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2006年1月

2006.01.31

■サイモン・スミス監督 『シュレック 4-D アドベンチャー』

Shrek_3D
シュレック 4-D アドベンチャー(TM)/アトラクション/USJ Shrek's 4-D Adventure, 2003

 ドリームワークスのアカデミー賞®受賞映画「シュレック®」から誕生したシュレック 4-D アドベンチャー™。オリジナル3-Dムービーに新次元の特殊効果をプラスして、あなたを冒険のまっただ中へ。オグリビジョンの驚くべき映像で、シートに座ったまま、ストーリーを直接肌で感じることができます。
 ファークアード卿を迎え撃ちながら、火を噴くドラゴンとの空中戦や、約300mもの滝を一気に滑り落ちるスリルの数々を体験する大冒険に巻き込まれる。

 先週末にユニバーサルスタジオジャパンへ行ってきました。
 アトラクションで立体映像を体感してきたので、何回かに分けて、いくつかレポートします。まずは感動の「シネマ4D」 。これ、3D映画ファンなら絶対お薦め、3Dマニアならこれのために大阪まで行っても損はない(^^;)。ひさびさに立体映像で感動しました(去年の愛知万博では残念ながらこの感動がなかった)。

 「セサミストリート 4―D ムービーマジック」と「シュレック 4-D アドベンチャー」という偏光方式のカラー3D映画+触覚トランスデューサー、空気推進器、水噴射ノジュール、匂いといった特殊効果による4次元(どこがや(^^))の体感アトラクション。午後1時くらい(日によって違う)を境に、セサミとシュレックが交替で上映される。

 で、『シュレック』。
 ストーリーは映画の1本目の続編。そして映像はまさに3D-CGの世界に入り込んだような臨場感。CGもなかなかなので、まさに近くにシュレックとロバとドラゴンの質感がリアルに迫ってくる。
 そしてスピーディなドラゴンの飛翔シーンと敵ドラゴンとの対決。火球やヤリがまさにわが身に襲い掛かる。画面は70mm映画らしいが、その鮮明度はDLPのディジタルハイビジョンプロジェクタ並み。偏光メガネ方式なので、違和感のないカラーが素晴らしい。うーん、こういうのが観たかった。決して赤青メガネのアナグリフ方式では得られない実物感。『スパイキッズ3D』や『マグマガールとシャークボーイ』ではこのクリアな立体感は期待できない。

 そしてクライマックスで素晴らしかったのが、300mの巨大な瀑布映像。
 ここは『ロード・オブ・ザ・リング』の雄大な滝のシーンをはるかに凌駕した迫力の映像になっている。たぶん滝のショットはCGではなく実写(と思ったのだが、下記関連リンクによればCGのようです)。水面ギリギリのカメラが、飛び散る飛まつとかずっと画面の奥まで瀑布全体を、凄い臨場感で映し出す。そこを落下するシュレックたちと僕ら観客。手に汗握る度合いは、ピーター・ジャクソン版『キング・コング』の恐竜チェイスシーンに匹敵。しかもこれが立体映像なのだ。立体マニアならこの感動をわかってもらえると思う、、、。しかしウェブをさっきザッとググッたけれど、同好の士が見つからず、、。世の中って3Dファンは稀なのか!!??確かにうちの家族はシネマ4Dよりライド型の『スパイダーマン』に興奮してました。

◆関連リンク
・米国ユニバーサルスタジオのシュレック4D HP ハリウッド オーランド
 予告編も観えるけれど、画像が荒いのでお薦めしません。
Shrek 4-D (2003)(IMDb)
 Director Simon J. Smith等スタッフリスト。この監督、『シュレック』でヘッドオブレイアウト担当。
特殊映像博物館さんの立体映像作品リストより

河の流れや滝など、水の描写が素晴らしい。流体シミュレーション技術でCG業界のトップを走る、同社ならではの映像である。

Shrek 3D(米国 公式HP)
 アメリカ等で発売されているこのムービーのDVD。家庭では簡単に偏光版方式の上映は出来ないので(2台の映写機か液晶シャッターメガネが必要になる)、赤青メガネのアナグリフ方式。これでは迫力はおそらく1/1000でしょう。
・ロシアのサイトVirtual & Really.Ru :: Новости Really.Ruに上のDVDからスクリーンショットしたステレオ画像があります。少しだけ雰囲気を味わってください。赤青メガネを用意して、下記をクリックして見てください。Shrek_3D_stereo
Screen shots collection of stereo movie "SHREK 3D" ←もっと観たい人はここ。

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2006.01.27

■レイモンド・カーヴァー Raymond Carver ファースト・インプレッション

carver
 今年になってから、ふと図書館で手にとってレイモンド・カーヴァーを読みはじめた。読んだ順にまずは簡単にファーストインプレッション。

 うちの町の図書館にカーヴァーは『必要になったら電話をかけて』が一冊あるきり。カーヴァの死後に見つかった未発表の原稿からなる短編集。凄く読みやすい。静かなトーンの小説群。でもゴツゴツと何か引っかかる感覚。(しまった、こういう特殊な一冊から読むべきでなかった。)

 ということで、気になってきて村上春樹が選んだ傑作選『カーヴァーズ・ダズン』を読む。
 これは、どれもレベルが高い。「でぶ」、「ダンスしないか?」、「足もとに流れる深い川」、そして「大聖堂」。どれも底流でほのめかされる何かが響いてくる感覚。書かれないことで予感させる向こう側。

 んで、次に読んだのが、最近再刊された初期短編集『頼むから静かにしてくれ Ⅰ』。
 ただの日常の描写なのにどこかで齟齬する現実。書かれないことで訴えてくる何ものかが全ての短編にある。一編づつ、ジワジワと自分の中にそれが堆積していく。

 そして後半の「アラスカに何があるというのか?」と「ナイト・スクール」を読んだところで、カーヴァー作品によって無意識領域に堆積していたものがグワッーと浮き上がってくる。背筋がゾクゾクする。これがカーヴァーの凄さなんだと(まずは第一段階だろうけど)わかった気がする。この作家、本当に凄いです。

 白日にさらし描写されるよりもそこへ至る過程のみを淡々と見せられ、その先を想像にまかされることほど、人間の想像力を刺激するものはないのかもしれない。想像力ほど怖いものはない。そんな本質を直撃する短編を(それだけを)なんでもない日常の物語としてずっと書き続けていたカーヴァーの暗黒を思う。直視することは決してないのだろうけれど、その淵からのぞきこんだものの深さに慄然とする。凄いイメージをみせてもらいました。

◆「ナイト・スクール」より。

 その窓の男は部屋の中をじっと覗き込んでいる。それから網戸をこじ開けにかかる。夢を見ている男は身動きすることができない。彼は悲鳴をあげたい。でも息を吸い込むことができない。しかしそのとき雲が切れて、月が姿を見せる。そして彼は外に立っている男が誰かを見分けることができた。それは彼の一番の友達だった。夢を見ている男の一番の親友、でもその悪夢を見ている人間にとってはまったくの知らない男だ。

◆P.S.
・カーヴァーを全て訳している村上春樹も作品のタッチはとても近い。だけれどももしかしたらカーヴァーのは桁が違うレベルなのかも。
・あと村上春樹の『アフターダーク』は、何故この作家がこういう本を書いたのかな?と不思議だったけれど、カーヴァーをそのミッシングリングにあててみると、凄くよくわかる気がした。日常に現われた裂け目をこの作家は覗き込んでみたかったのでしょう、きっと。

『必要になったら電話をかけて』 『Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選』
『頼むから静かにしてくれ〈1〉』 (Amazon)

