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2006年2月

2006.02.28

■国際宇宙ステーション画像インデックス
  International Space Station Photo Index

ISS Photo Index (NASA)

ISS_soaler_padol
 ときどき覗いている国際宇宙ステーションの建築状態の進捗を写真で紹介しているサイト。太陽電池パドルの質感が素晴らしいので、載っけてみました。
 繊細なトンボの羽根のようなパドルとこの写真上に見える無骨なモジュールの取り合わせがなんかかっこいい。

◆関連リンク 
国際宇宙ステーション - Wikipedia
・日本実験棟「きぼう」と呼ばれる実験モジュールJEMの打ち上げは07年度の予定とか。スペースシャトルはSTS-134の計画。
 しかしこれも設計から既に10年以上経っているのではないでしょうか。
NASA 2010年までにステーション予定通り計18回で建設 (Yahoo!ニュース)

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2006.02.27

■粘菌が「操縦」するクモ型ロボット
    polycephalum slime

nenkin_robot粘菌が「操縦」するクモ型ロボット(Wired News)

 Klaus Peter Zauner博士の研究。
 なんかバカバカしくていいです。

6つの先端部を持つ星型の容器で培養した粘菌と、六角形をした6本足のロボット本体とをコンピューターを介して接続するシステムを考案した。ロボットに取り付けられたセンサーが光を感知すると、星型容器の先端にいる粘菌にも光が当てられる。粘菌が光を避けると、この動きを検知したセンサーの情報がロボットに戻され、本体を暗い場所に避難させるという仕組みだ。

 写真左の粘菌の動きをとらえて、右のロボットを動かすメカニズム。
 粘菌とロボットのハイブリッド化。植物と動物の境界線上の生物である粘菌と人工生命であるロボットを融合させて3界の橋渡しをする研究なのか??
 このわけのわからないハイブリッド生命の誕生に何故だか拍手!!

◆関連リンク
・元記事 New Scientist Breaking News - Robot moved by a slime mould's fears
・ここが詳しいですが、ロシア語 ?MEMBRANA | Беспокойная слизь загоняет робота в тёмный угол.

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2006.02.25

■新刊メモ
  『雷轟rolling thunder PAX JAPONICA』 『陰日向に咲く』

雷轟rolling thunder PAX JAPONICA (株式会社エンターブレイン)
                         (野良犬の塒さん経由)
 押井守『雷轟rolling thunder PAX JAPONICA』 (Amazon)

rolling_th 南北戦争が英仏の手によって「合衆国」と「連合」に分断された世界--それから約百年後。北ベトナム上空を日本のレシプロ戦闘爆撃機が、空爆すべく飛行していた--「勝てない戦争」とわかりながら--。また、海上でも二隻の翔鶴級空母と一隻の護衛空母が展開し、任務を百回達成するか戦死するしかない状況の中、大量の食料を蕩尽しつつ延々と議論をしながら退屈な洋上勤務に従事していた……。「日本が戦争を担う意味とは、担うべき戦争とはなにか」。6年ぶりの描き下ろし!映画界の鬼才・押井守が描く新たな軍事小説、ここに堂々開幕!!

 押井守久々の新作小説。「開幕」とありますから、きっとシリーズ化されるのでしょう。
 兵器オタクぶりが思う存分に発揮されるのでしょうか。アニメと関係のない小説は初なので、今後映画とかへの展開もあり得るのかなー?? 3/31発売なので、まだ先。

劇団ひとり『陰日向に咲く』
 本屋でみて、面白そうだったので、メモ。買わないけど、図書館で借りようかと。
 特にこの人のファンなわけでもないのですが、、、。幻冬社の本って、なんか売り方、うまい。
 著者紹介文で、「父の仕事の関係で幼少期をアラスカで過ごす」って、なんかいいですね。

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2006.02.23

■黒沢清監督 『LOFT(ロフト)』 予告編

予告篇 trailer
★★映画を観る前に②は観てはいけません。jimさんの情報で追記。コメント欄参照
 ① (Mirovision HP) ② (2005 PIFF.ORG) 

 黒澤清監督、待望の新作『LOFT』。遅まきながら雑誌『CUT』で予告篇があるのを知って、リンクしました。①は通常の予告篇。②はあるシーンを丸ごと観せています。気の弱い人は、特に②はやめておいた方がいいでしょう。

 『ドレミファ娘』であきれ、『CURE(キュア)』のショックでファンになった黒沢清ですが、今度のも怖そう。

       loft_trailer

◆関連リンク
CINEMA ENCOUNTER SPACE黒沢清監督インタビュー 深夜テレビドラマ作品『もだえ苦しむ活字中毒者 地獄の味噌蔵』と『よろこびの渦巻』に関する話題等
黒沢清(ウィキペディア(Wikipedia))
・2005 | WWW.PIFF.ORG | PUSAN INTERNATIONAL FILM FESTIVAL 
Twitch - Trailer and slide show for Kiyoshi Kurosawa's LOFT (a.k.a. "Shi no otome")
雑誌 Cut(カット)03月号【特集:誰も観てない映画55本!】に紹介記事有。
・梅本洋一氏のnobodymag 『LOFT』黒沢清

『ココロオドル』から『LOFT』に向けて、その清麗さは、彼のフィルムはそれまで到達したことのない高みに登るだろう。ホラー映画と恋愛映画の併存、あるいは、ホラー映画のような世界の中で恋愛映画が可能なのかという実験。恋愛映画を体現する中谷美紀と、恋愛映画の墓場としてのホラー映画を体現する安達祐美、その両方を往還する存在としての「考古学者」豊川悦司。コンセプチュアルであると同時に極めて高度な技巧を有するこの映画作家が、このフィルムで提供するのは、物語とそれが盛られたフィルムの間にいっさいの齟齬がない、見事なまでの構造である。

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■ソニー ハイビジョンハンディカム
  HDR-HC1後継機「HDR-HC3」

 HC3vsHC2 ひさびさのハイビジョンハンディカムネタです。SONYの新型が出ました。今度も大きさにこだわって、ついに手のひらサイズを実現。ただしテープ方式です。
 旧型機となったHDR-HC1ユーザの僕は、大きさはそれほど不自由していないので気にならないけど、HDMI端子と4倍速撮影がうらやましいです。

 では、関連リンクです。

ソニー公式HP ・ハンディカム HDR-HC3 -Sony Style

谷津坂村放送局BBS [One Message View / ついにHDR-HC3発売]
 橋本さんの詳細レポート 「さわってきました」 HC1との質感、画質比較等。

So-net blog:C-TECバックルーム2さんの 「HDR-HC3」実機を見てきました!
 実物を見られて、小ささとデザインの質感を絶賛!夜景の撮影がHC1と比較して、綺麗とか。

ソニー、世界最小・最軽量の新HDVカメラ「HDR-HC3」(ホームシアターNews)

HDMI装備の小型・軽量HDVカメラ「HDR-HC3」-HC1から25%小型・26.5%軽量。実売16万円(AV Watch)

