■宮崎駿 初期原画<1> 『侍ジャイアンツ』第一話
『侍ジャイアンツ』第一話「ほえろ!バンババーン 」より番場蛮の作画
作監/大塚康生 原画/宮崎駿・小田部羊一(Aプロダクション)
CATVのキッズステーションで『侍ジャイアンツ』の放映が始まった。あわせて『ルパン三世』の第一作も放映されている。これを機に、宮崎駿の初期TV作品での原画担当シーンをちょっとだけ分析してみたい。(宮崎が「フィルム1/24」やアニメ誌でとりあげられはじめた1980年ごろに、再放送をVTRに撮って繰り返しみたこれら作品がデジタルのおかげで詳細分析できるようになったので、懐かしいやら、嬉しいやら。深井克美と並べて『侍ジャイアンツ』を述べる醍醐味が究極映像研の持ち味です(^^;))
この第一話は、前半が小田部羊一、後半が宮崎駿という凄いラインナップ。
まず上の写真。番場蛮のシャープでダイナミックなフォルムと、全部原画のような作画にまずはご注目。これ、間を一、二枚抜いて引用していますが、中割りするには大胆な原画で、動画マンでなく、かなり宮崎自身の絵ではないかと思われます。(終わりから2枚目のしまりのない顔は少しいただけませんが、、、。中割りの動画なのかな??)
最初の3枚のみごとに決まったレイアウトと、かっちりしたデッサンは、紛れもない宮崎駿の特徴のある絵となっています。そしてその後のスパイクと手のアップのダイナミックなコマ運び。5~7枚目の大胆なデフォルメも良い味出ています。まるで薄い箔のように撓む腕が伸びやかな動きを作り出しています。投球のシーンが何回か描かれていますが、それぞれにアニメのダイナミックさが心地よい出来。
1枚目は、自動車のフロント部の立体感とバイクのリアリティがかっちりとしたレイアウトでまとまっています。4枚目の長島選手、川上監督、八幡先輩、番場の構図、そして背広の肩の立体感が宮崎らしいと僕の感じる絵です。というのは、『空飛ぶ幽霊船』の戦車シーン周辺の有名な宮崎原画のイメージとかなり近しいものに観えるから。自動車のフロントと背広の肩の描き方は、『空飛ぶゆうれい船』と同じく、物の立体感の把握とその回り込み方が独特の空間感覚を形成しています(、、、ちょっと大げさ)。
2枚目はいわずと知れたヘラクレスポーズ。もちろん『未来少年コナン』を思い出します。あと3枚目の喧嘩シーンの動きのシャープさと、凝りに凝ったレイアウトは特筆もの。引用したシーン以外もアニメートの快感に満ちています。
ということで、褒めちぎって書いてきましたが、実はひさしぶりに再見して、昔、感じたより作画の凄さは縮小しているように思ったのも事実。かなり手間かけないで描いていることが明白で、たぶん宮崎にとってはのびのびと肩の力を抜いた作画だった気配が濃厚。結構、あまい構図や動きもいくつかあります。
最近のTVアニメータのトップレベルのシーンと比べると、そのアニメセンスが勝っているか、かなり微妙。宮崎駿のTV作画のレベルを判断するのは、次にファースト『ルパン三世』を観てからとなりそうです。(気楽に描いた(失礼)TVのシーンでここまでまさか30年後に云々されるアニメ作画オタクな時代がこようとは、想像されてなかったでしょうね(^^;)。これもネットというメディアの特徴かも。)
◆関連リンク
・高畑勲・宮崎駿作品研究所 宮崎駿フィルモグラフィー[1971~1973]
・当Blog記事「叶精二『宮崎駿全書』 と 宮崎駿『もののけ姫』について」 「池田宏監督『空飛ぶゆうれい船』」
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