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2006.01.26

■ジョン・ラセターがディズニーランドのアトラクションを制作

pixar_head_officeCNN.co.jp : 米ディズニーがピクサー買収

ピクサー株の50・6%を持つ米アップルコンピュータ最高経営責任者(CEO)のスティーブ・ジョブズ氏は、ディズニー最大の個人株主となり、ディズニーの取締役に就任する。

ジョン・ラセター氏は、両社のアニメスタジオ合併に伴い制作現場の最高責任者に就任し、テーマパークのアトラクションの制作にも関与する。 (略)
「カーズ」後のピクサー作品は未発表だが、パリのレストランに住みついているネズミが主人公の新作が07年公開とみられ、ヒット作の続編第3弾「トイ・ストーリー3」の制作も進行中とされる。

 なんかインパクトあります、このニュース。
 ジョブズがディズニーをどうカジ取りするかも楽しみですが、ラセター氏が作るディズニーアトラクションというのが楽しそう。『トイ・ストーリー』を皮切りに、何かやってくれそうな予感。 3D-CGを武器に立体映像空間とアトラクションを高次元で融合したようなものを期待。
 ラセターといえば、宮崎マニア。いつかシンデレラ城がカリオストロの城に替わり、ランド内をハウルの城が動き回る日が来るかも。

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■雑誌 CUT (カット) -岩井俊二が語る、岩井俊二の10本

Cut 06.2月号 特集:CUTが選ぶ50人2006年は彼らだ!!(rockin'on刊)
(Amazon)

特集:ヴェンダースが語る、ヴェンダースの10本/岩井俊二が語る、岩井俊二の10本
脚本家サム・シェパードと20年ぶりにタッグを組んだ新作『アメリカ,家族のいる風景』で「復活」との呼び声高いヴィム・ヴェンダース。そして、ついに初期の伝説的なTVドラマ作品集がDVDでリリースされる岩井俊二。 ’80年代と’90年代をそれぞれに駆け抜けてきた監督たちの唯一無比の軌跡を、彼ら自身の言葉で振り返る特別企画!

 本屋で見かけて立ち読みしました。
 岩井俊二の特集の雑誌って、ひさびさに見た気がする。『initial イニシャル ~岩井俊二初期作品集~』が出るのに合わせて、過去の自作について語っている。『FRIED DRAGON FISH』での浅野忠信の持っていたインパクトとその映像の撮り方とか、興味深いコメントが出ています。ファンには嬉しい記事。

◆関連リンク
 最近、こんなのも出ているのですね。ラジオ「円都通信」から、というですが、最近、聴いていないのでよく知りません。番組のサイトはここ
・岩井俊二プロデュース 戯作通信 ラジオドラマ (1万枚限定生産) [Limited Edition]
『J.C』 『朝日の影で朝食を(仮)』 『カルシウム (仮) 』 
戯作通信サイト

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2006.01.25

■新刊メモ『さまよえる天使』『絵画の準備を!』『爆発道場』
   『モンティ・パイソン正伝』『プロセス・アイ』

       

柾 悟郎著『さまよえる天使』
 ひさしぶりにこの作家の本を見かけて嬉しかったので、メモメモ。実はまだ買ってないので、まさに備忘録として。

松浦 寿夫著『絵画の準備を!』

■いとうせいこう氏■ 語られるべきすべての絵画の、言語形式での完全アーカイブ。このテキスト群はまるで百科全書のように一生涯参照可能だ。

 なんか凄い。たぶん知ってる人にはもの凄く有名な本なのでしょう。図書館で借りようと思っています。

福井晴敏×樋口真嗣『爆発道場』

 作家・福井晴敏と、映画監督・樋口真嗣が、古今東西の「爆発映画」(=特撮映画)を語っている本。映像好きには「爆発」と言えば、アニメータ「金田伊功」がまず思い浮かぶのだけれど(??)、樋口真嗣の語る金田アニメ評って読んでみたい。この本に書いてあるかはまだ未確認。

グレアム・チャップマン, ジョン・クリーズ, テリー・ギリアム, エリック・アイドル, テリー・ジョーンズ, マイケル・ペイリン, ボブ・マッケイブ著『モンティ・パイソン正伝』

伝説のコメディ・グループ、モンティ・パイソンのメンバーが、はじめて明かす「モンティ・パイソンによるモンティ・パイソンのすべて」。各自の生い立ちから学生生活、テレビ界での活躍とグループの結成秘話、パイソンズとして活動中のひみつ日記、解散後の各自の言い分から未来の予定(?)など、聞きたくないことまで含めてパイソンズ自身がこれでもかと語る。未公開のプライベート写真や図版約200点を収録した、モンティ・パイソン最新作。

 モンティ・パイソン本もいくつか出ているけれど、これは正伝だそうです。これも図書館で借りたいので、メモメモ。

茂木 健一郎『プロセス・アイ』
 なんと初の小説刊行とのこと。ちょっとびっくりしましたが、考えてみれば、クオリアの問題意識って、小説の世界に近い部分があったので、出るべくして出たということなのでしょうか。氏のクオリア日記によれば、山田正紀氏推薦とのことです。『神狩り 2 リッパー』で「クオリア」をキーワードにしていたので、推薦文を依頼されたのでしょうか??

12章を読んで新幹線で泣いた。この「物語」には風が吹いている。その風は世界を吹き抜けてぼくのクオリアを優しく震わせる。
山田正紀

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   『モンティ・パイソン正伝』『プロセス・アイ』"

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2006.01.23

■工場萌えリンク

Blog 工場萌えな日々さん

 どこかの雑誌で立ち読みしてキーワードだけ覚えていたので、検索してみました。主に化け学系の工場の風景がいい味出してますね。素晴らしい写真をお楽しみ下さい。

 人は『ブレードランナー』等(『ウルトラマン』?)の映像の記憶からこうした風景に萌えるのか、それとも現代人のなんらかの精神作用からそのデッドテックな風景に萌えるのか??興味のあるところです。
 ちなみに僕は、名古屋の港区のやはり化学工場群の風景が好きです。ケミカルプラントというところが『ブレードランナー』説を思い起こさせる根拠かな。

 以下、工場写真の素晴らしいサイトをいくつかリンクして見ました。

モカモカパラダイス moca's eye モカの目さんの工場写真
 川崎のコンビナートの夜景が素晴らしい。

立体交差中心 工場写真 化学・電力 製鋼・鉄鋼・セメント
 工場より、道路の立体交差萌えの写真

東京周辺の夜景

夜景五十三次一覧 工場だけというわけではないですが、、、。

夜景Blog と 夜景壁紙.com工場・埠頭

・グーグル検索 plant night view
 この写真は海外サイトのものです。タンクのロボット的な画像が痺れます。
plant_night_view

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2006.01.22

■町山智浩著 『ブレードランナーの未来世紀』

Bladerunner_no_mirai〈映画の見方〉がわかる本 
80年代アメリカ映画カルトムービー篇 
ブレードランナーの未来世紀 (Amazon)

 町山智浩氏の本を実は初めて購入。自分の好きな映画についてのレビュウとエピソードを読むのが元々好きなのだけれど、この本はその両面で大満足。知らないエピソードや、新たな切り口の監督論が楽しめます。

 監督ごとに紹介されているこの本を読んで思い出したのが、いにしえのSF雑誌『奇想天外』に連載されていた中子真治氏の<新進主流派SF映画作家論>。これは僕の学生時代の映画のバイブルでした。当時気鋭の新進映画監督であったジョン・カーペンター、ダン・オバノン、S・スピルバーグ他の作家論と作品論を、僕たちが観たこともない映画のタイトルを挙げて紹介した評論で、ワクワクする映画論になっていました。(記憶で書いています。実家の本棚を調べないと全部の監督を挙げられません。ネットにもこの評論の情報がないのが残念。どこかの出版社で是非単行本化してほしいものです)。
 まさにこの本の紹介の仕方が、中子氏の映画論を彷彿とさせて、もしかして町山氏もこの連載のことが頭にあって、こういう構成にされたのかと邪推。各作品を徹底して調べた上で、各監督にインタビューして確認していく丁寧な仕事が着実に実った力作。あと80年代をハリウッドが監督中心からプロデューサ中心の映画作りに動いた時代で、これら監督はアウトサイダーだったという年代論も興味深い。次の本、『80年代アメリカ映画ブロックバスター篇』で描かれるこのプロデューサの時代も楽しみに待ちたいと思います。