HD対応ビデオカメラ市場でシェア75%を狙う-HDMI端子で「HD録再をもっと身近に」(AV Watch)

◆関連リンク
・「Apple Brothers + Mac News」さんのスクープ記事
ソニーのハンディーカム「HDRシリーズ」の新製品「HDR-HC3」リーク情報
(「HDR-HC1最安を探せ!!」さん経由)
 元ネタはSony to Announce Lower Priced HDV Camcorder HC3 - News, Guides and Tips - Consumer Camcorders - Camcorderinfo.com
HDV1080i方式 デジタルHDビデオカメラレコーダー新製品HDR-HC3(B) 3月3日発売・予約受付中・ク...(楽天)  最安値は既に129,800 円です。

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2006.02.22

■Google Video 爆発映像 explosion compilation

explosion
explosion compilation - Google Video
 またグーグルビデオねたですみません。爆発映像を集めたもの。禍々しい。
 これは観ていると気がめいってくる。たぶん『アトミックカフェ』的アプローチが必要なのでしょうね。この毒気を迎え撃つためには。

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2006.02.21

■トマス M.ディッシュ、若島正編, 浅倉久志他訳『アジアの岸辺』

asia_no_kishibe
 収録作品は本邦初訳8篇を含む全13篇。とにかくブラックでラディカル。
 実はトマス・M・ディッシュは今まで、『いさましいちびのトースター』しか読んでいないという体たらく。やっと有名な「リスの檻」もこの本で読みました。
 僕にはディヴィドスン『どんがらがん』よりこちらの方が馴染めた。わかりやすさからかな。物語性もこちらの方があるからかも。

 あと編者の若島正が、あとがきで最高傑作と書いている『歌の翼に』(サンリオSF)をどうしても入手したくなった。筑摩文庫あたりで再刊されると良いのだけれど、、、。スタージョンのミニブームに続く形で、ディッシュの再評価と出版が続くことを期待したい。サンリオを高い値段で入手した後で、再刊されると悔しいので少し待とうかな。

◆降りる
 エスカレータで下り続ける男。なぜだか理由はわからない世界に紛れ込んでしまったシチュエーション。こういうのがまさにシンプルだけども奇想。好き。奇想って、ある意味、自分が夢で(現実だったらイヤだけど)遭遇したいシチュエーションだったりする。

◆争いのホネ
 いやーな話。こういうブラックなのがつくづく好きなのか、読者にそういう気分を味あわせたいのか。とにかく人の悪さが如実にでている。ある一点をのぞけば単なる夫婦の不仲のどこに出もある話なのだけれど、その原因のホネが、、、。でもこんな時代がいつか来るかもという怖さもありますね。

◆リスの檻
 これはやはりオールタイムベスト級で傑作。
ただ単にこうした不条理な閉塞されたシチュエーションだけでも面白いのだけれど、さらにこれはそこに作家を置いてメタフィクション的な仕掛けを施している。凄くうまい。
 「一くだひげ虫」とか「動物園の午後」だとか、この狂いっぷりも凄い。
 映画『トゥルーマンショー』や『CUBE』、こうした奇想映画のルーツにあたる作品。で、こっちの方が強力な破壊力を持っている。

◆リンダとダニエルとスパイク
 これもブラック。なんでこんなにも残酷なストーリーを書くのだろう。しかし現代的な心のゆがみの物語として読める。キングの『キャリー』はみにくいアヒルの子的に救われる部分もあったのだけれど、これは救いがない。本当にディッシュってひどいやつだ。

◆カサブランカ
 不幸の連鎖でどんどんどん底へ落ちていくアメリカツーリスト。これってアメリカ覇権主義のアンチの話なのだろうか。アメリカが無意識の上で世界の中心と(たぶん)信じている主人公夫妻が異国の常識の中でもがく話。
 ブッシュに擬似的でも良いからこういう体験をさせてやりたい。異文化を身に染みさせる必要がありますね、あの男には。しかしそんな経験でも何も変わらないような気もするけれど。

◆アジアの岸辺
 イスタンブールを舞台にした異文化コンタクトもの。主人公が写真屋で自分の撮った写真を受け取るところがなかなかショッキング。
 ディッシュには日本の訪問記もこんな小説に仕立て上げてほしかった。

◆国旗掲揚
 これもえぐいなー。アメリカの恥部ってしっかりとこういう形態があるのでしょうね。このエスカレートの様も気持ち悪い。

◆死神と独身女
 これはユーモラスでブラックな一編。僕には黒いだけに見える上の方の作品だったけれど、こいつはちゃんとブラックユーモアと感じられた。死神と秘書というのがなんかビジネスライクなんだけどユーモラス。

◆黒猫
 狂気へ至る過程を描いた掌編。

◆犯ルの惑星
 異様な性習俗を描いた作品。これもどぎつい。

◆話にならない男
 これ、なんか好きな一編。コミュニケーションがこんな風に許可制になったら、ますますややこしい。しかしこの主人公の雰囲気が読ませる小説にしていました。

◆本を読んだ男
 これはSFというより、現実にありそうな話。日本もこんなビジネスが成立しそうな気がする。
 そういえば最近、新聞であなたの原稿を本にします、という広告をよく見ます。この話と一緒だということではないので、念のため。

◆第一回パフォーマンス芸術祭、於スローターロック戦場
 これはネタ的に「パフォーマンス芸術の祭」というのが好きでした。

◆関連リンク
『アジアの岸辺』(Amazon)
『SF/が読みたい! (2006年版)』 第6位でした。
・WEB本の雑誌 今月の新刊祭典メニュー 『アジアの岸辺
・復刊ドットコム リクエスト投票 『歌の翼に』(サンリオSF) 是非投票しましょう!

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2006.02.20

■爆笑問題のススメ 「古川日出男 想像散歩のススメ」

souzousampo 当地方では2/15(水)深夜に放映。しっかり観ました。まずは太田光が興奮しながら「日本の表現をリードする」作家として古川を紹介。(絶賛のし過ぎ?いつもこんななのかな、この番組)

 そして番組のサブタイトルは、「古川日出男 想像散歩のススメ」。人から「あなたは想像をしながら歩いている。妄想の中を歩いている」と言われる古川の散歩を、番組がロケして、どんな風に街に触発されて作家の想像力が爆発(?)するかを映し出していた。

 一番印象的だったのは、その想像の中身よりも、歩きながら自分の頭の中を語る古川のマシンガントーク(○C真鍋かをり)。スタジオでの発言もハイテンションで留まるところを知らないって感じ。もう少し落ち着いたイメージかと思っていたけれど、最近の作品のイメージに近く、ポップに、はじけた方でした。(あと極個人的に著者近影のイメージと違い動く古川日出男が同僚の某O君とそっくりで吃驚。他人にはわからなくてすみません。これでいつでも贋古川日出男が撮れる(^^;))

souzousampo_etc

◆以下 名言集:採録というか趣旨のメモ。テンションの高さを感じてください。

・(高速道路の高架下の秘密のスペースを語ったシーンで)
 家出したら絶対ここに住む。いろんな場所へ向けて走っていく車の下で、誰にも見つからず俺は寝てるぜ。こんな凄い秘密の場所をみんなに教えていいのかと、心臓バクバク。(本当に無邪気に大興奮してました)

