■BSアニメ夜話 / イノセンス Innocence
BSアニメ夜話/イノセンス(公式HP)
5月4日(木) 23:00~
「イノセンス」 2004年 / 監督 : 押井守
石川光久 、瀬名秀明、秋山貴彦、岡田斗司夫、
氷川竜介、中川翔子、里匠
◆石川光久氏の語る裏話 今回の『イノセンス』、絵コンテと動画等を紹介しながらの映像としての分析と、テーマについて、幅広く語られていて、アニメ夜話第六弾の中では一番楽しめた。だけど、個々の話題について、もう少し突っ込んだ議論が聞きたかったなー、というのは放送時間からすると無理な注文か。
この左の絵コンテは、択捉のシーンについて、絶対的な情報量でカオスを表現するという押井守の指示を石川Pが自分のコンテに書き込んだ貴重な画像。一番上の択捉の文字に「エトロフ」とルビが振ってあるのはご愛嬌(^^;)
この後は、絵コンテ、原画(沖浦啓之氏)と動画の映像を交えてわかりやすく語られていた。
右のバトーが少女を助けるシーンのエピソードは知らなくて面白かった。ここを欠番にする判断が出ようとしていた時に、沖浦氏の作画が元々3秒の予定を大幅に超えた28秒で完成、尺が変わってプロデューサ、監督泣かせのシーンだったとのこと。ここって、結構肝のはずなのだけど、欠番でもよかったというのは、どういうことなのか。確かに後で述べる岡田斗司夫氏の分析が映画のメインテーマなら無くてもいいかも。このシーンがあったばかりに少女の方に目が行った観客は、このメインテーマからはミスリードされるわけだし、、、。少女の気持ちは必要なくて、素子との再会だけが描けていればいいということ。 素子が行ってしまうところの原画、セクサロイドから素子が抜けて、人形が崩れ落ちるところが原画と動画と実際の映画のシーンで紹介された。ここのシーン、人形の気持ち悪さとか表現されていて、アニメートとしてはなかなか良いけど、好きにはなれないところ。
あと右は、沖浦アニメートっぽい動きのところ。
こういう作画のクレジット表記をするところは、I.G.(or NHK)、素晴らしい。せっかくのアニメ分析番組なのだから、こういう機会に普段日陰のアニメータをどんどん前面に出してほしい。(と言ってもこういう番組の視聴者は既に沖浦啓之の名は知ってるか、、、、。)
ここでは沖浦アニメートの特長とか、他の映画のシーンを複数放映して、その原画力をもっと語ってほしかったりする。(ここの作画の詳しい話は下記リンクにも載せたWEBアニメスタイルにあります)
◆氷川竜介氏のアニメマエストロ ここは3Dと2Dを違和感なくみせるためのエフェクト処理について。
だいたいは円谷英二が特撮でやっていたスモーク処理のようなものかと。特撮では実際に現場でスモークをたいて、ミニチュアに対して大気というか空気感を加えて、リアリティを出す手法らしいけれど、『イノセンス』でも同じ理屈になっているように感じた。
3Dのディテイルの質感を大気の層に相当するぼかし(?)処理で遠近感を持たせ、2Dセルについてはペラペラなセルの質感を少し重層にする、といったところ。
もうひとつエフェクト前後が放映されていたヤクザとバトーの銃撃シーンは、もっと凝っていて、この効果プラス銃の閃光の細かいエフェクト、といった感じ。これって、たぶんディジタル処理がひとコマづつ人手で施されているのでしょうね。ここにも良いアニメータと同質のセンスが本来要求されるはず。ここも誰がやってるか、クレジットすればいいのに。
◆岡田斗司夫氏のテーマ分析
岡田斗司夫のプチクリ日記 「イノセンス」私的解読
(イノセンスは寅さん(バトー)映画という指摘と、押井守ドS論が面白い)
ここについては、上記リンクでご本人が語っているので、そちらをご覧あれ。
恥ずかしながら絵の凄さにばかり目が行っていて、こういうテーマについては僕はノーチェックだったので、面白い指摘でした。(前作との関係や押井の映画の傾向から、言われてみれば、この分析、説得力があります。) (全編観直す時間がなく(こんな記事、書いてる時間があれば観えるのだけど(^^;))、一部観直してみた。)
特に面白かったのが、ラストシーンの分析。(観てない方のために、一部伏字)
このトグサの娘の持つ人形の中にも素子がいるのかもしれない、というバトーの想いが表現されているシーンだ、という分析。そうやって観なおしてみると、まさに下記のカット順に映画は終わっていき、このすぐ後にFollow Meの歌が流れるので、岡田テーマ分析のまさに具体的検証シーンと考えられる。ラストのバトーとガブリエルのカットはこのままの絵で15秒と異例の長さでひっぱっているし、なんといっても映画のオーラスのカット。