◆で、本書の各監督の章について、ちょっとだけ自分の思い出話等メモを。 。

第1章 デヴィッド・クローネンバーグ『ビデオドローム』―メディア・セックス革命
第2章 ジョー・ダンテ『グレムリン』―テレビの国からきたアナーキスト
第3章 ジェームズ・キャメロン『ターミネーター』―猛き聖母に捧ぐ
第4章 テリー・ギリアム『未来世紀ブラジル』―1984年のドン・キホーテ
第5章 オリヴァー・ストーン『プラトーン』―Lovely Fuckin’War!
第6章 デヴィッド・リンチ『ブルーベルベット』―スモール・タウンの乱歩
第7章 ポール・ヴァーホーヴェン『ロボコップ』―パッション・オブ・アンチ・クライスト
第8章 リドリー・スコット『ブレードランナー』―ポストモダンの荒野の決闘者

 クローネンバーグについては、ダビングを重ねてボケた映像になっていた『ビデオドローム』を観たときの事をひさびさに鮮明に思い出した。町山氏が書いている「今、見直すとすんなり理解できるので驚いた」というクローネンバーグの最近の言葉は実感しますね。

 ジョー・ダンテの『グレムリン』1と2は、僕には悪ふざけな映画にしか観えていなかったのだけれど、このような解説を読むと、ダンテの恐ろしいまでのカトゥーンへのこだわりに涙が出ます。僕はダンテは『エクスプローラーズ』がベスト、と思う。

 『未来世紀ブラジル』についてのギリアムの言葉、「体制はテロリストが必要なんだ」。これってまさに現在のアメリカを考えるとぞっとしますね。今こそ、ギリアムに反体制な映画を撮ってもらいたいけれど、『ブラザーズ・グリム』がこけたのでそれどころではないね。

 『プラトーン』のオリヴァー・ストーンの屈折した青春時代と監督になるプロセス、実は知らなかったので、凄く面白く読めた。あとベトナム戦争についての記述とかなかなか凄い。一度この映画見直したい。ストーン「中卒の貧乏人には徴兵をのがれる術はない。貧乏人たちがジャングルで戦っている間、中産階級以上の連中は戦争をテレビで観るだけで、金儲けに忙しかったんだ」。自由の国アメリカが聞いてあきれる。

fish_kit   リンチの『イレイザー・ヘッド』については自分に子供が出来たことがモチーフになっているのは知っていたけれど、結構根が深い。娘のジェニファー・リンチの「あの赤ん坊は間違いなく私」って、当人にはショックでしょうね。あと本書で触れられているリンチのFish Kitはこことかここに写真(右)がある。やはりこういう趣味がある人なんだ。
 で、面白かったのが、リンチが好きな画家フランシス・ベーコンの絵と『ブルー・ベルベット』のシーンの対比についての町山氏の指摘。本書ではモノクロの写真だったのだけれど、どうしてもカラーで観たくて、下記ネットで探して引用。ベーコンのTwo Figuresとの対比です。映像のボケ方に注目。
FrancisBacon_bluevelvet

 次のヴァーホーヴェンについても同じオランダが生んだ画家ヒエロニムス・ボッシュの絵の影響が指摘されていて面白い。ヴァーホーヴェン、あまり好きではないので、ちゃんと作品観てないのだけれど、オランダ時代の作品が凄そう。『危険な愛』とか。

 最後の『ブレードランナー』についてはさすがにエピソード的にはいろいろなところで語りつくされ、あまり新味のあるネタはでてないように思った。でもポスト・モダン言説とウィリアム・ブレイクとかミルトンとかを引用しながら、デッカードとロイの最後の決闘シーンを描いた描写が素晴らしい。

関連リンク
ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
当Blog記事 新刊メモ『ブレードランナーの未来世紀』

◆中子真治関係
Blog版香港中国熱烈歓迎唯我独尊 りえ的日常・非日常@香港 : 中子氏来港、香港TOY巡り
 ネットには既に中子氏ご本人のHPは消えています。このリンク先で近況発見!この中子さんの発言、凄く良いです。

「50代以下は、まだまだ子供だね。やりたいことなんていくらでもできる。
やり直しだってできる。俺なんか、これからだってまだまだ大きなこと
やろうと思ってるよ~。」

中子真治氏 下呂のアプライド美術館と中子真治氏の倉庫
 僕が過去に書いた中子真治氏関連記事。

◆リンチ関係
Francis Bacon Image Gallery
Francis Bacon Image Gallery_Two Figures, 1953
 ベーコンはこのモチーフにこだわりがあったみたいで。
あの「ツインピークス」に続編製作の計画浮上! : ABC(アメリカン・バカコメディ)振興会
LynchNet: The David Lynch Resource

First Photos from Inland Empire! The Canal website has a video clip which features some stills from Inland Empire.

◆ギリアム関係
・ギリアムの中断した映画『ドン・キホーテを殺した男』のメイキング『ロスト・イン・ラマンチャ』(公式HP)。このトップページが秀逸。
キース・フルトン, ルイス・ペペ監督『ロスト・イン・ラマンチャ』(知らなかった。Amazonで買えるんだ。)

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2006.01.18

■NHK BS-hi 『サイボーグ革命 人間とロボットの融合』

サイボーグ革命 ロボットと人間の融合

1月18日(水)20:00~21:50/衛星ハイビジョン
1月21日(土)21:00~22:50/衛星第二
ロボット技術とサイボーグ技術。人間が操作できるロボット技術として、「考えることで動かせる」サイボーグ技術は、究極のヒューマンインターフェース技術と言うことができる。ロボット技術はどこへ向かい、人間はどこへ行くのか。その最前線と未来を伝える。健常者がチップを埋めこみ、人類初の「サイボーグ」になったというケビン・ウォーウィック教授のサイボーグ実験など、未来の文明論も登場する。

 立花隆氏の<サイボーグ>関係のドキュメンタリー。以前放映された「”サイボーグ医療の時代”」(◆関連リンク参照)を観てなかったので、今回が初。(しかも残念ながら後半しか観てません)

 脊椎を損傷された方が脳から直接電極を出してコンピュータを操作するシーンから観始めた。こういう技術の映像はネットでちょこちょこ観ていたけれど、ハイビジョンの解像度によるリアリティがなかなか衝撃的。
 その他、夫妻で電極を腕に埋めコミュニケーションしているケビン・ワーウィック博士とか、指令どおりに無線と電極で動くロボットラットとか、米国防総省のDARPAによる無人ロボット兵器との脳-機械インターフェースだとかの紹介がされた。
 スタジオでは筑波大のパワードスーツ開発者の山海教授とATRの川人光男氏が脳インターフェースについて技術的哲学的倫理的(ニューロエミックス)に立花氏と語っていた。

 総じてSFの想像してきた範囲(ジョン・ヴァーリー、ブルース・スターリングや士郎正宗『攻殻機動隊』を思い出す)に全て入っていて、概念や哲学自体はそれほど新味はない。ただそれが現実の映像として提示されていたり、スタジオでそんなSFをまじめに現在の世界の問題として語っていたりすることは、なかなかのインパクト。既にここまで現代がSFの未来に追いついてきたのか、という感慨。