・部屋にこもって書いていると(テンションが)落ちてくる。そこで散歩をすると書きたくなる気持ちが盛り上がってくる。仕事して疲れきった野良猫が散歩で、猿になり、二足歩行になり、ボンボン、頭、回転してきて、人間になって仕事場に帰ってくる。

・(公園のミッキーマウス型すべり台を見て)
 すべり台戦争ってネタ。(ふたつあるすべり台の)こっちをすべらないと世の中悪くなる。そこから始まって、いずれ文京区を巻き込んだ一大戦争になる。

・東京から話の種を蒔いてもらってます。僕は蒔かれている土です。

・(アイディアは)おれはふつふつとは沸いてこない。ドバー、とか、ピャーとか出てきますね。

・目の前にいっぱい選択肢があるってことを実際身をもって誰でも知れる。散歩に出ちゃうと、迷う。磁石はない。その人生がいいっね。

◆蛇足
 街の見方、ということで僕が思いだすのは、大友克洋の街の描写。
 古川の見方とは随分違うのだけれど、大友の漫画を読んだ後に、あの精密な街の描写を可能にする漫画家の観察の仕方はどのようなものなのか、と想像しながら街を歩いてみる。
 きっと大友の場合、街のディテイルをみるのが好きでたまらないのではないか。細部をじっと楽しんで見つめることだけからはじめてみえてくる街の面白さ。街のディテイルを作家が発見しながら、それを記憶して絵を起こしているのが大友リアリズムの正体と想像してます。
 さあ、明日は古川の視点で街を歩いてみよう。そこから見えてくるのは、古川作品のコア、かもしれない。

◆関連リンク
今までに登場した人のリストを見ると、なんとテリー・ギリアムも。これは観たかった!
Lets_ROCK ・爆笑問題のススメ 古川日出男サイン本プレゼント
 締切りは、2月27日。メールやウェブ(このリンク)からも申し込めます。、、、ってこんなところに書いて、ライバルを増やしてどうする!?>>自分。
・当Blog記事  『爆笑問題のススメ』 古川日出男の巻 『ロックンロール七部作』 『ボディ・アンド・ソウル』 『ベルカ吠えないのか』  『LOVE』

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■アヴラム・デイヴィッドスン 殊能将之編
   『どんがらがん』   bumberboom

 物語を楽しむというより、その情景や雰囲気が前面にでている小説が多いように感じた。で、自分としては、そうしたものより物語が前面に出ている傾向のものに惹かれた。

 ただ「尾をつながれた王族」は物語というより雰囲気ではあるけれど、別格で凄かった。雰囲気でその背後の大きな物語を予感させるというか、、、。
 個々の喚起されたいイメージとディビッドスンの狙ったタッチがマッチすると凄いあたりになる、って感じか。

 以下、一編づつ、短評です。(3ヶ月前に読んで、なかかな書けずにようやくアップ。すでに随分忘れてしまっているので、ご容赦(^^;)) 

◆「ゴーレム」 SF

 老夫妻の日常と、非日常のゴーレムのすれ違い。そして日常への取り込まれ方がユーモラスな一編。テレビのコメディでフランケンシュタインのネタはかつてどこかで観たような気がする。う、ん?ドリフだっけ?(失礼) でも会話が軽妙で楽しい一編。

さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」 SF 奇想小説

 F&O自転車店の共同経営者と赤い自転車と無くなる安全ピンと増えるハンガーの擬態をめぐる話。
 日常にもぐり込む奇妙な存在を端正にまとめている。タイトルによるイメージの拡がらせ方がうまい。

◆「ラホール駐屯地での出来事」 ミステリー

 軍の駐屯地での三人の兵隊と女と手紙の計略の話。これもうまい短編ミステリー。
 酒場での語りの趣向が効いている。

◆「物は証言できない」 ミステリー

 黒人問題を痛烈に皮肉った一編。奴隷仲買人ベイリスの陥る事態は、短編ミステリーの結構としてきっちりまとまっている。

◆「さあ、みんなで眠ろう」 SF

 未開の星のヤフーという生物と彼らを連れ帰った主人公ハーパーの苦悩。

 スウィフトは発狂した。ちがいますか?彼は人類を憎んだ。彼の目には、人間がみんなヤフーに見えた・・・・・。ある意味では無理もないと思いますよ。みんながこうした原始人を軽蔑する理由は、そこにあるんじゃないかな。自分たちのカルカチュアに見えるからですよ。

 ラストが胸に染みる一編。

◆「クィーン・エステル、おうちはどこさ」 ホームドラマ(!?)幻想小説

 西インド諸島のスパニッシュマーン出身のお手伝いさんクィーン・エステルのお話し。言葉のすれ違いや異質な者への差別やらが描かれるホームドラマにそっと忍び込むマジックリアリズム。
 
短いけれども、独特の雰囲気が漂よってくる。

◆「尾をつながれた王族」 SF

 これが本短編集の僕のベスト。わずか13ページの作品に炸裂する奇想。簡潔に削った文章で異質な世界の一端が描かれる。全貌が全くわからない。だからこそ想像力を刺激するこの異世界。本書を読もうか、悩んでいる方、まず立ち読みでもいいのでこの一編を読んでみてください。このイメージ喚起力は凄い。

 悪夢に限りなく近い。目覚めるとその世界のロジックが理解できないけれど、見ている間は迫真のリアリティある悪夢。

◆「サシェヴラル」 奇譚

 奇妙だけれどこれは削られすぎてよくわからない。「わざとわかりにくく書いてあるシリーズ」とのこと。
 
読んでから3ヶ月ほど感想書くのを貯めてたので、ますますわからなくなっている(^^;)。

◆「眺めのいい静かな部屋」 ミステリー

 老人ホームの男女関係。よぼよぼの老人たちのミステリー(ボケで事件がよりわかりにくくなる)って、案外面白いネタかも。

◆「グーバーども」 幻想

 おじいの嘘のグーバーが現実化。「おれ」の一人称で書かれた語り口が楽しめる。

◆「パシャルーニー大尉」 幻想

 ハートウォームなファンタジー。こういうのもいいですね。
 
似たネタだけど、「グーバーども」より好きな一編。

◆「そして赤い薔薇一輪を忘れずに」 普通小説

 アジア系移民の書店主が開陳する祖国のいろとりどりの書物。都会の殺伐とした雰囲気に紛れ込む異国情緒。

◆「ナポリ」 幻想

 これも雰囲気と情景描写を読ませる話。「ナポリ」という単語が時々挟み込まれて、独特の雰囲気を醸し出している。
 
でもなんだか苦手な小説でした。

◆「すべての根っこに宿る力」 ミステリー?

