10時間以上の労働で、月に手取り10万円未満だったので、貯金を食いつぶして3年頑張ったそうです。
仕送り、貯金が無いのはもちろん、生活が立ちゆかなくなり、体の調子もわるくなったので、退社し、フリーターで月に25万円以上かせいでられました。
でも、またアニメに戻りたい。だから稼いでいるとのことでした。
その方は20台後半、専門学校卒業後にアニメ制作会社へ入社したとのこと。
投稿: 巡回のもの | 2006.01.11 15:03