 あと印象的だったのが、2点。

・川人光男氏発言。アメリカが政府主導で主に軍事領域で侵襲型(物理的に差し込むタイプ)の脳インターフェースをやっているのに対して(予算数百億ドル(!))、日本は民生目的の非侵襲脳活動計測技術(電極を差し込まないでfMRI等で非接触にとらえるタイプ)を進めていく、というコンセプト。これ、なかなか象徴的ですね。僕はその技術が安全なら、脳にプラグインするのもやぶさかではありませんが(それで究極の映像体験ができるなら(^^;))、できればヘッドギアをかぶるぐらいですませたいので、是非、アメリカに先行してほしいと思ってしまった。

・ミグエル・ニコレリス教授発言。ロボットから脳への情報伝達を研究。ロボットの感覚を人間にインターフェイスすることで、いずれ火星へロボットを送り込んで、火星表面を体感したい、とコメント。こういう使い方も是非体験したいものです。脳インターフェースを使ったテレイグジスタンスですね。アールキューブ構想に近いコンセプト。高臨場感のヴァーチャルリアリティ機器で体感させるか、プラグインするかの違いです。立花隆は以前はアールキューブ構想が次代の産業として期待できるといっていたけれど、今回それとの関連はコメントなし。すっかりサイボーグビジネスがロボット産業のビジネスモデルだという認識に代わっているようです。

◆関連リンク
・紹介された関係技術のHPへのリンク集を作ろうと思ったら、既に立花隆氏ご本人のサイト「SCI」にて、立花隆の解説文 関連リンク というのがありました。たいへん興味深いです。
・NHKスペシャル「立花隆が探る”サイボーグ医療の時代”」
 再放送 1月19日(木)20:00~21:50/衛星ハイビジョン 
 ハイビジョン特集 立花隆が語る “サイボーグ”の時代 2本まとめて放送。
  第一回 人体と機械の融合 第二回 脳をどこまで変えるのか
・この番組のリンク集
  1章 脳の信号を利用するサイボーグ技術
  2章 脳は機械に合わせて進化する
  3章  脳が機械で調整される
  4章  脳が全ての機械と直結した
NHKスペシャル補遺
・「東大の産学共同研究センターで人間サイボーグの実験台に立つ
 (shamonさんの「ひねもすのたりの日々」経由)
 立花隆が手に電極をさして自ら実験したレポート。この実感からテレイグジスタンスはリアルに可能だと想像できます。僕も体感してみたい。

 人間の言葉はすべて日常感覚の世界のために作られているのだということがよくわかる。いままでの日常生活で体験したことがない感覚におそわれたとき、人間は言葉を失うのである。(略)
 受容野を刺激すると電気信号が生じる部位に、逆に電極から電気信号を入れてやると、受容野のあたりを触覚刺激されたような感覚が生まれるのである。これが人工触覚の基礎原理なのである。(略)
 突然、手先から腕の肘あたりまでの裏側を人の手で大きくなであげられたような、驚くほどリアルな速い動きをともなった肉体感覚(皮膚感覚)がして。(略)

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2006.01.17

■特殊映像データベース『特殊映像博物館』

特殊映像博物館 作成:大口孝之氏(映像クリエータ/ジャーナリスト)

 このWEBページ、凄い労作で、大画面映像(ジャイアントスクリーン)や立体映像のファンとっては素晴らしいデータベースになっています。
 大口孝之氏は富士通の全天周立体アイマックスCG映像『ユニバース』、NHKスペシャル「生命・40億年はるかな旅」等で有名なクリエーター。ジャーナリストとしても『スター・ログ』の連載「VFX analysis engine」等で活躍されています。僕はこの『ユニバース』の凄さが忘れられず、「究極映像」(吉本隆明『ハイ・イメージ論』より)という名をブログに付けたので、この方の作品にはいつも襟を正してしまいます。

 この特殊映像博物館のコンテンツは下記のようになっています。

立体映像作品リスト
 1952-現在までの緻密なリスト。こんなの他で観たことありません。必見。

立体映像システムの原理
 幅広い各種機材とシステムの紹介。ちなみに、大阪花博『ユニバース2』はIMAX-SOLIDO(アイマックス・ソリッド)というプロジェクターが使われたとか。

ドームスクリーンの歴史
 ドームスクリーンのルーツとして「ルネッサンス・バロック時代の天井画」紹介からはじまり、最新の技術と、ドーム映像作品のリストまで。これも凄い。

ワイド&ジャイアント・スクリーンの歴史
 連続写真装置“Chronophotographe”から、愛知万博のスーパーハイビジョンまで。またまた凄い。

 いずれも写真付きで詳細な解説が読めます。とにかく素晴らしいです。
 このデータベースを前にすると、私の「究極映像研究」はネットの隅っこへ退散するしかありません(^^;)。

◆関連リンク
「超IT社会を疑似体験できる 選りすぐりSF講座」(Smart Woman)というのの講師もされているみたい。
ジャイアントスクリーンのしくみ ローマン・クロイター(『ユニバース2―太陽の響―』監督)

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2006.01.16

■検索エンジンは世界を変えるタイムマシン??
   ジョン・バッテル著『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』 The Search

『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』

 GoogleにはうちのBlogも、お世話になっているので、たまたま図書館で見かけて読んでみた。Google(というか検索エンジン)がなかったら、いろいろなウェブの情報にアクセスするこのようなBlogは運用できなかっただろう。
 本書の中で、マスコミの記事がいつもGoogleに好意的なのは、記者が検索にいつもGoogleを使っているからだ、という記述があるが、まさにその通りかもしれない。僕らのネット生活は検索エンジンなくして成り立たなくなっている。最近はめっきり「お気に入り」も使用しない。整理できていない「お気に入り」よりも、Googleの方が早いからである。

 これだけお世話になっているグーグルの成り立ちと、ビジネスモデルの形成過程が描かれていて興味深く読んだ。以前から疑問だったDECのアルタビスタ:ALTA VISTAが知らないうちに衰退し、Googleにとって変わった理由もわかった。
 あとオーバーチュアのビル・グロスの「ペイドサーチ(キーワード広告)」との関係とか、なかなか興味深い。僕らとしてはグーグルのような優秀な検索エンジンが、ちゃんとビジネスモデルを成立させ進化していってくれるのは非常に有り難い、とまずは思う。(いささかビジネス的に巨大になりすぎている感は否めないが、、、。)

 本書の最終章で著者のジョン・バッテルが将来の検索エンジンについて書いている。ここで興味深かったのが、これから未来では過去の情報のアーカイブとしてネットが当然重要になり、検索エンジンは過去のいつの時点かを指定した上で検索が可能になるのではないか、という記述。つまりグーグルなり検索エンジン自体が膨大なネットの情報を過去のアーカイブとして記録に留め、時間軸を指定して過去のデータを検索できる時代が来るのではないか、というもの。
 それ以上の未来予測はこの本には書かれていないが、、、。以下、こんな想像をしてみた。

◆未来の検索エンジンは改ざんされた歴史を見せるタイムマシン??

