■滝本誠『渋く、薄汚れ。フィルム・ノワールの快楽』
リンチの歌姫 レベッカ・デル・リオとジョセリン・モンゴメリ
映画・小説・絵画などの背後に蠢く闘争、ハリウッドスキャンダル、......世界の底辺(ワイルドサイド)にただずむ快楽を丸裸にする、滝本誠のノワールワールド!
滝本誠氏のひさぴさの新刊。今回も独特のこだわり炸裂の本になっています。
特に初めて読む滝本氏の自伝(「プチ自伝」)が興味深い。いなかの中学生がどうシュールでノアールな芸術青年になっていったかという物語。岡本太郎や瀧口修造、加賀まり子、、、等々がその源泉。タキヤンファン必読です。
◆本書関係リンク集
読んでいて、いろいろと刺激的な表現があって、原典にあたりたくなる。特によく知らないノワールがらみの話は興味深いのだけれど、いかんせん、元の作品を知らない薄学者。そこで気になったところをネットで探索した結果をリンク集として掲載。まず自分のメモのためなのだけど、本書で興味を持った読者の方の参考になれば、幸い。(本書を読むこともだけど、僕にとって、下記リンク集を作る際のウェブの探索そのものが滝本ノワールプチ追体験。皆さんもジョセリン・モンゴメリの曲を鳴らしながらウェブを彷徨ってみて下さい(^^;))
関連ページに続いて、リンク。
・P 66 グロリア・グレアム『復讐は俺に任せろ』 Gloria Grahame THE BIG HEAT。今、観ると滝本氏が書くほど扇情的ではないけど、当時のインパクトを想像しました。
・P105 『ロスト・ハイウェイ:Lost Highway』のロバート・ブレイク:Robert Blake(右)の妻殺し事件。こんな事件を起こしていたのですね。映画でのすさまじい怖さが忘れられません。
・P120 Edward Hopper "Western Motel"
・P113 エドワード・ホッパー作「ナイト・ホークス」 Edward Hopper "Nighthawks"
『ブレードランナー』に関するトリビア(Trivia for Blade Runner (1982)(IMDb)下記引用)。
このムードをリドリー・スコットが引用しているということなのだけど、どっかホッパーの絵はまだ牧歌的なアメリカな感じ。あの映画のハードでダークなイメージはこれらの画を参照していると言ってもやはりオリジナルなのでしょう。
Ridley Scott carried a photo of Edward Hopper's famous painting "Nighthawks" with him during shooting to show it to the crew members, to give them a feeling what kind of mood he wanted to create in the film.
・P155 ジョセリン・モンゴメリ:Jocelyn montgomery
Jocelyn montgomeryの試聴
・Lux Vivens:Living Light(lynchnet.com) (Amazon試聴可)
・The City of Absurdity - David Lynch's Music, Jocelyn Montgomery
・アシンメトリカルスタジオについてジョン・ネフとリンチが語っているページ。 「あの歌姫ジュリー・クルーズのそれをさらに純化させた声質なのである。」1998年にリンチが見出し、自身の音楽スタジオ アシンメトリカル・スタジオ:Asymmetrical Studioからリリースしたジョセリン・モンゴメリのヒルデガルト・フォン・ビンゲン:The Music Of Hildegard Von Bingenという12世紀の歌曲。僕の少ない音楽ボギャブラリから言うと、エンヤに似た感じかと。
・P155 ジュリー・クルーズ:Julee Cruise
Blog ♪誰が聞くのか?さん: ♪Julee Cruise (ジュリー・クルーズ) の
Floating into the Nightで紹介されているドイツのデビット・リンチサイト。
ロンドンライブのMP3が聴けます。ジュリー・クルーズの歌う「ブルーベルベット」は初めて聴きました。
・P162 レベッカ・デル・リオ:Rebekah Del Rio
公式HP。素晴らしい歌声が数曲聴けます。
