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2006.10.01

■押井守監督 『立喰師列伝』

立喰師列伝(公式HP)  立喰師列伝企画書(押井守公式HP)
押井守監督 「立喰師列伝」への思いを語る - 「livedoor コンピューター」Home

 昭和20年、太平洋戦争終結直後、廃墟からの復興を期する東京の片隅。まもなく店を閉めようとしている立喰い蕎麦屋に、伝説の立喰師「月見の銀二」の姿があった。「つきみ、・・・そばで」、月見の銀二の容赦なき「ゴト」が静かに仕掛けられてゆく。

 やっと観ました『立喰師列伝』。なかなか傑作。あまりに評判が悪いので、劇場へは行かなかったのだけれど、DVDで楽しんだ。アンチ押井守実写映画派の僕としては、今回もとても不安だったのだけれど、好きです、この映画。
 そういえぱ、もともとこれは、実写映画というより写真を用いたアニメーション映画だ。

Tachiguishi_gendai_bungaku02_1 この映画は、押井守の現代文学への挑戦って文脈で観ると面白いのではないか。劇中に吉本隆明、高橋源一郎、村上春樹、リチャード・ブローティカ゜ン作品への言及があるという単純な理由の他にもいろいろとその根拠はある。

 冒頭から飛ばすナレーション。押井守独特の文体で語られる途切れのないナレーションは、映画ではなくまるで小説を朗読されているように感じる。映像が静止画の加工であることからまるで小説の挿絵のように観えないこともない。

Tachigui_yoshimoto  そしてフランクフルトの辰のシークェンス。
 観覧車のシーンはまるで現代のカッティングエッジな小説世界に入り込んでしまったような趣がある。何故なのか実は分析できていないのだけれど、そんな気持ちがヒシヒシと押し寄せてくる。押井守が小説について語る言葉は、あまり聞いたことがないのだけれど、ある意味、実験実写映画を撮ってきた押井監督が新しいと言われる小説を読んで、なんだ、これでいいんだ、と開き直って描いた映画世界がこれだ、という感じ。

 犬が登場する戦後史というところから、自然に思い出すのが、古川日出男の『ベルカ、吠えないのか?』。あの雰囲気にも近いところがある。(犬馬鹿の押井監督が『ベルカ、吠えないのか?』をどう読んだか知りたいところ。)

 ハンバーガーの哲のシークェンスで、店長神山の怪演技に大笑いさせてもらった後、観覧車でとっても文学的脳内映像を見せてもらって、大満足な映画でした。(村上春樹というよりは、高橋源一郎ファンにお薦めかも。)

◆関連リンク
野良犬の塒さん 立喰師列伝
・限界小説書評 『火曜日になったら戦争に行く』/渡辺玄英におけるいくつかのこと   ――セカイ系、押井守、現代詩、『スーパーロボット大戦』その他
・整腸亭日乗さんの - 押井守は凄いぞ

「ケツネコロッケのお銀」の喪失感は、吉本隆明の詩「分裂病者」の引用で補完している。

リチャード・ブローティガン『バビロンを夢見て』(Amazon)
『吉本隆明全詩集』(Amazon)
・当Blog記事 古川日出男の『ベルカ、吠えないのか?』

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コメント

おはようございます。BPさん。

>そりゃもう素晴らしいスタッフが、、、。
「ロマンアルバム イノセンス押井守の世界PERSONA増補版」には

特技監督:樋口真嗣
デジタル監督:林弘幸
脚本:伊藤和典
音楽:川井憲次

と当時関わった人の名前が載ってます。
ぽしゃったいきさつやパイロットフィルムの一部も掲載されてます。

>激しく観たい。
ですよねぇ(私も未見)。
どこかで何かの折に一度上映されたきりじゃないかな。

投稿: shamon | 2006.10.09 08:13

shamonさん、こんばんは。

>>監督の頭の中では「いざという時のために」スタッフリストが
>>出来ているんじゃないでしょうか。

 そりゃもう素晴らしいスタッフが、、、。
 『G.R.M. ガルム戦記』のパイロットって、観たことありますか?僕は実は未見。YouTubeにもないし、、、。どっか知りませんか??激しく観たい。
 