 未来の検索エンジンが、時間軸で輪切りにして過去のネット上のデータを提示することが歴史的な意味を持ってくる、という視点がまず思い浮かぶ。こういうコンセプトで考えると、想像力をいたく刺激する。

 いままでの歴史は、歴史学者等が過去の文献を調査して記述していたわけであるが、人工知能を進化させるていくと、これからは検索エンジンがその役割を担う可能性がある、ということ。たとえば「グーグル 2010年」と検索すると、検索エンジンは2010年時点でのグーグルについてアーカイブにあるネットの情報を調べ、未来のネットワーカーにそのサマリーを2010年時点のアーカイブ内のウェブ各所の情報と合わせて提示する。ここでサマリーと書いたのは、ただ無秩序に提示したのでは、ただでさえ膨大なネットデータなので、人間にはなんらかの処理をした上でないと、既に扱えないボリュウムになっていると仮定したからだ。

 個人の歴史で言うと、自分の祖先の例えば「野比のびた」を検索すると、その人の情報はディジタルでネットにあげられたものは全て検索エンジンのアーカイブから取り出せる。そうなった時は、それが本物かどうか誰が証明するのだろう。そこから考えると、歴史というのを検索エンジンの持つ過去のデータとそれを処理するアルゴリズムが支配できる時代がくるかもしれない。もちろん恣意的な改ざんも可能。なので、いずれ過去のデータのアーカイブを、どう公平性を保って管理するかということが重要な焦点になるかもしれない。

 (もし最終戦争等で死滅していなければ)1万年後に、人類のディジタルデータの分量はどのくらいになっているのだろうか。それはそれはもの凄いものではないか。だって今こうして書いているような与太話のブログデータまで入れたら、人間の生み出している(垂れ流しいる)データは膨大だ。過去の文献の既に何億倍ものデータがインターネット上のデータとして発生しているのではないか。

 1万年後に、2006年というのはウェブの超古代として扱われているのだろう。古代のデータをみて我々の子孫はどう思うのだろうか。僕の子孫は祖先の書いた「究極映像研究所」のデータから、はるかなおじいちゃんが何を考えていたかを(文章自体は今の状態からデータとして全く劣化することなく)、読み取るようなこともあるのだろう、、、。その時にグーグルかどうかは分からないが、人工知能を持った検索エンジンは、それら莫大なデータをサマリーして(順位付けして)、どう歴史を表現(改ざん?)するのだろう。こうして考えると、検索エンジンというのは、未来において、場合によっては恣意的なディジタルデータのタイムマシンの機能も持つことになる。

 ディジタル時代のスタートによって、人類の歴史というのがある意味劣化しないデータとして残る時代が到来したわけである。ディジタル歴史家、ディジタル古代史家は1万年前のディジタルデータをどう発掘するのだろう。未来の歴史家の視点で、インターネットのデータと検索エンジンを考えると、また一つ別の新しいビジネスモデルが見えてくるのかもしれない。政治的な歴史改ざんの仕組みもここから構築される可能性があり、なんか怖かったりもする。本書のタイトルについて、著者もそんなことまで言及していないが、真の意味で「グーグルが世界を変え」るのは、未来においてなのかもしれない。それは誰もいまだかって想像したことのない、まさに人工知能によって管理された過去をいつでも覗ける未来なのである。

※ついダラダラと書いてしまいましたが、論旨がしっかりしてないですね。少し頭のほとぼりが冷めたら、いずれ整理して書き直してみます。まずは、陳謝!!

◆関連リンク
・ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンの「バックラブ」のことを書いた検束エンジンのキーになる論文について、本書はhttp://www.db.edu/~backrub/google.htmlにあると書いているがリンク先が現在不明。興味のある方は、ここを見ると良いでしょう。
・本書に関するジョン・バッテルのBlogが、後書きではbattllemedia.com/thesearchにあると記されていますが、これも不明。
・本書のあらすじは、NV-CLUB ONLINE参照。
『検索エンジン戦争 インターネットの覇権をめぐる興亡と争奪戦の物語』 (Amazon)

 ヤフー、グーグル、MSNなど、検索エンジンの攻防を描いた本。中でも、グーグルが優れた精度やテキスト広告の提供で、ネット広告やWebマーケティングを“儲かるビジネス”に変え、ライバルの地位を脅かす存在に成長していく過程に焦点を当てている。同社の勝因として、高価なサーバーを使わずに大量の低価格パソコンを運用する分散システムで投資を抑えたことを紹介。著作権やプライバシの保護、表現の自由など、検索エンジンが直面する課題にも触れている。

Google video
 最近始まったグーグルの新ビジネス。冒頭ページにボブ・サップがでる日本のTVのビデオが入っていたりするが全体像がつかめません。どうやらプライベートビデオ作品も掲載できるようなのですが、、、。自主映画のアーカイブになってくれたら嬉しいな。ちなみに「David Lynch」で検索してもめぼしいものは出てきませんでした。

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2006.01.14

■イーライ・ロス監督 『ホステル』 HOSTEL予告編

hostel_title
タランティーノ QUENTIN TARANTINO PRESENTS

イーライ・ロス監督 『ホステル:HOSTEL』 (公式HP)
予告編 (APPLE)
イーライ・ロス監督ブログ ERI ROTH Blog

 三池崇史監督にインスパイアされたというスプラッター映画 『ホステル』がアメリカで公開され、ベスト1ヒットになっているという。(eiga.com06.1/10)

 HPと予告編を観ると、画面の雰囲気は、確かに三池作品を思い出させます。三池作品ではホラーというと、『オーディション』(原作:村上龍 脚本:天願大介)、『着信アリ』あたりが思いだされますが、僕の印象では『オーディション』の狂気を想起。

kurosawa_hebinomichi でも、予告の雰囲気は、黒沢清監督の『修羅の極道・蛇の道』(DVD) あたりの雰囲気(右写真)も漂ってきます。あの不条理感をハリウッドが再現できているとしたら、スプラッターは趣味でないけど期待。

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ベイエリア在住町山智浩氏アメリカ日記のレビュウによれば、三池氏が重要な役柄で出演。

「Be Careful. You could spend all your money
 (気をつけな。いくら金があっても足りないくらい病み付きになるぜ)」

 いつもながら切れ味の良い町山氏の文章は、東欧における「21世紀におけるコロニアリズムとオリエンタリズムの問題」に着目して、興味深い視点のレビュウになっています。

◆関連リンク
・ERI ROTH監督『キャビン・フィーバー』(公式HP)
三池崇史フィルモグラフィ
・当Blog記事 ■三池崇史監督   ウルトラマンマックス「第三番惑星の奇跡」 

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■山田太一脚本・堀川とんこう演出 『やがて来る日のために』

2005年5月6日(金) 21:00~22:52
フジテレビ スタッフリスト

花山美代(市原悦子)は、訪問看護師として、死を間近に意識した患者たちの自宅療養を支えている。一度倒れて以来、妻が口を聞いてくれなくなったと愚痴る野口重昭(神山繁)。商売が軌道にのったからと手術を拒否して自宅療養を続ける今泉典子(吉田日出子)。そして18歳の秋月恵美(上野樹里)は、どうしても、かつて住んでいた街に行ってみたいと言う。誰もがいつ訪れるかも知れない、間近に迫った死をみつめながらそれでも懸命に生きている。そんな中、美代と同じ看護師の由紀(星野真里)の妊娠が発覚した。

「やがて来る日のために」
――訪問看護ドラマ化の舞台裏(週刊医学界新聞)

山田 どうしても年をとってくると自宅の空気というのは,過去の塊でしょう。汚れやシミも,雨戸のきしみも,細かく私を支えてくれています。その過去から離れて白い壁の病院に行き,そこで死ななければならないというのは,相当さびしいことですね。過去なんかに拘らない人もいるでしょうけれど,おおむねは過去に取り囲まれていたいと思うのではないでしょうか。僕なんかは,自宅の音,気配,他人との距離,本や絵のあるところで死にたいと思いますね。

 元旦に何故か観たのが、録画してあったこの在宅医療のドラマ。何を好き好んで元旦に死がテーマのドラマを観てんでしょうね>>自分。(この、へそまがり)
 訪問看護というものがあるのも実は知らずに観て、まずへぇーって感じでした。家政婦で有名な市原悦子のここでは抑えた演技がなかなか。「訪問」といえば「家政婦」を自然にイメージさせてしまう市原悦子を、180度違う役へ持っていって成功させてしまうところは山田太一のへそまがり度を示すものではないでしょうか。