 メキシコの首なし死体と呪術。これも苦手。ここらで僕は濃厚な密度に着いていけなかったようです。

◆「ナイルの水源」 奇想

 これは一転、凄く好きな話。物語が起動しているというか、、、。謎の「ナイルの水源」という言葉がドライバになって読ませる。作家が酒場で知った謎の言葉。それを狙う男たち。不思議な雰囲気と語り口がいい。好きです、これ。この短編集で二番目に好きな小説。

◆「どんがらがん」 奇想

 これぞ奇想小説。どんがらがんとやってくる「なにやら奔放な想像力の生みだした巨大な吹き矢筒を思わせる」ガジェット。登場人物たちの突飛な行動やユーモラスな様子が楽しめる。続編も是非訳出してほしいものです。

◆関連リンク
SFセミナー SEMINAR 2005「異色作家を語る」 出演者の推薦図書リスト
『どんがらがん』勝手に広報部
アヴラム・デイヴィッドスン作品リスト
殊能将之氏の『どんがらがん』宣伝的雑談

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2006.02.19

■ティムール・ベクマンベトフ監督『ナイト・ウォッチ』予告編

night_watch
Apple - Trailers - Night Watch (Nochnoi Dozor) - Medium

米国オフィシャルサイト 日本公式HP(日本語予告編)
監督:Timur Bekmambetov (IMDb)

 何も知らないで予告編を観ましたが、シャープな映像でいい感じ。
 原題『НОЧНОЙ ДОЗОР』という2005年のロシア映画。第2部『DAY WATCH』も既にロシアでは今年になってから上映されヒットしているようです。
 監督は、ロシアのCMディレクターということです。日本は、2006.4月公開ということですので、期待しましょう。(でも関連リンクには不評もありますので要注意。)

◆関連リンク
ホラー番長-ソドムの市-BBS
 映画『ナイト・ウォッチ』を観た高橋洋氏の感想。良くないみたい。
 この監督に、ロジャー・コーマンがアメリカで『ザ・グラディエーターⅡ』を低予算で作らせたとか書いてあります。
・東京国際ファンタスティック映画祭2005
 クロージング作品『ナイト・ウォッチ』 お知らせ

タランティーノが大絶賛!ロシア発映像革命。
監督:ティムール・ベクマンベトフ
製作:アナトリー・マキシモフ
製作:コンスタンチン・エルンスト
原作:セルゲイ・ルキヤネンコ
脚本:ティムール・ベクマンベトフ
脚本:レータ・カログリディス

ツボヤキ日記★TSUBOYAKI DIARYさんの紹介記事 
SF MOVIE DataBank:ナイト・ウォッチ 日本公開2006.4
セルゲイ・ルキヤネンコ, 法木 綾子訳『ナイトウォッチ』
その女、腐女子につきさんのこの本のレビュウ
★ШОБОЮСКИ・СОЮЗ★さんのレビュウ

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2006.02.18

■Google Video 「P・K・ディックロボット」
  「コピー機トランスフォーマー」「宮崎駿新作短編」

 Google Videoに、嵌まっています。いくつか紹介。

P・K・ディック Philip K Dick ROBOT- Google Video

PKD_Video 以前紹介したフィリップ・K・ディック アンドロイド・プロジェクトのビデオ映像。
 「おまえは人間か?」と問うと、「私はロボット」と答えています。残酷と思うのは私だけでしょうか。ものすごくブラックなんですけど。
 で、現在、このアンドロイドが行方不明になっているとか。こんな仕打ちにあえば、逃亡したくなります。

Double A Ads (Malaysia) - Google Videodouble_a_ads_malaysia

 マレーシアのコピー機CM(?)。コピーがうまくいかず腹をたてたOLが蹴飛ばすと、、、。

NHKおはよう日本 宮崎駿インタビューと新作短編紹介映像- Google Video

MIYAZAKI_SHOT_FILMS  『やどさがし』、『水グモもんもん』、『星をかった日』の3本の映像が少しだけ観えます。
 にしても、Google Video、著作権は大丈夫なのか!? NHKが配信ということはないはずなので、誰かがUPしたのでしょう。

土星座新作アニメーション
 (三鷹ジブリ美術館HP)

『星をかった日』
ノナ少年はいつの間にか誰もいない砂漠をひとりで歩いていました。ノナは、そこでふしぎな女性ニーニャと出会い、彼女の農園の小屋で暮らし始めます。そんなある日、ノナは野菜とひきかえに星の種を手に入れて育てることにします。

 「フェッセンデンの宇宙」風。これ、観たい。

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2006.02.17

■Google Video "transformer"

PickUp_Transformer
transformer - Google Video

 いくつか今までも車が変形してロボットになるトランスフォーマー映像を紹介してきましたが、グーグルビデオで検索したら、新たに6本ほど見つかりました。(上記リンクでロボットらしき映像のものだけ観てください)
 一番のお気に入りは、上の写真のピックアップトラック。

 しかし今までで一番はやはりBMW MINI COOPERです。続報が待たれます(^^;)。

◆CITROEN 2台
CITROEN_C4_Transformer  CITROEN_Transformer

◆アメ車 ILMと書いてありますが、、、いまひとつ。
american_Transformer

◆究極映像研内 関連記事
 ・自動車トランスフォーマー2題
 ・NIKEが変形しロボットに!

 ・ミニクーパーロボット 
mini_toy   ・イギリス発のすごいロボット
  ・夫婦の愛が作った!ガソリンエンジン駆動ロボット
  ・あのイギリスのロボットはCG合成なのか?
  ・Dr. Colin Mayhew のメール
  ・Dr.Colin Mayhewのロボット続報

 ・ひさびさにMINIUSA.comを観たら、ロボットをオーダーメードして遊べます
 ・BMWおたっきーず!さんによると、ミニチュアが限定販売されていたそうです。
  通販ショップはこちらのようです。まだ買えるかは不明。(右写真)

・マイケル・ベイによる実写版『トランスフォーマー』(アニメ!アニメ!ニュース)
Note from Michael Bay 02/17/06 07:23 PM
 誰も観たことのないリアルなトランスフォーマーにはちょっと期待。

Remember these are the most realistic Transformers you will have ever seen. They have to fit completely into the human world to make this live action film credible. I have shown the animatics and some of the hundreds of drawings

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2006.02.15

■映画ドラえもん『のび太の恐竜2006』

Doraemon_2006
映画ドラえもん『のび太の恐竜2006』公式サイト(アニオタフォースさん経由)
 公式HPのプロモーション映像がなかなか凄い(予告編でなくプロモ映像です)。
 まさに「まだ誰も観たことのない」ドラえもん究極映像(^^;)になっています。
 ドラえもんの素材が、今までの映画だと明らかに現代のロボットをイメージさせるプラスティックか金属なのだけれど、これは未来の素材(?)。より藤子・F・不二雄の原作のイメージに近くなっています。藤子・F・不二雄に観てほしかったですね、この映画。