"Llorando"は、『マルホランド・ドライブ』のサウンドトラックを含めて3ヴァージョン。重く荘厳な映画版と異なり、ラテン的に少し陽気なヴァージョンも聴けます。彼女の1枚だけでているCD "All My Life"の収録曲も、全部サイトで聴けます。それにしても、『マルホランド・ドライブ』だけでは全米でヒット、CDが何枚も出る、なんてことにはならないのですね。
The story behind Llorando by Rebekah。リンチとの出会い、『マルホランド・ドライブ』での"Llorando"にまつわるエピソード等が語られている。
Video Llorando(『マルホランド・ドライブ』のシーン)とライブのSuperstarのビデオ。
『マルホランド・ドライブ』って、本当に恐ろしい映画だ。この曲を聴いて、あのシーンを観ていると魂を獲られそうな気持ちがしてくる。獲られそうになるのは、この映画は「死」そのものを描いているからではないか、という解釈を最近、考えている。記憶とか回想の映画であると思っていたのだけれど、どうもこれって、死ぬ前に人生を幻覚もあわせて俯瞰する瞬間を描いた映画でないかと思えてきた。そして、ある意味、甘美にも聴こえるレベッカ・デル・リオの"Llorando"。完璧である。
滝本氏は、200枚になる勢いの『マルホランド・ドライブ』論を書かれているという。出版が凄く楽しみ。少しでもはやく、次作として出版されることを祈ります。
・P167 瀧口修造 地球創造説
シュウルリアリスムの日本への紹介者瀧口修造の黒い表紙に黒インクで書かれた本。次の一説を読むだけでも、そのイマジネーションの喚起力にはうなります。
Blog 仔犬の散歩跡さん 「地球創造説」(1928年) より一部引用。
両極アル蝉ハアフロディテノ縮レ髪ノ上ニ音ヲ出ス
男モ動物モ凡テ海ノヨウニ静カニナル
アフロディテノ夏ノ変化ハ
細菌学的デアル
(……)
金属ノジャスミンヲ
終息セントスルアポロ神ノ呼吸ハ
恐怖ト快活トガ混合シタ
羊肉ノヨウナ薔薇ト同一デアル
(……)
・P169 チャールズ・ウィルフォード:Charles Willeford
『炎に消えた名画:The Burnt Orange Heresy』
「美術評論家を主人公にして、伝説のニヒリスティック・シュルレアリストの今を探訪するという空前のマイナーかつハイブラウな試み」。ということで、俄然、読んでみたくなりました。
チャールズ ウィルフォード『炎に消えた名画(アート)』(Amazon)
・フランスのサイバーパンクSF作家モーリス・G・ダンテックを原作にした映画 『レッド・サイレン』の詳細情報。ここのリストでシナリオにノーマン・スピンラッドってあるけど、これ、SF作家のスピンラッドとは別人だよね??? 映画については、ここのレビュウが詳しい。
オリヴィエ・メガトン監督『レッド・サイレン』(Amazon)
◆関連リンク
・滝本誠『渋く、薄汚れ。―ノワール・ジャンルの快楽』(Amazon)
・『映画の乳首、 絵画の腓(こむら)』(ダゲレオ出版) 絶版
・『映画のアウトサイド』
・『美女と殺しとデイヴィッド―タキヤンの書き捨て映画コラム100連発+α』
・滝本誠公認ページ タキヤンの部屋 なかなかのインパクト
・タキヤン・ショップ
・滝本誠(Amazon)
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コメント
matkaさん、こんばんは。コメント、ありがとうございます。
僕もジュリー・クルーズのツインピークスの歌声、大好きです。バダラメンティの音楽とのマッチング、最高ですね。
もっと活躍してほしいボーカルなのですが、最近、CDも出ていないようで、寂しいです。
あとバダラメンティだと、『ロスト・チルドレン』もいいですよね。
ではでは。
投稿: BP | 2006.06.01 00:11
ツイン・ピークスしか見ていないので、リンチ作品を語ることはできませんが…
サウンドトラックを持っています。
寝る時にBGMとしてかけると、もう二度と目覚めないんじゃないかという気分にさせられます。
生気を吸い取られる感じ。
それが病みつきなんです。
Fallingも好きですが、The Nightingaleが一番好きですv
投稿: matka | 2006.05.31 13:12