 死期をまじかにした3人の登場人物の各エピソードが並行して描かれているのですが、一番は上野樹里が主人公の話。
 うえのあらすじにもあるように、死を悟った秋月恵美が最後の希望として挙げたのが、通っていた学校と駅とその近所のコンビニに行くこと。ただそれだけ。
 最近流行の悲劇ドラマ(『世界の中心で、愛をさけぶ』等)の主人公たちが恋愛を中心エピソードにしているのに対して、この主人公の望んだもののちっぽけさを考えると、ただただ泣けてしまいます。山田太一が述べる「過去の塊」、これが当たり前のコンビニで描写される、、、この深さ。ただのコンビニの映像に、グッときてしまいました。山田太一のアンチ恋愛悲劇のへそまがりの手腕にやられたわけです。

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2006.01.13

■一色登希彦作 漫画『日本沈没』スタート

comic_japan_Sinks SPINET/今週のスピリッツ 5,6合併号 1/4発売
株式会社イオ・小松左京事務所 トピックス

一挙60頁掲載。リキが入っています。一年間の連載、お楽しみに。
第1話「序章/地下の竜巻1」 作・一色登希彦 原作・小松左京

一色登希彦 ウェブサイト コラム/ブログ

 小松左京さんにもお会いし、こちらの裁量で脚色してゆくご了解をいただいたので、かねてより望んでいた「今の日本を描く」というテーマをこの作品の中にたたき込んでみたいと思いました。

 こちらの漫画家のBLOGでキャラクタの絵の拡大版を観ることができます。小野寺も阿部令子もグッと若返ったという感じ。田所博士は小林桂樹に似てますがさらにマッドでトンデモな感じ(^^;)。
 上の文面と、映画関係者のクレジットがないところを見ると、映画ともまた違った話なのかも。でも阿部令子は消防のレスキュー隊のようなので、映画に沿っているのかも。

 第一話は、突然、ある飲み屋の雑居ビルがそこだけ沈んでいくというストーリー。そしてそこになんらかの異常を計測して来ていた田所と、偶然来ていた小野寺、阿部が会うという強引な展開。さてどうなるか、次週を待て。

◆関連リンク
一色登希彦(Amazon)
・当Blog記事 ■映画『日本沈没』製作発表

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2006.01.12

■フィリップ・K・ディック アンドロイド・プロジェクト

PKD01 Philip K Dick android project
 (公式HP pkdandroid.org)
公式Blog

 昨日に続いてP・K・ディックの話題です。実は『スキャナー・ダークリー』映画化情報を探していて、こんなとんでもないプロジェクトを発見。写真右がアンドロイド。ディックファンには衝撃的です。あのディックをアンドロイド化するとは、、、。アンドロイドというSFのガジェットを用いて、人間の存在について悩み続けていたディックをアンドロイドにするなんて。絶句。

◆プロジェクト
 Hanson Roboticsがやっているプロジェクトのひとつで、詳細はここ→Philip K Dick android project description.doc
 Hanson Roboticsというのは、韓国科学技術院(KAIST)の二足歩行ロボット ヒューボ(Hubo)に、アインシュタインの顔をかぶせたところのようです。あれも醜怪だった。

◆展示
 WIRED NextFestで展示され、下記の様な内容だったよう。
PKD02
Set design for the PKD-Android environment “Club VALIS”。クラブ・ヴァリスでくつろぐディックという設定。

PKD04Comic-Con: A Scanner Darkly panel - Cinematical (2005.7/15)
 コミックコンベンションの『暗闇のスキャナー』パネルディスカッションに登場したP・K・Dロボット。これももの凄くブラック。こんなディックに睨まれながら、何をディスカスしたのでしょう。 

 展覧会の記録には、「August 7-21, World Expo Japan」とあります。
 これ、愛知万博のこと? しかしこんなものがひっそりと展示されていたとは。「プロトタイプロボット展」だろうか。ネットで検索しても見つからないので、何かの間違いかもしれない。

◆世界に偏在するディック
PKD03  このPKDアンドロイドのソフトウェアがオープンソースでダウンロード可。これ、詳細読めてませんが、ロボットのソフトウェアとしてインストールすれば、アンドロイドのディックが地球上のどこにでも出現するということでしょうか。こんなSF的な世界を果たしてディックは想像できたでしょうか。

 「俺は本当にフィリップ・K・ディックなのか?
  本当に人間なのか?」

 世界に偏在するアンドロイド・ディックが、突然こんなことをしゃべりはじめたら、、、。
 ディックは実は本物のプレコグだったのかもしれない。こんな未来を予知して、偏在してしまった贋の自分の存在に対し著しい不安にとらわれあの小説群を書いた。、、、現実はSFより奇なり。

◆関連リンク
ディスカバリーチャンネルの放送シーン(リンク先は現在観えない)
 ディスカバリーチャンネルでロボットネタを観てれば、いずれ観える。
Philip K. Dick - Science Fiction Author - Official Site
本物そっくりのロボットに出会えるNextFest(it mediaの記事)によると、ソースプログラムは下記の動作をさせるものらしい。誰かソフトの使い方が分かったら教えてください、いや、プログラム全くうといので。(是非!)

 このロボットはソファに自然な様子で腰掛け、顔をゆがませて人間の表情――しかめ面、まばたき、笑顔――を作り、ディックの作品1万ページから言葉を選ぶプログラムを使って訪問者のコメントに答える。目の奥に仕込まれたカメラが、知り合いを「認識」する。

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■フィリップ・K・ディック 『スキャナー・ダークリー』
   "Scanner Darkly"映画化

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キアヌ・リーブス主演 映画『スキャナー・ダークリー』(06.夏公開) 
予告編

"A Scanner Darkly" is set in suburban Orange County, California in a future where America has lost the war on drugs. When one reluctant undercover cop (Reeves) is ordered to start spying on his friends, he is launched on a paranoid journey into the absurd, where identities and loyalties are impossible to decode. It is a cautionary tale of drug use based on the novel by Philip K. Dick and his own experiences. "A Scanner Darkly" stars Keanu Reeves, Robert Downey Jr., Woody Harrelson, Winona Ryder and Rory Cochrane and is written for the screen and directed by Richard Linklater.

 なかなか予告編がかっこいい。実写映像をアニメ的彩色で表現している。
 リチャード・リンクレイター監督の作品は観たことがなかったのだけれど、『ウェイキング・ライフ(2001)』というのが、この作品の手法のきっかけになっているようだ。、『ウェイキング・ライフ(2001)』は「新境地を切り開いた実験的アニメーション映画。リアルに描かれた登場人物が、実写さながらに文学、哲学、宗教、人間存在についての会話を繰り広げる」。この映画、哲学的で画面もアートになっていて、お薦め!