のび太の恐竜(Wikipedia)

2006年に『のび太の恐竜2006』としてリメイクされることが決定している。
ストーリーは原作の「のび太の恐竜」にオリジナルストーリーを加えたものになる予定。
監督:渡辺歩
脚本:渡辺歩、楠葉宏三
作画監督:小西賢一
CG監督:木船徳光

 子供のためにいつも前売り券は買うのだけど、実は全く期待していないドラえもん、今回は映像的に期待できそう。ストーリーは知らなかったけれど、リメイク。かつて一作目『のび太の恐竜』をゴジラ目当てで劇場で観たのを想いだした。

 たぶん『ドラえもん』アニメータは、その長年の抑えた作画にストレスがたまっているのではないか。『ミニドラ』とか『ドラえもんズ』とか、どっちかというと併映で発散した作画が観られた。今回、メインスタッフが新しくなって解放されたドラえもんが観られそう。(これと同じに、もっと長年抑えまくった作画のサザエさんのアニメータが炸裂する映像も観たかったりする。時々TVサザエさんでもドキッとする作画がありますが、、、。長年のイメージを破壊する時、今までとの相対比較で、われわれ観客に凄いイメージが想起されそう。) 作画スタッフのプロフィールを調べたわけではないけれど、そんなことを思ってしまった。

・旧作 『映画ドラえもんのび太の恐竜』
速報!! 新映画は『のび太の恐竜2006』
・『TOKYO GODFATHERS』作画監督 小西賢一インタビュー
 『のび太の恐竜2006』の作監はスタジオジブリ出身。『ドラえもん』とは今まで関係なかったようです。
 『千と千尋の神隠し』カオナシが暴走の原画。
 『人狼』クライマックス、辺見が地下道を逃げてくとこの原画。
『Quick Japan Vol.64』 永久保存版 映画『ドラえもん』 (公式HP) (Amazon)

続きを読む "■映画ドラえもん『のび太の恐竜2006』"

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2006.02.11

■『爆笑問題のススメ』 古川日出男の巻

Bakusyoumondai_Furukawa爆笑問題のススメ (公式HP)

 次回(2/13の週)のゲストが、古川日出男。
 この人がTVに出るのは観たことがないので、楽しみ。どんな語り口の人なのだろう。写真は雑誌とかで見るより、丸い感じですね。さっそく見逃さないように録画予約しました。こちらでは水曜深夜の放送です。
 この番組、ほとんど観てないですが、京極夏彦も出てたようで、、、知らなかった。まさかカート・ヴォネガットは出てないですよね?

 太田光は、ググッたら「週間ブックレビュー」で『アラビアの夜の種族』を「おすすめ本」で挙げてますね。

◆関連リンク
・観終わった感想を2/20UP。
 →当Blog記事 爆笑問題のススメ「古川日出男 想像散歩のススメ」
・雑誌 す ば る /古川日出男 柴田元幸 対談
 これは『ロックンロール七部作』刊行記念のトークショーの採録ですね。

イッツ・オンリー・ロックンロール文学言葉に触発されリズムが生まれる。頭の中には音楽が流れ出す。共鳴し合う二人に響く、"ロックが聞こえる文学"とは何か。

Mint Julepさんの記事
 柴田元幸×古川日出男トークショー@青山ブックセンター本店

古川日出男語録も沢山飛び出しましたですよ。
「細部に神は宿らず、妄想に神は宿る」
(柴田氏の「いつ、自分を捨てたのですか?」という問いに)「8年前くらいですかね(きっぱり!)」

作家の読書道 古川日出男

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■新刊メモ
 『デス博士の島その他の物語』 『眠れる人の島』 『銀齢の果て』
 『SFが読みたい! (2006年版)』 『このブログがすごい! 2006』  

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ジーン・ウルフ, 浅倉久志ほか訳 未来の文学『デス博士の島その他の物語

孤独な少年が物語の登場人物と現実世界で出会う名作「デス博士の島その他の物語」を中心とした「アイランド博士の死」「死の島の博士」の<島3部作>、荒廃した近未来アメリカでの謎と恐怖に満ちた彷徨を描く「アメリカの七夜」、目の見えない少年が繰り広げる奇蹟と魔術の物語「眼閃の奇蹟」など、華麗な技巧と語りを凝縮した全5篇+限定本に付された<まえがき>を収録。

国書刊行会告知

★三省堂SFフォーラム★ 『デス博士の島その他の物語』刊行記念
柳下毅一郎さん・山形浩生さんトークショー
SFに何ができるか――ジーン・ウルフを語る
日時:3月4日(土) 開場17:30 開演18:00
場所:三省堂書店 神田本店8階特設会場

 ついに刊行。「デス博士の島」は、SFマガジンでずいぶん前に読んだけれど、今回3部作通して読んでみようと思ってます。トークショー、聞きたい!

 ★追加リンク → 当Blog『デス博士の島その他の物語』感想 

エドモンド・ハミルトン著, 中村 融訳『眠れる人の島
  東京創元社(公式HP) Edmond Hamiltonウィキペディア(Wikipedia)

 『フェッセンデンの宇宙』『反対進化』に続く、中村融編によるエドモンド・ハミルトンの第三弾短編集。今回のは幻想怪奇編とのこと。前2冊がよかったので、これも購入。
 この冬は、ジーン・ウルフとあわせて、<>SFの季節?

筒井 康隆『銀齢の果て

 「銀齢の果て」掲示板 『銀齢の果て』各種資料

老人であることは悪なのか? 和菓子司の隠居、宇谷九一郎の住む宮脇町でも、70歳以上の国民に殺し合いをさせるシルバー・バトルが遂に始まった! 21世紀最大の、禁断の問いをめぐる老人文学の金字塔。

 筒井って、自分の老いを見つめて小説のテーマにしているけれど、こういう形になるところが凄い。さすが。
 これって、タイトルは谷口千吉監督、黒澤明脚本『銀嶺の果てのパロディなんでしょうね。今、Amazonで見たら、音楽は先日亡くなった伊福部昭氏。ご冥福をお祈りします。告別式ではゴジラの荘厳な音楽がかかるのでしょうか。

 老いても元気なのは筒井氏。GYAOの筒井康隆劇場『エロティックな総理』はなんだか好き勝手に演じてそうです。

SFマガジン編集部『SF/が読みたい! (2006年版)

 これは定番で買います。今年のベストは何作読んだかな?国内が燦燦たる有様のような気がする。

別冊宝島編集部編『このブログがすごい! 2006

 本屋で何気なく立ち読みをしていたら、オタクジャンルに「野良犬の塒」さんが掲載されてました。『このミス』のようにメジャーな本になったら、アクセスが凄まじく伸びるのでしょうね。
 (この手の本がいくつか出ているので、立ち読みの本がこれだったか、実は少し自信がない。もし間違ってたら、ご容赦!)

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2006.02.09

■茂木健一郎 『プロセス・アイ』Process A.I.