僕は娘と人形-バトーと犬の対比で、人と人形-人と犬の関わり方というのがテーマなのかな、とぼんやり思ってたのだけど、それなら間に入る人形のアップやFollow Meの歌はほとんど関係ないわけで、やはりここは、めめしいバトー君のシーンと観るべきかも。眼がサイボーグ化されていて表情がよめないけど、ここはガブリエルと同じ表情の眼で人形をみつめていると考えるのが妥当そう。そう想って観ていくと、すぐ後に流れるFollow Meの歌がバッチリ。
Follow Me歌詞 (Lyric: Herbert Kretzmer/Hal Shapey)
YOTABLOGUEさんより
Follow me to a land across the shining sea
Waiting beyond the world that we have known
Beyond the world the dream could be
And the joy we have tasted
◆蛇足
今回の放映はNHK BS2。石川Pが語っていたように、ハイビジョンでしかその真価を発揮できない映像の分析を、よりによってNHKでも唯一ハイビジョン化されていないアナログBSチャンネルでやるとは、もったいない。是非ハイビジョンでやってほしかった。『イノセンス』はBSデジでも地デジでも放映されていないが、もうこれは次世代光ディスクのキラーコンテンツ(??)として、石川Pと某ソフトメーカが放映しないことで握っているとしか考えられません。
◆関連リンク
・shamonさんのひねもすのたりの日々 BSアニメ夜話「イノセンス」
・当Blog記事 ■沖浦啓之氏『イノセンス』の作画を語る
WEBアニメスタイル アニメの作画を語ろうより。
・『ロマンアルバム 2501 イノセンス絵コンテ』(Amazon)
これ、すでに絶版ですね。ほしかったー。
・押井守 - Wikipedia
当BlogBSアニメ夜話 関連記事
・『カリオストロの城』 ・『嵐を呼ぶモー レツ!オトナ帝国の逆襲』
・『未来少年コナン』 ・『機動警察パトレイバー』
・『銀河鉄道999』
・第6弾 ・第4弾 ・第3弾
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コメント
シロクマさん、はじめまして。コメントとTBありがとうございます。
>>今回の『アニメ夜話』は、語られる「内容」よりも、語る「形式」が刷新
>>されて、それが何より良かったと思います
確かにそうですね。岡田氏は司会よりこっちの方がのびのびしている。あと中川翔子と、里匠アナのオタク度もなかなか◎でしたね。
次回もこのペースでいってもらいたいものです。せっかく氷川氏がいるのだから『ザンボット3』とか、とりあげてほしいものです。もちろんゲストは金田伊功で。
投稿: BP | 2006.05.10 23:14
TBありがとうございます。
今回の『アニメ夜話』は、語られる「内容」よりも、語る「形式」が刷新されて、それが何より良かったと思います(前シリーズが「なんだこりゃ」な出来だったので、やっぱりチェックが入ったんでしょうね)。
「トーク番組はゲストが命!」だと思いますが、神山健治氏が出るとは―――番組HPで事前に告知してほしかった・・・ 番組当日になっても「ゲスト未定」という表示なのは、視聴者としてはちょっと困りますな。
投稿: シロクマ | 2006.05.09 21:35
shamonさん、こんばんは。風邪は大丈夫ですか?明日からお互い仕事(だよね?)、がんばっていきましょ!
>>でも欲を言えば沖浦氏だけでなくほかのアニメーターの仕事も語って欲しかった。
言えてますね。でもあの時間枠では厳しいので、NHKに時間を増やすのと、ハイビジョンCh.への移行を要望しましょう。
>>ボートハウスのシーンは沖浦氏担当で、そのリテイクの厳しさに新人が
>>一月仕事休んだってありますね。
うへっ、確かに上司としては厳しそう。というか、自分に厳しい人みたいだから、それで部下はプレッシャーを覚えるのかも。
『人狼』がよかったので、原画の仕事も観たいですが、次回監督作も楽しみにしています。でもいつになるのかなー。
投稿: BP | 2006.05.07 21:33
おはようございます^^。TB感謝です。
いい特集でしたね。
私は前作ともに初見から「ラブ・ストーリー」という感想を持っていたので、
岡田氏の指摘は理解できます。
でも欲を言えば沖浦氏だけでなくほかのアニメーターの仕事も語って欲しかった。
どうしても「攻殻」=沖浦氏になっちゃうのかな。
押井監督も前作のロマンアルバムで
「沖浦の担当部分に華があって黄瀬が割食ってる。」
と言ってますし。
DVDのオーディオコメンタリーによると、
ボートハウスのシーンは沖浦氏担当で、そのリテイクの厳しさに新人が一月仕事休んだってありますね。
現場の厳しさが目に浮かぶようです^^;。
投稿: shamon | 2006.05.07 10:50