 この技法で描かれる(?)スクランブルスーツ(あれ、原本はスキャナースーツscanner suits?)が、予告編でも秀逸な映像になっています。これは一見。原作の雰囲気がよく出ていると思うのは私だけ?
scanner_darkly02

◆関連リンク
・当Blog 『ウェイキング・ライフ(2001)』紹介記事
 『スキャナー・ダークリー』アニメと実写を融合した技法「ロトスコープ」とは
『スキャナー・ダークリー』浅倉久志訳 『暗闇のスキャナー』山形 浩生訳(Amazon)
 僕は山形版で読みました。翻訳の比較をされている塵芥王さんの記事
SF MOVIE DATA BANK 「スキャナー・ダークリー(原題)」
Philip K. Dick - Science Fiction Author - Official Site
ワーナーインディペンデント公式HP
 UPCOMING RELEASESから予告編へ行けますが、サイトはまだない。
Richard Linklater監督
・ 『ウェイキング・ライフ』Waking Life公式HP
DVD このパッケージの絵には見覚えがあります。

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2006.01.11

■山本嘉範編著 『THE MASTERPIECE essence of style』

eunos500THE MASTERPIECE essence of style』(公式サイト)
 すでに15年前。1991年の東京モーターショーでデビューしたユーノス500のデザインには、本当にインパクトを受けた。雑誌やカタログをどれだけ眺めたか知れない。結局買ったのは、元々好きな5ドアでインテリアデザインの気に入ったMS-6だったのだけど、、、(^^;)。
 この本は、ユーノス500ファンが、カーデザインについての提言等をまとめた自主制作本。工業デザインとは何か、ということをいろいろと考えさせる。

多くのビジュアルや実際にユーノス500に携わったデザイナー方々のコメントなどとともに、自動車にとってデザインの役割と重要性、そして今求められるべきものは何かを明らかにするよう試みました。

■EUNOS500からカーデザインを考える
■EUNOS500の「志」と「評価」・・・・・・・・主査 林忠之
■カタログセッション未公開写真
■デザイン後進国ニッポン・・・・・・チーフデザイナー 荒川健
■ときめきのデザインとは・・・・・・デザイン本部長 福田成徳
■これが4ドアクーペだ・・・・・・・・・・・・・ジウジアーロ

カーデザイン・ミシュラン - automotive design
 ユーノス500のデザイナー荒川健氏(スタジオ・ビースティーレ)のカーデザインに関するコメント。 

  ところが21世紀になって3年も経つのに、日本を含めたアジアのクルマメーカーの製品のほとんどが、周りの景観の足を引っ張るデザインレベルでしかなく、汐留も丸の内も京都も景観破壊グルマで埋め尽くされている。「批判するのは簡単だ」などと言い訳みたいな責任逃れが聞こえてきそうだが、本当に真剣に取り組めば、景観をリード出来なくとも、少なくとも足を引っ張らない程度には車もデザインできる。欧州車の多くがこのレベルは達成しているからだ。

 本書を読んで、特に印象に残ったのは上の引用にある車のデザインが街や自然の景観になじむことが重要である、という部分。そうした視点で日本の車を眺めると、風景を壊す邪魔者としてみえてしまうものがずいぶんと多い。(もともと統一性を欠いた建築や看板などによって、すでに景観と呼べるような日本の風景は減っているのだけれど、、、)
 本書には数々の景観の中に置かれたユーノス500の写真が収められている。いまだにそのデザインは古びておらず、景観を引き立てるような存在感を持っている。全体のシルエットや、フェンダーの曲線とか、美的なバランス感というのの普遍性を感じるデザインだと改めて本書を読みながら思った。
 マツダ新車バブルで泡と消えた車なので今は街でみかけることもトンとないけれど、こうしたものが受け入れられていたら、もっと日本の街並みも見えるものになっていたんじゃないかと未だに残念になってくる。(と言って自分も買っていないのだから、いい加減なものである)

◆関連リンク
GyaO「久米宏のCar Touch」
 そのデザイナー荒川健氏がカーデザインを中心に最近の車について語る番組。
 第一回は新ロードスターについて。手作り感覚のプログラムだけど、なかなか面白い。
・レクサスのデザインについて 自問自答のL-finess

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2006.01.10

■Honda HDTV 『ASIMO - CIRCLE篇』

0601_ASIMO
Honda | HDTV | ASIMO - CIRCLE篇

 現在、TV放映中の本田のCM。
 てっきりHDTVというのは、ハイビジョンのことだと思ったら、Honda Dreamers TV Technology のことだそうです。なんだ、それ?(^^;)

 街と子供たちにとけこんだアシモがたまらなくカワイイです。以前の駅Versionからまた数段、人と共存するイメージがはっきり出ています。
 ホンダはこういうCM、うまいですね。

 蛇足だけれども、これに比べてトヨタのレクサスのCMのセンスのなさは、、、。高級ブランドイメージを作るはずが、なんだか音楽とか映像のキレがとっても悪い。おまけに地上波デジタルで観ててもハイビジョン画質ではないし、、、なんでしょぼいんでしょ。

◆関連リンク
・HDTV 2004年のアシモの走り(5分19秒)
 走る音が今ひとつ。是非、虫プロのアトムの音を使っていただきたい。
・SONY QRIOの登場するPV Beck- Hell Yes(swfファイル再生)
 最近は「ピタゴラスイッチ」でアルゴリズム体操を踊っているらしい。
『解剖!歩くASIMO 二足歩行ロボット・アシモ 歩行システムの秘密』

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2006.01.09

■ピーター・ジャクソン監督 『キングコング』

KINGKONG
King Kong(米国サイト)

kingkong_komauchi_mini  遅まきながら、観てきました。
 とにかく3時間、中だるみなくみせる手腕が見事。探検シーンが普通にやると冗長になるのだけれど、そこを逆に最もスピーディなアクションでみせていて、エキサイティング。髑髏島のこれらシーケンスが、ニューヨークへ行ってからよりもむしろ充実していた。

 ニューヨークパートで良かったのは、ニューヨークの摩天楼の鳥瞰映像。冒頭のスカイクレーパーの建築風景からはじまり、過去のニューヨークの夜景の再現と、エンパイアステートビルからの俯瞰。これが素晴らしかった。

 その映像に乗っかるドラマは、一言で言うと「夕焼けの映画」。
 昔のコングの記憶では、あまりそうした風景への情感は覚えがないが、ピーター・ジャクソンはこの映画のキーに夕焼けを取り入れた。これによりアン・ダロウとキング・コングとのコミュニケーションをうまく描いている。
 ただ夕焼けの映像は僕も好きだけれど、この映画のものが本当に素晴らしいシーンだったかというといまひとつ。日本人の感じる夕焼けの情感と欧米人(といっても豪だけれど)の感じるそれとは若干違うんでしょうね。あ、これはコングが感じる夕焼けの映像なのか。人と違うということか(^^;)

 あと、ピータージャクソンが8,9歳で初代『キング・コング』を観たことで衝撃を受けて、こんなゴージャスな秘境探検映画ができたわけだけれど、彼がインパクトを受けたのが『ゴジラ』だったらと夢想する。ピータージャクソンが描く完璧なゴジラ。絶対、観たい。
 次回作の噂はいろいろとあるようだけれど、全部うっちゃって、『ゴジラ対キングコング』はどうですか?(^^;) 今回ヒットしていないようなので、ありえーーん!!

おまけ:右の映像は去年秋くらいに流れていたトレイラーから抜き出したもの。サブリミナルにコマうちでこんな映像の遊びを流していました。

◆関連リンク
Weta Workshop // Projects - Film Weta Workshopのフィギュア
Kong is King.net | movie news and rumors
 ここのキングコング スクラップブックは凄い。
・森都市未来研究所でキングコング展があったようですね。残念ながらネットに情報が少ない。のでリンクはなし。
eiga.com ジャクソン監督の次回作ニュース ホビットの冒険はどうなった?

 ピーター・ジャクソン監督が、96年に発表した「さまよう魂たち」の続編製作に興味を持っていることを明らかにした。エンターテインメント系ウェブマガジンCanMag.comが報じたもの。

・当Blog記事
 ピーター・ジャクソン『キング・コング』公式サイト コングイズキング.net

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2006.01.08

■虚構と戦争 911とP2の航空機映像

boing_vs_F16_02
『911 In Plane Site』 予告編 (911の疑惑ドキュメンタリービデオ)
FLIGHT 175:  Abnormal protrusion captured on film
WAS FLIGHT 175 A UNITED AIRLINES JETLINER?