 脳科学者・茂木健一郎のSF。
 茂木氏が、論証を挙げた緻密な理論の論文としてはまだ構築できないけれど、直感的に把握した大胆な説を、どうしても書きたくて、今回、小説という形態を選択したのではないか、と期待して読んでみました。

◆心脳問題

 前半、世界的脳科学者・川端武史が、ついに人間の意識の秘密を解き明かした「プロセス・アイ」理論を学会で発表しようとする場面までは、特にワクワクして読んだ。
 だけれど、後半、解き明かされるかと期待した「意識」と「私」と「志向性」の「物語」は、結局、直接描かれることはなく、肩透かし。
 (それを見たある人物のある変容が描かれるところは、なかなか面白いアイディアでグッとくるところもあったけれど、、、、)結局、学者茂木健一郎がまだ直感でとらえているだけで論文として書き上げるのには推測が多すぎるような理論とかを開陳するようなことはなかった。そこに期待していたので、残念な思いで本を閉じた。

 これは小説を読むのには、邪道な読み方である。
 では純粋に小説またはSFとしてみた場合の感想はどうか(こちらの方が通常のこのBlogで扱っている分野)。

◆小説

 まずは小説として。
 もっと、らしくない小説かと思っていたけれど(失礼)、初長編ということで考えると凄く手馴れている。プロットとか、結構面白い。
 ただ残念だったのが前半の高田軍司と高木千佳と金城剛の関係を描いたところ。本来ならば微妙な三人の関係がいくつかのキーとなるエピソードとともに読者に強いインパクトを与えて記憶に残るはずの場面なのだけれど、結局3人は東京のグルメをいっしょにまわっていた印象が一番強い。ここは物語のきっかけになり、本書風の表現をすると、読者へのクオリアを構築する最重要な部分だったと思う。しかしここが良くない。もう少し、ここで3人の意識の関係が見事に描かれていたらと、残念でならない。

 エピソードのアイディア等の出来不出来が作家としての才能の中核になるように思う。うまい作家は、物語のクオリアの本質をつかまえて、素晴らしいシークエンスをこうしたところに配置する。いい小説を読むと、読者の脳に生成させるクオリアにとってどんな物語の具象化が必要か、これのつかみ方が凄い。作家の才能というのは、そういうものだと思う。この才能を持った作家はそうそういない。本作は、平均的な作家(?)のレベルは充分満足してると思うのだけれど、、、。

◆SF

 SFとしては、新人SF作家のなかなか力作な処女長編、というところ。
 結構宗教がかったところがあるので、SFの読者は、トンでもな感想を持つのではないか。心脳問題って、やっぱSFとしても難しい。理論よりも感性的情緒的な部分が強く、特にSFとしての仕掛けである超知性体的なものを出さないと、新興宗教的な匂いが出てしまう。

 奇想小説としてみると、イメージの飛翔は、A.I.とか月とかテイラーメイドテクノロジーだとか道具立てはあるのだけれど、ぶっ飛んではいない。常識的SFの枠内(ん、なんだ、それ??)。A.I.シーンは、声を変えるところにイメージがいっちゃってるけど、なんで声?って感じ。

 何故か、グダグダと愚痴ばっかり書いてしまいました。これも冒頭に書いたような過ぎた期待があったから、と勘弁してください。あとネットの感想は、褒め言葉が並んでいるものが多く、へそまがりの私は批判的な言説で攻めてみました。
 んじゃ、あとは<関連リンク>の下に、ネタバレで意識の問題など好き勝手に書いてみます。さらにグジャグジャなので、ご容赦。

◆関連リンク
茂木 健一郎『プロセス・アイ』(Amazon)
・『神狩り 2 リッパー』で「クオリア」をキーワードにした山田正紀氏推薦文
 (茂木氏のクオリア日記より)

12章を読んで新幹線で泣いた。この「物語」には風が吹いている。その風は世界を吹き抜けてぼくのクオリアを優しく震わせる。

 山田正紀が泣いたのは以下の12章のフレーズでしょうか。絶対者へ挑戦する女性を描かせたらピカイチの山田正紀的フレーズ。ここは僕も好きです。

「私たちが、言葉を通して、様々なものを志向すること自体が、私たちが因果性の限定を逃れていることを意味することにはならないと思うわ。(略) 少なくとも、私たち人間の置かれた絶望的な状況を超えるためには、単に志向性の自由に頼るだけでは、だめで、もう一つ飛躍が必要だと思うのです」(P275)

・作家本人が作った『プロセス・アイ』専用掲示板
・カバー絵の飯田信雄氏 IIDA Nobuo HP。美しいイメージが観えます。

続きを読む "■茂木健一郎 『プロセス・アイ』Process A.I."

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2006.02.07

■中沢新一『森のバロック』 第一章,第二章

◆第1章 市民としての南方熊楠 (太字、リンク : 引用者)

 バロック哲学では、世界はひとつの巨大な連続体として、とりあつかわれている。この楽天的な哲学は、世界のどんな微小部分も空っぽではなく、無数の襞と無限小のモナドによって充実しきっている、と考えた。(略)
 もともとのシステムに収まりのつくものは、それでいいとして、システム内部におさまらないが、さりとて外の世界に悪魔払いもできないものも収容できる「中間性の領域」を設置して、拡張をとげる彼らの知識世界の全体性を、かろうじて維持しようとしたのである。「中間性の領域」は別名「幻想の領域」でもある。古代イラン哲学は、ここをmundus imaginalisと呼んでいた。この領域で人間の創造力が、自由に羽ばたくことができるからである。のちに二十世紀のシュールレアリストたちは、そこに芸術家の自由な創造力の貯蔵庫を、みいだそうとした。もろもろのヘテロジニアスを収容するための、この「中間性の領域」の設置によって、博物学は、近代科学にはない、芸術的な魅力を獲得することになった。(P33)

hodaka 世界はいたるところで、同一の経済システム、同一の物質生活、同一のメディア、同一の音楽、同一の教育、同一の思考、同一の感情、同一の罠におおわれつつある。そこには熊楠が沈潜することができた、深い森も現実から失われようとしている。空間の外もなく、また深遠への入り口も、いたるところで閉鎖されつつある。今では世界の内臓は、メディアと政治の明るい光の中にさらされてあり、(略)。このような世界にあって、なおも私たちには、原生林のような「自由な空間」を創造する可能性が、残されているのだろうか。(P45)

自分は狂人にならないために、生物学の研究に没頭したというのだ。(略)内部からわきあがる力が強すぎて、それを受け入れる器を、外の世界の仕事にみつけることができなかった。また欲望の多様は、現実にぶちあたるたびに、その単調さに耐えられず、癇癪となって爆発した。彼の欲望の多様と強度を受け入れ、それを人格の内側に屈折させていくことのできるものを、熊楠は探していた。(P46)