投稿: BP | 2006.10.08 00:27

こんばんは^^。TBありがとうございました。

久々に「めざめの方舟メイキング」を引っ張り出して鑑賞中。見直すと新たな発見があって面白いです。なぜか樋口監督がいたり、空撮のためチャーターした飛行機のエンジニアが押井ファンだったとか(笑)。

>煙幕はりすぎ(^^;)。
半年立った今だから「気に入った」と言えるんですよ。
観た直後はあまりの毒気に当てられて「一体これは何?」であのレビューになりました(大笑)。

>すまぬことをしました。
いえいえ^^
ご自宅でご覧になったのは賢明です。映画館だと大音響だから3日間くらい頭が痛い(笑)。

横レスですが

>技術が進展するちょうどいい時期に、ちょうど良い監督がそこにいたって感じですね。やはり『G.R.M. ガルム戦記』絶対観たい。

監督の頭の中では「いざという時のために」スタッフリストが出来ているんじゃないでしょうか。
「めざめ」メイキングでぶつぶつ「ガルム、ガルム」って仰ってたので。

投稿: shamon | 2006.10.03 20:43

 shamonさん、あまりとなえさん、こんばんは。

>>お気に召したようで何よりです(笑)。神山監督の怪演が最高ですよね。

 そ、最高!!あの人、てっきり真面目一本の人かと作風から推測してましたが、こんなにお茶目だとは、、、。次回出演作も観てみたくなります。

>>個人的には絶対に人には勧められないけれど(笑)、私もこの映画、好きです。

 てっきり人柱で犠牲になられたかと思っていたら、気に入ってたのですね。、、、煙幕はりすぎ(^^;)。たしかに万人が喜ぶ映画ではないですが、、、。てっきり本当につまらないんだと思ってしまいました。そーいえば、私には薦めてましたね!すまぬことをしました。


>>こんばんは、初めてトラックバックさせて
頂きました。

あまりとなえさん、TB、ありがとうございます。そいえばリンク貼らねば、、、(^^;)。

>>フランクフルトの辰(テラカツ)のシークエンスはクライマックス前の所謂「ダレ場」
>>として持って来たそうですが、なんともいえない妙な気持ちにさせてくれます。

 僕はクライマックスが今ひとつ。フランクフルトが最高でした。あのなんだかわからない昇華の仕方は凄い。『ビューティフル・ドリーマー』の夢邪鬼のタクシーシーンを思い出したのは私だけ??

>>CGの技術を、その意味においては最大限発揮
させる事の出来る作家といえるのではないかと。

 技術が進展するちょうどいい時期に、ちょうど良い監督がそこにいたって感じですね。やはり『G.R.M. ガルム戦記』絶対観たい。

投稿: BP | 2006.10.02 23:57

こんばんは^^。

お気に召したようで何よりです(笑)。神山監督の怪演が最高ですよね。

個人的には絶対に人には勧められないけれど(笑)、私もこの映画、好きです。

投稿: shamon@人柱 | 2006.10.02 21:09

こんばんは、初めてトラックバックさせて
頂きました。

フランクフルトの辰(テラカツ)のシークエンスはクライマックス前の所謂「ダレ場」として
持って来たそうですが、なんともいえない
妙な気持ちにさせてくれます。睡眠も誘発
しますけど(笑)。

 今迄は押井の監督作品は厳密に実写とアニメが分断されていて、アニメは傑作だけど
実写は…まあ低予算だし…実験映像、前衛作品だし…といった印象でしたが前作アヴァロン辺りから境界が曖昧になって、今回遂に
両作品融合した傑作(というか監督のイメージにかなり近い映像を作れた)になり得たのではないかと感じました。
CGの技術を、その意味においては最大限発揮
させる事の出来る作家といえるのではないかと。

投稿: あまりとなえ | 2006.10.02 00:39

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