(New York Magazine)

 上の写真は、左が9.11同時多発テロボーイング767の175便、右は『機動警察パトレイバー2 the Movie』のF16。各々赤丸部分が疑惑のポイント。
 9/11の映像でデジャヴュを覚えたPATLABORファンは多いと思う。テロの状況、ニュースの航空機映像等々。上のドキュメンタリービデオの記事が週刊ポスト(1/4発売号)に載っていたので、ふと思いついて上のような写真を並べてみました。これもデジャヴュのキー画像だったわけですね。テロ後にニュースが延々と流された状況も。

 あわせて、上のドキュメンタリービデオのミニリンク集を作ってみました。陰謀史観的なにおいもあるので、真偽については、自分で下記サイトで判断してみてください。ビデオ自体を観ていないので、僕の見解は保留です。

 監督のWILLIAM LEWISは『BEYOND TREASON』という湾岸戦争のドキュメンタリーで、BERKELEY VIDEO & FILM  FESTIVAL AWARD 2005 ということです。

『911 ボーイングを捜せ』 日本版公式サイト 

「9-11 In Plane Site」日本語全訳

ロータークラフト新時代:ペンタゴン疑問 消えたボーイング旅客機
 西川渉氏という朝日航洋専務を務められた方が書かれた上記ドキュメンタリービデオについての(←この部分は間違い。こっちが正解→)ペンタゴンのボーイングについての疑問を書いたサイトの紹介記事。航空機専門家の視点でのコメントもあり、わかりやすいです。(この部分、06.1/25一部訂正)

・『Painful Deceptions: An Analysis of the September 11 Attack
 別のドキュメント。リンク先で40分の全編が観えます。

◆関連リンク
『911ボーイングを捜せ―航空機は証言する 911は世界を変えた このビデオは911を変える』(Amazon)
DVD『機動警察パトレイバー2 the Movie』(Amazon)
押井守著『TOKYO WAR MOBILE POLICE PATLABOR』(Amazon)

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2006.01.03

■矢野健夫撮影『決定版・シルクロードを飛ぶ』

矢野健夫 プロジェクト  『赤い翼~シルクロードを飛ぶ~』(NHKスペシャル)

超低空からハイビジョンカメラで迫るシルクロードのいにしえの遺跡や大自然。今まで見たことのないような鳥の目線から撮影した、ダイナミックで臨場感あふれるシルクロードの新しい姿をお届けします。
“死の海”といわれるタクラマカン砂漠は、砂山が波のように果てしなく続いている。
モーターパラグライダー「赤い翼」は、砂嵐と戦いながら地上すれすれにまで下がってハイビジョン撮影を行った。

 元旦にNHK BSハイビジョンで観ました。モーターパラグライダーによるハイビジョンカメラの空撮撮影家矢野建夫氏の番組。
 まさに鳥の視点で地上を眺めることが出来ました。こんなものを自宅で臨場感を持って観られるとはいい時代になったものです。この視点での体験は実際に旅行に行っても体感できない特殊なものです。ハイビジョンのドキュメンタリーというのは映画館では観えないホームシアターの付加価値のひとつ。
 ただ臨場感ありすぎで、乗物酔いみたく若干気持ち悪くなってしまったけれど、、、(^^;)。臨場感といっても、自分が鳥になって自由に空を駆け巡れるわけでなく、所詮鳥の背中に乗っているだけですから、酔うわけです。おまえは『ニルス』か?と思わず突っ込みを入れてしまいます。(押井守ファンにしかわからない、、、(^^;))

 こういう番組で映像による臨場感を体感すると、ますます東大の舘暲教授の構想するアールキューブというのは現実味があるのではないか、と思ってしまう。鳥形ロボットを遠隔操作で自在に操り、意のままの飛行映像を自分ちのスクリーンに投影できたら凄いと思いませんか。

飛行した場所

・タクラマカン砂漠
 砂漠が独特の文様で、まるで巨大な恐竜の表皮のような薄気味の悪い光景。まさに死亡之海(タクラマカン)。

・標高2000mの草原 バリクン 
 馬に乗って駆け巡る遊牧民族の上空を飛ぶ視点。広大な草原を自在に駆ける馬たちと一体になった疾走感とそこから上昇に転じパースペクティブを得る鳥の視点。この連続性が素晴らしい。

・オアシス都市 新疆 トルファン
 これも地獄のような火炎山の光景。ベゼクリクチ仏洞のまるでファンタジー映画のようなアーキテクチャ。川に挟まれた軍艦のような台地の上の滅んだ都市 交河故城。
 ここのシークエンスが最も幻想的でした。思わずここの都市の3Dデータを取得して立体ダンジョンシミュレーションしたら凄いだろうと思ってしまった。

・青海湖
 
標高3000mの天空のサファイアと呼ばれる湖。菜の花畑の黄色と、湖の緑と、空の青のコントラストが素晴らしい。酸素の薄い高地での初めての撮影で、失速して畑に落ちたり、酸素吸入を追加したりといった飛行の苦労が描かれる。そして上昇気流に乗って3500mの高度へ初めて上がった「赤い翼」。ここでの矢野氏の「もの凄いビジュアルだ」という思わず出た感嘆の言葉が、映像だけでなく彼の体感を空想させる言葉として印象的だった。

 湖畔に作られたタルチョと呼ばれるチベットの風習。神に捧げる経文を書いた色とりどりの旗が風に舞う。天は神そのものであるとするチベットにおける飛行の意味、といった哲学的話題にも触れられている。そういった場所でモーターパラグライダーで人が鳥になる。これをチベットの人々、とりわけ子供たちがどう受け止めるか、というところに番組の視点が向けられていた。

 鳥瞰のビジュアルが、脳内のビジョンに昇華した瞬間かもしれない。この映像はハイビジョンにも撮れないイメージの映像である。

◆関連リンク
・Blog たけぽん上海航海日誌さんの:新疆旅行(トルファンツアー)
・当Blog記事 報道ステーション モーターパラグライダー空撮

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2006.01.02

■DVDメモ 『initial イニシャル-岩井俊二初期作品集-』 

early_works_INITIAL 『initial イニシャル
-岩井俊二初期作品集-』

収録内容
岩井俊二インタビュー
(ポニーキャニオンHP)

Disc1見知らぬ我が子」「殺しに来た男」(1991年「DRAMADOS」) 約47分
Disc2マリア」(1992年「DRAMADOS」)「蟹缶」(1992年「世にも奇妙な物語」) 約39分
Disc3夏至物語」(1992年「薔薇DOS」)「オムレツ」(1992年「La cuisine」) 約45分
Disc4雪の王様」(1993年「TV-DOS-T」)「ルナティック・ラヴ」(1994年「世にも奇妙な物語」) 約39分
Disc5「岩井俊二監督特別ロングインタビュー」 約49分

 岩井俊二ファンに2006.2/15発売予定のお年玉。
 『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 』の再放送以降の岩井俊二ファンなので、この初期TV作品DVD化は嬉しい。フィルモグラフィを眺めては、どんな作品だろう、と想像していた作品たちに会えます。
 これで、岩井作品は全てビデオ,DVD化とのこと。あれ、でもPVはもっと他にもあったはず。あとはPV集の発売が残る、ということでしょうか。

 噂に高かった「蟹缶」「マリア」とか楽しみです。

◆関連リンク
『initial イニシャル ~岩井俊二初期作品集~』(Amazon)

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2006.01.01

■A Happy New Year!!

coregn
あけましておめでとうございます。

2004.3月に開設した究極映像研究所も、はやいもので既に1年半以上。
『イノセンス』からはじまり、現在、『ネガドン』だ、スーパーハイビジョンだ、触覚家具だぁとワヤクチャになっていますが、これからもさらに触手を伸ばして、映像イメージのワイドスクリーンバロック(^^;)をめざしたいと思っています。

今年も、何、遊んでいるかな、と覗いていただけたら、幸いです。

ん、じゃ。

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