 「幻想の領域」の誕生とシュールリアリストの関係、自由な空間の希求というところが、凄く面白かった。
 熊楠の知の欲求強度、これを受けとめた博物学と森。甲状腺と暴れる好奇心の関係とか、自分の関心のあるポイントに近い記述で、言われていることの意味がよく伝わってくる。

 ここで想起したのが、現代の奥深く迷宮なウェブの知の空間と森の関係。
 熊楠のような強度ではなくても好奇心という想像力の暴れ馬を我々現代人も内蔵している。それらを受け入れる器としての電脳空間。文字通り蜘蛛の巣の網の目のように奥深くたどっていける知の空間としてのウェブ、これが受けとめている欲望の多様さを思うと眩暈がしてくる。
 森をなくした21世紀人の新たなバロックな空間としてネットを位置づけると、ITバブルの正体とか21世紀の知の方向がなんとなく見えてくるような気がする。この視点でネットの進化形態を空想、、、ワクワクしてこれらの文章に刺激されて感じたわけ。(もちろん、ITバブルの正体は、経済のメカニズムだとか、新領域への単なる期待とか、そうした要因が大きいことは認めた上で、この森の代替としてのネットっていう視点の面白さを指摘したいわけです。少なくとも僕がネットサーフィンで得る快感は、この欲求とリンクしている。)

◆第2章 南方マンダラ

 「物」と「心」の間に生ずるものを「事」と呼ぶ。そしてその抽象活動である「印」。これらがスパイラルを描いていくことで、作られていく脳内のイメージ。物と心の二元論でなく、このように考えた時の人のイメージについての視点が新鮮で心地いい。

 例えば、先日書いた「レイモンド・カーヴァー ファースト・インプレッション」。
 いくつかの短編を読み進んでいった時にある種、衝撃的に感じたカーヴァーの根底にある(と僕が感じた)イメージ。これが生成するプロセスを上の視点で考えると、とてもスッキリとおさまりがいい。つまり一つ一つの短編との間で「事」が発生し、その抽象化としてカーヴァーの根底イメージとしての「印」が私の中に生まれる。

 このBlogで映画や本によって生じるイメージについてゴタクを並べているわけだけれど、確かに抽象化されてスパイラル状に積層していくことで、ある作家や監督の持つ独特のイメージが我々の頭の中に転送されていく過程があるわけで、脳内の図式化として熊楠のとった方法は、しっくりとはまりました。(これで拘束はされたくないけどね)

◆関連リンク
Heterogeneous(wikipedia)
■中沢新一『森のバロック』 総論: ★究極映像研究所★

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2006.02.06

■ダリ・ユニヴァース:Dali Universe

Dali_Universe_1
London County Hall Gallery "Dali Universe"
 ロンドンで開催されているサルバトール・ダリの展示会。
 街にダリ作品のオヴジェが展示されているようで、なかなかシュールな光景が広がっています。
 → Dali Universe - Google イメージ検索

Dali_Universe_2  会場内も素晴らしく不思議な空間の様相。
 こんなレストランで『アンダルシアの犬』に出てきたような目玉が、料理として出されたら、さぞかしすんごいでしょう。(<<なんてグロい想像するんだ!)

◆関連リンク
Photography - Dali Exhibition, London Eye, South Bank
 ここの写真がなかなかいいです。

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2006.02.05

■中沢新一『森のバロック』 総論

mori中沢新一『森のバロック』 (Amazon)

 1992年に出た本なのだけれど、本屋で見かけて、タイトルに興味を持って読んでみました。中沢新一ははるかな昔に『チベットのモーツァルト』を読んだ以来なので、すでに20年ぶりかも。

 これがかなりインパクトのある本でした。傑作。
 いろんな刺激的な言説があって、ページをめくるたびに新鮮な視界が広がる、という本。

 Amazon等の紹介に「日本思想の可能性の宇宙樹。南方熊楠論」とある。
mori02  僕の読後の感じとしては、中沢新一が熊楠の著作と膨大な書簡から読み解いた熊楠思想とその現代における可能性、という内容。現代の思想、自然科学等の知見と対比しながら、主に熊楠の日本的アジア的な思想が、どう西洋思想に対して拮抗し、さらに未来に向けて可能性を拡げていけるかを、熱く(本当に中沢の筆は熱い)書き起こしている。

 補遺は全体を軽く紹介した単独のエッセイなので読み飛ばすとしても、第1章から結論までは、本当に面白く読める。いちいち自分が今抱えている疑問や興味の対象や課題(仕事等)に、熊楠的(中沢的)な思考を当てはめてみると、思わぬ視野が広がる、という意味でどんどん読み進めてしまえる本。
 南方熊楠という名はアチコチで目にし、面白そうな印象はもっているのだけれど、熊楠の思想の実物にあたったことのない自分としては、どこまでが熊楠のもので、どこからが中沢のもの(もしくは彼の知る現代の知見)か判別できないのだけれど、まさに曼荼羅的/超領域的にワイドスクリーンバロックに展開するこの本はお薦め。

目次
第1章 市民としての南方熊楠
第2章 南方マンダラ
第3章 燕石の神話論理
第4章 南方民俗学入門
第5章 粘菌とオートポイエーシス
第6章 森のバロック浄のセクソロジー
第8章 ポリフォニーとマンダラ
結論 来たるべき自然哲学
補遺
ヘリオガバルス論理学
書簡による南方学の創生
Une sorte de Mozart Tib´etain

 長くなりそうなので、以下、各章ごとの感想とかメモは別記事にまわします。いや、噛み出がある本なので。
■中沢新一『森のバロック』 第一章,第二章: ★究極映像研究所★

◆関連リンク
南方熊楠 中沢新一 (ウィキペディア(Wikipedia))
粘菌生活:デジタル映像で見る細胞性粘菌の世界 動画
 (弘前大学農学生命科学部 応用生命工学科 細胞工学講座)
長女南方文枝さんが語る「普段着の南方熊楠」 (紀伊民報AGARA)
・写真家 森武史氏の-熊野古道-
森のフリー写真素材・壁紙集
 この記事の森の写真はここの素材を使わせていただきました。
・中沢 新一編 南方熊楠コレクション(Amazon新刊は品切れ) 
 kumakusu_collect

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2006.02.04

■Antenna×ヤノベケンジ -ジャッピー、トらやん、そして第3の塔-

YANOBE KENJI ART WORKS /// ヤノベケンジ アートワークスより
poster 第2回現代美術コンクール_展覧会

Antenna×ヤノベケンジ
ヤノベケンジとあなたがつくる未来の物語
森で会いましょう
-ジャッピー、トらやん、そして第3の塔-
2006年3月4日(土)~3月18日(土)
大阪府立現代美術センター 展示室A

現代美術センターに人工の森が出現し、Antenna制作の「ヤマトぴあ」の建造物、ヤノベケンジ作品の子供たちを守るシェルター機能を持つ『森の映画館』等でインスタレーションが展開されます。"ジャッピー"をアイコンとする壮大な『囿圜YU-EN』の世界。"トらやん"が活躍する『森の映画館』。妄想と現実がクロスオーバーする二つの物語の一大スペクタクルをお楽しみください。

展示内容
・『森の映画館』(ヤノベケンジ)を含むインスタレーション(Antenna制作)
・Antenna、ヤノベケンジ共同で製作される新作映像『塔を登る男達』(50分)

trailer  『塔を登る男達』予告編のムービーが観えます。
 今までのヤノベ作品、Antenna作品の引用と新作部分。テンポの良い編集で繋がれています。

 登場する「第三の塔」は、チャイニーズ・ゴシックならぬジャパニーズ・ゴシックなイメージ。これが「「ヤマトぴあ」の建造物」なのでしょうか。

 映像にはジャイアントトらやんも登場していますが、展覧はされないようです。
 塔という巨大建造物をメディアにして、何が表現されるか、、、?来月はまた大阪まで探索の旅に出かけましょうか、、、(^^;)。

◆関連リンク
Antenna(公式HP) コンクール入選者
 映画『囿圜YU-EN』(これがジャパニーズ・ゴシック(?)) この映画の設定(背景)がなかなかワクワクします。

京都を中心に活動するユニット。美術・デザインといった領域に限定されない表現媒体は 多岐にわたる。メンバーは市村恵介、岡 寛志、田中 英行、矢津 吉隆の4人。

・当Blog記事
 「KENJI YANOBE 1969-2005 ヤノベケンジ作品集出版記念イベント@豊田市美術館

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■SF作家ジュール・ヴェルヌの没後100年パレード
  ゴシック 月世界 ジャイアント・マンモスと巨大アンドロイド少女

elephant_robot Kyoto Shimbun News:
 フォトダイアリー 「巨象、故郷歩く」

フランスのSF作家ジュール・ベルヌの没後100年を記念して、故郷のナントで開かれたパレード。機械仕掛けの巨大な象は、冒険心と想像力に満ちた著作と同様、人々を魅了したようだ。

 なんか凄い写真を見てしまいました。昨年の5月にフランスで行われたイベントの模様。巨大なアフリカ象orマンモスロボットが都市をのし歩いています。

 昨年の愛知万博でヤノベケンジが果せなかったマンモスプロジェクトがこんな形でフランスで現実になっていたとは!驚きです。ヤノベ氏の構想は20mの巨大マンモスだったけれども、こちらのは9m(30feet)です。9mでも充分な迫力なので、20mの巨体が実現して名古屋の街を歩いたとしたら、、、想像するだけで興奮します。

 フランスのこのパレードの全貌を激しく観たくなって、ネットを探してみました。
 Nantes.fr Royal de Luxe ここに写真とビデオがいっぱい。パレードの全体像に近づけます。
 (Engadget Japaneseさんの高さ9メートルのロボット象 - 経由)

 他にも素晴らしい写真や動画がありますので、上記Nantes.frを覗いてみて下さい。
 時間のない方は、下記クリックすると大きな写真が見えます。
elephant__gothic getsusekai_ryokou__giant_girl

getsusekai_ryokou__boy_girl elephant__girl
 『月世界旅行』の砲弾型ロケットがゴシック寺院の前に落下しています!
 ロケットから現われる巨大な少女の人形!
 そして、象の鼻に乗って移動するあやつり人形のアンドロイド少女!

 まるで押井守の『イノセンス』の世界が、フランスの町に出現したようなセンス・オブ・ワンダーに溢れる映像です。カンドー。行ってみたかった、、、。

◆関連リンク
長時間のロボット象の動画。鳴き声付き。
 ちゃんと歩いて、鼻を動かしています。
巨大少女の動画。かなりスムーズな動き。
100th anniversary of the death of Jules Verne(公式HP)
 ここにはあまり詳しく載っていません。
ジュール・ヴェルヌ博物館
ヤノベケンジ+ARTZONE Mammoth Project Office

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2006.02.01

■『セサミストリート 4-D ムービーマジック』

cinema_4d
セサミストリート 4-D ムービーマジック(TM)/アトラクション/USJ

 Sesame Street 4-D Movie Magic,2003

SESAMI_ELMO 「セサミストリート映画フェスティバル」。カウント伯爵の「カウンティング・カウボーイ」が上演され、続いてプレーリー・ドーンの「スペース・ポニーズ」がいよいよクライマックスというときに、映写機が突然壊れてしまう。
 仲間たちががっかりして立ち去ろうとすると、エルモが「映画を上映するのに映写機は必要ない。本当に必要なのはイマジネーション(想像力)だ」とみんなに向かって呼びかける。

 『シュレック4-D』に引き続き、同じCINEMA 4-Dの劇場で公開されている『セサミストリート』のアトラクション。これも70mmの偏光方式の立体映画+各種体感アイテムによる4Dアトラクション。こちらはジム・ヘンソンの人形たちによる実写映像。『シュレック4-D』と異なり「オグリビジョン : Ogre Vision」とは書かれていない。実はググってもOgre Visionの正体は不明なのだけれど、こちらは3D-CGではないことと、クッキーの匂いが漂ってくるところが違う。

 シュレックに比べると、当然ながらほのぼのとしている。たぶん世界一アットホームな高臨場感映像でしょう。僕は『セサミストリート』の人形たちはそれほど好きではないのだけれど、今回のクリアな3D映画で少しはまってしまいそう。人形たちの毛並みや質感が素晴らしい臨場感で迫ってきます。
 ちょっと調べてみたらこのアトラクション、実はアメリカ本国のユニバーサルには存在しない。どうも日本オリジナルの作品のようです。元々セサミが好きな人には、最高のプレゼントでしょう。

SESAMI_cocky  特に良かったのが、左にあるクッキーモンスターが巨大化して、その頭上にクッキー型UFOが現われるシーン。
 ここではクッキーが観客席の頭上を飛ぶように見えるのだけれど、その時にUFOからのスポットライトが会場の観客席へ照らされる。この臨場感がなかなか。そして飛び散るクッキー。これは本当に手を伸ばせば取れそう。画像がこちらもとにかくもの凄くクリアで、ハイビジョン的な高精細画質×立体でとにかくため息が出る映像空間になっています。

 人形たちを観ながら思ったのは、これがシュヴァンクマイエルの人形たちだったら、、という想像。想像するだけで興奮してきますが(^^;)、どこかでシュールリアリスティックなテーマパークの建造を企てているようなところはないでしょうか。この際、あの怪しいエーリッヒ・フォン・デニケンが作ったスイスの遊園地(通称デニケンランド) のMystery Park(全景 GOOGLE画像)でもいいので、そんなアトラクションをどっかで作ってほしい。一番はチェコのアニメが世界的に大ヒットして、チェコのプラハにシュールリアリズムパークが出来ることなのだけれど、ありえんだろーなー、、、、(遠い目)。

◆関連リンク
特殊映像博物館立体映像作品リスト
セサミストリート 3Dウォーク(SHOCK WAVEによるコンテンツ)
IMDbでTitle Searchにも情報なし。よって監督名は不明です。

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